説明

ホログラフィ又は光学可変印刷材料及びカスタム印刷方法

【課題】ホログラフィ又は光学可変印刷材料、及びホログラフィ又は光学可変転写材料から基板へカスタムホログラフィ又は光学可変画像を個別に印刷又は転写する方法の実現。
【解決手段】カスタムホログラフィ画像の生成を可能にする転写記録材料10は、複数のパネル20,22を形成する担体上の多層構造を含み、1つのパネル20に対応する多層構造の一部分はエンボス加工可能層を含み、各画素1,2,nは予め定められた角度α1で入射光を反射するように構成されている。隣接するパネルに対応する各画素1’,2’,m’は異なる予め定められた角度α2で入射光を反射するように構成されている。転写記録材料は、特定の利用分野により望まれるだけの数のパネルを有することができ、層の各々は、画素が入射光を或る角度αで反射するように構成されている状態でエンボス加工可能層を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本願に参照として内含される2002年9月10日付けの米国仮特許出願第60/319,541号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、ホログラフィ又は光学可変的な媒体、ホログラフィ又は光学可変的な媒体を提供する方法、及び基板上にホログラム又は光学可変画像を形成するための方法に関する。より詳細には、単数又は複数のパネルから基板上に画素を転写することにより基板上に個別にカスタマイズされたホログラフィ又は光学可変画像を印刷するために、複数のエンボス加工されたパネルを含む多層ホログラフィ又は光学可変的材料が提供される。
【背景技術】
【0003】
1次元、2次元又は3次元画像の外観をさまざまな基板上で複製することが望まれる場合、複数の利用分野において、ホログラフィ又は光学可変画像が使用されてきた。加飾及びセキュリティの利用分野では、エンボス加工されたホログラフィ画像を含む反射性の透明、半透明及び不透明な材料を使用することができる。ホログラフィ又は光学可変画像を含む薄いフィルムの利用分野の1つは、パスポート、クレジットカード、セキュリティパス、免許証、スタンプなどといったような文書の保護である。保護は、文書に対しホログラフィ又は光学可変フィルムを貼付し、かくしてかかる文書の偽造及び贋造を非常に困難なものにすることによって達成される。
【0004】
ホログラフィ又は光学可変フィルムの1例は、セキュリティデバイスといったような基板に対し半透明なホログラフィ又は光学可変転写ホイルフィルムを適用することを開示しているストラール他(Strahl et al)に対する米国特許第5,781,316号の中に見出だすことができる。この特許中で記述されているフィルムは、多数の熱可塑性又は熱硬化性層を支持するための熱安定性担体を含んでいる。多数のコーティング層からの担体の分離を可能にするため、担体に対し感熱性リリース層が適用される。ホログラフィフィルムのための外部表面として作用するべく、リリース層全体にわたり、耐摩耗性透明トップコートが適用される。トップコートは、その粘り強さを増大させるように処理又は硬化を受けることができる。トップコート全体にわたって適用されたエンボス加工可能層が、エンボス加工されたホログラフィ画像の印象を保持するように適合されている。エンボス加工されたホログラフィ又は光学可変画像を反射しかつ検分者が基板又は文書上に転写されたホログラフィ又は光学可変証印を見ることができるようにするため、エンボス加工可能層上に半透明のZnS反射性層が適用される。ホログラフィ又は光学可変画像を形成するべく、反射性層及びエンボス加工可能層の内部に表面浮彫りパターンが押印される。基板に半透明のホログラフィコーティングを接着させるために、接着剤及び下塗り剤又は結合層も適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許中で記述されている方法は、IDカードといったようなセキュリティ文書の偽造の可能性を低減させるように働くものの、偽造又は贋造の幾分かの危険性がひきつづき存在する。ペーパー文書又はプラスチックカードのセキュリティを改善するためには、より個人化されたセキュリティホログラム又は光学可変画像が望ましい可能性がある。熱転写印刷が、さまざまな基板上に可変的な個人化された情報を記録し印刷する1つの方法である。キリー(Killey)に対する米国特許第5,342,672号の中で記述されているような熱転写プリンタ及び熱転写リボンを用いて、より複雑なホログラフィ又は光学可変画像を作り出すことができる。しかしながらこの特許の中で記述されたホログラムは不透明であり、従って、IDカード又は個人化された個々のデータを改変から保護する必要のあるその他のセキュリティ文書上での応用のためには適していない。従って、保護及び贋造防止目的で個々にカスタマイズされた形でさまざまな文書上に適用できる半透明のホログラフィ熱転写記録材料に対するニーズが存在する。
