説明

ホウ素繊維強化構造部品

【課題】胴体の周方向スプライス(繋ぎ板)を無くし、キールスプライス部品を無くし、必要な箇所の剛性及び強度を集中させることで、航空機重量を軽くし、胴体アセンブリを簡易にする複合材構造部材、及び航空機胴体を提供する。
【解決手段】ホウ素強化複合材構造部材200に関し、ホウ素強化航空機キールに関連する範囲で教唆される。ホウ素強化複合材構造部材200は、構造部材コア208と、コアを取り囲む構造部材ケーシング212により構成する。構造部材コア208は、ホウ素繊維強化プライ202及び内部炭素繊維強化プライ204を交互に重ねた層を含む。ホウ素繊維強化プライ202は前後方向に向いており、そして内部炭素繊維強化プライ204は、ホウ素繊維強化プライ202に対して対角方向に、直交方向に、そして平行に向いている。構造部材ケーシング212は、構造部材コア208の全体を略取り囲む外部炭素繊維強化プライ204を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の旅客輸送航空機及び貨物輸送航空機は通常、高翼機または低翼機として構成される。これらの航空機では、これらの翼は、胴体の客室または貨物室の上方または下方に配置され、そしてこれらの翼を胴体に、ウイングボックス構造を介して取り付ける。胴体は、航空機が高翼機または低翼機として構成されるかどうかによって異なるが、ウイングボックス構造の上部または下部に取り付けられる。ウイングボックス構造は通常、ウイングボックス構造が翼荷重の大部分に耐え、そして胴体を支えるために十分な強度を備える必要があるので非常に重くなる。翼は、胴体の切欠き部を介して取り付けることもでき、この場合、胴体の補強が、胴体構造の完全性を維持するために必要になる。
【0002】
航空機胴体は、多くの種類の荷重に耐えるように設計される。まず、胴体は、胴体が飛行中に圧力を受けることにより発生する曲げ応力に耐える必要がある。胴体は、航空機を制御するために使用される航空機飛行表面の移動により生じる胴体の曲がり、及びねじれによって発生する引っ張り力、圧縮力、及びせん断力に耐える必要もある。胴体は更に、着陸時に作用する力、及び飛行中の操縦時、乱気流時、またはウィンドシア状態のときに受けるような、外部空圧変化及び速度変化に起因して作用する力に耐える必要がある。航空機の外板アセンブリは普通、これらの荷重の大部分に耐える。胴体フレームは、外板アセンブリを更に支え、そして飛行操縦中に受ける荷重を支える種々のストリンガ、及びバルクヘッドを含む。
【0003】
大型航空機は、アルミニウム製モノコック胴体を使用して組み立てられる場合が多い。アルミニウム製モノコック胴体を組み立てる1つの方法では、胴体断面の形状をした一連のフレームを選択し、そしてこれらのフレームセクションを長手方向ストリンガに接合して、胴体セクションを形成する。次に、胴体セクションを、アルミニウム外板シートで外郭形状に形成し、このアルミニウム外板はリベット止めにより、または接着剤による接合により取り付けられる。次に、胴体セクションを通常、ファスナーで接合して、胴体を完成させる。より大型の航空機では、アルミニウムキール(竜骨)を普通、胴体の機内床面に取り付ける。キールによって通常、翼及び主脚格納室が大きな胴体切欠き部を必要とする領域を補強し易くなる。
【0004】
モノコック胴体セクションを組み立てる別の方法では、炭素繊維強化織物層を、回転マンドレルの周りに、補強繊維配置機械(reinforced fabric placement machines)で配置する。このようにして、複合材バレルセクションが形成され、そして1つ以上のバレルセクションを接続して胴体を構成することができる。繊維配置機械技術の例として、自動繊維配置(automated fiber placement)、自動テープ積層(automated tape laying)、及びフィラメントワインディングを挙げることができる。マンドレルは、胴体セクションの基本形状を形成し、そして炭素繊維強化織物層を回転マンドレルに貼り付けて、胴体セクションの内側外板を形成する。モノコック胴体セクションを組み立てる幾つかの方法に関しては、内側外板は通常、ハニカムコア層で被覆される。従って、繊維配置機械で炭素繊維強化織物層をハニカムコアに貼り付けて、外側外板を形成する。内側外板、ハニカムコア、及び外側外板は、合体して外板アセンブリを形成する。モノコック胴体セクションを組み立てる他の方法に関しては、マンドレルは、内側外板及び一体成形ストリンガの形状を形成する。外板及びストリンガをマンドレルの上に配置し、そして同時に硬化させて、完成胴体外板を形成する。
【0005】
本明細書において行なわれる本開示は、これらの考察事項及び他の考察事項に関して提示される。
【発明の概要】
【0006】
この概要は、以下に詳細な説明において詳細に説明されるコンセプト群のうち選択されるコンセプトを簡略形式で紹介するために提供される。この概要は、請求する主題の範囲を限定するために使用されてはならない。
【0007】
本開示の1つの実施形態は、積層ホウ素複合材構造部材に関するものである。積層ホウ素複合材構造部材は、構造部材ケーシングによって略全体が取り囲まれる構造部材コアを有する。構造部材コアは、略前後方向に向いたホウ素繊維強化プライ層群を含む。隣接するホウ素繊維強化プライ層の間には、炭素繊維強化プライ群が設けられる。幾つかの炭素繊維強化プライは、ホウ素繊維強化プライ群に対して略対角方向に向いている。他の炭素繊維強化プライ群は、ホウ素繊維強化プライ群に対して略直交方向に向いている。また、他の炭素繊維強化プライ群は、ホウ素繊維強化プライ群に略平行に向いている。構造部材ケーシングを画定するように構成される少なくとも1つの外部炭素繊維強化プライは、構造部材コアを画定するホウ素繊維強化プライ群及び炭素繊維強化プライ群の略全体を取り囲む。
【0008】
本開示の別の実施形態は、改良型航空機胴体に関するものである。この場合、航空機胴体は、第1端部及び反対側の第2端部を有する胴体バレルのような中央胴体セクションと、そして2つの端部の間に位置する翼及び/又は脚格納室の切欠き部と、を有する。中央胴体セクションは、第1端部から第2端部に延びる炭素繊維強化プラスチックのような繊維強化外板で形成される。中央胴体セクションの内部には、キールの形態のホウ素複合材構造部材が配置され、このキールは、切欠き部の長さに亘って延出し、そして次に、傾斜して中央胴体セクションに入り込む。幾つかの実施形態では、キールは中央胴体セクションよりも長いので、キールが、第1端部または第2端部を越えて延出する、または傾斜する。ホウ素複合材キールは、繊維強化外板の機内側または機外側に、繊維強化プライを介して取り付けられる。これらの繊維強化プライは層状に配置され、幾つかの繊維強化プライは、ホウ素複合材キールに対して略直交方向に配置され、そして幾つかの繊維強化プライは、ホウ素複合材キールに対して略対角方向に配置される。
