説明

ホログラフィック情報再生方法およびホログラフィック情報再生装置

【課題】ホログラフィック記録媒体の記録材料の収縮があっても、情報を良好に読出可能とする。
【解決手段】少なくとも記録層12を有するホログラフィック記録媒体10にレーザ光から生成した読出光OBを光学系を用いて照射して記録層12に記録された干渉縞Sから再生光PBを得るホログラフィック情報再生方法である。この方法では、距離センサ34により、記録層12の位置を厚み方向について測定し、記録層12と読出光OBの厚み方向についての相対的な位置関係が一定になるように、ホログラフィック記録媒体の位置または光学系を制御しつつ、読出光OBを照射して干渉縞から再生光を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック情報再生方法およびホログラフィック情報再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を高密度に記録する技術として、ホログラフィを利用した光情報記録装置(ホログラフィック記録装置)が開発されている。ホログラフィック記録は、情報が入力された情報光と、この情報光と同じ波長の参照光とを記録媒体中の記録層で重ね合わせ、そのときにできる干渉縞を記録することによって行われる。記録された情報を再生するときには、記録時の参照光と同じ波長の光を同じ角度で干渉縞に照射することで、干渉縞において情報光と同等の光を反射させる。
【0003】
ところで、ホログラフィック記録においては、多重記録に伴い記録材料が反応し、徐々に記録材料が収縮してしまう。そのため、情報を記録層に記録するに従い、干渉縞の位置と向きが変化し、記録時と同じ条件で参照光を照射しても得られる再生信号の品質が低下するという問題がある。
【0004】
従来、この問題を回避するためには、記録および定着時の光照射による記録材料の収縮を低く抑える必要があった。フォトポリマ材料への記録原理として、フォトポリマ中のモノマーの重合反応を用いる場合、記録材料の収縮は回避が困難である。そこで、重合収縮が小さいモノマー種を用い、かつフォトポリマ中への添加量を最適化することにより、収縮率を0.1%以下に抑制することが検討されている(非特許文献1,2)。
【0005】
【非特許文献1】コリニア記録技術,「日経エレクトロニクス」,日経BP,2005年1月17日号
【非特許文献2】Kimihiro Saito and Seiji Kobayashi, Analysis of Micro-Reflector 3-Doptical disk recording, ODS2006-WA4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、重合性モノマーの量を少なくすると、S/N比が低下し、記録容量も低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、記録材料の収縮があっても、情報を良好に読出可能とするホログラフィック情報再生方法およびホログラフィック情報再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するための本発明は、少なくとも記録層を有するホログラフィック記録媒体にレーザ光から生成した読出光を光学系を用いて照射して前記記録層に記録された干渉縞から再生光を得るホログラフィック情報再生方法であって、位置センサにより、前記記録層の位置を厚み方向について測定し、前記記録層と前記読出光の前記厚み方向についての相対的な位置関係が一定になるように、前記ホログラフィック記録媒体の位置または前記光学系を制御しつつ、前記読出光を照射して干渉縞から再生光を得ることを特徴とする。
【0009】
このようなホログラフィック情報再生方法によれば、ホログラフィック記録により記録層が収縮したとしても、記録層と読出光との、記録層の厚み方向についての位置関係が一定に保たれる。そのため、情報の再生時において、干渉縞と光線との位置関係が記録時に近くなり、再生時のS/N比を良好にすることができる。
【0010】
前記ホログラフィック記録媒体の位置制御は、前記ホログラフィック記録媒体を前記記録層の厚み方向に移動させるアクチュエータを用いて行うことができる。このように、記録媒体を位置制御することで、光線を記録層の厚み方向に動かすために光線を制御する必要がないので、光学系の制御を従来と同様の方法で行うことができ、簡易に良好なS/N比を得ることができる。
【0011】
前記位置センサにより測定する記録層の厚み方向についての位置は、前記記録層の前記読出光が入射する側の他の層との界面または前記記録層の前記読出光が入射する側とは反対側の他の層との界面とすることができる。
【0012】
前記ホログラフィック記録媒体の前記記録層としては、光の照射により前記記録層の平均屈折率が低下する光記録組成物を用いることが望ましい。
【0013】
このように、光の照射により記録層の平均屈折率が低下する光記録組成物を記録層に用いることで、記録層の収縮による干渉縞の角度の変化を光学的に相殺し、高いS/N比の再生信号を得ることができる。
なお、平均屈折率とは、系全体の屈折率の平均であり、光の照射により、局所的に物質移動による屈折率の上昇があったとしても、全体の平均として屈折率が低下する場合には、平均屈折率は低下しているということである。
【0014】
前記位置センサとしては、当該位置センサと前記記録層との距離を測定する距離センサを用いることが可能である。
【0015】
前記した課題を解決する本発明は、少なくとも記録層を有するホログラフィック記録媒体に読出光を照射して前記記録層に記録された干渉縞から再生光を得るホログラフィック情報再生装置であって、レーザ光を出射するレーザ装置と、前記レーザ光から前記読出光を生成して前記記録層に集光させる光学系と、前記ホログラフィック記録媒体を前記記録層の厚み方向に移動させるアクチュエータと、前記記録層の位置を厚み方向について測定する位置センサと、前記位置センサが測定した前記記録層の位置に基づき、前記記録層の位置が一定になるように前記アクチュエータを作動させる制御装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、光学系を制御することで同様の効果を得ることもできる。すなわち、少なくとも記録層を有するホログラフィック記録媒体に読出光を照射して前記記録層に記録された干渉縞から再生光を得るホログラフィック情報再生装置であって、レーザ光を出射するレーザ装置と、前記レーザ光から前記読出光を生成して前記記録層に集光させる光学系と、前記ホログラフィック記録媒体に対する前記読出光の相対的位置を前記記録層の厚み方向に移動させるため、前記光学系に設けられたアクチュエータと、前記記録層の位置を厚み方向について測定する位置センサと、前記位置センサが測定した前記記録層の位置に基づき、前記記録層に対する前記読出光の相対的位置が一定になるように前記アクチュエータを作動させる制御装置とを備えることを特徴とする構成とすることもできる。
【0017】
このようなホログラフィック情報再生装置によれば、ホログラフィック記録により、記録層が収縮したとしても、記録層と読出光との記録層の厚み方向についての位置関係が制御装置およびアクチュエータにより一定に保たれる。そのため、情報の再生時において、干渉縞と光線との位置関係が記録時に近くなり、再生時のS/N比を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のホログラフィック情報再生方法およびホログラフィック情報再生装置によれば、ホログラフィック情報の再生時に光線と記録層の位置関係を記録時に近くすることができ、再生時に良好なS/N比を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明のホログラフィック情報再生装置およびホログラフィック情報再生方法について図面を参照しながら説明する。参照する図において、図1は、本発明の実施形態に係るホログラフィック情報再生装置の構成を示す図であり、図2は、ホログラフィック記録媒体の層構成を示す図である。
