説明

ホルモテロールと及びシクレソニドの組合せ物

本発明は、ホルモテロール及びシクレソニドの組合せ物を含有する医薬品組成物、並びにかかる医薬品組成物の医学における、特に呼吸器疾病の予防及び治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ホルモテロール及びシクレソニドの組合せ物を含有する医薬品組成物、並びにかかる医薬品組成物の医学における、特に呼吸器疾病の予防及び治療における使用に関する。
【0002】
背景技術
N−[2−ヒドロキシ−5−(1−ヒドロキシ−2−((2−(4−メトキシフェニル)−1−メチルエチル)アミノ)エチル)フェニル]ホルムアミドという化合物であるホルモテロールは、US3994974号から公知である。該化合物は気管支拡張剤として知られており、かつ炎症性又は閉塞性の気道疾病の治療に使用される。
【0003】
GB247680号は、プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン−16−17−アセタール−21エステル及び炎症状態の治療におけるそれらの使用を開示している。該化合物は一般構造:
【0004】
【化1】

[式中、R1は2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、シクロヘキシル又はフェニルであり、かつR2はアセチル又はイソブタノイルである]を有する。シクレソニドは、式Iで示され、その式中で、R1がシクロヘキシルであり、かつR2がイソブタノイルである化合物についてのINNであり、その化学名は[11β,16α(R)]−16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである。
【0005】
この化合物は抗喘息薬として評価され、そして薬動力学的研究は、その化合物が吸入製剤に有用であることを示している。シクレソニドは経口投与後に控えめに吸収されるにすぎず、低い全身活性を有する。肺中の薬剤濃度が高く、肝臓のオキシダーゼによる代謝が非常に高いので、その薬剤は低い血漿内半減期を示す。シクレソニドの全身活性はブデゾニドのそれより3倍低いが、抗炎症活性はより高い。
【0006】
DE19541689号は、気道の疾患の治療のための、シクレソニドとβ−交感神経興奮薬との組合せの使用に関する。噴射剤としてのトリクロロフルオロメタン(R11)中にシクレソニドとホルモテロールを含有する定量エーロゾル組成物が例として開示されている。
【0007】
EP−A−0504112号は、フマル酸ホルモテロールを含有するエーロゾル用途のための医薬品組成物の例を開示している。
【0008】
WO93/11747号は、主に治療学的有効量の薬剤とHFA134a、HFA227及びその混合物からなる群から選択される噴射剤からなる、エーロゾル投与に適した医薬品懸濁製剤であって、長期間にわたって実質的に、薬剤の粒度の成長又は結晶形態の変化を示さず、実質的かつ迅速に再分散可能であり、かつ薬剤の再現的な投与を妨げるほど迅速には凝集しないことを特徴とする医薬品懸濁製剤を開示している。該出願は、HFA134a、HFA227中のフマル酸ホルモテロールの製剤及びHFA134aとHFA227の1:1混合物中のフマル酸ホルモテロールの製剤を特に開示している。
【0009】
WO93/11745号は、実質的に界面活性剤不含であり、フルオロカーボン又は水素含有クロロフルオロカーボンの噴射剤と5%以下の極性補助溶剤を含有するエーロゾル医薬品製剤を開示している。有利な噴射剤はHFA134aとHFA227であり、これらは有利には単独で使用される。有利な極性補助溶剤はエタノールであり、一般に少量だけ、例えば0.05〜3.0%(質量/質量)の極性補助溶剤が分散改善のために必要であり、5%(質量/質量)を上回る量を使用すると不利なことに医薬品が溶解される傾向となると示されている。
【0010】
WO97/47286号は、(a)0.0025〜0.1%(質量/質量)の超微粉砕されたホルモテロール又はその酸付加塩と(b)0.1〜5.0%(質量/質量)のエタノール、(c)HFA134a、HFA227又はHFA227とHFA134aの混合物及び、場合により(d)アミノアセチル化又はジアセチル化されたモノグリセリド以外の界面活性剤からなる、エーロゾル投与に適した医薬品懸濁製剤であって、更に、長期間にわたって実質的に、薬剤の粒度の成長又は結晶形態の変化を示さず、実質的かつ容易に再分散可能であり、かつ再分散後に薬剤の再現的な投与を妨げるほど迅速には凝集しないことを特徴とする医薬品懸濁製剤を開示している。前記出願は、特にHFA134a、HFA227又はそれらの混合物と1〜3%のエタノール中に分散されたフマル酸ホルモテロールを含有する製剤を開示している。フマル酸ホルモテロールを高濃度の、例えば10%(質量/質量)より高いエタノールと接触しないようにするが、それは該薬剤が溶解して、最終的な製剤に不安定性と結晶成長の問題をもたらすためであり、かつ配合の間のエタノールの最大濃度が有利には5%未満であることが重要であると示されている。フマル酸ホルモテロール、HFA134a及びエタノールからなるエーロゾル組成物は、エタノール濃度に極めて感受性であり、かつ3.5%(質量/質量)のエタノール濃度は許容できない結晶成長を引き起こすことがあると示されている。
