説明

ホース用ゴム組成物およびそれを用いたホース

【課題】低コストで、耐熱性に優れ、しかも、臭気発生やブルーム発生等を伴わないホース用ゴム組成物およびそれを用いたホースを提供する。
【解決手段】記の(A)〜(D)を必須成分とするホース用ゴム組成物とする。そして、このホース用ゴム組成物を用い、ホース形状に形成してなるホースとする。
(A)エチレン−プロピレン系共重合体。
(B)pH6以上であり、かつ、DBA値が180(mg−mol/kg)以上であるホワイトカーボン。
(C)過酸化物系架橋剤。
(D)カーボンブラック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用ラジエターホース、自動車用エアー系ホース、燃料電池システム用ホース等の各種ホースの形成材料に用いられるホース用ゴム組成物およびそれを用いたホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用ラジエターホース等の材料として、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等の原料ゴムに、カーボンブラック等の補強材や、過酸化物,硫黄等の架橋剤や、オイル等の可塑剤等を配合したゴム組成物が用いられている(特許文献1参照)。EPDMは、材料コストが低いことから利用価値が高く、そのため、ホース材料の分野においても注目されている。ところで、EPDMは、過酸化物架橋したほうが、硫黄架橋したものよりも耐熱性に優れることが知られている。これは、過酸化物架橋により形成される炭素−炭素結合が、硫黄架橋により形成される炭素−硫黄結合よりも化学的に安定しているためと考えられている。したがって、特に高い耐熱性が要求される自動車用ラジエターホース等の材料としてEPDMを用いる際には、通常、過酸化物架橋させたほうがよいと考えられている。
【特許文献1】特開平10−180941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、多くの過酸化物系架橋剤(なかでも、比較的安価でよく用いられるパークミルD)は、その架橋の際に発生する分解生成物の臭気が強く、そのため、ホース製造中の作業環境の悪化や、あるいは、製品であるホースから上記臭気が発生するといった問題が生じる。また、過酸化物系架橋剤の種類によっては、その分解生成物の融点が室温よりも高い場合、これが、低極性ゴムであるEPDM中を移行し、製品であるホースの表面に結晶状に析出(ブルーム)して、ホース外観を損ねるおそれもある。
【0004】
上記の臭気発生の問題は、例えば、ゴムコンパウンド中にヒドラジド化合物を添加し、生成するアセトフェノン(ケト基含有化合物)をヒドラゾンに変化させて解消する方法が検討されている。しかしながら、ヒドラジド化合物の添加は、ゴムの着色を生じさせるといった新たな問題を生じる。他方、上記のブルーム発生の問題も、例えば、多価アルコールの添加によりゴムコンパウンドの極性を上げて解消する方法が検討されているが、多価アルコールは、ゴムコンパウンドに対して分散性が悪く、そのため、今度は、この多価アルコールがブリードするといった問題を生じる。このように、自動車用ラジエターホース等のホース材料の用途として、EPDMを過酸化物架橋させて使用する際に生じる様々な問題は、未だ解決されていないのが現状である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低コストで、耐熱性に優れ、しかも、臭気発生やブルーム発生等を伴わないホース用ゴム組成物およびそれを用いたホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(D)を必須成分とすることを特徴とするホース用ゴム組成物を第1の要旨とし、このホース用ゴム組成物を用い、ホース形状に形成してなるホースを第2の要旨とする。
(A)エチレン−プロピレン系共重合体。
(B)pH6以上であり、かつ、DBA値が180(mg−mol/kg)以上であるホワイトカーボン。
(C)過酸化物系架橋剤。
(D)カーボンブラック。
【0007】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、EPDM等のエチレン−プロピレン系共重合体に、過酸化物系架橋剤と、カーボンブラックとを添加し、これをホース材料とすることを検討した。しかしながら、このままでは、先に述べた臭気やブルームの問題が依然として残ったままであることから、これを解決すべく、更に研究を重ねた。その結果、上記過酸化物系架橋剤とともに、特定の物性を有するホワイトカーボン〔pH6以上であり、かつ、DBA値が180(mg−mol/kg)以上であるホワイトカーボン〕を添加すると、架橋阻害を生じることなく、臭気やブルームの問題が解消されることを突き止め、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のホース用ゴム組成物は、エチレン−プロピレン系共重合体と、特定の物性を有するホワイトカーボンと、過酸化物系架橋剤と、カーボンブラックとを必須成分としている。そのため、低コストで、耐熱性に優れ、しかも、過酸化物系架橋剤のみを用いた場合にみられた臭気発生やブルーム発生等の問題を伴わず、自動車用ラジエターホース等の材料として、優れた機能を発揮することができる。また、このホース用ゴム組成物は、硫黄架橋系のように金属塩や有機金属化合物を必要としないため、環境面においても優れている。