【0020】
図1に示すように、実施形態に係るホログラフィック情報再生装置1は、ホログラフィック記録媒体10に干渉縞を記録し、また、記録された干渉縞から情報を再生する装置である。
まず、ホログラフィック記録媒体10の構成について簡単に説明する。
ホログラフィック記録媒体10は、図2に示すように樹脂製の基板11上に記録層12が設けられ、記録層12の上に、適宜な厚さで記録または再生などに用いるレーザ光を実質的に透過可能な保護層13が設けられている。ホログラフィック記録媒体10の構成は、記録層12が設けられていれば、この構成に限られるものではなく、これらの層の他に、反射層や、トラッキングサーボのためのサーボ層、レーザ光の波長により選択的に透過する選択反射層などを任意に設けてもよい。
【0021】
記録層12は、例えば、重合性基を有する色素からなり、光照射で重合反応が起こり高分子化するいわゆる重合性ポリマーである。記録層12を構成する光記録組成物は、後に詳述するように、光の照射により平均屈折率が低下するものを用いるのが好ましい。
【0022】
ホログラフィック情報再生装置1は、レーザ装置21から出射されたレーザ光LBをビームスプリッタ23により情報光IBと参照光RBとに分け、これらをホログラフィック記録媒体10に集束させて、記録層12に干渉縞を形成して情報を記録するものである。
なお、参照光RBは、情報の再生時には読出光OBとして用いられる。
【0023】
具体的にホログラフィック情報再生装置1の構成を説明すると、レーザ装置21の光路上には、コリメートレンズ22、ビームスプリッタ23が順に配置されている。
レーザ装置21は、公知のレーザを出射する装置を用いることができ、高記録密度でホログラフィック記録媒体10に情報を記録するためには、短波長のレーザ、例えば波長405nmの青紫色レーザを用いるとよい。
【0024】
コリメートレンズ22は、レーザ光LBを平行光に収束するレンズである。
【0025】
ビームスプリッタ23は、例えば、2つのプリズムを僅かな隙間を介して向かい合わせて構成したもので、レーザ光LBを直進する情報光IBと、直角に反射されて曲げられた参照光RBとに分けるものである。
【0026】
直進した情報光IBの光路上には、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)26が設けられている。空間光変調器26は、入力されたデジタルデータを、2次元の格子状のパターンとして表示する素子であり、例えば、光を通す格子点を「1」、光を通さない格子点を「0」といったオン・オフの情報を格子状に配列する。空間光変調器26により、情報光IBの横断面に画像として情報が入力される。
【0027】
ビームスプリッタ23で分岐した参照光RBの光路上および空間光変調器26を通過した情報光IBの光路上には、それぞれミラー24a,24bが設けられ、それぞれの光は、反射により曲げられている。各ミラー24a,24bで反射した光の光路上には、それぞれ対物レンズ25a,25bが設けられ、記録層12上の一点に情報光IBおよび参照光RB(読出光OB)を収束させている。
【0028】
情報光IBの光路上には、シャッタ28が配置され、情報光IBのオン・オフを切り替えるようになっている。もっとも、空間光変調器26をシャッタ28の代わりにしてもよい。
【0029】
これらの光学系には、公知のように、適宜、光の分岐比を調整する素子や、光量を調整する素子を設けることができる。
【0030】
ホログラフィック記録媒体10は、台座31上に、情報光IBおよび参照光RBが照射される側に配置される。台座31は、圧電素子などのアクチュエータ33により、ホログラフィック記録媒体10の厚み方向に平行移動可能となっている。台座31には、開口31aが形成されている。台座31の後(ホログラフィック記録媒体10の反対側)には、開口31aに対面して再生光PBを検出するための光検出器27が配置されている。光検出器27は、例えば、格子状の受光画素を有するCCD(Charge-Coupled Device)などにより構成される。光検出器27は、各受光画素で受光した光の強さを電気信号に変換して制御装置40へ出力する。
【0031】
台座31は、回転ステージ32により情報光IBおよび参照光RBに対する角度を変えることが可能である。回転ステージ32を作動させながら、複数の角度で情報光IBおよび参照光RBを照射することで、同一箇所に角度が異なる複数の干渉縞を記録することが可能である。なお、図示は省略するが、台座31は、公知のように、モータによる回転または平行移動により、ホログラフィック記録媒体10の平面方向に移動可能にしておくことで、ホログラフィック記録媒体10の全面に干渉縞Sを記録し、または干渉縞Sから情報を再生することが可能である。
【0032】
ホログラフィック記録媒体10の正面には、距離センサ34が配置されている。距離センサ34としては、例えばレーザフォーカス方式の変位センサを用いることができる。記録層12の収縮により変位が大きいのは、台座31から離れている側なので、距離センサ34は、記録層12と、記録層12に読出光OBが入射する側の他の層(本実施形態では保護層13)との界面の位置を検出するように設定されている。もっとも、台座31がホログラフィック記録媒体10を、入射面側において支持する場合には、記録層12と、記録層12の読出光OBが入射する側とは反対側の他の層(本実施形態では基板11)との界面を検出するように設定するとよい。距離センサ34が測定した距離(つまり、記録層12の位置)は、制御装置40へ出力される。
【0033】
制御装置40は、各光学系の制御(例えば、レーザ装置21のオン・オフや、対物レンズ25bの位置制御およびシャッタ28の切換制御など)を行い、空間光変調器26への情報の入力をするとともに、距離センサ34が測定した記録層12の位置に基づき、アクチュエータ33を作動させる。具体的には、制御装置40は、ホログラフィック記録媒体10に記録された干渉縞Sからの情報の再生時において、距離センサ34が測定した記録層12の位置が一定になるように、アクチュエータ33を作動させるように構成されている。例えば、記録層12と保護層13の界面の位置までの距離が所定の基準値より大きくなったら微小量だけ台座を読出光OBに近づける方(正確には、記録層12の厚み方向で読出光OB側)に移動させる。逆に、記録層12と保護層13の界面の位置までの距離が所定の基準値より小さくなったら微小量だけ台座31を読出光OBから遠ざける方(正確には、記録層12の厚み方向で読出光OBと反対側)に移動させる。
このように、制御装置40は、アクチュエータ33を作動させてホログラフィック記録媒体10の厚み方向への位置制御をしながら、読出光OBを照射し、光検出器27で読み出した情報を得るようになっている。
【0034】
以上のように構成されたホログラフィック情報再生装置1によるホログラフィック情報の記録と再生について説明する。参照する図において、図3(a)は、干渉縞の記録時の状態、(b)は、記録層の収縮時の状態、(c)は、干渉縞からの情報の再生の状態を示す断面図である。
【0035】
図3(a)に示すように、ホログラフィック情報(干渉縞S)を記録するとき、制御装置40は、レーザ装置21からレーザ光を出射するとともに、空間光変調器26により情報光IBに情報を入力して、記録層12上に干渉縞Sを形成する。記録層12内の重合性ポリマーは、光の強度が高い位置でより多くの重合反応が起き、記録層12内に屈折率の変調により干渉縞Sが記録される。そして、この重合反応に伴い、記録層12の光記録組成物は収縮する(図3(b)参照)。
