説明

ホログラムラベル

【課題】ホログラムラベルは、被貼着体に貼付後、その被貼着体の真正性を証明するものであるため、不正に剥離されて、真正でない他の被貼着体へ再貼付して使用されることが可能であると、その証明性を維持することができなくなるという課題を有していた。
【解決手段】ホログラムラベルを構成する透明基材の一方の面にパターン状に表面活性化処理を施すことにより、ホログラムラベルを剥そうとすると、透明基材のみが容易に剥離して、その後にその「パターン」が浮き上がるという効果を持ち、さらに、所定の電界の印加により、その「パターン」状の欠けを含むホログラム再生像が出現して、その真正性を容易に判定可能なホログラムラベルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムラベルに係り、詳しくは、通常照明光の照明においては、ホログラム再生像が出現せず、単なる透明な脆性ラベルとしか認識できないラベル(「封緘」の文字等の通常の印刷層がそのラベル構成層の一部に施されている場合が多い。)であって、不正にラベルを張り替えたり、偽造若しくは改竄をしようとする者(以下、不正者ともいう。)にとっては、それらの不正行為が容易に実施可能と思わせる外観を呈するものでありながら、高い不正防止機能を有する、ホログラムラベルに関するものである。
通常の脆性ラベルは、封筒などに貼着後、剥がそうとすると、ラベルそのものが破壊されたり、ラベルの一部構成材料である透明基材のみが優先的に剥がれ、その透明基材側や、ラベルの残った部分に、「開封」等の文字が浮かび上がって、不正な開封が行われたことを知らしめるものである。
このような脆性ラベルに対して、不正者は、封筒の封緘部分から、そのラベルや透明基材を剥がした後、不正に封筒を開封して同封物を不正に閲覧したり、不正に差し替えたりした後、再び、その封筒の封緘部分に残ったラベル残部の「開封」等の文字を埋めるように、その残部の上に新たなラベルを貼着したり、さらには、その剥がした透明基材を悪用して、透明基材上に付着している「開封」の文字等を覆うように新たな粘着剤塗布を行い、あたかも、均一な粘着層と見せかけ、別の封筒に貼着するなどの、不正行為を行うことが想定される。
【0002】
しかしながら、本発明のホログラムラベルは、所定の電界の印加により(陽極と陰極間に所定の直流電圧や交流電圧を印加することにより、エレクトロルミネッセンス素子層に所定の電界が印加されることを意味する。)、ホログラム再生像が浮かび上がるため、本発明のホログラムラベルに対して、上記のような不正が行われた場合には、不正に貼着した新たなラベルの上から、その所定の電界の印加を行うことで、「開封」等の文字状に「欠け」が発生しているホログラム再生像が出現することとなる。
もちろん、剥がした透明基材を悪用したものについても、透明基材に付着していた「開封」等の文字状部分からホログラム再生像を出現させる(「開封」の文字の「画線」状に開口を持つ窓から、その奥にある立体像を覗き見るような状態となる。)ことができる。
すなわち、本発明は、ホログラムラベルの不正開封や、貼り換えなどの不正行為、さらには、偽造若しくは改竄を困難とする、ホログラムラベルに関するものである。
また、本発明において、「パターン状」の「パターン」とは、文字、図形、記号等、視認可能な「表示パターン」であればいずれも使用でき、代表的には、ラベルを剥離した証拠を示すという意味で、「開封」や「不正」等の「文字表示パターン」を採用する。
そして、「パターン状の表面活性化処理を施す」とは、これらの「表示パターン」の画線部内を表面活性化処理することを意味し、例えば、その「表示パターン」が「開」という一文字であれば、その文字を構成する一本一本の線(これが画線であって、所定の層の表面に設定された線状の領域である。)の中(線の内側、すなわち、画線部内。)を一様に表面活性化処理することを意味する。
また、透明基材が既に十分活性化されている表面を有する場合には、その表示パターンの画線部の外を表面不活性化処理することも含み、結果として、透明基材表面に、「活性化」の度合いの異なる部分(これが、透明基材上に形成される「別の層」との間の剥離強度が、部分的に異なる状態、すなわち、その領域間で異なる状態として現れる。)が設けられていることを意味する。
本明細書において、配合を示す「部」は特に断わらない限り質量基準である。また、 「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明のホログラムラベルの主なる用途としては、偽造防止分野に使用されるホログラムラベルであって、具体的には、
(1)製造メーカー純正品等、純正品の認証が意義を持つ種々の商品分野、例えば、電子機器、電気機器、コンピュータ関連製品、及び、それらの構成部品、コンピュータ関連ソフト、純正備品類(用紙やトナーなどのプリンタ消耗品等。)医薬品、医薬部外品もしくは化成品等、
(2)商品そのものが真正品であることを消費者に強く求められる分野、もしくは、ラベルを貼付することで意匠性を高めたり、商品が高価であることを示し、その商品の付加価値を高める分野など、例えば、書籍、文書、講演、演劇、映画、写真、絵画、彫刻、版画、図面、模型等もしくは、それらの編集物、又は記録媒体に記録したもの(ビデオカセット、コンパクトディスク、デジタルビデオディスクなど)等の著作物、所定の設定をされ、変更を防止しているROMボード(コンピューター機器、ゲーム機、遊技機等に用いられるもの。ROMとボードに渡る貼付も含む。)、時計、衣類、バッグ、宝石等宝飾品、スポーツ用品、化粧品、及びそれらの高級ブランド品等、
(3)本人確認の手段(ID証)分野、例えば、パスポート、運転免許証、保険証、会員証、身分証、住民登録証、病院カード、もしくは図書館カード等、
(4)経済秩序を保つ上で真正品であることが求められる分野、例えば、商品券、ギフト券等の金券類、もしくはプリペイドカード、クレジットカード、キャッシュカード等のカード類、
(5)さらには、これらのものを包装し、その包装を封印する分野、例えば、単に保管のため、もしくは郵便物や小荷物として封筒に入れたり、パッケージに入れて配達や配送をする分野、商品をパッケージに入れて販売する分野、単純に包装する分野、それらの封緘シールとして使用する分野、また、それらの説明書や効能書等にその真正性を証明するために貼付する分野等、
などに関し、特に、そのホログラムラベルを巧妙に剥がして、そのものの価値を下げられたり、そのホログラムラベルを再利用されることをに配慮すべき、もしくは配慮している分野に好適である。
【0004】
(先行技術)近年、光の干渉を用いて立体画像を再生し得るホログラムの開発が進められ、このホログラムは高度な製造技術を要するとともに様々な形態、例えばラベル、シール、箔状に形成可能なことから、これを応用し偽造防止手段として、上記分野を含め、様々なものの一部に貼着して使用されている。このホログラムは、一見して本物か否かが判り、しかも上述したように製造が困難であることから、広く利用されるようになってきた。
そしてこれらは物品に貼付された後に剥がされ、悪用されることがないように支持体とホログラム層、或いはこれらの間に設けられた剥離層と支持体またはホログラム層で剥離するようにし、被着物から故意に剥離させた場合にホログラム全体が破壊されるものがある。特に、実公平5−48210号公報に開示されるホログラム脆性シールのように、支持体とホログラム形成層がパターン状剥離層を介して積層され、ホログラム形成上に反射性金属薄膜層、及び接着剤層を順次積層し、使用に際しては所要の大きさ、形状に切断し、証書や身分証明書のような偽造、変造されたくない被着体、または封書等の封印部に加圧により、必要に応じて加熱をしながら貼りつけるものがある。
このようにして一度被着体に貼りつけられたホログラムラベルは、剥がそうとすると、剥離層部と非剥離層部との境界断面でホログラムが破壊し、支持体上と被着体上にホログラムが分離して残存してしまうのでラベル全体をそつくりそのまま剥がすことができないため、他の物品にホログラムラベルを貼りかえることができず、ホログラム自体の偽造・変造の困難性により、ホログラムラベルが被着体の真正さを保証できる。
【0005】
従つて、ラベルが貼つてあつた箇所の記載事項や印影写真等を書替えるのには、ラベルの残存部分を除去する必要があり、偽造、変造が困難である。また、支持体上にはパターン状にしかホログラムが残存しない為、ラベルの貼替えは不可能であり、かつ封印部の開封は被着体にパターン状に残存したホログラムにより容易に認識できうる。
従つて、本考案のホログラムラベルは偽造されたくない被着体へ適用は勿論のこと、包装物の封印として適用でき、さらにはホログラムラベルは美麗により装飾物としても使用できる。
しかしながら、前者の全面破壊型のホログラム脆性シールは、剥がし方によってはホログラム層及び反射性薄膜層が破壊されることなく、ホログラムシール全体を完全に剥離させて、その結果、再使用できることで悪用されてしまう可能性がある。そのため、ホログラム層や反射性薄膜層自体を破壊する方法として上記、実公平5−48210号公報の方法があるが、この方法ではホログラム脆性シールを貼着された状態で見るとホログラム層の上にパターン状の剥離層が設けられているため、そのパターンの存在を容易に目視により判別でき、ホログラムの再生画像の見え方に影響を与えるだけでなく、偽造防止策の存在が明らかになってしまう問題を有する。
この問題を解決するため、特開平8−152842号公報には、脆性剥離層を、反射性薄膜層と接着剤層との間に設ける等の方法も提案されているが、いずれも、ホログラム形成層の強度が大きく、基材との接着強度差や、脆性剥離性の存在程度では、ホログラム形成層そのものを破断するに至らないか、部分的に破断され、その目的を十分に達成できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平5−48210号公報
【特許文献2】特開平8−152842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ホログラムラベルであるものの、そのホログラム再生像を通常照明下においては視認できず、外観上、「通常のラベル」として視認されるホログラムラベルであって、ホログラムラベルを被貼着体に貼着する際には、問題なく貼着可能であって、その被貼着体からホログラムラベルを不正に剥そうとすると、ラベル基材のみが剥がれ、その剥した痕跡として、被貼着体側に「残ったもの(ホログラム形成層、エレクトロルミネッセンス素子層、及び粘着層)」そのものに、例えば「開」と「封」の文字が、「窪み状の文字」として出現し、この段階で、このラベルがいわゆる「脆性ラベル」であることが判明する。
さらに、この「残ったもの」に、所定の電界を印加すると、「開封等の文字状の欠け」を含んだホログラム再生像が浮き上がるホログラムラベルを提供する。
すなわち、本発明は、上記従来の問題点に鑑み為されたものであり、その目的とするところは、不正な剥離行為によるシールの貼り替えを確実に発見することが可能で、しかも、ホログラムの存在や、部分的に脆性破壊する層の存在を発見しにくい、いわば、隠しホログラム脆性シールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムラベルの第1の態様は、
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理を施した後、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、前記ホログラムレリーフに接するように且つ追従するようにエレクトロルミネッセンス素子層、及び粘着層を設けたことを特徴とするものである。
上記第1の態様のホログラムラベルによれば、
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理を施した後、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、前記ホログラムレリーフに接するように且つ追従するようにエレクトロルミネッセンス素子層、及び粘着層を設けたことを特徴とするホログラムラベルを提供することができ、外観上は、ホログラムの無い通常の脆性ラベルのように見えながら、不正行為が行われたことを容易に判定可能な、ホログラムラベルを提供できる。

本発明のホログラムラベルの第2の態様は、
前記エレクトロルミネッセンス素子層の厚さが、0.01μm以上2.0μm以下であることを特徴とするものである。
上記第2の態様のホログラムラベルによれば、
前記エレクトロルミネッセンス素子層の厚さが、0.01μm以上2.0μm以下であることを特徴とする第1の態様に記載のホログラムラベルを提供することができ、第2の態様の特徴に加えて、著しく鮮明なホログラム再生像を出現させることが可能な、ホログラムラベルを提供できる。
【0009】
本発明のホログラムラベルの第3の態様は、
前記表面活性化処理が、光処理、又は物理的処理であることを特徴とするものである。
上記第3の態様のホログラムラベルによれば、
前記表面活性化処理が、光処理、又は物理的処理であることを特徴とする第1または第2の態様のいずれかの態様に記載のホログラムラベルを提供することができ、その態様の特徴に加えて、より脆性破壊し易く、且つ、脆性破壊する層の存在をより発見し難い、ホログラムラベルを提供できる。
本発明のホログラムラベルの第4の態様は、
前記パターンが、微細なパターンの集合により構成されているものであることを特徴とするものである。
上記第4の態様のホログラムラベルによれば、
前記パターンが、微細なパターンの集合により構成されているものであることを特徴とする第1から第3の態様のいずれか一つの態様に記載のホログラムラベルを提供することができ、その態様の特徴に加えて、さらに脆性破壊し易く、且つ、脆性破壊する層の存在をさらに発見し難い、ホログラムラベルを提供できる。
すなわち、本発明のホログラムラベルは、透明基材の一方の面に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、エレクトロルミネッセンス素子層、粘着層がこの順序で形成され、上記したホログラムラベルの用途において、所望の被貼着体の一部や、封筒等の封緘部分等に貼着される。