【0009】
特に、上記各成分に加え、ポリイソブチレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のジエン系ゴムを必須成分とすると、本発明のホース用ゴム組成物の特性を損なうことなく、その適用範囲を、より拡げることができる。
【0010】
また、上記特定のホワイトカーボンの含有量が、ホース用ゴム組成物全体の3〜30重量%であると、本発明の効果が有効に得られるようになる。
【0011】
また、上記過酸化物系架橋剤が、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンであると、臭気発生の問題を生じず、しかも、低コスト化の点で、より優れるようになる。
【0012】
そして、上記ホース用ゴム組成物を用いて形成されたホースは、臭気やブルームを生じず、しかも、低コストで、耐熱性等に優れている。このように、上記ホースは優れた特性を有しており、特に、自動車用ラジエターホース、自動車用エアー系ホース、燃料電池システム用ホース等として優れた機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明のホース用ゴム組成物は、エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)と、特定の物性を有するホワイトカーボン(B成分)と、過酸化物系架橋剤(C成分)と、カーボンブラック(D成分)とを必須成分としている。ここで、必須成分とは、任意成分に対するものであって、構成上必ず含有される成分のことをいい、量的な制約は受けない。
【0015】
上記エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)としては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)は、特に限定するものではないが、ヨウ素価が6〜30の範囲、エチレン比率が48〜70重量%の範囲のものが好ましく、特に好ましくはヨウ素価が10〜24の範囲、エチレン比率が50〜60重量%の範囲のものである。このようなものは、高温高圧下での安定性に優れている。
【0016】
このEPDMに含まれるジエン系モノマー(第3成分)としては、特に限定はないが、炭素数5〜20のジエン系モノマーが好ましく、具体的には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン等があげられる。これらジエン系モノマー(第3成分)のなかでも、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0017】
上記エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)とともに用いられる特定のホワイトカーボン(B成分)としては、先にも述べたように、そのpH6以上であり、かつ、そのDBA値が180(mg−mol/kg)以上であるホワイトカーボンが用いられる。上記ホワイトカーボンのpHは、好ましくは、pH6〜pH11の範囲である。すなわち、ホワイトカーボンのpHが6未満であると、架橋阻害が発生し、耐熱性、圧縮永久歪みといった物性が悪化するからである。他方、ホワイトカーボンのDBA値が180(mg−mol/kg)未満であると、過酸化物架橋剤の分解生成物による臭気やブルームの発生を抑制する効果が得られないからである。ここで、上記DBA値は、そのホワイトカーボン表面のシラノール基(SiOH)の量を示すものであり、下記の方法により測定することができる。すなわち、まず、ホワイトカーボンを180℃で2時間焼成し、デシケータ中で放冷した後に1g秤量し、0.01Nジ−n−ブチルアミン(DBN)トルエン溶液を100ミリリットル加える。次いで、これをスターラーで1時間攪拌した後に一晩放置する。上澄み液5ミリリットルをとり、50ミリリットルの水/メタノール=1/1溶液を加え、pHメーターでpHを測定しながら0.01N塩酸で滴定を行い、その滴定量を測定する。
【0018】
そして、上記特定のホワイトカーボンとしては、そのpHおよびDBA値が、上記特定の範囲内となるのであれば、特に限定はなく、SiO2 を主成分とするものであり、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等を原料とし、湿式法や乾式法等により得ることができる。なお、上記特定のホワイトカーボンの平均粒径は、通常、2〜100μmの範囲に設定され、好ましくは5〜20μmの範囲内である。また、その粒子形状も、球状に限定されず、楕円等であってもよい。さらに、複数の微粒子からなる小さな凝塊であってもよい。
