説明

ホスホネート接合組成物

本発明は、少なくとも1つのホスホネートまたはホスフィネート部分構造、および芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分構造を含む化合物を提供する。前記化合物を含む接着組成物は、ポリマーとヒドロキシル化表面、例えば、金属および/またはガラスとの接合において有用性が見出され得る。適したポリマーとしては、天然および合成ゴムが挙げられる。芳香族ニトロソ前駆体はニトロソベンゼン前駆体、例えば、キノンジオキシムまたはキノンオキシムの少なくとも1つのようなものであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ホスホネート接合組成物を提供する。特に本発明は、金属またはガラスのような基体にポリマーを接合することにおいて有用なホスホネート接合組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
強化複合材料は、軽量でありながらも激しい荷重および作業条件を受けるのに充分な強度を必要とする高性能製品の製造において、重要な役割を果たす。一般の強化材料は、木材、ガラス、金属、石英および炭素繊維を含有した。そのような材料と共に強化された複合材料は多くの構造用材料、例えば航空宇宙産業部品およびレーシングカーのボディの製造において、有用性が見出され得る。
【0003】
ポリマー対金属、特にゴム対金属の接合は長年実施されてきた。ポリマーまたはゴム対金属の接合を達成する配合物に対する応用は数多く存在する。ゴム対金属の接合は、様々な金属と天然または合成ゴムとの接合に広く利用されており、それによって金属の構造上の強度とゴム弾性とを組み合わせている。
【0004】
従って、金属およびポリマー(例えばゴム)は、衝撃吸収の用途、例えば、ベアリング、車輪、衝撃吸収材、移動アームなどで互いに接合されることが多い。そのような部品は、非常に小さなスケール、例えば、PC部品、または非常に大きなスケール、例えば、建設、例えば、橋梁および建物で使用することができる。また、騒音抑制も金属対ゴムの接合を利用して達成することができる。共に接合された金属およびゴムを含むあらゆる部品が、途方もない力を受けることができると認められている。従って、金属またはゴムを互いに分離させることなく、顕著な力、例えば、衝撃を含む圧縮力または伸長力に耐えることができる金属対ゴム接合を提供することが望ましい。タイヤ用の内部ワイヤー強化材がタイヤのゴムに接合されるタイヤ製造を含めて、他に多くのゴム対金属の接合用途が存在する。先行技術の組成物は、以下で考察される。
【0005】
ガラス繊維強化複合材料は、マトリックスに埋め込まれた高強度ガラス繊維から構成される。例えば、ガラス繊維強化コンクリートは、セメントをベースとするマトリックス中に埋め込まれたガラス繊維を含み、建物および他の大建造物で有用性を見出すことができる。同様に、ガラス強化プラスチックは、プラスチック材料中に埋め込まれたガラス繊維を含む。ガラス強化プラスチックは、組み合わされて軽量材料に高強度性能を提供する非常に多用途の材料である。ガラス強化プラスチックは、構造工学から電気通信まで多くの種々の領域で有用性が見出されている。
【0006】
エラストマー対ガラスの接合は、ガラスの構造強度とエラストマー/ゴムの弾性とを組み合わせることが可能である魅力的な手段を提供する。強化繊維、例えばガラス繊維は、ゴム物品、例えば、ゴムベルト、タイヤおよびホース用の強化材料として使用されてきた。特に、ガラス繊維は、クランク軸から塔頂部のカム軸へ慣性損失なしに力を同期伝達する必要がある自動車タイミングベルトを強化するために採用されてきた。
【0007】
従来、そのようなガラスコード複合材料は、ガラス糸の個々のフィラメントを特別な被膜、例えば、レゾルシノール・ホルムアルデヒド・ラッテクス(「RFL」)配合物で被覆して製造される。次に、従来のゴム対金属の接合製品を用い、加硫ステップを経てRFLラッテクスをゴムに接合する。
【0008】
従来のゴム対金属の接合技術は2ステップシステムを包含し、その第1ステップではプライマーが塗布され、その後の第2ステップでは接着剤が塗布される。プライマーは一般に、反応性基を含有する塩素化ゴムおよびフェノール樹脂の溶液または懸濁液、およびまた、顔料、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラックなどからなる。プライマーは一般に、処理された(洗浄された)金属部品、例えば、処理されたスチール部品、例えば、グリットブラスト仕上げまたは化学的に処理された部品の表面上に薄層として塗布される。
【0009】
接着剤は通常、広範囲のゴム材料および架橋剤からなる。これらは、塩素化および臭素・塩素化ゴム、架橋剤として芳香族ニトロソベンゼン化合物およびビスマレイミド、溶媒としてキシレン、パークロロエチレンおよびエチルベンゼン、ならびにある種の鉛または亜鉛の塩も含むが、これらに限定されない。接着剤層は一般に、下塗りされた金属とゴムとの間を結び付けるものである。ゴム対金属の接合技術で採用されてきた他の架橋剤は、芳香族ニトロソ化合物、例えば、p−ジニトロソベンゼンである。