【0009】
本開示の更に別の実施形態は、航空機胴体を組み立てる方法を提供する。1つの実施形態の操作は、第1端部及び第2端部を有する胴体バレルのような中央胴体セクションを形成するステップと、そしてホウ素強化キールを形成するステップと、を含む。ホウ素強化キールを中央胴体セクションに固く固定して、ホウ素強化キールの第1部分が、中央胴体セクションの第1端部を越えて延びるようにする。ホウ素強化キールの第1部分を第2胴体セクションに固く固定し、第2胴体セクションを中央胴体セクションにスプライス接続する。
【0010】
説明してきた特徴、機能、及び利点は、本開示の種々の実施形態において個別に達成することができる、または本開示の範囲を逸脱しない範囲で、更に他の実施形態において組み合わせることができる。これらの特徴、及び種々の他の特徴が教唆されているので、以下の詳細な説明を一読し、そして関連する図面を精読することにより理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、航空機胴体の例示的な中央胴体バレルセクションを示している。
【図2】図2は、例示的な複合材構造部材の断面図を示している。
【図3】図3は、別の例示的な複合材構造部材の断面図を示している。
【図4A】図4Aは、例示的な航空機キールの断面図を示している。
【図4B】図4Bは、例示的な航空機キールの断面図を示している。
【図4C】図4Cは、例示的な航空機キールの断面図を示している。
【図5】図5は、複合材構造部材を有する航空機胴体を組み立てる例示的な方法に関するフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、以下に記載される種々の形状部を組み込んで、胴体の最も荷重の大きいセクションの周方向スプライス(繋ぎ板)を無くし、キール(機体下面)スプライス部品を無くし、必要な箇所の剛性及び強度を集中させることができ、航空機重量を軽くし、そして胴体アセンブリを簡易にする改良型複合材構造部材、及び改良型航空機胴体に関するものである。本明細書において説明するように、モノコック胴体を組み立てる1つの方法では、1つ以上の複合材バレルセクションを形成し、そして次に、これらのバレルセクションを接続して合体させることにより胴体を構成する。従来の旅客輸送航空機または貨物輸送航空機は普通、キールで補強され、このキールは通常、胴体に対して前後方向に配置され、そして胴体フレームまたは外板アセンブリの内部または外部に取り付けられる。
【0013】
複合材バレルセクションにより組み立てられる胴体は、複数の複合材バレルセクションに跨って延設されるキールを必要とする。更に、複合材バレルセクションは、ウイングボックスまたは脚格納室または貨物ランプ(cargo ramp)を収容する少なくとも1つの大きな切欠き部を含むことができる。その結果、従来のキールは、胴体フレームまたは外板アセンブリに極めて強力に機械的に締結固定されて、1つ以上の複合材バレルセクションに取り付けられる必要がある。同様に、構造部材群で枠組する、または補強する必要がある複合材バレルセクションは、胴体フレームまたは外板アセンブリに極めて強力に機械的に締結固定される必要がある。同様に、これらの複合材バレルセクションは、極めて強力に機械的に締結固定されて互いに連結される必要がある。
【0014】
本明細書において説明するコンセプト及び技術を利用して、ホウ素強化複合材構造部材は、胴体を構造的に強化し、そして航空機を組み立てる改良型方法を提供する。本明細書において説明するコンセプト及び技術は、航空機に関連して教唆されるが、構造強化を必要とし、複合材を組み込み、梁を圧縮する方向に曲げる、またはアセンブリを改善する要求がある他の設計及び環境に容易に適合させることができる。このような適合化の例として、建物の建設、自動車及び船を含む耐久消費財の製造、厳しい状況に置かれる周回衛星のようなアセンブリ、これらの要素の組み合わせなどを挙げることができる。従って、ここで例示及び教唆を行なうために、かつ限定または制限するためではなく、本明細書において教唆されるコンセプト及び技術は、航空機胴体及びキールに関連して例示される。
【0015】
特定の詳細及び特徴を本明細書において、そして図1〜5において説明して、例示的な実施形態、図、または例を通して、ホウ素複合材構造部材の製造及び使用の種々の実施形態を記載し、そして教唆する。これらの図に説明される、または示される詳細及び特徴の多くは、特定の実施形態の単なる表現及び例示に過ぎない。従って、他の実施形態は、他の詳細及び特徴を、本開示及び請求項の範囲から逸脱しない範囲で有することができる。更に、他の実施形態は、本明細書において説明される詳細及び特徴を用いることなく実施することができる。次に、同様の参照番号が同様の構成要素を幾つかの図を通して表わしているこれらの図を参照しながら、種々の実施形態によるホウ素複合材構造部材について説明する。
【0016】
次に、図1を参照するに、前後軸102を有する中央胴体バレル100が図示されている。1つの実施形態では、図示の中央胴体バレル100のような胴体バレルセクション群は、単一セクションとして、炭素繊維複合材料により個々に製造される。別の実施形態では、ハーフバレルセクション群、クォータバレルセクション群、及びパネル群のような胴体部品群は、炭素繊維複合材料により個々に製造され、そして連結して合体させる。「Carbon fiber reinforced plastic(炭素繊維強化プラスチック)」(CFRP)は、炭素繊維複合材胴体バレル、炭素繊維複合材胴体部品などを製造するために使用される炭素繊維複合材料の種類を含む総称である。
【0017】
製造後、CFRP胴体バレル群または胴体部品群は、環状ジョイント104に沿って、接着剤接合及び/又は機械的締結により連結して合体させて、胴体を形成する。CFRP製造法に関連してくる場合が多い公知のCFRP法及びCFRPシステムを説明した詳細は、以下の開示では説明せず、本開示の種々の実施形態に関する説明が不必要に不明瞭になることがないようにしている。
【0018】
図1に示す中央胴体バレル100は、一対の対向する翼開口部106の形態の切欠き部を含み、翼開口部106の背後に、ウィングボックス及び脚格納室(図示せず)を配置することができ、そして翼開口部106を通って、翼(図示せず)が取り付けられる。更に図示されているのは、前後軸102に略平行に向き、かつ図4A〜4Cを参照しながら形態として最も良く表わされている一体成形胴体キールの形態の複合材構造部材108である。