このホログラムラベルを、その被貼着体、もしくは、封緘部分から、貼付した痕跡を残さず、ホログラムラベルも完全な元の状態で剥して、不正に準備した別の被貼着体に貼り替えたり、封筒や箱を開封して内容物を取り替えた後、あたかも、その被貼着体や封筒や箱の内容物が本物であると主張したり、逆に、真正なホログラムラベルを剥したものは、本物でないとして、その価値を低下させるなどの不正を防止するためには、
ホログラムラベルの基材及びホログラム形成層そのものが破断することが望ましいが、ホログラムラベルの基材及び、ホログラム形成層の破断強度は、非常に大きく、ラベルとしての粘着力等(JIS Z0237で規定する180°剥離試験にて、0.1〜1.0kg/25mm幅。)では、それらの層を100%破断させることは困難である。
【0010】
そのため、透明基材とホログラム形成層との間の剥離強度を小さく抑え、且つ、透明基材の一方の面を所望のパターン状に表面活性化処理して、透明基材とホログラム形成層との接着性を部分的(その表面活性化処理した領域のみという意味。)に向上させ、0.5kg/25mm幅以上、3.0kg/25mm幅以下の剥離強度(JIS Z0237で規定する180°剥離試験にて。)とし、その他の領域については、ホログラム形成層との接着性をその強度より小さいままに抑えるか、さらには、その小さい強度をさらに小さくするため表面不活性化処理を行う。
その「パターン」としては、視認可能な大きさや形状を有する、文字、図形、記号等、その「パターン」が「可視化」されたときに、「容易に視認可能な表示」となるものであればいずれも使用でき、代表的には、ラベルを剥離した証拠を示すという意味で、「開封」の文字表示を出現させるため、「開」と「封」の文字の画線部領域のみを表面活性化処理するか、さらには、その表面活性化処理に加えて、その画線部以外の領域を表面不活性化処理する。
この表面活性化処理、すなわち、濡れ性を非常に高める処理や、表面に官能基を創り出す処理等には、炭酸ガスレーザー照射、遠赤外線炭酸ガスレーザー照射、172nm真空紫外線(VUV、エキシマ光)照射、酸素増感エキシマ光照射、(オープン)プラズマ処理、コロナ処理、電子線照射処理等の透明基材最表面の化学結合エネルギーよりも大きいエネルギー(例えば、7.2eV以上。)により、透明基材最表面の化学結合を切断し、または、172nmの真空紫外線等のように、大気中の酸素に吸収されてオゾンまたは直接励起酸素を発生し、この接触により官能基を生成する等の物理的処理等を用いて、透明基材の最表面のみを「表面活性化処理(表面張力が大きくなることを意味する。)」し、もしくは、酸化剤等薬品による表面処理、プライマー処理、シランカップリング処理等の化学的処理、アルゴンビームエッチング、エッチング液、さらにはサンドブラスト加工等の物理的な租面形成処理等を用いることができる。
【0011】
そして、表面不活性化処理としては、透明基材上、もしくは、上記の表面活性化処理面の所定の部分のみを精度よく表面不活性化処理する必要があり、透明基材上に直接「表面不活性化処理」を行う方法、例えば、熱硬化性樹脂や、硬化剤を添加した樹脂からなる透明基材を用いて、その最表面の一部を赤外線加熱等により完全硬化させて、未反応成分を解消したり、離型成分を含む樹脂の部分加熱や部分硬化により、その離形成分を最表面にブリードする方法等、または、まず、透明基材の最表面全体に上記した「表面活性化処理」を施し、その後、活性化した透明基材の最表面の一部(領域)に、その最表面のみを部分的に溶解する、もしくは、その最表面の活性化した官能基と反応して官能基の活性を解消する、溶剤類、例えば、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等。)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等、さらにはその水溶液。)、芳香族類(ベンゼン、トルエン、キシレン等。)、エステル類、エーテル類(テトラヒドロフラン等。)等、または、これらの透明基材とはそもそも接着し難い、界面張力の小さい樹脂、例えば、シリコーン樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂や、これらのフッ化炭化水素基、有機珪素基を含む樹脂等を、活版印刷方式やインクジェット方式を用いて、表面活性化処理面への接触を避けて、上記した所望のパターン状に部分形成する方法等により、高い精度でパターン状に表面不活性化処理する。
この際、透明基材表面の光学的な特性(透明基材に付着したものを含んだ特性とし、光学的透明性、屈折率分布や、光を反射する界面形状等。)に変化を与えないことが望ましく、溶剤等は揮発することで、また、樹脂等はあくまで表面改質の目的であって乾燥後の形成厚さが光の波長の1/2〜1/10程度となることが望ましい。もちろん、これらを併用することも好適である。
そして、このホログラムラベルを剥そうとして透明基材を被貼着体から持ち上げた際、表面活性化処理を施していない部分、または、表面不活性化処理した部分において、その透明基材とホログラム形成層との間で容易に剥離が起こり、表面活性化処理した部分においては、透明基材側にホログラム形成層が付着したままとなって、表面不活性化処理した部分と表面活性化処理を施していない部分との境界、または、表面不活性化処理した部分と表面不活性化処理した部分との境界において、ホログラム形成層に強いせん断力(ホログラム形成層を破断しようとする力。ホログラム形成層が破断する際に加えていた力が破断強度となる。)が働くこととなる。
【0012】
このホログラム形成層上に、そのホログラムレリーフに接するように、さらには、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して、エレクトロルミネッセンス素子層が設けられているが、このエレクトロルミネッセンス素子層は均一な厚さを有するものの非常に薄い層であり、且つ、蛍光体を多く含んでいるため、エレクトロルミネッセンス素子層の破断強度は比較的小さく、ホログラム形成層の破断と同時に破断する。
そして、このエレクトロルミネッセンス素子層上に設けられている粘着層も、その破断強度はホログラム形成層より小さく、ホログラム形成層の破断とともに、破断するか、もしくは、粘着層内において凝集破壊(粘着層が上下に分断されることを意味する。)を生じることとなる。
すなわち、「開封」の文字状に表面活性化処理等を施した場合、「開封」の文字の領域に対応する部分のホログラム形成層、エレクトロルミネッセンス素子層、及び粘着層のみが、透明基材に付着し(以下、透明基材側残部ともいう。)、「開封」の文字以外の領域に対応する部分ではそれらの層は透明基材に付着しないで、透明基材が剥離され、被貼着体側には、ホログラム形成層、エレクトロルミネッセンス素子層、及び粘着層が、「開封」の文字状に欠けた状態(文字状の窪みが発生した状態、もしくは、文字状の穴が開いた状態。以下、被貼着体側残部ともいう。)で残されることとなる。
この場合、透明基材側残部においても、電界印加によるエレクトロルミネッセンス素子層の発光を生じさせるためには、エレクトロルミネッセンス素子層を単純に陽極、発行層及び、陰極の3層構成としたときに、その陽極端子と、陰極端子が透明基材の端まで伸びている必要があり、且つ、「開」と「封」の文字においても、両端子が連続的に導通している必要がある。すなわち、「開」や「封」の文字を「一文字書き」によって表して、隔離する部分がないものとするか、もしくは、「門」という文字の左側と右側の分離状態を解消するために、左側と右側をつなぐ「一本の線」を陽極端子と陰極端子を付加し、その位置をずらすことで、電界印加時に、その「一本の線」の部分を発光させないようにすることが好適である。もちろん、他の隔離部分も同様にして導通させることができる。
また、表面活性化処理部分の領域の大きさ(面積)と、それ以外の領域(表面不活性化処理部分の領域を含む。)の大きさ(面積)とを比較すると、この例もそうであるが、表面活性化処理部分の領域の大きさより、それ以外の領域の大きさの方が相対的に大きくなる場合が多いことから、この透明基材とホログラム形成層の界面での剥離を助長する効果も有する。
【0013】
そして、この被貼着体上の被貼着体側残部に、所定の電界を印加すると、発光層内の蛍光体が蛍光を発し、その発光波長によるホログラム再生像が出現する。この場合、ホログラム再生像は、「開封」の文字により遮られた状態として観察される。
そもそも、ホログラム再生像はその再生の原理から非常に冗長性が高いため、この「遮断」(表面活性化処理領域の幅、すなわち、「開封」の文字の線幅だけ、ホログラムレリーフ及びエレクトロルミネッセンス素子層が取り除かれているため、この領域からホログラム再生に寄与する光が放射されないことを意味し、あたかも、ホログラム再生像の上から、「開封」の文字状の「遮蔽物」をかぶせて、ホログラム再生像を結像する光の進路を「遮断」したように見えることを意味する。)を明確に視認できるようにするため、そのホログラムレリーフの干渉縞の周期0.5μm〜2μmの200倍〜5000倍、より好適には、500倍〜2000倍とする。
この「遮断」が、200倍未満であると、ホログラムの冗長性からホログラム再生像が強く再現されて「遮断」が弱まってその存在を視認し難くなり、この「遮断」が5000倍を超えると、表面活性化処理した部分の領域の面積が大きくなって(個々の線幅が大きくなり、結果として全体の面積も大きくなることを意味する。)、透明基材そのものが剥離しにくくなったり、ホログラムラベル全体が何らの破断も生じずそのまま剥離できてしまう等の不具合が発生する。
透明基材を剥離した際の「遮断」(文字等。)の鮮明さは、500倍〜2000倍が最も良好となる。
これに対し、表面活性化処理していない面、乃至は表面不活性化処理面は、その剥離強度を、0.01kg/25mm幅以上0.1kg/25mm幅以下として、ホログラムラベルを剥そうとすると、どのように工夫しても、必ず、透明基材がホログラム形成層からスムースに剥がれるものとし、透明基材を剥離した際、ホログラム形成面の最表面がほぼ鏡面となって(剥離痕等が残らないことを意味する。)、その部分からは、その下にあるホログラム再生像を鮮明に視認することができるものとする。
【0014】
上記した印刷手法を用いる表面不活性化処理は、非常に鮮明なパターンを形成可能であり、且つ、表面不活性化処理面と表面活性化処理面との接着強度差を非常に大きくすることができるため、破断する境界線をより明確なものとすることができる。
もちろん、これらの表面活性化処理及び表面不活性化処理を用いたパターン状処理は、光学的に透明であって、ホログラムラベルを観察した際、そのパターン境界を視認することができず、レーザー等で照明してもその透明性(その連続性。)を維持している。
この表面活性化処理の中でも、レーザー照射等の光処理、又はプラズマ処理等の物理的処理は、透明基材の処理面に凹凸が発生せず、鏡面を維持していること、表面活性化処理の位置精度を高くすることが可能であること、及び、表面不活性化処理による表面不活性化処理効果が大きいことから、特に望ましく、また光学的透明性にも優れる。
さらに、上記した「パターン」内を均一に表面活性化処理することに替えて、その「パターン」を「微細なパターンの集合により構成」する、すなわち、その「パターン」内を、
より「微細なパターン」、例えば、網点状、市松模様状、ランダムパターン状等の「微細なパターン」の集合体とし、その「微細なパターン」の部分のみを表面活性化処理することで、「破断」する境界線(すなわち、破断する機会)を増やし、「破断」をより効率的に発生させることができるようになり、透明基材を剥離した際のホログラム形成層等の破断性、そして、併せて、エレクトロルミネッセンス素子層の破断性を向上することができる。
例えば、網点形状の場合には、その網点の中を表面活性化処理し、網点と網点の間の領域は、表面活性化処理せず、または、表面不活性化処理し、
市松模様状の場合には、升目で一様に区切り、その一つ飛ばしの升目の部分のみ、表面活性化処理し、それ以外の升目は、表面活性化処理しないか、もしくは、表面不活性化処理して、透明基材とホログラム形成層との界面の剥離強度に微細な網点状や微細な市松模様状の強弱を付与することで、「破断」性を向上させる。
但し、上記した陽極や陰極の導通性を確保するため、網点間をつなぐ「線」が必要であるため、もともとその「線」をデザイン内に有する市松模様状が好適である。
【0015】
このため、「微細なパターン」の個々の大きさ(市松模様であれば、その一つのマスの大きさを意味する。)は、上記した導通用の「線」を確保するため、比較的大きいものとし、200μm〜1mmとする。
「微細なパターン」の個々の大きさが、1mmより大きいと、「破断」性を向上させる効果が低下し、200μm未満とすると、上記した「線」の太さが小さくなりすぎて、上記した方法による、十分な表面活性化処理ができなくなる。
例えば、一つのマスの大きさを200μmとすると、上記の「線」の幅は、50μm程度は確保することができる。
この表面活性化処理を施す範囲は、ホログラム形成層全体に渡って施すこともできるが、この表面活性化処理の目的が「不正行為の判定」であるため、ホログラムラベルの所定の一部範囲(1/10〜1/25の範囲。)に限定して施すことも、ホログラムラベルを被貼着体に貼着した状態で、そのような処理が存在することをさらに秘匿する意味で好適である。
さらに、ホログラムの冗長性を遮断する目的を考慮すると、「パターン」は均一に設けることが望ましいが、ホログラム画像再生時のもう一つの特徴である、「50μm〜300μm幅の微細な光回折性の帯でホログラムを寸断すると光回折性の帯とホログラムの帯が一対となって縞を構成し、それぞれの帯から回折する光の干渉効果によりホログラム画像の再生を阻害する効果が発生する」現象を用いてホログラム再生を「遮断」するためには、「微細なパターン」の大きさを、200μm〜300μm幅であって、長さも同様とすることが望ましい。本発明の場合には、この微細な光回折性の帯に相当する部分は、「光散乱性の帯」となって観察されることとなる。
例えば、網点の直径、市松模様の一つの正方形の一辺の長さ、さらには、ランダムパターンの個々の領域の幅等を、この大きさとする。