【0010】
ゴム対金属の接合のための配合物は多く存在する。例えば、シランは腐食防止剤およびゴム対金属の接合接着促進剤として使用されてきた。米国特許出願公開第2009/0181248号公報は、ゴム対金属の接合組成物中で使用するための実質的に加水分解されたシラン溶液、例えば、ビス(トリメトキシプロピル)アミンおよびビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィドを開示している。このアミノシランおよびスルフィドシランは、それぞれ1:3の比でエタノール/水溶液中に配合される。
【0011】
国際特許公開第WO2004/078867号公報(Lord Corporation)は、熱可塑性エラストマーを接合するように設計された、アルコキシシラン/ウレタン付加物および塩素化ポリマーを含有する単層被覆の溶媒系接着剤を記載している。この特許文献に合成方法および配合物が記載されている。米国特許第4,031,120号公報(Lord Corporation)は、ポリイソシアネートと芳香族ニトロソ化合物との組合せでイソシアネート官能基含有有機シランを含む組成物を記載している。得られたシステムは、様々なエラストマー材料を金属および他の基体に接合するための単層被覆の接着剤として記載されている。
【0012】
カナダ特許第1,087,774号公報は、複合ゴム材料の製造で使用するための組成物を記載している。この組成物は、加硫可能なポリマー、個別の芳香族ニトロソ化合物および個別の有機ホスホン酸(およびそれらの部分エステル)を含む1パート組成物を開示している。毒性のあるニトロソベンゼン成分が組成物中で自由に配合されていることは問題である。
【0013】
一般に接合は、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形および、オートクレーブ加熱(例えば、スチームまたは高温の空気による)のような加硫ステップの間に達成されることが望ましい。例えば、半固体状ゴムは鋳型に注入されうる。次いで半固体状ゴムは完全に硬化されたゴムに架橋され、同時に基体との接合が形成される。
【0014】
硬化システムについて一定の要求が望まれる。これらとしては、作業の容易性、安定性(例えば、沈降を防ぐこと)、塗布の容易性、高速乾燥(汚染のない取り扱いを可能にする)、良好な濡れ特性、および良好な硬化強度が挙げられる。硬化は、使用されるエラストマー(ゴム)の種類とは無関係に、およびまた、基体の種類とも無関係に達成されなければならない。あるゴムがブレンド材料であり、そのようなブレンド材料で良好な硬化が達成されることは望ましいことは理解されるであろう。好適には、安定した硬化は、様々な工程パラメータの下で達成される。また、耐久性も望まれる。
【0015】
当該技術分野での最新技術があるにもかかわらず、既知の欠陥の一部または全てを改善する、様々な基体(例えば、金属、ガラス、石英)にポリマー基体を接合するための組成物を提供すること、および/または既存技術に代わる代替物を提供して消費者がより多くの選択の可能性を有することは望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、新規の化合物、その化合物を含む接着組成物、およびポリマー基体に接合する方法を提供する。ポリマーは、ポリマー鎖中にジエンおよび/またはアリル官能基を有するものが適切である。ポリマーは、ポリマー鎖中にアリル官能基を有してもよい。例えば、ポリマーはエラストマー、例えば、天然または合成ゴムであってよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってよい。合成ゴムは、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)であってよい。
【0017】
第1の態様では、本発明は:
(a)少なくとも1つのホスホネート部分構造、または
(b)少なくとも1つのホスフィネート部分構造、および
(c)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分構造
を含む化合物を提供する。
【0018】
本明細書の文脈中では、用語:芳香族ニトロソ部分構造とは、少なくとも1つのニトロソ基を有する芳香族部分構造を意味する。同様に、用語:芳香族ニトロソ前駆体部分構造とは、少なくとも1つのニトロソ基を有する芳香族ニトロソ部分構造へと変換できる任意の化合物を意味する。用語:芳香族は、縮合および非縮合芳香族環の両方を含む。例えば、本発明に包含される縮合および非縮合芳香族ニトロソ部分構造の選択としては以下に例示されるが、これらに限定されない:
【0019】
【化1】

