説明

ホースアッセンブリ

【課題】 ホースと口元部材を樹脂の射出によって一体化したホースアッセンブリにおいて、ホースがその内周面に螺旋状の凹凸条を備えるものであっても、射出された樹脂がホース内部へ漏れ出すことを防止又は抑制する。
【解決手段】 可撓性のホース2と口元部材1を、樹脂の射出成形を利用して一体化したホースアッセンブリAであって、ホース2はホース本体2bとリップ2rとを含んで構成され、ホース本体2bは、内周面に凹溝と凸条を螺旋状に備えるホース壁を備え、リップ2rは凹溝を覆うように螺旋状に設けられ、リップ2rの片側の側縁が凸条に一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性ホースの端部に口元部材が接続一体化されたホースアッセンブリに関する。特に、ホースの端部と口元部材を、合成樹脂の射出成形を利用して接続一体化したホースアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性ホースは、電気掃除機や吸引器具や排水設備などの多様な用途に使用されている。可撓性ホースのホース本体端部に口元部材を一体化しておくと、口元部材を利用したホースの接続操作が可能となり、便利である。近年、可撓性ホースと口元部材の一体化技術において、いわゆるオーバーモールド成形あるいはインサート成形と呼ばれる射出成形技術により、可撓性ホースのホース本体端部に既製の口元部材を挿入して、ホース端部と口元部材を射出成形金型内部に導入して樹脂の射出成形を行い、射出された樹脂により、ホース本体端部と口元部材とを一体化してホースアッセンブリを得る技術が利用されている。
【0003】
この技術では、例えば、図10に示すように、一体型の口元部材9に、螺旋状の凹凸条を有するホース2を挿入し、樹脂を射出して両者を一体化する。即ちホース2の末端部を口元部材に設けられたホース収容部92に挿入し、樹脂注入口99から、ホース末端と収容部の間の隙間に樹脂を射出するいわゆるインサート成形を行い、射出した樹脂により、ホース2と口元部材9を接続一体化することが行われる。しかしながら、ホース2がその内周面に螺旋状の凹凸条を有するものである場合には、射出した樹脂Pが、ホース内周面の螺旋状凹凸条を伝ってホース内部へと漏れ出してしまい、成形不良となってしまう問題がある。
【0004】
かかる問題を改善可能な技術として、ホースの端部と口元部材とが緊密に密着するようにして、射出した樹脂の漏れ出しを防止する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、螺旋状の凹凸条を有する可撓性ホースに対して上記オーバーモールド成形技術(インサート成形技術)を適用するにあたり、口元部材をインナ部材とアウタ部材で構成して、アウタ部材にホースの凹凸条と螺合する螺旋状の突条を設け、アウタ部材の回転操作によりホース本体端部の軸方向位置を調整して射出成形に供する技術が開示されている。この技術によれば、ホース端部とインナ部材の間に隙間が生ずることを未然に防止でき、インサート成形工程において射出された樹脂がホース内部に漏れ出してしまう不具合が未然防止されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−250273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献1に開示された技術とは別の技術手段によって、射出された樹脂のホース内部への漏れ出しを防止することを目的とする。即ち、本発明の課題は、ホースと口元部材を樹脂の射出によって一体化したホースアッセンブリにおいて、ホースがその内周面に螺旋状の凹凸条を備えるものであっても、射出された樹脂がホース内部へ漏れ出すことを防止又は抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、ホース内周面の凹溝を覆うようなリップをホースに設けると、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、可撓性のホースと口元部材を、一部が互いに重なり合うように一体化したホースアッセンブリであって、ホースと口元部材とは樹脂の射出成形を利用して一体化されていると共に、ホースはホース本体とリップとを含んで構成され、ホース本体は、内周面に凹溝と凸条を螺旋状に備え、リップは凹溝を覆うように螺旋状に設けられ、リップの片側の側縁が凸条に一体化されているホースアッセンブリである(第1発明)。
