説明

ホモ発酵生成物

本発明は、液体飼料の分野に関係し、発酵した飼料生成物、それらを調製するための方法並びにそれらの使用に関する。その上、本発明は、更に、動物の液体飼料及び乳酸菌を使用して液体飼料を調製する方法に関する。特に、(a)液体発酵生成物を準備するステップと、(b)発酵すべき飼料生成物を準備するステップと、(c)ステップ(a)及び(b)による生成物を合わせ、接種材料としてステップ(a)の液体発酵生成物を用いてステップ(b)の飼料生成物を発酵させるステップとを含む発酵混合飼料を調製する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体飼料の分野に関する。より詳しくは、本発明は、発酵した飼料生成物、それらを調製するための方法並びにそれらの使用を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
農業において、飼料はしばしば液体供給システムによって動物に供給される。これはいくつかの問題を引き起こす。潜在的有害細菌及び有機体は、土壌及び植物に自然に存在するものであり、従って、飼料成分及び動物の周りのあらゆる場所に見出される。存在する細菌及びその他の有機体は、例えば殺菌によって防止しない限り、発酵する。その発酵は、例えば、ビブリオ菌種(Vibrio spp.)、カンピロバクター菌種(Campylobacter spp.)、サルモネラ菌種(Salmonella spp.)、大腸菌(E.coli)、黄色ブドウ球菌(Stapholococcus aureus)等の病原菌の成長をもたらす。また、高含量のさまざまなタイプの酵母菌及びカビが存在し得る。液体飼料中のこの制御されない増殖は、動物の病気、栄養失調、下痢、又は死亡さえももたらし得る。また、カンピロバクター菌種(Campylobacter spp.)又はサルモネラ菌種(Salmonella spp.)に感染している動物は、その感染症をヒトに転移する可能性があり、それ故、動物におけるそのような感染症を回避することが望ましい。
【0003】
病原微生物を含む高い微生物圧力(high microbial pressure)のある環境における発酵混合飼料の生産は、非常に挑戦的であり、これまでに多くの試みが失敗している。一般に、スターターカルチャーによる飼料の従来の植菌は、細菌の殺菌操作を含む培養及び増殖ステップを必要とする。これは、一般的な微生物学的技術の訓練を受けておらず、養豚場における従来の給餌用調理場で見出されるような高い微生物圧力の環境に取り囲まれている畜産農家にとっては非常に挑戦的である。
別法の発酵飼料の一部を新しい発酵バッチのための接種材料として使用する「連続式」発酵は、酸耐性酵母菌などの望ましくない微生物の漸増に悩まされる。これらは発酵飼料に対して有害な影響を有することが知られているばかりでなく、それらは特に供給パイプ中から取り除くのが非常に困難なことがある。
【0004】
液体飼料を飼料として使用する場合、上記の問題を回避することは、不可能ではないにしても、非常に困難であることが証明されている。従って乾燥飼料の使用が多くの場合代替の選択である。
【0005】
つい最近まで、抗生物質に基づく成長促進物質が、例えば下痢を防止し、それによって体重増加を増すために(このため「成長促進物質」という)、例えばブタに日常的に提供された。畜産農家による抗生物質に基づく成長促進物質の使用は、EUを含むいくつかの国において禁止された。これは一つには多耐性病原微生物を発生する恐れがあるためである。しかし、抗生物質の使用は停止されておらず、獣医は、多数のブタの治療のために抗生物質を毎日処方している。
【0006】
本発明により、上記の問題が解決された。また、本発明は、非抗生物質の成長促進物質を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の態様において、本発明は、(a)液体発酵生成物を準備するステップと、(b)発酵させる飼料生成物を準備するステップと、(c)ステップ(a)及び(b)による生成物を合わせ、接種材料としてステップ(a)の液体発酵生成物を用いてステップ(b)の飼料生成物を発酵させるステップとを含む発酵混合飼料を調製する方法に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、(a)液体発酵生成物を準備するステップと、(b)発酵すべき飼料生成物を準備するステップと、(c)ステップ(a)及び(b)による生成物を合わせ、接種材料としてステップ(a)の液体発酵生成物を用いてステップ(b)の飼料生成物を発酵させるステップとを含む方法によって提供される発酵混合飼料に関する。
【0009】
本発明の更なる態様は、動物に給餌するための発酵混合飼料の使用であって、前記発酵混合飼料が、(a)液体発酵生成物を準備するステップと、(b)発酵させる飼料生成物を準備するステップと、(c)ステップ(a)及び(b)による生成物を合わせ、接種材料としてステップ(a)の液体発酵生成物を用いてステップ(b)の飼料生成物を発酵させるステップとを含む方法によって提供される、発酵混合試料の使用に関する。
【0010】
本発明の更なる態様は、pHを少なくとも4.2まで24時間以内に低下させるのに十分な乳酸を産生することができる乳酸産生菌により液体生成物を発酵させることによって得ることができる発酵生成物に関する。
【0011】
更なる態様において、本発明は、サイレージ、その調製及び使用に関する。
【0012】
更なる態様において、本発明は、本発明による発酵生成物の直接液体飼料としての使用又は液体飼料を調製するための使用に関する。
【0013】
更なる態様において、本発明は、発酵生成物を調製するための方法及びその成長促進物質としての使用に関する。その方法は、(a)液体生成物を準備するステップと、(b)pHを少なくとも4.2まで24時間以内に低下させるのに十分な乳酸を産生することができる乳酸産生菌を準備するステップと、(c)(a)と(b)とを一緒にするステップと、(d)前記発酵生成物を得るための適当な条件下で発酵が起こることを可能にするステップとを含む。
【0014】
更なる態様において、本発明は、(a)本発明による発酵生成物を準備するステップと、(b)発酵させる飼料生成物を準備するステップと、(c)適当な条件下で発酵が起こることを可能にするステップとを含む液体飼料を調製する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】へテロ発酵プロセスと比較したホモ発酵プロセスを示す図である。
【図2】乳酸産生菌が活性であるpH、及びいくつかの好ましくない細菌が増殖できるpHを示す図である。
【図3】良く制御された自然発酵プロセスのグラフである。
【図4】不十分に制御された自然発酵プロセスのグラフである。
【図5】発酵プロセスが制御されているかいないかによるカダベリン産生(腐敗プロセス)に対する影響を示す図である。
【図6】本発明の1実施形態による発酵生成物又は工業的プロセスからの副産物を含む動物飼料を提供するステップを示すフローダイアグラムである。
【図7】本発明の1実施形態による発酵した液体動物飼料を提供するステップを示すフローダイアグラムである。
【図8】本発明の1実施形態による主成分及びステップを示して説明する図である。
【図9】本発明の別の実施形態による発酵飼料の生産を示す図である。
【図10】本発明の1実施形態による発酵及び混合タンクの配置の模式図である。
【図11】本発明の1実施形態による発酵タンクの配置の模式図である。
【図12】本発明の1実施形態によるいくつかの発酵タンクの配置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
液体飼料の調製は、発酵プロセス又はサイロに貯蔵するプロセスを伴う。一般に、2つのタイプの発酵プロセス、即ち、発酵が、乳酸、酢酸、酪酸、酵母及びエタノールの形成をもたらす「ヘテロ発酵」、並びに発酵が乳酸の形成をもたらす「ホモ発酵」が起こり得る。
【0017】
従って、本発明の目的は、ホモ発酵が主として起こることを確保し、望ましくない細菌、酵母菌、カビ、菌類及び乳酸産生菌の増殖を制御又はこれらを打ち負かすことを確保することによって発酵プロセスを制御することである。
【0018】
異なる酸及び酵母菌は、異なる味を有しており、そのいくつかは動物が好み、そのいくつかは動物が好まない。
【0019】
従って、本発明の更なる目的は、正しい成分が存在し、そのような成分がより高い嗜好性をもたらす適当な比率で存在することを確保することである。
【0020】
本発明による乳酸菌は、乳酸を産生し、発酵の間にpHを少なくとも4.2まで24時間以内に低下させることができる。1実施形態においては、その乳酸産生は、15時間以内に起こるべきである。
【0021】
1実施形態において、そのpHは、3.5から4.2の間、例えば3.8である。
【0022】
1態様において、本発明は、pHを少なくとも4.2まで24時間以内に低下させるのに十分な乳酸を産生することができる乳酸産生菌により液体生成物を発酵させることによって得ることができる発酵生成物に関する。1実施形態において、そのpHは、4.2と3.5の間、例えば3.8などである。別の実施形態において、その望ましいpHは、15時間以内に到達すべきである。
【0023】
本文脈において、用語「発酵」及び「サイロに貯蔵する(ensiling)」は、互換的に使用され、同じ意味を有することを意図している。
【0024】