【0011】
WO98/52542号は、治療学的有効量の式(I)
【0012】
【化2】

[式中、
R1は2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、シクロヘキシル又はフェニルであり、かつR2はアセチル又はイソブタノイルである]の化合物及びヒドロフルオロカーボン噴射剤、有利には1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤と、式(I)の化合物及び場合により界面活性剤を溶解させるのに有効な量の補助溶剤、有利にはエタノールを含有する医薬品組成物を開示している。前記出願は、特に、シクレソニド(1〜5mg/ml)をHFA134a、HFA227又はHFA134aとHFA227との混合物及び5〜20質量%のエタノール中に含有する溶液製剤を開示している。
【0013】
エーロゾル吸入に使用するための薬剤を配合するにあたり用いられた種々の試みにも拘わらず、依然として、有利な粒度範囲を有する薬剤の正確な用量を確実に送達する物理的かつ化学的に安定なHFA134a及び/又はHFA227を基礎とする製剤を開発することを試みるにあたって多くの重大な困難性及び不確定性にしばしば直面する。特にホルモテロールは、HFA134a及び/又はHFA227噴射剤中で非常に感受性であると報告されている。今までに、HFA技術に基づくエーロゾルのホルモテロール医薬製品は市場で得ることができなかった。
【0014】
発明の要旨
HFA134a及び/又はHFA227を基礎とし、ホルモテロールとシクレソニドを含有する化学的かつ物理的に安定であり、かつ患者の呼吸器系に送達するのに適したエーロゾル医薬製品が必要とされている。
【0015】
驚くべきことに、治療学的有効量のホルモテロールとシクレソニドをHFA134a及び/又はHFA227噴射剤中の懸濁液において含有する物理的かつ化学的に安定なエーロゾル投与に適した製剤を提供できることが判明した。
【0016】
従って、本発明の一態様では、エーロゾル投与に適した医薬品懸濁製剤であって、超微粉砕されたホルモテロール又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子を該製剤中に懸濁されて含有し、かつ超微粉砕されたシクレソニド又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子を該製剤中に懸濁されて含有し、かつ1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物を含有する医薬品懸濁製剤が提供される。
【0017】
本発明による有利な製剤は、長期間にわたって実質的に、ホルモテロール及び/又はシクレソニドの粒度の成長又は結晶形態の変化を示さず、容易に再分散可能であり、かつ再分散後にシクレソニド及び/又はホルモテロールの再現的な投与を妨げるほど迅速には凝集しない。
【0018】
その安定性に加えて、本発明による製剤は、大きな予測されない治療作用、特に相乗的治療作用を炎症性又は閉塞性の気道疾病の治療において提供する。特に、シクレソニドとホルモテロールを含有する組成物はシクレソニド及びホルモテロールの単独によって誘発されるものより極めて高い抗炎症活性を誘発し、かつホルモテロールと混合して使用することで所定の抗炎症効果に必要なシクレソニドの量を減らすことができ、それにより閉塞性気道疾病の炎症の治療に付随するステロイドに繰り返し晒すことによる不所望な副作用の危険性が減ることが判明した。更に、本発明の組成物を使用すると、作用の迅速な開始及び作用の長期持続を有する医薬品組成物を製造できる。特に、本発明による組合せ療法は、一日二回、特に一日一回の用法を確立でき、結果として、例えば閉塞性気道疾病又は炎症性気道疾病の治療において事実上有用である(例えばより高い患者コンプライアンス、殆ど副作用なし)。
【0019】
