説明

ホームドアシステム

【課題】 列車側に専用のシステムを搭載することなく、確実に列車の編成車両数および列車ドア数を検出して、安全にホームドアの開閉動作を行うことのできるホームドアシステムを提供する。
【解決手段】 距離画像センサ7から入力される各画素の距離値に基づいて画像生成部により生成された差分画像に基づいて列車ドア5の有無を検出する列車判定部51を備えた画像データ処理装置と、列車判定部51の判定結果に基づいて列車ドア5があると判定されたホームドア6に対してホームドア6の開閉動作を許可するように制御するホームドア制御装置9と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホームドアシステムに係り、特に、プレーナ型アクチュエータなどの二次元スキャナを用いた距離画像センサにより列車の列車ドアを検出して、安全にホームドアの開閉動作を行うことを可能としたホームドアシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、列車が停車するプラットホームには、プラットホームからの落下などを防止して、列車への安全な乗降を行うことができるように、列車の列車ドアと同期して開閉動作されるホームドアを備えたホームドア装置が設置されている。
【0003】
しかしながら、1つの路線を走行する列車には、例えば、列車の編成車両数が異なる場合や1つの車両に対して、例えば、2ドア、3ドア、4ドアなど列車ドアのドア数が異なる場合があり、このような複数種類の列車に対してホームドア装置のホームドアを対応させようとした場合、列車や列車ドアが存在しない箇所のホームドアを開放すると極めて危険であるため、列車ドアが存在している箇所のホームドアのみを適正に開閉動作させる必要がある。
【0004】
そのため、従来から、ホームドア装置に、乗降口の数、位置および幅寸法が異なる各種形式の列車の形式情報をあらかじめ登録した個別制御装置を設け、列車側からホームドア装置に「開」指令を伝送する時、併せて列車の形式情報を個別制御装置に伝送し、この列車の形式情報に応じて個別制御装置によりホームドアの開閉を行うようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−029422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、列車の形式情報をあらかじめ登録する必要があるため、手間がかかり、しかも、列車側にも列車の形式情報を伝送するためのシステムを搭載する必要があり、システム構成が大掛かりなものとなり、設備コストも高くなってしまうという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、列車側に専用のシステムを搭載することなく、確実に列車の編成車両数および列車ドア数を検出して、安全にホームドアの開閉動作を行うことのできるホームドアシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るホームドアシステムは、駅のプラットホームに停車する列車の列車ドアに対応して設置されたホームドアを有するホームドア装置と、
前記列車の少なくとも列車ドア部分に光を走査させて各画素の距離値を検出する距離画像センサと、
前記距離画像センサから入力される各画素の距離値に基づいて背景画像を生成するとともにこの背景画像の距離値に基づいて差分画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部により生成された差分画像に基づいて少なくとも前記列車ドアの有無を検出する列車判定部と、を備えた画像データ処理装置と、
前記列車判定部の判定結果に基づいて前記列車ドアがあると判定された前記ホームドアに対して前記ホームドアの開閉動作を許可するように制御するホームドア制御装置と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記距離画像センサは、プレーナ型アクチュエータからなり、前記二次元領域に光を走査させる二次元スキャナを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記光は、レーザ光であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホームドアシステム。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記距離画像センサは、前記ホームドア装置のホームドアごとに設置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項において、前記距離画像センサは、プラットホームの少なくとも最後部にのみ設置されており、前記距離画像センサは、前記プラットホームに侵入する前記列車の前記列車ドアを検出するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項において、前記プラットホームに異常停車した前記列車の先端部または後端部を検出する列車検出用センサを設置し、前記ホームドア制御装置は、前記列車検出用センサより前記列車の異常停車を検出した場合に、前記ホームドアの開閉動作を許可しないように制御するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、画像生成部により、距離画像センサから入力される各画素の距離値に基づいて背景画像および差分画像を生成するとともに、この差分画像に基づいて、列車判定部により、少なくとも列車ドアの有無を判定し、列車判定部の判定結果に基づいて、ホームドア制御装置により、列車ドアがあると判定されたホームドアのみを開閉動作できるように制御するようにしているので、プラットホームに停車した列車が何両編成であるか、または、ドア数がいくつであるかにかかわらず、列車ドアに対するホームドアのみを開閉動作可能に制御することができる。