用語「発酵槽」又は「発酵タンク」は、発酵が起こる容器、タンクなどを示す。普通、発酵槽の内容物を混合するための1つ又は複数の混合装置が備えられる。しかし、発酵又は発酵の一部は、発酵槽の外側、例えば、パイプ、混合タンク、貯蔵タンクなどの中でも起こり得る。
【0025】
用語「タンク」又は「容器」は、互換的であり、(貯蔵)設備を表す。それらは、サイロ型のもの、ビッグバッグ、又は部屋若しくは区切られた区画等の貯蔵施設であり得る。
【0026】
用語「流体生成物」又は「液体生成物」は、互換的に使用され、水分含量が20容量%以上、特に25容量%以上の生成物を表す。本文脈において、「容量%」は、容積パーセントを意味することを意図している。別段の断りのない限り、%は重量%を示す。
【0027】
本発明による発酵に対して適切であるために、生成物は、一般に、20容量%以上、特に25容量%以上の水分含量を有する。本発明の1実施形態において、十分な水含量(即ち、20容量%以上の水含量)は、適切な水含量の混合物をもたらすために、不十分な水含量(即ち、20容量%より少ない水含量)の生成物を、十分な水含量の生成物と混合することによって提供する。更なる実施形態においては、水又は水性流体(a water−based fleid)の添加を組み合わせた異なる水含量の生成物を混合する組合せによって発酵に対して適切な水含量の混合物を提供する。
【0028】
本発明の別の実施形態において、効率的な発酵に対して含水量が低すぎる場合は水を発酵すべき飼料生成物に添加する。場合によって、その水は、処理することができ、化合物及び化学組成物、例えば、塩、ミネラル、ビタミン、緩衝物質、有機又は無機酸などを含むことができる。更に別の実施形態においては、その処理水は、発酵及び/又は動物の体重増加を改善する。
【0029】
本発明による用語「生成物」は、その最も広い意味で理解すべきである。一般に、その生成物は、食物又は飼料に関係する。「生成物」及び「飼料生成物」は、乳業、農業、ワイン産業、蒸留酒産業、又はビール産業或いはそれらの組合せから適切に得ることができる。適当な「生成物」及び「飼料生成物」の例としては、1つ又は複数の成熟した及び/又は未成熟の植物並びにそれらの一部、穀物、例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、コメ、トウモロコシ(軸付きトウモロコシのサイレージ(CCM)又は完熟品)、ライコムギ、カラスムギ;野菜類(例えば、ジャガイモ、マメ、エンドウマメ、トウモロコシ、ダイズ);乳清、凝乳、スキムミルクなどを含む。
【0030】
「副産物」又は「廃棄物」は、低価格又は無料で利用することができる工業的プロセスから派生する殆ど不要な生成物を表現するために用いられる用語である。一般に、それらは動物用の飼料として直接には使用されず、長時間の貯蔵は、分解と制御されない発酵及び損傷とによって問題点であり得る。かような「副産物」及び/又は「廃棄物」の例としては、乳清、(醸造、ワイン又はバイオエタノール産業からの)使用済み穀物、植物又はそれらの一部、ジャガイモ、植物類、酵母、細菌、菌類などを含む。
【0031】
用語「発酵生成物」又は「発酵飼料」は、発酵が完了しているか発酵される過程にある何らかの生成物又は飼料を表す。
【0032】
「液体発酵生成物」とは、発酵生成物が20%を超える水/水分含量を有することを表す。本発明との関連において、それは発酵のための接種材料として用いられる。それは、直接、又は、別の発酵若しくは非発酵の飼料、組成物若しくは生成物との組合せで動物に供給することもできる。
【0033】
「サイレージ」又は「エンシレージ」は、互換的に使用され、動物、普通はウシ及びヒツジのような反芻動物に供給される発酵植物生成物を指す。サイレージは、エンシレージと呼ばれる方法で、発酵され貯蔵される。通常、発酵は、発酵される植物生成物に存在する自然の微生物叢によって起こる。従って、酢酸を含むさまざまな異なる発酵生成物が生じ得る。発酵過程は、数日、数週間、又は1カ月はかかる可能性があり、得られる発酵生成物であるサイレージ又はエンシレージは、何カ月も貯蔵することができる。サイレージは、殆どの場合、トウモロコシ又はモロコシを含むイネ科の作物から調製される。サイレージは、多くの場合、通常根を除くが穀物だけではない植物全体から製造する。一般に、その植物は、多くの場合収穫中に直接切片に切り込む。サイレージは、多くのその他の農作物からも生産することができ、時々カラスムギ及びエンドウマメ等の混合物が使用される。ヘイレージは、イネ科植物、アルファルファ及びアルファルファ/イネ科植物混合物などで構成されているサイロに貯蔵した飼料を表現するために使用される用語である。それは、例えば酪農で給餌するために使用される。ベイレージはサイロでの発酵に代わるサイレージのもう1つの形態である。この場合は、例えば植物又はその一部を、未だかなり湿っておりしばしば梱包して干草として保存するには湿り過ぎている間に、切断して梱包する。乾物はおよそ60〜70%であり得る。その梱包物をプラスチックの包装材料中にきつく包み、その中で発酵させる。
【0034】
用語「発酵混合飼料」は、本発明のプロセスにおける、即ち、接種材料として液体発酵生成物を使用することにより本発明に従って発酵させた飼料生成物を表す。追加成分、例えば、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、非発酵飼料などが更に存在してもよい。
【0035】
本明細書で用いられる用語「動物」は、哺乳類、例えば、ブタ、子ブタ、ウシ、及びウマなど、家禽、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、メンドリ、ガチョウ及びアヒルなど、並びに魚、例えば、サケ及びマスなどを含むことが意図されている。単胃動物、例えば、ヒト、ブタ、ウマ、イヌ、及びネコなどは、単純な単腔の胃を有する。それに対して、反芻する動物即ち反芻動物は、複数腔の複雑な胃を有する。反芻動物は、彼等の食物を、最初に原材料を食べて、食い戻しとして知られる消化半ばの形のものを吐き戻すことと、次にその食い戻しを食べる(咀嚼する)反芻と呼ばれるプロセスの2段階で消化する。反芻動物としては、例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、シカなどが挙げられる。
【0036】
用語「成長促進物質」は、動物にその成長又は体重増加を改善するために与える化合物又は生成物を表す。これは、獣医により処方されるか又は畜産農家によって予防的に加えられる飼料への抗生物質の添加を含む。一方で、本発明により提供される発酵混合飼料もまた、コントロールと比較して動物の体重増加を増大することができることが示されているので成長促進物質である。
【0037】
一般に、発酵は、適当な温度において相応する量の時間がかかる。その温度は、乳酸産生菌の活性を確保するようなものでなければならず、即ちそれは10℃未満又は50℃を超えてはならない。1実施形態において、その温度は、約30℃であり得る。発酵は少なくともpHが適当な水準、即ち、4.2以下、例えば、3.5又は3.8に到達するまで続けなければならない。つまり、発酵は、最大例えば24時間又は15時間続けなければならない。時には、発酵は、10、9、8、5、6、4、3、又は2時間、或いは1時間、或いはある場合には30分以内で完了し得る。
【0038】
1態様において、本発明は、(a)液体発酵生成物を準備するステップと、(b)発酵される飼料生成物を準備するステップと、(c)ステップ(a)及び(b)による生成物を合わせ、接種材料としてステップ(a)の液体発酵生成物を用いてステップ(b)の飼料生成物を発酵させるステップとを含む、発酵混合飼料を調製する方法に関する。本発明の1実施形態において、その発酵混合飼料は、4.2より低いpHを有する。別の実施形態において、そのpHは、4.2と3.5の間である。更なる実施形態において、その発酵混合飼料のpHは、3.8前後である。
【0039】
乳酸菌は、発酵可能な炭素源の発酵の間乳酸を産生し、それが周囲の酸性化をもたらす。使用される1つ又は複数のスターターカルチャー、並びに発酵可能な糖の利用可能性に応じて、発酵混合飼料は本発明によって提供され、前記発酵飼料は50mMを超える乳酸濃度を有する。別の実施形態において、乳酸濃度は100mMを超える。更なる実施形態において、乳酸濃度は、150mM又は200mMを超える。更に別の実施形態においては、250mMを超え又は300mMを超える乳酸濃度が発酵生成物中に与えられる。
【0040】
本発明に従う発酵のための接種材料として使用される液体発酵生成物、副産物又は廃棄物中の乳酸濃度は、該発酵混合飼料中の乳酸濃度より高くすることができる。本発明の別の実施形態においては、該発酵混合飼料中の乳酸濃度は、液体発酵(副)生成物中より高い。更なる実施形態において、接種材料及び発酵生成物の乳酸濃度はほぼ同じである。
【0041】
同様に、接種材料及び発酵(混合)生成物のpHは、同じか、似ているか又は異なり得る。本発明の1実施形態において、接種材料として使用される液体発酵生成物のpHは、4.2より低い。別の実施形態において、そのpHは、4.2と3.5の間である。更なる実施形態においてそのpHは、3.8前後である。
【0042】
本発明によれば、発酵混合飼料は、1日以内、又は12〜24時間以内に生産することができる。別の実施形態において、該発酵生成物は、8〜12時間、又は6〜8時間の間に生産することができる。更なる実施形態において、該発酵は、4〜6時間の間、又は4時間未満で成し遂げられる。
【0043】
