説明

ペーパータオル

【課題】新聞古紙を原料とした非クレープ紙であるタオルペーパーを提供する。
【解決手段】古紙パルプを含むパルプを原料とし、クレープを有さず、エンボスを有し、JIS P 8124:1998に基づいて測定した坪量が35〜40g/m2でありかつ、JIS P 8118:1998に基づいて測定した密度が0.41〜0.44g/cm3であるペーパータオルにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手拭きなどの清拭用途、清掃用途などに用いられるペーパータオルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店厨房や化粧室等においてよく設置されている下面に取出し口を有するディスペンサー内に収納され、当該取り出し口から一枚一枚を取り出して、或いは引き出して適宜の長さに裁断して利用される、手拭き用などのペーパータオルは良く知られるところである。(例えば、特許文献1、2)。
このペーパータオルは、吸水性、柔らかさ、ディスペンサーからの引出し時に破れない紙力、特に湿潤紙力などが求められ、これらの点から、従来、表面に細かな皺を有するクレープ紙からなるのが一般的である。このクレープ紙は、例えば、湿紙をドライヤーに貼付して乾燥させるとともに、このドライヤーからクレーピングドクターによって引き剥がすことでクレープを付与している。したがって、その製造には、かかるクレーピングドクターを有する抄紙設備が必要である。また、ペーパータオルは、基本的に使い捨てであることから、安価なものが求められる。
【0003】
ところで、近年、新聞紙の需要が減少してきており、新聞紙の抄造設備の稼働率が減少してきている。この新聞紙の抄造設備は、一般的には長網多筒式で、クレーピングドクターを有さず、非クレープ紙を製造する設備であるが、原料価格の安い新聞古紙に対する対応能力に優れる利点がある。
このようなことから、ペーパータオルを製造するにあたり、安価な新聞古紙を利用するとともに、これを新聞紙を製造する抄紙設備により抄造するのが望ましいところであるが、新聞紙の抄紙設備には、クレープを付与する設備がないために、得られる紙の特質として、乾燥状態では硬く、吸水も悪く、濡れた状態での紙力(湿潤紙力)は弱く、ペーパータオルとして使用し難いものである。このため、新聞古紙を原料としたペーパータオルはほとんど存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−87161
【特許文献2】特開平5−269051
【特許文献3】特開平11−164793
【特許文献4】特開2003−73999
【特許文献5】特開2003−275128
【特許文献6】特開2008−255496
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、新聞紙の抄造設備においても製造可能であり、非クレープ紙でありながら、特に新聞古紙を原料としながら、十分にペーパータオルに必要な特性を備えたペーパータオルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
古紙パルプを含むパルプを原料とし、クレープを有さず、エンボスを有し、
JIS P 8124:1998に基づいて測定した坪量が35〜40g/m2でありかつ、JIS P 8118:1998に基づいて測定した密度が0.41〜0.44g/cm3であることを特徴とするペーパータオル。
【0007】
<請求項2記載の発明>
JIS P 8113に準じて測定した湿潤紙力が、縦方向で440cN以上ある請求項1記載のペーパータオル。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記エンボスのエンボス深さが、0.08〜0.1mmである請求項1記載のペーパータオル。
【0009】
<請求項4記載の発明>
吸水量が110g/m2以上であり、吸水速度が200秒/100μL以下である請求項1記載のペーパータオル。
【0010】
<請求項5記載の発明>
ソフトネスが10〜15gである請求項1記載のペーパータオル。
【0011】
<請求項6記載の発明>
