説明

ボイラ設備

【課題】ボイラ設備において、ボイラでのガス燃料によるトラブルを防止して熱回収効率の向上を図る。
【解決手段】バイオマスを燃料として燃焼・ガス化させることでガス燃料を生成するガス化炉10と、ガス化炉10で生成されたガス燃料と化石燃料を燃焼させて発生した熱を回収するボイラ30とを設け、ガス化炉10で生成されたガス燃料をボイラ30に送るガス燃料配管24を設けると共に、このガス燃料配管24にガス燃料中のチャー(未燃固形分)を捕集するサイクロン26を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを燃焼・ガス化させることで一酸化炭素や水素などを発生させ、これをガス燃料として生成するガス化炉、バイオマスを用いて生成したガス燃料と石炭や油などの化石燃料とを燃料として併用して燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収することが可能なボイラ設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマスを燃料としてガス化させることで一酸化炭素や水素などを発生させ、これをガス燃料として生成するガス化炉が各種提案されている。また、石炭や油などの化石燃料を燃料として燃焼させることで熱を発生させ、この発生した熱を回収するボイラが各種提案されている。そして、ガス化炉で生成したガス燃料をボイラに供給し、このガス燃料と化石燃料とを燃料として併用して燃焼させ、熱を回収するようにした設備が、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4676177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなガス化炉とボイラとを組み合わせた設備にあっては、ガス化炉で生成したガス燃料と化石燃料(石炭や油など)を燃焼させて熱を回収している。この場合、ガス化炉で生成したガス燃料は、異物が含まれており、例えば、ガス化炉が循環流動層形式であるとき、ガス燃料中に流動材やチャー(未燃固形分)などが含まれている。この異物(流動材やチャーなど)を含んだままのガス燃料をボイラに供給して燃焼させると、炉壁や伝熱部へ溶融灰が付着するスラッギングやファウリングが発生しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、ボイラでのガス燃料によるトラブルを防止して熱回収効率の向上を図るボイラ設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のボイラ設備は、バイオマスを燃料として燃焼・ガス化させることでガス燃料を生成するガス化炉と、該ガス化炉で生成されたガス燃料と化石燃料を燃焼させて発生した熱を回収するボイラと、前記ガス化炉で生成されたガス燃料を前記ボイラに送るガス燃料送給経路と、該ガス燃料送給経路に設けられてガス燃料中の未燃固形分を捕集する未燃固形分捕集部と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
従って、ガス化炉にて、バイオマスを燃焼・ガス化させることでガス燃料が生成され、生成されたガス燃料がガス燃料送給経路を通ってボイラに送られ、このボイラにて、ガス燃料と化石燃料を燃焼させることで発生した熱が回収されることとなり、このとき、ガス燃料送給経路では、未燃固形分捕集部によりガス燃料中の未燃固形分が捕集されるため、この未燃固形分がボイラで燃焼することで発生するスラッギングやファウリングなどのトラブルを防止し、熱回収効率の向上を図ることができる。
【0008】
本発明のボイラ設備では、前記未燃固形分捕集部は、セラミックフィルタを有するサイクロンであることを特徴としている。
【0009】
従って、セラミックフィルタによりガス燃料中の未燃固形分を適正に捕集することができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0010】
本発明のボイラ設備では、前記ガス化炉は、バイオマスと空気と流動材を混合すると共に循環しながら燃焼・ガス化することでガス燃料を生成可能であり、前記ガス燃料送給経路にガス燃料中の流動材を捕集する流動材捕集部が設けられることを特徴としている。
【0011】
従って、ガス化炉で生成されたガス燃料がガス燃料送給経路を通ってボイラに送られるとき、流動材捕集部によりガス燃料中の流動材が捕集されるため、この流動材によるガス燃料送給経路やボイラでの磨耗やボイラでの燃焼不安定などのトラブルを防止することができる。
【0012】
本発明のボイラ設備では、前記流動材捕集部は、リターンフロー方式を利用した比重分離によりガス燃料中の流動材を捕集することを特徴としている。
