説明

ホログラム化粧方法

【課題】毛に対して、通常の室内照明の下でも十分に光輝効果を観察することのできるホログラム化粧を行う。
【解決手段】毛髪1等の毛と、ホログラムシート4等の凹凸構造を有する回折格子との間に、皮膜形成性ポリマー溶液2を介在させ、該ポリマー溶液2を乾燥させることにより、回折格子の表面凹凸が転写されているポリマー溶液の乾燥皮膜3を毛髪1等の角質上に形成することによりホログラム化粧を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪、睫毛、ヒゲ、爪、皮膚等の角質にホログラフィによる虹色の光輝効果を付与するホログラム化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅、マニキュア、爪等の化粧料にホログラム顔料を使用し、化粧により虹色の光輝効果を得ることが提案されている(特許文献1,2)。
【0003】
また、同様の化粧効果を得るために、爪に、予めポリウレタンエマルジョンを含有するネールエナメルを塗布し、その塗膜に、凹凸構造を有する回折格子の凹凸パターンを転写することが提案されている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−51682号公報
【特許文献2】特表2007−513893号公報
【特許文献3】WO01/19625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のホログラム顔料を使用する方法では、毛髪、睫毛、ヒゲ等の毛に対しては、光輝点がまばらに散布されているような効果しか得られず、毛のある領域全体を虹色に光輝させることはできない。
【0006】
ポリウレタンエマルジョンを含有するネールエナメルの塗膜に回折格子の凹凸パターンを転写する方法でも、通常の室内照明の下で十分に観察できる程の光輝効果を得ることは難しい。また、この方法では、一旦、毛にネールエナメルの塗膜を形成すると、それを落とすのは容易でない。そのため、消費者が毛に対してホログラム化粧を欲するときにだけ、それを手軽に楽しむことが困難となっている。
【0007】
これに対し、本発明は、毛髪、睫毛、ヒゲ等の毛に対して、通常の室内照明の下でも十分に光輝効果を観察することのできるホログラム化粧を行えるようにし、かつ、日常のシャンプーや洗顔等の洗浄行為でその化粧を容易に落とせるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、皮膜形成性ポリマーを用い、その溶液の乾燥皮膜を形成する際に、鋳型としてホログラムシート等の凹凸構造を有する回折格子を使用すると、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、角質と、凹凸構造を有する回折格子との間に、皮膜形成性ポリマー溶液を介在させ、該ポリマー溶液を乾燥させることにより、回折格子の表面凹凸が転写されているポリマー溶液の乾燥皮膜を角質上に形成するホログラム化粧方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、ホログラムシートと、皮膜形成性ポリマー溶液とを備えたホログラム化粧品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のホログラム化粧方法によれば、毛髪、睫毛、ヒゲ、爪等の角質に対し、回折格子の表面凹凸に基づくホログラム化粧を、その光輝効果が通常の室内照明の下でも十分に観察できる程度に施すことが可能となり、かつ必要に応じてそのホログラム化粧を、日常のシャンプー、洗顔等の洗浄行為で容易に落とすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一の構成要素は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0013】
図1は、本発明のホログラム化粧方法を毛髪に適用する場合の一実施形態の模式的説明図である。
【0014】
本実施形態では、概略、まず、毛髪1の毛束1aにポリマー溶液2を塗布し(同図(a))、その上に、凹凸構造を有する回折格子として、ホログラムシート4を重ねることにより、毛髪1とホログラムシート4の回折格子面との間にポリマー溶液2を介在させる。そして、その状態でポリマー溶液2を乾燥させる(同図(b))。これにより、ホログラムシート4の回折格子の表面凹凸が鋳型となり、ポリマー溶液2の乾燥皮膜3には、ホログラムシート4の回折格子の表面凹凸の転写パターンが形成される。なお、本発明において、毛髪1とポリマーシート4の回折格子面との間にポリマー溶液2を介在させる方法としては、予め、ポリマーシート4にポリマー溶液2を塗布しておき、それを毛髪1に重ねてもよい。