本発明の別の態様において、発酵は、より遅い可能性があり、1日以上、数日、1週間、数週間、1カ月、又は数カ月かかることがあり得る。発酵は、活性な乳酸菌を含む接種材料として発酵液体生成物又は混合発酵飼料を加えることによって制御することができる。接種材料の発酵される飼料生成物に対する割合は、0.1〜10容量%、又は0.5〜5容量%の範囲、又は1〜2容量%前後であり得る。発酵プロセスは、閉じたサイロ中で起こり得る。本発明の別の実施形態においては、発酵は、プラスチックの包装材料中にきつく包み込んだ梱包中で起こる。本発明の1つの特定的実施形態において、エンシレージは、発酵したCCMトウモロコシに基づく。得られたエンシレージは、単胃動物に給餌するために使用することができる。更なる実施形態において、CCMトウモロコシのサイレージは、ブタに給餌するのに適している。更に別の実施形態において、CCMトウモロコシのサイレージは、単胃動物例えばブタなどに給餌するための成長促進物質として使用することができる。CCMトウモロコシに基づくエンシレージは、酢酸が少ない可能性がある。本発明の1実施形態において、酢酸の濃度は、20mM以下、又は15mM以下、又は10mM以下、又は5mM以下である。本発明の更なる実施形態において、乳酸含量は、50mM以上、100mM以上、150mM以上、200mM以上、250mM以上又は300mMより上である。
【0044】
本発明による発酵は、さまざまな温度範囲で実施することができる。一般に発酵は、5℃と50℃の間、又は15℃と40℃の間で実施する。本発明の別の実施形態においては、発酵温度は、18℃と30℃の間である。本発明の更なる実施形態においては、発酵は、室温又は室温前後、例えば、20〜25℃、又は22〜24℃或いは23℃前後で行う。本発明の更に別の実施形態においては、温度を追跡して制御するための手段を備える。本発明のなお更なる実施形態においては、発酵ブロスの適切な含水量を提供するために加える水の温度が発酵温度を基本的に制御している。発酵温度は、一定であることができ、又は変動してもよい。
【0045】
本発明に従う適当な発酵槽は、製造業者からの標準的な装置として多くの場合提供される混合手段を備えることができる。一般にそれらは、およそ1〜500rpmで操作される。本発明の1実施形態において、混合スピードは10〜300rpmである。本発明の別の実施形態においては、その混合手段は、20rpmと100rpmの間で操作する。更なる実施形態においては、その混合装置は35rpm前後で操作される。
【0046】
本発明によれば、発酵される生成物は、(活性な)乳酸菌を含む液体発酵生成物と合わせる。この接種材料は、0.1〜99.9容量%、又は1〜99容量%、又は5〜70容量%の範囲で存在させることができる。本発明の別の実施形態において、その接種材料は、0.5〜1、1、1〜5、5、5〜10、10、10〜20、20、20〜30、30、30〜40、40、40〜50又は50容量%前後である。更なる実施形態において、その液体発酵生成物は25〜35容量%を含む。更に別の実施形態において、その接種材料は、30容量%前後含む。
【0047】
本発明によるスターターカルチャーにより提供される発酵プロセスは、本質的にホモ発酵プロセス(図1)である。「本質的にホモ発酵性の」とは、発酵を推進する主要な細菌叢が、ホモ発酵性であることを意味する。1実施形態においては細菌の99%以上がホモ発酵性である。本発明の別の実施形態においては、細菌の95%以上がホモ発酵性である。更に別の実施形態においては、細菌の90%以上がホモ発酵性である。「本質的にホモ発酵性の」とはまた、主たる発酵生成物が乳酸であり、酢酸及びエタノールのレベルが味覚閾値より低いか、味覚閾値付近か、又は味覚閾値よりわずかに上であるかのいずれかであることを表す。或いは、「本質的にホモ発酵性の」とは、乳酸対酢酸又は乳酸対エタノールの比率(mM/mM)が、10:1以上、20:1以上、50:1以上又は100:1以上であることを示す。本発明によれば、両方の発酵共、即ち発酵(副)生成物の発酵も飼料生成物(オオムギ、コムギ、ダイズなど)の発酵も、本質的にホモ発酵性である。本発明の別の実施形態においては、その発酵プロセスはヘテロ発酵プロセスである(図1)。本発明の更なる実施形態においては、そのスターターカルチャーはホモ及びヘテロ発酵性の乳酸菌を含む。本発明の更に別の実施形態においては、そのスターターカルチャーは非乳酸菌の細菌を含む。
【0048】
本発明によれば、発酵は、乳酸産生菌を含む。つまり、最も広範な態様においては、本発明は乳酸産生菌に関することになる。乳酸菌類は、それらの共通の代謝特性及び生理学的特性により関連付けられるグラム陽性、低GC、耐酸性、非胞子形成性、非呼吸性の杆体又は球菌の一群を含む。通常腐敗する植物及び乳製品中に見出されるこれらの細菌は、炭水化物発酵の主要な代謝最終生成物として乳酸を産生する。この特徴は、酸性化が腐敗作用物の増殖を阻止するので、乳酸菌を食品の発酵と歴史的に結び付けている。タンパク質性のバクテリオシンは、いくつかの乳酸菌株によって産生され、腐敗性及び病原性微生物に対する付加的なハードルを与える。その上、乳酸及びその他の代謝産物は、食品の感覚刺激性及び組織構造(textural)の特性に寄与する。乳酸菌の産業上の重要性は、それらが食品中のいたるところに出現すること及びヒト粘膜面の健全なミクロフローラへのそれらの貢献によってそれらが一般に安全と認められた(GRAS)ことで更に証明される。乳酸菌を構成する属は、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)及びストレプトコッカス属(Streptococcus)、アエロコッカス属(Aerococcus)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エノコッカス属(Oenococcus)、テラゲノコッカス属(Teragenococcus)、バゴコッカス属(Vagococcus)、及びワイセラ属(Weisella)であり、これらの属は、ラクトバチルス(Lactobacillales)目に属する。
【0049】
本発明において、発酵に使用される乳酸産生菌は、主に、但し排他的ではなく、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)又はラクトコッカス属(Lactococcus)、或いはそれらの組合せである。本発明によるスターターカルチャー又は接種材料は、エンテロコッカス菌種(Enterococcus spp.)、ラクトバチルス菌種(Lactobacillus spp.)、ラクトコッカス菌種(Lactococcus spp.)、及びペディオコッカス菌種(Pediococcus spp.)の1つ又は複数からなる群から選択される乳酸菌を含むこともできる。本発明の別の実施形態においては、その乳酸菌は、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ペディオコッカスアシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)、及びペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)の1つ又は複数からなる群から選択される。更なる実施形態において、その乳酸産生菌は、ラクトバチルス(Lactobacillales)目のものである。その乳酸産生菌は、また、ラクトバチルス菌種(Lactobacillus spp.)、ペディオコッカス菌種(Pediococcus spp.)、エンテロコッカス菌種(Enterococcus spp.)、及びラクトコッカス菌種(Lactococcus spp.)、或いはそれらの組合せからも選択することができる。更に別の実施形態においては、その乳酸産生菌は、ペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカスアシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)及びラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、並びにエンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)又はそれらの組合せを含む。更に別の実施形態においては、その乳酸菌は、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)及び/又はラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)を含む。更なる実施形態において、その乳酸菌は、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)MCIMB 30122、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)NCIMB 30121、ペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)HTS(LMG P−22549)、ペディオコッカスアシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)NCIMB30086及び/又はラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)LSI(NCIMB30083)の1つ又は複数を含む。