透明基材剥離時、ホログラム再生に寄与する領域とホログラム再生に寄与しない領域とが、交互に上記した大きさで形成されることで、1つのホログラム再生領域とそれに隣接する1つのホログラム再生しない領域が、上記した微細な「縞」を形成し、この縞が繰り返し存在することで、ホログラム画像の再生を阻害し、単なる虹色の領域として視認されることになる。従って、この場合は、例えば、虹色の「開封」文字が観察される。
【0016】
本発明で使用される透明基材には、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムラベルを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、5〜250μm厚さのフィルム状もしくはシート状のプラスチックを用いる。
透明基材の上に形成される、ホログラム形成層を構成する、透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができ、グラビアコーティング方式等の各種コーティング方式や、オフセット印刷方式、スクリーン印刷方式等の各種印刷方式を用いて、5μm〜50μm厚さの透明樹脂層を形成する。
上記の透明な樹脂材料を用いてホログラム形成層を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
レリーフホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
【0017】
ホログラムレリーフは、位相ホログラムとしての位相差を「レリーフ形状(凹凸形状を意味する。)」に現しているが、この位相差を有する「レリーフ形状」に接するように設けられ(エレクトロルミネッセンス素子層の一方の面がその「レリーフ形状」に沿って設けられ)、且つ、「レリーフ形状」に追従して、エレクトロルミネッセンス素子層が設けられることにより、エレクトロルミネッセンス素子層が発する光が、上記位相差を含んで、または、有して発することになる。
エレクトロルミネッセンス素子層は、透明性を有しているか、もしくは、「白色」(蛍光体表面の光散乱性により、「白色」と視認されることを意味する。)であるため、エレクトロルミネッセンス素子層を発光させる照明光以外の照明光の下では、単なる透明なラベル、もしくは、白色ラベルとして視認される。
そのため、上記した種々のホログラムラベルの用途においては、その用途に適合する文字や絵柄等の印刷層を、ホログラムラベルを構成する各層の上下、特には、透明基材と透明樹脂層との間に設けることが好適である。
ここで、エレクトロルミネッセンス素子層により、ホログラム再生像が出現する原理について以下に説明する。
レリーフホログラムを再生する場合に、そのレリーフホログラムを所定の照明光で照明した際に、そのレリーフホログラム面上のあらゆる点(場所)で生じるホイヘンスの2次波が発生するが、これに対し、本発明のホログラムラベルの場合においては、この2次波に相当するものが、ホログラムレリーフ面に配されたエレクトロルミネッセンス素子層の発光(発する光)であり、この光がその役目を担い、ホログラム画像に対応したホログラムレリーフが有する位相差を含んで発する光(発光)を観察者側に届けるものである。
すなわち、この発する光(発光)が、ホログラムレリーフ面上の空間において干渉現象を起こし、その結果、所定の方向に所定のホログラム再生像を発現する。
エレクトロルミネッセンスとは、電場のエネルギーによって、蛍光物質等が発光する現象であって、面光源を得ることが可能であり、大別して、有機エレクトロルミネッセンスと、無機エレクトロルミネッセンスとがある。
有機エレクトロルミネッセンスは、電流を流すと発光する性質を有する有機物質を用いた発光現象のことであり、ベースとなる層に有機物質を挟み込んだ構造をしている。
その層間に電流を流すことで、その有機物質の分子が励起され発光する仕組みとなっている。
代表的な層構成は、/陽極(透明導電層)/ホール輸送層/有機物質層/電子輸送層/陰極(導電性反射層)からなり、陽極側から発する光(発光)が出る。
すなわち、薄膜で形成された有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極(陰極層)から電子輸送層を経て有機物質層に到達した電子と、陽極からホール輸送層を経て有機物質層に到達した正孔とを再結合させることにより生じた励起子(エキシトン)によって発光する。
【0018】
つまり、その再結合の際に発生するエネルギーにより有機物質の分子等を励起し、励起状態から、再び、基底状態へ戻るときに、蛍光(燐光を含む。)発光等が起こる。
蛍光発光の原理は、図1に示すジャブロンスキー図にあるように、その有機物質(複数の物質の複合系を含む。)の分子等の基底状態(S0:一重項状態)からエネルギー吸収によって第一(S1)、第二(S2)、第三励起状態(S3)・・・のどれかの振動状態に励起された有機物質の分子等が、無放射過程で非常に速やかに緩和してS1の電子励起状態に移るか、あるいは項間交差によって三重項状態(T1、T2)へ移る。
S1の最低振動状態になった蛍光体は、無放射過程によるか蛍光を発して基底状態に戻り、三重項状態になった分子は、無放射過程によるか、燐光を発して基底状態に戻る。
励起しても光に上手く利用できないエネルギーは無放射失活(熱失活)する。
一重項同士の遷移は瞬間的に起こるため、蛍光の半減期は10-4sec以下と短いものである。遷移に要する時間は、10-15secで励起が起こり、その後10-9〜10-7secで蛍光発光が起こるとされている。
一方、三重項から一重項への遷移はスピン変化禁止により禁制遷移となり自発的放出が起こりにくいので、燐光の半減期は大きく、秒単位のものもある。
基底状態に戻る際に光を発するか否か、光の強度が強いか弱いか、蛍光寿命が長いか短いかは、その有機物質の分子等の分子構造や分子等の置かれた環境に大きく依存する。
有機物質の分子等の放出光の波長分布を発光スペクトルといい、発光スペクトルは発光の波長に対し相対的な発光強度をプロットして作成される。発光スペクトルに示される波長(エネルギー)は一次励起状態の最低振動エネルギー準位から基底状態の優先的な振動エネルギー準位までのエネルギー差と等しくなる。
【0019】
無機エレクトロルミネッセンスとは、物質に電界を印加したときに発光する物理現象であり、その機構は、固体である無機化合物の蛍光体(発光層)に電圧を印加するとその固体内にあらかじめ存在する電子、あるいは電極から注入された電子が高電界によって加速され、発光中心に衝突してこれを励起し、そのとき生じた電子と正孔が再結合することによって発光するというものである。外部から電流によって注入された電子と正孔の再結合によって発光する有機ELとは、励起の点で異なる。
すなわち、薄膜で形成された無機エレクトロルミネッセンス素子は、二重絶縁構造を有しており、この構造に電界を印加することにより発光が起こる。
発光層の構成形態から「分散型」と「薄膜型」の2種類に分けられ、分散型は、強誘電体粉末を有機バインダーに分散させた絶縁層と蛍光体粉末を有機バインダーに分散させた発光層とを積層させて、透明電極と背面電極で挟んだ構造であり、その代表的な構成は、/透明電極/絶縁層/発光層/背面電極/、若しくは、/透明電極/絶縁層/発光層/絶縁層/背面電極/である。
この層構成において、
薄膜型は、薄膜電極付き基板上に薄膜蛍光体からなる発光層と絶縁層を積層させ、電極を付けた構造であって、スパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成方法を用いて層を形成する。その代表的な構成は、分散型と同様である。
いずれも、透明電極側から、発する光(発光)が出る。
本発明は、従来のホログラムの再生方法、すなわち、ホログラムに照明光源からの照明光を当て、ホログラムレリーフ面での反射光の干渉現象によって、その照明光の波長のホログラムを再生するもの、とは異なり、電圧を印加することによって、エレクトロルミネッセンス素子が発光し、その発する光(発光)そのものが上記干渉現象を生じて、その発する光(発光)の波長におけるホログラムを再生するものである。従って、回折角度も、その発する光(発光)の波長に依存する。
【0020】
例えば、透明でほとんど何も見えない空間(レーザー再生ホログラム等のようにその再生に単波長光を必要とするものは、白色光光源では視認できない。また、白色光再生に適するレインボーホログラムであっても、ホログラフレリーフ面の界面反射強度が小さい場合にも、やはり視認しにくくなる。)に、電圧印加によって初めて、例えば「緑色」のホログラムを視認することもできるため、観察者の目には、あたかも、通常再生に用いられる「緑色の照明光源」の無いところに、ホログラムだけが光輝き、空中に浮いているように見え、意匠性にも優れるものとなる。
さらに、ホログラムを再生可能な電源端子(陽極端子と、陰極端子。複数設けてもよいし、ダミー端子を設けることで、その偽造防止性を高めることが出来る。)がどの部分に形成されているか判別しにくくして、その構造を知りうる者のみがホログラム再生を果たすことができるよう設けて、真正性判定用に有用なものとすることができる。
また、上記した、発する光(発光)の波長を知りうる者のみがホログラム再生像の色調を予測でき、その再生波長に調整したバンドパスフィルターを通して覗いて、そのバンドパスフィルターを通過できるホログラムのみが、真正であると判定することもできる。
また、このバンドパスフィルターを通過する角度(回折角度)も、その発光波長に依存し、やはり、その値を知りうる者のみがその所定の角度で判定を行うことができる。
さらに、薄膜で形成されたエレクトロルミネッセンス素子を複数含めることにより、この再生像は複数の角度に異なる色調で現れることになり、意匠性の面でも、真正性判定の面でもより優れたものとすることができる。
もちろん、エレクトロルミネッセンス素子は、その印加する電圧により、発光スペクトルが大きく異なり、また個々の素子独特の発光特性を有するため、真正性判定に使用する印加電圧(電圧強度や、周波数等。)を知りえない偽造者が、真正品と全く同一のホログラムラベルを作製しようとしても、物理的に不可能と言える。
【0021】
有機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、具体的には、発光層となる有機薄膜を陰極と陽極で挟んだ単層構造のものや、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有する構造のもの、陰極と発光層との間に電子輸送層を有するもの、発光層部分を電子輸送層、発光層、正孔輸送層の3層構造とするもの、さらには必要に応じて多層化した構造のもの等を用いることができる。
これらの陽極と陰極で挟んだ層は、すべて有機薄膜(固体)で構成されており、各層の厚さは、10〜100nmである。
10nm未満では、各層の機能を十分発揮できず、また、100nmあれば、各層の機能を達成するためには十分であり、それより厚くすることによる不要なレリーフ追従性低下を避けるため、100nm以下とする。
発光層は、主材料(ホスト材料)と不純物材料(ドーパント材料:発光強度向上等の機能向上のために添加される。)との2成分系であり、発光する不純物材料は、0.1〜30%添加で主材料中に均一に分散されている。
0.1%以下では、発光性が不十分であり、30%を超えると、その不純物性(特異点としての存在性)が薄れ、かえって発光性が低下し始める。
陽極には、透明導電性薄膜と称される、透明性と導電性をあわせもつITO薄膜(インジウム・スズ酸化物薄膜)、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛などの金属酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどの共役系高分子などが挙げられる。
形成方法は、薄膜形成方法、すなわち、スパッタリング法や、真空蒸着法等を用いて、厚さ50〜500nmで形成する。以上の配慮から、透明導電性薄膜の表面抵抗値は、0.001Ω/□〜0.1Ω/□とする。
形成方法として、印刷法等も用いることが可能であるが、ホログラムレリーフに接して、且つ、追従して設ける必要があり、この層がレリーフ形状を維持し、次の薄膜層にもそのレリーフ形状を与えるためには、この層の膜厚さが、薄く且つ高度に均一である必要があり、上記した薄膜形成方法が望ましい。
【0022】
ホログラムレリーフのレリーフ形状の凹凸は、0.01μm〜1μmと微細であり、その周期も0.01μm〜1μmと、非常に微細でなだらかな変化を有しているが、このなだらかな変化を忠実に再現できないと、再生されるホログラムの像を正確に、且つ、明るく再現することができない。
従って、上記した「ホログラムレリーフへの追従性」は、多層構造となる、エレクトロルミネッセンス素子の発光層及び、発光層から光が放出される透明導電性薄膜層の膜厚さ及び、その均一性が、より薄く、且つ、より均一であることが要求されることを意味する。
すなわち、ホログラムレリーフ面と、発光層との間に、多層が介在しても、発光層の発光面のレリーフ形状が、そのホログラムレリーフのレリーフ形状と同一乃至はほぼ同一となることが重要である。ほぼ同一とは、レリーフ形状の凹凸の再現性が、90%以上、さらには、95%以上であることが望ましい。
これは、一つの凹凸の再現性であると同時に、ホログラムを再生する領域全体の再現性を示す指標である。
この再現性は、例えば、2つの3次元曲線の比較において、元の3次元曲線の凹凸領域の体積に対して、もう一つの3次元曲線との差分領域の体積が、その10%以内、さらには、5%以内にあることを意味する。これは、一つの凹凸の再現性であると同時に、ホログラムを再生する領域全体の再現性を示す指標である。簡易的な評価として、レリーフ断面同士を2次曲線で比較する方法を用いることも好適である。
以上を配慮して、その膜厚さは、50nm未満では、その導電性が不十分であり、500nmを超えると、ホログラムレリーフへの追従性が劣化する。さらに、ホログラムレリーフに接して設けた場合に、その加熱負荷により、ホログラムレリーフ形状を保持している透明樹脂の劣化、すなわち、ホログラムレリーフ形状の変形(劣化)を起こす。