その結果、適正にホームドアの開閉動作を行うことができ、安全性を著しく高めることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、距離画像センサは、プレーナ型アクチュエータからなり、二次元領域に光を走査させる二次元スキャナを備えているので、光の走査を高速にかつ確実に行うことができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、距離画像センサによりレーザ光を照射してその反射光を受光することにより、距離画像を生成するものであるため、例えば、距離画像センサの受光素子に太陽光などの外光が入射した場合でも、確実にレーザ光の受光を行うことができ、外部要因に影響を受けることなく、正確な距離画像を生成することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、距離画像センサを、ホームドア装置のホームドアごとに設置するようにしているので、ホームドアごとに列車の有無および列車ドアの有無を検出して、適正にホームドアの開閉動作を行うことができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、距離画像センサを、プラットホームの少なくとも最後部に設置するようにしているので、プラットホームの最後部のセンサにより、プラットホームに侵入する列車のすべての編成車両数および1両ごとの列車ドアのドア数を検出して、適正にホームドアの開閉動作を行うことができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、プラットホームに異常停車した列車の先端部または後端部を検出する列車検出用センサを設置し、ホームドア制御装置により、列車検出用センサより列車の異常停車を検出した場合に、ホームドアの開閉動作を許可しないように制御するようにしているので、プラットホームに列車が異常停止した場合に、ホームドアが開いてしまうことを確実に防止することができ、安全性を著しく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るホームドアシステムの第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係るホームドアシステムに用いられる距離画像センサの実施形態を示す構成図である。
【図3】本発明に係るホームドアシステムの距離画像センサに用いられる二次元スキャナの実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明に係るホームドアシステムに用いられる画像データ処理装置の実施形態を示す構成図である。
【図5】本発明に係るホームドアシステムにおける列車ドアおよび列車の検出状態を示す説明図である。
【図6】本発明に係るホームドアシステムの画像処理動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係るホームドアシステムの第2実施形態の列車の正常停止状態における列車ドアおよび列車の検出状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係るホームドアシステムの第2実施形態の列車の異常停止状態における列車ドアおよび列車の検出状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係るホームドアシステムの第2実施形態の変形例を示す説明図である。
【図10】本発明に係るホームドアシステムの第3実施形態における列車ドアおよび列車の検出状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明に係るホームドアシステムの第1実施形態を示したものであり、列車1が停車するプラットホーム2には、ホームドア装置3が設置されており、ホームドア装置3は、プラットホーム2と列車1とを仕切る仕切り壁4と、列車ドア5に対応する位置に開閉自在に設置されたホームドア6とから構成されている。ここで、列車には、例えば、2ドア、3ドア、4ドアなどの複数種類の列車ドア5の配置があるが、本実施形態においては、ホームドア装置3のホームドア6は、複数の列車ドア5の配置に対応することができるように複数設置されている。これは、対応する列車ドア5の位置にそれぞれホームドア6を設置するようにしてもよいし、例えば、3ドアと4ドアなど列車ドア5の位置が重なる箇所においては、1つのホームドア6でその開閉量を調整することにより、複数の列車ドア5に対応させるようにしてもよい。
【0023】