【0006】
インクリボンを用いて熱転写印刷により画像を印刷するためには、プリンタのプリントヘッドは重合体(又は染料拡散)リボンと接触し、インクを印刷媒体の表面上の特定の場所に転写する。プリンタヘッドは、画像形成場所に隣接する加熱素子の予め定められた組合せを熱により活性化させる。インク/担体構造は、インクの融点以上の温度まで加熱素子により局所的に加熱される。この要領で、必要量のインクが軟化し、画像を形成するべく予め定められた場所において印刷媒体に接着する。
【0007】
減法混色の原色として、イエロー、マゼンタ及びシアンという異なる色のインクの別々の領域つまりパネルを内含するリボンといったようなインク/担体構造で、カラー画像が印刷される。カラー印刷は、リボンに沿ってプリントヘッドを逐次的に通過させることによって達成され、各々のパスが予め定められた時点で基板上の所望の場所に対し異なる色のインクを選択的に転写する。サーマル印刷リボンは、単一の黒色パネル、3色パネル(イエロー、マゼンタ、及びシアン又は4色パネル(イエロー、マゼンタ、シアン及び黒色)を伴って入手可能である。このようなサーマル印刷プロセスは、ユーザーが大幅にカスタマイズされたカラーピクチャ又は画像を基板上に作り上げることができるようにする。
【0008】
ホログラフィ又は光学可変印刷材料、及びリボンといったようなホログラフィ又は光学可変転写材料から基板へとカスタムホログラフィ又は光学可変画像を個別に印刷又は転写する方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、文書又はデバイスといったような基板に対して適用するためのホログラフィ又は光学可変転写材料である。材料の第1の面は、熱可塑性又は熱硬化性コーティング又は層を支持するためのPETといったような熱安定性担体を含んで成る。リリース層は、多数の層がサーマルプリントヘッドからの熱に付された時点でこれらの層から担体を容易に分離させるために担体に適用される第1の層である。その後、ホログラム又は光学可変画像の外表面として役立つべく、リリース層上に耐摩耗性トップコートを適用することができる。トップコート上にエンボス加工可能層が適用される。ZnSの又は不透明セキュリティ画像の場合にはアルミニウムでもあり得る半透明反射性層が、エンボス加工可能層上に適用される。結合又は下塗り剤コーティング及び熱活性化される接着剤層が、選択された基板に対する転写可能なホログラフィ材料の接着性を提供する層である。エンボス加工可能層内にプレス加工された「エンボス」は、連続した区分つまりパネルから成る。各々のパネルは、或る全く異なる反射角で入射光を反射するような形で構成されている。予め定められた角度で反射するパネルは、(ホログラフィテーブルを用いて)予め定められたホログラフィ反射角で反射するようにパネルをエンボス加工するか又は(例えば、Davis Light Machineといったようなコンピュータ制御式編成マシンを使用することによって)画素毎の要領で製造されたプレート又はシムからそれをエンボス加工することで光学可変的なパネルをデジタル処理で新規作成することによって、作ることができる。後者の方法を用いると、本発明の各々のパネルは、カスタムのホログラフィ又は光学可変画像を形成するプロセスにおいて基板上に後で転写することのできる画素を含んで成る。特定のパネル内に配置された全ての画素は、同じ角度で入射角を反射し、この角度は、もう1つのパネル内に配置された全ての画素によって入射光が反射される角度とは異なっている。同様にして、各パネルがホログラフィ的に反射性の又は光学可変的な角度のエンボスを含む場合には、本発明の各パネルは、全く異なる予め定められた反射角度で入射角を反射することになる。
【0010】
見当合せされた印刷のために各パネルを位置づけするための目印又は見当合せバーを製品のコーティングされた側又は担体側に具備することができる。ホログラフィ又は光学可変転写材料の担体側は同様に、コーティングの遮断を無くしかつプリンタのサーマルヘッドに対する転写材料の「スリップ」を増大させるコーティングを内含することもできる。