【0019】
幾つかの実施形態では、複合材構造部材108は、対向する翼開口部106の長さの略全体に亘って延設され、そして次に、傾斜して各端部において中央胴体100に取り付けられる。例えば、複合材構造部材108は傾斜して、一方または両方の端部において、中央胴体ストリンガ(図示せず)のような構造部材に取り付けられる。幾つかの実施形態では、複合材構造部材108は、傾斜して端部において中央胴体100に取り付けられる前に、対向する翼開口部106の機体前方側に、2個または3個の窓枠分だけ延出することができる。他の実施形態では、複合材構造部材108は、傾斜して端部において中央胴体100に取り付けられる前に、対向する翼開口部106の機体後方側に、3個または4個の窓枠分だけ延出することができる。更に他の実施形態では、複合材構造部材108は、傾斜して中央胴体100に取り付けられる前に、対向する翼開口部106の機体前方側及び機体後方側の両方に延出することができる。更に別の実施形態では、複合材構造部材108は、中央胴体100の機体前方側及び/又は機体後方側に延出することにより、隣接する機体前方側及び/又は機体後方側の胴体セクションに取り付けられる。
【0020】
複合材構造部材108は、フランジ110のような設計形状部を有することができる。以下に説明するように、複合材構造部材108は、何れかの設計構成とすることができ、そして設計構成に関連する、または中央胴体104への複合材構造部材108の固定または取り付けに関連する形状部を含むことができる。例えば、フランジ110は、複合材構造部材108により高い剛性を付与するとともに、複合材構造部材108を中央胴体104に固く固定する、または取り付ける構造を提供することができる。
【0021】
概して、中央胴体バレル100または複合材構造部材108を製造するために使用されるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、強化材及び樹脂を含む。強化材は、例えば織物、テープ、フィルム、ホイル(foil)、繊維、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。繊維は、例えば炭素、アラミド、石英、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。樹脂は、例えば熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を含むことができる。熱硬化性樹脂は、エポキシ、ポリウレタンポリエステル、フェノール樹脂、ビニルエステル、及びポリイミド樹脂、及びこれらの組み合わせなどを含む。熱可塑性樹脂は、例えばアセタール樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ナイロン、及びこれらの組み合わせなどを含むことができる。フォーム、基板、または他のプライへの複合材料の接着を容易にするために、複合材料は通常、接合または硬化させる。本教唆を行なうために、「ply(プライ)」及び「layer(層)」という用語は、単数形または複数形であるかどうかに関係なく、互いに置き換えても全く同じ意味である。
【0022】
ホウ素(boron)は化学元素であり、そして普通、半金属であると考えられる。ホウ素はまた、相対的な表現では、希土類元素である。ホウ素及びホウ素リッチ化合物の特徴として、極端に高い剛性及び硬度を挙げることができる。ホウ素リッチ化合物の例として、これらには限定されないが、ヘテロダイヤモンド、窒化ホウ素、ニホウ化レニウム、炭化ホウ素、立方晶ホウ素、ホウ酸塩、ホウ化物、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。教唆を行なうために、かつ本明細書において使用されるように、「boron」という用語は、ホウ素を含む何れかの強化材、樹脂、繊維、材料、組成物、化合物、誘導体、及びこれらの組み合わせなどを含む。
【0023】
ホウ素を使用してホウ素繊維を形成することができる。ホウ素繊維は多くの場合、化学気相堆積により形成され、このプロセスでは、ホウ素をタングステンワイヤに堆積させて、直径が約0.004インチ(0.10ミリメートル)の繊維を形成する。ホウ素繊維は、炭素繊維のような他の材料と組み合わせることにより複合材料を形成することができ、この複合材料を使用して、ホウ素の特徴を活かすことができる製品を製造することができる。例えば、ホウ素繊維は剛性が高く、かつ直径が大きいので、ホウ素繊維で強化された複合材料を使用して、航空機キールが受ける荷重のような大きい圧縮荷重を支えることができる。
【0024】
図2は、例示的な複合材構造部材200の断面図である。この複合材構造部材200は、本開示に従って製造することができる何れかの構造部材の例示である;従って、実施形態は、例示の複合材構造部材200の台形の形状に限定されない。例えば、他の複合材構造部材外形は、正方形、矩形、円形、楕円形、これらの形状の組み合わせなどのような普通の幾何学形状の断面形状を有することができる。更に、他の複合材構造部材外形は、「C字」形通路、「I」形梁または「H」形梁、「L字」角、「T字」棒、これらの形状の組み合わせのような普通の建築材形状と同様の断面構成を有することができる。更に、他の複合材構造部材外形は、設計基準により決定される取り付け構造を形成するフランジ、スリーブ、アパーチャ、アンカー、またはアーム、及びこれらの部材の組み合わせなどのような形状部または構造を有することができる。他の構造部材外形は、設計基準により決定される固有または独特の断面形状を有することができる。
【0025】
図示の複合材構造部材200は、ホウ素繊維強化プライ群202と、そして炭素繊維204と、を備える。この場合、これらのホウ素繊維強化プライ202は、前後方向に配向される、または0°プライ、すなわち表面の前後方向中心線に対する繊維の角度を指す慣例の表記法に従った角度に配列されるものとして図示されている。別の実施形態では、これらのホウ素繊維強化プライ202は、0°、または±45°、或いは90°方向に配列する、または設計基準により決定される他の何れかの方向に配列することができる。0°、または±45°、或いは90°方向に配列されるプライは、平行(内部または外部)繊維強化プライ、対角(内部または外部)繊維強化プライ、及び直交(内部または外部)繊維強化プライと、それぞれ表記することができる。ここで教唆を行なうために、かつ本明細書において使用されるように、「diagonal」という用語は、0°(平行)または90°(直角)を除く何れかの方向または角度を含む。
