説明

ボイラシステム

【課題】 ボイラ装置の蒸気をその使用蒸気量をできるだけ少なく利用して木質チップを乾燥することができるようにし、本来の熱源として使用したい蒸気量を確保できるようにし、少ない蒸気量の使用であっても乾燥能力の向上を図り、燃焼性の向上を図る。
【解決手段】 供給装置1から所定量供給される木質チップWを乾燥させながら搬送する乾燥搬送装置30と、乾燥搬送装置30からの木質チップWを燃焼し燃焼ガスと水との熱交換により蒸気を生成するボイラ装置60とを備え、乾燥搬送装置30を、内側にコンベアによる木質チップWの搬送空間Eを形成する筒状の外郭33を備えて構成し、外郭33に蒸気流通空間Sを設け、この蒸気流通空間Sにボイラ装置60で生成された蒸気の一部を送給する蒸気送給管路47を配管し、外郭33の搬送空間E内にボイラ装置60から排気される排気ガスの一部を送給する排気ガス送給管路50を配管した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹皮(バーク),木屑やおが屑等の木質チップを燃焼させて蒸気を生成するボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のボイラシステムとしては、例えば、特開平11−148626号公報(特許文献1)に記載された技術が知られている。
このボイラシステムは、図9に示すように、形状、大きさ、物性、水分率などの異なる木屑、木粉、樹皮(バーク)などの木質チップWを貯留するサイロ200と、このサイロ200から木質チップWを所定量供給する供給装置201と、供給装置201で供給された木質チップWを乾燥させながら搬送するシュータからなる乾燥搬送装置203と、乾燥搬送装置203によって搬送された木質チップWを燃焼室204で燃焼し、この燃焼により得られる燃焼ガスと水との熱交換により蒸気を生成するボイラ205を備えたボイラ装置206とを備えている。サイロ200に集積された木質チップWは、供給コンベア207と余分の木質チップWをサイロ200に戻すリターンコンベア208とを経て供給量を制御するフィーダ209に供給されている。
【0003】
ボイラ装置206の燃焼室204には、一次送風機210により燃焼室204下部から一次空気が送入されるとともに、二次押込送風機211により燃焼室204に二次空気が送入される。二次空気は空気予熱器212において排ガスの熱により予熱される。乾燥搬送装置203は、予熱された二次空気の一部を上部の空気吹込口213から吹き込んで木質チップWを乾燥させながら燃焼室204内に供給する。これにより、乾燥搬送装置203による乾燥機能により木質チップWを僅かでも乾燥させその燃焼効率を向上させるようにしている。
【0004】
また、従来において、被乾燥物を乾燥させる乾燥搬送装置としては種々のものがあるが、例えば、特開2005−241239号公報(特許文献2)に記載されているように、筒体内に乾燥物を搬送するコンベアを備え、この筒体内を蒸気により間接加熱し、及び/または、筒体内に蒸気を送り込んで乾燥物を直接加熱し、乾燥物を乾燥させるようにしたものがある。そして、この蒸気乾燥型の乾燥搬送装置を、上記のボイラシステムに蒸気源としてボイラの蒸気を用いるようにして組み込むことも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−148626号公報
【特許文献2】特開2005−241239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のシュータ式の乾燥搬送装置203を用いたボイラシステムにあっては、乾燥搬送装置203において予熱した二次空気により木質チップWを僅かでも乾燥させその燃焼効率を向上させるようにしているが、乾燥用の空気を空気予熱器212において生成しているので、その温度がさほど高いものではなく、そのため、乾燥能力に劣っているという問題があった。特に、木質チップWは、例えば、樹皮の場合には、乾燥しないものでは、比較的含水率が高く、冬場などでは凍っていることもあり、このように凍っているような木質チップにおいては、ボイラ装置206での燃焼効率を著しく低下させてしまう。
このため、上記のように、乾燥搬送装置として、シュータ式のものから蒸気源としてボイラ装置の蒸気を用いる蒸気乾燥式に変えることも考えられるが、しかしながら、ボイラ装置の蒸気の使用量が増えてしまい、本来の熱源として使用したい蒸気量が少なくなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、ボイラ装置の蒸気をその使用蒸気量をできるだけ少なく利用して木質チップを乾燥することができるようにし、本来の熱源として使用したい蒸気量を確保できるようにするとともに、少ない蒸気量の使用であっても乾燥能力の向上を図りボイラ装置での燃焼性の向上を図ったボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明のボイラシステムは、木質チップを所定量供給する供給装置と、該供給装置で供給された木質チップを乾燥させながら搬送する乾燥搬送装置と、該乾燥搬送装置によって搬送された木質チップを燃焼し該燃焼により得られる燃焼ガスと水との熱交換により蒸気を生成するとともに該熱交換後の燃焼ガスを排気ガスとして排気するボイラ装置とを備えたボイラシステムにおいて、上記乾燥搬送装置を、一端部側に上記供給装置から供給される木質チップを受け入れる受入口を有し他端部側に木質チップを排出する排出口を有するとともに内側に木質チップの搬送空間を形成する筒状の外郭と、該外郭で形成された搬送空間内に設けられ受入口で受け入れた木質チップを排出口に向けて搬送するコンベアと、該コンベアを駆動するコンベア駆動部とを備えて構成し、上記外郭を筒状の外壁及び該外壁の内側に設けられ該外壁との間に蒸気が流通可能な蒸気流通空間を形成する筒状の内壁を備えて構成し、上記外郭に蒸気流通空間に蒸気を流入させる蒸気流入口及び蒸気を流出させる蒸気流出口を設け、上記蒸気流入口に上記ボイラ装置で生成された蒸気の一部を上記蒸気流通空間内に送給する蒸気送給管路を配管し、上記外郭に搬送空間内に排気ガスを流入させるガス流入口及び排気ガスを流出させるガス流出口を設け、上記ガス流入口に上記ボイラ装置から排気される排気ガスの一部もしくは全部を上記搬送空間内に送給する排気ガス送給管路を配管した構成としている。