【0011】
上述の材料及びホログラフィ又は光学可変画像の転写方法を用いて、熱転写プリンタのサーマルプリントヘッドを通過して、リボンといったようなホログラフィ又は光学可変転写材料を逐次的に通過させることにより、基板上に個人化された又はカスタマイズされたホログラフィ又は光学可変画像を印刷することができる。各々のこのようなパスは、異なるパネルから画素毎の要領か又はその他の選択的画素方法で材料を選択的に転写することになり、かくして「従来通り生成された光学可変画像」と類似したカスタム画像を基板上に印刷できるようになっている。例えば、転写プロセスには、角度α1で反射するパネルからの全ての画像形成画素を選択的に転写し、次に角度α2で反射するパネルからの全ての画像形成画素を選択的に転写する段階等々、画像の構造又は或る種のアプリケーション又はプログラムの構造が必要とするだけの回数だけこの段階を行なうことが関与している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の材料の横断面図である。
【図2】本発明に従ってエンボス加工された2つのパネルの横断面図である。
【図3】本発明のリボン実施形態の概略図である。
【図4】1つの画像における特定のIDゾーンの概略的例示を示す図である。
【図5】カスタマイズされた印刷配置の概略的例示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されているのは、本発明に従ったホログラフィ的に又は光学可変的にエンボス加工されたパネル20及び22を含む転写材料10の横断面図である。代替的には、パネル20及び22は、本明細書の要約の部で記述されている通りに、デジタル処理により提供され得る。図1に例示されている特定の実施形態においては、転写材料10はフィルムか又はリボンである。材料10は、製造プロセスのさまざまな段階の間に適用される多重層を含んで成る。熱安定層12は、その他の層を上に被着させることのできるポリエステル又はその他の任意に適切な熱安定性材料で作ることができる。その他の層から層12を後で分離させるために、熱安定層12の上にリリース層が配置されている。リリース層14は標準的に、或る一定の温度で軟化し熱安定層12が層14の熱活性化時点で除去又は解除され得るようにする蝋(ワックス)又はその他の任意の適切な熱可塑性材料を含んで成る。
【0014】
トップコート15と呼ばれる耐摩耗性層がリリース層14の上面に適用されて、熱安定層12及びリリース層14がひとたび除去された時点で材料10の上部層として作用する。耐摩耗性層15は好ましくは透明であるが、材料10内にエンボス加工されたホログラフィ又は光学可変画像をより良く表示するべくこれを着色することもできるということも考慮されている。耐摩耗性層15は、ウレタン、アクリル、ビニル又はその他の任意の引裂、損傷、擦過傷又は摩耗又は化学物質耐性をもつ材料で作ることができる。耐摩耗性層15の被着は、標準的に、所望の厚みに応じてコーティング、流し込み成形、積層又はその他の既知の方法を介して実施される。耐摩耗性層15は、グラビア印刷、リバースローラー、メイヤーバー、同時押出し成形又は積層を用いて適用でき、層の特性を変更させるべく電子ビームを用いて処理することができる。これを空気乾燥、熱硬化、UV硬化又は積層して粘り強さを獲得することもできる。
【0015】
次に、エンボス加工可能層16が耐摩耗性層15全体にわたり適用される。エンボス加工可能層16は、ウレタン又は任意のその他の適切な材料で構成された熱可塑性樹脂で作られている。エンボス加工可能層16は、実際エンボス加工された、画像を保持するためのメモリーを有する。押印可能な層である。かくして、エンボス加工可能層16は中に形成されたあらゆる印象を保持することになる。本発明に従うと、エンボス加工可能層16は、例えば、パネル20及びパネル22といったようなパネルと呼ばれる複数の部分を含んでいる。パネル20及び22の各々は、エンボス加工可能層16を形成する画素から成る。パネル20及び22の各々は、或る種の予め定められた角度でのみ入射光を反射するようにエンボス加工されている。代替的には、パネル20及び22は、予め定められた角度で光を反射する画素から成る。パネル20の画素が記録される角度は、パネル22上の画素が記録される角度と異なっている。換言すると、エンボス加工可能層16のパネルの各々は、異なる角度でエンボス加工されるか又はデジタル処理により記録されている。