【0020】
当業者によって理解されるように、上で開示されたニトロソ構造は、例えば、C〜C20のアルキル、C〜C20のシクロアルキル、C〜C20のアルコキシ、C〜C20のアラルキル、C〜C20のアルカリル、C〜C20のアリールアミン、C〜C20のアリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せの少なくとも1つで任意に1回以上置換されていてもよい。そのような置換基は、組成物の有効な接合または硬化を阻害しないという条件で可能である。
【0021】
芳香族ニトロソ前駆体部分構造は、任意の芳香族オキシム、芳香族ジオキシムおよびそれらの組合せを含んでもよい。例えば、芳香族ニトロソ前駆体部分構造は:
【0022】
【化2】

から選択される化合物のモノ−またはジオキシムであってよい。
【0023】
当業者によって理解されるように、上で開示されたジケトン構造は、例えば、C〜C20のアルキル、C〜C20のシクロアルキル、C〜C20のアルコキシ、C〜C20のアラルキル、C〜C20のアルカリル、C〜C20のアリールアミン、C〜C20のアリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せの少なくとも1つで任意に1回以上置換されてよい。そのような置換基は、組成物の有効な接合または硬化を阻害しないという条件で可能である。例えば、イン−サイチュでの芳香族ニトロソ化合物の生成を阻害しない、という条件である。
【0024】
芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分構造は、ニトロソベンゼンまたはニトロソベンゼン前駆体およびそれらの組合せから選択されてよい。ニトロソベンゼン部分構造は、モノニトロソベンゼンまたはジニトロソベンゼンであってよい。ニトロソベンゼン前駆体は、モノニトロソベンゼン前駆体またはジニトロソベンゼン前駆体であってよい。ニトロソベンゼン前駆体は、イン−サイチュでニトロソベンゼン構造を形成してよいことが理解されよう。ニトロソベンゼン前駆体は、キノンジオキシムまたはキノンオキシムの少なくとも1つであってよい。
【0025】
当業者によって理解されるように、ニトロソベンゼンおよびニトロソベンゼン前駆体部分構造の参照としては、C〜C20のアルキル、C〜C20のシクロアルキル、C〜C20のアルコキシ、C〜C20のアラルキル、C〜C20のアルカリル、C〜C20のアリールアミン、C〜C20のアリールニトロソ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せの少なくとも1つで任意に1回以上置換されてもよいニトロソベンゼンおよびニトロソベンゼン前駆体部分構造が挙げられる。そのような置換基は、組成物の有効な接合または硬化を阻害しないという条件で可能である。例えば、イン−サイチュでのニトロソベンゼン部分の生成を阻害しない、という条件である。
【0026】
そのような構造は、ポリマー基体、例えば、エラストマー基体への望ましい接合を形成するのに役立つことができる。
【0027】
ホスホネート部分構造は、構造:
【0028】
【化3】

で表されるものであってよく、構造中、
およびRは同じであるか、または異なっており、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルから選択される。RおよびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、C〜Cのアルキルから選択されてよい。
【0029】
ホスフィネート部分構造は、構造:
【0030】
【化4】

であってよく、構造中、
は、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルから選択され;
は、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルから選択され;
およびRは、C〜Cのアルキルから選択されてよい。
【0031】
上の構造の各々において、波状の線は、芳香族ニトロソ、芳香族ニトロソ前駆体またはそれらの組合せを含む部分構造への連結を示す。
【0032】
本発明の化合物は、一般構造:
【0033】
【化5】

によって表されるものに包含されてよく、構造中、
Xは、C、O、N、またはSであってよく;
nは、0〜20であってよく;
は、C〜C24のアルキル、C〜C24のアシルまたはORであってよく;
およびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルから選択され;
は、ニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分構造であってよい。
【0034】
、RおよびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、C〜Cのアルキルから選択されてよい。nは、0〜5であってよい。nは、1〜4であってよい。Rは、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含む部分構造であってよい。Xは、C、OまたはNであってよい。Xは、CまたはOであってよい。Xは、Cであってよい。Xは、Oであってよい。
【0035】
に対する構造は:
【0036】
【化6】

から選択されてよく(Xによる連結を示す)、構造中、
は、C〜C10のアルキルであってよく;
Zは、上の構造の環が任意に、C〜C20のアルキル、C〜C20のシクロアルキル、C〜C20のアルコキシ、C〜C20のアラルキル、C〜C20のアリールアミン、C〜C20のアリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せからなる群でモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ置換されていてよく、さらにここで前記置換基は、環の各々の炭素原子上で同じであってよく、または異なっていてよい。そのような置換基は、組成物の有効な接合または硬化を阻害しないという条件で可能である。例えば、イン−サイチュでのニトロソベンゼン化合物の生成を妨害しない、という条件である。
【0037】
本発明の化合物は、一般構造:
【0038】
【化7】

で表されるものであってよく、構造中、
は、C〜C24のアルキル、C〜C24のアシルまたはORであってよく;
およびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルから選択される。R、RおよびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、C〜Cのアルキルから選択されてよい。
【0039】
本発明の化合物は、下記の一般構造:
【0040】
【化8】

で表されるものであってよく、構造中、
は、C〜C24のアルキル、C〜C24のアシルまたはORであってよく;
およびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルから選択される。R、RおよびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、C〜Cのアルキルから選択されてよい。
【0041】
本発明は、本発明の化合物のポリマーまたはコポリマーを提供する。1つの実施形態では、本発明はさらに:
(a)少なくとも1つのホスホネート部分構造、
(b)少なくとも1つのホスフィネート部分構造、および
(c)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分構造、
を含むオリゴマーまたはコオリゴマーを提供し、ここで、コオリゴマー化合物は異なったモノマーから成る。
【0042】
オリゴマーまたはコオリゴマーは、下記の一般構造式:
【0043】
【化9】