【0009】
これにより、供給装置から木質チップを定量供給すると、乾燥搬送装置において木質チップが搬送され、ボイラ装置に至る。ボイラ装置では、この木質チップが燃焼させられ、燃焼により得られる燃焼ガスと水との熱交換により蒸気が生成されるとともに熱交換後の燃焼ガスが排気ガスとして排気される。ボイラ装置で生成された蒸気のうちの一部は、蒸気送給管路を通して、乾燥搬送装置に送給され、蒸気流入口から蒸気流通空間に流入させられて蒸気流出口から流出して排出されていく。これにより、外郭の外壁及び内壁が加熱される。また、ボイラ装置からの排気ガスの一部もしくは全部は排気ガス送給管路を通して乾燥搬送装置に送給され、ガス流入口から搬送空間に流入させられてガス流出口から流出して排気されていく。
【0010】
この際、乾燥搬送装置においては、木質チップが外郭の受入口から受け入れられてコンベア駆動部によって駆動されたコンベアによって搬送され排出口から排出されて、ボイラ装置に供給されているが、木質チップの搬送空間にはボイラ装置からの温度の高い排気ガスが流入しているので、この排気ガスによって木質チップが加温させられて乾燥させられ木質チップの含水率が低下させられていく。木質チップからの水蒸気は排気ガス中に混入されて、ガス流出口から流出して排気されていく。
この場合、外郭の外壁及び内壁は蒸気によって加熱されているので、内壁の温度も高くなっており、そのため、木質チップは内壁を介して蒸気による間接的な加温も行われて乾燥が促進される。また、この場合、外郭の外壁及び内壁は蒸気によって加熱されて加熱断熱壁を構成することになり、このため、搬送空間の排気ガスの熱が外郭を通して外部に逃げにくくなり、それだけ、木質チップへの熱の伝達が確実に行われ乾燥が促進される。この結果、ボイラ装置の蒸気をその使用蒸気量をできるだけ少なく利用して木質チップを乾燥することができるようになるとともに、少ない蒸気量の使用であっても乾燥能力が向上させられボイラ装置での燃焼性が向上させられる。ボイラ装置からの蒸気は、熱源として例えば暖房等の用に供されるが、乾燥搬送装置での蒸気の使用量が少なくて済むので、本来の熱源として使用したい蒸気量を確実に確保することができる。
【0011】
そして、必要に応じ、上記蒸気送給管路で送給する蒸気量を、上記ボイラ装置で生成された全蒸気量の5%以下にしている。好ましくは、2%以下にすることができる。使用蒸気量が確実に少なくなり、本来の熱源として使用したい蒸気量を確実に確保することができる。
【0012】
この場合、上記外郭の外壁の外側に断熱層を設けたことが有効である。外郭の外壁及び内壁は蒸気によって加熱されているので、外壁から外部に熱が逃げようとするが、断熱層により熱伝達が遮断されることからこの外壁から熱が逃げにくくなり、そのため、搬送空間の排気ガスの熱が外郭を通してより一層外部に逃げにくくなり、搬送空間での木質チップの乾燥を確実に行うことができる。
【0013】
また、必要に応じ、上記排気ガス送給管路に外気を導入して排気ガスの温度調整を行う排気ガス温度調整部を設けた構成としている。排気ガスの温度調整を行うことができるので、搬送空間での木質チップの乾燥温度を適性なものにすることができる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記外郭を円筒状の外壁及び該外壁の内側に設けられ該外壁との間に蒸気が流通可能な蒸気流通空間を形成する円筒状の内壁を備えて構成し、上記コンベアを、上記内壁の中心線に沿う方向の軸線を有した回転シャフトと、該回転シャフトの外周に設けられた螺旋状の羽根とを備えたスクリューコンベアで構成し、該スクリューコンベアの回転シャフトをその軸線が上記内壁の中心線の下側に偏心して位置するように該回転シャフトの一端を上記外郭の一端部に軸支し該回転シャフトの他端を上記外郭の他端部に軸支し、上記搬送空間の上記スクリューコンベアの上部に余空間を形成した構成としている。余空間があるので、木質チップ内の水分が蒸発して排ガス中に混入しやすくなり、乾燥効率が向上させられる。
【0015】
更にまた、上記外郭のガス流入口を上記外郭の一端部側の両側に設け、該各ガス流入口に上記排気ガス送給管路を構成し所定長さの直線状のガス噴射管を接続し、該ガス噴射管をその軸線の噴射方向先端側が上記内壁の中心線に向け且つ上記外郭の他端部側に向かうように傾斜して接続した構成としている。ガス噴射管から噴射される排気ガスが内壁の中心線方向に沿って、流れやすくなり、そのため、木質チップに満遍なく接することになり、乾燥が確実に行われる。
【0016】
そしてまた、必要に応じ、上記供給装置を、一対のエンドレスの駆動チェーン間に架設され該駆動チェーンの上側の往路側において木質チップを搬送する搬送部材と、上記駆動チェーンが架け渡される一対の駆動スプロケットと、少なくともいずれか一方の駆動スプロケットを回転駆動して上記搬送部材により木質チップを上記乾燥搬送装置の受入口に向かう搬送方向沿って移動させる供給駆動部とを備えて構成し、上記搬送部材の上方に該搬送部材により搬送される木質チップの搬送厚さを規制する厚さ規制機構を設け、該厚さ規制機構を、一対の作動チェーン間に架設され上記搬送部材により搬送される木質チップに先端縁が当接する多数の突条部材と、上記作動チェーンが架け渡される一対の作動スプロケットと、上記突条部材により上記搬送部材で搬送される木質チップがその搬送方向とは逆方向に移動するように少なくともいずれか一方の作動スプロケットを回転駆動する厚さ規制駆動部とを備えて構成している。規制機構により、木質チップをその搬送方向とは逆方向に移動するように均すので、木質チップの厚さ規制が確実に行われ、そのため、供給量を確実に一定化できるので、乾燥搬送装置での乾燥を均一に行うことができ、ボイラ装置での燃焼を確実に行わせることができる。
【0017】
この場合、上記供給装置の搬送部材を、一対のエンドレスの駆動チェーン間に列設されて架設され上記駆動チェーンの上側の往路側において上側及び搬送方向前側が解放した多数のバケットで構成し、上記駆動チェーンの上側の往路側において上記バケットを支持する支持板を設けたことが有効である。支持板にバケットを支持して移動させるので、木質チップがバケット間に介在しても支持板に支持されてバケットの移動により搬送されることから、木質チップが下に落下することなく確実に搬送される。