【0019】
上記特定のホワイトカーボン(B成分)の配合割合は、エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、10〜100部の範囲内が好ましく、特に好ましくは20〜60部の範囲内である。すなわち、上記ホワイトカーボンの配合割合が10部未満であると、ブルームの発生を抑制する効果に乏しいといった問題があるからであり、逆に100部を超えると、加工性および物性のバランス(特に柔軟性)が悪くなる傾向がみられるからである。
【0020】
上記A成分およびB成分とともに用いられる過酸化物架橋剤(C成分)としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、低コストで、かつ、臭気の問題がない点において、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好適に用いられる。
【0021】
上記過酸化物架橋剤(C成分)の配合割合は、エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)100部に対して、1.5〜20部の範囲内が好ましい。すなわち、過酸化物架橋剤が1.5部未満であると、架橋が不充分となって、ホースの強度に劣り、逆に過酸化物架橋剤が20部を超えると、硬くなりすぎ、ホースの柔軟性に劣る傾向がみられるからである。
【0022】
上記A〜C成分とともに用いられるカーボンブラック(D成分)としては、特に限定されるものではなく、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カラーブラック等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、SRF級カーボンブラックが好適に用いられる。
【0023】
上記カーボンブラック(D成分)の配合割合は、エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)100部に対して、5〜140部の範囲内が好ましく、特に好ましくは60〜100部の範囲内である。すなわち、カーボンブラックの配合割合が5部未満であると、補強性の効果が乏しく、ホース材料としての機械的物性に劣り、逆に140部を超えると、柔軟性が失われる傾向がみられるからである。
【0024】
本発明のホース用ゴム組成物は、上記A〜D成分を必須成分とするものであるが、これに加え、ポリイソブチレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のジエン系ゴムを必須成分とすると、これらジエン系ゴムが非極性であることから、本発明のホース用ゴム組成物の特性を損なうことなく、その適用範囲を、より拡げることができるため好ましい。
【0025】
また、本発明のホース用ゴム組成物には、上記各成分とともに、共架橋剤、プロセスオイル、老化防止剤等を、必要に応じて配合しても差し支えない。
【0026】
上記共架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好適に用いられ、これらとともに、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、p−キノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0027】
この共架橋剤の配合割合は、エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)100部に対して、0.1〜10部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜7部の範囲内である。
【0028】
上記プロセスオイルの配合割合は、エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)100部に対して、5〜100部の範囲内が好ましく、特に好ましくは20〜80部の範囲内である。
【0029】
また、老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0030】
この老化防止剤の配合割合は、エチレン−プロピレン系共重合体(A成分)100部に対して、0.2〜2部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜1部の範囲内である。
【0031】
本発明のホース用ゴム組成物は、例えば、前記A〜D成分を配合するとともに、必要に応じて、他のジエン系ゴム、共架橋剤、プロセスオイル、老化防止剤等を配合し、これらをニーダー,バンバリーミキサー,ロール等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0032】
本発明のホースは、例えば、前記のようにして調製した本発明のホース用ゴム組成物を、ホース状に押し出し成形した後、全体を所定の条件で架橋することにより作製することができる。なお、この成形に際し、必要に応じて、マンドレルを用いても差し支えない。