新聞古紙パルプ70重量%以上含むパルプを原料パルプとする請求項1記載のペーパータオル。
【0012】
<請求項7記載の発明>
機械パルプを40重量%以上含む請求項1記載のペーパータオル。
【0013】
<請求項8記載の発明>
前記エンボスは、凹面形状が正方形、凹部形状が正八角形、断面形状が台形であり、かつ、エンボス凹部により囲まれるエンボス非付与部分の形状が正方形である、請求項1記載のペーパータオル。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明によれば、新聞紙の抄造設備においても製造可能であり、非クレープ紙でありながら、特に新聞古紙を原料としながら、十分にペーパータオルに必要な特性を備えたペーパータオルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるタオルペーパーのエンボスを説明するための平面図である。
【図2】そのII−II断面図である。
【図3】MIU測定の摩擦子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次いで、本発明の実施の形態について以下に詳述する。
本発明のペーパータオルは、新聞古紙パルプを含むパルプを原料とし、クレープを有さず、エンボスを有するものである。
原料パルプとしては、新聞古紙パルプ以外の古紙パルプを含んでいてもよいし、バージンパルプを含んでいてもよい。本発明では、好ましくは製造コストが安価となることから、新聞古紙70重量%以上含むものからなるものである。ただし、新聞古紙パルプのみであっても十分に、ペーパータオルに必要な特性を有することができる。
また、新聞古紙をペーパータオルの原料とすることで、普通古紙が減少しても安価なペーパータオルを提供すつづけることができ、また、環境保護の点でも望ましい。
【0017】
なお、かかる新聞古紙を構成するパルプ繊維としては、概ね機械パルプの含有量が高く、本発明においてもこの機械パルプの配合割合が40重量%以上であるのが望ましい。
【0018】
他方、本発明のペーパータオルは、特徴的にクレープを有さない。従って、抄紙設備にクレーピングドクターを要する必要がなく、既存の新聞紙、模造紙などの長網を用いた抄紙設備によって抄造することが可能である。
【0019】
また、本発明のペーパータオルは、JIS P 8113に準じて測定した湿潤紙力が、縦方向で440cN以上あるのが望ましい。濡れ手でディスペンサーで引き出す際などに破れが生じがたくなる。ここで、湿潤紙力については、湿潤紙力剤と乾燥紙力剤の混合比と乾燥時の水分を調整することによって達成できる。
【0020】
湿潤引張り強度の測定方法は、幅25mm×長さ150mmで作成した試験片をロードセル引張試験機にセットし、つかみ間隔を100mmに設定し、水を含ませた平筆を用い、試験片の中央部を幅10mm以上が濡れるように湿潤させたのち、速度100mm/minで測定する。
【0021】
さらに、本発明のペーパータオルは、特徴的にエンボスを有している。かかるエンボスにより柔らかさ、吸水性、手肉感が得られる。
このエンボスとしては、エンボス凹面の総面積が、シート面に対して、12〜25%であるのが望ましい。12%未満であると柔らかさが十分でなく、拭き取り性に劣るおそれがあり、25%を超えると、紙の密部分が高くなり吸水量や吸水速度等の吸水性能が低下して拭取り性が悪くなるおそれが高まる。
【0022】
さらに、前記エンボスは、そのエンボス深さが、0.08〜0.1mmであるのが望ましい。0.08mm未満では、柔らかさに劣り、拭き取り性が十分発現されないおそれがある。反対に0.1mmを超えると、表面性が悪くなり拭き取り性が十分発現されないおそれが高まるとともに、嵩高になりすぎて、既存のディスペンサーで使用し難くなるおそれが高まる。
【0023】
他方、本発明のペーパータオルは、エンボスを有するとともに、そのJIS P 8124:1998に基づいて測定した坪量が35〜40g/m2でありかつ、JIS P 8118:1998に基づいて測定した密度が0.41〜0.44g/cm3である必要がある。