【0018】
また、必要に応じ、上記ボイラ装置を、炉壁で囲繞され木質チップを燃焼する燃焼室と、該燃焼室の上側に設けられ木質チップの燃焼ガスと水との熱交換を行なって蒸気を生成する熱交換部とを備えて構成し、該熱交換部を、水が供給される水管部と、該水管部が収容されるとともに下側に燃焼室からの排気ガスのガス入口を有し上側にガス出口を有した排ガスが流通する排ガス空間を形成する断熱壁とを備えて構成し、上記水管部を、一辺及び該一辺に対向した他辺を有して略矩形状に折曲形成され水の水供給口を有する下側主水管と、該下側主水管に対応して該下側主水管の上側に配置されるとともに一辺及び該一辺に対向した他辺を有して略矩形状に折曲形成され蒸気の蒸気出口を有する上側主水管と、上記下側主水管の一辺と上記上側主水管の他辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第1架設水管と、上記下側主水管の他辺と上記上側主水管の一辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第2架設水管と、上記下側主水管の一辺と上記上側主水管の一辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第3架設水管と、上記下側主水管の他辺と上記上側主水管の他辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第4架設水管とを備えて構成し、上記第1架設水管の下側及び第2架設水管の下側で囲繞される下部排ガス空間,上記第1架設水管の上側及び第2架設水管の上側で囲繞される上部排ガス空間,上記第1架設水管,第2架設水管及び第3架設水管で囲繞されるとともに上記第1架設水管,第2架設水管及び第4架設水管で囲繞される一対の側部排ガス空間を形成し、上記燃焼室からの排気ガスのガス入口からガス出口に至る経路を下部排ガス空間,側部排ガス空間及び上部排ガス空間の順になるように排ガス空間を形成した構成としている。
熱交換部において、排ガス空間を、排気ガスのガス入口からガス出口に至る経路を下部排ガス空間,側部排ガス空間及び上部排ガス空間の順になるように形成したので、所謂スリーパスとなり、熱交換が確実に行われる。また、第3架設水管及び第4架設水管を設けたので、それだけ、熱交換の表面積が増し、熱交換効率が向上させられる。その結果、蒸気温度を高くして生成することができ、それだけ、乾燥搬送装置に送給される一部の蒸気の熱エネルギーも大きくすることができることから、この点でも、木質チップの乾燥効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のボイラシステムによれば、乾燥搬送装置においては、ボイラ装置からの温度の高い排気ガスが流入しているので、この排気ガスによって木質チップが加温させられて乾燥させられ木質チップの含水率が低下させられていく。この場合、外郭の外壁及び内壁は蒸気によって加熱されるので、木質チップを内壁を介して蒸気による間接的な加温を行なって乾燥を促進することができるとともに、外郭の外壁及び内壁は蒸気によって加熱されて加熱断熱壁を構成することになり、このため、搬送空間の排気ガスの熱が外郭を通して外部に逃げにくくなり、それだけ、木質チップへの熱の伝達が確実に行われ乾燥を促進することができる。この結果、ボイラ装置の蒸気をその使用蒸気量をできるだけ少なく利用して木質チップを乾燥することができるようになるとともに、少ない蒸気量の使用であっても乾燥能力を向上させ、ボイラ装置での燃焼性を向上させることができ、乾燥搬送装置での蒸気の使用量を少なくして、本来の熱源として使用したい蒸気量を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るボイラシステムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るボイラシステムの供給装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るボイラシステムの乾燥搬送装置を示し、(a)は側面断面図、(b)は部分平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るボイラシステムの乾燥搬送装置を示す横断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るボイラシステムのボイラ装置を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るボイラシステムのボイラ装置の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るボイラシステムのボイラ装置において熱交換部の要部を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るボイラシステムにおける実験例を示し、(a)は測定項目を示す図、(b)は蒸気断熱の効果に関する実験結果を示す表図、(c)は樹皮投入量の影響に関する実験結果を示す表図、(d)は樹皮の管内滞留時間の影響に関する実験結果を示す表図である。
【図9】従来のボイラシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るボイラシステムについて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るボイラシステムは、図1乃至図7に示すように、木質チップWを燃料としている。実施の形態は、木質チップWは、生の樹皮(バーク)であり、予め、周知のチッパー(加工機)で切削若しくは粉砕することにより数センチ程度の大きさに加工されている。
このボイラシステムの基本的構成は、図1に示すように、木質チップWを所定量供給する供給装置1と、供給装置1で供給された木質チップWを乾燥させながら搬送する乾燥搬送装置30と、乾燥搬送装置30によって搬送された木質チップWを燃焼し燃焼により得られる燃焼ガスと水との熱交換により蒸気を生成するとともに熱交換後の燃焼ガスを排気ガスとして排気するボイラ装置60とを備えて構成されている。