【0036】
図3(b)に示すように、記録層12が収縮すると、干渉縞Sの位置が台座31側へ全体的に変位するとともに、干渉縞Sの角度および縞の間隔も変化する。なお、記録層12へ干渉縞Sを記録する回数が多くなる程、重合反応がより進み、収縮率αも大きくなり、上記の位置、角度および間隔の変化も大きくなる。
【0037】
そこで、本実施形態のホログラフィック情報再生装置1で干渉縞Sから情報を再生する場合、読出光OBは、参照光RBを照射したときと同じ角度および位置で照射しながら、距離センサ34で測定した記録層12の位置に基づき、記録層12が同じ位置になるようにアクチュエータ33を作動させる。図3(b)の例では、記録層12と保護層13の界面の位置は、記録時(図3(a))に比較して図における下側へ変位しているので、アクチュエータ33による台座31の位置制御により台座31およびホログラフィック記録媒体10は、図における上へ移動される。これにより、記録層12と保護層13の界面の位置が記録時と同じ位置になる(図3(c)参照)。これにより、干渉縞Sの位置は、記録時とおよそ同じ位置になるので、読出光OBが、干渉縞Sに当たり、再生光PBが出力される。再生光PBは、開口31aを通過して、光検出器27により検知されて、再生光PBに含まれる情報が制御装置40に出力される。
【0038】
このようにして、本実施形態のホログラフィック情報再生装置1およびこれを用いたホログラフィック情報再生方法によれば、再生時の干渉縞Sの記録層12の厚み方向についての位置を記録時とほぼ同じ位置にして、情報の再生を高S/N比で行うことができる。
【0039】
以上においては、一般的な重合性基を有するホログラフィック記録媒体10を用いてホログラフィック情報の記録および再生をする場合について説明したが、ホログラフィック記録媒体10の記録層12の用いる光記録組成物としては、光の照射により平均屈折率が低下する物質を用いるのがよい。なぜなら、図3(c)で示した再生時の状態では、干渉縞Sの角度および間隔は、記録時とは若干異なっており、そのため、読出光OBを干渉縞Sに照射して最も効率良くブラッグ反射を生じさせる角度は、記録時の参照光RBの角度(向き)から僅かにずれるからである。
【0040】
光の照射により平均屈折率が低下する場合、平均屈折率の低下により、干渉縞Sでブラッグ反射を生じさせる条件がずれ、これにより、干渉縞Sの角度および間隔の記録時に対するずれを補償できる。このような補償を良好に実現するためには、αを記録前と記録後を比較した記録層の厚みの変化率、n1を記録前の平均屈折率、n2を記録後の平均屈折率としたとき、
光学補償量C=(1−(n2/n1))/α が、
0.8≦C≦1.0
を満たす光記録組成物からなる記録層12を有するホログラフィック記録媒体を用いるのが望ましい。なお、収縮率αは、記録前の記録層の厚みをt1、記録後の記録層の厚みをt2としたとき、α=(t1−t2)/t1で得られる値である。また、平均屈折率は、系全体の屈折率であり、局所的な屈折率を意味しない。
【0041】
[記録層12の光記録組成物]
ここで、記録層12に用いる光記録用組成物について詳述する。記録層12は、後述する実施例で示した調合例を一例とするように、下記の組成物から適宜調製して、光学補償量Cが、0.8≦C≦1.0となるように構成するのが望ましい。光の照射に伴い、平均屈折率が低下するようにするには、重合性モノマーとして、光の照射により平均屈折率が低下する材料を選択する方法と、重合性モノマーとは別に光の照射により吸収スペクトルが変化(消色または発色)する材料を添加する方法がある。
【0042】
<重合性モノマー>
記録層12に用いる光記録用組成物は、重合性基を有する色素を少なくとも1種含むことが好ましい。ここで、本発明における「色素」とは、波長300〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかを吸収する化合物のことを称し、より好ましくは波長330〜700nmの紫外光または可視光を吸収する化合物のことを称し、さらに好ましくは350〜600nmの紫外光または可視光を吸収する化合物のことを称す。その際、その領域におけるモル吸光係数としては5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が最も好ましい。
【0043】
一般に、色素の屈折率は、吸収極大波長(λmax)付近からそれより長波長な領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な領域において非常に高い値を取り、色素によっては2を超え、さらには2.5を超えるような高い値をとる。重合性基を有する色素は、好ましくは吸収スペクトルにおいて、ホログラム再生光の波長よりも10〜200nm短波長であるλmaxを有し、より好ましくは30〜130nm短波長であるλmaxを有し、εが10000以上であり、より好ましくは20000以上であることが好ましい。
さらに、ホログラム再生光の波長におけるモル吸光係数εが100以下、より好ましくは100以下であり、0であることが最も好ましい。
【0044】
重合性基を有する色素において、該重合性基としては特に制限は無いが、ラジカル重合性、カチオン重合性、もしくはアニオン重合性のいずれかであることが好ましく、ラジカル重合性またはカチオン重合性であることが好ましく、ラジカル重合性であることが特に好ましく用いられる。重合性基がラジカル重合性の時は、重合性基としてアクリル基、メタクリル基、スチリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基部分を有することが好ましく、アクリル基またはメタクリル基を有することがより好ましい。重合性基がカチオン重合性またはアニオン重合性の時は重合性基としてオキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、N−ビニルカルバゾール部位のいずれかを有することが好ましく、オキシラン環またはオキセタン環を有することがより好ましい。これらの重合性基は単官能であってもよいし、多官能であってもよいし、光架橋反応を利用したものであってもよい。
【0045】
重合性基を有する色素のうち、色素部分として好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、フタロシアニン色素、アザポルフィリン色素、ポルフィリン色素、縮環芳香族系色素、ペリレン色素、アゾメチン色素、アントラキノン色素、金属錯体色素、アゾ色素などが挙げられ、より好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、フェノチアジン色素、縮環芳香族系色素、アゾ色素などが挙げられ、さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、アゾ色素などが挙げられる。
【0046】
その他に「色素ハンドブック」(大河原信他編 講談社 1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編 シーエムシー 1981年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編 シーエムシー 1986年)に記載される色素および染料も本発明の色素部分として用いることができる。
【0047】
重合性基を有する色素の一例として、好ましくは下記C−1からC−6が挙げられる。
【0048】
【化1】