【0050】
本発明の1態様によれば、生成物、副産物又は廃棄物を発酵させる。かかる生成物、副産物又は廃棄物は、飼料及び/又は食品の生産と関係してもしなくてもよいさまざまな産業から得ることができる。適当な産業としては、食品産業、飼料産業、乳業、農業、アルコール製造業、ビール産業、ワイン産業、蒸留酒産業、バイオエタノール産業、食肉加工業、水産業、医薬産業、石油化学産業、医薬産業及び鉱業を含み得る。
【0051】
生成物、副産物又は廃棄物は、例えば、乳清、凝乳、使用済み穀物、酵母、カビ、細菌、成熟又は未成熟のコーン、ジャガイモ又はその一部、又は野菜類を含むことができる。本発明の1態様によれば、発酵すべき生成物は、1つ又は複数の製造規格に合格しそこなった生成物である。
【0052】
本発明による飼料生成物は、穀物(成熟又は未成熟の)、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、トウモロコシ、コメ、マメ、エンドウマメ、モロコシ、ライコムギ及び/又はダイズなどを含むことができる。
【0053】
本発明のもう1つの態様は、上で示した1方法又は複数の方法を用いる発酵混合飼料の提供に関わる。かかる発酵混合飼料は、飼料、例えば穀物類(成熟又は未成熟品)、成熟又は未成熟のオオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、トウモロコシ、コメ、マメ、エンドウマメ、モロコシ、ライコムギ及び/又はダイズなどを発酵させることによって提供することができる。一般に、その発酵すべき飼料は、いくつかの作物の混合物を含む。これらの飼料は、また、給餌する動物、並びにそれらの年齢によって異なる。また、経済上の事項も考慮する。通常の穀物は、メチオニン及びリシン等の必須アミノ酸の十分なレベルに欠ける。ダイズはこれらの必須アミノ酸が豊富であるが、それはより高価でもある。本発明の1実施形態によれば、発酵されるその飼料は、オオムギとコムギの混合物を含む。別の実施形態においては、その混合物は、ダイズ、オオムギ、及びコムギを含む。更なる実施形態においては、その飼料は、トウモロコシとダイズを含む。更に別の実施形態においては、その混合物は、オオムギとエンドウマメを含む。
【0054】
本発明の別の態様は、動物に給餌するための上記のようにして提供される液体発酵飼料の使用に関する。本発明の1実施形態によれば、その動物は、単胃動物である。更なる実施形態によれば、その動物はブタである。
【0055】
本発明の更なる態様は、成長促進物質としての液体発酵飼料の使用に関する。本発明の1態様によれば、その動物はブタである。
【0056】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の発酵生成物の液体飼料としての直接の使用、又は飼料生成物及び液体飼料を調製するための流体などの他の成分との混合物における使用に関する。
【0057】
更に別の態様において、本発明は、
(a)液体生成物を準備するステップと、
(b)pHを少なくとも4.2まで24時間以内に低下させるのに十分な乳酸を産生することができる乳酸産生菌を準備するステップと、
(c)(a)と(b)とを一緒にするステップと、
(d)適当な条件下で発酵が起こることを可能にするステップと
を含む発酵生成物を調製するための方法に関する。
【0058】
かかる方法の1実施形態において、そのpHは、4.2と3.5の間である。別の実施形態においてそのpHは、3.8である。
【0059】
本方法の1実施形態において、該液体生成物は、乳業、農業、ワイン産業、蒸留酒産業、又はビール産業、或いはそれらの組合せから得られる。1実施形態において、該液体生成物は、乳清、トウモロコシ、CCM(軸付きトウモロコシのサイレージ)及び未成熟のコーン、並びにそれらの組合せである。
【0060】
本発明の方法の1実施形態において、該乳酸産生菌は、ラクトバチルス菌種(Lactobacillus spp.)、ペディオコッカス菌種(Pediococcus spp.)、及びラクトコッカス菌種(Lactococci spp.)、並びにそれらの組合せから選択される。
【0061】
本発明の方法の特別な実施形態においては、その方法は別の飼料生成物の添加を含み、発酵が適当な条件下でその後に起こるようにする。
【0062】
更に別の態様において、本発明は、
(a)本発明による液体生成物を準備するステップと、
(b)発酵すべき飼料生成物を準備するステップと、
(c)発酵が適当な条件下で起こることを可能にするステップと
を含む液体飼料を調製する方法に関する。
【0063】
その方法の1実施形態において、該液体生成物は、1容量%以上、例えば、1〜2容量%、又は1〜5容量%の濃度で存在する(又は添加される)。別の実施形態においては、その液体生成物は、5容量%を越えて添加される。本発明の方法の1実施形態において、その飼料生成物は、乳業、農業、ワイン産業、蒸留酒産業、又はビール産業、或いはそれらの組合せから選択される。例は、コーン、トウモロコシ、マメ、ダイズ、それらの混合物などである。
【0064】
本発明は、驚くべきことに、飼料のより良い保存、抗生物質に基づく成長促進物質及び薬剤の必要性の減少をもたらす動物の健康の改善、液体飼料の嗜好性の改善、別のタイプの液体飼料を使用し得る可能性、より安価な飼料及び動物の環境に対する好ましい影響を含む多数の利点をもたらすことが見出されている。
【0065】
本発明に従って、該発酵生成物は動物に(更なる前処理あり又はなしで)直接給餌することができ、或いはそれは液体飼料の更なる発酵のために使用することができる。後者の場合は、該発酵生成物は飼料の全体量に対して1容量%以上を構成すべきである。別の実施形態において、該発酵生成物は、5容量%を構成する。
【0066】
本発明は、当該乳酸産生菌が、病原菌及び乳酸産生菌、酵母菌及びカビを含む細菌の自然発生により起こるであろう自然の発酵に競り勝つ乳酸を十分に速く且つ十分な量で産生することができるはずであるという認識に基づいている。4より低いpHにおいて多くの病原菌は増殖することができないが、当該乳酸産生菌による乳酸の産生が迅速且つ効率的に起こる場合もこれが発生しないことが認められている。また、殆どの酵母菌及びカビは、非常に酸性の条件下で確かに増殖することができるが、当該乳酸産生菌による乳酸の迅速且つ効率的な産生が、かかる酵母菌及びカビの増殖を非常に減少させ、又は排除さえすることが認められている。
【0067】
本発明による発酵生成物は、その発酵が乳酸産生菌の選択によって強く影響されるために、任意のタイプの流動性生成物から調製することができるものと考えられる。同様に、本発明の発酵生成物は、任意の他のタイプの飼料生成物の更なる発酵のために使用することができる。本発明の発酵生成物の有利な特性のお陰で、その更なる発酵は、更に一層高い栄養価及び高いビタミン含量を有する安全でおいしい生成物に導く十分に制御された更なる発酵をもたらす。また、本発明の生成物を動物に給餌することによって、カンピロバクター(Campylobacter)及びサルモネラ(Salmonella)菌種による感染のリスクを減少させることができ、従って、本発明は、ヒトの食品の安全性を増大する。
【0068】
水又は例えば乳清若しくはスキムミルクのようなその他の流体が当該発酵プロセスの間に加えられるとき、それは、緩衝能を有するその水の成分を除去又は少なくとも減少するように有利に処理することができる。特に、カルシウム、亜鉛、マンガン及び/又は鉄の含有量は、減少又は除去することができる。これは、場合によっては、その緩衝能の減少によって、乳酸産生菌による乳酸の効率的な産生を促進するものと考えられる。
【0069】
上で述べたように、病原菌は、動物の周囲の自然の居住者であり、それらは環境中で増殖し、いわゆる「細菌圧力」、又は「微生物圧力」を増大する。両方の表現は、互換的に使用され、任意の微生物、例えば、細菌、酵母菌、カビ、アメーバ、胞子、ファージ、単細胞生物などを含む。本発明によれば、驚くべきことに、本発明の発酵生成物を動物に給餌することによって動物の環境が好ましい方向に修正されることが観察されている。
【0070】
当該発酵は、無菌条件下で開始するのが望ましいときがある。それは、例えば、環境の細菌圧力が高い場合であり得る。
しかし、通常は乳酸産生菌、成長培地及び流体を一緒にして、予め混合した溶液として準備する。このシステムの深刻な欠点は、発酵が既に起こっており、従って周囲の細菌類が予め混合した溶液の乳酸産生菌を殆ど即座に打ち負かす可能性があることである。また、上記の予め混合した溶液は、顧客に届けるのが困難であり、それを届けた後限定された時間内に使用しなければならず、さもなければ、菌培養液は、成長培地を使い切ったときに死滅してしまう。
【0071】
本発明により、発酵の無菌状態の開始に着手することの問題は、解決された。
【0072】
従って、更なる態様において、本発明は、無菌の不活性な乳酸産生菌を有する容器、その乳酸産生菌のための無菌の成長培地を有する容器、及び無菌の流体を有する容器を含む無菌の閉ざされた包装システムに関する。その包装システムの1実施形態において、当該乳酸産生菌は、冷凍乾燥されている。別の実施形態において、当該成長培地は、ビタミン類、マルトデキストリン、及びデキストロースアンヒドロース(anhydrose)を含む。別の実施形態においては、更なる容器を含むことができる。
【0073】
別の更なる態様において、本発明は、