陰極には、アルミニウム、金、銀、白金、銅、鉄、銀・マグネシウム合金等の金属薄膜や、グラファイトなどを厚さ、50〜500nmで形成する。
50nm未満では、その導電性が不十分であり、500nmを超えると、やはり、ホログラムレリーフへの追従性が劣化する。さらに、ホログラムレリーフに接して設けていなくても、その薄膜形成時の加熱負荷により、この場合であっても、ホログラムレリーフ形状を保持している透明樹脂の劣化、すなわち、ホログラムレリーフ形状の変形(劣化)を起こし易くなる。
【0023】
金属薄膜はその反射性が高いことから、エレクトロルミネッセンス発光の効率を向上する効果を持つ。もちろん、この金属薄膜に網点状等の穴を設け、透明性を付加することもできるし、金属薄膜の代わりに、透明導電性薄膜を陽極と同様に形成してもよい。
発光層である有機薄膜には、低分子系と高分子系とを用いることができる。
低分子系には、正孔輸送材料として、TPAC(1,1−ビス[4-[N,N―ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン)、TPD(N,N´―ジフェニル−N,N´―ジ(m―トリル)ベンジジン)、CuPc(フタロシアニン銅)、α―NPD(4,4´―ビス[フェニル(1−ナフチル)アミノ]−1,1´ビフェニール等、
電子輸送材料として、BND(2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール)、PBD(2−(ターシャリー−ブチルフェニル)―5―(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、Butyl−PBD(2−ビフェニル−5−(パラ−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、TAZ(1−フェニル−2−ビフェニル−5−パラ−tert−ブチルフェニル−1,3,4−トリアゾール)、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、Beq2(ビス(8−ヒドロキシ−キノリノ)ベリリウム)、Zn(BOZ)2(亜鉛−ビス−ベンゾキサゾール)、Zn(BTZ)2(亜鉛−ビス−ベンゾチアゾール)、Eu(DBM)3(Phen)(トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオノ)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III))等、
発光層材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)等、
ドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリン、QN−(N,N´−ジメチルキナクリドン)、ナイルレッド、ベリレンラブレン、TBP(1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン)キナクリドン等、その他、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(4−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、4,4'−ビス(9−カルバゾリル)ビフェニル等を用いることができる。
これらの低分子系材料は、真空蒸着法、CVD法(化学蒸着法)等の薄膜形成法により設けることができる。
【0024】
高分子系には、
発光層材料として、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)系、PAT(ポリチオフェン)系、PF(ポリフルオレン)系、PPP系(ポリパラフェニレン)等、
正孔層材料として、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)+PSS(ポリスチレンスルホン酸:ドーパント)共重合体、PEDOT+PVS(ポリビニルスルホン酸)共重合体、ポリアニリン+PSS共重合体、ポリピロール+PSS共重合体等、を用いることができる。
これらの高分子系材料は、各種のコーティング法、印刷法により設けることことができる。印加直流電圧は、1〜10Vである。
無機エレクトロルミネッセンス素子の構造は、基本構造として、透明電極、絶縁層、発光層、背面電極を積層したものであり、発光は、発光層である蛍光体膜から出る。蛍光体は、薄膜型の場合、誘電性のある母体材料に、発光中心となる微量の添加不純物を混ぜたもので、エネルギーを受けることで、その発光中心物質の外殻軌道または高い順位に移動(励起)した、発光中心物質の持つ電子が、元の順位に戻る(遷移)ときに、発光を生じる。
発光層である蛍光体の膜を、絶縁層である誘電体で挟み込み、その両端に電極を配した構造は、コンデンサを3個直列に接続した回路と考えることができ、ここに、交流電圧をかけると、誘電体と蛍光体の中で分極が生じ、印加電圧を上げ、蛍光体の膜にかかる電界が、100MV/m以上となると、発光中心が電界で加速された電子等の衝突のエネルギーを受け取り、励起されるようになる。
発光層としては、母体にZnSや、SrSなどのII族硫化物を用い、発光中心にMnや希土類を添加したもの、母体にBaAL24(バリウム・アルミニウム複合硫化物)を用い、発光中心にEuを添加したもの、等が用いられる。
発光層には、周期表の第2族元素と第16族元素とから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素及び/又は周期表の第13族元素と第15族元素とから成る群から選ばれる少なくとも1種の元素とを含む半導体を好ましく用いることができる。
そのキャリア密度は、1017/cm3以下であることが好ましい。
発光層を形成する物質の具体例をさらに挙げると、CdS,CdSe,CdTe,ZnSe,ZnTe,CaS,MgS,GaP,GaAs,GaN,InP,InAs及びそれらの混晶などが挙げられるが、ZnSe,CaSなどを好ましく用いることができる。
【0025】
さらに、BaAl24、CaGa24、Ga23、Zn2SiO4、Zn2GaO4、ZnGa24,ZnGeO3,ZnGeO4,ZnAl24,CaGa24,CaGeO3,Ca2Ge27,CaO,Ga23,GeO2,SrAl24,SrGa24,SrP27,MgGa24,Mg2GeO4,MgGeO3,BaAl24,Ga2Ge27,BeGa24,Y2SiO5,Y2GeO5,Y2Ge27,Y4GeO8,Y23、Y22S,SnO2及びそれらの混晶などを好ましく用いることができる。
キャリア密度等は、一般に用いられるホール効果測定法などで求めることができる。
絶縁層である誘電体膜としては、金属酸化物、窒化物が用いられる。BaTiO3などのペロブスカイト系酸化物は高い誘電率を持ち好適である。
酸化物に含むことができる元素としては、周期表の第2族、3族、9族、12族(旧2B族(旧IIb族))、13族(旧3B族(旧III族))、14族(旧4B族(旧IV族))、第15族、第16族の元素が好ましく、第12族、第13族及び第14族の元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことがより好ましい。具体的にはGa、In、Sn、Zn、Al、Sc、Y、La、Si、Ge、Mg、Ca、Sr、Rh、Ir等を挙げることができ、より好ましくは、Ga,In,Sn,Zn,Si,Ge等である。またこれらの元素以外に透明半導体が、S、Se、Te等のカルコゲナイドやCu、Ag等を好ましく含むことができる。
絶縁層と発光層の層厚さは、0.1μm〜2μmとする。もちろん、2μmを超えて10μm程度の厚さとすることで、発光性性能をより向上させることができるが、ホログラムレリーフの追従性の面で、2μmが限界である。
透明電極、背面電極は、有機エレクトロルミネッセンス素子と同様に、ITOや、金属薄膜が好適に用いられる。
異なる発光色の蛍光体膜を交互に並置して、多色とすることもできるが、輝度の高い1色の発光体膜の上に、色変換材料(クマリン系:クマリン6、ローダミン系:ローダミン6G、ローダミンB等の蛍光色素の混合物や、2種以上のベンゾ−α−ビロン骨格を持つ蛍光色素の混合物等、波長350nm〜600nmの光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する光を放出する等。)を重ねて多色とすることも好適である。
印加電圧としては、100V・50〜1000Hzの交流電源等を用いることができる。
【0026】
次に、ホログラフィの原理について説明する。
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトレジスト等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面を物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
【0027】
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
【0028】
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)
比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
【0029】
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
本発明の場合は、ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布に比例し、(8)の式で表されてはいるものの、このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてるのではなく、(8)の振幅透過率もしくは振幅反射率と同様の空間的な分布を持つ発光波がこのホログラムから発せられることになる。
従って、参照光にホログラムに記録された位相項を付与するという従来のホログラム再生の原理によらず、既にホログラムに記録されている位相項を保持して発光波を放射するものである。従って、理論上は、物体の位相差を含む空間関数を持つ3次元の連続曲面状の発光面を有し、その1曲面から光が放射されることになる。
従来のホログラム再生原理を透過タイプについて、単純化して説明すると、参照光としての平行光をホログラムにあてた際、遮蔽部分では、平行光が遮蔽され、透過部分からのみその平行光を透過し、透過部分と遮蔽部分との境界において回折が起こり、物体の持つ位相項を受け取り、ホログラムを透過した成分全体が重ね合わさり、それがホログラム再生光となって観察者の目に届くものである。
本発明の場合は、上記した参照光としての平行光が存在せず、ホログラムレリーフに接するように設けられた発光面での発光時、その放射光が物体の位相項を保持しており、その放射光同士の干渉現象により、ホログラム再生がなされるものである。
【0030】
時間的且つ空間的コヒーレンス性を持たない放射光同士の干渉効果は、レーザー光のような十分な干渉を生じないが、低コヒーレント光で ホログラムを照明した際と同様のレベルでホログラム再生が行われる。以上のような原理による再生であるため、ホログラム撮影時の参照光は平行光であることが好ましく(複雑な参照光を再現できないため。)、もしくは、「回折格子により表現されたホログラム」(回折格子は、物体光、参照光とも平行光である。)であることが好ましく、回折格子は計算機ホログラム等、電子線描画により形成したものが精密であり、好適である。
さらに、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、放射光に対して、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に関する特性を付与することが必要であり、例えば、発光体の発光する部分の厚さ(放射方向の距離)を薄いものとして、発光点の厚さ方向におけるばらつきを小さいものとしたり、発光層その他の層を均一(層厚さを均一にしたり、均一分散や、均一組成とするなど、層内のムラをなくすこと。)にして、発光スペクトルのばらつきや、発光スペクトルの幅を小さいものとすることが望ましい。
また、ホログラムを光学的に記録する際に使用する光の主波長や、回折格子等を形成する際に想定する回折光の主波長と、エレクトロルミネッセンス素子からの発光波長を同一、乃至はほぼ同一とすることで、より鮮明なホログラム再生像を得ることができる。
さらには、発光光が通過する透明導電性薄膜、絶縁層、正孔輸送層等の透明な層での光の多重反射を考慮して、発光発光波長の通過する光の強度が最大となるように、各層の屈折率と厚さを設定することが好ましい。
但し、本発明のホログラムラベルの本来の目的は、発光層の発光面で有する位相差分布を維持したまま素子から光を放出し、放出直後の空間において、その位相差分布に基づく光の干渉を十分行わせることであるから、この位相差分布を撹乱するような多重反射は、光の強度を増しすことはあっても、返ってホログラム再生像の鮮明度の低下を招く。
従って、上記した透明層等の屈折率分布や、厚さの設定は、これを配慮して行う必要がある。逆に、上記した透明層等での多重反射や、照明光のそれらの界面での反射を抑制する構成とすることも、ホログラム再生像の鮮明度を高めるために好適である。
もちろん、偽造防止性を高めるために、敢えて、発光する波長を記録形成時の波長と異ならせることも好適である。その場合は、波長が異なることによる、ホログラム再生像の変形や、回折角度の変化を予想し、あらかじめ確認しておくことが必須となる。
さらに、エレクトロルミネッセンス素子形成領域の部分的なばらつき、すなわち、形成場所による発光波長や、発光強度のばらつきは、ホログラム再生像の品質を劣化させるため、発光層の均一性は重要となる。
【0031】
少なくとも、発光波長のピーク値の部分的なばらつき(ある1mm径のスポット領域と、それに隣接する1mm径のスポット領域との差など。)や半値幅のばらつきは、30nm以内、発光強度ばらつきは10%以内であることが好適である。発光波長のピーク値や、半値幅のバラツキが30nmを超えると、ホログラム再生像の再生位置のばらつきが発生し、ホログラム再生像がボケて不鮮明となる。また、発光強度のばらつきが10%を超えると、光の干渉にもばらつきが発生し、結果的に不鮮明な再生となる。