【0009】
第1発明においては、さらに、ホースと口元部材とが重なり合う部分を越えて、ホース中央側の所定位置まで、凹溝とリップで囲まれる空間に、射出された樹脂が充填されることが好ましい(第2発明)。また、第1発明において、1つの凹溝に対し、1つのリップが設けられるようにしてもよいし(第3発明)、あるいは、1つの凹溝に対し、対をなすリップが設けられ、凹溝の両側の凸条にそれぞれのリップの側縁が一体化されるようにしても良い(第4発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明のホースアッセンブリ(第1発明)によれば、射出された樹脂がホース内部へ漏れ出すことを防止又は抑制でき、ホースの製造品質を高めうるという効果が得られる。
【0011】
さらに、第2発明のように、ホースと口元部材とが重なり合う部分を越えて、ホース中央側の所定位置まで、凹溝とリップで囲まれる空間に、射出された樹脂が充填されるようにした場合には、口元部材接続部でホースの可撓性が急変することが防止されて、ホースの耐久性向上に寄与するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るホースアッセンブリを備える電気掃除機の外観を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態のホースアッセンブリの外観形状を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態のホースアッセンブリの構造を示す一部断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に使用されるホースの形状を示す一部断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に使用されるホースのホース壁部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に使用されるホースを製造するための樹脂条帯の断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に使用される口元部材の形状を示す斜視図および断面図である。
【図8】本発明第1実施形態のホースアッセンブリを得るためのインサート成形工程の概要を示す模式図である。
【図9】本発明に使用されるホースの他の形状例を示す一部断面図である。
【図10】比較検討例における樹脂もれの課題を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態や用途を変更して実施することもできる。第1の実施の形態として、一例として電気掃除機の可撓性ホース接続部における実施の形態について説明する。図1は電気掃除機の全体の外観を示し、可撓性ホース2は、掃除機本体40に設けられた吸気口に接続管(口元部材)1を介してホース2の一端で接続され、ホース2の他端は手元操作部42に接続され、手元操作部42に連続して延長管43、続いて床用ノズル44が接続されて電気掃除機が構成されている。
【0014】
本実施形態においては、接続管1が口元部材として可撓性ホース2に接続一体化されて、ホース2と口元部材1とによってホースアッセンブリAが構成されている。ここで、口元部材とは、ホースの端部に接続一体化されて他の部材との接続等に供される部材であり、特にホースとの接続部に中空円筒状の部分を有する部材をいう。上記電気掃除機の例で言えば接続管1や、手元操作部の構成部材のうちホースに直接接続される部材が口元部材に該当する。以下、可撓性ホース2や口元部材(接続管)1、及びそれらの接続形態などについて、本発明第1実施形態のホースアッセンブリを詳細に説明する。
【0015】
図2および図3には本実施形態におけるホースアッセンブリの形状および断面構造を示す。これら図においては、口元部材付近のみを図示し、他のホースの部分は省略している。口元部材1の一端側には、ホース2の端部が挿入されて、口元部材1の一部とホース2の一部とがホース軸方向に互いに重なり合う状態で、両者が接続一体化され、ホースアッセンブリAが構成される。両者の接続一体化は、後述するインサート成形工程により行われており、口元部材1とホース2とは、インサート成形工程において両者の間に射出された樹脂Pによって一体化されている。
