説明

ペーパーホルダーを備えた手摺

【課題】体の不自由な使用者が手摺を使用している状態であってもペーパーが取り出しやすいペーパーホルダーを備えた手摺を提供する。
【解決手段】着座式の便器の側方に便器の長手方向と平行になるように便器の後側の壁面に取り付けられ、上側に配置される第一の手摺部と、下側に配置される第二の手摺部と、を有する手摺と、第一の手摺部と第二の手摺部との間であって前記第二の手摺部に設けられ、ロールペーパーからペーパーを切り取るカット部と、カット部が便器側に向くようにロールペーパーを支持する支持軸と、を有するペーパーホルダーと、を備え、ペーパーホルダーに取り付けられた支持軸の軸方向は、垂直方向において支持軸の壁面の反対側が床面に近づくように傾くことを特徴とするペーパーホルダーを備えた手摺。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパーホルダーを備えた手摺に関し、特に、体の不自由な使用者が手摺を使用している状態であってもペーパーが取り出しやすいペーパーホルダーを備えた手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のペーパーホルダーを備えた手摺は、U字形状の手摺の下部にペーパーホルダーが手摺と平行に向いて取り付けられており、手摺の上部を有効に使用することができ、使用者が手摺の上部を掴みやすいようになっている。また、従来のペーパーホルダーを備えた手摺は、ばねを設けたワンハンドカットタイプの紙切板が取り付けられおり、手摺をはね上げた状態においてもペーパーが垂れ下がらないように防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−238806号公報
【特許文献2】特開2008−173268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のペーパーホルダーを備えた手摺では、体の不自由な使用者がU字状の上側の手摺を掴んだ状態で、手摺を掴んでない手でロールペーパーからペーパーを切り取る際に、ロールペーパーの向きが手摺と平行を向いているので、ペーパーが切れ始める起点が生じにくく、使用者はペーパーホルダーからペーパーを余分に出してしまい簡単に切り取ることが困難であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、体の不自由な使用者が手摺を使用している状態であってもペーパーが取り出しやすいペーパーホルダーを備えた手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のペーパーホルダーを備えた手摺は、着座式の便器の側方に前記便器の長手方向と平行になるように前記便器の後側の壁面に取り付けられ、上側に配置される第一の手摺部と、下側に配置される第二の手摺部と、を有する手摺と、前記第一の手摺部と前記第二の手摺部との間であって前記第二の手摺部に設けられ、ロールペーパーからペーパーを切り取るカット部と、前記カット部が前記便器側に向くように前記ロールペーパーを支持する支持軸と、を有するペーパーホルダーと、を備え、前記ペーパーホルダーに取り付けられた前記支持軸の軸方向は、垂直方向において前記支持軸の前記壁面の反対側が床面に近づくように傾くことを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、体の不自由な使用者が第一の手摺部を掴んだ状態で、手摺を掴んでない手でロールペーパーからペーパーを切り取る際に、ペーパーが切れ始める起点が生じやすくなり、使用者はペーパーホルダーからペーパーを余分に出すことがなく簡単に切り取ることができる。
【0008】
従来のペーパーホルダーを備えた手摺では、ペーパーホルダーの向きが手摺と平行を向き使用者に対して横方向になるので、ペーパーを引き出す際に姿勢を捻ったり、斜めに取り出す必要があった。そこで、本発明のペーパーホルダーを備えた手摺は、上記構成に加え、前記ペーパーホルダーに取り付けられた前記支持軸の軸方向は、水平方向において前記支持軸の前記壁面の反対側が前記便器から離れるように傾くことを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、体の不自由な使用者がU字状の上側の手摺を掴んだ際に、使用者の脇の下方にあるペーパーホルダーのカット部が使用者の手前側の上方に向くように配置されているので、使用者は楽な姿勢でペーパーホルダーからペーパーを簡単に引き出し、切り取ることができる。
【0010】
また、本発明のペーパーホルダーを備えた手摺は、上記構成に加え、前記手摺は、前記便器の後部側の壁面にはね上げ可能に取り付けられ、前記手摺をはね上げ状態にするために前記手摺の固定状態を解除する固定解除部が前記第一の手摺部と前記第二の手摺部との間に設けられており、前記壁面側に前記ペーパーホルダーが配置され、且つ前記ペーパーホルダーに前記固定解除部が隣接して配置されることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、不自由な使用者が手摺の固定状態を解除するために固定解除部に手を伸ばした際に、ペーパーホルダーに手が当たらないので、使用者の使いやすい位置に固定解除部を設けることができ、ペーパーホルダーが使いやすく固定解除部も使いやすい配置構成にすることができる。