本実施形態においては、ホームドアシステムを構成する距離画像センサ7は、ホームドア装置3の仕切り壁4と列車1との間に各ホームドア6ごとに設置されており、距離画像センサ7は、プラットホーム2に停車した列車1のホームドア6に対応する列車ドア5部分を走査することができるようになっている。また、距離画像センサ7には、画像データ処理装置8が接続されており、画像データ処理装置8には、ホームドア装置3の制御を行うホームドア制御装置9が接続されている。
【0024】
次に、距離画像センサ7について説明する。
【0025】
図2に示すように、距離画像センサ7は、二次元スキャナ10を備えており、本実施形態においては、二次元スキャナ10として、プレーナ型アクチュエータを用いている。
【0026】
本実施形態の二次元スキャナ10は、図3に示すように、図示しないデバイス基板上に設置された枠状の固定部11を備えている。この固定部11の内側には、第2トーションバー12を介して枠状の第2可動部13が揺動自在に支持されており、この第2可動部13の内側には、第1トーションバー14を介して第1可動部15が揺動自在に支持されている。すなわち、第1可動部15と第2可動部13とは、第2トーションバー12を介して互いに直交する方向に揺動自在とされており、第1可動部15と第2可動部13とは、異なる駆動周波数で駆動されるように構成されている。なお、これら固定部11、第2可動部13、第1可動部15、第1トーションバー14および第2トーションバー12は、一体的に形成されている。
【0027】
第1可動部15上には、第1可動部15を駆動するための図示しない駆動コイルが、第2可動部13上には、第2可動部13を駆動するための図示しない駆動コイルがそれぞれ設けられており、固定部11の周囲には、第1可動部15を挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される二対の静磁界発生部材(図示せず)が配置されている。なお、静磁界発生部材は、永久磁石でも電磁石でもよい。
【0028】
また、図2に示すように、距離画像センサ7は、制御部20を備えており、この制御部20には、レーザ光およびスキャナを制御するためのレーザコントローラ21が設けられている。制御部20には、レーザコントローラ21からの内軸駆動信号および外軸駆動信号が入力されるスキャナドライバ22が設けられており、このスキャナドライバ22は、二次元スキャナ10に対して、レーザコントローラ21から出力される内軸駆動信号および外軸駆動信号に基づいて、第1可動部15を駆動させるための内軸駆動パルスを出力するとともに、第2可動部13を駆動させるための外軸駆動パルスを出力するように構成されている。制御部20のレーザコントローラ21には、二次元スキャナ10の図示しない検出装置から第1可動部15および第2可動部13の駆動位置を検出するためのスキャナ同期信号がフィルタ23を介して送られるように構成されている。
【0029】
また、距離画像センサ7は、レーザ投光部24を備えており、レーザ投光部24には、レーザ光を発光するためのレーザ素子25が設けられている。レーザ投光部24には、レーザコントローラ21から送られるレーザ放射タイミング信号に基づいてレーザ素子25に投光駆動パルスを出力するレーザドライバ26が設けられている。レーザ投光部24には、レーザ素子25から出射されるレーザ光をビームスプリッタ27を介して二次元スキャナ10に投光させるための、例えば、ミラーやレンズなどで構成される投光光学装置28が設けられている。さらに、投光光学装置28には、レーザ光の投光タイミングを監視する発光モニタ29が接続されている。発光モニタ29は、図示しない受光素子を備えており、この受光素子により、投光光学装置28から投光されるレーザ光を受光することにより、投光光学装置28による投光タイミングを監視するようになっている。
【0030】
さらに、距離画像センサ7は、レーザ受光部30を備えており、レーザ受光部30には、レーザ光を受光するための受光素子31が設けられている。レーザ受光部30には、レーザ素子25から投光光学装置28を介して投光され二次元スキャナ10で反射されたレーザ光を受光素子31に受光させるための、例えば、ミラーやレンズなどで構成される受光光学装置32が設けられている。レーザ受光部30には、受光素子31からの受光信号を増幅するプリアンプ33が設けられている。
【0031】
距離画像センサ7は、測距計測部34を備えており、この測距計測部34には、レーザ受光部30のプリアンプ33から送られる受光信号を検出するための共振回路35および立ち上がり回路36がそれぞれ設けられている。共振回路35は、主として測定する距離が比較的長い場合に用いられ、立ち上がり回路36は、主として測定する距離が比較的短い場合に用いられるものである。測距計測部34には、共振回路35および立ち上がり回路36を介して送られる受光信号に基づいて受光素子31により受光したタイミングを生成するストップタイミング生成回路37,37が設けられている。測距計測部34には、ストップタイミング生成回路37により生成された受光タイミングと、発光モニタ29から送られる投光タイミングとから、投光タイミングから受光タイミングまでの時間を計測するための時間計測回路38,38が設けられている。
【0032】