【0016】
ホース2の形状を、図4および図5に示す。ホース2は、合成樹脂製(例えば軟質熱可塑性樹脂製)の可撓性ホースである。ホース2はホース本体2bとリップ2rとが一体化されたホースである。ホース本体2bは、その内周面に螺旋状の凹凸条を有するホースである。すなわち、ホース本体2bのホース壁の内周面には、ホース内側から見て凹溝や凸条となるような凹凸条が、螺旋状に備えられている。また、ホース壁はじゃばら状に形成されており、ホース内周の凹溝部分はそのままホース外周面の凸条部分となっている。
【0017】
そして、ホース本体2bの内周面には、内周面に設けられた凹溝を覆うように、リップ2rが、凹溝に沿って螺旋状に設けられている。リップ2rは、その片側の側縁が、ホース本体2b内周面の凸条に一体化されており、リップの他の側の側縁は、ホース本体2bとは一体化されていない。
【0018】
このようなホースは、例えば、図6に示すような略S字状断面を有する樹脂条帯Tを螺旋状に捲回しながら、互いに隣接する条帯側縁部を接着一体化するいわゆるスパイラル法によって製造することができる。以下、条帯Tとホース2の構造およびその製造方法について詳述する。
【0019】
条帯Tは、例えばポリオレフィン系樹脂などの比較的軟質な合成樹脂材料を材料として押出成形によって製作される。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)などが例示される。軟質塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、や熱可塑性エラストマ(TPE)などを使用することもできる。条帯Tを構成する樹脂材料として好ましい硬度は、70〜95(JIS ショアA)程度である。
【0020】
ホース2の製造にあたっては、まず、樹脂材料を押出し機に供給して、押出し機から半溶融状態で押出しして条帯Tを作成する。押出された条帯Tはその後冷却されて、その断面形状が固定された後、公知のホース製造装置のガイドシャフトの周囲に螺旋状に捲回される。条帯Tは、内向き側縁部201が先行して捲回された条帯の外向き側縁部205に重なり合うように捲回され、互いに重ね合わせられた内向き側縁部201と外向き側縁部205の間に接着剤30を充填し接着することにより、接合一体化されて、螺旋状の凹凸条を備えるホース本体2bとなって、可撓性ホース2が製造される。
【0021】
接着剤30としては、前記条帯Tと同じ種類の樹脂からなるホットメルト型接着剤などが使用できる。
【0022】
ホース2の構造及び条帯Tの断面形状および両者の関係を、さらに詳細に説明する。図6に示すように、条帯Tはその断面において略S字状をなす部分(以下略S字状部分と称する)を有する。この部分がホース本体2bとなる。略S字状部分の両端部には、条帯Tが螺旋状に捲回された際に互いに重なり合い、接着剤30によって接着一体化される内向き側縁部201と外向き側縁部205が設けられている(図5及び図6においては、図の上側がホースの外側に対応し、図の下側がホースの内側に対応している)。略S字状部分の両端に設けられた内向き側縁部201と外向き側縁部205の間には、捲回された際にホース内周面側を構成する部分(以下内周部)204と、捲回された際にホース外周面側を構成する部分(以下外周部)202と、内周部204と外周部202の間の立上がり部203が設けられている。内周部204と外周部202の断面は、ホースの中心軸線に対し略平行に設けられており、内周部204の方が外周部202よりもホース中心軸の近くに配置されて捲回される。内向き側縁部201と外向き側縁部205及び立上り部203とは、その断面がホース中心軸線に対して、所定の角度(望ましくは45度から90度の角度)をなすように設けられている。即ち、本実施形態においては、条帯Tの略S字状部分は、内向き側縁部201、外周部202、立上り部203、内周部204、外向き側縁部205が連設されて構成され、略S字状部分によって、ホースの内部空間と外部空間とを画成するホース本体2bが構成されている。
【0023】
ホース本体2bにおいて、ホース内周面側を見ると、内周部204の部分は凸条となり、互いに隣接する内周部204,204の間の部分が凹溝となっており、これら凸条と凹溝は、交互に並んで螺旋状に設けられている。
【0024】