坪量が35g/m2未満であると、エンボスの有無、形状に関わらず十分な吸水性が発揮されず拭き取り性が十分ではなくなる。反対に坪量が40g/m2を超えると廃棄時に 、例えばゴミ箱がすぐにいっぱいになってしまうなどの問題点が生ずる。
また、密度が0.41g/cm3未満は既存の新聞紙、模造紙などの長網を用いた抄紙設備によって抄造することが難しく、反対に0.44g/cm3を超えると十分な吸水性が得られない。
【0024】
このように、本発明のペーパータオルは、坪量が35〜40g/m2ありながら、密度が0.41〜0.44g/cm3と比較的低い値で所定値となっており、比較的ポーラスな構造をとる所定値となっている。このようなポーラスな構造をとる所定値としたことで、上記エンボスともあいまって、クレープを有さなくともペーパータオルが要する基本的特質を備えることができるのである。
【0025】
他方、特に吸水性に関しては、その吸水量が110g/m2以上であり、吸水速度が200秒/100μL以下であるのが望ましい。吸水量が110g/m2未満又は吸水速度が200秒/100μLより遅いと十分な拭き取り性を有するとは言い難い。
【0026】
ここで、吸水量は、100mm四方に裁断した乾燥状態の紙試料の重量を測定したのち紙試料を純水中に十分に浸漬させ、次いで、純水中から引き上げて30秒後の重量を測定し、その測定値から乾燥状態時の重量を引いた値を吸水量とした。
【0027】
吸水速度は、100mm四方に裁断した乾燥状態の紙試料に純水100μLを滴下し、紙試料に接触した瞬間から、純水が完全に吸収されて紙表面の反射が消えるまでの時間を吸水速度とした。
【0028】
他方、本発明のペーパータオルでは、ソフトネスが10〜15gであるのが望ましい。ソフトネスが10g未満であると腰がなく使用し難く、15gを超えるとシートが硬くなり手にフィットしなく拭取りにくくなる。ソフトネスの測定方法は、JIS L 1096E法により、縦・横方向ともに100mm×100mmで作成した試験片を、ハンドルオメーターのクリアランスを5mmに設定して測定し、式√ ((縦の平均値)×(横の平均値))に当てはめ算出する。
【0029】
ここで、本発明に好適なエンボス形状について、図1及び2を参照しながらさらに詳述する。本発明のペーパータオルX1に極めて好適なエンボス形状は、図からも理解できるように、凹面2の形状が正方形、凹部20の形状が正八角形、断面形状が台形であり、かつ、エンボス凹部20により囲まれるエンボス非付与部分(エンボス頂部)1の形状が正方形であるものである。
この形状のエンボスであると、吸水性、柔らかさ等ペーパータオルに必要な特質をクレープなくとも極めて良好に発揮できる。
【0030】
以上の本発明のタオルペーパーは、例えば、一枚を引き出すとその次の一枚の一部が引き出されるように、いわゆるポップアップ形式と同様の形態で、折り畳まれて積層されて束とされてディスペンサー内に収めて使用したり、ロール上としてディスペンサー内に収めて使用される。また、本発明のタオルペーパーにおいては、特にプライ数は限定されない。
【実施例】
【0031】
本発明の実施例と比較例とについて、試験した。その結果を各例の組成とともに表1に示す。なお、各例の物性の測定方法等については以下のとおりである。
試料の抄造条件は、原料パルプとして新聞古紙パルプ70重量%、釜更パルプ10重量%、回収新聞古紙パルプ13重量%、チラシ古紙パルプ7重量%の配合割合のものを用い、本発明の実施例1、2と比較例1、2についてはカイメン使用量20kg/t、PAM10kg/tを原料に添加し、CSF(フリーネス)250〜260cc、硫酸バンドにてpH8に調整、灰分5%の条件とした。実施例3については、原料パルプは実施例1、2と比較例1、2と同じとし、添加薬剤としてカイメン使用量20kg/tは添加し、PAMは添加せず、CSF(フリーネス)250〜260cc、硫酸バンドにてpH8に調整、灰分5%の条件とした。比較例3については、新聞古紙100%と表示された市販品を用いた。
【0032】
なお、本発明の実施例、比較例のパルプ構成を測定したところ、本発明の実施例1〜3と比較例1、2については、NBKP15重量%、LBKP35重量%、機械パルプ50重量%であった。比較例3については、NBKP15重量%、LBKP45重量%、機械パルプ40重量%であった。
