説明

ホース接続金具

【課題】 従来の三鉤式金具と完全に互換性を維持しつつ、差し金具2と受け金具3との結合力を軽減し、小さい力で容易に結合できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 差し金具2と受け金具3とよりなる三鉤式金具において、前記差し金具2における大径部8の先端外周に、前記係合爪14のテーパー面13よりも傾斜が緩やかなテーパー面20を形成した。
【効果】 受け金具3の係合爪14をテーパー面20により押し拡げるので、小さい力で結合することができると共に、従来の三鉤式金具と完全に互換性を有しており、火災現場での混用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホース接続金具に関するものであって、特に消防用ホースの接続金具であって、差し金具と受け金具とを結合する、一般に三鉤式金具と呼ばれる形式の接続金具の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来三鉤式金具は、メーカーにより具体的な構造に多少に差異はあるものの、互いに接続可能で互換性を有しており、消防用ホースの接続金具としてわが国において広く採用されている。
【0003】
三鉤式金具は図1に示すように、それぞれホース1の端末に取り付けられた差し金具2と受け金具3とよりなっており、当該差し金具2及び受け金具3は、それぞれその基部にホース結合筒部4が形成され、当該ホース結合筒部4の外周には竹の子状の凹凸条5が形成されている。
【0004】
そしてそのホース結合筒部4のその外側にホース1の端末を嵌合し、さらにその外側に筒状の口巻き布6が嵌合され、さらにその外側に金属リング7を嵌合し、その金属リング7をかしめてホース1をホース結合筒部4に固定している。
【0005】
そして差し金具2は、その先端部外周に大径部8が形成され、当該大径部8の後部に係合段部9が形成されており、当該係合段部の後部外周に後端に鍔10を有する係合解除用リング11が遊嵌されている。
【0006】
また前記受け金具3は、先端部に前記差し金具2の先端部を受け入れる受け部12を有しており、その受け部12の内周には、受け金具3の先端方向に向かってテーパー面13を有し且つ、前記差し金具2の係合段部9に係合離脱可能の係合爪14が設けられ、当該係合爪14はばね手段15により内方に付勢されている。なお16はパッキンであり、17は緩衝ゴムである。
【0007】
而して前記差し金具2の先端部を受け金具3の受け部12内に押し込むと、大径部8の先端が係合爪14のテーパー面13に当接し、係合爪14をばね手段15の弾力に抗して外方に押し拡げつつ侵入し、大径部8が係合爪14を通り抜けると、係合爪14がばね手段15の弾力により内方に突出して係合段部9に係合し、図1(b)に示すように差し金具2と受け金具3とが結合される。このときパッキン16が大径部8の外面に圧接して、両金具2、3を水密にシールする。
【0008】
またこの状態で前記係合解除用リング11を差し金具2の先端方向に摺動させ、受け金具3の受け部12の先端から押し込むことにより、係合解除用リング11の先端が前記係合爪14をばね手段15の弾力に抗して外方に偏倚させ、係合段部9との係合を解除して差し金具2と受け金具3との結合を解除し得るようになっている。
【0009】
ところで差し金具2と受け金具3とを結合する際には、ホース1に結合された差し金具2を地面に置いて、ホース結合筒部4の後部のホース1を口巻き布6の外側から足で踏むことにより差し金具2の先端を上向きにし、そこに上方から受け金具3を差込むことにより差し金具2と受け金具3とを結合することが行われている。
【0010】
このとき内方に付勢された係合爪14を、差し金具2の大径部8の先端で押し拡げながら挿入するのであるが、ばね手段15により係合爪14を内方に付勢する力と、それに加えて大径部8の先端が係合爪14のテーパー面13に沿って摺動する摩擦が結合の抵抗力として作用し、結合のためには相当の力を要する。
【0011】
図4はその状態を示すものであって、実線で示すように大径部8の先端外周角18が係合爪14のテーパー面13に当接した状態から、鎖線で示すように大径部8の先端外周角18がテーパー面13の内端に至るまで、差し金具2を距離aだけ押し進める間に、係合爪14を距離bだけ押し拡げなければならないこととなり、差し金具2を単位距離進める際の仕事量が大きく、結合に大きな力を要するのである。
【0012】
また二部材の結合を容易ならしめるための手段として、大径部8の先端外周角18にテーパーをつけることが考えられる。図5は大径部8の先端外周に係合爪14のテーパー面13に等しいテーパー19を形成した場合を示すものであるが、この場合においても係合爪14を大径部8の外周まで距離bだけ押し拡げるに要する差し金具2の挿入長さcは、図4の場合とほとんど変わらず、結合力を軽減するには至らない。
【0013】
また係合爪14のテーパー面13の角度を緩やかにすることにより結合力を軽減することも考えられるが、この場合には係合爪14の長さを長くする必要がある。前述のように三鉤式金具は互換性を有するものとして汎用されているのであるが、係合爪14の長さが異ることにより互換性が失われる恐れが生じる。
【特許文献1】特開平11−287377号公報
【特許文献2】特開2003−185079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、従来の三鉤式金具と完全に互換性を維持しつつ、差し金具2と受け金具3との結合力を軽減し、小さい力で容易に結合できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