さらに、条帯Tには、延長部206が設けられている。条帯Tがホース2に成形されると、延長部206の部分がリップ2rになる。延長部206は、内周部204と外向き側縁部205が接続される接続部204aから、内周部204を延長するように、ホース軸線方向に沿って突設された部分であり、略S字状部分と延長部206は一体に押出成形されて条帯Tを構成している。延長部206がホース内周面側に配置されることによって、ホース本体2bのホース内周面側の凹溝部分が、リップ2rによって覆われた状態となり、ホース内周面が略平滑に構成される。
【0025】
即ち、ホース2において、リップ2rは、ホース本体2bの内周面の螺旋状凹溝部分を覆うように、凹溝に沿う螺旋状に配設されると共に、リップ2rの片側の側縁が、ホース本体2bの内周面の凸条に一体化されている。また、リップ2rの他の側の側縁は、隣接する凸条とは、非接着状態で、互いにスライド可能とされており、リップ2rが凹凸波型状のホース管壁の伸縮を妨げないようにされている。
【0026】
リップ2rの長さは、ホース本体2bがホース軸方向に引き伸ばされた際にも、リップ2rの先端部が内周部204(凸条)から外れない程度の長さとすることが好ましい。
ホースアッセンブリAが電気掃除機に使用される際には、ホース内を流れる空気流が上流側から下流側に向かう方向に向かって、リップ2rが突設されるようにすることが、通気抵抗低減の観点からは好ましい。
【0027】
図7に示すように、本実施形態における口元部材1は、中空円筒状の部材であり、例えば、合成樹脂の射出成形により一体形成される。口元部材1の一端側は、例えば挿入部11とされて電気掃除機本体40や他の部材との接続に供される。こちら側の端部は、必要に応じて任意の形態とすることができる。
【0028】
口元部材の他端側には、収容部12が設けられている。収容部12は、接続されるべきホース2の端部を挿入・収容可能なリング状の空間Sを画定しており、リング状空間Sの部分にホース端部が挿入されて口元部材1とホース2とが互いに接続される。具体的には、収容部12は、内筒部13と外筒部14と立上り部15とを備えて構成されている。収容部12には、係合等の必要に応じて、突起や爪、突条や、スリット、穴、開口部などを設けても良い。
【0029】
さらに、口元部材の外筒部14には、貫通穴が設けられている。後述するインサート成形工程においては、この貫通穴を通じて収容部12のリング状空間Sに樹脂が射出される。
【0030】
口元部材1を構成する材料としては、ホース2の構成材料と比べ比較的硬質の合成樹脂が使用でき、特に熱可塑性樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)やポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)などが好適に使用できるほか、ゴム材料などの熱硬化性樹脂材料やウレタン樹脂などの反応硬化性樹脂材料を使用することもできる。ホース本体2と口元部材1は後述するようにインサート射出成形を利用して一体化するので、これら部材の材質は、インサート射出成形に使用する樹脂材料に対し、接着性や相溶性が良好な材料から選択することが好ましい。
【0031】
次に、上記口元部材1とホース2とを、いわゆるインサート射出成形により接続一体化して、図2に示すようなホースアッセンブリAを得る製造方法について説明する。
【0032】
インサート成形工程に先立ち、口元部材1とホース2は、それぞれ、あらかじめ製造しておく。
【0033】
図8(a)、(b)に示すように、ホース2の端部を、口元部材1の収容部12のリング状空間Sに挿入する。ホースと口元部材を確実に接続するために、ホース端部が立上り部15に当接するまでホースを挿入することが好ましい。
【0034】
ホース端部を口元部材収容部に挿入した状態で、インサート成形用の金型内部にセットする。インサート成形用の金型Mは、所定のホースアッセンブリ形状(図2に示す)が得られるように、ホース2と口元部材1を収容し、射出した樹脂が充填されるキャビティを形成可能にされた樹脂の射出成形用の金型である。必要に応じて、ホース2や口元部材1の内側に挿入されるコア金型を備えさせても良い。
【0035】
ホース端部と口元部材1を金型Mの内部にセットして型締めして、樹脂の射出が行われる。本実施形態においては、樹脂の射出は、外筒部14に設けられた貫通穴に対して開口するゲートGを通じて行われる。なお、樹脂の射出は、必要に応じ、他の部位から行うようにしても良い。