【0013】
従って、ガス燃料がガス燃料送給経路を流れるときに、流動材捕集部にてリターンフローすることで、ガス燃料から流動材が比重分離されることとなり、簡単な構成で容易に流動材を分離することができる。
【0014】
本発明のボイラ設備では、前記ガス化炉は、650℃以下のガス燃料を生成可能であり、前記ボイラは、ガス燃料と化石燃料としての油を燃焼可能であることを特徴としている。
【0015】
従って、ガス化炉にて、バイオマスと空気を650℃以下で燃焼・ガス化してガス燃料を生成すると、バイオマスに含まれるアルカリ金属がガス燃料中に放出されずに未燃固形分中に残存する。ガス燃料送給経路にて、このアルカリ金属を含んだ未燃固形分が未燃固形分捕集部により捕集されるためにボイラに送給されることはない。ボイラにて、アルカリ金属が送給され、化石燃料としての油と共に燃焼すると、硫黄やバナジウムと反応してスラッギングやファウリングなどのトラブルが発生するが、未燃固形分捕集部で捕集されることで、このトラブルを防止することができる。
【0016】
本発明のボイラ設備では、前記ガス燃料送給経路への異物の付着を防止する付着防止装置が設けられることを特徴としている。
【0017】
従って、ガス燃料送給経路にて、温度が低下してガス燃料中のタールなどが析出すると、ガス燃料送給経路の壁面にこのタールや未燃固形分が付着しやすくなることから、付着防止装置によりガス燃料送給経路の壁面をガードすることで、異物の付着を防止することができ、ガス燃料送給経路におけるガス燃料のスムーズな流れを確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のボイラ設備によれば、ガス化炉で生成されたガス燃料がガス燃料送給経路を通ってボイラに送られるとき、未燃固形分捕集部によりガス燃料中の未燃固形分が捕集されることとなり、この未燃固形分がボイラで燃焼することで発生するトラブルを防止し、熱回収効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係るボイラ設備を表す概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例ボイラ設備におけるガス燃料送給経路を表す概略図である。
【図3】図3は、本実施例のボイラ設備におけるガス燃料送給経路の要部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るボイラ設備の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係るボイラ設備を表す概略構成図、図2は、本実施例ボイラ設備におけるガス燃料送給経路を表す概略図、図3は、本実施例のボイラ設備におけるガス燃料送給経路の要部を表す断面図である。
【0022】
本実施例のボイラ設備は、バイオマスを用いて生成したガス燃料と石炭や油などの化石燃料とを燃料として併用して燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収することが可能なボイラ設備である。
【0023】
この本実施例のボイラ設備は、図1に示すように、バイオマスを燃焼してガス化することでガス燃料を生成するガス化炉10と、このガス化炉10で生成したガス燃料と化石燃料とを燃焼することで発生した熱を回収するボイラ30を有している。
【0024】
ここで、バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源であって、化石資源を除いたものと定義する。例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料とするリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。
【0025】
ガス化炉10は、循環流動層形式のガス化炉であって、ガス化炉本体11を有している。この場合、循環流動層形式に限らず気泡型循環流動層形式であってもよい。このガス化炉本体11は、中空形状をなして鉛直方向に沿って設置され、上下及び周囲の各壁部が全面耐火材料により構成され、外部への放熱が防止可能な構造であり、例えば、500〜1000℃で運転可能となっている。このガス化炉本体11は、流動材としての流動砂と燃料としてのバイオマスを供給可能となっており、内部でバイオマスを燃焼・ガス化することで流動砂を高温化すると共に、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガスが発生し、この可燃性ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。ここで、流動砂としては、例えば、珪砂(主成分として、SiO、Alなど)であり、また、ガス化炉本体11内で発生したガスから硫黄を除去(脱硫)するために、炭酸カルシウム(CaCO)を投入してもよい。