【0016】
図2は、本発明のエンボス加工可能パネルの概念をより詳細に例示している。そこに例示されているのは、連続的パネル22に隣接するパネル20を含むエンボス加工可能層16をもつ転写ホログラフィ又は光学可変的材料10である。パネル20内にエンボス加工されているのは、角度α1で入射光24を反射するべく記録された(例示の便宜上1〜nとして示されている)複数の画素である。(用語法の問題として、各々の画素は、それがエンボス加工されているか又はデジタル処理により記録されているかに関わらず、或るピッチ及び方向性の回折格子を含んでいると理解すべきである。入射光24は画素を照射し、その上で回折する。パネル20内の画素1〜n上で回折する光は、角度α1で回折出射光となる(図2で光23として示されている)。本明細書全体を通して出射光(図2内の光23及び25のようなもの)は「反射、」又は「回折」出射光と呼ばれる)。換言すると、エンボス加工可能層16のパネル20内でエンボス加工された全ての画素は、同じ角度α1で入射光を反射し、これはすなわち、パネル20の全領域に対して、パネル20内に配置された全ての画素が入射光24を反射する1つの角度α1が割当てられているということを意味している。類似の要領で、パネル22内には、角度α2で入射光24を反射するように記録された複数の画素(例示の便宜上1′〜m′として示され、m′はnに等しくても又異なっていてもよい)がエンボス加工されている。エンボス加工可能層16のパネル22内にエンボス加工された全ての画素は、同じ角度α2で入射角を反射し、これはすなわち、パネル22の全部域に対して、パネル20内に配置された全ての画素が入射光24を反射する1つの角度α2が割当てられているということを意味している。画素毎の要領でパネル20及び22を新規作成することに代わって、各パネルは、従来の任意のホログラフィエンボス加工方法により提供される或る一定の予め定められたホログラフィ又は光学可変的反射角度のエンボスを含むことができる。ホログラフィ転写材料10は、特定の利用分野が要求し得るだけの数の、異なる角度で光を反射するこのようなエンボス加工された(又は記録された)パネルを含むことができる。
【0017】
再び図1に戻ると、半透明な反射性層17がエンボス加工可能層16上に被着されている。前述のように、半透明反射性層は、予め定められた角度でパネルが照射を受けた時点で読取り装置がエンボス加工可能層のエンボス加工されたパネルを検分できるようにする。基板上にパネルから選択的な画素毎の要領で画素を転写することによって形成された基板11上のカスタム画像も同様に検分可能となる。半透明又は不透明の層17は好ましくは、かかる利用分野に適した任意の手段によって適用されたZnS又はAlを含んでいる。
【0018】
界面接着性を増大させるため、反射性層17全体にわたり、結合又は下塗り剤層18を適用することができる。結合又は下塗り剤層は、反射性層と接着剤の間の界面接着性を増大させる任意の化学組成物で作ることが可能である。結合層18の上面には、熱活性化された接着剤層13が適用される。材料10に対してサーマルプリンタプリントヘッドからの熱といったような熱が適用された場合、リリース層14はPET担体12からコーティングを解放し、接着剤層13内の接着剤が活性化されて、材料10を基板11に付着させる。基板11は、ペーパーテスリン又はプラスチックで作ることができる。
【0019】
本発明に従ったホログラフィ又は光学可変転写材料10の実施形態の1つが図3に例示されている。材料10は、サーマルインク印刷において使用されるリボンの形状に類似したリボンの形で描写されている。例示的なリボンには、図1及び図2に関連して記述されている通りに具備されたホログラフィ又は光学可変的パネル20,22,26及び28が含まれている。特に、パネル20は、角度α1で入射光24を反射するエンボス加工(つまり画素)のみを含む材料10のエンボス加工可能層の一部分である。パネル22は、角度α2で入射光24を反射するエンボス加工(つまり画素)のみを含む材料10のエンボス加工可能層の一部分である。パネル26は、角度α3で入射光24を反射するエンボス加工(つまり画素)のみを含む材料10のエンボス加工可能層の一部分である。