【0026】
図示の複合材構造部材200は更に、内部炭素繊維強化プライ206a〜206dを含む。幾つかのホウ素繊維強化プライ202に隣接するのが、0°炭素繊維強化プライ群206aである。これらの0°炭素繊維強化プライ206aは、平行内部繊維強化プライ206aと表記することもできる。また、幾つかのホウ素繊維強化プライ202に隣接するのが、±45°炭素繊維強化プライ群206bである。これらの±45°炭素繊維強化プライ206bは、対角内部繊維強化プライ206bと表記することもできる。幾つかのホウ素繊維強化プライ202に隣接するのが、90°炭素繊維強化プライ群206cである。これらの90°炭素繊維強化プライ206cは、直交内部繊維強化プライ206cと表記することもできる。また、幾つかのホウ素繊維強化プライ202に隣接するのが、−45°炭素繊維強化プライ群206dである。これらの−45°炭素繊維強化プライ206dは、対角内部繊維強化プライ206dと表記することもできる。別の実施形態では、炭素繊維強化プライ206a〜206dは、設計基準によって決定される他の何れかの方向に配列することができる。ホウ素繊維強化プライ群202及び内部炭素繊維強化プライ206a〜206dは、一体となって構造部材コア208を画定する。図示の構造部材コア208を取り囲むのが、構造部材ケーシング212を画定する外部炭素繊維強化プライ群210である。
【0027】
次に、図3を参照するに、別の例示的な複合材構造部材300の断面図が図示されている。図示の複合材構造部材300は、ホウ素繊維強化プライ302a〜302cと、そして炭素繊維304と、を備える。この場合、これらのホウ素繊維強化プライ302a〜302cは、前後方向に配列される、または0°プライとして配列されるものとして図示されている。別の実施形態では、ホウ素繊維強化プライ302a〜302cは、0°、または±45°、或いは90°方向に配列する、または設計基準により決定される他の何れかの方向に配列することができる。0°、または±45°、或いは90°方向に配列されるプライは、平行(内部または外部)繊維強化プライ、対角(内部または外部)繊維強化プライ、及び直交(内部または外部)繊維強化プライと、それぞれ表記することができる。更に、複合材構造部材300は、これらには限定されないが、単層ホウ素繊維強化プライ302a、2層ホウ素繊維強化プライ302b、及び3層ホウ素繊維強化プライ302cのような、ホウ素繊維強化プライ302a〜302cの種々の組み合わせを含むことができる。別の実施形態では、ホウ素繊維強化プライ302a〜302cは、プライ群の何れかの組み合わせを含むことができ、そして設計基準によって決定される他の何れかの方向に配列することができる。
【0028】
図示の複合材構造部材300は更に、種々の層及び配列を含むことができる内部炭素繊維強化プライ306a〜306jを含む。例えば、図示されているのは、単層の0°炭素繊維強化層306a、2層の−45°炭素繊維強化層306b、4層の90°炭素繊維強化層306c、2層の+45°炭素繊維強化層306d、4層の−45°炭素繊維強化層306e、単層の90°炭素繊維強化層306f、4層の+45°炭素繊維強化プライ306g、4層の−45°炭素繊維強化層306h、2層の90°炭素繊維強化プライ306i、及び3層の+45°炭素繊維強化プライ306jである。0°、または±45°、或いは90°方向に配列されるプライは、平行(内部または外部)繊維強化プライ、対角(内部または外部)繊維強化プライ、及び直交(内部または外部)繊維強化プライと、それぞれ表記することができる。別の実施形態では、炭素繊維強化層306a〜306jは、プライ群の何れかの組み合わせを含むことができ、そして設計基準によって決定される他の何れかの方向に配列することができる。
【0029】
ホウ素繊維強化プライ302a〜302c及び内部炭素繊維強化プライ306a〜306jは一体となって、構造部材コア308を画定する。構造部材コア308を取り囲むのは、構造部材ケーシング312を画定する外部炭素繊維強化プライ群310である。この場合、構造部材ケーシング312は、2層の炭素繊維強化プライ310を含むものとして図示されているのに対し、別の実施形態では、構造部材ケーシング312は、設計基準によって決定される何れの枚数の炭素繊維強化プライを含むことができる。
【0030】
複合材構造部材200,300を製造するプロセスは、積層及び硬化を含む。一方向複合材繊維を取り付ける種々の方法が公知になっており、そして方法を使用して、複合材構造部材200,300を積層させることができる。これらの方法として、これらには限定されないが、ファイバプレースメント(繊維配置)、フィラメントワインディング、及びテープ積層(tape laying)を挙げることができる。繊維配置プロセスでは通常、複数の「tows(繊維トウ)」(すなわち、エポキシのような熱硬化性樹脂材料を予め含浸させた炭素繊維またはグラファイト繊維のような、連続的なフィラメントの撚られていない束)及び/又は他の複合材料を自動配置する。繊維配置機械(fiber placement machine)は通常、個々の繊維トウを配置中に、繰り出し、押し込み、切断し、そして再び繰り出す手段を含む。フィラメントワインディングプロセスでは、繊維接合装置が前後に移動して、繊維を所定の構成に配置する。幾つかのフィラメントワインディング応用形態では、繊維材料を液体樹脂に通し(「ウェットワインディング」と表記される)、そして幾つかのフィラメントワインディング応用形態では、繊維材料に樹脂を予め含浸させている。テープ積層は、繊維配置プロセスと、個々の繊維トウではなく、予め含浸させた繊維テープを載置して、部品または部材を形成することを除き、同様である。テープ積層は、機械を用いて、または手作業で行うことができる。
【0031】
1つの形態のテープは、繊維の幅及び配列を維持する剥離紙を含み、そして剥離紙は、接着中に剥がされる。別の形態のテープは、布地に織り込んだ複数の個々の繊維を含む。スリットテープは、製造された後にスリットを入れているテープである;テープにスリットを入れると、幅が狭くなり、これにより、接着時の制御性を高めることができる。本開示において使用されるように、かつ特に断らない限り、「tape」という用語は、テープ、剥離紙付きテープ、スリットテープ、及び複合材構造を製造する際に使用されるテープ状の全ての他の種類の複合材料を含む。本開示において使用されるように、かつ特に断らない限り、「composite material」という用語は、織物、濡れた状態の複合材織物、乾燥状態の複合材織物、テープ、個々のフィラメント、及び他の一方向及び多方向の予備含浸された、及び予備含浸されていない複合材料、及びこれらの材料の組み合わせを含む。