【0033】
[坪量]
JIS P 8124:1998に基づいて測定した。
【0034】
[紙厚]
JIS P 8118:1998に基づいて測定した。
【0035】
[密度]
JIS P 8118:1998に基づいて測定した。
【0036】
[湿潤紙力]
長手方向長さ150mm、短手方向長さ25mmの短冊形状に試料を裁断し、この試験片に水に1秒間浸した筆(あかしや(紅葉AS−50))を用いて、長手方向中央部に、縦方向に沿ってなでることで水分を付与した後、JIS P 8113に基づいて引張り強さを(kN/m)を測定し、100分の1のcNに換算し、これを湿潤紙力とした。
【0037】
[MIU]
MIUの測定方法は、図3に示されるように、直径0.5mmのピアノ線を隣接して形成した10mm角様の摩擦子の接触底面を、20g/cmの張力で貼られた試料表面に対して50gの接触圧で接触させながら、張力付与方向とほぼ同方向に速度0.1cm/sで2cm移動させて測定する。このときの、摩擦係数を、摩擦感テスターKES−SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定し、その摩擦係数値をMIU値とする。
【0038】
[ソフトネス]
JIS P L 1096のハンドルオメーター法に基づいて、ハンドルオメーターのクリアランスを5mmに設定して測定した。
【0039】
[吸水量]
100mm四方に裁断した乾燥状態の紙試料の重量を測定したのち紙試料を純水中に十分に浸漬させ、次いで、純水中から引き上げて30秒後の重量を測定し、その測定値から乾燥状態時の重量を引いた値を吸水量とした。
【0040】
[吸水速度]
100mm四方に裁断した乾燥状態の紙試料に純水100μLを滴下し、紙試料に接触した瞬間から、純水が完全に吸収されて紙表面の反射が消えるまでの時間を吸水速度とした。
【0041】
【表1】

【0042】
表に示される結果からも明らかなとおり、本発明の実施例については、吸水量、吸水速度に優れるとともに、ソフトネスなどについても問題のない測定結果となった。
【0043】
これらより、本発明のペーパータオルは、新聞古紙を原料として非クレープ紙でありながら、柔らかさがあってしかも破れづらいことが知見された。
【符号の説明】
【0044】
X1…タオルペーパー、1…エンボス凸面部、2…エンボス凹面部、20…エンボス凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプを含むパルプを原料とし、クレープを有さず、エンボスを有し、
JIS P 8124:1998に基づいて測定した坪量が35〜40g/m2でありかつ、JIS P 8118:1998に基づいて測定した密度が0.41〜0.44g/cm3であることを特徴とするペーパータオル。
【請求項2】
JIS P 8113に準じて測定した湿潤紙力が、縦方向で440cN以上ある請求項1記載のペーパータオル。
【請求項3】
前記エンボスのエンボス深さが、0.08〜0.1mmである請求項1記載のペーパータオル。
【請求項4】
吸水量が110g/m2以上であり、吸水速度が200秒/100μL以下である請求項1記載のペーパータオル。
【請求項5】
ソフトネスが10〜15gである請求項1記載のペーパータオル。
【請求項6】
新聞古紙パルプ70重量%以上含むパルプを原料パルプとする請求項1記載のペーパータオル。
【請求項7】
機械パルプを40重量%以上含む請求項1記載のペーパータオル。
【請求項8】
前記エンボスは、凹面形状が正方形、凹部形状が正八角形、断面形状が台形であり、かつ、エンボス凹部により囲まれるエンボス非付与部分の形状が正方形である、請求項1記載のペーパータオル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−233972(P2010−233972A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87975(P2009−87975)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】