パネル28は、角度α4で入射光24を反射するエンボス加工(又は画素)のみを含む材料10のエンボス加工可能層の一部分である。材料10は、望まれ得るだけの数のパネルを有することができる。一般的に言うと、特定のパネル内部に配置されたエンボス加工(又はデジタルケースでは全ての画素)は、予め定められた反射角αnで入射光を反射するように構成されている。その結果、エンボス加工可能層は、その他のパネル内のエンボス加工(又は画素)の反射角度とは異なる或る角度で入射光を反射するためのエンボス加工(又はエンボス加工された画素)を各々のパネルが含んでいる多重パネル配置となる。図3に示されているリボンは、基板上にカスタム印刷されることが望まれている特定のホログラフィ又は光学可変画像により要求され得るだけの数の異なる角度に記録されたパネルを含むことができる。
【0020】
1つのパネル内に収納されている又は基板上に転写された画素の数ならびにさまざまな反射角度のスペクトルが、結果として得られたホログラフィ又は光学可変画像の解像度に直接関係づけされ、究極的には、解像度が高すぎるか又は角度間の差が人間の眼による検出にとって近すぎる場合に画像を読取るのに読取り用デバイスを有する必要があることになる、という点に留意すべきである。
【0021】
各パネルが個々の回折角度により特徴づけされることから、このような各々のパネルに1つの数を割当てることができるということが本発明によって規定されている。例えば、それぞれの反射角度α1,α2,α3,α4によって特徴づけされた図3中の4つのパネル20,22,26及び28に、4つの予め定められた数を割当てる(又はそのように符号化する)ことができる。基本的に、4つのパネルは、4つの回折角度及び4つの符号化された数に対応する。ここで「4」というパネル数は、完全に無作為であり、これは、無限に至るまでの任意の数の回折角度であり得るが、通常は、コーラルドロー及びフォトショップといったようなデザインソフトウェアによって使用される「グレースケール」システムに対応するよう256である。
【0022】
図4中のホログラフィ又は光学可変印刷リボン10が基板上にカスタマイズされた画像を新規作成するために使用される場合には、画像は最高4つの異なる角度α1,α2,α3,α4で回折する画素を含むことになる。α1,α2,α3,α4の値が充分離隔している場合(例えば、40°,100°,180°及び360°)、人間の眼は、その画像を構成する、異なる4つの色を容易に検出し視覚的に確認することができることになる。回折角度の値が互いに近い場合(これは、わずか数個の記録された角度の間の差が小さいか又は異なる回折角度の数が最高256と多く、そのため角度間の角度差が非常に小さいものとなる場合に起こりうる)、人間の眼は異なる色を検出することができず、角度を確認するのに専用読取り装置が必要となる。読取り装置が使用される場合、読取り装置はその画像を構成する画素に対応する任意の数の回折角度を検出することができる。各々の回折角度に数が割当てられた場合、読取り装置は画像を走査し、画像中の画素に対応する回折角度を読取り(検出し)、それを識別し、走査された画像に対応する数列を出力する。回折角度に対応する特定の数列を、ホログラフィ又は光学可変画像を印刷するために使用されたホログラフィ印刷材料に対応するリボンの通し番号として符号化することができる。1つの画像内の1つの画素ブロックに対応する特定の数列は同様に、文書の真正を確認し贋造の可能性を著しく低減させるためのセキュリティ措置として符号化することもできる。このプリンタが予め定められた又は「シリアル化された」リボンのみを受容するような形で、IDカード又は文書発行機内に識別機構(読取り装置に対応するもの)を内蔵させることができる。かくして、(ホログラフィパネルに割当られた番号に基づいて符号化された)特定の通し番号を有することで同様に、調査官は、特定の画像を印刷しかくして外部読取り装置を用いて文書の真正を確認するためにどのプリンタが使用されたかを知ることもできるようになる。
【0023】