【0032】
積層後、複合材構造部材200,300を硬化させる。この技術分野の当業者であれば理解できることであるが、硬化処理では、複合材構造部材200,300を、圧力パッドを用いて、または圧力パッドを用いずに、真空中に収容し、そして圧力を加えて、複合材構造部材200,300を脱気する。その後、複合材構造部材200,300をオートクレーブ中で、標準の350°F硬化サイクルを用いて硬化させることができる。複合材構造部材200,300の種々の実施形態では、材料組成、厚さなどのような種々の要素によって異なるが、他の硬化サイクルを用いることができる。複合材構造部材200,300を部分的に硬化させて(通常、「B−Staging(B−ステージング)」と表記される)、これらの複合材構造部材を安定させ易くして、より大型のアセンブリに組み込むことができる。次に、Bステージ硬化させた複合材構造部材200,300をアセンブリの残りの部分と一緒に、完全に硬化させることができる。
【0033】
従来の乗客輸送航空機または貨物輸送航空機は普通、キール付近が補強され、このキールは通常、胴体に対して前後方向に配置され、かつ胴体フレームまたは外板アセンブリの内部または外部に取り付けられる。次に、図4Aを参照するに、単一の一体成形胴体キール400の形態の複合材構造部材200,300を取り付ける様子が図示されている。単一の一体成形胴体キール400は、小型航空機から中型航空機に適用することができる。図4Aは、図1に示す中央胴体バレル100のラインA−Aに沿って切断したときの断面図を示している。図示の単一の一体成形胴体キール400は、中央胴体バレルセクション404及び炭素繊維強化貼着プライ群406と共硬化し、そして中央胴体バレルセクション404及び炭素繊維強化貼着プライ群406に共接合されるホウ素複合材構造部材402(複合材構造部材200,300を含む)を含む。
【0034】
組み付け、及び取り付けでは、単一の一体成形胴体キール400は、航空機胴体の前後軸に略平行に向け、そして翼及び/又は脚格納室の隣接切欠き部を設ける箇所のような、航空機胴体を構造的に補強する必要のある箇所に配置される。図示のホウ素複合材構造部材402は更に、胴体下側ローブ状ストリンガ(fuselarge lower lobe stringers:図示せず)に位置合わせされ、かつストリンガと同一直線上に配置される。このようにして、ホウ素繊維強化プライ202,302、炭素繊維204a〜204c、304a〜304c、及び内部ホウ素繊維強化プライ206a〜206d、306a〜306jのうちの多数、または幾つかは、複合材構造部材402の向きから変化し、そして中央胴体バレル100と、例えば共硬化し、そしてこれらには限定されないが、ストリンガ及び/又は外板のような構造に共接合する、または機械的に接続することにより取り付ける、または固く固定することができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、単一の一体成形胴体キール400は、切欠き部の長さの略全体に亘って延在し、そして次に、傾斜して中央胴体バレル100に取り付けられる。幾つかの実施形態では、単一の一体成形胴体キール400は、傾斜して中央胴体バレル100にキールの端部で取り付けられる前に、切欠き部の機体前方側に延出することができる。他の実施形態では、単一の一体成形胴体キール400は、傾斜して中央胴体バレル100にキールの端部で取り付けられる前に、切欠き部の機体後方側に延出することができる。更に他の実施形態では、単一の一体成形胴体キール400は、傾斜して中央胴体バレル100に取り付けられる前に、切欠き部の機体前方側及び機体後方側の両方に延出することができる。幾つかの実施形態では、単一の一体成形胴体キール400は、中央胴体バレル100よりも長いので、胴体キール400は、第1端部または第2端部を越えて延出する、または傾斜する。
【0036】
単一の一体成形胴体キール400は、中央胴体バレルセクション404の機内側に、または機外側に、炭素繊維強化貼着プライ406を介して取り付けられる。これらの炭素繊維強化貼着プライ406は層状に配置され、幾つかの貼着プライ406はホウ素複合材構造部材402に略直交し、そして幾つかの貼着プライ406はホウ素複合材構造部材402に略対角になっている。炭素繊維強化貼着プライ406は、ホウ素複合材構造部材402及び中央胴体バレルセクション404と一緒に硬化させ、そしてホウ素複合材構造部材402及び中央胴体バレルセクション404に接合させる、またはホウ素複合材構造部材402及び中央胴体バレルセクション404と共硬化し、そしてホウ素複合材構造部材402及び中央胴体バレルセクション404に共接合して、単一の一体成形胴体キール400を形成する。このようにして、ホウ素複合材構造部材402を中央胴体バレルセクション404に取り付ける、または固く固定することができる。
【0037】
組み付け、及び取り付けでは、ホウ素複合材構造部材402の組み付けは、中央胴体バレルセクション404の配置と同時に行うことができる、または別の構成として、個別プロセスとして行なうことができる。ホウ素複合材構造部材402を組み付けた後、ホウ素複合材構造部材402を部分的に硬化させる、またはBステージ硬化させることができる。これにより、積層体を安定させ易くすることができ、そして次の組み立て時のハンドリング性を向上させることができる。次に、ホウ素複合材構造部材402を中央胴体バレルセクション404に組み込む状態になる。
【0038】
中央胴体バレルセクション404を組み立て、そして或る量の炭素繊維強化プラスチック(CRFP)を中央胴体バレルセクション404の上に配置して、ホウ素複合材構造部材402のベースとした後、ホウ素複合材構造部材402を搬送し、そして中央胴体バレルセクション404の上に配置する。組み付け時、フィルム接着剤を塗布して、ホウ素複合材構造部材402を安定させ、そして中央胴体バレルセクション404に、または中央胴体バレルセクション404内に保持する。次に、更に別の炭素繊維強化貼着プライ406を、ホウ素複合材構造部材402の上に配置して、ホウ素複合材構造部材402を中央胴体バレルセクション404に、または中央胴体バレルセクション404内に封止する。図示の実施形態では、十分な数の炭素繊維強化貼着プライ群406を取り付けて、ホウ素複合材構造部材402を取り囲む完全擬似等方性(full quasi−isotropic)の積層体を形成する。ホウ素複合材構造部材402及び炭素繊維強化貼着プライ群406の順番は、中央胴体バレルセクション404組み立ての残りの部分と調整することができる。その後、ホウ素複合材構造部材402及び炭素繊維強化貼着プライ群406が取り付けられた中央胴体バレルセクション404を真空バッグ処理し、そして硬化させることにより、ホウ素複合材構造部材402の硬化を完了させ、そして炭素繊維強化貼着プライ群406を硬化させ、そして中央胴体バレルセクション404に接合させることができる。