また、制御部20には、距離値算出回路39が設けられており、時間計測回路38による時間データは、A/D変換器40,40を介して距離値算出回路39に送られるようになっている。そして、距離値算出回路39は、時間計測回路38による時間データに基づいて、距離値を取得することができるように構成されており、取得した距離値は、外部インタフェース41を介して後述する画像データ処理装置8に出力されるように構成されている。すなわち、二次元スキャナ10の第1可動部15および第2可動部13を動作させながら、この二次元スキャナ10にレーザ投光部24からレーザ光を投光させることにより、二次元領域でレーザ光を走査させ、二次元スキャナ10から投光されて物体で反射されたレーザ光を二次元スキャナ10で反射されてレーザ受光部30により受光することにより、二次元スキャナ10により走査した範囲における各画素における距離値を取得することができるものである。なお、レーザ受光部30には、プリアンプ33から出力される受光信号をA/D変換して受光量として距離値算出回路39に送るA/D変換器42が設けられている。
【0033】
さらに、制御部20には、制御部20および測距計測部34に電源を供給するための主電源43が設けられており、さらに、主電源43からの電源供給を受けてレーザドライバ26、プリアンプ33およびスキャナドライバ22に電源を供給するHV電源44が設けられている。
【0034】
次に、ホームドアシステムの画像データ処理装置8について図4を参照して説明する。
【0035】
画像データ処理装置8は、前述の距離画像センサ7から入力される距離値に基づいて画像を生成する画像生成部50を備えている。この画像生成部50は、二次元スキャナ10により走査された各画素において取得された距離値から二次元のフレーム画像を生成することができるものであり、二次元領域を1回走査することで1つのフレーム画像を取得することができるものである。画像生成部50は、これら各画素における距離値を、二次元スキャナ10による各走査毎に記憶するように構成されており、各画素において距離値の最も大きい値、すなわち最も遠い距離値により生成される画像を背景画像として記憶するように構成されている。そして、画像生成部50は、各画素における最も遠い距離値を基準として、この距離値と、新たに取得された距離値との差分を求めることにより、差分画像を生成するように構成されている。
【0036】
また、画像データ処理装置8には、画像生成部50により生成された差分画像に基づいて列車ドア5の有無を判定するための列車判定部51が設けられている。図1中破線円形部分に示すように、通常、列車ドア5と列車1の外壁面との境界部分には、列車1の外壁面に対して列車ドア5が内側に位置するように段差部が形成されていることから、列車判定部51は、差分画像に基づいて、その距離値の差から列車ドア5の段差部を検出することにより列車ドア5の有無を判定するように構成されている。すなわち、図5に示すように、列車ドア5の段差部を検出した場合には、対応するホームドア6部分に列車ドア5が存在すると判定するものであり、列車ドア5の段差部を検出することができない場合には、対応するホームドア6部分に列車ドア5が存在しないものと判定するものである。
【0037】
また、画像データ処理装置8の列車判定部51による判定結果は、ホームドア制御装置9に出力されるように構成されている。そして、ホームドア制御装置9においては、各距離画像センサ7による列車ドア5の有無の判定結果に基づいて、対応する列車ドア5が正面近傍にあると判定されたホームドア6に対してホームドア6の開閉動作を許可するものである。これにより、プラットホーム2に停車した列車1が何両編成であるか、または、ドア数がいくつであるかにかかわらず、列車ドア5に対するホームドア6のみを開閉動作可能に制御することができるものである。
【0038】
なお、距離画像センサ7により、列車ドア5の有無の他に列車1の有無を検出するようにしてもよい。この場合には、例えば、列車1の各車両の連結位置を検出することにより編成両数を判定したり、列車1の停止位置を判定することが可能となり、さらに多くの情報を得ることが可能となる。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0040】
まず、レーザコントローラ21からスキャナドライバ22に内軸駆動信号および外軸駆動信号を出力させることにより、スキャナドライバ22から二次元スキャナ10に内軸駆動パルスおよび外軸駆動パルスを出力させることにより、二次元スキャナ10の駆動コイルに通電させ、これにより、第1可動部15および第2可動部13を揺動動作させる。
【0041】
この状態で、レーザコントローラ21からレーザ投光部24にレーザ放射タイミング信号を出力させ、レーザドライバ26から投光駆動パルスをレーザ素子25に出力させることにより、レーザ素子25から投光光学装置28を介してレーザ光が二次元スキャナ10に投光される。
【0042】
そして、二次元スキャナ10により二次元領域でレーザ光を走査させ、二次元スキャナ10から投光されて物体で反射されたレーザ光は、二次元スキャナ10で反射されて受光光学装置32を介してレーザ受光部30により受光される。この受光信号は、共振回路35または立ち上がり回路36を介してストップタイミング生成回路37に出力され、時間計測回路38により、ストップタイミング生成回路37により生成された受光タイミングと、発光モニタ29から送られる投光タイミングとから、投光タイミングから受光タイミングまでの時間が計測されて距離値算出回路39に出力される。そして、距離値算出回路39により、時間計測回路38による時間データに基づいて、二次元スキャナ10により走査した範囲における各画素における距離値を算出し、この距離値は、画像データ処理装置8に送られる。