【0012】
また、本発明のペーパーホルダーを備えた手摺は、上記構成に加え、前記ペーパーホルダーの垂直方向の傾きを調整部可能な第一の傾斜調節部と、前記ペーパーホルダーの水平方向の傾きを調整部可能な第二の傾斜調節部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成とすれば、体の不自由な使用者の体型に合わせてペーパーホルダーの傾きを調節可能であるので、使用者にとって一番使い勝手の良いペーパーホルダーの傾きに調節することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、体の不自由な使用者が第一の手摺部を掴んだ状態で、手摺を掴んでない手でロールペーパーからペーパーを切り取る際に、ペーパーが切れ始める起点が生じやすくなり、使用者はペーパーホルダーからペーパーを余分に出すことがなく簡単に切り取ることができる。また、不自由な使用者が手摺の固定状態を解除するために固定解除部に手を伸ばした際に、ペーパーホルダーに手が当たりにくいので、使用者の使いやすい位置に固定解除部を設けることができ、ペーパーホルダーが使いやすく固定解除部も使いやすい配置構成にすることができる。また、体の不自由な使用者の体型に合わせてペーパーホルダーの傾きを調節可能であるので、使用者にとって一番使い勝手の良いペーパーホルダーの傾きに調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のペーパーホルダーを備えた手摺をトイレ空間に設置した斜視図である。
【図2】本発明のペーパーホルダーを備えた手摺の斜視図である。
【図3】本発明のペーパーホルダーを備えた手摺のペーパーホルダー部分の分解斜視図である。
【図4】本発明のペーパーホルダーを備えた手摺の正面図である。
【図5】本発明のペーパーホルダーを備えた手摺の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜図5に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は本発明のペーパーホルダーを備えた手摺のトイレ空間に設置した斜視図である。図1はトイレ空間に設置された便器Aの側方に便器Aの長手方向と平行になるように便器Aの後側の壁面Wに、手摺Tが取付板5を介してボルトで固定されている。手摺Tには上部に配置される第一の手摺部T1と下部に配置される第二の手摺部T2との間にあって、第二の手摺部T2に設けられた、ロールペーパー2からペーパーを切り取るカット部3と、カット部3が便器側に向くようにロールペーパー2を支持する支持軸4を有するペーパーホルダー1を取り付けている。なお、カット部3の材質はペーパーを切り取ることが可能な材質なら、金属や非金属性の材質のどちらでも構わない。
【0018】
図1に示すようにペーパーホルダー1は支持軸4の軸方向が、鉛直方向において支持軸4の壁面Wの反対側が床面に近づくように傾いて取り付けられており、カット部3が未使用のペーパーをセットした際に後述する図4に示す上方方向に向いている。このような構成とすれば使用者が第一の手摺部T1を掴んだ状態で、手摺Tを掴んでない手でロールペーパー2からペーパーを切り取る際に、ペーパーが切れ始める起点が生じやすくなり、使用者はペーパーホルダー1からペーパーを余分に出すことがなく簡単に切り取ることができる。また水平方向においては、支持軸4の壁面Wの反対側が便器Aから離れるように傾いて取り付けられている。このような構成とすれば使用者が第一の手摺部T1を掴んだ際に、使用者の脇の下方にあるペーパーホルダー1のカット部3が使用者の手前側に向くように配置されているで、使用者は楽な姿勢でペーパーホルダー1からペーパーを簡単に引き出し、切り取ることができる。
【0019】
図2は本発明のペーパーホルダーを備えた手摺の斜視図である。手摺Tは上側に配置される第一の手摺部T1と、下側に配置される第二の手摺部T2と、第一の手摺部T1と第二の手摺部T2とを接続する第三の手摺部T3を設けており、壁に固定するための取付板5と、手摺を鉛直方向へはね上げる回転部6と、第一の手摺部T1と第二の手摺部T2との間に設けられるペーパーホルダー1で構成されている。また、手摺Tを鉛直にする場合に壁との衝突を防ぐための受け部7と、手摺Tを床面と平行な位置にしたとき、その状態で手摺Tを固定するストッパー部材8と、手摺Tが固定された状態を解除する第二の手摺部T2に設置された固定解除部9を設けている。ペーパーホルダー1は、鉛直方向の傾きを調整可能な第一の傾斜調節部10と、水平方向の傾きを調整可能な第二の傾斜調節部11とで第二の手摺部T2に取り付けられる。なお、手摺Tはステンレス管のような金属管や、金属管を樹脂層で被覆した樹脂被覆管のどちらでも構わない。
【0020】