【0022】
供給装置1は、図1及び図2に示すように、機台2と、機台2に設けられるホッパ3とを備えている。ホッパ3には、貯留タンク4に貯留された木質チップWがベルトコンベア5で搬送されて投入される。ホッパ3にはレベルセンサ(図示せず)が設けられており、このレベルセンサに基づいてベルトコンベア5をオン,オフして、ホッパ3内に所要量の木質チップWが供給されるようにしている。
【0023】
また、供給装置1は、一対のエンドレスの駆動チェーン10間に架設され駆動チェーン10の上側の往路側においてホッパ3からの木質チップWを受けて搬送する搬送部材11と、機台2に軸支され各駆動チェーン10毎に設けられ駆動チェーン10が架け渡される一対の駆動スプロケット12と、一方の駆動スプロケット12を介して回転駆動して搬送部材11により木質チップWを乾燥搬送装置30の後述の受入口31に向かう搬送方向に沿って移動させる電動モータからなる供給駆動部14とを備えて構成されている。この供給装置1の搬送部材11は、一対のエンドレスの駆動チェーン10間に列設されて架設され駆動チェーン10の上側の往路側において上側及び搬送方向前側が解放した多数のバケット15で構成されている。また、機台2には、駆動チェーン10の上側の往路側においてバケット15を支持する支持板16が設けられている。
【0024】
更に、搬送部材11の上方には、この搬送部材11により搬送される木質チップWの搬送厚さを規制する厚さ規制機構20が設けられている。厚さ規制機構20は、一対の作動チェーン21間に架設され搬送部材11により搬送される木質チップWに先端縁が当接する多数の板状の突条部材22と、機台2に軸支され各作動チェーン21毎に設けられ作動チェーン21が架け渡される一対の作動スプロケット23と、突条部材22により搬送部材11で搬送される木質チップWがその搬送方向とは逆方向に移動するように少なくともいずれか一方の作動スプロケット23をチェーン伝動機構24を介して回転駆動する電動モータからなる厚さ規制駆動部25とを備えて構成されている。即ち、厚さ規制機構20は、ベルトコンベアに突条部材22を多数突設したような構造であり、一方の作動スプロケット23側にある突条部材22が搬送部材11側に近接してその間隔hを調整可能になるように一対の作動スプロケット23の中心を結ぶ軸線の角度θが可変になるよう機台2に設置されている。これにより、搬送部材11で搬送される木質チップWの搬送部材11に対する高さ(h)が一定になるようにしてその搬送量を規制している。
【0025】
乾燥搬送装置30は、図1,図3及び図4に示すように、一端部側に供給装置1から供給される木質チップWを受け入れる受入口31を有し他端部側に木質チップWを排出する排出口32を有するとともに内側に木質チップWの搬送空間Eを形成する筒状の外郭33と、この外郭33で形成された搬送空間E内に設けられ受入口31で受け入れた木質チップWを排出口32に向けて搬送するコンベアとしてのスクリューコンベア40と、スクリューコンベア40を駆動するコンベア駆動部43とを備えて構成されている。
【0026】
外郭33は、円筒状の金属製管からなる外壁34と、外壁34の内側に設けられ外壁34との間に蒸気が流通可能な閉空間からなる蒸気流通空間Sを形成する円筒状の金属製管からなる内壁35とを備えて構成されている。内壁35は外壁34より両端側で突出しておりその両端が端面板36,37で閉塞されている。また、外郭33の外壁34の外側には、ガラスウール等の断熱材をシート材で被覆した断熱層38が設けられている。
【0027】
スクリューコンベア40は、内壁35の中心線Pに沿う方向の軸線Qを有した回転シャフト41と、回転シャフト41の外周に設けられた螺旋状の羽根42とを備えている。スクリューコンベア40の回転シャフト41は、その軸線Qが内壁35の中心線Pの下側に偏心して位置するように回転シャフト41の一端が外郭33の一端部の端面板36に軸支され、回転シャフト41の他端が外郭33の他端部の端面板37に軸支され、これにより、搬送空間Eのスクリューコンベア40の上部には、余空間Eaが形成されている。コンベア駆動部43は、回転シャフト41の他端側をチェーン伝動機構44を介して回転駆動する電動モータから構成されている。
【0028】
また、外郭33の外壁34には、蒸気流通空間Sに蒸気を流入させる蒸気流入口45及び蒸気を流出させる蒸気流出口46が設けられている。蒸気流入口45にはボイラ装置60で生成された蒸気の一部を蒸気流通空間S内に送給する蒸気送給管路47が配管されている。蒸気送給管路47は、ボイラ装置60の後述の蒸気出口92aに分岐して接続されている。蒸気出口92aの接続部には、蒸気送給管路47に送給される蒸気量を調整する調整弁48(図1)が設けられており、この調整弁48の調整により、蒸気送給管路47で送給する蒸気量が、ボイラ装置60で生成された全蒸気量の5%以下、好ましくは2%以下になるように設定されている。実施の形態では、1.4%である。
【0029】
更に、外郭33の一端部側には搬送空間E内に排気ガスを流入させるガス流入口51が設けられ、外郭33の他端部側には排気ガスを流出させるガス流出口52が設けられている。ガス流入口51には、ボイラ装置60から排気される排気ガスの一部もしくは全部(実施の形態では一部)を搬送空間E内に送給する排気ガス送給管路50が配管されている。外郭33のガス流入口51は、図3(b)に示すように、外郭33の一端部側の両側に設けられており、各ガス流入口51には排気ガス送給管路50を構成しこの排気ガス送給管路50の一端が分岐した所定長さの直線状のガス噴射管53が接続されている。ガス噴射管53は、その軸線Rの噴射方向先端側が内壁35の中心線Pに向け且つ外郭33の他端部側に向かうように傾斜して接続されている。
【0030】
図1に示すように、排気ガス送給管路50の他端は、ボイラ装置60の後述のガス出口82に分岐して接続されている。ガス出口82の接続部には、排気ガス送給管路50に送給される排気ガス量を調整するガス調整弁(図示せず)が設けられている。また、排気ガス送給管路50にはボイラ装置60からの排気ガスを吸引する吸引ブロア54が設けられている。この吸引ブロア54には、排気ガス送給管路50に外気を導入して排気ガスの温度調整を行う排気ガス温度調整部55が設けられている。実施の形態では、例えば、400℃の排気ガスを、排気ガス温度調整部55の外気導入により200℃にする調整を行っている。