【0036】
ゲートGから射出された溶融樹脂は、貫通穴を通じて収容部12の内側へと到達し、ホース端部と収容部12の間の隙間に充填され、樹脂Pが固化すると、ホース端部と収容部(口元部材)とが接合一体化される。また、射出された樹脂Pは、収容部12に設けられた貫通穴の部分も埋めるように充填される。
【0037】
射出した樹脂Pの固化が完了した時点で、金型Mを開いて、ホース2と口元部材1とが一体化されたホースアッセンブリAを金型から取り出し(図8(d))、インサート成形工程が完了する。
【0038】
本発明の作用および効果について説明する。本発明によれば、口元部材1とホース2とをインサート成形により一体化する際に、射出した樹脂がホース内部に漏れ出す成形不良が発生することを防止又は抑制できる。
【0039】
ホース2には、その内周面に螺旋状の凹溝が存在しているので、インサート成形工程において、射出した樹脂が、ホース端部などから、この螺旋状凹溝に流れ込む可能性がある。この点は、図10で説明した従来技術と同様である。
【0040】
しかしながら、本発明においては、ホース内周面の凹溝を覆うようにリップ2rが設けられているので、凹溝に樹脂が流れ込むことがあっても、樹脂は、リップ2rによって凹溝内部から流れ出すことなく、凹溝とリップ2rで囲われた螺旋状空間A1に沿って流れることになる。そのため、凹溝に流れ込んだ樹脂は、リップと凹溝の間の螺旋状空間A1内で固化し、ホース内部には漏れ出さなくなって、成形不良となることが防止または抑制される。図8(d)には、凹溝の螺旋状空間A1に入り込んだ樹脂Pが、ホース内側に漏れ出すことなく、螺旋状空間内で固化した様子を示している。
【0041】
また、リップ2rの一方の側縁はホース本体と一体化されていないので、リップによるホースの伸縮性や可撓性の低下も少ない。
【0042】
また、リップで覆われた凹溝の螺旋状空間A1は、ホース長さ方向に向かって、非常に長く設けられており、樹脂はこの方向に比較的自由に流れることができる。従って、ホース内周の凸条とリップとの間に若干の隙間があっても、樹脂は、流動抵抗の大きな隙間ではなく、流動抵抗の小さな螺旋状空間A1に沿って流れる。そのため、凹溝を完全に閉じた空間を形成しなくても、樹脂の漏れ出しを防ぐことができる。従って、リップ2rの片側の側縁と凸条との間は、非接着でよく、隙間があっても良い。許容されうるリップ周辺の隙間の大きさは、凹溝の幅や高さよりも小さい寸法、より好ましくは半分以下程度の寸法である。
【0043】
また、インサート成形工程において樹脂の射出量を調整するなどして、凹溝の螺旋状空間に入り込む樹脂の量を調整すれば、ホースと口元部材が互いに重なり合う部分を越えて、ホース軸方向でホースの中央側の所定の位置まで(好ましくは凹溝の螺旋の1〜3回転分)、ホース内側の凹溝に樹脂Pを充填することができる。(例を、図3や図8(d)に示す)。このようにすれば、凹溝に樹脂が充填された部分ではホースの可撓性が制限されることになる。すると、可撓性が無い口元部材とホースが重なりあう部分(可撓性の無い部分)と、ホースだけの部分(可撓性に富む部分)の間に、可撓性が制限された部分(凹溝に樹脂が充填された部分)が存在することになり、ホース2が口元部材1に接続される部分で、ホースの可撓性が段階的に変化するようにできる。ホースの可撓性が口元部材との接合部で急変していると、その部分にホースの変形が集中してホースの耐久性に悪影響を及ぼす場合があるが、ホースの可撓性が段階的に変化するようになれば、ホースの変形が一部に集中することが抑制され、ホースの耐久性向上に寄与する。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す変形の形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を互いに置き換えて実施できる。
【0045】
本発明に使用可能なホースの変形例について説明する。図9には、ホースの変形例におけるホースの断面を示している。図9(a)の例のホース3おいては、ホース本体3bとリップ3rとは、それぞれ別々の樹脂条帯により形成されており、リップ3rの片側の側縁がホース本体3b内周面の凸条に接着一体化されている。また、リップ3rの反対側の側縁とホース本体内周面の凸条との間には隙間がある。このホース3を使用しても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。即ち、リップとホース本体の一体化の形態は特に限定されるものではなく、リップはホース内周の凹溝を完全に覆うものでなくても良い。