【0049】
上記C1〜C6において、R1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アミノ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基のいずれかを表す。中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基がより好ましく、水素原子、ハロゲン原子が最も好ましい。R1で表される上記置換基は更に置換基を有してもよい。
【0050】
上記C1〜C6において、R2〜R4は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。中でも水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、水素原子、アルキル基が好ましい。R1〜R4で表されるアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基は更に置換基を有してよい。
【0051】
但し、C−1、C−4、C−6では、R1〜R4のうち、少なくとも1つ以上は重合性基を有する置換基を持つ。C−2ではR1、またはR2のうち少なくとも一つ以上の重合性基を有する置換基を持つ。C−3、C−5では、R1〜R3のうち少なくとも1つ以上の重合性基を有する置換基を持つ。
【0052】
XはO、S、Se、C(Rから選ばれる構造であり、R5は水素原子、もしくはアルキル基を表す。具体的にはメチル基が挙げられる。YはO、S、またはSeから選ばれる。
【0053】
R1〜R4で表されるアルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜15がより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ターシャリーオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0054】
R1〜R4で表されるアリール基としては炭素数6〜14が好ましく、炭素数6〜10がより好ましく、炭素数6が特に好ましい。このようなアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0055】
R1〜R4で表されるヘテロ環基としては炭素数4〜13が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数4〜5が最も好ましい。このようなヘテロ環基としてはピリジン基、チオフェン基、ピロール基、ピロリジン基、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基が挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0056】
R1で表されるハロゲン原子としては、例えばヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、フッ素原子などが挙げられ、これらの中でも、ヨウ素原子、臭素原子が好ましい。
【0057】
R1で表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜5が特に好ましい。このようなアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、プロピオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ターシャリーオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基などが挙げられる。該アルコキシ基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0058】
R1で表されるアリールオキシ基としては、炭素数6〜12が好ましく、炭素数6がより好ましい。このようなアリールオキシ基としては、例えばフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基などが挙げられる。該アリールオキシ基は、置換基で更に置換されていてもよい。
【0059】
R1で表されるアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜10が好ましく、炭素数2〜7がより好ましく、炭素数2〜5が特に好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、プロピオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ターシャリーオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。該アルキルオキシカルボニル基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0060】
R1で表されるアリールオキシカルボニル基としては、炭素数7〜12が好ましく、炭素数7がより好ましい。このようなアリールオキシカルボニル基としては、例えばフェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基などが挙げられる。該アリールオキシカルボニル基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0061】
R1で表されるカルバモイル基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。このようなカルバモイル基としては、例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ノルマルプロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、ノルマルブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、ターシャリーブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。該カルバモイル基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0062】
R1で表されるスルファモイル基としては炭素数0〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。このようなスルファモイル基としては、例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ノルマルプロピルスルファモイル基、イソプロピルスルファモイル基、ノルマルブチルスルファモイル基、イソブチルスルファモイル基、ターシャリーブチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。該スルファモイル基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0063】
R1で表されるアミノ基としては炭素数0〜12が好ましく、炭素数1〜6がより好ましい。また1置換でも2置換でもよい。このようなアミノ基としては、例えばメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ノルマルプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ノルマルブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、ターシャリーブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。該アミノ基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0064】
R1で表されるアシルオキシ基としては、炭素数2〜12が好ましく、炭素数2〜6がより好ましい。このようなアシルオキシ基としては、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ノルマルプロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ノルマルブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、ターシャリーブチルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基などが挙げられる。該アシルオキシ基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0065】
R1で表されるアシルアミノ基としては、炭素数2〜12が好ましく、炭素数2〜6がより好ましい。このようなアシルアミノ基としては、例えばメチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ノルマルプロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基、ノルマルブチルカルボニルアミノ基、イソブチルカルボニルアミノ基、ターシャリーブチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、アクリロイルアミノ基などが挙げられる。該アシルアミノ基は置換基で更に置換されていてもよい。
【0066】
上記置換基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基、ヘテロ環などが挙げられ、これらの置換基の中でもフェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、ヘテロ環が好ましく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基がより好ましく、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基が特に好ましい。
上記R1〜R4に置換する好ましい重合性基としては、下記P−1からP−3が挙げられる。
【0067】
【化2】