更に、ガス流出口52には外郭33の搬送空間Eから流出する排気ガスを外気に排出する排出管路56が配管されている。この排出管路56には搬送空間Eからの排気ガスを吸引して排気する排気ブロア57が設けられている。
【0031】
ボイラ装置60は、例えば、特開2006−207865号公報に掲載のボイラ装置と基本的には同様の構成のものであり、図1,図5乃至図7に示すように、耐火材からなる炉壁で囲繞され木質チップWを燃焼する燃焼室61を有した燃焼炉62と、燃焼室61内に設けられ燃焼する木質チップWを燃焼炉62の前端側から後端側への一方向に移動可能に載置する載置面を有した火格子台63と、火格子台63上の木質チップWに着火させる着火バーナ63aと、火格子台63の上流側に木質チップWを供給する燃料供給部64と、火格子台63の上流側に供給された木質チップWを下流側へ向けて移動させる移動機構65と、燃焼室61内に燃焼空気を供給する燃焼空気供給部66と、燃焼室61の上側に設けられ木質チップWの燃焼ガスと水との熱交換を行なう熱交換部としてのボイラ80とを備えて構成されている。
【0032】
燃焼炉62において、図6に示すように、燃焼室61内には、火格子台63と熱交換部としてのボイラ80との間を仕切るとともに上流側に燃焼ガスのボイラ80側への通過口67aを形成するアーチ状の仕切壁67が設けられている。
燃料供給部64は、乾燥搬送装置30の排出口32から排出され加温されて乾燥された木質チップWを受けて搬送し供給口68から燃焼室61内に供給するスクリューコンベアで構成されている。供給口68の下側には、木質チップWを火格子台63の上流側へスライドさせて落下させる傾斜台69が設けられている。
【0033】
移動機構65は、火格子台63の載置面に沿って進退動可能に設けられ進出時に傾斜台69から落下させられた木質チップWを押して移動させるプッシャ70と、プッシャ70を進退動させるエア若しくは油圧駆動のシリンダ装置71とで構成されている。
燃焼空気供給部66は、火格子台63の載置面に設けた吹出口72から燃焼空気を送風機により吹出す一次空気供給部73と、燃焼炉62の炉壁に設けた噴出口74から燃焼空気を送風機により噴出する二次空気供給部75とを備えて構成されている。
【0034】
熱交換部としてのボイラ80は、水が供給される水管部90と、水管部90が収容されるとともに下側に燃焼室61からの排気ガスのガス入口81を有し上側にガス出口82を有した排ガスが流通する排ガス空間Fを形成する断熱壁83とを備えて構成されている。断熱壁83は、耐火材料で形成され燃焼炉62の炉壁に一体形成されている。図5に示すように、燃焼炉62から適宜離間した場所には、煙突84を有した煙突装置Tが設置されており、ガス出口82には煙突装置Tの煙突に連通するダクト85が接続されている。煙突85には、ガス出口82から燃焼排ガスを煙突に誘引しインバータ制御される排風機86が設けられている。
【0035】
水管部90は、図6及び図7に示すように、一辺及び該一辺に対向した他辺を有して略矩形状に折曲形成され水の水供給口91aを有する下側主水管91と、下側主水管91に対応して下側主水管91の上側に配置されるとともに一辺及び一辺に対向した他辺を有して略矩形状に折曲形成され蒸気の蒸気出口92aを有する上側主水管92と、下側主水管91の一辺と上側主水管92の他辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管93aを有し隣接する枝管93a同士が連結板93bで連結された第1架設水管93と、下側主水管91の他辺と上側主水管92の一辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管94aを有し隣接する枝管94a同士が連結板94bで連結された第2架設水管94と、下側主水管91の一辺と上側主水管92の一辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管95aを有し隣接する枝管95a同士が連結板95bで連結された第3架設水管95と、下側主水管91の他辺と上側主水管92の他辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管96aを有し隣接する枝管96a同士が連結板96bで連結された第4架設水管96とを備えて構成されている。
【0036】
これにより、第1架設水管93の下側及び第2架設水管94の下側で囲繞される下部排ガス空間Fa,第1架設水管93の上側及び第2架設水管94の上側で囲繞される上部排ガス空間Fb,第1架設水管93,第2架設水管94及び第3架設水管95で囲繞されるとともに第1架設水管93,第2架設水管94及び第4架設水管96で囲繞される一対の側部排ガス空間Fcを形成し、燃焼室61からの排気ガスのガス入口81からガス出口82に至る経路を下部排ガス空間Fa,側部排ガス空間Fc及び上部排ガス空間Fbの順になるように排ガス空間Fを形成している。
【0037】
従って、本実施の形態に係るボイラシステムにより、木質チップWを燃焼させて蒸気を生成するときは、以下のようになる。
供給装置1から木質チップWを定量供給すると、乾燥搬送装置30において木質チップWが搬送され、ボイラ装置60に至る。ボイラ装置60では、この木質チップWが燃焼させられ、熱交換部としてのボイラ80で燃焼により得られる燃焼ガスと水との熱交換により蒸気が生成されるとともに熱交換後の燃焼ガスが排気ガスとして排気される。
【0038】