シクレソニド(以下に有効成分とも呼ぶ)は化学名[11β,16α(R)]−16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを有する化合物についてのINNである。シクレソニド及びその製造はDE4129535号に開示されている。本願で使用されるシクレソニドには、シクレソニドの製剤学的に認容性の塩、シクレソニドの溶媒和物、シクレソニドの生理学的に機能的な誘導体又はそれらの溶媒和物が含まれる。“生理学的に機能的な誘導体”という用語は、シクレソニドと同じ生理学的機能を有するシクレソニドの化学的誘導体を意味し、例えばこれらは生体内でシクレソニドに変換可能であるか、又はシクレソニドの活性代謝産物である。本発明の関連で挙げることができるシクレソニドの生理学的に機能的な誘導体は、例えば化学名16α,17−(22R,S)−シクロヘキシルメチレンジオキシ−11β,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを有するシクレソニドの21−ヒドロキシ誘導体、特に16α,17−(22R)−シクロヘキシルメチレンジオキシ−11β,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである。この化合物及びその製造はWO94/22899号に開示されている。
【0020】
ホルモテロール(以下に有効成分とも呼ぶ)はN−[2−ヒドロキシ−5−(1−ヒドロキシ−2−((2−(4−メトキシフェニル)−1−メチルエチル)アミノ)エチル)フェニル]ホルムアミドという化合物であり、US3994974号に開示されている。本願で使用されるホルモテロールには、ホルモテロールの製剤学的に認容性の塩、ホルモテロールの溶媒和物、ホルモテロールの生理学的に機能的な誘導体又はそれらの溶媒和物が含まれる。当業者に認知されるように、ホルモテロールは種々の立体異性体の形で存在してよい。本発明は、実質的に純粋形又は任意の割合で混合された全ての立体異性体のホルモテロールを含む。本発明の一実施態様では、ホルモテロールは本発明による製剤中に、主にR,R−ホルモテロールとして存在する。本発明の関連では、主にR,R−ホルモテロールとしては、ホルモテロールの立体異性体混合物中のR,R−ホルモテロールの比率が少なくとも95%、有利には少なくとも99%を示す。ホルモテロールの立体異性体は、例えばWO98/21175号、WO99/17754号、US6068833号及びUS5795564号に開示されている。用語“生理学的に機能的な誘導体”とは、遊離化合物と同じ生理学的機能を有するホルモテロールの化学誘導体を意味し、例えばこれらは生体内でホルモテロールに変換可能である。本発明による好適な塩は、有機酸と無機酸の両方と形成される塩を含む。製剤学的に認容性の酸付加塩は、これらに制限されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸及びナフタレンカルボン酸、例えば1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸から形成される塩を含む。フマル酸ホルモテロール及びR,R−ホルモテロールが本発明の関連では有利に挙げられる。
【0021】
前記のように、シクレソニドとホルモテロールの両者、及びそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物及び生理学的に機能的な誘導体は呼吸器疾病の治療での使用について記載されている。従って、シクレソニド及びホルモテロール並びにそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物及び生理学的に機能的な誘導体は、選択的なβ−アドレナリン受容体アゴニスト及び/又はグルココルチコステロイドが指示される臨床的状態の予防及び治療において使用される。かかる状態は、可逆的な気道閉塞に関連する疾病、例えば喘息、夜間喘息、運動に誘発される喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば慢性でゼーゼーと音が出る気管支炎、肺気腫)、気道感染症及び上部気道疾病(例えば鼻炎、例えばアレルギー性鼻炎及び季節性鼻炎)を含む。
【0022】
従って、本発明は、哺乳動物、例えばヒトにおける臨床的状態であって、そのために選択的なβ−アドレナリン受容体アゴニスト及び/又はグルココルチコステロイドが指示される状態の予防又は治療のための方法において、ホルモテロール又はその製剤学的に認容性の塩、溶媒和物、又は生理学的に機能的な誘導体及びシクレソニド又はその製剤学的に認容性の塩、溶媒和物、又は生理学的に機能的な誘導体を含有する、製剤学的有効量の本発明による医薬品製剤を投与することを含む方法を提供する。特に、本発明は、可逆的気道閉塞を伴う疾病、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道感染症又は上部気道疾病の予防又は治療のための方法を提供する。