【0068】
前記P−1からP−3中、Wは、水素原子もしくはメチル基のいずれかを表し、Tは、−O−、及び−NR8−のいずれかを表し、R8は、水素原子もしくはアルキル基のいずれかを表し、qは、0又は1の整数を表す。
【0069】
前記R8におけるアルキル基の炭素数は、1〜5であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。これらは更に置換基を有していてもよい。
【0070】
上記置換基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、スルファモイル基、スルホンアミド基、オキシカルボニル基、ヘテロ環基などが挙げられ、これらの中でもアルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基がより好ましく、アシルオキシ基、アシルアミノ基が特に好ましい。
【0071】
前記一般式P−1からP−3のうち、P−1、P−2で表される重合性基が好ましく、P−1がより好ましい。具体的には、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、N−アクリロイルアミノ基、N−アクリロイル−N−アルキルアミノ基などが好ましい。前記置換基が、前記P−1で表される置換基であると、速やかに重合体を形成することがある。
【0072】
C−1においてR1〜R4で表される置換基としては、R1、R3、R4が水素原子、アルキル基であり、R2が重合性基を置換基として有するアルキル基であり、XがO、Sである場合が好ましく、更にR1、R3、R4が水素原子であり、R2が重合性基を置換基として有するアルキル基であり、XがSである場合がより好ましい。
【0073】
C−2においてR1〜R2で表される置換基としては、R1が重合性基を置換基として有するアルキル基、R2がアルキル基、アリール基である場合が好ましく、更にR1が重合性基を置換基として有するアルキル基、R2がアルキル基である場合がより好ましい。
【0074】
C−3においてR1〜R4で表される置換基としてはR1、R2、R3が無置換あるいは重合性基を置換基として有するアルキル基であり、YがOまたはSである場合が好ましく、R1およびR2が無置換のアルキル基、R3が重合性基を置換基として有するアルキル基であり、YがOである場合がより好ましい。
【0075】
C4においてR1〜R4で表される置換基としては、R1は水素原子、アルキル基、R2はまたR3が重合性基を置換基として有するアルキル基、R4はアルキル基であり、XがS,O、C(Me)2であり、YがS,Oである場合が好ましく、R1は水素原子、R2はまたR3が重合性基を置換基として有するアルキル基、R4はアルキル基であり、XがO、C(Me)2であり、YがS,Oである場合ある場合がより好ましく、R1は水素原子、R2が重合性基を置換基として有するアルキル基、R3およびR4はアルキル基であり、XがC(Me)2であり、YがOである場合が最も好ましい。
【0076】
C5においてR1〜R3で表される置換基としては、R1は水素原子、アルキル基、R2は重合性基を置換基として有するアルキル基、XはS,O、C(Me)2であり、YはO、またはSである場合が好ましく、R1は水素原子、R2は重合性基を置換基として有するアルキル基、XがO、C(Me)2であり、YがSである場合がより好ましい。
【0077】
C−6においてR1〜R4で表される置換基としては、R1、R3、R4が水素原子、アルキル基であり、R4が重合性基を置換基として有するアルキル基であり、XがO、Sである場合が好ましく、更にR1、R3、R4が水素原子であり、R4が重合性基を置換基として有するアルキル基であり、XがSである場合がより好ましい。
【0078】
一般式C1〜C6の中ではC2、C4、C5、C6が好ましく、C4、C5がより好ましく、C4が最も好ましい。
【0079】
以下に重合性基を有する色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、これらのモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
【化3】