ここで、文書又はIDカードの真正を確認するためにホログラフィ又は光学可変印刷材料をどのように使用できるかを見ることができる。望ましい基板上に画素毎に1つの画像を印刷するために、既知の回折角度及びそのそれぞれの割当てられた数により特徴づけされる数多くのパネルを伴うリボンといったようなホログラフィ又は光学可変印刷材料が使用される。記述された技術により新規作成された各々の画像は、既知の(又は指定された)角度で回折する画素ブロックである特定のIDゾーンを有することができる。IDカード内の既知の角度に対応する数は、読取りデバイスにより走査され得、数がそのIDゾーンについての既知の数に一致する場合、文書の真正を確認することができる。例えば、図4中に概略的に示されているように、ホログラフィ画像40は、展開図44としても示されているIDゾーン42を有する。展開図44に示されている3つの画素はそれぞれ20°,40°及び60°の回折角度を有する。これらの回折角度に3つの数が割当てられた場合、IDゾーン42で画像を走査する読取り装置は角度及び対応する数を検出することになる。数列が、本物の文書又はIDカードのものと一致した場合、真正を確認することができる。
【0024】
本発明のホログラフィ又は光学可変的制御材料を用いて基板上にホログラフィ又は光学可変画像を印刷することができ、任意の標準的な既知のデザインソフトウェアを用いてこれをデザインすることができる。ソフトウェアを用いてデジタルフォーマットで画像をデザインした後、プリンタに画像を送ることができる。基板上に画像を印刷するためにホログラフィ又は光学可変的リボンと共に任意の従来の染料拡散カードプリンタ(例えば、Datacard, Fargo, Eltron, Atlantek, Kanematsu etc)を使用することができる。ホログラフィ又は光学可変印刷材料を伴うプリンタは、ホログラフィ画像がデザインされたのと同じ設備内にある必要はないということも考慮されている。画像は、それをインターネット上、ディスク上で送信できるか又は他の任意の手段により伝送できる遠隔場所にて印刷することができる。例えば、図5に例示されているように、コンピュータ50上で、ホログラフィ又は光学可変画像40を画素毎にデジタル処理でデザインすることができる。デジタル化されたデザインにおいては、画像40の各画素が予め定められた角度で入射光を回折することになるということが規定されている。このとき、本発明のホログラフィ印刷材料を用いてローカル(又はLAN)プリンタ56上に画像40を印刷するか、又は、インターネットといったようなネットワーク52上で送信するか又は、ハードディスク上といったようなその他の手段を介して、プリンタ54上での印刷のため遠隔場所まで送付することができる。画像40のこのような遠隔場所での印刷の一例としては、車両管理局又はその他の任意の発行又は統合事業体が考えらえる。
【0025】
基板上にホログラフィ又は光学可変画像を形成する方法には以下のことが含まれる。図1〜3に関して上述された通りに、リボンでもあり得又任意のその他の適切な形状及びサイズを有し得る多重層ホログラフィ又は光学可変転写材料が提供される。基板上への形成又は印刷が望まれるホログラフィ又は光学可変画像は、その画像を形成する一定数の画素として描写することができる。換言すると、ホログラフィ又は光学可変画像は画像形成画素で構成されている。或る種のホログラフィ画像が基板上に形成又は印刷されつつあるとき、各々の画像形成画素は、適切なエンボス加工を伴う(又はかかる画素が中に配置されている)パネルから基板まで選択的な画素転写方法で転写される。上述の方法の例示として、望まれるホログラフィ又は光学可変画像は、画素毎の転写プロセスによって形成可能である。好ましくは、反射角度α1で反射する全ての画像形成画素が、α1のエンボスを伴う対応するパネルから転写される。角度α2で反射する全ての画像形成画素は、α2のエンボスを伴う対応パネルから転写され、以下同様である。換言すると、ホログラフィ又は光学可変画像が基板上に形成されている時、特定のホログラフィ又は光学可変画像を形成するために異なる反射角度の画素がどれほど必要であるかに応じて、1つのパネルからの画像形成画素の全てが第1の段階として基板上に転写され得、次にもう1つのパネルからのホログラフィ又は光学可変画像の全てが基板に転写され、以下同様である。画素転写プロセスは、サーマルプリントヘッドによって生成された熱といったように熱により活性化され得る。
【0026】