【0023】
治療効果の達成に必要なホルモテロール及びシクレソニド、又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の量は当然のように、特定の化合物、治療される被験者、及び治療される特定の疾患又は疾病により変化する。単独療法としては、フマル酸ホルモテロールは、一般に、成人にエーロゾル吸入によって、6μg〜12μg(4.9μg〜9.8μgのホルモテロールに相当する)の用量で一日二回又は24μgまでで一日二回投与される。単独療法としては、シクレソニドは、一般に成人に吸入によって、0.05mg〜1.6mgの日用量で投与され、これは一回の投薬又は複数回の投薬で投与してよい。
【0024】
本発明の関連では、一日二回の投与計画が好ましい。驚くべきことに、ホルモテロールをシクレソニドと組み合わせて投与すると一日一回の投与計画で効果的であることが判明した。従って更に本発明の態様は、一日一回の投与計画の形でのシクレソニドとホルモテロールとの組合せ物である。
【0025】
好適には、吸入に適した本発明による医薬品製剤は、吸入器から吸入することによって投与する場合に、各動作が治療学的有効量、例えば4μg〜24μg、有利には6μg〜12μgのフマル酸ホルモテロールの用量及び10μg〜1600μg、40μg〜800μg、50μg〜400μgのシクレソニドの用量を提供する量で有効成分を含有する。各動作が一日二回の用法のために治療学的のために有効な用量又は殊に有利には一日一回の用法のために治療学的に有効な用量を提供することが特に好ましい。
【0026】
本発明による医薬品製剤は、使用される弁室により、好適には1mlあたり約0.2mg〜約8mgのシクレソニド、有利には1mlあたり1mg〜4mgのシクレソニドを含有してよい。シクレソニドは、種々の用量濃度、例えば1mlあたり1mg、1mlあたり2mg又は1mlあたり4mgで配合してよい。ホルモテロールは、本発明による製剤中に、1mlあたり約0.04mg〜0.5mgのホルモテロール、有利には1mlあたり0.09mg〜0.4mgのホルモテロールで存在し、更に異なる濃度の用量で配合してもよい。
【0027】
本発明による医薬品製剤は、更に他の治療剤、例えば抗コリン作動薬、例えばイプトロピウム及びチオトロピウム、それらの製剤学的に認容性の塩又は溶媒和物を含んでよい。挙げられる例は、臭化イプトロピウム及び臭化チオトロピウム及びそれらの溶媒和物である。
【0028】
適切には、本発明による吸入に適した医薬品製剤は、一日二回(一日二回−b.i.d.)の用法、特に一日一回の用法の確立を可能にする治療学的有効量を提供する。
【0029】
エーロゾル懸濁製剤は、薬剤が粒子形であり、かつ実質的に製剤中に不溶性である製剤を指す。
【0030】
HFA134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びHFA227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)を基礎とするエーロゾル製剤用の噴射剤系は、例えばEP0372777号、WO91/04011号、WO91/11173号、WO91/11495号、WO91/14422号、WO93/11743号及びEP−0553298号に開示されている。これらの用途は、全て、医薬品の投与のために加圧式エーロゾルを製造することを関連しており、そして新規の噴射剤のクラスの使用と関連する問題、特に製造される医薬品製剤に付随する安定性の問題を克服すると考えられる。その用途には、例えば1種以上の賦形剤、例えば極性の補助溶剤又は湿潤剤(例えばエタノールのようなアルコール)、アルカン、ジメチルエーテル、界面活性剤(例えば、フッ素化及び非フッ素化の界面活性剤、カルボン酸、例えばオレイン酸、ポリエトキシレートなど)又は増量剤、例えば糖類(例えばWO02/30394号を参照)及び治療学的にかつ予防学的に有効でない濃度で含まれるビヒクル、例えばクロモグリク酸及び/又はネドクロミル(WO00/07567号を参照)の添加が推奨される。
【0031】
本発明による製剤は前記のような付加的な賦形剤を含有してよい。
【0032】