【0015】
その後、ホログラムシート4を毛髪1から剥離する(同図(c))。これにより、毛髪1は、ホログラムシート4の回折格子の表面凹凸の転写パターンを有するポリマー溶液2の乾燥皮膜3が被着したものとなり、通常の室内照明の下でも十分に観察できる程度に虹色の光輝効果を発揮するものとなる。なお、ホログラムシート4を剥離したままの状態では、乾燥皮膜3により一本一本の毛髪1が相互に弱く接着した毛束1aとなっている。そこで、この毛束1aをほぐし、毛髪1の一本一本を独立させる。(同図(d))。
【0016】
このように、本発明においては、ポリマー溶液2が乾燥皮膜3を形成するときに、回折格子の表面凹凸を鋳型として、その転写パターンをポリマー溶液2の乾燥皮膜3に形成するので、既に形成されているポリウレタンエマルジョン等の塗膜に回折格子を当て、加圧して、塗膜に回折格子の表面凹凸の転写パターンを形成する場合に比して、回折格子の表面凹凸を正確に転写することができ、虹色の光輝効果を大きくすることができる。
【0017】
本発明では、上述のポリマー溶液2として、皮膜を形成することのできるポリマーの溶液、即ち、皮膜形成性ポリマーが溶解した状態で含有されているものを使用する。これにより、回折格子の表面凹凸を正確にポリマー溶液2の乾燥皮膜3に転写することができる。
【0018】
また、本発明では、溶媒として、後述するように水、エタノール又は水/エタノール混合溶媒等を使用し、ポリマー溶液2が乾燥により皮膜を形成し、形成された皮膜を水、エタノール又は水/エタノール混合溶媒等に溶解可能とする。これにより、シャンプー等の洗浄処理により、その皮膜を容易に洗い流すことができるので、ホログラム化粧を所望の場面で気軽に楽しむことが可能となる。
【0019】
このような皮膜形成性ポリマーとしては、例えば、整髪剤において毛髪固定成分として配合される両性ポリマー、アニオンポリマー、カチオンポリマー、ノニオンポリマーであって、水溶性又はエタノール可溶性のポリマーを好適に使用することができる。
【0020】
ここで、両性ポリマーの具体例としては、ユカフォーマーAM−75、SM(以上、三菱化学社製)等のジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、アンフォマー28−4910、LV−71(以上、ナショナル・スターチ社製)等のアクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体などを挙げることができ、中でもユカフォーマーSM、アンフォマーLV−71を好ましく使用することができる。
【0021】
アニオンポリマーの具体例としては、ガントレッツES−225、ES−425、SP−215(以上、ISP社製)等のメチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体;レジン28−1310(ナショナル・スターチ社製)、ルビセットCA(BASF社製)等の酢酸ビニル/クロトン酸共重合体;レジン28−2930(ナショナル・スターチ社製)等の酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体;ルビセットCAP(BASF社製)等の酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体;ADVANTAGE CP(ISP社製)等の酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロニルアクリレート共重合体;プラスサイズL53PB(互応化学社製)、ダイヤホールド(三菱化学社製)等の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ウルトラホールド8、ウルトラホールド・ストロング(以上、BASF社製)、アンフォマーV−42(ナショナル・スターチ社製)等のアクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体;ルビフレックスVBM35(BASF社製)等のポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体などを挙げることができ、中でも、ガントレッツES−225、プラスサイズL53PBを好ましく使用することができる。
【0022】