【0081】

【化4】

【0082】
【化5】

【0083】
【化6】

【0084】
【化7】

【0085】
重合性基を有する色素の光記録用組成物における含有量は、1〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。前記含有量が1質量%未満であると、感度が低下することがあり、40質量%を超えると多重記録特性が悪化することがある。
【0086】
<その他の重合性モノマー>
記録層12の光記録用組成物は、重合性基を有する色素の他に必要に応じてその他の重合性モノマーを含有しても良い。その他の重合性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル基やメタクリル基のような不飽和結合を有するラジカル重合性のモノマー、エポキシ環やオキセタン環のようなエーテル構造を有するカチオン重合系モノマーなどが挙げられる。これらのモノマーは、単官能であってもよいし、多官能であってもよい。また、光架橋反応を利用したものであってもよい。
【0087】
前記ラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジ(ウレタン−アクリレート)オリゴマー、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ナフト−1−オキシエチルアクリレート、2−カルバゾイル−9−イルエチルアクリレート、(トリメチルシリルオキシ)ジメチルシリルプロピルアクリレート、ビニル−1−ナフトエート、N−ビニルカルバゾール、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート、ペンタブロモフェニルアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどが挙げられる。
【0088】
前記カチオン重合型系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサングリシジルエーテル、ビニルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、特開2007−119731号に記載の構造式(M1)〜(M6)で表される化合物などが挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
これら重合性モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。その他の重合性モノマーを用いる場合の前記光記録用組成物中における含有量は、全重合性モノマーの固形分中、1〜40質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。また、本発明ではラジカル重合性モノマーが特に好ましく使用される。
【0090】
<発色もしくは消色する化合物>
光記録用組成物は、光記録露光時もしくは定着時に発色もしくは消色する化合物を少なくとも1種含むことも好ましい。発色する化合物とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の領域にて、吸収スペクトルにおいてλmaxが長波長化、吸光係数εが増大のいずれかが起こるような反応を示し、さらに好ましくはその両方が起こるような反応を示す化合物を意味する。また、発色反応は200〜900nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜600nmの波長領域で起こることが更に好ましい。
【0091】
光記録用組成物において発色反応が進行する場合、元の状態から吸収が長波長化或いはεが増大し、かつ再生光波長に吸収を有さない発色体となることができる発色化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。発色化合物からの発色反応は、熱反応や光反応により進行し、光反応の場合は発色化合物への光照射による直接励起で発色しても良いし、かつ/或いは増感色素への光照射により生成する増感色素励起状態からの電子移動またはエネルギー移動を利用した発色でも良い。
【0092】
光記録用組成物は、再生時には、記録材料が再生光波長に吸収を有さないか、ほとんど吸収を有さないことが好ましい。
【0093】
したがって、発色化合物が発色体になる際には、再生波長に吸収を有さずに、それよりも短波長側に吸収を有する発色体となることが好ましく、具体的には再生波長と再生波長から200nm短波長な波長の間の領域に、吸収極大を有する発色体となることが好ましく、再生波長と再生波長から150nm短波長な波長の間の領域に吸収極大を有する発色体となることがより好ましい。また増感色素は、光記録またはその後の定着の際に分解してその吸収及び増感機能を失うことが好ましい。
【0094】
増感色素としては好ましくは、波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかを吸収して励起状態を生成するものであり、より好ましくは波長300〜700nmの紫外光または可視光を吸収して励起状態を生成するものである。
【0095】
増感色素として好ましくはシアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、ベンジリデン色素、オキソノール色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、フタロシアニン色素、アザポルフィリン色素、ポルフィリン色素、縮環芳香族系色素、ペリレン色素、アゾメチン色素、アントラキノン色素、金属錯体色素、メタロセン色素等が挙げられ、より好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、縮環芳香族系色素、金属錯体色素、メタロセン色素が挙げられ、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、金属錯体色素、メタロセン色素が挙げられる。なお、金属錯体色素としては特にRu錯体色素が、メタロセン色素としては特にフェロセン類が好ましい。
【0096】
その他に「色素ハンドブック」(大河原信他編 講談社 1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編 シーエムシー 1981年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編 シーエムシー 1986年)に記載される色素および染料も本発明の増感色素として用いることができる。なお、増感色素はこれらに限定されるものではなく、可視域の光に対して吸収を示す色素および染料であればどれでも用いることができる。これらの増感色素は、使用目的に応じて光源となるレーザの波長に合うように選択することができ、用途によっては2種類以上の増感色素を組み合わせて使用しても構わない。
【0097】
なお、光記録用組成物をホログラム記録材料として用いる場合、材料は厚膜で使用しかつ記録光の多くが膜を透過する必要があるため、ホログラム露光波長における増感色素のモル吸光係数を小さくすることにより増感色素添加量を極力多くすることが高感度化のために好ましい。ホログラム露光波長における増感色素のモル吸光係数は1以上10000以下であることが好ましく、1以上5000以下であることがより好ましく、5以上2500以下であることがさらに好ましく、10以上1000以下であることが最も好ましい。
【0098】
また、ホログラム記録材料の記録波長光の透過率は10〜99%であることが好ましく、20〜95%であることがより好ましく、30〜90%であることがさらに好ましく、40〜85%であることが、回折効率、感度、記録密度(多重度)の点で最も好ましい。したがって、そのようになるようにホログラム記録材料の膜厚に合わせて増感色素の記録波長におけるモル吸光係数と添加モル濃度を調整することが好ましい。
【0099】
また、増感色素のλmaxは記録光波長(或いは定着光波長)よりも短波長であることがより好ましく、記録光波長と記録光波長から100nm短波長な範囲の間(或いは定着光波長と定着光波長から100nm短波長な範囲の間)であることがさらに好ましい。
【0100】
以下に増感色素の具体的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0101】
【化8】

【0102】
【化9】

【0103】
【化10】

【0104】
【化11】

【0105】
【化12】

【0106】
【化13】

【0107】
【化14】

【0108】
【化15】

【0109】
なお、光記録波長が532nmのYAGレーザ2倍波の場合、増感色素としてはベンゾオキサゾール環を有するトリメチンシアニン色素、バツビツール酸性核を有するメロシアニン色素、ピラゾリジンジオン酸性核を有するベンジリデン色素、Ru錯体色素、フェロセン類が特に好ましく、400〜415nmのGaNやInGaN等のレーザの場合、ベンゾオキサゾール環を有するモノメチンシアニン色素、メロシアニン色素、Ru錯体色素、フェロセン類が特に好ましい。
【0110】
増感色素の好ましい例としては他に、特開2005−99751号に記載されている。増感色素は市販品であるか、あるいは公知の方法により合成することができる。
【0111】
発色成分として好ましくは、以下の組み合わせが挙げられる。これらの具体例として好ましくは、特開2005−99751号に記載されている例が挙げられる。
i)酸発色型発色化合物と、さらに酸発生剤を含む組み合わせ。必要によりさらに酸増殖剤を含む組み合わせ。
酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、金属アレーン錯体、トリハロメチル置換トリアジン、スルホン酸エステルまたはイミドスルホネートが好ましく、ジアリールヨードニウム塩またはスルホニウム塩がより好ましい。好ましい具体例としては特開2005−99753号に記載されている例が挙げられる。
【0112】
酸発生剤として好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0113】
【化16】