を有するものであってよく、構造中、
mは、1〜100であってよく;nは、0〜20であってよく;pは、1〜10であってよく;qは、0〜50であってよく;q=0の場合、m≧2であり;
およびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、C〜C24のアルキル、C〜C24のアシルまたはORから選択されてよく;
は、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルから選択されてよく;Xは、C、O、N、またはSであってよく;
は、ニトロソ芳香族またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分構造であってよく;
は、アクリレート、アルデヒド、アミノ、無水物、アジド、マレイミド、カルボキシレート、スルホネート、エポキシド、エステル官能性、ハロゲン、ヒドロキシル、イソシアネートまたはブロック化イソシアネート、硫黄官能性、ビニルおよびオレフィン官能性、またはポリマー構造から選択されてよい。
【0044】
、RおよびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、C〜Cのアルキルから選択されてよい。nは、0〜5であってよい。nは、1〜4であってよい。pは、1〜5であってよい。qは、1〜5であってよい。Rは、ニトロソベンゼン、キノンジオキシムまたはキノンオキシムを含む部分構造であってよい。Xは、C、OまたはNであってよい。Xは、CまたはOであってよい。Xは、Cであってよい。Xは、Oであってよい。
【0045】
本発明の化合物は、ポリマー基体に接合する用途において有用性が見出され得る。ポリマーは、ポリマー鎖中にジエンおよびアリル官能基を有するものが適している。ポリマーは、ポリマー鎖中にアリル官能基を有していてもよい。ポリマーはエラストマー、例えば、ゴム(天然または合成ゴム)であってよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってよい。合成ゴムは、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)であってよい。本発明の化合物は、接合表面の接合部分で容易に塗布され、硬化工程の間に強力で耐久性のある接合を生じさせるのに役立つことができる。
【0046】
本発明の化合物は、多くの利点をもたらすことができる。そのように提供される化合物および配合物は、従来のジニトロソベンゼン配合物に比べて低減された毒性を有し得る。さらに、化合物および本発明は、ゴム基体に接合した場合、優れた接合強度を達成できる。
【0047】
本発明の化合物は、上記で定義された通りのポリマー基体を第2の基体に接合するために使用してよい。第2の基体は、金属またはヒドロキシル化表面であってよい。
【0048】
本明細書で用いる場合、用語:ヒドロキシル化表面とは、ヒドロキシ基に結合した原子を含む表面を有する任意の基体を意味する。適した非限定的な例としては、含水金属酸化物、表面Si−OH結合を含むガラス基体、または表面Al−OH結合を含む粘土基体が挙げられる。適したヒドロキシル化表面としては、シリケート、アルミネート、ゲルマネートおよびそれらの組合せの表面が挙げられる。ヒドロキシル化表面は、シリケート、アルミネートまたはそれらの組合せであってよい。本明細書で用いる場合、用語:シリケートとは、Si−OH結合を含む基体を意味する。用語:アルミネートとは、Al−OH結合を有する基体を意味し、用語:ゲルマネートとは、Ge−OH結合を有する基体を意味する。また、本明細書で用いる場合、ヒドロキシル化表面は、ヒドロキシル化材料で下塗りされた基体、例えば、シリケート、アルミネート、ゲルマネートおよびそれらの組合せで下塗りされたものも含む。
【0049】
例えば、ヒドロキシル化表面は、ガラス(例えば、ガラス繊維)、石英、粘土、タルク、ゼオライト、磁器、セラミック、およびシリコン基体(例えば、シリコンウエハー)、およびそれらの組合せであってよい。
【0050】
多くの異なった金属が、本発明の化合物を使用して接合され得る。適した金属としては、亜鉛および亜鉛合金、例えば、亜鉛−ニッケルおよび亜鉛−コバルト合金、亜鉛を含有する被膜を有する金属基体、スチール、特に冷延および炭素スチール、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、例えば真鍮、錫および錫合金(錫を含有する被膜を有する金属基体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明の化合物は、ポリマー対ガラスの接合またはポリマー対金属の接合形成に役立つことができる。ポリマーはエラストマー、例えば、天然または合成ゴムであってよい。合成ゴムはニトリルブタジエンゴムであってよい。合成ゴムはHNBRであってよい。本化合物は、ポリマーとガラスまたは金属基体との間の接合部分で容易に塗布され、硬化工程の間に強力で耐久性のある接合を生じさせるのに役立つことができる。
【0052】
従って、さらなる態様では、本発明は基体を共に接合するための組成物を提供し、この組成物は、
i)本発明の少なくとも1つの化合物を含む。
【0053】
本発明の組成物は、さらに、
ii)本化合物に適したキャリアビヒクルを含んでよい。
【0054】
任意の適したキャリアビヒクルが使用できることが理解されよう。キャリアビヒクルは環境に優しいことが特に望ましい。
【0055】
本発明の組成物は、1パート組成物であってよい。本発明の組成物は、2パート組成物であってよい。そのように記載された組成物は多くの利点をもたらす。例えば、1パート接着剤システムが配合されてよい。そのようなシステムは、便利な従来の技術、例えば、吹き付け塗りまたは浸漬塗りで、単一ステップで容易に基体に塗布される。そのように提供された組成物は、従来のジニトロソベンゼン配合物に比べて低減された毒性を有し得る。本組成物中に配合される遊離の(未結合の)ニトロソベンゼン化合物は存在しない。また、そのように提供される組成物は、ポリマー材料、例えば、エラストマー、例えば、ゴム(天然または合成)との優れた接合強度を達成することができる。
【0056】
本発明の組成物は、イン−サイチュで芳香族ニトロソ部分構造を形成することが望ましい任意の用途で有用性が見出され得る。同様に、本発明の組成物は、イン−サイチュで芳香族ジニトロソ部分構造を形成することが望ましい任意の用途で有用性が見出され得る。これらの組成物中で、本化合物がイン−サイチュで反応して、ニトロソベンゼン部分構造を形成できることが理解されよう。また、本化合物がイン−サイチュで反応してジニトロソベンゼン部分構造を形成できることも意図される。例えば、特に良好な接合のために、本化合物がイン−サイチュで反応してパラ−ニトロソフェノール部分構造を形成することが望ましい場合がある。
【0057】
本発明の化合物(また、ニトロソホスホネートまたはニトロソホスフィネートとも呼ばれる)は、全組成物の1〜20重量%の量で存在してよい。適切には、化合物は1〜15重量%、例えば、4〜12重量%の量で存在してよい。化合物は、全組成物の6重量%の量で存在してよい。
【0058】
本発明の組成物は、任意に1種以上のシランを含んでもよい。これらのシランは一般式:
【0059】
【化10】