【0046】
図9(b)の例のホース4おいては、ホース本体4bの構成は第1実施形態と同様であるが、リップ41,42が設けられる形態が異なっている。本実施形態において、リップ41,42は、1つの凹溝に対して2本のリップが対をなすように、互いに対向するように設けられている。そして、それぞれのリップ41,42は、凹溝の両側にに隣接する凸条から突出するように一体に設けられている。そして、リップ41,42によって、ホース本体4b内周面の螺旋状凹溝が覆われている。リップ41、42のそれぞれの先端部の間には隙間が設けられている。このホース4を使用しても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、リップは、一本の凹溝に対し、対をなす複数本(例えば2本)のリップが設けられるものであっても良い。
【0047】
本発明に使用可能な口元部材の変形例について説明する。インサート成形によりホースと一体化される限りにおいて、口元部材の具体的形状は特に限定されない。口元部材の内筒部や外筒部、立上り部も、スリットを設けたり係合用の突起等を設けたりするなど、その具体的形態を変更することができる。または、口元部材の内筒部や外筒部、立上り部のいずれかを省略することもできる。
【0048】
さらに、上記実施形態の説明では、あらかじめ口元部材を製造しておいて、ホースにインサート成形により一体化したホースアッセンブリの例について説明したが、口元部材をあらかじめ製造することなく、インサート成形を利用して、ホース端部に直接口元部材を成形一体化することもできる。すなわち、ホースと口元部材が、射出された樹脂によって一体化されている限りにおいて、本発明では、口元部材がインサート成形工程に先立って事前に形成されたものであるかどうかは、限定されない。
【0049】
また、上記実施形態では電気掃除機に使用されるホースアッセンブリについて説明したが、本発明は電気掃除機以外の他の技術分野、例えば、送風や吸引、給水、スラリ搬送といった可撓性ホースが利用される種々の分野にも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明にかかるホースアッセンブリは、例えば電気掃除機に使用でき、口元部材により接続操作が簡単になって、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0051】
A ホースアッセンブリ
1 口元部材(接続管)
11 挿入部
12 収容部
S リング状空間
2 ホース
2b ホース本体
2r リップ
T 樹脂条帯
206 延長部
M インサート射出成形金型
P 射出された樹脂
3、4 ホース
3b、4b ホース本体
3r、41,42 リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のホースと口元部材を、一部が互いに重なり合うように一体化したホースアッセンブリであって、
ホースと口元部材とは樹脂の射出成形を利用して一体化されていると共に、
ホースはホース本体とリップとを含んで構成され、
ホース本体は、内周面に凹溝と凸条を螺旋状に備え、
リップは、凹溝を覆うように螺旋状に設けられ、リップの片側の側縁が凸条に一体化されているホースアッセンブリ。
【請求項2】
ホースと口元部材とが重なり合う部分を越えて、ホース中央側の所定位置まで、
凹溝とリップで囲まれる空間に、射出された樹脂が充填された請求項1に記載のホースアッセンブリ。
【請求項3】
1つの凹溝に対し、1つのリップが設けられた請求項1に記載のホースアッセンブリ。
【請求項4】
1つの凹溝に対し、対をなすリップが設けられ、凹溝の両側の凸条にそれぞれのリップの側縁が一体化された請求項1に記載のホースアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−255466(P2012−255466A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127919(P2011−127919)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】