供給装置1においては、貯留タンク4に貯留された木質チップWがベルトコンベア5で搬送されてホッパ3に投入されている。ホッパ3にはレベルセンサ(図示せず)が設けられており、このレベルセンサに基づいてベルトコンベア5をオン,オフして、ホッパ3内に所要量の木質チップWが供給されるようにしている。図2に示すように、ホッパ3からの木質チップWは、搬送部材11のバケット15に受けられ、バケット15は支持板16に支持されて移動して木質チップWを乾燥搬送装置30の受入口31に向けて搬送する。この場合、バケット15は支持板16で支持されて移動させられるので、木質チップWがバケット15間に介在しても支持板16に支持されてバケット15の移動により搬送されることから、木質チップWが下に落下することなく確実に搬送される。また、搬送部材11の上方においては、厚さ規制機構20の突条部材22がエンドレスで移動しており、搬送される木質チップWはこの厚さ規制機構20の突条部材22によりその搬送方向とは逆方向に移動するように上面が均されていく。そのため、木質チップWの厚さ規制が確実に行われ、供給量が確実に一定化される。
【0039】
また、乾燥搬送装置30においては、図1,図3及び図4に示すように、受入口31から受け入れた木質チップWを外郭33の受入口31から受け入れてコンベア駆動部43によって駆動されたスクリューコンベア40によって搬送して排出口32から排出し、ボイラ装置60に供給している。この状態においては、ボイラ装置60で生成された蒸気のうちの一部が蒸気送給管路47を通して送給されており、蒸気流入口45から蒸気流通空間Sに流入させられて蒸気流出口46から流出して排出されていく。これにより、外郭33の外壁34及び内壁35が加熱される。また、ボイラ装置60からの排気ガスの一部が排気ガス送給管路50を通して乾燥搬送装置30に送給され、ガス流入口51から搬送空間Eに流入させられてガス流出口52から流出して排気されていく。このため、木質チップWの搬送空間Eにはボイラ装置60からの温度の高い排気ガスが流入しているので、この排気ガスによって木質チップWが加温させられて乾燥させられ木質チップWの含水率が低下させられていく。木質チップWからの水蒸気は排気ガス中に混入されて、ガス流出口52から流出して排気されていく。この場合、排気ガス送給管路50においては、排気ガス温度調整部55により外気を導入して排気ガスの温度調整を行っているので、搬送空間Eでの木質チップWの乾燥温度を適性なものにすることができる。
【0040】
また、この場合、外郭33の外壁34及び内壁35は蒸気によって加熱されているので、内壁35の温度も高くなっており、そのため、木質チップWは内壁35を介して蒸気による間接的な加温も行われて乾燥が促進される。また、外郭33の外壁34及び内壁35は蒸気によって加熱されて加熱断熱壁を構成することになり、このため、搬送空間Eの排気ガスの熱が外郭33を通して外部に逃げにくくなり、それだけ、木質チップWへの熱の伝達が確実に行われ乾燥が促進される。特に、外郭33の外壁34の外側に断熱層38があるので、外壁34から外部に熱が逃げようとしても断熱層38により熱伝達が遮断され、そのため、搬送空間Eの排気ガスの熱が外郭33を通してより一層外部に逃げにくくなり、搬送空間Eでの木質チップWの乾燥を確実に行うことができる。
【0041】
更に、供給装置1からの木質チップWの供給量が一定化されているので、スクリューコンベア40の速度調整を適宜行って、木質チップWの乾燥を均一に行うことができ、以後のボイラ装置60での燃焼を確実に行わせることができる。更にまた、スクリューコンベア40は内壁35の中心線に対して偏心して位置し、搬送空間Eのスクリューコンベア40の上部に余空間Eaを形成しているので、この余空間Eaにより木質チップW内の水分が蒸発して排ガス中に混入しやすくなり、乾燥効率が向上させられる。また、図3(b)に示すように、ガス噴射管53がその軸線Rの噴射方向先端側が内壁35の中心線Pに向け且つ外郭33の他端部側に向かうように傾斜して接続されているので、ガス噴射管53から噴射される排気ガスが内壁35の中心線P方向に沿って、流れやすくなり、そのため、木質チップWに満遍なく接することになり、この点でも乾燥が確実に行われる。
【0042】
そして、乾燥搬送装置30においては、蒸気送給管路47で送給する蒸気量は、ボイラ装置60で生成された全蒸気量の5%以下、実施の形態では1.4%になっていることから、使用蒸気量が極めて少なくなっている。この結果、ボイラ装置60の蒸気をその使用蒸気量をできるだけ少なく利用して木質チップWを乾燥することができ、少ない蒸気量の使用であっても乾燥能力が向上させられる。
【0043】
そしてまた、ボイラ装置60においては、燃料供給部64から火格子台63の上流側に木質チップWが供給され、移動機構65により下流へ向けて木質チップWが移動させられ、これにより、木質チップWは下流側に移動させられる順に燃焼室61で燃焼していく。この燃焼においては、着火バーナ63aの着火制御,供給装置1の木質チップWの供給量制御,移動機構65の移動量制御,燃焼空気供給部66の空気量制御の必要な制御を行ない、木質チップWの水分含有率に応じて木質チップWの燃焼を円滑に行なわせることができる。この場合、乾燥搬送装置30において、木質チップWはその含水率が低下させられて乾燥させられているので、ボイラ装置60での燃焼効率が向上させられ、燃焼を確実に行わせることができる。
【0044】
燃焼室61で発生した燃焼ガスは上昇して熱交換部としてのボイラ80のガス入口81からガス出口82へ至るが、その過程で、燃焼ガスと水と熱交換される。この際、図6及び図7に示すように、排ガス空間Fを、排気ガスのガス入口81からガス出口82に至る経路を下部排ガス空間Fa,側部排ガス空間Fc及び上部排ガス空間Fbの順になるように形成したので、所謂スリーパスとなり、第1架設水管93,第2架設水管94,第3架設水管95及び第4架設水管96を流れる水と排気ガスとの熱交換が確実に行われる。また、第1架設水管93及び第2架設水管94の他に第3架設水管95及び第4架設水管96を設けたので、それだけ、熱交換の表面積が増し、熱交換効率が向上させられる。その結果、蒸気温度を高くして生成することができ、乾燥搬送装置30に送給される一部の蒸気の熱エネルギーも大きくすることができることから、この点でも、木質チップWの乾燥効率を向上させることができる。また、ボイラ装置60からの蒸気は、熱源として例えば暖房等の用に供されるが、乾燥搬送装置30での蒸気の使用量が少なくて済むので、本来の熱源として使用したい蒸気量を確実に確保することができる。
【0045】
<実験例>
