説明

ボイラおよび低NOx燃焼方法

【課題】 装置の小型化と有害物質(NOx、CO、煤等)の低減を実現可能なボイラを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、環状に配列された水管群13,14,15を有する缶体10と、前記水管群13,14,15の中央部に配設されたバーナ20とを備えたボイラ1であって、前記水管群が複数列設けられ、内側水管群13の一部に外側水管群15内周面に連通するガス流路たる開口部が形成されており、前記バーナ20からの予混合ガスが前記内側水管群13の内周面に対して所定角度をなして噴出され、前記内側水管群13の軸方向に沿ったガスの流れが形成された後、前記ガス流路たる開口部を介して、前記内側水管群13と前記外側水管群15との間の環状ガス流路に沿ったガスの流れが形成されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラおよび低NOx燃焼方法に関するものである。詳しくは、本発明は、環状に配列された水管群を有する缶体と、水管群の中央部に配設されたバーナとを備えたボイラに関するものである。また、本発明は、予混合燃焼により生成されるガスを冷却することによりNOxを低減する低NOx燃焼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、環状に配列された水管群を有する缶体を備えたボイラはよく知られており、このようなボイラにおいては、一般的に、その水管群の中央部にバーナが配設されている。つまり、このような構成のボイラにおいては、環状に配列された水管群の中央部が、バーナから供給された燃料を燃焼させるための燃焼室として機能する。
【0003】
また、バーナの燃料としてガス燃料を用いる場合においては、燃焼性向上技術および有害物質(NOx、CO、煤等)の低減化技術に関して多くの提案がなされており(例えば、特許文献1参照)、実際に効果を得ている例もある。
【0004】
ところで、上述したような水管群を有するボイラは、その中央部に燃焼室を有する構造であるため、その小型化が困難であった。
【0005】
また、小型化を図るためには、ボイラ効率の向上、すなわち、熱回収量を高めることが必要となる。そのためには、燃焼ガスの流速を高めて熱伝達率を向上させる必要があるが、そうすると缶体圧損が高まるため、大型の送風機を設けなければならない。このように、大型の送風機を用いると、電力消費量を増大させることとなるため、総合的に判断してボイラ効率の向上を図ることとはならず、結果的に小型化を図ることもできない。
【0006】
さらに、特許文献1によれば、燃焼室内で燃焼ガスを循環させてCOや煤の発生量を少なくするとの記載があるが、これを実現するためには、燃焼室内に広い循環領域が必要となって、ボイラの小型化とは相反するものとなる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−56803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、装置の小型化と有害物質(NOx、CO、煤等)の低減を実現可能なボイラおよび低NOx燃焼方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、環状に配列された水管群を有する缶体と、前記水管群の中央部に配設されたバーナとを備えたボイラであって、前記バーナが予混合ガス噴出部を有し、前記予混合ガス噴出部から前記水管群の内周面に対して所定角度をなして、予混合ガスが噴出されることを特徴としている。ここで、「所定角度」とは、垂直のみならず、前記予混合ガスの噴出方向と前記水管群の内周面とが垂直から若干傾いている状態をも含む概念である(以下、特に説明しない場合は同様の概念である。)。例えば、前記予混合ガスの噴出方向と前記水管群の内周面とが、垂直から30°程度傾いている場合を含んでいる。また、本発明の第一の態様においては、前記予混合ガスの噴出方向と前記水管群の内周面とが、垂直から15°以下の範囲で傾いている構成が好ましい。より好ましくは、前記予混合ガス噴出部から前記水管群の内周面に対して垂直に、予混合ガスが噴出されることである。
【0010】