【0114】
酸発色型発色化合物から生成する発色体はキサンテン色素、フルオラン色素またはトリフェニルメタン色素が好ましい。酸発色型発色化合物の特に好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0115】
【化17】

【0116】
また、酸発色型発色化合物としては、酸(プロトン)付加により発色するシアニンベース(ロイコシアニン色素)も好ましく用いられる。シアニンベースの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0117】
【化18】

【0118】
【化19】

【0119】
酸増殖剤としての好ましい例は、具体的には、特開2005−17730号に記載されている例が挙げられる。
ii)塩基発色型発色化合物と、塩基発生剤を含む組み合わせ、必要によりさらに塩基増殖剤を含む組み合わせ。
塩基発生剤および塩基増殖剤としては、特開2005−17354号に記載されている例が好ましく挙げられ、塩基発色型発色化合物としては、解離型アゾ色素、解離型アゾメチン色素、解離型オキソノール色素、解離型キサンテン色素、解離型フルオラン色素、解離型トリフェニルメタン型色素の非解離体が挙げられる。
【0120】
塩基発色型発色化合物の特に好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0121】
【化20】

【0122】
【化21】

【0123】
【化22】

【0124】
iii)増感色素励起状態との電子移動またはエネルギー移動により共有結合を切断する機能を有する有機化合物部位と、共有結合が切断されることで発色体となる特徴を有する有機化合物部位が共有結合している化合物を含む場合。必要によりさらに塩基を含む組み合わせ。
【0125】
特に好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。なお、図中の矢印は共有結合の位置を表す。
【0126】

【化23】

【0127】
【化24】

【0128】
【化25】

【0129】
なお、塩基として好ましくは、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、トリベンジルアミン、テトラベンジルエチレンジアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等が挙げられる。
【0130】
iV)増感色素励起状態との電子移動により反応し、吸収形を変化させることができる化合物を含む場合。
いわゆるエレクトロクロミック化合物を好ましく用いることができる。本発明で好ましく用いられるエレクトロクロミック化合物は、ポリピロール類(好ましくは例えばポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(N−メチルインドール)、ポリピロロピロール)、ポリチオフェン類(好ましくは例えばポリチオフェン、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリイソチアナフテン、ポリジチエノチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン)、ポリアニリン(好ましくは例えばポリアニリン、ポリ(N−ナフチルアニリン)、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(アニリン−m−スルホン酸)、ポリ(2−メトキシアニリン)、ポリ(o−アミノフェノール)、ポリ(ジアリルアミン))、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、Coピリジノポルフィラジン錯体、Niフェナントロリン錯体、Feバソフェナントロリン錯体、ビオローゲン類、ポリビオローゲン類、ランタノイドジフタロシアニン類、スチリル色素類、TNF類、TCNQ/TTF錯体類、Ruトリスビピリジル錯体類などである。
【0131】
次に消色する化合物について説明する。本発明において消色する化合物とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の領域にて、吸収スペクトルのピーク波長λmaxが短波長化、εが減少のいずれかが起こるような反応を示し、さらに好ましくはその両方が起こるような反応を示す化合物を意味する。また、消色反応は200〜900nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜600nmの波長領域で起こることがさらに好ましい。
【0132】
光記録用組成物において消色反応が進行する場合、元の状態から吸収が短波長化かつ/或いはεが減少し、再生光波長に吸収を有さない消色体となることができる消色化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。消色化合物からの消色反応は、熱反応や光反応により進行し、光反応の場合は消色化合物への光照射による直接励起により消色しても良いし、或いは増感色素への光照射により生成する増感色素励起状態からの電子移動またはエネルギー移動を利用した消色成分からの消色でも良い。
【0133】
消色反応の好ましい組み合わせとして、
(A)該消色化合物が光記録波長もしくは定着光波長に吸収を有する色素であり、光記録露光もしくは定着光照射の際に光を吸収し、その結果自身を消色する。
(B)少なくとも光記録波長もしくは定着光波長に吸収を有する増感色素と再生光の波長のモル吸光係数εが1000以下、好ましくは100以下の消色化合物を有し、光記録露光もしくは定着光照射の際増感色素が光を吸収し、その励起エネルギーを用いた電子移動またはエネルギー移動により消色化合物を消色する。
(C)光反応もしくは熱反応により消色剤前駆体か消色剤が発生し、これが消色化合物を消色する。消色剤前駆体からの消色剤の発生は消色剤前駆体の熱分解、消色剤前駆体への光照射による光分解、または増感色素の励起状態から消色剤前駆体への電子移動またはエネルギー移動などにより起こる。消色剤はラジカル、酸、塩基、求核剤、求電子剤、一重項酸素のいずれかであることが好ましく、したがって、消色剤前駆体はラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤、求核剤発生剤、求電子剤発生剤、三重項酸素のいずれかであることが好ましい。消色前駆体としては、ラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤のいずれかであることがより好ましい。
【0134】
先述した(A)の方式で光記録露光により消色反応が進行する場合、消色化合物の好ましい例としては先述した増感色素の例が挙げられる。この場合、消色化合物のλmaxは記録光波長と記録光波長から100nm短い波長域の間にあることが好ましい。
【0135】
一方、先述した(A)の方式で定着光照射により消色反応が進行する場合と(B)および(C)の方式の場合では、記録光波長における吸収が小さな消色化合物を用いる。その際、消色化合物としては記録光波長のモル吸光係数が1000以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、0であることが最も好ましい。消色化合物のλmaxは記録光波長と記録光波長から200nm短い波長域の間にあることが好ましい。
【0136】
(A)の定着光で消色する場合と(B)および(C)の場合において、消色化合物としては、好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、ベンジリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、フタロシアニン色素、アザポルフィリン色素、ポルフィリン色素、縮環芳香族系色素、ペリレン色素、アゾメチン色素、アゾ色素、アントラキノン色素、金属錯体色素のいずれかであり、さらに好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、ベンジリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、アゾメチン色素、アゾ色素、金属錯体色素のいずれかである。
【0137】
特に、(C)の方法において消色剤が酸の時、消色化合物としては、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型キサンテン色素、解離型アゾ色素の解離体であることが好ましく、解離型ベンジリデン色素、解離型オキソノール色素、解離型アゾ色素の解離体であることがより好ましい。ここで解離型色素とは−OH基、−SH基、−COOH基、−NHSOR基や−CONHSOR基等、pKaが2〜14程度の範囲内にある活性水素を有し、プロトンが解離することによって、吸収が長波長化または高ε化する色素の総称である。したがって、解離型色素をあらかじめ塩基で処理して解離型としておけば、あらかじめ長波長化または高ε化した色素を調製することができ、光酸発生により非解離型に変化させ消色(短波長化または低ε化)することが可能となる。
【0138】
また特に、消色剤が塩基の時は、あらかじめ酸で処理して発色体としたトリフェニルメタン色素、キサンテン色素、フルオラン色素等の酸発色性色素発色体を消色化合物として用いれば、光塩基発生により非プロトン付加体に変化させ消色(短波長化または低ε化)することが可能となる。
【0139】
以下に本発明の消色化合物の具体的な例を挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0140】
【化26】