【0033】
このようにして得られる本発明のホースにおいて、その厚みは、特に限定はないが、通常、1.5〜12mmの範囲内であり、また、その内径は、通常、5〜50mmの範囲内である。
【0034】
なお、本発明のホースは、単層構造に限定されるものではなく、2層以上の多層構造であっても差し支えない。また、上記のように多層構造とする場合、本発明のホース用ゴム組成物が、耐熱性に優れ、また、ブルーム等を生じないことから、このものを、ホース外層の材料に用いることが好ましい。
【0035】
また、本発明のホース用ゴム組成物は、ホース全般に用いることが可能であるが、特に、自動車用ラジエターホース、自動車用エアー系ホース、燃料電池システム用ホース等といった、耐熱性が要求されるホースの形成材料に好適に用いられる。
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0037】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0038】
〔EPDM(A成分)〕
エスプレン501A(住友化学工業社製)
【0039】
〔EPM(A成分)〕
エスプレン201、住友化学工業社製
【0040】
〔SBR〕
住化SBR1500、住友化学工業社製
【0041】
〔ホワイトカーボン(i)(B成分)〕
ニプシールER〔pH6.5以上、DBA値180(mg−mol/kg)〕(日本シリカ工業社製)
【0042】
〔ホワイトカーボン(ii)〕
ニプシールSS−30V〔pH6.5以上、DBA値40(mg−mol/kg)〕(日本シリカ工業社製)
【0043】
〔ホワイトカーボン(iii )〕
トクシールUR〔pH4.5、DBA値180(mg−mol/kg)〕(トクヤマ社製)
【0044】
〔過酸化物架橋剤(i)(C成分)〕
1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂社製、パーブチルP)
【0045】
〔過酸化物架橋剤(ii)(C成分)〕
ジクミルパーオキシド(日本油脂社製、パークミルD)
【0046】
〔過酸化物架橋剤(iii )(C成分)〕
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂社製、パーヘキサ25B)
【0047】
〔カーボンブラック(D成分)〕
ショウブラックIP−200(昭和キャボット社製)
【0048】
〔プロセスオイル〕
ダイアナプロセスPW−380(出光興産社製)
【0049】
〔老化防止剤〕
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMDQ)(精工化学社製、ノンフレックスRD)
【0050】
〔共架橋剤〕
エチレングリコールジメタクリレート(精工化学社製、ハイクロスED)
【0051】
〔ヒドラジド化合物〕
しゅう酸ヒドラジド(日本ヒドラジド工業社製)
【0052】
〔多価アルコール〕
ポリエチレングリコール(PEG)
【実施例】
【0053】
〔実施例1〜5、比較例1〜6〕
下記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、バンバリーミキサーおよびロールを用いて混練して、ホース用ゴム組成物を調製した。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
このようにして得られた実施例品および比較例品のホース用ゴム組成物を用い、下記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表3および表4に併せて示した。
【0057】
〔ブルーム〕
各ゴム組成物を用いて、170℃×20分間でプレス加硫し、100mm×100mm×厚み2mmのゴム試験片を作製した。そして、このゴム試験片を常温雰囲気下(25℃)に10日間放置した後、ゴム試験片を破断し、その破断面を目視により観察した。そして、ブルームがみられなかったものを○、使用上問題のない程度のブルームがみられたものを△、ブルームがみられたものを×と示した。
【0058】
〔臭気〕
上記ゴム試験片(製造直後のもの)から10cm離れた距離での臭気を、嗅覚により評価した。すなわち、刺激臭等の不快な臭いが確認されたものを×、臭いが確認されたが問題のない程度のレベルであったものを△、不快な臭いが確認されなかったものを○と示した。
【0059】
〔着色性〕
上記ゴム試験片の着色状態を目視により観察した。すなわち、ゴム試験片上に変色(茶褐色)がみらたものを×、変色がみられなかったものを○と示した。
【0060】
〔ブリード〕
上記ゴム試験片を常温雰囲気下(25℃)に7日間放置した後、ゴム試験片を破断し、その破断面を目視により観察した。そして、ブリードがみられなかったものを○、ブリードがみられたものを×と示した。
【0061】
〔練り加工性〕
バンバリーミキサーおよびロール加工の際に、これら加工機表面への著しい粘着が発生した順に×,△,○で評価した。
【0062】