本発明の有利な実施態様では、該製剤は、湿潤剤、有利にはエタノール及び場合により界面活性剤、有利にはオレイン酸を含有する。エタノールの存在は、安定性、一般性能及び製剤の製造を支援する。エタノールは、有利には噴射剤配合物中にシクレソニドを溶解させず、かつ不所望なホルモテロールの効果を引き起こさない濃度範囲で存在する。有利には、エタノールは、本発明による製剤中に、3%(質量/質量)未満で、より有利には2%未満で、特に有利には1%未満で、最も有利には0.5%未満で存在する。
【0033】
本発明による製剤は、有利には界面活性剤を含有してよい。好適な界面活性剤はこの分野で知られており、オレイン酸、三オレイン酸ソルビタン及びレクチンを含む。有利な界面活性剤はオレイン酸である。本発明による製剤中に存在してよい界面活性剤の量は、通常は約0.001%〜0.1%(質量/質量)の範囲である。
【0034】
もう一つの実施態様では、本発明による製剤は、付加的に増量剤及び/又はビヒクルを含有する。本発明の関連で挙げることができる増量剤の例は、糖(例えばラクトース、ラクトース一水和物、グルコース、D+トレハロース脱水物)、DL−アラニン及び/又はアスコルビン酸である。好適な増量剤はWO02130394号にも開示されている。有効成分(シクレソニドとホルモテロール)と増量剤との質量比は、一般に1:0.1〜1:100の範囲、有利には1.3〜1:40である。増量剤は、有利には平均粒度100ミクロン未満、所望には20ミクロン未満、有利には1〜10ミクロン、例えば1〜5ミクロンを有する超微粉砕形で存在する。有利な実施態様では、平均粒度径は1ミクロンであり、例えばWO02/30394号に記載されている。
【0035】
本発明のもう一つの実施態様では、本発明による製剤は付加的にビヒクル、例えばクロモグリク酸及び/又はネドクロミルの製剤学的に認容性の塩を含有し、これらは治療学的にかつ予防学的に有効でない濃度で含まれる(WO00/07567号を参照)。有利な実施態様では、クロモグリク酸の塩は、二ナトリウム塩(クロモグリク酸二ナトリウム塩)であり、かつネドクロミルの塩はナトリウム塩である。これらのビヒクルは、一般に有効成分の質量に対して10:1〜1:10(質量に対する)の範囲で存在する。また、これらのビヒクルは、有利には10ミクロン未満の平均粒度径を有する超微粉砕形で存在する。しかしながらこれらのビヒクルはまたより大きな粒度で存在してもよい。
【0036】
本発明による製剤中に粒子として存在する有効成分(シクレソニドとホルモテロールのそれぞれ)は、エーロゾル製剤の投与後に肺中に有効成分の事実上全てが吸入される形にあるべきである。このように有効成分は、化学的方法によって好適なサイズで得られないのであれば、エーロゾル製剤の投与後に肺中に有効成分の事実上全てが吸入されるように超微粉砕させるべきである。このように、有効成分は、100ミクロン未満、所望には20ミクロン未満、有利には1〜10ミクロン、例えば1〜5ミクロンの範囲の平均粒度径を有する。
【0037】
本発明による製剤は、所望量の有効成分をエーロゾルバイアル中に添加し、バイアルの弁を締め、そして噴射剤又は場合により噴射剤と場合により更なる賦形剤、例えば界面活性剤と予備混合された配合物を弁を介して導入することによって製造できる。選択的に、有効成分を、冷却された噴射剤又は場合により噴射剤と場合により更なる賦形剤と予備混合された配合物に添加し、好適な混合機を用いて分散させてよい。均質化の後に、該懸濁液をエーロゾルバイアル中に充填し、そしてそのバイアルをバイアルの弁を締めることで密閉してよい。
【0038】
キャニスターは、一般に、噴射剤の蒸気圧に耐えうる容器、例えばプラスチックボトル又はプラスチック被覆されたガラスボトル、又は有利には金属缶、例えば場合によりアノード被覆、塗料被覆及び/又はプラスチック被覆されたアルミニウム缶を含み、この容器は計量弁で閉じられている。キャニスターを、WO96/32150号に記載されるフルオロカーボンポリマー、例えばポリエーテルスルホン(PES)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のコポリマーで被覆することが好ましいことがある。考慮できる被覆用の別のポリマーはFEP(フッ素化エチレンプロピレン)である。
【0039】
計量弁は、1動作につき定量の製剤量を送達し、ガスケットを装着して、弁を通る噴射剤の漏洩を防ぐように設計される。そのガスケットは、任意の好適なエラストマー材料、例えば低密度ポリエチレン、クロロブチル、ブタジエン−アクリロニトリルの黒ゴムと白ゴム、ブチルゴム及びネオプレンからなってよい。WO92/11190号に記載される熱可塑性エラストマー弁及びWO95/02650号に記載されるEPDMゴムを含有する弁が特に好適である。好適な弁はエーロゾル工業においてよく知られた製造元、例えばValois、フランス(例えばDF10、DF30、DF60)、Bespak pic、英国(例えばBK300、BD356、BK357)及び3M-Neotechnic Ltd、英国(例えばSpraymiser)から商業的に入手できる。