而して本発明は、差し金具と受け金具とよりなり、前記差し金具が基部にホース結合筒部と先端部外周に大径部を有し、その大径部の後部に係合段部を形成した筒体であって、前記係合段部の後方外周に係合解除用リングが遊嵌されており、前記受け金具が基部にホース結合筒部と先端部に前記差し金具の先端部を受け入れる受け部とを有する筒体であって、その受け部内周に受け金具の先端方向に向かってテーパー面を有し、且つ前記係合段部に係合離脱可能の係合爪を内方に付勢して設け、前記係合解除用リングを受け部先端から押し込むことにより前記係合爪を付勢に抗して外方に偏倚させ、係合段部との係合を解除するようにしたホース接続金具において、前記差し金具における大径部の先端外周に、前記係合爪のテーパー面よりも傾斜が緩やかなテーパー面を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、係合爪14を差し金具2の大径部8の外周にまで押し拡げるに要する差し金具2の挿入長さが大きくなり、差し金具2を単位距離進める際の仕事量が小さくなり、小さい力で結合することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図2及び図3は本発明の金具の主要部を示すものであって、前記差し金具2の大径部8の先端外周に、前記係合爪14のテーパー面13よりも傾斜が緩やかなテーパー面20が形成されている。三鉤式金具の係合爪14のテーパー面13の角度eは通常約25°であるので、テーパー面20の角度fは、10〜20°が適当である。
【0018】
本発明によれば、大径部8にテーパー面20が形成されており、そのテーパー面20の角度fが係合爪14のテーパー面13の角度eよりも緩やかであるので、差し金具2を受け金具3に差込んだとき、テーパー面20の先端は図3の実線で示すように、係合爪14のテーパー面13の内端付近に当接する。
【0019】
従って差し金具2をわずかに押し込むことにより、テーパー面13の内端がテーパー面20に当接し、その後係合爪14がテーパー面20に沿って滑りながらばね手段15の弾力に抗して押し拡げられることになる。
【0020】
このときテーパー面20の角度fが小さいので、図3に鎖線で示すように係合爪14を大径部8の外周にまで距離bだけ押し拡げるに要する差し金具2の挿入距離dは、図4に示す従来の金具に比べて大幅に大きくなる。
【0021】
すなわち、差し金具2を単位距離押し進める際の、ばね手段15の弾力に抗して係合爪14を押し拡げる仕事量が小さくなり、より小さい力で差し金具2を押し進め、受け金具3と結合することができるのである。
【0022】
またこのとき、テーパー面20の角度が小さいので、図2に示すようにパッキン16は差し金具2の大径部8からテーパー面20にかけて圧接することができ、水密性を確保することができる。
【実施例1】
【0023】
係合爪14のテーパー面13の角度eが25°の受け金具3に対して、従来の大径部8にテーパー面20がない差し金具2を結合したときに、両金具の結合に要する力は、平均約4.7kgであった。
【0024】
また同じ受け金具3に対して、大径部8の先端に25°のテーパー19をつけた差し金具2を結合したときには、その両金具の結合に要する力は約4.3kgであって、結合力を軽減する効果は小さかった。
【0025】
これに対し、同じ受け金具3に対して、大径部8の先端部に係合爪14のテーパー面13よりも小さい14°のテーパー面20を形成した差し金具2を結合した場合には、結合に要する力は約3.5kgであって、本発明により両金具の結合に要する力は大幅に軽減された。
【0026】
また本発明においては、受け金具3は従来の三鉤式金具をそのまま使用することができ、且つ差し金具2においても、大径部8の長さや係合段部9の高さを変更する必要がないので、一般に汎用されている三鉤式金具と完全に互換性を有しており、火災現場での消火活動において、混用して何ら問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】三鉤式金具の中央縦断面図であって、(a)は結合を解除した状態を示し、(b)は結合した状態を示すものである。
【図2】本発明の金具における主要部の中央縦断面図であって、(a)は結合を解除した状態を示し、(b)は結合した状態を示すものである。
【図3】本発明の金具における主要部の拡大中央縦断面図
【図4】従来の三鉤式金具における主要部の拡大中央縦断面図
【図5】差し金具の先端に係合爪のテーパー面に等しいテーパーをつけた状態の金具の主要部の拡大中央縦断面図
【符号の説明】
【0028】
1 ホース
2 差し金具
3 受け金具
4 ホース結合筒部
8 大径部
9 係合段部
11 係合解除用リング
12 受け部
13 テーパー面
14 係合爪
15 ばね手段
16 パッキン
20 テーパー面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し金具(2)と受け金具(3)とよりなり、前記差し金具(2)が基部にホース結合筒部(4)と先端部外周に大径部(8)を有し、その大径部(8)の後部に係合段部(9)を形成した筒体であって、前記係合段部(9)の後方外周に係合解除用リング(11)が遊嵌されており、前記受け金具(3)が基部にホース結合筒部(4)と先端部に前記差し金具(2)の先端部を受け入れる受け部(12)とを有する筒体であって、その受け部(12)内周に受け金具(3)の先端方向に向かってテーパー面(13)を有し、且つ前記係合段部(9)に係合離脱可能の係合爪(14)を内方に付勢して設け、前記係合解除用リング(11)を受け部(12)先端から押し込むことにより前記係合爪(14)を付勢に抗して外方に偏倚させ、係合段部(9)との係合を解除するようにしたホース接続金具において、前記差し金具(2)における大径部(8)の先端外周に、前記係合爪(14)のテーパー面(13)よりも傾斜が緩やかなテーパー面(20)を形成したことを特徴とする、ホース接続金具

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−187271(P2007−187271A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6609(P2006−6609)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【出願人】(593192900)株式会社立売堀製作所 (22)
【Fターム(参考)】