(a)無菌の不活性な乳酸産生菌を有する容器、その乳酸産生菌のための無菌の成長培地を有する容器、及び容器中の無菌の流体を有する容器を含む無菌の閉ざされた包装システムを準備するステップと、
(b)無菌の閉ざされた包装システム内で、菌、成長培地及び流体を互いに接触し、それによって発酵が開始するようにするステップと、
(c)前記無菌の包装システムの内容物を発酵すべき飼料生成物と接触させるステップと
を含む所望の乳酸産生菌によるホモ発酵を開始させる方法に関する。
【0074】
当該方法の1実施形態において、その乳酸産生菌は冷凍乾燥されている。
【0075】
更に別の態様において、本発明は、本明細書に記載のホモ発酵を開始するための無菌の閉ざされた包装システムの使用に関する。
【0076】
本発明の閉ざされた包装システムは、使用場所に届けることができる。その場所で、個々の容器を、開き(例えば、引裂くか、つついて穴を開けるか、1つ又は複数の容器を溶解させるか、バルブを開けるか、融解させるか、又は押圧する)、それらの成分を無菌状態の下で互いに接触するようにさせる。
【0077】
上記方法の利点は、ホモ発酵過程が、細菌の干渉について心配しないで開始できることである。
【0078】
その容器は、例えばポリマー材料、例えばプラスチック、及び金属製であり得る。その後、その容器は密閉式パッケージ中に並べて入れ、そのパッケージはシールすることができる。
【0079】
図6は、本発明の1実施形態による発酵生成物又は工業的プロセスからの副産物を含む動物飼料を提供するステップを示すフローダイアグラムである。しばしば、副産物、廃棄物、又は規格に合わない生成物が工業的生産中又はその間に生産される(1)。ここでは副産物と称するこのような生成物は、乳酸菌を加えることによって液体発酵飼料とも呼ばれる発酵生成物に転化させることができる(2)。必要に応じて、糖、炭水化物又は炭水化物含有組成物を、乳酸菌の増殖を促進するために加えることができる。また、適切な含水量を提供するために水を加えることができる。必要なら、適当な発酵条件を提供する更なる要素、例えば、塩、緩衝液などを加えることができる。発酵(2)は、混合、撹拌及び温度制御を含み得る。発酵(2)によって、液体発酵飼料生成物が得られる。この液体発酵飼料生成物は、単独で、又は通常の飼料と一緒にサプリメントとして、或いは通常の飼料により補完される飼料(3)として動物に与えることができる。
【0080】
本発明の別の実施形態において、発酵すべき生成物、副産物又は廃棄物は、乳清、使用済み穀物、ジャガイモ(又はジャガイモの一部(例えばジャガイモの皮))、酵母菌、細菌、又はカビを単独又は任意の組合せで含む。適切な場合は、本発明により発酵される生成物は、例えば、熱、低温、pH、化合物及び/又は組成物の添加の単独又は任意の組合せによる処理を含む化学的及び/又は物理的修飾をすることができる。発酵させる生成物の組成は、更なる生成物を加えることによって変更し、例えば、発酵生成物の栄養価、発酵性及び/又は保存性を改善することができる。本発明の更なる実施形態においては、工業的プロセスの副産物又は廃棄物ではない生成物を発酵生成物に変換する。本発明に照らした工業的プロセスとしては、エタノール生産(例えば、ビール、ワイン、バイオエタノール、蒸留酒など)、医薬産業(医薬組成物の生産)、化学産業、農業及び食品産業(例えば、乳業、漁業、畜産、食肉加工)などを含む。
【0081】
図7に示すフローダイアグラムは、本発明の実施形態による発酵液体動物飼料を提供するステップを説明している。実施例4、図6と同じように、液体発酵飼料生成物が得られる。しかし、図6におけるように、液体発酵飼料生成物を直接1つ又は複数の動物に給餌する代わりに、その液体発酵飼料生成物を飼料を発酵するために使用して、発酵飼料生成物(「発酵混合飼料」)を提供する(4)。この発酵飼料生成物は、単独で、又は通常の飼料と一緒にサプリメントとして、或いは通常の飼料により補足される飼料として動物に与えられる(5)。
【0082】
図8は、本発明の1実施形態による主要な成分及びステップについて説明している。Aは、飼料を含む1つ又は複数の容器を示す。その容器(1つ以上)は、異なる飼料、飼料成分又は飼料混合物を含むことができる。更に、その容器は、水又は水性組成物を含むことができる。Bは、発酵生成物を含む容器又は発酵槽を示す。Cは、発酵槽を説明しており、ここで、Aからの飼料が供給され、Bからの発酵生成物と混合される。Dは、発酵後のCと同じ発酵槽か、又は少なくとも一部の飼料の発酵が起こる別の発酵槽のいずれかを示す。矢印1及び2は、発酵槽Cに、それぞれ、Aからは飼料を、Bからは発酵生成物を供給することを示す。矢印3は、生成物Bの発酵が起こり、且つ/又は、Cの内容物又は内容物の一部の別の発酵槽又は容器への移動を示す。矢印4は、発酵飼料Dを動物に与えることを示す。生成物を混合する手段を、A、B、C及び/又はDに備えることができる。
【0083】
本発明の1実施形態において、動物は、発酵飼料Dを、唯一のものとして又は主なものとして与えられる。
別の実施形態において、動物は、Dと別の飼料、Aからの飼料混合物の飼料成分との混合物を与えられる。これは、例えば一部の飼料成分、例えばアミノ酸などに対する発酵の悪影響に対して埋め合わせをするために望ましいものであり得る。アミノ酸のレベルは、発酵によって減少する可能性があることが知られており、それは望ましくないであろう。
【0084】
図9は、発酵飼料を生産する「連続」法を示す。「A」は、飼料を含む1つ又は複数の容器を指す。その容器(1つ以上)は、さまざまな飼料、飼料成分又は飼料混合物を含むことができる。発酵槽Bに、容器Aから飼料が供給され、発酵が起こる。この発酵は、発酵される飼料生成物中に存在する微生物によって促進されて自然発生的に、又は発酵を制御するためのスターターカルチャーを供給することによって起こり得る。Cは、発酵の少なくとも一部が起こる発酵の途中若しくは発酵後のBか、又は発酵の少なくとも一部が起こる別の発酵槽のいずれかを指す。Cの底の矢印は、発酵飼料生成物を動物に与えることを指す。Dは、発酵飼料生成物の一部が普通は動物に給餌した結果除去された後の発酵槽Cを指す。Eは、発酵槽DがAからの飼料で再び満たされていることを示し、Fは、発酵の途中若しくは発酵後のEか、又は発酵の少なくとも一部が起こる別の発酵槽のいずれかを指す。Fの底の矢印は、発酵飼料生成物の一部を動物に与えることを指す。サイクルD、E、Fは繰り返される。これらの繰り返し、即ち「連続」発酵は、ステップDのスターターカルチャーの組成が徐々に変化して、発酵飼料生成物の品質が、時間とともに変化することが知られているため望ましくない。これは、例えば微生物圧力、即ち、家畜小屋、動物、作業者、飼料調理場、容器、パイプ、機械、水などの中又は近くにいる細菌、酵母菌及び胞子を含めたカビによって、発酵を提供する微生物叢が時間と共に変化するためである。また、酵母菌、例えば酸耐性の酵母菌が「連続」式発酵において問題であることが知られている。酵母菌はゆっくり増殖するが、酵母菌のレベルはバッチ毎に上昇し得る。一般に、酵母菌は、それが、例えばブタが好まない異臭を与える可能性があるので好ましくない。酵母菌の感染は、また、洗浄が事実上不可能ではないにしても非常に困難である供給パイプにおいて非常によくある問題である。「連続」式発酵に伴なう更なる潜在的問題は、バクテリオファージによる感染のリスクである。この問題は、乳業から知られている。その他の可能性のある問題点は、発酵生成物の品質も低下する可能性のある自然変異の発生である。
【0085】
本発明を、その利点を含めて、以下の非限定の実施例によって更に説明する。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
本発明による発酵生成物の調製
本発明を、発酵タンク中で80%のコムギ及び20%のオオムギを混合することによって実証した。その混合物中、穀物は、28%を構成し、残りの72%は水であった。更に、10トンの液体飼料スープ当り100部のPig Stabilizer 317(Medipharm社製)を加えた。そのPig Stabilizer 317は、ビタミン、マルトデキストリン、デキストロースアンヒドロース並びに乳酸産生菌、ペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカスアシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)及びラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)を更に含んでいた。発酵タンクへの空気の取り込みは、発酵タンクが置かれている部屋の空気から直接取った。試料を民間の分析実験室に送り、酢とエタノール含量についての分析がその混合物中にはわずかに3mMの酢が含まれエタノールはないことを明らかにしたため、その環境は殆ど無菌であることが示された。また、乳酸のレベルは、20時間の発酵後約140mMであった。この混合物は、従って、殆ど100%ホモ発酵性と考えることができる。
【0087】
結論として、乳酸産生菌を用いて発酵生成物を調整することが可能である。更に、発酵は、制御され、ホモ発酵様式で起こることが実証された。
【0088】
(実施例2)
本発明による飼料生成物の調製
実施例1の発酵生成物の試料を取り、周囲の高い細菌圧力のためにそれまで液体飼料の生産に失敗していた液体試料調理室に持ち込んだ。
【0089】
実験1
1リットルの該混合物を100リットルの飼料生成物と調理場の発酵タンク中で混合した。その発酵プロセスは9時間後に完了し、その混合物のpHは、3.8であった。