で表されるものであってよく、式中、
nは、1または2のいずれかであり;
y=(2−n)であり;
各々のRは、C〜C24のアルキルまたはC〜C24のアシルから選択されてよく、
各々のRは、C〜C30の脂肪族基、置換または非置換のC〜C30の芳香族基から選択されてよく;
は、水素、C〜C10のアルキレン、1つ以上のアミノ基によって任意に置換されたC〜C10のアルキレン、1つ以上のアミノ基によって任意に置換されたC〜C10のアルケニレン、C〜C10のアリーレン、またはC〜C20のアルカリーレンから選択されてよく;
X−Rは、任意であり、Xは:
【0060】
【化11】

のいずれかであり、ここで
各々のRは、水素、C〜C30の脂肪族基、またはC〜C30の芳香族基から選択されてよく;
は、C〜C30の脂肪族基、またはC〜C30の芳香族基から選択されてよく;
上の式中、n=1の場合、RおよびRの少なくとも1つは水素ではない。
【0061】
1つの実施形態では、X−Rが存在する。Rは、C〜C24のアルキルから選択されてよい。Rは、C〜C30の脂肪族基から選択されてよく、Xは、N−Rであってよく、Rは、水素またはC〜C10のアルキレンから選択されてよい。理解されるように、X−Rが存在しない場合、シランは、一般式:
【0062】
【化12】

で表されるものであってよく、ここでRおよびRは、上で定義された通りである。
【0063】
好ましいシランとしては、ビス−シリルシラン、例えば、2つの3置換シリル基を有するものが挙げられる。これらの置換基は個々に、C〜C20のアルコキシ、C〜C30のアリールオキシおよびC〜C30のアシルオキシから選択されてよい。本発明の組成物で使用するのに適したビス−シリルシランとしては:
【0064】
【化13】

が挙げられ、ここで、
各々のRは、C〜C24のアルキルまたはC〜C24のアシルから選択されてよく;
各々のRは、C〜C20の脂肪族基、またはC〜C30の芳香族基からなる群より選択されてよく;
Xは、任意であり:
【0065】
【化14】

のいずれかであり、ここで、
各々のRは、水素、C〜C20の脂肪族基、またはC〜C30の芳香族基から選択されてよく;
は、C〜C20の脂肪族基、またはC〜C30の芳香族基から選択されてよい。
【0066】
1つの実施形態では、Xが存在する。Rは、C〜C24のアルキルから選択されてよく、Rは、C〜C30の脂肪族基から選択されてよく、Xは、N−Rであってよい。理解されるように、Xが存在しない場合、ビス−シランは一般式:
【0067】
【化15】