また、エレクトロルミネッセンス素子を多数の微細なスポット(例えば、網点状等)として、離散させて設けた場合(発光層のみを網点状とする等、素子全体を離散的に設けても良いし、単層乃至は複数の層のみを離散的に設けても良い。)には、発光量が減少し、全体的な明るさは低下するものの、個々のスポットに隣接する領域から発光光がでないため、不要な干渉を低減させることができ、ホログラム再生像のシャープさが増し、好適である。
但し、このスポットの大きさや、発光層等の厚さが、ホログラムレリーフとは無関係にそのホログラム面上に離散的に形成されている場合には、その大きさ分布や、厚さ分布に起因する蛍光発光強度分布が、場合によっては、ホログラムを再生する光と不要な干渉を生じ、若しくは、あるべき干渉を撹乱し、ホログラム再生像を不鮮明にする要因となり得る。
この要因を排除するため、発光層を、連続して形成する場合、及び、離散的に形成する場合においても、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さ、そして、均一な分布で形成して、ホログラムレリーフ面のどの領域からも、同一の強度の発光が生じるようにし、ホログラム再生像の鮮明化を図ることができる。
【0032】
本発明のホログラムラベルは、室内照明光や、自然光照明下では、ホログラム再生像があまり認識できず(視認できず)、電圧を印加した時のみ、突然ホログラム再生像が出現し、まったく照明光のないところに、ホログラム再生像が浮き上がっているように観察される。
但し、陰極の金属層が高い反射性を有しているため、この層の反射により、ホログラム再生像が視認できることになる。そこで、陰極そのものも透明層としたり、陰極層のみホログラムレリーフに追従させないように陰極層に接している層の厚さを制御、若しくは、ばらつかせて、さらには、敢えて平坦化して(鏡面となる。)、室内照明光や、自然光照明下では、ホログラム再生像を全く認識できないようにすることも偽造防止性の向上や、意外性という意味での意匠性の向上に寄与する。
本発明のホログラムラベルのホログラム再生像は、空間的なホログラムの位相を含んでいるとはいえ、その発光光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、このホログラム再生像は通常のレーザー再生レリーフホログラムの再生像より微弱であって且つ不鮮明となっている。
もちろん、ビーム形状の回折光を観察するのみであれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないものの、この微弱且つ不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、発光体の発光性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、0次回折光の角度と発光の回折角度の差を大きくし、さらには、発光層を薄くして、発光層厚さ方向のばらつきを抑え、且つ、均一なものとすることが必要となる。(発光面が位相情報を含んでいるため、その空間的な形状を正確に再現するものとする。)
【0033】
さらには、時間的なコヒーレント性をより強く発現するため、電圧の印加をパルス状とし、パルスとパルスの時間的間隔を蛍光等の発光時間である10-7sec以上あけて照明することも好適である。これにより、一つの印加パルスによって生じた一つの蛍光の発光面が、次の印加パルスによって生じた蛍光の発光面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つのパルスによって発現した一つの蛍光発光面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。もちろん、単純に秒単位でON−OFFする電圧印加手法(手動でも可能なレベル。)を使用した場合でも、観察者には、連続して発光しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、上記した効果を十分得ることができる。
本発明のホログラムラベルにおいて、エレクトロルミネッセンス素子層の発光側、すなわち、発光層、正孔輸送層と、透明導電性薄膜の積層や、発光層、絶縁層と、透明導電性薄膜の積層等における、透明導電性薄膜の最表面が、ホログラム形成層のホログラムレリーフに接し、且つ追従している場合には、透明導電性薄膜の最表面を通過した発光が、ホログラム形成層と透明基材を通過して、観察者側にその発光光の波長におけるホログラム再生像を再生する。
この場合には、ホログラム形成層、透明導電性薄膜、及び発光層等の屈折率差を小さくしたり、その分布を制御することで、各層の界面での不要な反射を抑制することができ、エレクトロルミネッセンス素子に電圧を印加する前の視認性を抑制可能であって、より意匠性を高いものとすることができる。
さらには、発光層の表面からホログラム形成層のホログラムレリーフ面までの距離(その間の各層の層厚さ)を極力小さいものとすることで、発光層表面のレリーフ形状のホログラムレリーフに対する追従性を高いものとすることができる。これにより、より鮮明なホログラム再生像を得ることができる。
また、陰極層を金属反射面として、全体の発光強度を増すことが可能である。
【0034】
さらに、エレクトロルミネッセンス素子層を、レリーフ形状に、接するように、且つ追従するように設ける際に、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、エレクトロルミネッセンス素子層の厚さは、すなわち、素子全体の厚さは、薄く形成することが好適であり、ホログラムレリーフの凹凸の深さや、ピッチの大きさに対して、同じレベルとすることが望ましく、0.01μm〜2.0μmであることが好ましい。
この厚さが、0.01μm、すなわち、10nm未満であれば、素子としての性能が不十分であり、2.0μmを超えると、ホログラムレリーフの追従性が低下し、いずれにしても鮮明なホロググラム再生像を得ることはできない。
このエレクトロルミネッセンス素子層上に、粘着層を設け、本発明のホログラムラベルを形成することができる。
粘着層に用い得る透明な樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリビニリデン、メチルセルロース、フッ素樹脂、メラミン樹脂、もしくは、この混合体等を適宜用いることができ、更に必要に応じて可塑剤、その他の添加剤を加えて使用することができる(粘着剤を意味する。)。
これらの粘着剤は、適宜、溶剤や、水に溶解させ、グラビア印刷等のコーティング方式や、シルク印刷、さらには、無溶剤のホットメルト方式等を用いて、上記のレリーフホログラムのホログラムレリーフ上に、乾燥後の形成厚さ、5μm〜50μmで、設けることができる。
5μm未満では、ホログラムラベルを貼着する被貼着体との接着力(接着強度、もしくは、剥離強度を意味する。)が不十分であり、また、50μmを超えると、ホログラムラベルの取扱い適性に欠けるものとなる。
上記した粘着層に用いる透明な樹脂は、エレクトロルミネッセンス素子層との接着性の強いものを適宜選択する。
【0035】
また、粘着層には、光散乱性を有するもの、例えば、高屈折率である透明無機顔料微粒子(二酸化チタン顔料:屈折率2.70、酸化鉄パール顔料:屈折率3.0など。)を比較的多く混入させることが可能であって(粘着層を通過する光は、「観察する側のホログラム再生像の結像」には寄与しないため。)、これにより、エレクトロルミネッセンス素子層を発光させた際の、観察側とは反対の方向に進む光を乱反射させて減衰させることができるとともに、粘着層の粘性を抑制してホログラムラベルのブロッキングを防止でき、好適である。
粘着層と、エレクトロルミネッセンス素子層との180度剥離強度(剥離強度測定は、JIS Z−0237に準じ、剥離速度500mm/分とする。)は、100g/25mm〜3kg/25mm、特に、300g/25mm以上とすることが望ましい。100mm/25mm未満では、ホログラムラベルを被貼着体に貼着した後、ホログラムラベルを不正に剥がそうとした際に、エレクトロルミネッセンス素子層と粘着層との界面においての剥離が起こり易くなり、エレクトロルミネッセンス素子層が破断し難くなる。
また、不正防止という意味では、粘着層と、エレクトロルミネッセンス素子層との剥離強度は、大きいことが望ましいが、3kg/25mmを超える粘着剤は、そのラベル加工適性や、ラベル貼付適性に劣るものとなる。
この外観上は単なる「ラベル」としか視認できないホログラムラベルを所望の被貼着体上の適宜な位置に貼付した後に、この「ラベル」を不正者が不正に剥そうとすると、透明基材が容易に剥がれ、透明基材側に、透明基材側残部が残り、被貼着体側に被貼着体側残部が残って、「開封」等の文字が現れ、この「ラベル」が「脆性ラベル」であったことが判明する。
この段階で、不正者は、被貼着体側残部を溶剤等で除去するとその溶剤等で被貼着体表面を劣化させると考え、その被貼着体側残部を残したまま、元の「ラベル」貼着状態を復元することを試みることとなる。
すなわち、偽の「ラベル」として、ホログラム形成層を有しない、通常の脆性ラベルを別途用意し、その偽の「ラベル」の粘着層で、その被貼着体側残部の窪みもしくは穴を埋めるように、その偽の「ラベル」をその被貼着体側残部上に貼着する。
【0036】
不正者は、この行為により、元の「ラベル」貼着状態を復元できたとして、被貼着体を元にあった場所に戻して、不正行為を隠ぺいし得たと確信するが、被貼着体の「真の所有者」が、この偽の「ラベル」の被貼着体側残部に存在する陽極端子と陰極端子に所定の電圧を印加すると、被貼着体側残部に残っているエレクトロルミネッセンス素子層が発光し、その発光波長によるホログラム再生像を発現し、しかも、そのホログラム再生像が、「開封」等の文字状に「遮蔽」された状態で現れることから、何らかの「不正」が行われたことを、容易、且つ、確実に判定することができる。
もちろん、不正者が剥がした透明基材を使用して、新たな偽の「ラベル」を作り出したとしても、その「ラベル」の中に取り込まれた透明基材側残部の中に残存する「延長されている」陽極端子と陰極端子に所定の電圧を印加することで、今度は、「開封」等の文字部分にのみホログラム再生像が出現し、「不正」行為の存在を示すこととなる。
さらに、不正者がその剥がした透明基材を使用した偽の「ラベル」を用いて元の状態を復元しようとして、偶然にも、被貼着体側残部の窪みの位置と、透明基材側残部の位置が合致したとしても、そのホログラムレリーフの位置は空間的にずれており、従って、ホログラム再生像の結像位置もずれを生じて、やはり、「不正」の存在を示すこととなる。
また、不正者が、その剥がした透明基材を使用し、直接、被貼着体側残部の窪みの位置と、透明基材側残部の位置を合致するように貼り合わせることを試みたとしても、ホログラム形成層やエレクトロルミネッセンス素子層の破断によるホログラムレリーフの劣化や、貼り合わせる際の空気の混入などにより、両残部の端子が偶然にも導通することはなく、当然のごとく、ホログラム形成層そのものの存在さえ知り得ないのであるから、その「埋め合わせ」がうまくできたか否かさえ、確認することは不可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、透明基材に、表面活性化処理を施した後、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、エレクトロルミネッセンス素子層、粘着層が設けられていることを特徴とするホログラムラベルを提供することができ、このホログラムラベルを、所望の被貼着体に貼着後、本来剥すことのないそのホログラムラベルを不正な目的のために剥そうとすると、その透明基材とホログラム形成層との界面で優先して剥離が発生し、その剥離した後には、不正行為であるというメッセージを表出し、さらに、所定の電界の印加によって、「開封等の文字状の欠け」を含んだホログラム再生像が浮き上がって、不正が行われたか否かの判定を容易とすることができるホログラムラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ジャブロンスキー図である。
【図2】本発明の一実施例を示すホログラムラベルAの断面図である。
【図3】本発明の一実施例を剥離するプロセスである。
【図4】本発明の一実施例を剥離後、判定するプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
(透明基材)本発明のホログラムラベルで使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムラベルAを製造する際の処理や加工に適した耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図2参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
透明基材1の一方の面に、パターン状に表面活性化処理を施して、表面活性化処理した部分2を設け、さらには、表面活性化処理した部分2以外の部分を表面不活性化処理して、
表面活性化処理した部分2とそれ以外の部分における、透明基材1とホログラム形成層3との密着性の差、すなわち、剥離強度の差を大きくする。(図2参照。)
透明基材1の厚さは、通常5〜250μmであるが、「ラベル」としての取り扱い適正から25〜100μmとすることが望ましい。
また、透明基材1の一方の面に、透明な樹脂をコーティングして、この透明な樹脂に上記処理を行い、上記した効果を持たせても良い。(図示せず。)
この透明な樹脂には、上記した樹脂群に加え、下記するホログラム形成層2に用いられる樹脂を使用することができる。
【0040】
さらに、表面活性化処理した部分2とそれ以外、乃至は、表面不活性化処理した部分との剥離強度の差を拡大する目的で、透明基材1とホログラム形成層3との間、すなわち、ホログラム形成層3上に保護層として形成され、透明基材1との剥離性を有する透明な樹脂を設けてもよい。(図示せず。)