【0026】
燃料供給系として、ホッパ12、スクリューフィーダ13、コンベア14、供給配管15を有している。ホッパ12は、所定量のバイオマスを貯留可能であり、スクリューフィーダ13は、このホッパ12に貯留されたバイオマスを所定量ずつ供給することができる。コンベア14は、スクリューフィーダ13から供給されたバイオマスを搬送可能であり、ここで、図示しない磁選機により釘や蝶番など、混入している金属製の異物を除去する。そして、バイオマスは、供給配管15を通して側部からガス化炉本体11内に投入される。
【0027】
なお、燃料供給系にて、ホッパ12の上方には乾燥装置16が設けられている。この乾燥装置16は、バイオマスに含まれる水分を除去する。
【0028】
また、ガス化炉本体11は、可燃性ガスと流動砂を分離するサイクロン17が接続されている。即ち、ガス化炉本体11は、上側部が排出配管18を介してサイクロン17の上側部に連結されており、このサイクロン17は、下部が循環配管19を介してガス化炉本体11の下側部に連結されており、この循環配管19にシールポッド20が装着されている。
【0029】
そして、ガス化炉本体11に対して、ガス化用の空気を供給する空気供給系が設けられている。即ち、空気供給系を構成する空気供給配管21は、端部がガス化炉本体11の下部に連結されると共に、この空気供給配管21から分岐した空気供給分岐配管22がシールポッド20に連結されている。この空気供給配管21は、後述するが、200〜350℃に加熱された高温空気をガス化炉本体11の下部から内部に供給することができると共に、空気供給分岐配管22によりシールポッド20に供給することができる。
【0030】
ガス化炉本体11は、下部にバイオマスに混入していた異物を除去する異物排出配管23が連結されている。
【0031】
また、サイクロン17は、上部に生成した可燃性ガス、つまり、ガス燃料を送給するガス燃料配管24が連結されている。このガス燃料配管24は、ガス燃料をボイラ30まで搬送するためのものであり、中途部に除塵装置25とサイクロン26が設けられている。この除塵装置25は、流速を低減することで、比重が重く、ガス燃料の気流に乗りにくい燃料とならない成分、具体的には、珪砂を主成分とする粉体を集塵除去する。そのため、除塵装置25は、下部に粉体排出配管27が設けられている。また、サイクロン26は、セラミックフィルタを有し、サイクロン17で除去できなかった微細なチャーを除去する。そのため、サイクロン26は、下部にチャー排出配管28が設けられている。
【0032】
なお、ガス化炉10で生成されるガス燃料は、主成分が一酸化炭素(CO)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)などから構成され、300〜1100kcal/Nm程度の低カロリーガスであり、650〜850℃の範囲でガス化炉10により生成される。
【0033】
従って、ガス化炉10にて、ガス化炉本体11は、図示しない供給経路から流動砂が供給されており、バイオマスは、乾燥装置16で乾燥された後にホッパ12に貯留され、このホッパ12からスクリューフィーダ13及びコンベア14により供給配管15を通してガス化炉本体11に投入される。また、ガス化炉本体11は、空気供給配管21により下部から燃焼・ガス化用の高温空気が供給される。すると、ガス化炉本体11内にて、流動砂とバイオマスとが流動混合すると共に、バイオマスが燃焼・ガス化して可燃性ガスが発生する。
【0034】
この燃焼・ガス化により発生した可燃性ガスは、流動砂と共に排出配管18を通してサイクロン17に排出され、このサイクロン17により可燃性ガスと流動砂とに分離される。そして、分離された可燃性ガスは、ガス燃料としてガス燃料配管24を通してボイラ30に供給される。このとき、ガス燃料配管24を流動するガス燃料は、除塵装置25により珪砂を主成分とする粉体が集塵除去され、サイクロン26により微細なチャーが除去される。また、サイクロン17で分離された高温の流動砂は、シールポッド20を介して循環配管19によりガス化炉本体11に戻される。
【0035】