【0040】
弁シール、特にガスケットシール及び計量チャンバ周りのシールは、有利には、特に内容物がエタノールを含む場合に製剤の内容物への抽出に耐性である材料から製造される。
【0041】
弁材料、特に計量チャンバの製造用材料は、有利には、不活性で、特に内容物がエタノールを含む場合に製剤の内容物による分解に耐性な材料から製造される。計量チャンバの製造にあたり使用するのに特に好適な材料には、ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)及びアセタール、特にPBTが含まれる。
【0042】
計量チャンバ及び/又は弁軸の製造用材料は、所望には、フッ素化、部分的にフッ素化させるか、又はフッ素含有物質で含浸して、薬剤の堆積に耐久性を付与してよい。
【0043】
完全に又は実質的に金属成分からなる弁(例えばSpraymiser、3M-Neotechnic)は本発明による使用のために特に有利である。
【0044】
特に前記した成分の他に、本発明の製剤は、この分野に慣例で、当該製剤の種類に関連する他の薬剤を含んでよい。更に、本発明による製剤は、米国食品医薬品局によって定義される生物学的同等性を含む。
【0045】
百分率(%)で表現された量は、特に別の指定がなされない限りは、製剤の全質量に対する質量の比率(質量/質量)を指す。
【0046】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明を制限するものではない。
【0047】
実施例1:定量吸入器
1.07gのエタノールと250gのTG227の溶液をステンレス鋼容器中で約−50℃の温度に冷却することによって液化させる。1.428gの超微粉砕されたシクレソニドをその容器に移し、そしてエタノール/噴射剤混合物中で高剪断混合機を用いて分散させる。200gのTG227を回分容器中に充填し、約−50℃の温度にまで冷却することによって液化する。0.214gの超微粉砕されたクロモグリク酸二ナトリウムを回分容器に移し、高剪断混合機を用いて分散させる。その冷却された懸濁液に0.043gのフマル酸ホルモテロール二水和物を添加する。更に該懸濁液を高剪断混合機を用いて分散させる。次いでエタノール/TG227中のシクレソニド懸濁液をその回分容器に移す。該懸濁液を十分な時間にわたり均質化させて、均質な懸濁液を得る。その懸濁液に全質量500gまでTG227を添加する。冷却と撹拌を行いながら、該懸濁液をアルミニウム缶に充填し、そして50μlの計量弁をそこに固定する。70mgの各作動により、200μgのシクレソニドと6μgのフマル酸ホルモテロールが送達される。
【0048】
実施例2:定量吸入器
1.07gのエタノールと250gのTG227の溶液をステンレス鋼容器中で約−50℃の温度に冷却することによって液化させる。1.428gの超微粉砕されたシクレソニドをその容器に移し、そしてエタノール/噴射剤混合物中で高剪断混合機を用いて分散させる。200gのTG227を回分容器中に充填し、約−50℃の温度にまで冷却することによって液化する。0.043gのフマル酸ホルモテロール二水和物を回分容器に移し、高剪断混合機を用いて分散させる。次いでエタノール/TG227中のシクレソニド懸濁液をその回分容器に移す。該懸濁液を十分な時間にわたり均質化させて、均質な懸濁液を得る。その懸濁液に全質量500gまでTG227を添加する。冷却と撹拌を行いながら、該懸濁液をアルミニウム缶に充填し、そして50μlの計量弁をそこに固定する。70mgの各作動により、200μgのシクレソニドと6μgのフマル酸ホルモテロールが送達される。
【0049】
実施例3:定量吸入器
0.05gのオレイン酸を1.07gのエタノール中に溶解させる。250gのTG227を添加し、そして該混合物をステンレス鋼容器中で約−50℃の温度に冷却することによって液化させる。1.428gの超微粉砕されたシクレソニドをその容器に移し、そしてエタノール/噴射剤混合物中で高剪断混合機を用いて分散させる。200gのTG227を回分容器中に充填し、約−50℃の温度にまで冷却することによって液化する。0.043gのフマル酸ホルモテロール二水和物を回分容器に移し、高剪断混合機を用いて分散させる。次いでエタノール/TG227中のシクレソニド懸濁液をその回分容器に移す。該懸濁液を十分な時間にわたり均質化させて、均質な懸濁液を得る。その懸濁液に全質量500gまでTG227を添加する。冷却と撹拌を行いながら、該懸濁液をアルミニウム缶に充填し、そして50μlの計量弁をそこに固定する。70mgの各作動により、200μgのシクレソニドと6μgのフマル酸ホルモテロールが送達される。