この場合も、透明な樹脂としては、上記した樹脂群に加え、下記するホログラム形成層3に用いられる樹脂を、適宜、使用することができる。
もちろん、環境影響を配慮して、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートを使用することもでき、化学合成系として、ラクトン系樹脂:εーカプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5―トリメチルカプロラクトン、βープロピオラクトン、γーブチロラクトン、δーバレロラクトン、エナントラクトンの単独重合体またはこれら2種以上のモノマーの共重合体、これらの混合物、ポリカプロラクトン、もしくは、ポリブチレンサクシネート系樹脂:ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネートとポリカプロラクトンとの混合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンサクシネート・アジペートとの混合物、ポリブチレンサクシネート・アジペートとポリ乳酸との混合物、もしくは、ポリ乳酸、ポリ乳酸とD−乳酸との混合物など、もしくは、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールより合成したポリエステル樹脂、例えばコハク酸とブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせや、シュウ酸とネオペンチルグリコール、ブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせなど、変性ポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステル樹脂と澱粉の混合物、低分子量脂肪族ポリエステルに脂肪族イソシアネートを添加して重合させたものが好適である。
また、天然物系として、ゼラチンなどの動物性天然物質、セルロースなどの植物性天然物質など:澱粉脂肪酸エステル、澱粉キトナン・セルロースなど、微生物生産系として、ポリヒドロキシブチレートや、ポリエステル系:炭素源として3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、γ―ブチロラクトンをベースとするP(3HB−CO―4HB)、炭素源としてプロピオン酸、吉草酸をベースとしたP(3HB−CO―3HV)などが好適である。
【0041】
(表面活性化処理)
透明基材1の一方の面に対する表面活性化処理には、炭酸ガスレーザー照射、遠赤外線炭酸ガスレーザー照射、172nm真空紫外線(VUV、エキシマ光)照射、酸素増感エキシマ光照射、プラズマ処理、オープンプラズマ処理、コロナ処理、電子線照射処理等の透明基材1最表面の化学結合エネルギーよりも大きいフォトンエネルギー(7.2eV)、放電エネルギー、電子線エネルギー等により、透明基材1最表面の化学結合を切断し、又は、172nmの真空紫外線等のように、大気中の酸素に吸収されてオゾンまたは直接励起酸素を発生し、この接触により官能基を生成する等の物理的処理や、
過マンガン酸塩、過酸化物等の酸化剤を塗布することによる透明基材表面の酸化処理、プライマーコーティング処理、ビニル・エポキシ・メタクリキシ・アミノ・メルカプト・アクリロキシ・イソシアネート・スチリル・アルコキシオリゴマータイプシランカップリング剤を用いた処理等の化学的処理、真空処理であるアルゴンビームエッチング処理、透明基材を部分的に溶解するエッチング液処理、さらには機械的に透明基材表面を削り取るサンドブラスト加工等の物理的な租面形成処理等を用いることができる。(処理プロセスは図示せず。)(図2参照。)
この透明基材1の表面化活性化処理によって、透明基材1との接着性の弱い、すなわち、剥離強度の小さい樹脂に対しても、大きな剥離強度を得ることができる。
以上の表面活性化処理を用いて、透明基材1の界面張力もしくは表面エネルギーを増大させる。ホログラム形成層3に用いる樹脂や、その形成方法によってその剥離強度は決まるため、界面張力値を一義的には指定できないが、その目安としては、60〜80mN/mが好適である。(ポリエチレンテレフタレート樹脂では、36mN/mが、60mN/mに増大し、ホログラム形成層としてのメラミン樹脂との剥離強度が0.4kg/25mm幅から2.1kg/25mm幅へと大きくなる。)
【0042】
そのため、透明基材1の一方の面を表面活性化して、表面活性化処理した部分2における、透明基材1とその上に形成するホログラム形成層3との接着性を向上させ、0.5kg/25mm幅以上、3.0kg/25mm幅以下の強度(JIS Z0237で規定する180°剥離試験にて。)とし、その表面活性化処理した部分2を視認可能な所望のパターン状として残し、その他の領域については表面不活性化処理を行う。
この「パターン」は、文字、図形、記号等、視認可能な表示であればいずれも使用できるが、代表的には、ラベルを剥離した証拠を示すという意味で、「開封」等の文字表示をするため、「開」と「封」の2文字を縦、横に繰り返し展開したようなデザインを想定して、それらの文字の画線内に対応する透明基材1上の最表面部分を表面活性化処理して、表面活性化処理した部分2とする。
表面活性化処理の中でも、レーザー照射等の光処理、又はプラズマ処理等の物理的処理は、透明基材1の処理面に凹凸が発生せず、鏡面性を維持していること、及び、表面活性化処理による表面活性化効果が大きいことから、特に望ましく、また光学的透明性にも優れる。
さらに、上記した「パターン」内を均一に表面活性化処理することに替えて、その「パターン」内をより「微細なパターン」、例えば、網点状、市松模様状、ランダムパターン状等の微細な領域のみ表面活性化処理する(例えば、網点状に表面活性化処理することにより、「パターン」内の網点以外の部分は、表面活性化処理していない部分として残る。)ことで、透明基材1を剥離した際のホログラム形成層3や、エレクトロルミネッセンス素子層4を破断しようとする力の働き(力の作用方向、その大きさ等。)をより複雑化し、その「破断」性を向上させることができる。
【0043】
透明基材1の一方の面を全面表面活性化処理後に、上記した「パターン」を明暗反転した形状(「パターン」を「ポジパターン」として、それを反転した「ネガパターン」を意味する。)に「表面不活性化処理された部分」を形成するためには、もしくは、透明基材1上に、直接、所望の形状を有する「表面不活性化処理された部分」を形成するためには、
透明基材1の最表面のみを部分的に溶解する、もしくは、活性化した官能基と反応して官能基の活性を解消する、溶剤類、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロン、ジイソブチルケトン、等。)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール等、さらにはその水溶液。)、芳香族類(ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベッソNo.100、ソルベッソNo.150、カクタスP−180等。)、環状炭化水素類(シクロヘキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セルソルブ、エチルー3−エトキシプロピオネート等。)、エーテル類(テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ等。)等をパターン状に活版印刷方式やインクジェット方式を用いて、表面活性化面への接触を避けてパターン形成し、透明基材1の活性化された最表面のみ(透明基材1を厚さ方向に捉えたもの。)と反応して、その部分のみを表面不活性化させる。(図示せず。)
このとき、溶剤が瞬時に揮発せず、所定時間、透明基材表面に留まる必要があるため、その沸点は、60度以上200度以下、好適には、100度以上160度に調整する。
この方法は、透明基材1の表面粗さに悪影響をほとんど与えず、その性質のみを変化させるという意味で特に好適である。
【0044】
または、透明基材1とはそもそも接着し難い、界面張力の小さい樹脂、例えば、シリコーン樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂や、これらのフッ化炭化水素基、有機珪素基を含む樹脂や、不揮発油(リンシードオイル、ポピーオイル、ウォルナッツオイル等の乾性油、オリーブオイルや落花生油等の不乾性油、ゴマ油、ナタネ油等の半乾性油)等を、活版印刷や、インクジェット印刷等により、上記した所望のパターン状に部分形成することで、高い精度でパターン状に表面不活性化処理する。(図示せず。)
この際、その部分形成後に透明基材1上に光学的な変化を与えないことが望ましく、溶剤等は揮発することで、また、樹脂等はあくまで表面改質の目的であって乾燥後の形成厚さが光の波長の1/50〜1/10程度となることが望ましい。もちろん、これらを併用することも好適である。
この表面不活性化処理により、その表面不活性化処理した部分は、透明基材1とホログラム形成層3との剥離強度を、0.01kg/25mm幅以上0.1kg/25mm幅以下とでき、ホログラムラベルを剥そうとすると、どのように工夫しても、必ず、透明基材1とホログラム形成層3間に空隙が発生し、その部分においては、透明基材1のみ剥がれる。
そして、透明基材1を完全に剥離すると、その表面不活性化処理した部分にあたるホログラム形成層3の最表面がほぼ鏡面となって、その部分からは、その下にあるホログラム再生像を鮮明に視認することができる。
さらに、上記した「パターン」内をより「微細なパターン」、すなわち、網点状、市松模様状、ランダムパターン状等の微細な領域のみ表面活性化処理することで、透明基材1を剥離した際の力の働き具合をより複雑化し、各層の「破断」性を向上することができる。
「微細なパターン」の個々の大きさは、最小の大きさとしては、高精度な印刷方式を用いて50μmの大きさで、且つ、10μm程度の間隔を開けて設けることもでき、最大では、その「パターン」を構成する線幅まで広げることもできる。このような「微細なパターン」の大きさの集合で、「パターン」を構成するには、もはや従来方式であるマスクを用いた直接表面活性化処理方式を用いることが難しくなることは明らかである。
好適には、50μm〜300μmの大きさの網点(網点率は、30%〜70%が好適。)や、市松模様状(正方形や、長方形、その他形状。)に一つ飛ばしに不活性化処理したもの、さらには、規則的な処理が不要な回折現象を発生させることを回避するため、網点やその正方形や長方形の大きさを50μm〜300μmの間で、ランダムに変化させたものを用いる。(図示せず。)
【0045】
(ホログラム形成層)
本発明のホログラム形成層3を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。(図2参照。)
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
上記の樹脂材料を用いてホログラム形成層3を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
【0046】
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
【0047】
さらに、透明金属化合物薄膜の場合は、その薄膜の上下の面が、同一レリーフ形状であり且つ、その面と面の距離(すなわち膜厚さ)が均一であればあるほど、再現もしくは再生強度が大きくなる。また、レリーフ面にホログラム画像の凹凸とは異なる周期、形状の凹凸が存在すると、それはホログラムもしくは回折格子の再現もしくは再生時のノイズとなり、画像を不鮮明にする要因となる。
レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記ホログラム形成層3上に、もしくは、下記するエレクトロルミネッセンス素子層4上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターン(一つのホログラム再生像を発現するホログラムレリーフを、一つのホログラムパターンという。)は、単独でも、複数でもよい。また、ホログラムレリーフを形成する領域の形も、単独領域としても、複数領域としてもよい。
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
高圧回転式の複製に用いるためには、このNi層の厚み精度を高くする必要があり、通常±10μm、好ましくは、±1μmとする。このため、裏面の研磨や、平坦化方法を用いてもよい。
複製方式は、高圧とするため、平板式でなく、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、好ましくは、5トン/m以上とする。複製用シリンダーは、その直径が小さいとレリーフの再現性が低下するため、複製シリンダー直径は大きい方が好ましく、通常、直径0.1m〜2.0m、好ましくは、1.0m以上の弧を使用する。
透明基材1上のホログラム形成層3をこの複製用シリンダーに沿って押し当て、裏面より金属製シリンダーにより上記圧力にて複製を実施する。複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小限とするためには、透明な基材1全体を加熱するのではなく、ホログラム形成層3面側の一部のみを加熱する方法が望ましい。通常60℃〜110℃に加熱する。さらには、裏面の金属製シリンダーを常温に保つ、もしくは冷却することで、さらにその精度を向上させることができる。
【0048】
(エレクトロルミネッセンス素子層)
エレクトロルミネッセンス素子層4は、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ上に、構成する層を順次設けていくことで、形成される。(図2参照。エレクトロルミネッセンス素子層4を一つの「一体となった層」として表し、エレクトロルミネッセンス素子層4を構成する各層(個々の層)については図示せず。)