このような構成によれば、前記水管群の中央部に設けられたバーナから前記水管群内周面全体に放射状に予混合ガスを噴出させることによって、バーナにて形成される火炎を効果的に冷却することができる。つまり、かかる構成によれば、燃焼反応中のガスの温度を積極的に抑制して、NOxの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、環状に配列された水管群を有する缶体と、前記水管群の中央部に配設されたバーナとを備えたボイラであって、前記水管群が複数列設けられ、内側水管群の一部に外側水管群内周面に連通するガス流路が形成されており、前記バーナからの予混合ガスが前記内側水管群の内周面に対して所定角度をなして噴出され、前記内側水管群の軸方向に沿ったガス(ここで、「ガス」とは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの少なくとも一方を含む概念であり、燃焼ガスと称することもできる。つまり、「ガス」とは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの両方を有する場合、燃焼反応中のガスのみを有する場合、あるいは燃焼反応が完了したガスのみを有する場合の、いずれをも含む概念である。以下、特に説明しない場合は同様の概念である。)の流れが形成された後、前記ガス流路を介して、前記内側水管群と前記外側水管群との間の環状ガス流路に沿ったガスの流れが形成されることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、前記水管群の中央部に設けられたバーナから前記水管群内周面全体に放射状に予混合ガスを噴出させることによって、バーナにて形成される火炎を効果的に冷却することができる。そして、その後、前記内側水管群の軸方向に沿ったガスの流れを形成し、さらに、前記ガス流路を介して、前記内側水管群と前記外側水管群との間の環状ガス流路に沿ったガスの流れを形成することによって、燃焼反応が促進されて、COの酸化と共に効果的に熱回収を図ることができる。また、このような構成によれば、燃焼反応中のガスは前記内側水管群の軸方向に沿った流れとなるため、前記バーナが安定した燃焼状態を維持可能であれば、特に広い燃焼室を必要としない。つまり、かかる構成によれば、熱回収を効果的に行い、広い燃焼室を必要としないため、効率的に装置の小型化を実現できる。したがって、このような構成によれば、NOxおよびCOの低減と共に、装置の小型化を図ることが可能なボイラを得ることができる。
【0013】
さらに、本発明の第二の態様においては、前記環状ガス流路内および前記環状ガス流路の後流側の少なくとも一方に、伝熱促進体が設けられている構成が好ましい。
【0014】
この好ましい構成によれば、前記伝熱促進体を設けることによって、より効果的に熱回収を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、前記環状に配列された水管群が3列以上設けられている構成が好ましい。
【0016】
さらに、本発明の第三の態様は、環状に配列された水管群を有する缶体と、前記水管群の中央部に配設されたバーナとを備えたボイラであって、前記バーナが予混合ガスを略水平に噴出すべく構成されており、前記バーナが前記水管群の内周面に近接して設けられていることを特徴としている。つまり、本発明の第三の態様は、前記バーナからの予混合ガスが前記水管群の内周面に対して略垂直に噴出される構成であって、この予混合ガスを噴出する前記バーナと前記水管群の内周面とが近接していることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、前記バーナからのガスが前記水管群によって直ちに冷却されるため、NOxの低減を図ることができる。加えて、前記バーナ(予混合ガス噴出部)に近接して前記水管群が設けられているため、ボイラをより小型化できる。
【0018】
また、本発明は、予混合燃焼により生成されるガスを冷却することによりNOxを低減する低NOx燃焼方法であって、前記ガスを冷却部に衝突させる工程(衝突冷却工程)と、前記冷却部に沿った前記ガスの流れを形成する工程(接触流動冷却工程)とを備えたことを特徴としている。
【0019】
このような構成にかかる低NOx燃焼方法によれば、衝突冷却工程と接触流動冷却工程とを有しているため、ガス温度を効果的に抑制して(低減させて)、低NOx化を図ることができる。
【0020】
ここで、冷却部とは、ボイラを構成する一つ一つの水管は勿論のこと、複数の水管にて構成される水管群も含み、冷却部の形状は平面状であっても、凹凸を有していても、また円筒状であってもよい。
【0021】
さらに、上記低NOx燃焼方法においては、衝突冷却工程と接触流動冷却工程とが連続して行われる構成が好ましい。また、衝突冷却工程時においては、前記ガスが前記冷却部に対して所定角度をなして衝突する構成が好ましい。さらに、前記ガスが前記冷却部に対して面状に噴出される構成が好ましい。この低NOx燃焼方法は、ボイラ以外の燃焼装置、例えば、吸収式冷凍装置の再熱器にも適用可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装置の小型化と有害物質(NOx、CO、煤等)の低減を実現可能なボイラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態にかかるボイラについて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかるボイラの概略図を示したものである。