例えば、本発明に従ったホログラフィ又は光学可変印刷材料を生成するためには、各々個々のパネルは、例えば、1200dpiといった高解像度のフォーマットを用いて全ての画素について同じ回折角度を使用して画素毎に記録される。結果として得られるパネルは、標準的な染料拡散リボンパネルのサイズのもので、各パネル内に同じ回折角度の約8,000,000〜9,000,000画素を有することになるであろう。以上に列挙したパネルあたりの画素の数及び解像度は、単に可能なパネルの一例にすぎず、解像度及び画素の合計数は、文書又は基板材料のタイプ又は特定の利用分野に応じて変動しうる、という点に留意すべきである。記録されたパネルは、次に、印刷(発行)によりID文書の表面といったような基板上に後に画素毎に転写されるコーティングの中に、エンボス加工又は流し込み成形される。画素の転写は、染料拡散リボンでのカードの工業的印刷により現在利用されている技術に類似した形で、(例えば、サーマルプリントヘッドから)200〜500dpiの間のより低い解像度でプリントヘッドから熱及び圧力の下で画素毎に行なわれる。最後に、各プリンタは、結果として得られるサーマル印刷された画像の200〜500dpiの画素の各々について、1200dpiの画素のうちの少なくとも3〜6を印刷することになるであろう。
【0027】
すでに上述した通り、所望の基板上にホログラフィ又は光学可変画像を形成するプロセスを制御するためにコンピュータを具備することができる。例えば、発行者は、コンピュータディスプレー上でホログラフィ又は光学可変的セキュリティ画像テンプレートを再考し、テンプレートに特定の個々の個人情報を付加し、次にコンピュータからホログラフィ又は光学可変的プリンタまで(局所的に又は遠隔的に)高度にカスタマイズされた画像を送って、上述の方法に従って所望の基板上に新たにカスタマイズされた画像を印刷することができる。高度にカスタマイズされたホログラフィ又は光学可変画像を、ペーパー又はプラスチック文書といったような所望の基板上に印刷することができる。
【0028】
図1〜3に関して記述されたタイプのホログラフィ又は光学可変転写材料10を提供するためには、連続パネルを、材料のエンボス加工可能層16内に形成すべきである。同じパネル内の全ての画素が同じ角度で反射するように記録されているかぎり、又はホログラフィ的に又は光学可変的に新規作成されたパネル内の全エンボス可能が同じ予め定められた角度で入射光を反射するかぎりにおいて、エンボス加工可能層内にパネルをエンボス加工するために任意の既知の方法を利用すること又は所望の角度で反射するように構成されたパネル内に各画素をデジタル処理で提供することが適切であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にカスタムホログラフィ又は光学可変画像を形成するための材料であって、該材料は、
熱安定層、耐摩耗性層又はトップコート、エンボス加工可能層、エンボス加工可能層上に重ねられた反射性層及び熱活性化時点で基板に材料を付着させるのに役立つ熱活性化された接着剤層を有する複数の層を備え、
前記エンボス加工可能層は複数のエンボス加工された連続パネルを備え、各パネルはホログラフィ又は光学可変的な予め定められた反射角度αnで入射光を反射するようにホログラフィ的に又は光学可変的に構成され、該予め定められた角度αnは各パネルについて異なるものであることを特徴とする材料。
【請求項2】
請求項1に記載の材料において、前記各ホログラフィ的に又は光学可変的に構成されたパネルは、予め定められたホログラフィ的又は光学可変的反射角度αnのエンボスを備え、結果として多重パネル配置となり、その他のパネル内のエンボス反射角度とは異なるものである予め定められたホログラフィ的又は光学可変的反射角度αnにて入射光を反射するようにエンボス加工されていることを特徴とする材料。
【請求項3】
請求項1に記載の材料において、前記各ホログラフィ的に又は光学可変的に構成されたパネルは、同じパネル内部に配置された全ての画素が予め定められた反射角度αnで入射光を反射するような形でエンボス加工された複数の画素を備え、結果として多重パネル配置となり、前記各パネルは、その他のパネル内の画素の反射角度とは異なる角度で入射光を反射するようにエンボス加工された画素を備えることを特徴とする材料。
【請求項4】
請求項1に記載の材料において、さらに、熱安定層上に重ねられたリリース層、及び、熱活性化された接着剤層の上に重ねられた結合層を備えることを特徴とする材料。
【請求項5】
請求項1に記載の材料において、該材料は、リボンの形で提供されることを特徴とする材料。
【請求項6】
請求項1に記載の材料において、前記各角度αnは予め定められた数に対応することを特徴とする材料。
【請求項7】
請求項6に記載の材料において、前記複数の角度αn(n≦256)は、1つの数列を形成する複数の予め定められた数に対応することを特徴とする材料。
【請求項8】