【0090】
実験2
もう1つの例においては、50リットルの該混合物を200リットルの飼料生成物と調理場の発酵タンク中で混合した。その発酵プロセスは5時間後に完了し、その混合物のpHは、3.8であった。
【0091】
実験3
3番目の例においては、50リットルの該混合物を5000リットルの飼料生成物と調理場の発酵タンク中で混合した。その発酵プロセスは9時間後に完了し、その混合物のpHは、3.8であった。
【0092】
結果
すべての場合において、得られた液体飼料は、殆どホモ発酵性であった。これまではホモ発酵性液体飼料を得るのは不可能であることが証明されていたので、本発明の発酵プロセスは優れた利点を有することが実証されたことになる。周囲の細菌圧力が極めて高い場合でさえ、発酵を制御することが実際に可能である。
【0093】
(実施例3)
低い細菌圧力を有する飼料調理室における液体飼料の調製
実施例2に記載したものと類似の液体飼料を、周囲の細菌圧力がより低い別の飼料調理室において調製した。実施例2における発酵時間と比較してその発酵時間を、1時間以内で変化させた。
【0094】
それにより、本発明による発酵は、非常に急速に且つ非常に効率よく起こり、細菌圧力がその発酵の結果に実質的に影響を及ぼさないことが実証された。
【0095】
(実施例4)
ホームミキサー供給システムのさまざまな構成(システム1〜3)
図10〜12は、発酵混合飼料生成物を提供するために適する3つの異なるホームミキサー供給システムを図解したものである。通常、発酵すべき飼料生成物の発酵は20〜25℃、好ましくは約23℃で約6時間後には終了する。ホームミキサー供給システムは、次の構成要素のいくつかを含むことができる。
【0096】
A)C、F及びEからの任意の発酵生成物、飼料及び水のすりつぶした混合物を計量する発酵タンクA。一般に、Fから5〜70%の発酵生成物が取り込まれる。23℃前後で約6時間後、発酵は終了する。しかし、15℃から45℃までの範囲の温度も発酵を提供することができる。一般に、発酵タンクAの大きさは、1,000kg以上である。
【0097】
B)A(設置されている場合)、C、D及びEからの内容物を混合する、混合、供給及び発酵タンクB。一般に、混合タンクBの大きさは、500kg〜12000kgの範囲である。発酵された混合飼料は、新鮮なうち又は24時間以内に使用するのがベストである。発酵した穀物が発酵後あまり長くそのままの場合(例えば2日以上)、その発酵した飼料生成物は、恐らく穀物中の高レベルのミネラル及びその他の化学反応のために苦くなる可能性がある。
【0098】
C)発酵すべき飼料生成物を含有する1つ又は複数のタンクC。一般に、それらは穀物、例えば、コムギ及びオオムギ、並びにダイズなどを含む。多くの場合、その発酵される飼料生成物は、熱処理されておらず、殺菌されていない。
【0099】
D)ビタミン及びミネラルの容器D。これらの成分は、1つ又は複数の混合物としてか、又は個別に提供することができる。それらは、ばらで、又は大きな袋に入れて供給することができる。大抵は乾燥した成分(粉末、ペレットなど)が用いられるが、それらは液体であってもよい。一般に、アミノ酸は、アミノ酸の劣化、分解及び/又は破壊を避けるために、発酵プロセスの後追加される。
【0100】
E)20〜25℃、好ましくは23℃前後の水を供給する清浄な軟水タンクE。水温は、室温とは異なる、例えば地表温度未満若しくはその付近であってもよい。これは、タンクEからの水が発酵タンクBに加えられる場合珍しいことではない。水は、ミネラル分についてチェックし、必要に応じて、乳酸菌の最良の発酵を得るために調節及び/又は浄化する。その水タンクEは、非常に小から非常に大までの範囲の任意の容量を有することができる。別法では、水は蛇口から直接供給する。必要に応じてその水を温めるために熱交換器を設置することができる。
【0101】
F)乳酸菌により発酵した生成物のためのタンク。多くの場合、発酵生成物タンクFの容量は、1000kg以上である。通常、その発酵生成物は、最大で2週間までの貯蔵時間の間は活性で使用可能のままである。一般に、そのタンクは、発酵生成物の新しいバッチを充填する前に空にして洗浄する。そのタンクは、空にすること及び洗浄することを容易にするジップシステム(zip system)を備えることができる。別法では、そのタンクは、従来の方法によって空にされ、洗浄される。
【0102】
G)豚舎の異なる区分に飼料を持ち込む供給パイプG。供給パイプGは、数百メートルの長さであり得、それらは、1km以上の長さに達することがある。ブタの年齢に応じてそれらは飼料中にさまざまなエネルギー及びミネラルのレベルを必要とする。それ故、異なるパイプのいくつかのライン、例えば、各区分用のもの、又はパイプ中の飼料が新しくブレンドした飼料と混合されており、そのためすべてのブタが同じタイプの飼料を摂取する1つの主なパイプが存在し得る。それはまた飼料が水で空になっているパイプでもあり得る。供給パイプGは、飼料の一部を発酵タンクBに返す返還パイプであり得る。それはまた1方向性のパイプであり得る。家畜小屋の異なる区分は、個別の供給パイプを有することができる。
【0103】
システム1
図10は、発酵タンクA及び発酵/混合タンクBを含む液体供給システムを備えた本発明の実施形態を示す。供給パイプGは、液体発酵混合飼料を発酵槽Bに戻すことができる。
【0104】
システム2
図11は、発酵/混合タンクBを含むが発酵タンクAのない液体供給システムを備えた本発明の別の実施形態を示す。供給パイプGは、液体発酵混合飼料を発酵槽Bに戻すことができ、別法では、該混合飼料は、1方向のみに運ばれる。すべての飼料成分は、タンクB中で混合される。一般に、発酵の終わりに向けて、好ましくは給餌する前に、タンクDからのアミノ酸を追加する。また水も(好ましくは23℃であるが、冷たい地下水でもよい)、発酵槽Bに加えることができる。
【0105】
システム3
図12は、本発明の別の実施形態を示す。その液体供給システムは、Eからの水、Fからの発酵した液体発酵飼料及び発酵すべき飼料生成物(C)をいくつかの平行な発酵槽Aに対して個別に供給することができるいくつかの発酵タンクAを含む。
【0106】
(実施例5)
液体発酵生成物の異なる比率による給餌試験:発酵すべき飼料生成物
異なる液体発酵生成物及び異なるホームミキサー供給システムを用いる給餌試験の結果を以下に示す。その結果は、ヨーロッパの19の異なる養豚場で行った実験に基づいている。
【0107】
15の養豚農家は、ブタ生産のための飼料生成物の発酵のための接種材料として発酵したジャガイモを用いた。14の場所は、デンマークのユトランドであり、1ヶ所は、フィンランドのWasaに位置した。3つの場所は、ホームミキサー供給システム1(図10)を有し、11の場所は、ホームミキサー供給システム2(図11)を有し、1ヶ所は、ホームミキサー供給システム3(図12)を有した。
【0108】
飼育試験を、雌ブタ、離乳したばかりの子豚及び成豚について実施し、大体、ブタの体重は、約7〜約200kgであった。
一般的に、その飼育場は、比較的大きく、1飼育場当り250以上の動物単位を有した(1動物単位は、1年当りほぼ32頭の生体重30〜107kgの成豚に等しい)。
【0109】
3つの飼育場については発酵した乳清を試験した。その場所は、それぞれ、英国の南部、フィンランドのWasa、及びデンマークのユトランドであった。3つの飼育場はすべて発酵タンクAのないホームミキサー供給システム2(図11)を所有した。
【0110】
1つの場所デンマークのジーランド(ホームミキサー供給システム1、図10)については、発酵したビール生産からの使用済み穀物及び発酵した糖蜜を試験した。この試験は、成豚についてのみ行った。
【0111】
使用した液体発酵生成物は、ジャガイモ工場からの新鮮なジャガイモの皮を使用した。市販されている乳酸菌スターターカルチャー、「PIG stabiliser 317」(スウェーデンMedipharm社製)、又は「Pig Stabiliser 400」(オーストリアLactosan社製)のいずれかを、皮むき機械にかけた後、温度が約38℃の工場内で加えた。ジャガイモの皮1000kg当り約3gの乳酸菌を加えた。乾物含量は、約12.5〜16%であった。そのジャガイモの皮は、ファイバーグラス製の容量約50mの撹拌なしの貯蔵/発酵タンクにポンプで送り込んだ。乳酸菌をジャガイモの皮に吹き付けた工場内の温度は38℃であった。その皮が、貯蔵タンクに到着したときその温度を約35℃に低下させ、24時間保った。貯蔵タンク中での発酵の後、ジャガイモからのソラニンは破壊された。更に、そのジャガイモの皮の消化率は、発酵させてないジャガイモの皮と比較して向上した(データは示されていない)。その発酵したジャガイモの皮(液体発酵生成物)は、タンクローリーに入れて当該場所に輸送し、別の試験場のタンクF中に移動/ポンプ注入した。
【0112】
その発酵した混合飼料は、新たに発酵させ、発酵後24時間以内に使用した。一般にそれは穀物及びダイズからなるものであった。すべての給餌用飼料は、主にコムギ、オオムギ及びダイズを含んだ。最大のダイズ含量は、全体の23%であった。14の飼料においては、コムギが全体の40%〜75%使用された主要な材料であった。1つの飼料においては、オオムギが主要な材料であった。
【0113】
発酵タンク(タンクA)における乾物含量は、それをタンクBにポンプで送り込む距離が常に10メートル未満であるので29〜32%であった。タンクB中の乾物含量はその飼料を豚舎にポンプで送り込む距離に応じて24%〜27%であった。