【0050】
本発明は有利な製剤及び成分に関して説明しているが、これらは限定を意図するものではないと理解すべきである。それに対して、当業者は、矯味剤、保存剤、付加的な有効成分などのような種々の随意の成分が含まれることを理解しており、一方でそれもまた本発明の実施態様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品懸濁製剤であって、
a.製剤中に懸濁された、ホルモテロール又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子、
b.製剤中に懸濁された、シクレソニド又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子、及び
c.1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤
を含有する懸濁製剤。
【請求項2】
請求項1記載の医薬品懸濁製剤であって、
a.製剤中に懸濁された、超微粉砕されたホルモテロール又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子、
b.製剤中に懸濁された、超微粉砕されたシクレソニド又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子、
c.エタノール、
d.1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤、及び場合により
e.界面活性剤
を含有する懸濁製剤。
【請求項3】
3質量%未満のエタノールを含有する、請求項1又は2記載の懸濁製剤。
【請求項4】
請求項1記載の医薬品懸濁製剤であって、
a.製剤中に懸濁された、超微粉砕されたホルモテロール又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子、
b.製剤中に懸濁された、超微粉砕されたシクレソニド又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の粒子、
c.1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤、及び
d.界面活性剤
を含有する懸濁製剤。
【請求項5】
R,R−ホルモテロールを含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の懸濁製剤。
【請求項6】
フマル酸ホルモテロール二水和物を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の懸濁製剤。
【請求項7】
界面活性剤としてオレイン酸を含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の懸濁製剤。
【請求項8】
0.001〜0.1%(質量/質量)のオレイン酸を含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の懸濁製剤。
【請求項9】
噴射剤としてHFA227を含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の懸濁製剤。
【請求項10】
クロモグリク酸二ナトリウムを、治療学的及び/又は予防学的に有効でない濃度で含有する、請求項1記載の懸濁製剤。
【請求項11】
一日一回の投与計画で投与される、請求項1記載の懸濁製剤。

【公表番号】特表2006−527237(P2006−527237A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516140(P2006−516140)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051067
【国際公開番号】WO2004/110460
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(390019574)アルタナ ファルマ アクチエンゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】ALTANA Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2、 D−78467 Konstanz、 Germany
【Fターム(参考)】