【0039】
単一の一体成形胴体キール400の利点として、従来のアルミニウムキールと比較して、剛性がサイズに対して高いこと、耐圧縮荷重性が高いこと、周方向スプライスを無くすことができること、及びキールスプライス部品を無くすことができることを挙げることができる。単一の一体成形胴体キール400の更に別の利点として、複合材料により形成され、かつ翼及び/又は脚格納室を収納するための切欠き部のような大きな切欠き部により強度が低下しているモノコック中央胴体バレルを強化することができることを挙げることができる。
【0040】
図4Bは更に、2重一体成形胴体キール410の形態の複合材構造部材200,300を取り付ける様子を示している。2重一体成形胴体キール410は、中型航空機から大型航空機に適用することができる。図示の2重一体成形胴体キール410は、中央胴体バレルセクション414及び炭素繊維強化貼着プライ群416に共接合される2つのホウ素複合材構造部材412(複合材構造部材(群)200,300を含む)を含む。更に図示されているのは、キールウェブ(keel web)418の配置である。2重一体成形胴体キール410の組み付け、または取り付けは、上に説明した単一の一体成形胴体キール400と同様である。
【0041】
2重一体成形胴体キール410の利点として、従来のアルミニウムキールと比較して、剛性がサイズに対して高いこと、耐圧縮荷重性が高いこと、周方向スプライスを無くすことができること、及びキールスプライス部品を無くすことができることを挙げることができる。2重一体成形胴体キール410の更に別の利点として、複合材料により形成され、かつ翼及び/又は脚格納室を収納するための切欠き部のような大きな切欠き部により強度が低下しているモノコック中央胴体バレルを強化することができることを挙げることができる。2重一体成形胴体キール410は更に、仮に複合材構造部材412が損傷する、またはそれ以外に、破壊されるとした場合に、フェイルセーフ対策を実現する。
【0042】
図4Cに示すように、3重一体成形胴体キール420の形態の複合材構造部材200,300を取り付ける様子が図示されている。3重一体成形胴体キール420は、大型航空機からジャンボ航空機に適用することができる。図示の3重一体成形胴体キール420は、中央胴体バレルセクション424及び炭素繊維強化貼着プライ群426に共接合される3つのホウ素複合材構造部材422(複合材構造部材(群)200,300を含む)を含む。3重一体成形胴体キール420の組み付け、または取り付けは、上に説明した単一の一体成形胴体キール400と同様である。@
【0043】
3重一体成形胴体キール420の利点として、従来のアルミニウムキールと比較して、サイズに関する剛性が高い、耐圧縮荷重性能が高いが高い、周方向スプライスを無くすことができること、及びキールスプライス部品を無くすことができることを挙げることができる。3重一体成形胴体キール420の更に別の利点として、複合材料により形成され、かつ翼及び/又は貨物ドア警告ランプを収納するための切欠き部のような大きな切欠き部により強度が低下しているモノコック中央胴体バレルを強化することができることを挙げることができる。3重一体成形胴体キール420は更に、仮に複合材構造部材422が損傷する、またはそれ以外に、破壊されるとした場合に、フェイルセーフ対策を実現する。
【0044】
別の実施形態では、ホウ素複合材構造部材402,412,422は、局所的な高効率強化または補強を必要とする何れかのタイプまたは種類の可動船体または船舶に取り付けることができる。他の実施形態は、高効率強化または補強を広大な領域に亘って必要とする何れかのタイプまたは種類の静止構造に取り付けられる複数のホウ素複合材構造部材を含むことができる。幾つかの実施形態では、ホウ素複合材構造部材402,412,422は、複合材料または複合材テープを含む炭素繊維強化貼着プライ406,416,426と一緒に取り付けることができ、そして所定の箇所に共硬化させ、そして共接合させることができる。或る別の実施形態では、ホウ素複合材構造部材402,412,422は、何れかのタイプまたは種類の公知の機械ファスナーを用いて取り付けることができる。例えば、ホウ素複合材構造部材402,412,422の設計形状部は、炭素繊維強化プライ206a〜206dを、ホウ素複合材構造部材402,412,422の側部または端部に沿って含むフランジ110を含むことができる。このフランジ110は、ボルトを螺合するときに挿通するスリーブを含む構造となって、ホウ素複合材構造部材402,412,422を取り付ける、または固く固定することができる。このようにして、ホウ素複合材構造部材402,412,422を中央胴体バレル100に取り付ける、または固く固定することにより、機械的に取り付けられるキールを構成することができる。別の実施形態では、アンカーボルトのような機械取り付け手段は、フランジ110及び/又はホウ素複合材構造部材402,412,422に一体化することができ、そして次に、中央胴体バレル100に取り付けることにより、機械的に取り付けられるキールを構成することができる。別の実施形態は、本明細書において記載される実施形態などの組み合わせを含む。
【0045】
ホウ素複合材構造部材402,412,422を有するシングル、ダブル、またはトリプルキール400,410,420の利点として、複合材料により形成され、かつ翼及び/又は主脚格納室を収納するための大きな切欠き部を含むモノコック中央胴体バレルを組み立てることができること、及び大型及びジャンボ航空機の翼に通常隣接する環状ジョイントを無くすことができることを挙げることができる。或る複合材モノコックバレル形態における別の利点として、機械的に取り付ける部品群及び環状ジョイントを無くすことができることを挙げることができる。
【0046】
次に、図5を参照しながら、ホウ素強化キールを備える航空機胴体を組み立てる例示的な方法の例示的なルーチン500について次に説明する。図5に示し、かつここで説明される操作よりも多くの、または少ない操作を実行することができることを理解されたい。更に、これらの操作は、ここに説明される順番とは異なる順番で実行することもできる。
【0047】