【0114】
一般的に、発酵混合飼料による飼育試験は、全体の豚のストックについて実施した。以下に示す結果は、ホームミキサー供給システムの導入前と、導入して発酵混合飼料を給餌した後の性能データの比較に基づいている。
【0115】
結果
飼育試験の結果を、下の表Iにまとめる:
表I:飼育試験の結果
【表1】


(*)「満点」は、ブタが非常に迅速に食べており、それらは基本的にブタに与えられた飼料のすべてを以前(即ち、液体発酵飼料の条件のない従来の給餌)より速く食べていたことを示す。毎日の体重増加は、例えば、1日当り0〜50gで従来どおりか又は増加した。飼育試験を開始する前に900グラムの1日増体重が得られていた場合、毎日の体重増加は1日当り900〜950gに増加したことになる。下痢は殆ど観察されず、薬剤/抗生物質を必要とすることはなかった。更に、飼料要求率(FCR)は、飼育試験の前と比較して約0.2減少した。FCRは、飼料転換効率(FCE)とも呼ばれ、飼料質量を体重増加に変換する動物の効率のものさしである。具体的には、FCRは、全指定期間中に食べられた飼料の質量を体重増加量で割ったものである。FCRは無次元である。低いFCRを有する動物は、飼料の効率的なユーザーと考えられる。
【0116】
(**)「マイナス点」は、与えられた飼料の見積り量をブタが食べたがらなかったことを示す。目視検査により、ブタが下痢に罹ったこと(20%を超えて)、及びブタが十分成長しなかった(見積りより1日当り20〜60g少ない体重増加)ことを見ることができた。発酵混合飼料を給餌する前に900グラムの1日増体重が得られていた場合、毎日の体重増加は1日当り840〜880グラムに減少したことになる。その結果、胃の疾患を治療するために抗生物質を使用しなければならなかった。それにより許容できる体重増加を回復することができた。
【0117】
明らかなのは、発酵が行われる環境(小屋、飼育場など)のタイプ及び微生物圧力が、成功し信頼できる発酵を提供するために発酵すべき飼料生成物に加える必要のある液体発酵生成物の量に対して大きな影響力を持つことである。微生物圧力が高いほど、より高い水準の液体発酵生成物の接種材料を必要とする。
【0118】
供給ラインGが、適切に洗浄することができないという問題が知られている。その供給ラインは、手を挿入することが困難であり、洗浄するのが困難であり、且つしばしば酵母菌の感染及び増殖をもたらす例えば多くのゴム製のバルブを含む。このリスクは、供給パイプGからの飼料が、酸耐性の(そして望ましくない)酵母菌を含み得る発酵槽に戻る供給ラインの中で増大する。しかし、接種材料として30%以上の液体発酵生成物を使用する場合、この問題は、本発明による発酵混合生成物を給餌することによって成功することが立証されているため避けることができる。一般に、新たな家屋/家畜小屋においては酵母菌の蓄積は観察されず、飼育試験は成功した。
【0119】
小型のブタほど飼料の味により敏感であった(データは示されていない)。
【0120】
発酵タンクは、発酵に対して殆ど影響がなかった。異なる液体供給システム又はそのブランドの間で違いは見られなかった。
【0121】
Funky社(デンマークのヘルニング近くのハメルン)、Skiold社(デンマークのイカスト)及びBig Dutchman社(デンマークのVejen)により供給された発酵槽システムが首尾よく使用された。Funky社及びBig Dutchman社のタンクはグラスファイバー製である。Skiold社製タンクの2つはステンレススチール製であり、1つはグラスファイバー製である。供給タンク(B)は、すべてグラスファイバー製でありその大きさは5〜8000リットルの範囲で異なった。
【0122】
同様に、発酵中に用いられた混合手段の回転速度は、重要ではないことが見出された。使用されたその混合/撹拌システムは、発酵タンクに備えられたものである。約35rpmから約250rpmまで変化するさまざまな回転速度が使用されたが、最終結果には差異が見られなかった。
【0123】
スターターカルチャー「PIG stabiliser 317」及び「Pig Stabiliser 400」は、短時間の間に多量の乳酸を産生することができる急速に酸性化する乳酸菌のホモ発酵性菌株(ペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)HTS(LMG P−22549)、ペディオコッカスアシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)NCIMB 30086及びラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)LSI(NCIMB 30083)、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)NCIMB 30122、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)NCIMB 30121)を含んだ。該接種材料が160mMを超える量の乳酸を産生することができることは以前から検証されている。ブタに対して嗜好性が良好な菌株を使用することも重要である。一般的に、pH4.0より下のpHの急速な低下を得るために適切な乳酸の菌株を使用することが重要であった。それによって飼料の防腐が得られ、アミノ酸の破壊が減少する。使用した2つのスターターカルチャーの間での違いは顕著ではなかった。
【0124】
発酵した飼料生成物及びその組成は、あまり重要ではないことが見出された。オオムギ又はコムギが主要材料であることに関係なく、観察された結果に違いはなかった。しかし、飼料生成物中のダイズの量は、pH及び乳酸に対する影響を有した。ダイズの使用量が高いほど乳酸が増えた。興味深いことに、ダイズを含む発酵混合飼料を給餌する場合ダイズの消化率において15%の増加が見られた。
【0125】
結論として、発酵混合飼料によるブタの給餌は、以下の利点を提供する(このリストは、本発明に対し限定しているものと解釈してはならない):
・ ブタについてのより高い飼料摂取
・ 飼料のより良好な嗜好性
・ ブタのより高い成長速度
・ 飼料の改良された栄養価−当該発酵混合飼料の栄養価は、液体発酵生成物及び発酵すべき飼料生成物(発酵されていない)の栄養価より高い。
・ 遊離アミノ酸の劣化を避けるアミノ酸の制御/保護。これは、10%以上の発酵生成物が飼料中に加えられた場合にのみ得られた。
・ ダイズタンパク質の消化率が約15%増加した。
・ 成長促進物質としての使用−改良された又は完ぺきな胃の健康状態が、大腸菌(E.coli)、サルモネラ菌(Salmonella)及び/又はローソニア菌(Lawsonia)による下痢に対する薬剤の必要性を減少又は排除した。
・ 発酵混合飼料によって改良された胃の健康状態−これによってより安価な穀物/飼料を選択及び使用することが可能となる。
・ 強健なブタ−ブタは飼料の変化に敏感に反応することがより少ない。
・ 金銭上の利得−減少した医療費、減少した飼料代、増加したブタの体重増加。
・ しっかりした信頼性のある液体供給システム−これまでのシステムが時々又は頻繁に失敗していた動物に発酵混合飼料を供給することが今や可能である。そのシステムは、畜産農家に扱いやすく、高い微生物及び/又は細菌圧力の環境においても管理できる。例えば供給パイプG中の望ましくない酵母菌の増殖を避けることができる。自然発酵システムとは対照的に、当該微生物叢は、制御することができる。更に、該システムは、無菌又は無菌に近い状態を必要とはせず、その信頼性と頑健性が増大する。接種材料として多数の活性細菌を含む液体発酵生成物を使用することによって、活性細菌が発酵すべき飼料生成物に加えられる。これによって発酵の誘導期間が短縮され、急速な乳酸の産生及びpHの低下がもたらされる。
【0126】
(実施例6)
混合発酵CCMサイレージの調製
50%のコムギ、40%のオオムギと10%のダイズとの混合物を発酵することによって得た実施例5により製造した混合発酵生成物を、121000リットルのプラスチック製パレット容器にポンプで送り込んだ。そのパレット容器は、最大で1週間にわたって撹拌しないで周囲温度で保存した。2週間にわたって、新たに刈り取り脱穀したCCMトウモロコシにその混合発酵生成物を、CCMトウモロコシがオーガによって貯蔵サイロ中に輸送される間に、その混合発酵生成物をポンプで汲み上げCCMトウモロコシに吹き付けることによって植菌した。その貯蔵サイロは、恐らくコーティングを施したスチール製の従来型の直立している1200tの気密サイロ(ブランドは不明)であった。そのオーガは、直径が約200mmで長さが約15mであった。混合発酵生成物:CCMトウモロコシの割合は、おおよそ1〜2%であった。そのサイロは14日以内に、発酵混合生成物で植菌したCCMトウモロコシを充填し、閉じた。
【0127】
おおよそ6カ月後そのサイロを開け、今や発酵したCCMを、オーガを用いて空にした。0.5l位の試料を取り出し、その試料を分析実験室に送った。分析により、低レベルの酢酸(10.5mM)、及び110mMの乳酸濃度が明らかとなった。
【0128】
その発酵CCMは、実施例5に記載した飼育試験の1つにおいて使用し、「満点」がつけられた。ブタが酢酸を好まないのは既知の問題である。しかし、乳酸のレベルは、十分に低く、ブタ(30kgぐらいの体重)に発酵したCCMを給餌することは可能であり、ブタが発酵CCMを食べるのを嫌がることはなかった。
【0129】