で表されるものであってよく、ここでRおよびRは、上で定義された通りである。
【0068】
本発明に包含されるいくつかのビス−シリルアミノシランの例としては、ビス−(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびアミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0069】
そのようなシランは、本発明の化合物(すなわち、ニトロソホスホネートまたはニトロソホスフィネート)に対して、(化学量論的に)1:3〜3:1の範囲で含まれてよい。本発明の組成物にシランを付加することによって、ゴム基体に対する優れた接合をもたらすことができる。
【0070】
シランは、全組成物の1〜10重量%の量で存在してよい。適切には、シランは、1〜5重量%、例えば、1〜3重量%の量で存在してよい。シランは、全組成物の約3重量%の量で存在してよい。
【0071】
本発明の化合物は、実質的に本発明の組成物中で加水分解され得る。水を含むキャリアは、少なくとも1つのホスホネートまたはホスフィネート部分構造を含む化合物の加水分解を可能にすることができる。本明細書で用いる場合、本化合物の加水分解は、ホスホネートまたはホスフィネート部分構造のアルコキシ(またはアシルオキシ)基の加水分解、すなわち、任意のアルコキシ部分構造の加水分解によりヒドロキシ部分構造を生じさせることを意味する。本化合物の少なくとも1つのアルコキシ部分構造は、良好な接合を確実にするために加水分解されてよい。有利には、接合の前に本化合物を加水分解することによって、改善された接着力をもたらし得る。接合の前に本化合物を加水分解することによって、改善された接合強度をもたらし得る。接合の前に化合物が加水分解することによって、ポリマー鎖内にジエンおよび/またはアリル基を有するポリマー基体を金属またはヒドロキシル化表面に接合する際に、改善された接合強度をもたらし得る。
【0072】
本発明の組成物のキャリアは、水を0.1〜100重量%の間で含んでいてよい。本発明の組成物のキャリアは、水を0.5〜50重量%の間で含んでいてよい。本発明の組成物のキャリアは、1〜20重量%の間で水を含んでいてよい。適切には、約5重量%の水を含むキャリアは、本発明の化合物を実質的に加水分解することができる。
【0073】
キャリアはさらに、有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒は、水と相溶性があるのが望ましい。このことによって、本発明の化合物を効率的に溶解および加水分解することが可能となる。有機溶媒は、アルコール、カルボン酸、アセトン、アセトニトリル、およびテトラヒドロフランからなる群より選択されてよい。有機溶媒は、アルコールであってよい。適したアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールおよびそれらの異性体、ブタノールおよびそれらの異性体、ならびにペンタノールおよびそれらの異性体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0074】
キャリアは、水およびアルコールから構成されてもよい。アルコール:水キャリアは、本発明の化合物がキャリア中に溶解することを提供し、それにより対象基体にフィルムまたは被膜として化合物の均一な塗布を可能にする。組成物の一部として本化合物を均一に塗布することによって、改善された接合をもたらし得る。
【0075】
本発明の組成物はさらに、酸を含んでもよい。適した酸としては、有機酸が挙げられる。例えば、酢酸、シュウ酸、ギ酸、およびプロピオン酸である。
【0076】
加熱は、本発明の化合物のホスホネート/ホスフィネート部分構造の加水分解に役立つことができる。組成物は、30〜100℃の間の温度に加熱されてよい。適切には、組成物は、40〜60℃の間の温度に加熱されてよい。組成物は、50℃に加熱されてよい。組成物は、1〜2時間の間、加熱されてよい。組成物は、最高2時間まで加熱されてよい。組成物は、対象基体に直接塗布されてよい。組成物は、対象基体に塗布する前に冷却されてよい。
【0077】
本発明の組成物は、さらに、フィラー、顔料、安定剤、湿気捕捉剤など従来の添加物を含んでもよいが、それらの添加物は組成物の効果的な硬化を阻害しない。組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。カーボンブラックは、酸性または塩基性であってよい。組成物は、シリカを含んでもよい。組成物は、ポリビニルブチラール樹脂を含んでもよい。
【0078】
本発明の組成物は、ポリマー基体への接合のための用途で有用性を見出すことができる。ポリマーは、ポリマー鎖中にジエンおよび/またはアリル基を有するものであることが適している。ポリマーは、ポリマー鎖中にアリル基を有するものであってよい。ポリマーは、エラストマー、例えば、ゴム(天然または合成)であってよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってよい。合成ゴムは、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)であってよい。
【0079】
本発明の組成物は、上で定義された通りのポリマー基体を第2の基体に接合するために使用されてよい。第2の基体は、本明細書で定義された通りの金属またはヒドロキシル化表面であってよい。
【0080】
本発明の組成物は、多くの利点をもたらすことができる。そのように提供された化合物および配合物は、従来のジニトロソベンゼン配合物に比べて、遊離または拘束されないニトロソベンゼン化合物が組成物内で配合されていないので、低減された毒性を有し得る。さらに、化合物および本発明は、ゴム基体に接合する場合、優れた接合強度を達成することができる。
【0081】
本発明の硬化性組成物が追加的に、従来の添加物、例えば、フィラー、顔料、安定剤、および湿気捕捉剤を含んでよいことは当業者に理解されると思われるが、ただし、添加物が組成物の効果的な硬化を妨げない、という条件においてである。
【0082】
従来のシステムと対照的に本発明の接着剤システムは、加硫および接合形成の前に非加硫ゴムに塗布されてよく、引き続く加硫によって接合が生じる。これは、接着システムがゴムもしくは金属またはヒドロキシル化表面のいずれかに塗布されてよいことを意味する。従来のシステムでは、この様に塗布された場合、接合が形成されない。本発明の接着剤システムは、加硫および接合形成の前に非加硫ゴム基体(金属またはガラス基体とは異なる)に塗布されてよく、引き続く加硫で接合が生じる。組成物は、金属またはヒドロキシル化表面に塗布されてよい。これは、接着剤システムは、ポリマー基体、例えば、ゴムまたは金属もしくはガラス基体のいずれかに塗布されてよいことを意味する。従来のシステムでは、この様に塗布された場合、接合が形成されない。