一方、ボイラ30は、コンベンショナルボイラであって、ガス燃料と化石燃料とを燃焼可能なボイラ本体31を有している。このボイラ本体31は、中空形状をなして鉛直方向に設置され、このボイラ本体31を構成するボイラ本体壁の下部に燃焼装置32が設けられている。この燃焼装置32は、ボイラ本体壁に装着された複数の化石燃料用の燃焼バーナ33と、複数のガス燃料用の燃焼バーナ34とを有している。本実施例にて、化石燃料用の燃焼バーナ33は、周方向に沿って4個配設されたものが上下方向に4段配置されている。一方、ガス燃料用の燃焼バーナ34は、複数の化石燃料用の燃焼バーナ33の下方であって、周方向に沿って4個配設されたものが上下方向に1段配置されている。なお、化石燃料用の燃焼バーナ33とガス燃料用の燃焼バーナ34の配置関係は上下逆であってもよい。また、各燃焼バーナ33,34にて、周方向の数は4個に限るものではなく、段数も4段や1段に限るものではない。更に、各燃焼バーナ33,34対向するように配置してもよい。
【0036】
そして、化石燃料用の燃焼バーナ33は、微粉炭供給部35が供給配管36を介して連結されると共に、燃料油(または、燃料ガス)供給部37が供給配管38を介して連結されており、この場合、化石燃料として、微粉炭または燃料油を供給可能となっている。一方、ガス燃料用の燃焼バーナ34は、ガス化炉10からのガス燃料配管24が連結されている。この場合、ガス燃料配管24からガス燃料用の燃焼バーナ34に供給されるガス燃料は、400℃以上に維持することが望ましい。
【0037】
また、燃焼装置32は、各燃焼バーナ33,34に燃焼用空気を供給可能な空気供給配管39を有しており、この空気供給配管39は、基端部に送風機40が装着され、先端部がボイラ本体31の外周側に設けられた風箱41に連結されている。そのため、この風箱41に供給された空気を各燃焼バーナ33,34に供給することができる。
【0038】
ボイラ本体31は、上部に煙道42が連結されており、この煙道42に、対流伝熱部として排ガスの熱を回収するための、過熱器43,44、再熱器45,46、節炭器47,48,49が設けられており、ボイラ本体31での燃焼で発生した排ガスと水との間で熱交換が行われる。
【0039】
煙道42は、その下流側に熱交換を行った排ガスが排出される排ガス配管50が連結されている。この排ガス配管50は、空気供給配管39との間にエアヒータ51が設けられ、空気供給配管39を流れる空気と、排ガス配管50を流れる排ガスとの間で熱交換を行い、燃焼バーナ33,34に供給する燃焼用空気を200〜300℃の範囲に昇温することが望ましい。
【0040】
また、空気供給配管39は、エアヒータ51より下流側の位置から分岐して、空気供給配管21が設けられている。この空気供給配管21は、塵や埃などの粒子状物質を除去可能な除塵装置52と、高温空気を昇圧可能なブロア53が装着されており、エアヒータ51で200〜300℃に加熱した空気をガス化炉10のガス化炉本体11内に供給することができる。
【0041】
なお、排ガス配管50は、エアヒータ51より上流側に位置して、選択還元型触媒54が設けられ、エアヒータ51より下流側に位置して、電気集塵機55、誘引送風機56、脱硫装置57が設けられ、下流端部に煙突58が設けられている。
【0042】
従って、ボイラ30にて、送風機40を駆動して空気を吸引すると、この空気は、空気供給配管39を通してエアヒータ51で加熱された後に風箱41を介して各燃焼バーナ33,34に供給される。また、化石燃料としての微粉炭または燃料油は、供給配管36,38を通して化石燃料用の燃焼バーナ33に供給されると共に、ガス化炉10からのガス燃料は、ガス燃料配管24を通してガス燃料用の燃焼バーナ34に供給される。
【0043】
すると、化石燃料用の燃焼バーナ33は、燃焼用空気と化石燃料をボイラ本体31に噴射すると同時に着火し、また、ガス燃料用の燃焼バーナ34は、燃焼用空気とガス燃料をボイラ本体31に噴射すると同時に着火する。このボイラ本体31では、燃焼用空気、化石燃料、ガス燃料が燃焼して火炎が生じる。ボイラ本体31内の下部で火炎が生じると、燃焼ガスがこのボイラ本体31内を上昇し、煙道42に排出される。
【0044】
このとき、図示しない給水ポンプから供給された水は、節炭器47,48,49によって予熱された後、図示しない蒸気ドラムに供給されボイラ本体壁の各水管(図示せず)に供給される間に加熱されて飽和蒸気となり、図示しない蒸気ドラムに送り込まれる。更に、図示しない蒸気ドラムの飽和蒸気は過熱器43,44に導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器43,44で生成された過熱蒸気は、図示しない発電プラント(例えば、タービン等)に供給される。また、タービンでの膨張過程の中途で取り出した蒸気は、再熱器45,46に導入され、再度過熱されてタービンに戻される。なお、ボイラ本体31をドラム型(蒸気ドラム)として説明したが、この構造に限定されるものではない。
【0045】