カチオンポリマーの具体例としては、ルビカットFC370、FC550、FC905、HM552、MonoCP(以上、BASF社製)等のビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体;セルカットH−100、L−200(以上、ナショナル・スターチ社製)等のヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド;ガフカット734、755N(以上、ISP社製)等のビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体;コポリマー845、937、958(以上、ISP社製)等のポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体;コポリマーVC−713(ISP社製)等のポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体;ガフカットHS−100(ISP社製)等のビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体;特開平2−180911号公報に記載の水溶性高分子化合物等のアルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体等を挙げることができ、特にガフカット734を好ましく使用することができる。
【0023】
ノニオンポリマーの具体例としては、ルビスコールK12、17、30、60、80、90(以上、BASF社製)、PVP K15、30、60、90(以上、ISP社製)等のポリビニルピロリドン;ルビスコールVA28E、37E、55E、64E、73E(以上、BASF社製)、PVP/VA E−735、E−635、E−535、E−335、S−630、W−735(以上、ISP社製)等のポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体;ルビスコールVAP343(BASF社製)等のポリビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体;Dowlex(ダウ・ケミカル社製)等の酢酸ビニル/N−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン共重合体等を挙げることができ、中でもルビスコールVA55E、PVP/VA E−535を好ましく使用することができる。
【0024】
なお、これらのポリマーのうち、酸性基を有するものについては、感触等の点から、酸性基の一部又は全部を中和して塩に変換したものが好ましい。そのような塩としては、特に制約はなく、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノメルカプトプロパンジオール、トリイソプロパノールアミン、グリシン、ヒスチジン、アルギニン等の有機塩基塩を挙げることができる。中でも、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの塩を好ましく使用することができる。
【0025】
また、塩基性基を有するものについては、その塩基性基の一部又は全部を中和して塩に変換したものが好ましい。そのような塩としては、特に制約はないが、無機酸塩としては塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸の塩が好ましく、有機酸塩としては、酢酸、乳酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸等の有機酸の塩が好ましい。
【0026】
本発明で使用するポリマー溶液2において、これらのポリマー濃度は、塗布時の粘度や回折格子の転写性の点から、0.1〜20wt%、特に0.5〜5wt%が好ましい。
【0027】
本発明で使用するポリマー溶液には、毛へ塗布したポリマー溶液の液だれを防止するため、増粘剤を含有させてもよい。増粘剤としては、例えば、種々の水溶性の有機又は無機高分子を使用することができる。有機高分子としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子のいずれでもよい。天然高分子の具体例としては、グァーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、デンプン等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ヒアルロン酸等の微生物系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン等の動物系高分子をあげることができる。