【0141】
【化27】

【0142】
【化28】

【0143】
【化29】

【0144】
【化30】

【0145】
また、消色化合物としては、光記録露光もしくは定着光照射により生成する増感色素励起状態からの電子移動により結合が切断し、その結果消色することができる以下の消色化合物の例も好ましく挙げることができる。
【0146】
これらの消色化合物は元々はシアニン色素であるが、電子移動による結合の切断によりシアニンベース(ロイコシアニン色素)に変化し、吸収の消色または短波長化が起こるものである。
【0147】
【化31】

【0148】
消色剤前駆体が酸発生剤の場合、好ましい例としては前述の酸発生剤の例が挙げられる。ラジカル発生剤の場合、好ましい具体例としては特開2005−115361号に記載されている例が挙げられる。塩基発生剤の場合、好ましい例としてはアニオン重合開始剤が挙げられ、具体的には特開2005−17354号に記載されている例が挙げられる。
【0149】
消色反応の具体例として好ましくは、特開2005−309359号に記載されている例が挙げられる。
【0150】
<光重合開始剤>
光記録用組成物は光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、記録光に感度を有するものであれば特に限定されるものではなく、光ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等を使用することができる。重合反応の効率の点では光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0151】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−2−オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニルチタニウム〕等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、照射する光の波長に合わせて後述する増感色素を併用してもよい。
またカチオン重合開始剤としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0152】
光記録用組成物における前記光重合開始剤の含有量は、0.01〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0153】
<マトリックス形成成分>
光記録媒体の記録層には、一般にマトリックスと呼ばれる記録や保存に関わるモノマーや光重合開始剤を保持するためのポリマーが含まれる。マトリックスは、塗膜性、膜強度、およびホログラム記録特性向上の効果を高める目的で使用されるものである。本発明の光記録用組成物は、マトリックス形成成分である硬化性化合物を含むことができる。前記硬化性化合物としては、熱硬化性化合物、触媒などを使用して光照射により硬化する光硬化性化合物を用いることができ、熱硬化性化合物が好ましい。
【0154】
記録層に含まれる熱硬化性マトリックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるウレタン樹脂やオキシラン化合物から形成されるエポキシ化合物、メラミン化合物、フォルマリン化合物、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等の不飽和酸のエステル化合物やアミド化合物を重合して得られる重合体などが挙げられる。中でもイソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるポリウレタンマトリックスが好ましく、記録の保持性から考えて、多官能イソシアネートと多官能アルコールから形成される3次元ポリウレタンマトリックスが最も好ましい。
【0155】
以下に、ポリウレタンマトリックスを形成することができる、多官能イソシアネートおよび多官能アルコールについて具体例を述べる。
【0156】
前記多官能イソシアネートとしては、具体的には、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1−メトキシフェニレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、シクロブチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,3−ビス(メチルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ドデカメチレン−1,12−ジイソシアネート、フェニル−1,3,5−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−2,4’,4”−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,2’,4’−テトライソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,2’,5’−テトライソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリイソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、3,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−2,4,2’−トリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4,4’−トリイソシアネートリジンジイソシアネートメチルエステル、またはこれらの有機イソシアネート化合物の化学量論的過剰量と多官能性活性水素含有化合物との反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー、などが挙げられる。これらの中でも、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0157】
前記多官能アルコールとは、多官能アルコール単独であってもよく、他の多官能アルコールと混合状態であってもよい。多官能アルコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、またはこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、などが挙げられる。
【0158】
光記録用組成物における前記マトリックス形成成分の含有量は、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましい。前記含有量が10質量%以下であれば、安定な干渉像を容易に得ることができ、95質量%以下であれば、回折効率の点で望ましい性能を得ることができる。
【0159】
<その他の成分>
光記録用組成物には、必要に応じて、光記録用組成物の貯蔵安定性を改良する目的で重合禁止剤や酸化防止剤を加えてもよい。
【0160】
前記重合禁止剤または酸化防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシヤリ−ブチルフェノール)、トリフェルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト,フェノチアジン、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0161】
前記重合禁止剤または酸化防止剤の添加量は、記録用モノマーの全量に対して3質量%以下が好ましい。前記添加量が3質量%を超えると、重合が遅くなるか、著しい場合は重合しなくなることがある。
【0162】
光記録用組成物には、必要に応じて増感色素を添加することもできる。該増感色素としては、「Research Disclosure,Vol.200,1980年12月、Item 20036」や「増感剤」(p.160〜p.163、講談社;徳丸克己・大河原信/編、1987年)等に記載された公知の化合物を使用することができる。
【0163】
前記増感色素としては、具体的には、特開昭58−15603号公報に記載の3−ケトクマリン化合物、特開昭58−40302号公報に記載のチオピリリウム塩、特公昭59−28328号公報、同60−53300号公報に記載のナフトチアゾールメロシアニン化合物、特公昭61−9621号公報、同62−3842号公報、特開昭59−89303号公報、同60−60104号公報に記載のメロシアニン化合物が挙げられる。
【0164】
また、「機能性色素の化学」(1981年、CMC出版社、p.393〜p.416)や「色材」(60〔4〕212−224(1987))等に記載された色素も挙げることができる。具体的には、カチオン性メチン色素、カチオン性カルボニウム色素、カチオン性キノンイミン色素、カチオン性インドリン色素、カチオン性スチリル色素が挙げられる。
【0165】
更に、クマリン(ケトクマリンまたはスルホノクマリンも含まれる)色素、メロスチリル色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等のケト色素;非ケトポリメチン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アントラセン色素、ローダミン色素、アクリジン色素、アニリン色素、アゾ色素等の非ケト色素;アゾメチン色素、シアニン色素、カルボシアニン色素、ジカルボシアニン色素、トリカルボシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素等の非ケトポリメチン色素;アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、キノリン色素、チアゾール色素等のキノンイミン色素等も分光増感色素に含まれる。
前記増感色素は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0166】
光記録用組成物には、該光記録用組成物から形成される記録層の感度を向上させる目的で光熱変換材料を含有させることもできる。
【0167】
前記光熱変換材料としては、特に制限はなく、目的とする機能や性能に応じて適宜選択することができ、例えば、フォトポリマとともに記録層へ添加する際の簡便さや、入射光の散乱などを引き起こさないといった特性から、有機染料色素が好ましく、また、記録に用いる光源の光を吸収、散乱しないといった点において、赤外線吸収色素が好ましい。
【0168】
前記赤外線吸収色素は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カチオン性色素、錯塩形成色素、キノン系中性色素などが好適である。また、前記赤外線吸収色素の極大吸収波長としては、600〜1,000nmの範囲が好ましく、特に700〜900nmの範囲がより好ましい。
【0169】
前記赤外線吸収色素の含有量は、本発明の光記録用組成物から形成された記録層において、赤外領域で最も吸光度が高い波長の吸光度で決定することができる。該吸光度としては、0.1〜2.5の範囲が好ましく、0.2〜2.0の範囲がより好ましい。
【0170】
光記録用組成物には、更に必要に応じて、重合時の体積変化を緩和するため、重合成分とは逆方向へ拡散する成分を添加してもよく、あるいは、酸開裂構造を有する化合物を添加してもよい。
【0171】
光記録用組成物は、情報を含んだ光の照射によって該情報の記録を行える各種のホログラフィック記録用組成物に利用可能であって、特に、ボリュームホログラフィック記録用組成物として好適である。
【0172】
なお、ホログラフィック記録用組成物が十分低い粘度ならばキャスティングすることによって記録層を形成することができる。一方、キャスティングできない高粘度である場合には、ディスペンサーを用いて下側基板に記録層を盛りつけ、この記録層上に上側基板で蓋をするように押し付けて、全面に広げて記録媒体を形成することができる。
【0173】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変更して実施することが可能である
例えば、前記実施形態においては、情報光IBと参照光RBとをビームスプリッタ23で分岐させていたが、必ずしもビームスプリッタ23で分岐させる必要はない。レーザ光LBをすべて空間光変調器26に通し、空間光変調器26において、レーザ光の中心付近を情報光、周囲を参照光とするようにしてもよい。また、例示したような透過型の空間光変調器26に代えて、小さなミラーを格子状に配置したDMD素子を用いてもよい。
【0174】
前記実施形態においては、読出光OBと記録層12の、記録層12の厚み方向についての相対的な位置関係を一定にするために、ホログラフィック記録媒体10を支持する台座31をアクチュエータ33で変位させるように構成したが、ホログラフィック記録媒体10は固定しておき、光学系を移動させて読出光OBと記録層12の位置関係を一定にすることもできる。例えば、図4に示すように、ミラー24a,24bを、それぞれ面直方向に変位させるアクチュエータ33a,33bを設け、距離センサ34で測定した記録層12の位置に基づき、読出光OBと記録層12の位置関係を一定にするようにアクチュエータ33a,33bを作動させてもよい。
【0175】
前記実施形態においては、位置センサの一例として距離センサを例示したが、記録層12の位置を直接または間接に測定できるセンサであれば、距離センサ以外のセンサを利用することもできる。例えば、ホログラフィック記録媒体10の保護層13に接触して保護層13の位置を測定するセンサを用い、記録層12の位置を間接的に取得しても構わない。
【0176】
前記実施形態においては、記録層12の他に、基板11および保護層13を設けた例を示したが、基板11および保護層13は、必ずしも必要ではない。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の実施形態に係るホログラフィック情報再生装置の構成を示す図である。
【図2】ホログラフィック記録媒体の層構成を示す図である。
【図3】(a)は、干渉縞の記録時の状態、(b)は、記録層の収縮時の状態、(c)は、干渉縞からの情報の再生の状態を示す断面図である。
【図4】ホログラフィック情報再生装置の変形例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0178】
1 ホログラフィック情報再生装置
10 ホログラフィック記録媒体
11 基板
12 記録層
13 保護層
21 レーザ装置
26 空間光変調器
27 光検出器
31 台座
32 回転ステージ
33 アクチュエータ
34 距離センサ
40 制御装置
IB 情報光
LB レーザ光
OB 読出光
PB 再生光
RB 参照光
S 干渉縞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも記録層を有するホログラフィック記録媒体にレーザ光から生成した読出光を光学系を用いて照射して前記記録層に記録された干渉縞から再生光を得るホログラフィック情報再生方法であって、
位置センサにより、前記記録層の位置を厚み方向について測定し、
前記記録層と前記読出光の前記厚み方向についての相対的な位置関係が一定になるように、前記ホログラフィック記録媒体の位置または前記光学系を制御しつつ、前記読出光を照射して干渉縞から再生光を得ることを特徴とするホログラフィック情報再生方法。
【請求項2】
前記ホログラフィック記録媒体の位置制御は、前記ホログラフィック記録媒体を前記記録層の厚み方向に移動させるアクチュエータを用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック情報再生方法。
【請求項3】
前記位置センサにより測定する記録層の厚み方向についての位置は、前記記録層の前記読出光が入射する側の他の層との界面または前記記録層の前記読出光が入射する側とは反対側の他の層との界面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホログラフィック情報再生方法。
【請求項4】
前記ホログラフィック記録媒体の前記記録層として、光の照射により前記記録層の平均屈折率が低下する光記録組成物を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のホログラフィック情報再生方法。
【請求項5】
前記位置センサとして、当該位置センサと前記記録層との距離を測定する距離センサを用いることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のホログラフィック情報再生方法。
【請求項6】
少なくとも記録層を有するホログラフィック記録媒体に読出光を照射して前記記録層に記録された干渉縞から再生光を得るホログラフィック情報再生装置であって、
レーザ光を出射するレーザ装置と、
前記レーザ光から前記読出光を生成して前記記録層に集光させる光学系と、
前記ホログラフィック記録媒体を前記記録層の厚み方向に移動させるアクチュエータと、
前記記録層の位置を厚み方向について測定する位置センサと、
前記位置センサが測定した前記記録層の位置に基づき、前記記録層の位置が一定になるように前記アクチュエータを作動させる制御装置とを備えることを特徴とするホログラフィック情報再生装置。
【請求項7】
少なくとも記録層を有するホログラフィック記録媒体に読出光を照射して前記記録層に記録された干渉縞から再生光を得るホログラフィック情報再生装置であって、
レーザ光を出射するレーザ装置と、
前記レーザ光から前記読出光を生成して前記記録層に集光させる光学系と、
前記ホログラフィック記録媒体に対する前記読出光の相対的位置を前記記録層の厚み方向に移動させるため、前記光学系に設けられたアクチュエータと、
前記記録層の位置を厚み方向について測定する位置センサと、
前記位置センサが測定した前記記録層の位置に基づき、前記記録層に対する前記読出光の相対的位置が一定になるように前記アクチュエータを作動させる制御装置とを備えることを特徴とするホログラフィック情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−48736(P2009−48736A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215774(P2007−215774)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】