その後、煙道42の節炭器47,48,49を通過した排ガスは、排ガス配管50にて、選択還元型触媒54でNOxなどの有害物質が除去され、電気集塵機55で粒子状物質が除去され、脱硫装置57により硫黄分が除去された後、煙突58から大気中に排出される。
【0046】
このように構成された本実施例のボイラ設備において、上述したように、バイオマスを燃料として燃焼・ガス化させることでガス燃料を生成するガス化炉10と、このガス化炉10で生成されたガス燃料と化石燃料を燃焼させて発生した熱を回収するボイラ30とを設けると共に、ガス化炉10で生成されたガス燃料をボイラ30に送るガス燃料送給経路としてのガス燃料配管24を設けている。そして、このガス燃料配管24に、ガス燃料中のチャー(未燃固形分)を捕集する未燃固形分捕集部としてのサイクロン26と、ガス燃料中の珪砂(流動材)を捕集する流動材捕集部としての除塵装置25が設けられている。
【0047】
即ち、図2に詳細に示すように、サイクロン17は、後流部にフィルタ(図示略)を有し、ガス化炉10で生成された燃焼ガスと珪砂及びチャーとを分離することができ、除去した珪砂及びチャーが循環配管19を通してガス化炉本体11に戻される。一方、分離されたガス燃料は、ガス燃料配管24を通してボイラ30に送給される。このガス燃料配管24は、第1、第2、第3配管24a,24b,24cから構成され、その間に除塵装置25とサイクロン26が装着されている。
【0048】
除塵装置25は、リターンフロー方式を利用した比重分離によりガス燃料中の珪砂を捕集することができる。除塵装置25は、上部から第1配管24aの下流端部が挿入されると共に、第2配管24bの上流端部が挿入されており、両者の間に屈曲して流速が低下する低流速部25aが形成される。そのため、第1配管24aから除塵装置25に流れるガス燃料は、この低流速部25aでその流速が低下し、第2配管24bに流れ込む。このとき、低流速部25aでは、ガス燃料の流速が低減することで、比重が重く、ガス燃料の気流に乗りにくい珪砂などが底部に溜まって分離される。そして、ガス燃料から分離された珪砂などが粉体排出配管27から排出される。なお、この珪砂は、粉体排出配管27から図示しない配管を通してガス化炉10のガス化炉本体11内に再投入するとよい。
【0049】
また、サイクロン26は、後流部にセラミックフィルタ26aを有しており、このセラミックフィルタ26aによりガス燃料からチャーを分離除去することができる。そして、ガス燃料から分離されたチャーがチャー排出配管28から排出される。なお、このチャーは、チャー排出配管28から図示しない配管を通してガス化炉10のガス化炉本体11内に再投入するとよい。
【0050】
ところで、本実施例のボイラ設備では、ガス化炉10でバイオマスを燃焼・ガス化することから、このバイオマスにナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属が分有している場合には、ここで生成したガス燃料にアルカリ金属が混入する。本実施例のガス化炉10は、500〜1000℃の高温領域で運転可能であり、具体的には、600〜650℃の低温領域、650〜850℃の領域で運転することが好ましい。ところが、ガス化炉10を650〜850℃の高温領域で運転すると、バイオマスに含まれるアルカリ金属が気化し、気体としてガス燃料に混入してしまう。そして、アルカリ金属を含むガス燃料がボイラに送給されて化石燃料と共に燃焼するとき、この化石燃料が燃料油であると、アルカリ金属が燃料油に含まれる硫黄やバナジウムと反応し、付着性溶融灰が生成され、この付着性溶融灰がボイラ本体31の炉壁や対流伝熱部へ付着し、スラッギングやファウリングなどのトラブルが発生するおそれがある。
【0051】
そこで、本実施例では、ボイラ30にて、化石燃料として燃料油を使用するときには、ガス化炉10を、600〜650℃の高温領域で運転するようにしている。ガス化炉10を600〜650℃の高温領域で運転すると、バイオマスに含まれるアルカリ金属が気化せずに、固体としてチャーに付着もしくは残存する。そして、チャーを含むガス燃料がガス燃料配管24を通してボイラ30に送給されるとき、サイクロン26によりガス燃料からチャーが分離回収される。そのため、アルカリ金属を有するチャーがボイラ30のボイラ本体31内に供給されることはなく、化石燃料が燃料油であっても、付着性溶融灰が生成されることはなく、スラッギングやファウリングなどのトラブルの発生が防止される。
【0052】
また、ガス燃料配管24は、耐火材料により断熱・保温された構造となっており、ガス化炉10で生成されたガス燃料が400℃程度(400〜450℃)より低下しないような構成となっている。この構造により、ガス燃料に含まれるタール(乾留液)が析出することはなく、ガス燃料配管24の内面へのタールや灰の付着が防止される。
【0053】