ここで、図1は、本実施形態にかかるボイラの縦断面の説明図を示している。また、図2は、図1のII−II線に沿う横断面の説明図を示している。また、図3および図4は、本実施形態にかかるボイラに設けられたバーナの概略図を示したものである。ここで、図3は、本実施形態にかかるバーナの縦断面の説明図を示し、図4は、図3のIV−IV線に沿う横断面の説明図を示している。さらに、図5および図6は、本実施形態にかかるボイラの燃焼状態(ガスの流れ)の概略図を示したものである。ここで、図5は、本実施形態にかかるボイラの燃焼状態の縦断面の説明図を示し、図6は、図5のVI−VI線に沿う横断面の説明図を示している。ここで、「ガス」とは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの少なくとも一方を含む概念であり、燃焼ガスと称することもできる。つまり、「ガス」とは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの両方を有する場合、燃焼反応中のガスのみを有する場合、あるいは燃焼反応が完了したガスのみを有する場合の、いずれをも含む概念である。以下、特に説明しない場合は同様の概念である。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態にかかるボイラ1は、環状に配列された水管群を有する缶体10と、これらの水管群の中央部に配設されたバーナ20とを用いて構成されており、バーナ20上方位置には、燃焼用空気をバーナ20に供給する、ウインドボックス30が設けられている。
【0026】
缶体10は、上部ヘッダ11と下部ヘッダ12との間に複数の水管群(内側水管群13、中間水管群14、外側水管群15)を立設して構成されている。それぞれの水管群13,14,15は、略同心円上の環状に配列されており、内側水管群13から所定間隔を隔てて外側水管群15が設けられ、内側水管群13と外側水管群15との間に形成される環状ガス流路19内に、中間水管群14が設けられている。
【0027】
また、本実施形態においては、内側水管群13は、基本的に水管を密接させた状態で環状に構成されており、その一部に内側開口部16(本発明の「ガス流路」に相当)が設けられている。この内側開口部16は、内側水管群13内部で生成されたガスを環状ガス流路19に導くべく機能する。さらに、中間水管群14は、水管間に略均等の所定間隔を有した状態で環状に構成されている。また、外側水管群15は、水管間に略均等の所定間隔を有した状態で環状に構成されており、各水管間には、隣接する水管間の隙間をなくすべく連接されたフィン部17が設けられている。この外側水管群15の一部には、外側開口部18が設けられており、この外側開口部18は、燃焼反応のほぼ完了したガスを缶体外部に排出するための排出部として機能する。つまり、ガスは、外側開口部18に集められた後、缶体の下方位置に設けられた排気筒91を介して缶体外部に排出される。
【0028】
本実施形態にかかるボイラにおいては、後述すべく、バーナ20と内側水管群13とは、缶体10の小型化等のために、近接して設けられることが好ましく、具体的には、内側水管群13の内周面直径(同心状に配設された内側水管群13の内接円直径)Dと、バーナ20と内側水管群13との間隔tとが、以下の関係を有することが好ましい。
【0029】
(数1)
0.6 ≦ (D−2t)/D < 1.0
【0030】
なお、上記数1の「(D−2t)/D」の上限値は、バーナ20が内側水管群13にどれだけ近づくのかを示しており、近づけば近づくほど火炎が冷却され、NOxの低減効果が期待できる。したがって、バーナ20が安定して燃焼可能であれば、「(D−2t)/D」の値は大きいことが好ましく、バーナ20の燃焼性等を考慮すれば、0.95以下であることがより好ましい。
【0031】
内側水管群13の内周面直径Dと、バーナ20と内側水管群13との間隔tとを具体的に例示すれば、例えば、内周面直径Dとしては200mm〜2000mm程度、バーナ20と内側水管群13との間隔tとしては10mm〜150mm程度が好ましい。一例としては、内周面直径Dが400mmで、バーナ20と内側水管群13との間隔tが40mmである場合があげられる。
【0032】
また、本実施形態にかかるボイラにおいては、内側水管群13の内周面直径Dと、水管群の軸方向長さ(缶体10内に表出している水管の軸方向長さ)Lとが、以下の関係を有することが好ましい。
【0033】
(数2)
1.5 ≦ L/D ≦ 5.0
【0034】