半合成高分子の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等のアルギン酸系高分子をあげることができる。合成高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ等のビニル系ポリマー、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドブロック共重合体等をあげることができる。また、無機高分子としては、ベントナイト、ラポナイト、微粉酸化ケイ素、コロイダルアルミナ等をあげることができる。中でも、化粧品としての安全性の点から、キサンタンガム、グァーガム等が好ましい。
【0028】
ポリマー溶液における増粘剤の配合量は、増粘剤の種類、前述の皮膜形成性ポリマーの種類等によるが、0.01〜1.0wt%とすることが好ましい。
【0029】
本発明で使用するポリマー溶液には、黒色等の濃色の着色剤を含有させてもよい。ポリマー溶液の乾燥皮膜に転写させた表面凹凸の背後の領域が、明るい色をしていると、そこからの反射光の影響で表面凹凸による光輝効果が判別し難くなるが、表面凹凸の背後の領域を濃色にすることにより、表面凹凸による光輝効果がより観察されやすくなる。
着色剤としては、カーボンブラックや鉄系複合顔料が好ましい。
【0030】
ポリマー溶液の溶媒としては、溶解性、安全性の点から水、エタノール又は水/エタノール混合溶媒を使用することが好ましい。乾燥性を向上させる点から、エタノールの0.1〜50wt%水溶液が好ましい。また、この水溶液を噴射剤とともに密閉缶に充填し、エアゾールとしてもよい。
【0031】
本発明で使用するポリマー溶液には、この他、回折格子の表面凹凸の転写性が損なわれない範囲で、必要に応じて毛髪化粧料に通常用いられている各種の添加剤、例えば、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、色素等を適宜配合することができる。
【0032】
毛髪1へのポリマー溶液2の塗布は、刷毛、スパーテル、櫛、櫛付容器を用いて行っても良く、エアゾールとしてポリマー溶液2を噴霧してもよい。エアゾールとしてポリマー溶液2を噴霧すると、ポリマー溶液2に含まれるジメチルエーテル、LPG等の噴射剤の揮発作用により乾燥時間を短縮できるので好ましい。
【0033】
一方、ホログラムシート4としては、ポリマー溶液2の乾燥皮膜3からホログラムシート4を剥離する際に(図1(c))、乾燥皮膜3に転写された表面凹凸が崩されないようにするため、その表面材料の乾燥皮膜3に対する親和性が、毛髪1の乾燥皮膜3に対する親和性よりも低いものが好ましい。そのため、ホログラムシート4としては、その回折格子の形成面に、アルミニウム等の金属蒸着膜をつけたものが好ましい。
【0034】
ホログラムシート4の回折格子のパターンとしては、一本一本の毛髪1に専ら光輝効果を付与する場合には、図2に示す縦型、直交型、ドット型、波面型等を使用することができる。ホログラムシート4を毛髪1に当てる際に、格子パターンが縦型の場合には、格子の向きを毛髪1の長手方向に対して平行とすることが好ましく、波面型の場合には、格子の向きを毛髪1の長手方向に対して直行とすることが好ましいが、実際の作業上は、格子パターンの向きを考慮せずにホログラムシート4を毛髪1に当てられることが好ましい。そこで、ホログラムシート4としては、縦型や波面型等の方向性のある格子パターンについては、その格子パターンを有する径0.1〜1.0mm程度の大きさの微小領域がランダムな向きに配置されているものが好ましい。
【0035】
なお、ヘアスタイルによっては、毛髪の一本一本を独立させることが不要な領域を有するものがあり、そのような領域にホログラム化粧を施す場合には、方向性のあるパターンも好ましく使用することができる。また、この場合には、図1(d)の毛束1aをほぐす工程が不要となるので、その領域に、ハート形、ダイヤ形等任意の光輝性の図柄が観察されるパターンを使用することもできる。
【0036】
また、格子パターンは、その断面において凹部と凸部のパターンが同じ大きさで形状が反転したもの、即ち、格子パターンとその転写パターンが同じ凹凸パターンになるものが好ましい。
【0037】
格子パターンの大きさに関しては、格子周期pは0.01〜5.0μm、溝幅qは0.01〜3.0μm、溝高さrは0.01〜5.0μmが好ましい。特に、格子周期pは0.1〜2.0μm、溝幅qは0.5〜2.0μm、溝高さrは0.1〜2.0μmが好ましい。