また、図3に示すように、ガス燃料配管24は、例えば、第1配管24aが屈曲部を有していたり、エキスパンジョン24cを有していたりする。すると、ボイラ設備の起動時や停止時にガス燃料の温度が低下すると、ガス燃料に含まれるタールが析出し、ガス燃料配管24の内面へこのタールや灰が付着するおそれがある。そこで、本実施例では、ガス燃料配管24は、その内面への異物としてのタールや灰などの付着を防止する付着防止装置としてブロア29が設けられている。このブロア29は、ガス燃料配管24の内面に向けて空気や窒素ガスなどを噴射することでガードし、この内面へのタールや灰などの付着が防止される。
【0054】
従って、ガス化炉10にて、バイオマスと燃焼・ガス化用の高温空気が供給されることで、バイオマスが燃焼・ガス化し、可燃性ガスが発生し、ガス燃料として取り出される。このとき、ガス化炉10は、600〜650℃の低温領域で運転されることから、バイオマスに含まれるアルカリ金属が気化せずに、固体としてチャーに付着し、このチャーを含むガス燃料がサイクロン17を介してガス燃料配管24に排出される。そして、この燃焼ガスがガス燃料配管24を流れるとき、まず、除塵装置25により珪砂が集塵除去され、次に、サイクロン26によりチャーが分離除去される。即ち、このサイクロン26によりアルカリ金属を含んだチャーが除去される。
【0055】
なお、サイクロン26によりガス燃料から除去されたアルカリ金属を含んだチャーは、ガス化炉10に再投入して同じ設備内で処理することが望ましいが、他の石炭焚きのボイラの高温、高空気比領域に供給してリサイクルしたり、ペレットなどの燃料製造に利用したりしてもよい。
【0056】
そして、ボイラ30にて、ガス燃料は、燃焼バーナ33,34により化石燃料としての燃料油と共にボイラ本体31に噴射される。この場合、ガス燃料は、アルカリ金属を含んでいないことから、バナジウムと反応して溶融灰が生成されることはなく、スラッギングやファウリングなどのトラブルの発生が防止される。その後、ボイラ本体31では、燃焼用空気、燃料油、ガス燃料が燃焼して火炎が生じ、燃焼ガスが上昇し、対流伝熱部で熱が回収される。
【0057】
このように本実施例のボイラ設備にあっては、バイオマスを燃料として燃焼・ガス化させることでガス燃料を生成するガス化炉10と、ガス化炉10で生成されたガス燃料と化石燃料を燃焼させて発生した熱を回収するボイラ30とを設け、ガス化炉10で生成されたガス燃料をボイラ30に送るガス燃料配管24を設けると共に、このガス燃料配管24にガス燃料中のチャー(未燃固形分)を捕集するサイクロン26を設けている。
【0058】
従って、ガス化炉10にて、バイオマスを燃焼・ガス化させることでガス燃料が生成され、生成されたガス燃料がガス燃料配管24を通ってボイラ30に送られ、このボイラ30にて、ガス燃料と化石燃料を燃焼させることで発生した熱が回収されることとなり、このとき、ガス燃料配管24では、サイクロン26によりガス燃料中のチャーが除去されるため、このチャーがボイラ10で燃焼することで発生するスラッギングやファウリングなどのトラブルを防止し、熱回収効率の向上を図ることができる。
【0059】
この場合、サイクロン26にセラミックフィルタ26aを設けており、このセラミックフィルタ26aによりガス燃料中のチャーを適正に捕集することができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0060】
また、本実施例のボイラ設備では、ガス化炉10として、バイオマスと空気と珪砂を混合すると共に循環しながら燃焼・ガス化することでガス燃料を生成可能なガス化炉本体11を用い、ガス燃料配管24にガス燃料中の珪砂を除去する除塵装置25を設けている。従って、ガス化炉10で生成されたガス燃料がガス燃料配管24を通ってボイラ30に送られるとき、除塵装置25によりガス燃料中の珪砂が除去されるため、この珪砂によるガス燃料配管24やボイラ本体31における壁面の磨耗、ボイラ30のボイラ本体31内での燃焼不安定などのトラブルを防止することができる。
【0061】
この場合、除塵装置25を、リターンフロー方式を利用した比重分離によりガス燃料中の珪砂を捕集可能とすることで、ガス燃料がガス燃料配管24を流れるときに、除塵装置25にてリターンフローすることで、ガス燃料から珪砂が比重分離されることとなり、簡単な構成で容易に珪砂を分離することができる。
【0062】