内側水管群13の内周面直径Dと、水管群の軸方向長さLとを具体的に例示すれば、例えば、内周面直径Dとしては200mm〜2000mm程度、水管群の軸方向長さLとしては300mm〜3000mm程度が好ましい。一例としては、内周面直径Dが400mmで、水管群の軸方向長さLが820mmである場合があげられる。
【0035】
本実施形態にかかるボイラ1を構成するバーナ20は、図1および図2に示すように、内側水管群13に近接して設けられており、具体的には、図3および図4に示すような構成を有している。
【0036】
図3および図4においては、その詳細な構造は省略しているが、本実施形態にかかるバーナ20は、プレート間に後述の予混合ガスGの流路を形成するように複数のプレート(凹凸状または波板状プレートおよび平面プレート等)を積層した状態で、予混合ガスを噴出する予混合ガス噴出部21が構成されている。
【0037】
積層されるそれぞれのプレートには、所定数(本実施形態においては10個)の穴部22が設けられており、積層されたプレートを上下で挟持する上部板部25と下部板部26とにも、同数の穴部が設けられている。そして、積層されたプレートを上部板部25および下部板部26にて挟持した状態で、穴部22に連結棒部材23を挿通させ、連結棒部材23の上下をナット等の締結部材24にて締結して、バーナ20が構成される。
【0038】
また、本実施形態においては、その断面形状が図4に示すように十角形であるため、十面の面状の予混合ガス噴出部21を有するバーナ20となる。このようなバーナ20において、燃料(ガス燃料)と燃焼用空気とが予めミキシングされた予混合ガスGは、図3および図4の矢印にて示すように、バーナ20の内部からそれぞれの予混合ガス噴出部21を経て、放射状且つ面状に噴出されることとなる。
【0039】
本実施形態にかかるボイラは、以上のように構成されており、その構成に基づき、次のような作用効果を有する。以下、図1、図2、図3および図4に加え、図5および図6を用いて、その作用効果を具体的に説明する。
【0040】
本実施形態においては、以上のように、内側水管群13に近接して設けられたバーナ20から略水平に(内側水管群13に対しては略垂直に)予混合ガスが噴出されるため、その予混合ガスにパイロットバーナ(図示省略)で着火することによって、バーナ20の予混合ガス噴出部21から、内側水管群13に直接接触するような面状の火炎Fが形成されることとなる。
【0041】
そして、本実施形態においては、缶体10形状およびバーナ20の構成に基づき、図5および図6に示すように、ボイラ1の缶体10内をガスFGが流動する。
【0042】
まず、ボイラ1の縦断面方向におけるガスの流動状態に着目すれば、図5に示すように、バーナ20から火炎Fを形成しながら、ガスFG1が略水平に噴出され、その燃焼反応中のガスFG1は、内側水管群13の内周面(本発明の「冷却部」に相当)に対して略垂直に衝突する(本発明の「ガスを冷却部に衝突させる工程」(衝突冷却工程)に相当)。次いで、内側水管群13の内周面に衝突したガスFG1は、内側水管群13の内周面に沿って軸方向下方側に流動するガスFG2となる(本発明の「冷却部に沿ったガスの流れを形成する工程」(接触流動冷却工程)に相当)。ここで、ガスFG1は、各水管の凹凸を含んだ領域に衝突して、その後、ガスFG2は、この凹凸を含んだ領域に沿って接触しながら流動する。したがって、本実施形態においては、各水管が密接して構成された凹凸を含んだ内側水管群13の内周面が、本発明の「冷却部」に相当する。
【0043】
また、ボイラ1の横断面方向におけるガスの流動状態に着目すれば、図6に示すように、予混合ガス噴出部21から略水平に噴出されたガスFG1は、内側水管群13の内周面に対して略垂直に衝突した後、内周面に沿って流動するガスFG3となって、このガスFG3は、内側水管群13の開口部16に流出する。開口部16を経て環状ガス流路19に流入したガスは、主に、ガスFG4として内側水管群13と中間水管群14との間を流動し、ガスFG5として中間水管群14と外側水管群15との間を流動した後、外側開口部18および排気筒91を経て缶体10外部に排出される。
【0044】
本実施形態にかかるボイラにおいては、缶体10内にて以上のようにガスが流動するため、装置の小型化と有害物質(NOx、CO、煤等)の低減を図ることができる。
【0045】
具体的には、まず、火炎Fを伴うガスFG1を即座に内側水管群13の内周面に衝突させて(衝突冷却工程)、内側水管群13の内周面(管壁)に沿ったガスFG2の流れを形成することによって(接触流動冷却工程)、ガス温度(特に燃焼反応中のガス温度)を抑制しつつ、効果的に熱回収を行うことができる。
【0046】