図2に示すように第二の手摺部T2に設置される固定解除部9とペーパーホルダー1は隣接した位置に設置されるが、ペーパーホルダー1が上記鉛直方向及び水平方向に傾いて取り付けられており固定解除部9の周辺に空間ができるため、ペーパーホルダー1に手が当たらずに固定解除部9を使用することができ、ペーパーホルダー1が使いやすく固定解除部9も使いやすい配置構成にすることができる。
【0021】
図3は本発明のペーパーホルダーを備えた手摺のペーパーホルダー部分の分解斜視図である。ペーパーホルダー1は第二の傾斜調節部11の取付板部分にボルト12とナット13で取り付けられる。そして第一の傾斜調節部10の手摺部外周上に狭持可能な狭持部15で第二の手摺部T2を二方向から狭持し、また同時に第二の傾斜調節部11の2ヶ所の突起部16を第一の傾斜調節部10の溝部17で二方向から狭持し、ボルト14で締め付け第二の手摺部T2に固定される。ペーパーホルダー1の傾きの調整は、ボルト14を緩め狭持力を弱め、第二の傾斜調節部11の突起部16を第一の傾斜調節部10の溝部内で滑動させ水平方向に傾きを調整する。また鉛直方向の傾きは第一の傾斜調節部10の狭持部15の狭持力を弱め第二の手摺部T2の外周上を滑動させ傾きを調整する。なお、第一の傾斜調節部10と第二の傾斜調節部11の材質は強度を要するものなら、金属や非金属性の材質のどちらでも構わない。
【0022】
図4は本発明のペーパーホルダーを備えた手摺の正面図、図5は本発明のペーパーホルダーを備えた手摺の上面図である。図4に示すようにペーパーホルダー1は第一の傾斜調整部10によって、鉛直方向の傾き角度α範囲で傾けることが可能であり、未使用のペーパーをセットした際にカット部3が図4に示す上方方向を向く。ペーパーホルダー1の支持軸4は、垂直方向においては壁面Wから離れるにしたがって徐々に床面に近づくように傾く。また、図5に示すように第二の傾斜調整部11によって、水平方向の傾き角度β範囲で傾けることが可能であるため、様々な体格の使用者に対応できるようペーパーホルダー1の傾き角度を調整できる。ペーパーホルダー1の支持軸4は、水平方向においては壁面Wから離れるにしたがって徐々に便器から離れるように傾く。
【0023】
また、図2のペーパーホルダーを取り付けた手摺は、鉛直方向へ可動する手摺であるが、水平方向に可動する手摺や固定式手摺、例えばP型形状の手摺においても、使用者が便座に座ったまま楽な姿勢でペーパーホルダー1から簡単に紙を取ることができるようになる。また、温水洗浄便座のリモコン等の他機器との併設においても、使用者の使いやすい位置に他機器を設けることができ、ペーパーホルダー1が使いやすく他機器も使いやすい配置構成にすることができる。
【符号の説明】
【0024】
A :便器
W :壁面
T :手摺
T1:第一の手摺部
T2:第二の手摺部
T3:第三の手摺部
1 :ペーパーホルダー
2 :ロールペーパー
3 :カット部
4 :支持軸
5 :取付板
6 :回転部
7 :受け部
8 :ストッパー部材
9 :固定解除部
10:第一の傾斜調節部
11:第二の傾斜調節部
12:ボルト
13:ナット
14:ボルト
15:狭持部
16:突起部
17:溝部
α :角度
β :角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座式の便器の側方に前記便器の長手方向と平行になるように前記便器の後側の壁面に取り付けられ、上側に配置される第一の手摺部と、下側に配置される第二の手摺部と、を有する手摺と、
前記第一の手摺部と前記第二の手摺部との間であって前記第二の手摺部に設けられ、ロールペーパーからペーパーを切り取るカット部と、前記カット部が前記便器側に向くように前記ロールペーパーを支持する支持軸と、を有するペーパーホルダーと、を備え、
前記ペーパーホルダーに取り付けられた前記支持軸の軸方向は、垂直方向において前記支持軸の前記壁面の反対側が床面に近づくように傾くことを特徴とするペーパーホルダーを備えた手摺。
【請求項2】
前記ペーパーホルダーに取り付けられた前記支持軸の軸方向は、水平方向において前記支持軸の前記壁面の反対側が前記便器から離れるように傾くことを特徴とする請求項1記載のペーパーホルダーを備えた手摺。
【請求項3】
前記手摺は、前記便器の後部側の壁面にはね上げ可能に取り付けられ、前記手摺をはね上げ状態にするために前記手摺の固定状態を解除する固定解除部が前記第一の手摺部と前記第二の手摺部との間に設けられており、
前記壁面側に前記ペーパーホルダーが配置され、且つ前記ペーパーホルダーに前記固定解除部が隣接して配置されることを特徴とする請求項2記載のペーパーホルダーを備えた手摺。
【請求項4】
前記ペーパーホルダーの垂直方向の傾きを調整部可能な第一の傾斜調節部と、前記ペーパーホルダーの水平方向の傾きを調整部可能な第二の傾斜調節部と、を備えることを特徴とする請求項2又は3記載のペーパーホルダーを備えた手摺。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−70940(P2012−70940A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218024(P2010−218024)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】