ルーチン500は、操作502から始まり、この操作502では、中央胴体セクションを形成する。中央胴体セクションは、複合材料により形成される未硬化中央胴体バレル100とすることができる。通常、未硬化中央胴体バレル100は胴体組み立てラインの積層ステーションの後のステーションにおいて形成される。未硬化中央胴体バレル100は、積層の中間段階で形成することもでき、この場合、積層は、後の方の段階で完了する。他の実施形態では、中央胴体バレル100は硬化後の単一胴体バレルセクションである。通常、硬化後の中央胴体セクションは、胴体組み立てラインの硬化ステーションの後のステーションにおいて形成される。別の実施形態では、この操作において、他の胴体セクション群または胴体部品群、或いは胴体パネル群などを形成する。
【0048】
ルーチン500は、操作502から操作504に進み、操作504では、キールの形態のホウ素複合材構造部材402,412,422を形成する。ホウ素複合材構造部材402,412,422は、硬化させることができる、未硬化状態とすることができる、または部分的に硬化させることができる。この操作では、中央胴体セクションの長さと同じ長さのホウ素複合材構造部材402,412,422を形成することができる。幾つかの実施形態では、この操作において、中央胴体セクションの長さよりも短く、かつ傾斜して主胴体モノコックに入り込むホウ素複合材構造部材402,412,422を形成することができる。別の実施形態では、この操作において、中央胴体セクションの長さよりも長いホウ素複合材構造部材402,412,422を形成することができる。
【0049】
ルーチン500は、操作504から操作506に進み、操作506では、ホウ素複合材構造部材402,412,422を中央胴体セクションに固く固定して、単一、2重、または3重一体成形胴体キール400,410,420を構成する。幾つかの実施形態では、この操作において、炭素繊維強化貼着プライ406,416,426を中央胴体バレルセクション404,414,424に、そしてホウ素複合材構造部材402,412,422に接着させる。更に別の炭素繊維強化貼着プライ406,416,426を複合材構造部材402,412,422の周りに、そして中央胴体セクションに配置して、胴体接合アセンブリを完成させることもできる。別の実施形態では、この操作において、何れかの数のホウ素複合材構造部材402,412,422を中央胴体バレルセクション404,414,424に機械的に固く固定して、何れかのサイズまたは構造のキールを構成する。
【0050】
ルーチン500は、操作506から操作508に進み、操作508では、単一、2重、または3重一体成形キール400,410,420、及び中央胴体バレルセクション404,414,424を硬化させる。この操作では、中央胴体バレル100、ホウ素複合材構造部材402,412,422、及び炭素繊維強化貼着プライ406,416,426を同時に硬化させることができる。別の実施形態では、この操作において、中央胴体バレルセクション404,414,424、及びホウ素複合材構造部材402,412,422の何れかを、または両方を個別に硬化させ、そして次に、炭素繊維強化貼着プライ406,416,426を硬化させることができる。
【0051】
ルーチン500は、操作508から操作510に進み、操作510では、第2胴体セクションを形成する。この操作では、胴体バレル、または胴体部品、或いは胴体パネルなどの形態の第2胴体セクションを形成する。ルーチン500は、操作510から操作512に進み、操作512では、キールの第1端部を第2胴体セクションに固く固定する。この操作では、中央胴体バレル100を第2胴体セクションに、例えば雄雌嵌合して取り付けられるように構成される胴体バレル群の周方向ジョイントをスプライス接続して合体させることにより取り付けることができる。
【0052】
ルーチン500は、操作512から操作514に進み、操作514では、第3胴体セクションを形成する。この操作では、胴体バレル、または胴体部品、或いは胴体パネルなどの形態の第3胴体セクションを形成する。ルーチン500は、操作514から操作516に進み、操作516では、キールの第2端部を第3胴体セクションに固く固定する。この操作では、中央胴体バレル100を第2胴体セクションに、例えば雄雌嵌合して取り付けられるように構成される胴体バレル群の周方向ジョイントをスプライス接続して合体させることにより取り付けることができる。キールを胴体に操作506または操作508、或いは操作510において取り付けた後、ルーチン500は操作518で終了する。
【0053】
航空機胴体を組み立てる別の実施形態では、ホウ素複合材構造部材402,412,422を中央胴体バレルセクション404,414,424に機械的に取り付ける。更に別の実施形態は、キールの形態ではないホウ素複合材構造部材を含む。例えば、構造部材群は、ドア開口部の周りに取り付けられるように、周方向ジョイント群に跨って設けられるように、大きく曲がる、または屈曲する領域を強化するように、死荷重を支え、そして分散させるように、かつ設計基準の要求通りに構成することができる。
【0054】
ホウ素強化キールを備える航空機胴体の利点として、アルミニウムキールを構成する操作、及びアルミニウムキールを胴体に機械的に取り付ける操作を同時に行なうよりも製造が複雑ではないことを挙げることができる。別の利点として、ホウ素強化キールが、同じ荷重に耐えるように設計されるアルミニウムキールよりも小さく、かつ軽量であることを挙げることができる。
【0055】
本開示の原理を利用して、前後軸を有する航空機胴体を含む実施形態が開示されている。胴体は、中央胴体セクションを含み、この中央胴体セクションは前後軸に略平行に向き、第1端部及び反対側の第2端部と、そして第1端部から第2端部に延設される繊維強化外板と、を有する。1つの変形例では、ホウ素強化コア及び繊維強化ケーシングを含むキールを利用し、このキールは、前後軸に略平行に向き、そして第1端部及び第2端部のうちの少なくとも一方の手前で終端する。別の変形例では、胴体は更に、複数の対角強化繊維プライ群を含み、これらの対角強化繊維プライは、前後軸に対して略対角方向に向き、キール及び繊維強化外板に接合される。更に別の変形例では、複数の直交強化繊維プライ群は前後軸に対して略直交方向に向き、キール及び繊維強化外板に接合される。更に別の変形例では、キールから延出し、かつ中央胴体セクションに取り付けられるプライ群を利用する。更に別の変形例では、第2セクションは、中央胴体セクションの第1端部に雄雌嵌合して取り付けられる繊維強化外板を含む。更に別の変形例では、複数の強化繊維プライは、キール及び第2セクション繊維強化外板に接合される。更に別の変形例では、繊維強化外板を有する第3セクションを利用することができ、この繊維強化外板は、中央胴体セクションの第2端部に雄雌嵌合して取り付けられる。更に別の変形例では、第3セクションは更に、炭素繊維強化プラスチック外板を含む。更に別の変形例では、複数の強化繊維プライは、キール及び第3セクション繊維強化外板に接合される。