有機エレクトロルミネッセンス素子、又は無機エレクトロルミネッセンス素子のいずれにしても、まず電極である、陽極若しくは陰極から形成する。以下では、陽極から形成する例について説明する。この方法と同様にして陰極から設けていくことは容易に推察できる。
エレクトロルミネッセンス素子層4において、その陰極にアルミニウム薄膜のような全反射性薄膜材料を用いた場合には、陽極側のみが「発光側」となるため、その発光側がホログラムレリーフに接している(すなわち、ホログラム形成層2に接している)ように形成する。
陽極の材料としては、例えば、ITO薄膜(インジウム・スズ酸化物薄膜)、酸化インジウム、錫ドープ酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、亜鉛ドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛等の透明導電性材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体等の導電性高分子等、を使用して形成することができる。
陽極の形成形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、スピンコート法、キャスト法を用いたゾルゲル法、スプレイパイロリシス法、イオンプレーティング法等の方法、さらには、所望の組成の塗布液を塗布して形成する方法等を採用することができる。
特に、電子ビーム加熱真空蒸着法や、高周波マグネトロンスパッタリング法を採ることが好ましい。具体的には、真空度1×10-7〜1×10-3Pa、成膜速度0.1〜50nm/秒、基材温度−10〜100℃の条件で成膜する。
陽極の代表的なものは、透明導電性薄膜である、ITO薄膜であり、ホログラムレリーフ上に、電子線加熱真空蒸着法により、例えば300nm程度形成する。
透明導電性薄膜の導電性は、その表面抵抗値で管理しており、0.1Ω/□以下となるよう、インジウムと錫の加熱速度や、導入する酸素がスの量を制御する。
ホログラムレリーフは、その凹凸深さが0.01μmと微細であり、しかも、その微妙に変化する曲線の変化そのものが、ホログラム再生情報を含んでいる為、この薄膜形成による加熱や、金属粒子の衝突等の衝撃によって、その曲線に変化を生じないよう、ホログラム形成層及び透明基材を十分冷却し、高速で処理する。従って、膜厚さを薄く形成する。
透明導電性薄膜の膜厚さ制御を十分行い、膜厚さばらつきが、数%以内にとどめ(300nmの数%→10nmレベル)、透明導電性薄膜の表面(レリーフと接着している面とは反対の面)が、ホログラム形成面とほぼ同一の形となるようにする。
【0049】
ホログラム形成層2へのダメージをさらに軽減するために、CVD法(化学蒸着法)等を用いることもできる。CVD法の場合は、ホログラム形成層へのダメージはほとんど無いが、薄膜形成後の加熱処理等付加的な処理を要し、薄膜の表面性もホログラムレリーフのレリーフ形状としてはやや粗いものとなる。
次に、形成する層は、無機エレクトロルミネッセンス素子の場合には、最も単純な構成としては、この透明導電性薄膜上に、絶縁層を設ける。
絶縁層として用いられる材料は、具体的には、Y23、Al23、Ta2O5、SiO2、Si34等の非晶質酸化物、BaTiO3、PbTiO3等の強誘電体、SiNx、SiOF、SiOC、Pb(Zr,Ti)O3、(Pb、La)(Zr,Ti)O3、Bi4Ti3O12、さらにはぺロブスカイト型強誘電体、タングステン・ブロンズ型強誘電体、ビスマス層状構造強誘電体等を挙げることができる。
さらに、π電子系の酸−塩基二成分型有機物を利用した有機強誘電体、例えば、クロラニク酸、ブロマニル酸等のような強い酸性度(H+(プロトン)の供与能)の水酸基を有するジヒドロキシ−p−ベンゾキノン類、あるいは、クロラニル酸を酸として、ベンゼン環にプロトン受容基の窒素原子を組み入れたフェナジン(Phz)を塩基として作用させ、1:1の分子化合物としたもの等、さらに、分子間で水素結合を形成して一次元のネットワークを形成したこれらの集合構造分子も使用することもできる。
その形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、スピンコート法、キャスト法を用いたゾルゲル法、スプレイパイロリシス法、イオンプレーティング法等の方法、さらには、所望の組成の塗布液を塗布して形成する方法等を採用することができる。
【0050】
絶縁層である誘電体膜として、代表的には、BaTiO3薄膜を、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、例えば500nmの厚さで形成する。この場合には、ホログラム形成層2上に、既に、金属酸化物薄膜が形成されているため、そのレリーフの耐熱性は比較的高く、比較的容易に薄膜形成を行うことができる。
この層は、絶縁性を確保するためには、厚い方が望ましい(〜2μm)が、ホログラム形成層のホログラムレリーフ面の形状を維持するためには、やはり、均一厚さ、及び、その表面性の滑らかさを確保する必要があるため、100nm〜500nmとすることが好適である。
ここで、絶縁層を透明導電性薄膜上の隅々まで形成すると、陽極端子を設けることができないため、マスキング法により、透明導電性薄膜上の一部を、そのホログラムの大きさとのバランスを考慮して、例えば、50mm×40mmサイズのホログラムの場合には、2mm×4mmサイズのマスキングを施して、絶縁層を形成する。
さらにその上に、無機エレクトロルミネッセンス素子用の発光層を設ける。
発光層は、所望の発光色の発光蛍光体を用いて形成されたものであり、例えば、赤色発光蛍光体として、ZnS、Mn/CdSSe等、緑色発光蛍光体として、ZnS:TbOF、ZnS:Tb等、青色発光蛍光体としては、SrS:Ce、(SrS:Ce/ZnS)n、CaGa24:Ce、Sr2Ga25:Ceを挙げることができる。また、白色発光蛍光体として、SrS:Ce/ZnS:Mn等が挙げられ、これらの蛍光体を適宜選択して、用いることができる。
発光層としては、代表的には、母体にZnSを用い、発光中心にMnを添加したものを、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、例えば1μm厚さで形成する。
【0051】
この発光層が、ホログラムレリーフの位相情報を含んで発光するものであるため、この層の両表面(両界面)は、ホログラム形成層のレリーフ形状を忠実に再現していなければならない。
そのために、上記した各層の厚さの均一性、界面の滑らかさを確保できる成膜方法を採用する。
発光層形成時にも、上記した位置に同様のマスキング処理を施す。
この上に設ける陰極は、アルミニウム、金、銀、白金、銅、鉄、銀・マグネシウム合金等の金属薄膜や、グラファイトなどを厚さ、50〜500nmで形成する。代表的には、アルミニウム薄膜でよく、真空蒸着法で安定的に、例えば、300nm厚さで形成することができる。
アルミニウム薄膜の発光層と接している面は、発光層のレリーフ形状に追従しており、発光層の形状そのものを再現できる。また、その反対の層は、本発明の発光とは無関係であるため、通常の形成面でよい。
陰極形成時にも、上記した位置に同様のマスキング処理を施す。
以上の様にして、透明基材1上に、ホログラム形成層2、そして、無機エレクトロルミネッセンス素子からなる、エレクトロルミネッセンス素子層4を、そのホログラムレリーフ面に接して、追従するように設けることができ、且つ、陰極側から観察した場合、アルミニウム金属面の一部に、陽極である透明導電性薄膜層が露出して見える。
この陽極と、陰極の間に、電圧100V100〜1000Hzの交流電圧を印加すると、エレクトロルミネッセンス素子層4において発光が生じ、(陽極側より)ホログラム形成層2、透明基材1を通して、ホログラム再生像を視認することができる。
【0052】
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子について説明すると、上記した、透明導電性薄膜層の上に、発光層となる有機薄膜を形成し、陰極で挟んだものが最も単純な有機エレクトロルミネッセンス素子からなるエレクトロルミネッセンス素子3となる。
発光層は、主材料(ホスト材料)と不純物材料(ドーパント材料)との2成分系であり、発光する不純物材料は、0.1〜1%添加で主材料中に均一に分散されている。
有機薄膜の電子移動度は、高速応答を目的とするものではないため、比較的小さいものでも用いることができ、1×10-6cm2 /V・s以上の値とするのが好ましい。
発光層である有機薄膜に、低分子系を用いる場合には、
発光層材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)と、ドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリンを用いて、CVD法を用いて、50nm厚さに形成する。
発光層である有機薄膜に、高分子系を用いる場合には、
発光層材料として、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)系、正孔層材料として、PEDOT(ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン)+PSS(ポリスチレンスルホン酸:ドーパント)共重合体を、コーティング方式により、固形分を0.5%として、乾燥後の厚さ100nmとする。
【0053】
また、有機薄膜に、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体を併用することも好ましい。また、ジスチリルアリーレン骨格、例えば4,4’一ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等をホストとし、それに青色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系あるいはホストと同様の蛍光色素をドープしたものを併用することも好適である。
形成方法としては、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(ラングミュア・ブロジェット)法、スパッタリング法等の方法を採用することができる。例えば、真空蒸着法により形成する場合は、真空度1×10-7〜1×10-3Pa、成膜速度0.1〜50nm/秒、基板温度−10〜100℃の条件を採ることが好ましい。
また、結着剤として機能する適宜な樹脂と有機薄膜用の材料とを所定の溶剤に溶かして溶液状態とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、有機薄膜を形成することができる。なお、有機薄膜は、形成方法や形成条件を適宜選択し、気相状態の材料化合物から沈着されて形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化されて形成された膜である分子堆積膜とすることが好ましい。
これらの上に、陰極層として、金属、合金、それらの酸化物、電気電導性化合物又はこれらの混合物を使用する。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、セシウム、銀、錫等の一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
代表的には、陰極層として、アルミニウム薄膜層を上記同様に設け、有機エレクトロルミネッセンス素子からなるエレクトロルミネッセンス素子層4を得る。
有機エレクトロルミネッセンス素子においても、無機エレクトロルミネッセンス素子と同様に、陽極端子を露出させる方法を取る。
この陽極と、陰極の間に、電圧10Vの直流電圧を印加すると、エレクトロルミネッセンス素子層4において発光が生じ、(陽極側より)ホログラム形成層2、透明基材1を通して、ホログラム再生像を視認することができる。
【0054】
(粘着層)
粘着層5としては、従来公知の溶剤系及び水系のいずれの粘着剤、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系樹脂などが挙げられる。自然にやさしい材料構成とするために、特に、天然ゴムを主成分とするラテックス、それを変性したもの、特に天然ゴムにスチレン特にメタクリルさんメチルとをグラフト重合させて得た天然ゴムラテックス等の天然素材から作製されたものを用いても良い。
粘着層5の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して粘着層5を形成する。(図2参照。)
このようにして、粘着層5を設ける際に、エレクトロルミネッセンス素子層4を発光させるための、陽極端子及び、陰極端子を十分に露出させるように設けることは当然である。(図示せず。)
また、粘着層5の粘着力は、エレクトロルミネッセンス素子層4と粘着層5との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、0.1〜1kg程度の範囲にすることが望ましい。もちろん、それ以上の剥離強度を有していても、本発明の目的には適合している。
以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、透明基材1、ホログラム形成層3及びエレクトロルミネッセンス素子層4上に粘着剤層5を形成する際に、その剥離強度が上記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
(実施例1)透明基材1として、38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その一方の面を、エキシマ社製エキシマUV03改質装置を用いて、波長172nmのエキシマ光を、タテ・ヨコ20mm×20mmサイズで「開」「封」の文字を一文字ずつ配置したデザインのそれらの文字の画線部内を(画線部の線幅は、2mm。)、一文字毎にマスキングして、一様に照射して表面活性化処理し、「パターン」状に「表面活性化処理された部分2」を形成した。(図2参照。)
さらに、陽極端子を確保するため、「封」の文字の右側に、太さ500μmの斜め延長線(図4の被貼着体側残部の白抜き部分参照。)に対応する領域、及び、各文字の隔離部分を導通させるための引出し線(500μm幅。図示せず。)に対応する領域にも同様の表面活性化処理する。