従来技術にかかるボイラ(例えば、特許文献1に記載のボイラ)においては、缶体の燃焼室内で火炎を下方向に形成するため、燃焼室に隣接する水管群における熱回収は放射によるもののみであった。したがって、従来技術によれば、火炎生成直後における回収熱量が小さく、水管群の後流側に多くの対流伝熱部を設けて積極的に熱回収を行う必要があった。また、このような従来の構成によれば、火炎生成直後の温度上昇を抑えることができないため、NOx生成量が大きくなる。さらに、水管群の後流側に多くの対流伝熱部を設ける必要があるため、装置が大型化する。
【0047】
これに対し、本実施形態にかかるボイラにおいては、上述したように、火炎Fを伴うガスFG1を即座に内側水管群13の内周面に衝突させるため、火炎F等が効果的に冷却されて(火炎等の温度上昇を抑制するため)、NOxの生成量を低減することができる。また、火炎Fを伴うガスFG1を内側水管群13の内周面に衝突させた後、内側水管群13の内周面(管壁)に沿った燃焼反応中のガスFG2の流れが形成されるため、内側水管群13内周面においては、放射のみならず、対流熱伝達が効果的に行われることとなる。すなわち、この内側水管群13内周面が対流伝熱部として機能することとなるため、ガス温度を抑制しつつ、効率よく熱回収を行うことができる。
【0048】
さらに、本実施形態においては、内側水管群13内部から内側開口部16を経て流出したガスに含まれるCOが、環状ガス流路19内にて酸化される。したがって、本実施形態によれば、外側開口部18から排出されるガス中のCOの低減も図ることができる。加えて、この環状ガス流路19内には、中間水管群14も設けられているため、熱回収も促進することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態にかかるボイラは、内側水管群13に近接してバーナ20を設け(つまり、水管群13,14,15を縮径させて)、バーナ20からの予混合ガスを内側水管群13に対して略垂直に衝突させる構成であるため、上述したようなガスの流れを形成させ得る。したがって、本実施形態によれば、火炎形成直後における火炎等の冷却によって低NOx化を図り(具体的には、従来の丸型ボイラと比較して(当社比)、NOx値を約1/2に低減可能となった)、環状ガス流路内におけるガス流速の低下によってガスの酸化を促進させて低CO化を図ることができる。また、本実施形態によれば、ガス流動の改善(ガスFG2の内側水管群13の軸方向流れ)、および環状ガス流路内構造(中間水管群14の存在)等によって、効率的な熱回収を実現すると共に、水管群13,14,15を縮径させているため、効果的にボイラの小型化を実現することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
上記実施形態においては、中間水管群14が全て通常の水管(特にフィン等が設けられていない水管(ベア管))を用いて構成された場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、図7に示すように、中間水管群14の一部の水管として、エロフィン管14Aを用いてもよい(ここで図7は、他の実施形態における図2に相当する図である。)。エロフィン管14Aにはその周囲にフィン部41(本発明の「伝熱促進体」に相当)が設けられているため、環状ガス流路19内における伝熱面積が増大することとなる。したがって、このような構成によれば、熱回収量が高まると共に、ガス流速を低下させてCOの酸化を促進させることができる。
【0052】
なお、本発明にかかる伝熱促進体としては、上述したエロフィン管14Aのフィン部41の他に、セレートフィン(セレートフィン管)、スパインフィン(スパインフィン管)、スタッドフィン(スタッドフィン管)、あるいは横ひれ(横ひれ水管)等も適用可能である。
【0053】
また、上記実施形態においては、略同心円状に三列の水管群を配設した缶体を用いてボイラを構成する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、必要に応じて、二列あるいは四列以上の水管群を配設して缶体を構成してもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態において、缶体10は、略同心円状に配列された内側水管群13、中間水管群14、および外側水管群15を用いて構成される場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、缶体を構成する水管群の配設状態は必要に応じて変更可能である。したがって、例えば、図8および図9に示すような配列の水管群を有する缶体を用いてもよい(ここで図8および図9は、それぞれ他の実施形態における図2に相当する図である。)。
【0055】
図8および図9は、それぞれ他の実施形態にかかるボイラの横断面の説明図を示したものである。
【0056】