従来のCCM系サイレージは、一般に、例えば20〜200mMの間で変化するか又はそれ以上のさまざまなレベルの酢酸を有することが知られている。これらの変化は、収穫中のCCMトウモロコシの含水量及び発酵中の微生物叢の存在によって引き起こされるものと推測される。
【0130】
上に示した実施例は、発酵CCMトウモロコシに基づく混合発酵生成物を生産することができ、そのCCMトウモロコシエンシレージがブタのような単胃動物に給餌するのに適していることを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵混合飼料を調製する方法であって、
(a)液体発酵生成物を準備するステップと、
(b)発酵すべき飼料生成物を準備するステップと、
(c)ステップ(a)及び(b)による生成物を合わせ、接種材料としてステップ(a)の液体発酵生成物を用いてステップ(b)の飼料生成物を発酵させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
発酵混合飼料が、4.2以下、4.2と3.5の間又は3.8前後のpHで提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発酵混合飼料が、50〜100mM、100〜150mM、150〜200mM、200〜250mM、250〜300mM、又は300mM以上の範囲の乳酸濃度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記発酵混合飼料が、12〜24時間、8〜12時間、6〜8時間の間、又は4時間未満で調製される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記発酵ステップ(c)が、10〜50℃、15〜40℃、18〜30℃、20〜25℃、又は22〜24℃或いは23℃前後で実施される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記発酵ステップ(c)の間に混合手段が提供され、前記混合手段は、1〜500rpm、10〜300rpm、又は35〜100rpmで操作する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記発酵ステップ(c)が、本質的に、ホモ発酵性発酵である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)において提供される前記組み合わせた生成物中の液体発酵生成物の割合が、0.1〜99.9容量%、1〜99容量%、5〜70容量%、10〜50容量%、又は25〜35容量%である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)において準備される前記液体発酵生成物のpHが、4.2以下、4.2と3.5の間又は3.8前後である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)において準備される前記液体発酵生成物が、本質的にホモ発酵性発酵により得られたものである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)において準備される前記液体発酵生成物が、乳酸産生菌を含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記乳酸産生菌が、エンテロコッカス菌種(Enterococcus spp.)、ラクトバチルス菌種(Lactobacillus spp.)、ラクトコッカス菌種(Lactococcus spp.)、及びペディオコッカス菌種(Pediococcus spp.)の1つ又は複数からなる群から選択される乳酸菌を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(a)で準備される前記液体発酵生成物が、エンテロコッカス菌種(Enterococcus spp.)、ラクトバチルス菌種(Lactobacillus spp.)、ラクトコッカス菌種(Lactococcus spp.)、及びペディオコッカス菌種(Pediococcus spp.)の1つ又は複数からなる群から選択された乳酸菌を含む接種材料による発酵によって得られたものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記乳酸菌が、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ペディオコッカスアシディラクチシ(Pediococcus acidililactici)、及びペディオコッカスペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)の1つ又は複数からなる群から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
(a)で準備される前記液体発酵生成物が、1つ又は複数の工業的生成物を発酵させることによって得られる、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記工業的生成物が、副産物又は廃棄物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記副産物又は廃棄物が、乳清、凝乳、使用済みの穀物、酵母、菌類、細菌、植物又はその一部、ジャガイモ又はその一部の1つ又は複数である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(a)で準備する前記液体発酵生成物が、乳清、凝乳、使用済みの穀物、酵母、菌類、細菌、成熟又は未成熟のトウモロコシ、ジャガイモ又はその一部、或いは野菜類の1つ又は複数を含む生成物を発酵させることによって準備される、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)で準備する前記飼料生成物が、腐っているか腐っていない植物又はその一部の1つ又は複数を含む、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)で準備する前記飼料生成物が、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、トウモロコシ、コメ、マメ、エンドウマメ、モロコシ、ライコムギ及びダイズの1つ又は複数を含む、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記発酵混合飼料がサイレージである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記サイレージが、1日、1週間、1カ月、6カ月、又は1年で調製される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(c)で提供される前記液体発酵生成物の割合が、1〜2容量%の範囲である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
発酵させる飼料生成物がCCMトウモロコシである、請求項21から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項21から24までのいずれか一項に記載の方法によって調製されるサイレージ。
【請求項26】
請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法によって調製される発酵混合飼料。
【請求項27】
ステップ(b)で準備する飼料が、腐っているか(ripe)腐っていない(unripe)植物又はその一部の1つ又は複数を含む、請求項26に記載の発酵混合飼料。
【請求項28】
ステップ(b)で準備する前記飼料が、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、トウモロコシ、コメ、マメ、エンドウマメ、モロコシ、ライコムギ及びダイズの1つ又は複数を含む、請求項27に記載の発酵混合飼料。
【請求項29】
ステップ(b)で準備する前記飼料が、
(d)オオムギとコムギ、
(e)ダイズとオオムギとコムギ、
(f)トウモロコシとダイズ、又は
(g)オオムギとエンドウマメ
の混合物を含む、請求項26又は27に記載の発酵混合飼料。
【請求項30】
請求項26から29までのいずれか一項に従って調製した発酵混合飼料の動物への給餌のための使用。
【請求項31】
動物が単胃動物である、請求項30に記載の発酵混合飼料の使用。
【請求項32】
請求項30又は31に記載の発酵混合飼料の成長促進物質としての使用。
【請求項33】
動物がブタである、請求項31又は32に記載の発酵混合飼料の使用。
【請求項34】
請求項25に従って調製したサイレージのブタに供給するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−543545(P2009−543545A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518721(P2009−518721)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050096
【国際公開番号】WO2008/006382
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509013415)
【出願人】(509013426)
【Fターム(参考)】