請求項7に記載の材料において、前記数列は、それと結びつけられたホログラフィ又は光学可変的な材料でのみ作動するようプログラミングされている読取りデバイスの中で利用されることを特徴とする材料。
【請求項9】
基板上のホログラフィ又は光学可変画像を形成する方法であって、該画像は画像形成画素で構成されており、該方法は、
それぞれが、各パネルについて異なる予め定められたホログラフィ又は光学可変的反射角度で入射光を反射するようにホログラフィ的又は光学可変的に構成されている複数の連続するパネルを備えるエンボス加工可能層を有する転写材料を提供する段階と、
少なくとも1つのパネルから基板上に画像形成画素を選択的に画素転写することにより基板上にホログラフィ又は光学可変画像を形成する段階と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、選択的画素転写段階は、前記画像形成画素の各画素を熱活性化する段階と、前記転写材料から各画素を分離させ基板に接着させる段階と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記各画素の熱活性化段階は、プリンタヘッドにより各パネルに作用する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、さらに、前記ホログラフィ又は光学可変画像を記憶するコンピュータを提供する段階を備え、該コンピュータは、ホログラフィ画像を形成するべく前記転写材料から前記基板への前記画像形成画素の選択的画素転写を制御することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、選択的画素転写は画素毎の転写を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、選択的画素転写は画素毎の転写を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法において、前記各ホログラフィ的に又は光学可変的に構成されたパネルは、予め定められたホログラフィ的又は光学可変的反射角度αnのエンボスを備え、結果として多重パネル配置となり、その他のパネル内のエンボス反射角度とは異なるものである予め定められたホログラフィ角度αnにて入射光を反射するようにエンボス加工されていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項9に記載の方法において、前記各ホログラフィ的に又は光学可変的に構成されたパネルは、同じパネル内部に配置された全ての画素が予め定められた反射角度αnで入射光を反射するような形でエンボス加工された複数の画素を備え、結果として多重パネル配置となり、前記各パネルは、その他のパネル内の画素の反射角度とは異なる角度で入射光を反射するようにエンボス加工された画素を備えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法において、前記ホログラフィ又は光学可変画像を形成する段階は、コンピュータプログラムを用いて画像をデザインする段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項9に記載の方法において、前記ホログラフィ又は光学可変画像を形成する段階は、該画像をローカル又は遠隔プリンタに印刷する段階を備えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記画像はインターネットを介してローカル又は遠隔プリンタに送られることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−277100(P2010−277100A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157228(P2010−157228)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2004−536470(P2004−536470)の分割
【原出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(591203428)イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド (309)
【Fターム(参考)】