図8は、ひらがなの「の」の字を想起させる「の字」水管群51と、このの字水管群51の間隙ガス流路52中に配設された間隙水管群53とを用いて缶体が構成されている。の字水管群51は、隣接する水管同士が密接状態に配設された第一水管51Aによる水管群と、所定の間隔を有しつつ水管間をフィン部51Cにて連接された第二水管51Bによる水管群とを用いて構成されている。そして、上述したように、の字水管群51には間隙ガス流路52が設けられており、バーナ20にて生ずるガスは、この間隙ガス流路52および缶体の下方位置に設けられた排気筒92を介して缶体外に排出される。間隙ガス流路52内に配設された間隙水管群53は、所定間隔を有しつつ配設された第三水管53Aによる水管群と、所定間隔を有しつつ配設されたエロフィン管53Bによる水管群とを用いて構成されている。
【0057】
図9は、略同心円状に配設された内側水管群55と外側水管群56とを用いて、缶体が構成されている。内側水管群55は、二箇所の開口部57,58を設けた部分以外は、密接状態で配設された通常の水管(ベア管)55Aを用いて構成された水管群である。また、外側水管群56は、所定間隔を有しつつ配設されたエロフィン管56Aによる水管群である。さらに、この外側水管群56の外側には、ガス案内用カバー59が配設されている。この図9に示した缶体においては、バーナ20にて生ずるガスは、内側水管群55の内周面に衝突して、この内周面に沿って流動した後、開口部57,58を介して外側水管群56に達する。外側水管群56に達したガスは、その後、外側水管群56を構成する各エロフィン管56A間の隙間を経てガス案内用カバー59に達する。そして、ガスは、ガス案内用カバー59に沿って流動した後、缶体の下方位置に設けられている二つの排気筒93,94を介して缶体外部に排出される。この二つの排気筒93,94は、集合排気筒(図示省略)に接続されている。
【0058】
図8および図9にて示した缶体を用いた場合であっても、図1から図6を用いて説明した実施形態と同様に、バーナ20と水管群(の字水管群51、内側水管群55)の内周面とを近接させ、バーナ20から水管群の内周面に対して略垂直に予混合ガスを噴出させ、ガスの効果的な流動状態(例えば、図5および図6にて説明したような流動状態)を形成させれば、装置の小型化と有害物質の低減を実施可能なボイラを得ることができる。なお、この図8および図9においては、それぞれ水管群の一部にエロフィン管53B,56Aを用いた場合について説明しているが、これらは必要に応じて(例えば、熱回収量の調整等のために)、通常のベア管を用いて構成してもよい。また、この図8および図9に示した部分以外についても、熱回収量増大等のために、必要に応じてエロフィン管を採用してもよい。
【0059】
さらに、本発明にかかるバーナ形状は、上記実施形態の形状に限定されるものではなく、水管群の内周面に近接させた状態で、略水平に(水管内周面に対しては略垂直に)予混合ガスを噴出可能であれば、如何なる形状であってもよい(例えば、特開平11−141815号公報に示されるバーナ形状であってもよい)。したがって、例えば、図10に示すように、予混合ガス噴出部81が若干傾斜しているバーナ80を用いてもよい。この図10は、バーナ80以外は、図1等と同様の構成要素を有するボイラ60の縦断面の説明図である。なお、このバーナ80は、図3および図4等にて説明したバーナ20と略同様の構成を有しており、傾斜した予混合ガス噴出部81を構成するために、積層させるプレートの大きさが上から下になるに従って小さくなる点が異なる。そして、このバーナ80は、予混合ガスの噴出方向と水管群の内周面とが、垂直から15°程度傾くように構成されている。
【0060】
本発明によれば、この図10に示したようなバーナ80を用いた場合であっても、バーナ80と内側水管群13の内周面とを近接させ、バーナ80から略水平に(内側水管群13の内周面に対して略垂直に)予混合ガスを噴出させ、ガスの効果的な流動状態(例えば、図5および図6にて説明したような流動状態)を形成させれば、装置の小型化と有害物質の低減を実施可能なボイラを得ることができる。
【0061】
また、上述した各実施形態においては、図5および図6にて説明したガスの流動状態(ガスが内側水管群内周面に衝突した後に、内側水管群の軸方向に流動する状態)を形成するために、内側水管群の一部(一箇所あるいは二箇所)以外は、隣接する水管同士が密接して配設された構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。したがって、例えば、水管同士はある間隔を有して配設し、各水管隙間に縦ひれ等を設けるような構成としてもよい。このような構成であれば、水管同士は離間していても縦ひれ等を設けることによって内側水管群内周面の隙間が塞がれた状態となるので、先に説明した種々の実施形態と同様に、図5および図6にて説明したガス流動状態を形成して、同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