【0043】
次に、画像データ処理装置8による画像処理動作について図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0044】
画像データ処理装置8により距離値が取得されると(ST1)、画像生成部50により、各画素における距離値から背景画像を生成する(ST2)。そして、画像生成部50により、各画素における最も遠い距離値を基準として、この距離値と、新たに取得された距離値との差分を求めることにより、差分画像を生成する(ST3)。
【0045】
その後、差分画像におけるノイズを除去した後(ST4)、列車判定部51により、列車ドア5の有無を検出する(ST5)。そして、列車判定部51の判定結果に基づいて、ホームドア制御装置9により、列車ドア5があると判定されたホームドア6のみを開閉動作できるように制御するものである(ST6)。
【0046】
以上述べたように、本実施形態においては、列車判定部51により、距離画像センサ7による距離値に基づいて生成された距離画像に基づいて列車ドア5の有無を判定し、列車判定部51の判定結果に基づいて、ホームドア制御装置9により、列車ドア5があると判定されたホームドア6のみを開閉動作できるように制御するようにしているので、プラットホーム2に停車した列車1が何両編成であるか、または、ドア数がいくつであるかにかかわらず、列車ドア5に対するホームドア6のみを開閉動作可能に制御することができる。その結果、適正にホームドア6の開閉動作を行うことができ、安全性を著しく高めることができる。
【0047】
また、距離画像センサ7によりレーザ光を照射してその反射光を受光することにより、距離画像を生成するものであるため、例えば、距離画像センサ7の受光素子31に太陽光などの外光が入射した場合でも、確実にレーザ光の受光を行うことができ、外部要因に影響を受けることなく、正確な距離画像を生成することができる。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0049】
図7および図8は本発明の第2実施形態を示したものであり、本実施形態においては、ホームドア装置3のホームドア6部分以外に、プラットホーム2の最前部および最後部にも距離画像センサ7を設置するようにしたものである。
【0050】
本実施形態においては、列車判定部51は、プラットホーム2の最前部および最後部に設置された距離画像センサ7による差分画像に基づいて列車1の有無を検出し、図8に示すように、列車1が存在しないものと判定した場合には、ホームドア制御装置9により適正に列車1が停車されたものと判定するものである。一方、図8に示すように、最前部に設置した距離画像センサ7による背景画像から列車判定部51により、列車1が存在すると判定した場合には、列車1がプラットホーム2を越えて停車した場合であると判定するものである。さらに、最後部に設置した距離画像センサ7による背景画像から列車判定部51により、列車1が存在すると判定した場合には、列車1がプラットホーム2に到達しないで停車した場合であると判定するものである。なお、プラットホーム2の最前部および最後部において、列車1の有無を検出するセンサとしては、距離画像センサ7ではなく、例えば、光を照射してその反射光により物体の有無を検出する光センサなどの簡易なセンサを用いるようにしてもよい。
【0051】
そして、ホームドア制御装置9は、列車1がプラットホーム2を超えて停車した場合や、プラットホーム2に到達しないで停車した場合であると判定された場合には、いずれの場合も、ホームドア6の開閉動作は行わないように制御するものである。
【0052】
なお、例えば、プラットホーム2よりも列車1の長さが長い場合で、列車1の最前部がプラットホーム2の前端からはみ出して停車することが正常停車となる場合には、図9に示すように、例えば、列車1がプラットホームからはみ出して正常に停車した状態で、列車1の先端部が存在しない位置に距離画像センサ7を設置するようにすればよい。これにより、列車1が正常停車位置を越えて停車したことを検出することが可能となる。また、列車1の後端部がプラットホーム2の後端からはみ出して停車することが正常停車となる場合には、正常停車時に列車1の後端部が存在しない位置に距離画像センサ7を設置することにより、同様に、列車1が正常停車位置に到達しないで停車したことを検出することが可能となる。
【0053】
その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
したがって、本実施形態においては、列車判定部51により、プラットホーム2の最前部および最後部に設置された距離画像センサ7による差分画像に基づいて列車1の有無を検出し、列車1が存在した場合には、列車1が異常停止したものと判定し、ホームドア6が開閉動作しないように制御するようにしているので、プラットホーム2に列車1が異常停止した場合に、ホームドア6が開いてしまうことを確実に防止することができ、安全性を著しく高めることができる。
【0055】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0056】
図10は本発明の第3実施形態を示したものであり、本実施形態においては、プラットホーム2の最前部および最後部のみに、距離画像センサ7を設置するようにしたものである。
【0057】