【0038】
このようなホログラムシート4としては、市販のホログラムシートを使用することができ、例えば、ホログラムサプライ株式会社製CR−75やSP−08、SP−13、SP−20等をあげることができる。
【0039】
毛髪1とホログラムシート4の回折格子面との間にポリマー溶液2を介在させる態様としては、特に制限はないが、図1(b)に示したように、毛髪1の毛束1aの片面からホログラムシート4を当てることが好ましい。これにより、2枚のホログラムシートで毛髪1を挟んだ場合に比して、ポリマー溶液2の乾燥時間を短縮することができる。
【0040】
また、図3に示すように、偏平に梳かした毛束1aにポリマー溶液を塗布し、その片面にホログラムシート4を当てた状態で、毛束1aとホログラムシート4を共にカーラー5で巻いても良い。その場合、カーラー5としては、ポリマー溶液の乾燥を速める点から、メッシュ製のものが好ましい。これにより、毛髪にカールをつけると共に、ホログラム化粧を施すことが可能となる。
【0041】
毛髪1とホログラムシート4との間に介在させたポリマー溶液2を乾燥させ、乾燥皮膜を形成する工程(図1(b))は、非加熱で行うことが好ましい。これにより、毛髪1に塗布したポリマー溶液2が乾燥するまで、毛髪1上でポリマー溶液2を凝集させることなく、展延させておくことが容易となり、ポリマー溶液2の乾燥皮膜3に回折格子の表面凹凸を転写することが容易となる。また、毛髪1を傷めることも防止できる。
【0042】
なお、非加熱の場合の乾燥時間は、10秒〜6時間、好ましくは30秒〜30分とすることができる。
【0043】
一方、乾燥皮膜を形成する工程(図1(b))で加熱する場合には、ポリマー溶液2を構成する皮膜形成性ポリマーのガラス転移点以上、融点以下とすることが好ましい。加熱により乾燥時間を短縮することができ、特にガラス転移点以上とすることにより、回折格子の表面凹凸の転写性が向上する。一方、温度が高すぎるとポリマー溶液2が溶融して凝集し、毛髪1上に皮膜として展延させておくことが困難になり、さらに、高温の熱によりヘアダメージが起きたり、フィルムが熱で変形することにより回折格子の転写ができなかったりするので好ましくない。好ましい加熱条件は、皮膜形成性ポリマーの種類によるが、例えば、皮膜形成性ポリマーとして「プラスサイズDL-50」(互応化学社製)を使用する場合、60〜140℃で、5秒〜3分程度とすることが好ましい。
【0044】
以上、毛髪に本発明の方法を施す場合について説明したが、睫毛、ヒゲ、爪、皮膚等にも同様のポリマー溶液とホログラムシートを用いてホログラム化粧を施すことができる。
【0045】
この場合、ポリマー溶液が乾燥するまで、睫毛とホログラムシートの間にポリマー溶液を介在させた状態を保持しておくため、例えば、図4に示すように、睫毛1’の曲面形状を有するホログラムシートの支持部材6を使用してもよい。このような支持部材6は、アルミ箔を用いて形成することができる。
【0046】
本発明のホログラム化粧品は、上述のポリマー溶液とホログラムシートとを組み合わせたものである。これにより、消費者は、本発明のホログラム化粧方法を容易に実施することが可能となる。
【0047】
ホログラム化粧品の具体的な形態としては、例えば、短冊形に複数枚束ねられたホログラムシートと、ポリマー溶液を収容した容器と共に一つのパッケージに梱包したものとしてもよい
【0048】
また、図5に示すように、ホログラムシート4の回折格子の形成面に、ポリマー溶液層2aと剥離フィルム7を順次積層したシート状の化粧用具8としてもよい。
【0049】
この化粧用具8の使用方法としては、まず、剥離フィルム7を剥がしてポリマー溶液層2aを毛に当て、そのままポリマー溶液2が乾燥するまで30秒〜30分程度保持し、その後、ホログラムシート4を剥がす。こうして、毛に簡単にホログラム化粧を施すことが可能となる。
【実施例】
【0050】
実施例1〜3、比較例1〜2
皮膜形成性液剤として表1のポリマー溶液(実施例1〜3)又はポリマーエマルジョン(比較例1,2)を調製した。
【0051】
一方、ホログラムシートとして株式会社ホログラムサプライが輸入販売するホログラムフィルムSP-01(Sparkles)およびSP-20(Rainbow)を8cm×4cm角にカットしたものを用意し、この回折格子面に上述の皮膜形成性液剤0.3mlを、滴下後スパーテルで広げるかエアゾール剤形としたものを噴霧することにより塗布し、これを1gの中国人毛髪束あるいは中国人毛ウィッグの頭髪面に当て、表1の乾燥方法で乾燥し、その後梳かして一本一本を独立させた。