さらに、上述した実施形態においては、「冷却部」が密接した水管群であって、具体的には、各水管の凹凸を含んだ内側水管群13の内周面である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。つまり、本発明においては、ガスの噴出方向等との関係で、「衝突冷却工程」および「接触流動冷却工程」を構成可能であれば、「冷却部」形状は、特に限定されない。したがって、例えば、「冷却部」は、ボイラを構成する一つ一つの水管であってもよい。また、「冷却部」形状は、平面状であっても、凹凸を有していても、円筒状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態にかかるボイラの縦断面の説明図である。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面の説明図である。
【図3】本実施形態にかかるボイラに設けられたバーナの縦断面の説明図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う横断面の説明図である。
【図5】本実施形態にかかるボイラの燃焼状態の概略図であって、具体的には本実施形態にかかるボイラ内におけるガスの流動状態の縦断面の説明図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う横断面の説明図であって、具体的には本実施形態にかかるボイラ内におけるガスの流動状態の横断面の説明図である。
【図7】他の実施形態にかかる缶体を用いて構成されたボイラの横断面の説明図である。
【図8】他の実施形態にかかる缶体を用いたボイラの横断面の説明図であって、具体的には、の字水管群を用いた場合を示している。
【図9】他の実施形態にかかる缶体を用いたボイラの横断面の説明図であって、具体的には、内外二列水管群を用いた場合を示している。
【図10】他の実施形態にかかるバーナを用いて構成されたボイラの縦断面の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1,60…ボイラ
10…缶体
11…上部ヘッダ
12…下部ヘッダ
13…内側水管群
14…中間水管群
14A…エロフィン管
15…外側水管群
16…内側開口部
17…フィン部
18…外側開口部
19…環状ガス流路
20,80…バーナ
21,81…予混合ガス噴出部
22…穴部
23…連結棒部材
24…締結部材
25…上部板部
26…下部板部
30…ウインドボックス
41…フィン部
51…の字水管群
52…間隙ガス流路
53…間隙水管群
55…内側水管群
56…外側水管群
57,58…開口部
59…ガス案内用カバー
91,92,93,94…排気筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配列された水管群を有する缶体と、前記水管群の中央部に配設されたバーナとを備えたボイラであって、
前記バーナが予混合ガス噴出部を有し、
前記予混合ガス噴出部から前記水管群の内周面に対して所定角度をなして、予混合ガスが噴出される
ことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
環状に配列された水管群を有する缶体と、前記水管群の中央部に配設されたバーナとを備えたボイラであって、
前記水管群が複数列設けられ、内側水管群の一部に外側水管群内周面に連通するガス流路が形成されており、
前記バーナからの予混合ガスが前記内側水管群の内周面に対して所定角度をなして噴出され、前記内側水管群の軸方向に沿ったガスの流れが形成された後、前記ガス流路を介して、前記内側水管群と前記外側水管群との間の環状ガス流路に沿ったガスの流れが形成される
ことを特徴とするボイラ。
【請求項3】
前記環状ガス流路内および前記環状ガス流路の後流側の少なくとも一方に、伝熱促進体が設けられている
請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記環状に配列された水管群が3列以上設けられている
請求項1から3のいずれか1項に記載のボイラ。
【請求項5】
予混合燃焼により生成されるガスを冷却することによりNOxを低減する低NOx燃焼方法であって、
前記ガスを冷却部に衝突させる工程と、
前記冷却部に沿った前記ガスの流れを形成する工程と
を備えたことを特徴とする低NOx燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−183927(P2006−183927A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376972(P2004−376972)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】