また、本実施例のボイラ設備では、ガス化炉10にて、600〜650℃の低温領域で運転し、ボイラ30にて、ガス燃料と化石燃料としての燃料油を燃焼している。従って、ガス化炉20にて、バイオマスと空気を650℃以下で燃焼してガス燃料を生成すると、バイオマスに含まれるアルカリ金属がガス燃料中に放出されずにチャーと共に排出される。ガス燃料配管24にて、このアルカリ金属を含んだチャーがサイクロン26により捕集されるためにボイラ30に送給されることはない。ボイラ30にて、アルカリ金属が送給されて燃料油と共に燃焼すると、アルカリ金属が硫黄やバナジウムと反応してスラッギングやファウリングなどのトラブルが発生するが、サイクロン26でアルカリ金属を含んだチャーが捕集されることで、このトラブルを防止することができる。
【0063】
この場合、ガス化炉10を600〜650℃の低温領域で運転することで、チャーの発生量が増加するおそれがあるが、アルカリ金属を含有するバイオマスを利用することができることで、燃料を選択する必要がなく、燃料コストを低減することができる。また、発生したチャーをガス化炉10に再投入したり、他の石炭焚きのボイラに供給したりして再利用することで、
【0064】
また、本実施例のボイラ設備では、ガス燃料配管24への異物の付着を防止する付着防止装置としてブロア29を設けている。従って、ガス燃料配管24にて、温度が低下してガス燃料中のタールなどが析出すると、ガス燃料配管24の壁面にこのタールや灰が付着しやすくなることから、ブロアから噴射される空気などによりガス燃料配管24の壁面をガードすることで、異物の付着を防止することができ、ガス燃料配管24におけるガス燃料のスムーズな流れを確保することができる。
【0065】
なお、上述した実施例では、流動材捕集部を除塵装置25、未燃固形分捕集部をサイクロン26としたが、この構成に限定されるものではなく、ガス燃料から流動材を捕集することができ、また、ガス燃料からチャーを捕集することができるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るボイラ設備は、ガス燃料送給経路にガス燃料中の未燃固形分を捕集する未燃固形分捕集部を設けることで、ボイラでのガス燃料によるトラブルを防止して熱回収効率の向上を図るものであり、いずれのボイラ設備にも適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 ガス化炉
11 ガス化炉本体
12 ホッパ
15 供給配管
16 乾燥装置
17 サイクロン
21 空気供給配管
24 ガス燃料配管(ガス燃料送給経路)
25 除塵装置(流動材捕集部)
26 サイクロン(未燃固形分捕集部)
30 ボイラ
31 ボイラ本体
32 燃焼装置
33 化石燃料用の燃焼バーナ
34 ガス燃料用の燃焼バーナ
39 空気供給配管
42 煙道
51 エアヒータ
52 除塵装置
53 ブロア
29 ブロア(付着防止装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを燃料として燃焼・ガス化させることでガス燃料を生成するガス化炉と、
該ガス化炉で生成されたガス燃料と化石燃料を燃焼させて発生した熱を回収するボイラと、
前記ガス化炉で生成されたガス燃料を前記ボイラに送るガス燃料送給経路と、
該ガス燃料送給経路に設けられてガス燃料中の未燃固形分を捕集する未燃固形分捕集部と、
を備えることを特徴とするボイラ設備。
【請求項2】
前記未燃固形分捕集部は、セラミックフィルタを後流部に有するサイクロンであることを特徴とする請求項1に記載のボイラ設備。
【請求項3】
前記ガス化炉は、バイオマスと空気と流動材を混合すると共に循環しながら燃焼することでガス燃料を生成可能であり、前記ガス燃料送給経路にガス燃料中の流動材を捕集する流動材捕集部が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のボイラ設備。
【請求項4】
前記流動材捕集部は、リターンフロー方式を利用した比重分離によりガス燃料中の流動材を捕集することを特徴とする請求項3に記載のボイラ設備。
【請求項5】
前記ガス化炉は、650℃以下のガス燃料を生成可能であり、前記ボイラは、ガス燃料と化石燃料としての油を燃焼可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のボイラ設備。
【請求項6】
前記ガス燃料送給経路への異物の付着を防止する付着防止装置が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のボイラ設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−219523(P2011−219523A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86803(P2010−86803)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】