次に、実験例を示す。これは、木質チップWとして樹皮を用い、図8(a)に示すように、乾燥搬送装置30の受入口31に受け入れられる木質チップWの温度をTbi、含水率をMCiとし、投入排気ガスの温度をTgiとするとともに、乾燥搬送装置30の排出口から排出される木質チップWの温度をTbo、含水率をMCoとし、排気される排気ガスの温度をTgoとし、下記の実験を行った。蒸気温度は、105〜108℃であった。
【0046】
(実験例1)蒸気断熱の効果と蒸気消費量
図8(b)に示す条件において、5分間で樹皮10kg(2kg/分)を投入して、測定した。その結果、外郭33に蒸気を流通させて加温することにより、乾燥程度が向上し、木質チップWの加温効果も上がることが分かった。
また、蒸気消費量については、5分間のドレイン量を測定(3回)したところ、平均値:225g(2.7kg/h)であり、ボイラ80の蒸気生産量を200kg/hとすると、消費率は1.4%と低くなっている。 また、内管表面温度の測定値は102℃であり、蒸気が凝結しにくい状態であることも分かった。
【0047】
(実験例2)樹皮投入量の影響(乾燥負荷)
図8(c)に示す条件において、3水準の樹皮投入量で各5分間の測定を行った。その結果、木質チップWの投入量が2倍、3倍と増えても、水分蒸発量はそれに比例して増えなかった。しかし、加温効果は概ね一定となった。従って、含水率の低下を促進するには、排ガス温度や、スクリューコンベア40での搬送時間(管内滞留時間)による調整が必要になることが分かった。
【0048】
(実験例3)樹皮の管内滞留時間の影響
図8(d)に示すように、滞留時間の増加は含水率の低減を促進させることが分かった。しかしながら、2分から3分へと1.5倍にしても、到達含水率は3%程度の差であることが分かった。ただし、加温効果は増強された。
【0049】
尚、上記の実施の形態において、木質チップWとして樹皮(バーク)を用いた例を示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、木片,木屑,おが屑等別の木質チップWであっても良いことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
近年、製材所等木材加工施設から排出される針葉樹樹皮は、堆肥等としての需要がなく、ダイオキシン規制の強化により焼却処分も困難な状況にある。そのため、樹皮や製材端材等の廃棄コストが増高し、木材加工業の経営を圧迫していることから、それらの有効活用が課題となっている。樹皮等木材加工現場内で出る高含水率の木質バイオマスは、かさ比重が小さいため輸送コストが嵩むことから、出来るだけ輸送コストをかけないで利用する必要がある。そのため、木材加工施設における木材乾燥用の燃料として利用することが最も有効と考えられるが、樹皮を燃焼するためには、高含水率であることに加え、燃焼灰が木質の10倍以上出ること、特にスギ樹皮の場合は繊維が長く破砕が容易ではないなどの課題が多い。本発明によれば、高含水率チップであっても含水率低減を図って燃焼させることができるようにした樹皮を燃料としたボイラシステムを実現できたので、木材加工施設における樹皮の有効活用を図り、あらゆる水分条件の木質チップを燃料として利用するための技術として利用できる。その結果、木材利用歩留まりの向上と樹皮等廃材処理コストの圧縮、乾燥コストの低減による林業・木材産業の経営改善、あるいは、地域分散型の木質バイオマスエネルギー利用の推進によるCO2排出量の削減などの貢献が期待できる。
【符号の説明】
【0051】
W 木質チップ
1 供給装置
2 機台
3 ホッパ
10 駆動チェーン
11 搬送部材
12 駆動スプロケット
14 供給駆動部
15 バケット
16 支持板
20 厚さ規制機構
21 作動チェーン
22 突条部材
23 作動スプロケット
25 厚さ規制駆動部
30 乾燥搬送装置
31 受入口
32 排出口
33 外郭
34 外壁
35 内壁
S 蒸気流通空間
38 断熱層
40 スクリューコンベア
41 回転シャフト
P 内壁の中心線
Q 回転シャフトの軸線
42 羽根
E 搬送空間
Ea 余空間
43 コンベア駆動部
45 蒸気流入口
46 蒸気流出口
47 蒸気送給管路
48 調整弁
50 排気ガス送給管路
51 ガス流入口
52 ガス流出口
53 ガス噴射管
R ガス噴射管の軸線
54 吸引ブロア
55 排気ガス温度調整部
56 排出管路
57 排気ブロア
60 ボイラ装置
61 燃焼室
62 燃焼炉
63 火格子台
63a 着火バーナ
64 燃料供給部
65 移動機構
66 燃焼空気供給部
67 仕切壁
68 供給口
69 傾斜台
80 ボイラ(熱交換部)
81 ガス入口
82 ガス出口
83 断熱壁
T 煙突装置
90 水管部
91 下側主水管
92 上側主水管
93 第1架設水管
94 第2架設水管
95 第3架設水管
96 第4架設水管
F 排ガス空間
Fa 下部排ガス空間
Fb 上部排ガス空間
Fc 側部排ガス空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質チップを所定量供給する供給装置と、該供給装置で供給された木質チップを乾燥させながら搬送する乾燥搬送装置と、該乾燥搬送装置によって搬送された木質チップを燃焼し該燃焼により得られる燃焼ガスと水との熱交換により蒸気を生成するとともに該熱交換後の燃焼ガスを排気ガスとして排気するボイラ装置とを備えたボイラシステムにおいて、
上記乾燥搬送装置を、一端部側に上記供給装置から供給される木質チップを受け入れる受入口を有し他端部側に木質チップを排出する排出口を有するとともに内側に木質チップの搬送空間を形成する筒状の外郭と、該外郭で形成された搬送空間内に設けられ受入口で受け入れた木質チップを排出口に向けて搬送するコンベアと、該コンベアを駆動するコンベア駆動部とを備えて構成し、
上記外郭を筒状の外壁及び該外壁の内側に設けられ該外壁との間に蒸気が流通可能な蒸気流通空間を形成する筒状の内壁を備えて構成し、上記外郭に蒸気流通空間に蒸気を流入させる蒸気流入口及び蒸気を流出させる蒸気流出口を設け、上記蒸気流入口に上記ボイラ装置で生成された蒸気の一部を上記蒸気流通空間内に送給する蒸気送給管路を配管し、上記外郭に搬送空間内に排気ガスを流入させるガス流入口及び排気ガスを流出させるガス流出口を設け、上記ガス流入口に上記ボイラ装置から排気される排気ガスの一部もしくは全部を上記搬送空間内に送給する排気ガス送給管路を配管したことを特徴とするボイラシステム。