【0083】
ゴム基体は、金属またはヒドロキシル化表面に接合される前に加硫または架橋されてよい。ゴム基体は、金属表面へ接合すると同時に加硫または架橋されてよい。
【0084】
さらなる態様では、本発明は、2つの基体を共に接合するための方法に関し、
a)本発明の組成物を少なくとも1つの基体に塗布し、基体を共に合わせて、前記基体間に接合を形成するステップ
を含む。
【0085】
第1の基体は、ポリマーを含んでもよい。ポリマーは、ポリマー鎖内にアルケンおよび/またはアリル基を含んでもよい。例えば、ジエンおよび/またはアリル基が、ポリマー鎖内に存在してよい。適切には、ポリマーは、アリル基を含んでよい。適したポリマーは、エラストマーを含んでもよい。適したエラストマーは、天然または合成ゴムを含んでよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってよい。合成ゴムは、HNBRであってよい。ポリマーは、C〜C1,000,000のポリマー、例えば、C〜C10,000のポリマーであってよい。
【0086】
第2の基体は、本明細書で定義された金属またはヒドロキシル化表面であってよい。第2の基体は、金属であってよい。
【0087】
本発明の方法は、追加的に、
b)本発明の化合物を実質的に加水分解するステップ
を含んでよい。
【0088】
化合物中の少なくとも1つのアルコキシ(またはアシルオキシ)部分構造は、良好な接合を確実にするために加水分解されてよい。当業者に理解されるように、ステップ:a)およびb)の順序は逆であってよい。例えば、生成物は少なくとも1つの基体に塗布され、次いで加水分解されてよく、または生成物は、少なくとも1つの基体に塗布される前に加水分解されてよい。
【0089】
本発明の化合物を実質的に加水分解するステップは、組成物を加熱することで本発明の化合物のホスホネート/ホスフィネート部分構造の加水分解を促進することを含む。組成物は、30〜100℃の間の温度に加熱されてよい。適切には、組成物は、40〜60℃の間の温度に加熱されてよい。組成物は、50℃に加熱されてよい。組成物は、1〜2時間の間加熱されてよい。組成物は、最高2時間まで加熱されてよい。組成物は、対象基体に直接塗布されてよい。組成物は、対象基体に塗布される前に冷却されてよい。
【0090】
本方法は、さらに、第1および第2の基体を合わせることに続いて、加熱ステップを含んでもよい。有利には、加熱によって接合形成の速度を増大することができる。加熱は、接合強度を改善できる。
【0091】
組成物は、薄膜または被膜として対象基体に塗布され得る。これによって、対象基体への組成物の均一な(または平らな)塗布を可能にすることができる。対象基体への組成物の均一な塗布によって、接合の改善を可能にすることができる。
【0092】
本発明の方法は、基体に組成物を塗布する前に、追加的に基体を洗浄するステップ、例えば、研削による基体の洗浄、例えば、基体をブラスティング、例えば、グリットブラスティングするステップを含んでもよい。
【0093】
本発明の方法に従って、第1の基体は、例えば、ポリマーであってよい。ポリマーは、ポリマー鎖中にアルケンおよび/またはアリル基を含んでよい。例えば、ジエンおよび/またはアリル基は、ポリマー鎖中に存在してよい。適切には、ポリマーは、アリル基を含んでよい。適したポリマーは、エラストマーを含んでよい。適したエラストマーは、天然または合成ゴムを含んでよい。合成ゴムは、ニトリルブタジエンゴムであってよい。合成ゴムは、HNBRであってよい。ポリマーは、C〜C1,000,000のポリマー、例えば、C〜C10,000のポリマーであってよい。
【0094】
第2の基体は、本明細書で定義された通りの金属またはヒドロキシル化表面であってよい。第2の基体は、金属であってよい。
【0095】
接合においては、本化合物のホスフィネート/ホスホネート部分構造は、金属の表面またはヒドロキシル化表面に固定される。芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体から選択される部分構造は、一般に、ポリマー、例えば、ゴム材料に固定される。従って、該分子の各末端は官能基化され、そしてその末端は、強力で耐久性のある接合によって材料を共に接合するのに役立つ。
【0096】
すなわち、そのように記載される接着組成物によって被覆された金属は、接着組成物で被覆された金属上に未硬化状態にあるポリマー材料を塗布し、金属上のポリマー材料を硬化して金属にポリマー材料を接合することによって、ポリマー材料、例えば、ゴム組成物に接着されてよい。ゴムポリマー材料の場合、未硬化ゴムは、一定の期間に渡って加熱および圧力によって加硫処理してゴムを硬化してもよく、その結果、ゴム対金属の接合が生じる。
【0097】
適したポリマーは、ニトロソ基と反応することができるものであり、それによってその間に架橋をもたらす。そのような反応によって、例えば、ニトロソ基とゴム材料の間で様々な架橋が生成される。本発明の材料は、ニトロソ基が分子構造内にあるために、遊離するニトロソ基を低減させると考えられる。ニトロソ基とホスホネート/ホスフィネートとの反応では、ニトロソは天然ゴム中でアリル基と反応することができ、一方、ホスホネート/ホスフィネートは、第2の基体、例えば、ヒドロキシル化表面または金属と結合を形成する。
【0098】
ポリマー材料、例えば、エラストマー材料、例えば、ゴム組成物と、金属またはヒドロキシル化表面との間の優れた接着は、その様に記載された通りの化合物および組成物の使用によって実現されうる。
【0099】
さらなる態様では、本発明は、本発明による接着組成物によって共に接合された少なくとも2つの基体の組立品を提供する。
【0100】
なお、さらなる態様では、本発明は、基体および本発明の組成物を含む硬化生成物を提供する。
【0101】
適する場合、本発明の1つの実施形態のすべての任意の特徴は、本発明の別の/他の実施形態(単数または複数)の任意の特徴と組み合わせられ得ることが理解されるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0102】
(発明の詳細な説明)
以下、本明細書で開示された実施例は、一般化された実施例だけを表し、本発明を再現できる他の設定および方法は可能であり、それらは本発明に包含されることが当業者に容易に分かるはずである。
【0103】
本発明の化合物は、下記の合成による変換に従って合成可能であることが予想される。
【0104】
【化16】