【0056】
上に説明した主題は、例示としてのみ与えられ、そして本発明を限定するものとして捉えられるべきではない。図示され、かつ説明される例示的な実施形態及び応用形態に従うことなく、かつ以下の請求項に説明される本開示の真の思想及び範囲から逸脱しない範囲において、種々の変形及び変更を本明細書において説明される主題に加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略前後方向に向き、構造部材コア(208,308)を画定する複数のホウ素繊維強化プライ(202,302a〜302c,206a〜206d,306a〜306j)と、
ホウ素繊維強化プライ(202,302a〜302c,206a〜206d,306a〜306j)のうちの少なくとも1つのプライに近接し、プライに対して略対角方向に向き、構造部材コア(208,308)を画定する少なくとも1つの対角内部繊維強化プライ(206b,206d)と、
ホウ素繊維強化プライ(202,302a〜302c,206a〜206d,306a〜306j)のうちの少なくとも1つのプライに近接し、プライに対して略直交方向に向き、構造部材コア(208,308)を画定する少なくとも1つの直交内部繊維強化プライ(206b)と、
ホウ素繊維強化プライ(202,302a〜302c,206a〜206d,306a〜306j)のうちの少なくとも1つのプライに近接し、プライに対して略平行に向き、構造部材コア(208,308)を画定する少なくとも1つの平行内部繊維強化プライ(206a)と、
構造部材コア(208,308)を略取り囲み、構造部材ケーシング(212,312)を画定する少なくとも1つの外部繊維強化プライと
を備える、複合材構造部材(108,200,300)。
【請求項2】
更に、ホウ素繊維強化プライ(202,302a〜302c,206a〜206d,306a〜306j)のうちの少なくとも1つのプライに近接し、プライに対して略前後方向に向き、構造部材コア(208,308)を画定する複数の内部炭素繊維強化プライ(204a〜204c,304a〜304c)を備える、請求項1に記載の複合材構造部材(108,200,300)。
【請求項3】
更に、構造部材コア(208,308)及び構造部材ケーシング(212,312)のうちの少なくとも1つから延び、第1フランジ(100,110)を画定するプライを備える、請求項1または2に記載の複合材構造部材(108,200,300)。
【請求項4】
更に、構造部材コア(208,308)及び構造部材ケーシング(212,312)のうちの少なくとも1つから延び、取り付け構造を画定するプライを備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材構造部材(108,200,300)。
【請求項5】
構造部材コア(208,308)及び構造部材ケーシング(212,312)を共硬化して、構造部材コア(208,308)を構造部材ケーシング(212,312)に接合させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材構造部材(108,200,300)。
【請求項6】
更に、航空機胴体内に配置され、航空機胴体に取り付けられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材構造部材(108,200,300)。
【請求項7】
航空機胴体(400,500)を組み立てる方法であって、
第1端部及び第2端部を有する中央胴体セクション(404,414,424,502)を形成するステップと、
ホウ素強化キール(400,410,420,504)を形成するステップと、
ホウ素強化キール(400,410,420,504)を中央胴体セクション(404,414,424,502)に固定して、ホウ素強化キール(400,410,420,504)の第1部分が、中央胴体セクション(404)の第1端部を越えて延出するステップと、
第2胴体セクション(510)を形成するステップと、
ホウ素強化キール(400,410,420,504)の第1部分を第2胴体セクション(510)に固定するステップと、
第2胴体セクション(510)を中央胴体セクション(404,414,424,502)にスプライス接続するステップと
を含む方法。
【請求項8】
更に、中央胴体セクション(404,414,424,502)及びホウ素強化キール(400,410,420,504)を共硬化して、ホウ素強化キール(400,410,420,504)を中央胴体セクション(404,414,424,502)に接合させるステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固定するステップでは更に、ホウ素強化キール(400,410,420,504)を中央胴体セクション(404,414,424,502)に機械的に取り付ける、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
更に、ホウ素強化キール(400,410,420,504)を中央胴体に固定して、ホウ素強化キール(400,410,420,504)の第2部分が、中央胴体セクション(404,414,424,502)の第2端部を越えて延出するステップを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
更に、第3胴体セクション(514)を形成するステップを含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
更に、ホウ素強化キール(400,410,420)の第2部分を第3胴体セクション(514)に固定するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
更に、第3胴体セクション(514)を中央胴体セクション(404,414,424)にスプライス接続するステップを含む、請求項11または12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6413(P2013−6413A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−119156(P2012−119156)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】