【請求項2】
上記蒸気送給管路で送給する蒸気量を、上記ボイラ装置で生成された全蒸気量の5%以下にしたことを特徴とする請求項1記載のボイラシステム。
【請求項3】
上記外郭の外壁の外側に断熱層を設けたことを特徴とする請求項2記載のボイラシステム。
【請求項4】
上記排気ガス送給管路に外気を導入して排気ガスの温度調整を行う排気ガス温度調整部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のボイラシステム。
【請求項5】
上記外郭を円筒状の外壁及び該外壁の内側に設けられ該外壁との間に蒸気が流通可能な蒸気流通空間を形成する円筒状の内壁を備えて構成し、上記コンベアを、上記内壁の中心線に沿う方向の軸線を有した回転シャフトと、該回転シャフトの外周に設けられた螺旋状の羽根とを備えたスクリューコンベアで構成し、該スクリューコンベアの回転シャフトをその軸線が上記内壁の中心線の下側に偏心して位置するように該回転シャフトの一端を上記外郭の一端部に軸支し該回転シャフトの他端を上記外郭の他端部に軸支し、上記搬送空間の上記スクリューコンベアの上部に余空間を形成したことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のボイラシステム。
【請求項6】
上記外郭のガス流入口を上記外郭の一端部側の両側に設け、該各ガス流入口に上記排気ガス送給管路を構成し所定長さの直線状のガス噴射管を接続し、該ガス噴射管をその軸線の噴射方向先端側が上記内壁の中心線に向け且つ上記外郭の他端部側に向かうように傾斜して接続したことを特徴とする請求項5記載のボイラシステム。
【請求項7】
上記供給装置を、一対のエンドレスの駆動チェーン間に架設され該駆動チェーンの上側の往路側において木質チップを搬送する搬送部材と、上記駆動チェーンが架け渡される一対の駆動スプロケットと、少なくともいずれか一方の駆動スプロケットを回転駆動して上記搬送部材により木質チップを上記乾燥搬送装置の受入口に向かう搬送方向沿って移動させる供給駆動部とを備えて構成し、
上記搬送部材の上方に該搬送部材により搬送される木質チップの搬送厚さを規制する厚さ規制機構を設け、該厚さ規制機構を、一対の作動チェーン間に架設され上記搬送部材により搬送される木質チップに先端縁が当接する多数の突条部材と、上記作動チェーンが架け渡される一対の作動スプロケットと、上記突条部材により上記搬送部材で搬送される木質チップがその搬送方向とは逆方向に移動するように少なくともいずれか一方の作動スプロケットを回転駆動する厚さ規制駆動部とを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のボイラシステム。
【請求項8】
上記供給装置の搬送部材を、一対のエンドレスの駆動チェーン間に列設されて架設され上記駆動チェーンの上側の往路側において上側及び搬送方向前側が解放した多数のバケットで構成し、上記駆動チェーンの上側の往路側において上記バケットを支持する支持板を設けたことを特徴とする請求項7記載のボイラシステム。
【請求項9】
上記ボイラ装置を、炉壁で囲繞され木質チップを燃焼する燃焼室と、該燃焼室の上側に設けられ木質チップの燃焼ガスと水との熱交換を行なって蒸気を生成する熱交換部とを備えて構成し、該熱交換部を、水が供給される水管部と、該水管部が収容されるとともに下側に燃焼室からの排気ガスのガス入口を有し上側にガス出口を有した排ガスが流通する排ガス空間を形成する断熱壁とを備えて構成し、上記水管部を、一辺及び該一辺に対向した他辺を有して略矩形状に折曲形成され水の水供給口を有する下側主水管と、該下側主水管に対応して該下側主水管の上側に配置されるとともに一辺及び該一辺に対向した他辺を有して略矩形状に折曲形成され蒸気の蒸気出口を有する上側主水管と、上記下側主水管の一辺と上記上側主水管の他辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第1架設水管と、上記下側主水管の他辺と上記上側主水管の一辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第2架設水管と、上記下側主水管の一辺と上記上側主水管の一辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第3架設水管と、上記下側主水管の他辺と上記上側主水管の他辺との間に列をなして架設配管される複数の枝管を有し隣接する枝管同士が連結板で連結された第4架設水管とを備えて構成し、上記第1架設水管の下側及び第2架設水管の下側で囲繞される下部排ガス空間,上記第1架設水管の上側及び第2架設水管の上側で囲繞される上部排ガス空間,上記第1架設水管,第2架設水管及び第3架設水管で囲繞されるとともに上記第1架設水管,第2架設水管及び第4架設水管で囲繞される一対の側部排ガス空間を形成し、上記燃焼室からの排気ガスのガス入口からガス出口に至る経路を下部排ガス空間,側部排ガス空間及び上部排ガス空間の順になるように排ガス空間を形成したことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載のボイラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−230230(P2010−230230A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76874(P2009−76874)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年2月28日 日本木材学会発行の「第59回日本木材学会大会 研究発表要旨集」に発表
【出願人】(390025793)岩手県 (38)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(503304290)オヤマダエンジニアリング株式会社 (2)
【出願人】(597104994)北進産業機械株式会社 (4)
【Fターム(参考)】