本実施形態においては、プラットホーム2の最後部に設置された距離画像センサ7は、プラットホーム2に入線してくる列車1に対してレーザ光を照射することにより、列車1の先頭部から後尾部までのすべての距離値を取得するように構成されている。そして、列車判定部51は、距離画像センサ7による差分画像に基づいて、プラットホーム2に入線してくる列車1の列車ドア5をすべて検出することにより、1両ごとの列車ドア5のドア数を判定するとともに、列車1の編成車両の間に形成される凹部を検出することにより、列車1が何両編成であるかを判定するように構成されている。
【0058】
そして、ホームドア制御装置9は、列車判定部51により判定された列車1の編成車両数および列車ドア5のドア数に基づいて、対応するホームドア6の開閉動作を許可するように制御するものである。なお、本実施形態においては、プラットホーム2の最前部の距離画像センサ7は、前記第2実施形態と同様に、列車1の異常停止を検出するために用いられるものである。
【0059】
したがって、本実施形態においては、列車判定部51により、プラットホーム2の最後部に設置された距離画像センサ7による差分画像に基づいて列車1の編成車両数および列車ドア5のドア数を検出し、この列車1の編成車両数および列車ドア5のドア数に応じたホームドア6の開閉動作を許可するように制御するようにしているので、プラットホーム2に停車した列車1が何両編成であるか、または、ドア数がいくつであるかにかかわらず、列車ドア5に対するホームドア6のみを開閉動作可能に制御することができる。その結果、適正にホームドア6の開閉動作を行うことができ、安全性を著しく高めることができる。しかも、列車1の編成車両数および列車ドア5のドア数を1つの距離画像センサ7により検出するようにしているので、設備コストの低減を図ることができ、簡単な構成で、各種列車1にホームドア6を対応させることができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 列車
2 プラットホーム
3 ホームドア装置
4 仕切り壁
5 列車ドア
6 ホームドア
7 距離画像センサ
8 画像データ処理装置
9 ホームドア制御装置
10 二次元スキャナ
11 固定部
13 第2可動部
15 第1可動部
20 制御部
21 レーザコントローラ
22 スキャナドライバ
24 レーザ投光部
25 レーザ素子
26 レーザドライバ
28 投光光学装置
29 発光モニタ
30 レーザ受光部
31 受光素子
32 受光光学装置
34 測距計測部
37 ストップタイミング生成回路
38 時間計測回路
39 距離値算出回路
50 画像生成部
51 列車判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のプラットホームに停車する列車の列車ドアに対応して設置されたホームドアを有するホームドア装置と、
前記列車の少なくとも列車ドア部分に光を走査させて各画素の距離値を検出する距離画像センサと、
前記距離画像センサから入力される各画素の距離値に基づいて背景画像を生成するとともにこの背景画像の距離値に基づいて差分画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部により生成された差分画像に基づいて少なくとも前記列車ドアの有無を検出する列車判定部と、を備えた画像データ処理装置と、
前記列車判定部の判定結果に基づいて前記列車ドアがあると判定された前記ホームドアに対して前記ホームドアの開閉動作を許可するように制御するホームドア制御装置と、
を備えていることを特徴とするホームドアシステム。
【請求項2】
前記距離画像センサは、プレーナ型アクチュエータからなり、前記二次元領域に光を走査させる二次元スキャナを備えていることを特徴とする請求項1に記載のホームドアシステム。
【請求項3】
前記光は、レーザ光であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホームドアシステム。
【請求項4】
前記距離画像センサは、前記ホームドア装置のホームドアごとに設置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホームドアシステム。
【請求項5】
前記距離画像センサは、プラットホームの少なくとも最後部に設置されており、前記距離画像センサは、前記プラットホームに侵入する前記列車の前記列車ドアを検出するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のホームドアシステム。
【請求項6】
前記プラットホームに異常停車した前記列車の先端部または後端部を検出する列車検出用センサを設置し、前記ホームドア制御装置は、前記列車検出用センサより前記列車の異常停車を検出した場合に、前記ホームドアの開閉動作を許可しないように制御するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のホームドアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−20657(P2011−20657A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169928(P2009−169928)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】