その上に、メラミン樹脂からなるホログラム形成層3を形成した後(透明基材1と、ホログラム形成層3との剥離強度:活性化処理面1.2kg/25mm幅、それ以外の部分300g/25mm幅に相当。)、レーザ光学系を用いて撮影した意匠性の高いホログラムを備えたNi原版を用意し、上記したホログラム形成層3に、そのNi原版のレリーフ面を合わせて、回転式レリーフホログラム形成装置(原版シリンダー径1.0m・原版面温度100℃、加圧シリンダー径0.3m水冷式、圧力2トン/m、複製速度10m/分)にてホログラムレリーフをホログラム形成層3上に形成した。
このホログラム形成層3上に、そのホログラムレリーフ形成領域を覆うように、陽極として、ITO薄膜を電子線加熱真空蒸着法により、300nm厚さで形成した。(図示せず。)ITO薄膜の表面抵抗値は、0.1Ω/□であった。
【0056】
その上に、絶縁層である誘電体膜として、BaTiO3を、陽極端子を残すため、ホログラム画像の右下に3mm×3mmの領域(被店着体側残部用)、及び、上記した斜め延長線と引き出し線領域(透明基材側残部用)部分に、マスキング処理を施して、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、0.7μmの厚さで形成した。(図示せず。)
その上に、発光層として、母体にZnSを用い、発光中心にMnを添加したものを、スパッタリング(Arガス使用)法を用いて、1μm厚さで形成した。ターゲットには、硫化マンガン(MnS)を0.5mol%添加した硫化亜鉛(ZnS)を用い、ターゲットガスには、高純度のアルゴンガスを用いた。この時、陽極端子を残すため、ホログラム画像の右端下に3mm×3mmの領域で、マスキング処理を行った。(図示せず。)
この発光層上に、陰極層としてのITO薄膜を、同様の位置のマスキング処理を施して、電子線加熱真空蒸着法により、厚さ500nmで形成した。
この陽極層、絶縁層、発光層、陰極層及びの4層により、エレクトロルミネッセンス素子層4(無機エレクトロルミネッセンス素子層)が構成されている。(図2参照。)
このエレクトロルミネッセンス素子層4の上に、下記組成の粘着層5用粘着剤組成物をグラビアコーティング方式により、コーティングし乾燥して、粘着層5を20μmの厚さで形成し、実施例1のホログラムラベルAを作製した。(図2参照。)
このとき、上記した陽極端子部分及び、新たに、陰極端子部分を確保するため、「開」の文字の左側に、太さ500μmの斜め延長線(図4の被貼着体側残部の白抜き部分参照。)に対応する領域、及び、各文字の隔離部分を導通させるための引出し線(500μm幅。陽極端子用の部分に隣接して設ける。図示せず。)に対応する領域、さらに、ホログラム画像の左下に3mm×3mmの領域を除いて粘着層5を形成した。(図示せず。)
【0057】
・<粘着層5用粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
イソホロンジイソシアネート 1質量部
トルエン 20質量部
酢酸エチル 30質量部
メチルイソブチルケトン 19質量部
このホログラムラベルAを、封筒の封緘用に使用し、その封緘部分に貼着して、(2kg荷重のローラーにて圧着。)室内照明光の下で観察したところ、ホログラム再生像は観察されず(図示せず。)、さらに、このホログラムラベルAを、その封筒から剥がそうとしたところ、透明基材1が容易に剥がれ、その透明基材1側に、透明基材側残部が「開」と「封」の文字状にタテ・ヨコに連続して付着していた。(剥がれた透明基材6。図3参照。)
また、その封筒側には、「開」と「封」の文字状にタテ・ヨコに連続した凹部が形成された被貼着体側残部が残っていた。(被貼着体上に残った被貼着体側残部7。図3参照。)
この剥がれた透明基材9の確保した陽極端子部分と陰極端子部分との間に、100V・100Hzの交流電圧を印加8したところ、緑色の発光が生じ、緑色のホログラム再生像10を視認することができた。(図4参照。図4においては、「単なる虹色模様」を示すのみとし、この虹色部分から空間上に浮き上がる立体再生像の発現状態を省略している。)
また、被貼着体側残部12の確保した陽極端子部分と陰極端子部分との間に、100V・100Hzの交流電圧を印加11したところ、緑色の発光が生じ、「開」と「封」の文字状の欠けを含む緑色のホログラム再生像13を視認することができた。(図4参照。上記と同様に、この虹色部分から空間上に浮き上がる立体再生像の発現状態を省略している。)
その後、この「ラベル」と同一サイズの別の一般的な透明粘着ラベルを容易し、この被貼着体側残部を覆うように貼着し、あたかも、元の状態と同様の外観を呈するように同様のローラーを用いてその「ラベル」を圧着した。
その圧着した「ラベル」に、上記同様に100V・100Hzの交流電圧を印加したところ、「開」と「封」の文字状の欠けを含む緑色のホログラム再生像が出現し(図示せず。)、不正が行われたことを明確に判定することができた。
このことから、ホログラムラベルAは、高い開封防止効果を有するものと思われた。
【0058】
(実施例2)透明基材1として、38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その一方の面を、ナビタス社製ポリダイン低周波コロナ処理システムによってコロナ処理方式にて全面表面活性化処理し、下記組成の表面不活性化処理用溶剤組成物をインクジェト方式にて、タテ・ヨコ20mm×20mmサイズで「開」「封」の文字を配置したデザイン、及び、斜め延長線、及び、各文字の隔離部分を導通させるための引出し線に対応する領域のネガポジ反転パターン状に、厚さ1μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のホログラムラベルAを得た。(図2参照。表面不活性化処理していない部分が、結果として、表面活性化処理した部分2となる。)
〈表面不活性化処理用溶剤組成物〉
メチルエチルケトン(沸点80度) 40部
トルエン(沸点100度) 30部
メチルイソブチルケトン(沸点115度) 29部
リンシードオイル 1部
実施例1と同様に評価したところ、透明基材1がホログラム形成層3から、非常に容易に剥がれたこと以外は、実施例1と同様の良好な効果が得られた。
(実施例3)「微細なパターン」としての、基本形を、「200μm×200μmの長方形」とし、この基本形を「市松模様」状に、「開」と「封」の画線部内に展開し、一つ飛ばしに表面活性化処理を施して、上記した「開」と「封」の「パターン」を形成したこと、及び、その基本形をつなぐ(導通させる)線幅を50μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のホログラムラベルAを得た。
実施例1と同様に評価したところ、透明基材1の剥離後の、「開」と「封」の文字がより鮮明に視認できたこと以外は、実施例1と同様の良好な効果が得られた。
【0059】
(実施例4)
ホログラム形成層2上に、そのホログラムレリーフ形成領域を覆うように、陽極として、ITO薄膜を、電子線加熱真空蒸着法により、100nm厚さで形成し、その上に、正孔輸送材料として、TPAC(1,1−ビス[4-[N,N―ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン)を厚さ60nmで、発光層材料として、ZnPBO(ビス[2−(2−ベンゾキサゾリル)フェノラト]亜鉛)及びドーピング色素材料として、Coumarin6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)コーマリン)を3%混入させ、厚さ100nmで、そして、電子輸送材料として、BND(2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール)を厚さ50nmで、真空蒸着法により、実施例1と同様のマスキング処理を施して、形成した。
さらに、その上に、ITO薄膜を、同様の位置のマスキング処理を施して、電子線加熱真空蒸着法により、厚さ100nmで形成した。
以上により、ホログラム形成層2上に、陽極層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び陰極層からなるエレクトロルミネッセンス素子層4(有機エレクトロルミネッセンス素子層)を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のホログラムシートAを作製した。(図2参照。)
このホログラムシートAを、このホログラムシートAの陽極端子部分と、陰極端子部分との間に、6Vの直流電圧を印加8して発光させたこと以外は、実施例1と同様に評価したところ、透明な空間上に緑色の、非常に鮮明なホログラム再生像10及び13を視認することができ、より偽造防止性に優れると思われたこと以外は、実施例1と同様の結果を得た。
【0060】
(実施例5)
ホログラム形成層2上に、酸化インジウムと酸化セリウムとの粉末を、焼結した陽極用のターゲット(セリウムモル比0.05)を用いて、真空度を3×10-1Paまで減圧した状態で、アルゴンガスに酸素ガスを混入したガスを封入し、その雰囲気中において、到達真空度5×10-4Paでの高周波スパッタリングにて、厚さ100nmの透明電極膜を形成し、その上に、真空度7×10-4Paで、正孔輸送層として厚みが50nmのNPD(N,N´−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N´−ジフェニルベンジジン)薄膜を、蒸着速度が6nm/分の条件にて真空蒸着法により形成し、さらに、その上に、有機発光材料層兼電子輸送層として厚みが50nmのAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)の薄膜を、蒸着速度が6nm/分の条件にて真空蒸着法により形成し、その表面に、陰極として厚みが200nmの透明電極膜を上記と同様に形成して、4層からなる有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、エレクトロルミネッセンス素子層4とした。各薄膜形成時に、マスキング処理による陽極端子の作製を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のホログラムシートAを得た。(図2参照。)
このホログラムシートAの陽極端子部分と、マグネシウム−銀薄膜層である陰極端子部分との間に、6Vの直流電圧を印加8したところ、発光が生じ、透明な空間上に緑色の、輝度10cd/m2の、明るく、非常に鮮明なホログラム再生像8を視認することができたこと以外は、実施例1と同様の良好な結果を得た。
(比較例)
(比較例1)表面活性化処理、または、表面不活性化処理を行なわず、ホログラム形成層も、エレクトロルミネッセンス素子層も設けず、実施例1と同様にし、比較例1の透明な「ラベル」を得た。
この「ラベル」を実施例1と同様に評価したところ、透明基材1が容易には剥がれず、粘着層5から剥離し、また、電界を印加しても、何らの変化も見られなかった。
従って、この「ラベル」を丁寧に剥がせば、不正に剥すことが可能であって、しかも、貼り替え等の悪用も可能であると思われた。
【符号の説明】
【0061】
A ホログラムラベル
1 透明基材
2 透明基材の一方の面をパターン状に表面活性化処理した部分
(透明基材とホログラム形成層の界面において、この部分以外の部分は、表面活 性化処理を施されていない部分、もしくは、表面不活性化処理された部分という 。)
3 ホログラム形成層
4 エレクトロルミネッセンス素子層
5 粘着層
6 ホログラムラベルAを剥がした際に、剥がれた透明基材(透明基材側残部が付着 している。)
7 ホログラムラベルAを剥がした際に、被貼着体上に残った被貼着体側残部(透明 基材側残部が取り除かれた状態。)
8 所定の電圧の印加(または、電界の印加)
9 所定の電界を印加した際の、剥がれた透明基材(透明基材側残部が付着している 。)

10 発光波長により再生されたホログラム再生像(再生される立体像そのものは省略 している。また、文字の隔離部分を導通させる線等は省略している。)
11 所定の電圧の印加(または、電界の印加)
12 所定の電界を印加した際の、被貼着体側残部(透明基材側残部が取り除かれた状 態。)
13 発光波長により再生されたホログラム再生像(再生される立体像そのものは省略 している。また、「開封」の文字の左右下に伸びる陽極端子及び陰極端子部分は 発光しないため、透明な領域となることを示している。また、文字の隔離部分を 導通させる線等は省略している。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、パターン状の表面活性化処理を施した後、その上に、ホログラムレリーフを有するホログラム形成層、前記ホログラムレリーフに接するように且つ追従するようにエレクトロルミネッセンス素子層、及び粘着層を設けたことを特徴とするホログラムラベル。
【請求項2】
前記エレクトロルミネッセンス素子層の厚さが、0.01μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のホログラムラベル。
【請求項3】
前記表面活性化処理は、光処理、又は物理的処理であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のホログラムラベル。
【請求項4】
前記パターンは、微細なパターンの集合により構成されているものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のホログラムラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11760(P2013−11760A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144706(P2011−144706)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】