【0052】
こうして皮膜を形成した各実施例及び比較例の毛髪束あるいはウィッグの光輝効果を人工太陽灯、即ち、2種類の光源(黄色ハロゲンランプ(Kenko製 TECHNO LIGHT KTS-100RSV)、及び白色LEDマグライト(ELPA(エルパ) 1W LEDライト DOP-012MG))を用いて、それら毛髪束又はウィッグに、その表面から垂直に10cmの位置から光を当て、モニター10名の目視により次の基準で評価した。結果を表1に示す。また、実施例1の皮膜形成後の毛髪束について、光輝効果評価時の写真を図6に示す。この毛髪束は、方向を調節することにより、丸囲みした領域が多数箇所で虹色に輝いて見えた。
【0053】
[光輝効果の評価基準]
◎:ホログラム状の外観が、どの方向からも数色以上に明確に視認できる。
○:ホログラム状の外観が、方向を調節すれば数色以上に視認することができる。
△:ホログラム状の外観はなく、白色の輝きがわずかに認められる。
×:ホログラム状の外観を全く認めることができない。
【0054】
表1から、皮膜形成性液剤として、ポリマーが水に溶解しているポリマー溶液を用いた実施例1〜3では、優れた光輝効果を得られたが、ポリマーが乳化分散しているポリマーエマルジョンを用いた比較例1、2では光輝効果が劣っており、皮膜形成性ポリマーを含有しない比較例3では光輝効果が全く認められなかった。
【0055】
また、噴射剤を使用してエアゾール剤形とした場合(実施例2,3)には乾固するまでの乾燥時間が大幅に短縮されるとともに均一に塗布することができ、さらにガラス転移点以上に加熱すると、ポリマーを溶融状態から結晶化させることができるため、常温で自然乾燥するよりも回折格子が精度よく転写され、光輝効果も向上した(実施例3)。なお、ポリウレタンはガラス転移温度が低く、常温でガラス状態にあるため、加熱による光輝効果の向上は見られなかった(比較例2,3)。

















【0056】
【表1】

(注)
*1:プラスサイズDL-50、互応化学社製
*2:OS-96、花王社製
*3:RP77T、花王社製
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の化粧方法及び化粧品は、虹色の光輝効果を付与するメイクアップの分野で広
く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ホログラム化粧方法の模式的説明図である。
【図2】ホログラムシートの回折格子の説明図である。
【図3】毛束とホログラムシートをカーラーで巻く態様の説明図である。
【図4】ホログラムシートの支持部材の斜視図である。
【図5】シート状化粧用具の断面図である。
【図6】光輝効果評価時の実施例の毛髪束の光輝状態を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
【0059】
1 毛髪
1a 毛束
1’ 睫毛
2 ポリマー溶液
3 ポリマー溶液の乾燥皮膜
4 ホログラムシート
5 カーラー
6 ホログラムシートの支持部材
7 剥離フィルム
8 シート状化粧用具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角質と、凹凸構造を有する回折格子との間に、皮膜形成性ポリマー溶液を介在させ、該ポリマー溶液を乾燥させることにより、回折格子の表面凹凸が転写されているポリマー溶液の乾燥皮膜を角質上に形成するホログラム化粧方法。
【請求項2】
角質が毛髪、睫毛、ヒゲ、爪及び皮膚から選ばれるものである請求項1記載のホログラム化粧方法。
【請求項3】
回折格子が、ホログラムシートからなる請求項1又は2記載のホログラム化粧方法。
【請求項4】
ポリマー溶液をエアゾールにより角質に噴霧する請求項1記載のホログラム化粧方法。
【請求項5】
ポリマー溶液を非加熱で乾燥させる請求項1〜4のいずれかに記載のホログラム化粧方法。
【請求項6】
ホログラムシートと、皮膜形成性ポリマー溶液とを備えた化粧品。
【請求項7】
ホログラムシートの回折格子の形成面に、皮膜形成性ポリマー溶液層と、剥離フィルムが順次積層しているホログラム化粧用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−30920(P2010−30920A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192744(P2008−192744)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】