【0105】
【化17】

【0106】
本発明の化合物を含む接着剤/接合組成物は、下の表1に説明するように配合することができる。
【0107】
【表1】

【0108】
本発明のニトロソホスホネートまたはニトロソホスフィネート分子を含む接着組成物または接合組成物は、材料(例えば、プラスチックまたは金属)をゴム基体に接合するために使用可能であることを意図する。適したゴム基体としては、下の表2および表3に説明される通りの天然および合成ゴム組成物の両方が挙げられる。
【0109】
ニトロソホスホネートまたはニトロソホスフィネート分子を含む接合組成物は、確実に平らな被覆を行うために、好ましくは基体が洗浄された後に、浸漬塗り、吹き付け塗りまたはブラシをかける方法のいずれかによって(金属)基体に塗布されてよい。
【0110】
未硬化ゴムの層は、次いで接合組成物が配置された基体上に置かれ、ゴムの硬化プロファイルによって特定された時間、標準的な油圧加硫押圧中で硬化され得る。表2に例示される天然ゴム組成物の場合、20〜30トンの圧力下、150℃、20分間でゴムは硬化することで、接合される表面と接着剤との接触は確実に密接になると期待される。
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのホスホネート部分構造、または
(b)少なくとも1つのホスフィネート部分構造、および
(c)芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの部分構造
を含む、化合物。
【請求項2】
前記芳香族ニトロソがニトロソベンゼンであり、前記芳香族ニトロソ前駆体がニトロソベンゼン前駆体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ニトロソベンゼン前駆体が、キノンジオキシムまたはキノンオキシムの少なくとも1つである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記ホスホネート部分構造が、一般構造:
【化1】

(構造中、RおよびRは、同じであるか、または異なっており、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルからなる群より選択される)
で表される、前記請求項の一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記ホスフィネート部分構造が、一般構造:
【化2】

(構造中、Rは、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルからなる群より選択され;Rは、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルからなる群より選択される)
で表される、請求項1〜3に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が、一般式:
【化3】

(式中、
Xは、C、O、N、またはSであってよく;
nは、0〜20であってよく;
は、C〜C24のアルキル、C〜C24のアシル、またはORであってよく;
およびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルからなる群より選択され;
は、ニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分構造であってよい)
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が:
【化4】

(Xによる連結を示す)(式中、
は、C〜C10のアルキルであってよく;
Zは、上記構造の環が任意に、C〜C20のアルキル、C〜C20のシクロアルキル、C〜C20のアルコキシ、C〜C20のアラルキル、C〜C20のアルカリル、C〜C20のアリールアミン、C〜C20のアリールニトロソ、アミノ、ヒドロキシ、ハロゲンおよびそれらの組合せからなる基でモノ−、ジ−、トリ−またはテトラ−置換されていてよいことを示し、さらに、式中、前記置換基は、前記環の各々の炭素原子上で、同じであってよく、または異なっていてよい)
からなる群より選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
一般式:
【化5】

(式中、
は、C〜C24のアルキル、C〜C24のアシルまたはORであってよく;
およびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルからなる群より選択される)
で表される、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物のポリマーまたはコポリマー。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物のオリゴマーまたはコオリゴマー。
【請求項11】
下記の一般式:
【化6】

(式中、
mは、1〜100であってよく;nは、0〜20であってよく;pは、1〜10であってよく;qは、0〜50であってよく;q=0の場合、m≧2であり;
およびRは、同じであってよく、または異なっていてよく、C〜C24のアルキル、C〜C24のアシルまたはORから選択されてよく;
は、H、C〜C24のアルキル、およびC〜C24のアシルからなる群より選択されてよく;Xは、C、O、N、またはSであってよく;
は、ニトロソ芳香族、またはニトロソ芳香族前駆体を含む部分構造であってよく;
は、アクリレート、アルデヒド、アミノ、無水物、アジド、マレイミド、カルボキシレート、スルホネート、エポキシド、エステル官能性、ハロゲン、ヒドロキシル、イソシアネートまたはブロック化イソシアネート、硫黄官能性、ビニルおよびオレフィン官能性、またはポリマー構造からなる群より選択されてよい)
で表される、請求項9に記載のオリゴマーまたはコオリゴマー。
【請求項12】
基体を共に接合するための組成物であって、
i)請求項1に記載の少なくとも1つの化合物
を含む、組成物。
【請求項13】
さらに、
ii)前記化合物のための適したキャリアビヒクル
を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
さらに、シランを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記シランが、アミノシランである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記キャリアビヒクルが、少なくとも0.1重量%の水を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記キャリアが、少なくとも0.1重量%の水および水と相溶可能な有機溶媒を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
a)請求項12に記載の組成物を前記基体の少なくとも1つに塗布して、前記基体を共に合わせて前記基体の間に接合を形成するステップを含む、2つの基体を共に接合するための方法。
【請求項19】
さらに、b)請求項15〜20に記載の組成物の化合物を実質的に加水分解するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物を実質的に加水分解する前記ステップが、30〜100℃の間の温度で前記組成物を加熱するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、前記第1および第2の基体を合わせるステップに続いて加熱するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記基体へ組成物を塗布する前に、前記基体の少なくとも1つを研削によって洗浄するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の基体がポリマーであり、前記第2の基体が金属またはヒドロキシル化表面である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマーが、エラストマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記エラストマーが、天然または合成ゴムである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記部分構造が、芳香族ニトロソまたは芳香族ニトロソ前駆体から選択され、前記ゴムに固定されることになる、請求項31に記載の方法。
【請求項27】
前記ゴム基体が、前記金属またはヒドロキシル化表面に接合される前に加硫または架橋される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ゴムが、前記金属またはヒドロキシル化表面に接合されると同時に加硫または架橋される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
請求項12に記載の接着組成物によって共に接合された、少なくとも2つの基体の組立品。
【請求項30】
基体および請求項12に記載の組成物を含む、硬化生成物。

【公表番号】特表2013−505214(P2013−505214A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529261(P2012−529261)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063575
【国際公開番号】WO2011/032998
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【Fターム(参考)】