〔加硫物の初期物性(TB,EB,HA)〕
ゴム組成物を、170℃×20分間でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。この加硫物の物性評価(TB,EB,HA)を、JIS K 6251に準じて測定した。
TB:破断点強度(MPa)
EB:破断点伸び(%)
HA:硬度
【0063】
〔圧縮永久歪み〕
上記ゴム試験片の圧縮永久歪みを、JIS K 6262に準じて測定した。なお、測定条件は温度125℃、試験時間24時間、圧縮率25%であった。
【0064】
〔ホース物性(外観、臭気、耐圧耐久性)〕
まず、実施例および比較例の各ゴム組成物を、厚み20mmで押出し成形した後、この表面にナイロン糸をスパイラル状に編組し、補強層を形成した。ついで、この補強層の外周面に、内面と同じゴム組成物を、厚み15mmで押出し成形した。そしてこれを、マンドレルに挿入し、170℃×20分間加熱した後、マンドレルを抜き取ることにより、内面ゴム層の外周面に補強層が形成され、さらにこの補強層び外周面に外面ゴム層が形成されてなるホース(内径27.0mm、外径34.0mm)を得た。このようにして得られた実施例品および比較例品のホースを用いて、下記の基準に従い、各特性(外観、臭気、耐圧耐久性)の評価を行った。
【0065】
(外観)
目視にて、加硫したホース外表面または内表面を観察した。そして、製品として外観が不良と判断された順に×,△,○で評価した。
【0066】
(臭気)
加硫したホースに明らかに不快な匂いが確認された順に×,△,○で評価した。
【0067】
(耐圧耐久性)
ホースに循環液(エチレングリコールおよび純水を1:1で混合したもの)を封入し、50回/分の頻度で0〜0.23MPa間の加圧サイクル試験を実施した。試験回数100万回で、破裂,局部的なふくれ等のホース使用上有害な欠点か発生しなかったものを○、発生したものを×とした。
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
上記結果より、実施例品は、いずれも、ブルームや臭気等を伴わず、ホース材料として優れていることがわかる。
【0071】
これに対して、比較例1品は、ホワイトカーボンが含まれておらず、そのため、過酸化物架橋剤の分解生成物がブルームしている。比較例2品は、ホワイトカーボンのDBA値が低過ぎるため、ブルーム等の解消がなされていない。比較例3品は、ホワイトカーボンのpHが低過ぎるため、架橋阻害が発生し、圧縮永久歪み等に問題が生じている。比較例4品は、不快な匂いがする。比較例5品は、ホワイトカーボンによらず、ヒドラジド化合物により過酸化物架橋剤からの臭気発生等を抑えているが、着色等の問題が新たに生じた。比較例6品は、ホワイトカーボンによらず、多価アルコールにより過酸化物架橋剤からのブルーム発生等を抑えているが、ブリード等の問題が新たに生じた。比較例7品は、カーボンブラックが不含であり、補強材がホワイトカーボンのみであるため、加工機表面に著しく粘着し、練り加工性に難があった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のホース用ゴム組成物は、特に、自動車用ラジエターホース、自動車用エアー系ホース、燃料電池システム用ホース等といった、耐熱性が要求されるホースの形成材料に好適に用いられる。また、耐熱用途の、ガスケット,パッキン,その他のシール材等にも、用いることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)を必須成分とすることを特徴とするホース用ゴム組成物。
(A)エチレン−プロピレン系共重合体。
(B)pH6以上であり、かつ、DBA値が180(mg−mol/kg)以上であるホワイトカーボン。
(C)過酸化物系架橋剤。
(D)カーボンブラック。
【請求項2】
上記(A)〜(D)成分に加え、下記の(E)を必須成分とする請求項1記載のホース用ゴム組成物。
(E)ポリイソブチレンゴム、ポリブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのジエン系ゴム。
【請求項3】
上記(B)成分のホワイトカーボンの含有量が、ホース用ゴム組成物全体の3〜30重量%である請求項1または2記載のホース用ゴム組成物。
【請求項4】
上記(C)成分の過酸化物系架橋剤が、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンである請求項1〜3のいずれか一項に記載のホース用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のホース用ゴム組成物を用い、ホース形状に形成してなることを特徴とするホース。

【公開番号】特開2006−63280(P2006−63280A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250598(P2004−250598)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】