説明

ボイラ

【課題】 ボイラの缶体カバーに生じる熱応力を緩和する。
【解決手段】 外側水管列8は、上端部において外側縦ヒレ11が設けられないことで、外列連通部12が設けられる。この外列連通部12を介して、外側水管列8の上端部から放射状に、排ガスが導出される。この排ガスは、外側水管列8と缶体カバー13との間の円筒状隙間20を介して、煙道14から排出される。円筒状隙間20の内、下方の設定領域には断熱材21が充填されている。これにより、缶体カバー13には、各水管6よりも高温部と、各水管6よりも低温部とができる。高温部は、各水管6よりも熱膨張量が大きいが、低温部は、各水管6よりも熱膨張量が小さい。従って、缶体カバー13全体の熱膨張量が各水管6の熱膨張量となるように、断熱材21の厚さと高さを設定して、缶体カバー13に生じる熱応力を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気ボイラ、温水ボイラ、熱媒ボイラ、および廃熱ボイラや排ガスボイラを含む各種ボイラに関するものである。特に、上部管寄せと下部管寄せとの間を、円筒状に配列した複数の垂直伝熱管にて連結し、少なくとも一部において、周方向に隣接する垂直伝熱管間の隙間に縦ヒレを設けた缶体を備える多管式のボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多管式のボイラとして、下記特許文献に開示されるものが知られている。この種のボイラは、環状に形成した上部管寄せと下部管寄せとの間に、一列または二列の水管列を形成するように、多数の水管が円筒状に配列された缶体を備える。このような缶体では、最も内側の水管列よりも内側が燃焼室とされ、それよりも外側が燃焼ガス流路とされる。
【0003】
従って、缶体上部に設置したバーナから燃焼室内へ向けて燃料の燃焼を行うと、燃焼ガスは燃焼室の下部で反転して、水管列と水管列との間、または水管列と缶体カバーとの間を通って、排ガスとして缶体上部から煙道へ排出される。この間、燃焼ガスは、各水管内の水と熱交換し、各水管内の水の加熱が図られる。
【特許文献1】特開平2−75805号公報 (第1図〜第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボイラは、通常、缶体内の圧力に基づき制御される。そのため、缶体内の水や蒸気は、制御圧力における飽和温度とされ、水管の温度もその飽和温度に近い。一方、缶体カバーは、高温の燃焼ガスまたは排ガスと接触するので、水管温度よりも高温とされる。従って、水管と缶体カバーとが同一材質であるとすると、温度差に基づき熱膨張量に差が出て、缶体カバーに熱応力が生じることになる。つまり、缶体カバーには、水管との温度差に基づき、熱応力が生じることになる。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、水管の熱膨張と缶体カバーの熱膨張とをバランスさせて、缶体カバーに生じる熱応力を緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて伝熱管列を構成する複数の伝熱管と、前記伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーと、前記伝熱管の熱膨張と前記缶体カバーの熱膨張とをバランスさせるために、前記伝熱管列と前記缶体カバーとの間の円筒状隙間の内、上下方向の設定領域に充填される断熱材とを備えることを特徴とするボイラである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、缶体カバーは、断熱材が設けられない領域は、燃焼ガスまたは排ガスによって、伝熱管温度(缶内圧力における熱媒の飽和温度であり、燃焼ガス温度よりも低温)よりも高温部とされるが、断熱材が設けられた領域は、燃焼ガスまたは排ガスと接触せず、しかも伝熱管からの伝熱が抑制されることによって、伝熱管温度よりも低温部とされる。従って、前記高温部は、伝熱管よりも熱膨張量が大きいが、前記低温部は、伝熱管よりも熱膨張量が小さい。よって、断熱材の厚さと高さとを調整しておくことで、伝熱管の熱膨張量に対し、前記高温部の伸びと前記低温部の縮みとをキャンセルさせ、結果的に伝熱管と缶体カバーとが同程度の伸びとなるようにすることができる。これにより、缶体カバーに生じる熱応力の緩和を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて内側伝熱管列を構成する複数の内側伝熱管と、前記内側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に円筒状に配列されて外側伝熱管列を構成する複数の外側伝熱管と、前記内側伝熱管列の上下方向一端部を残して、隣接する前記内側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の内側縦ヒレと、前記外側伝熱管列の上下方向他端部を残して、隣接する前記外側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の外側縦ヒレと、前記外側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーと、前記外側伝熱管列と前記缶体カバーとの間の円筒状隙間の内、前記上下方向一端部の側に充填される断熱材とを備えることを特徴とするボイラである。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、缶体カバーは、断熱材が設けられない領域は、燃焼ガスまたは排ガスによって、伝熱管温度(缶内圧力における熱媒の飽和温度であり、燃焼ガス温度よりも低温)よりも高温部とされるが、断熱材が設けられた領域は、燃焼ガスまたは排ガスと接触せず、しかも伝熱管からの伝熱が抑制されることによって、伝熱管温度よりも低温部とされる。従って、前記高温部は、伝熱管よりも熱膨張量が大きいが、前記低温部は、伝熱管よりも熱膨張量が小さい。よって、断熱材の厚さと高さとを調整しておくことで、伝熱管の熱膨張量に対し、前記高温部の伸びと前記低温部の縮みとをキャンセルさせ、結果的に伝熱管と缶体カバーとが同程度の伸びとなるようにすることができる。これにより、缶体カバーに生じる熱応力の緩和を図ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記缶体カバーは、前記上下方向他端部に大径部を有しており、前記缶体カバーを取り囲むように、ケーシングが設けられており、前記缶体カバーと前記ケーシングとの間の空間を介して、燃焼用空気が前記内側伝熱管列よりも内側の燃焼室へ送り込まれることを特徴とする請求項2に記載のボイラである。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ボイラの給気を用いて、缶体カバーを積極的に冷却することができる。これにより、断熱材の厚さを軽減し、コンパクトな構成とすることができる。また、燃焼用空気を予熱することで、熱効率の向上を図ることができる。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記缶体カバーには、上下方向への伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボイラである。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、缶体カバーの一部に伸縮部を設けることで、より一層確実に、熱応力の緩和を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のボイラによれば、伝熱管の熱膨張と缶体カバーの熱膨張とをバランスさせて、缶体カバーに生じる熱応力を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明のボイラは、その種類を特に問わないが、たとえば、蒸気ボイラ、温水ボイラ、熱媒ボイラ、廃熱ボイラまたは排ガスボイラである。いずれの場合も、ボイラは、多管式ボイラとされ、典型的には多管式小型貫流ボイラとされる。
【0016】
具体的には、ボイラは、上部管寄せと下部管寄せとの間を複数の伝熱管で接続して構成される缶体を備える。上部管寄せと下部管寄せとは、上下に離隔して平行に配置され、それぞれ中空の円環状とされている。各伝熱管は、垂直に配置され、上部管寄せと下部管寄せとの間を接続する。すなわち、各伝熱管は、上端部が上部管寄せに接続される一方、下端部が下部管寄せに接続される。各伝熱管は、上部管寄せと下部管寄せとの間に、それらの周方向へ沿って配列されることで、円筒状の伝熱管列を構成する。
【0017】
伝熱管列は、一列に限らず、二列もしくは三列、またはそれ以上であってもよい。たとえば、缶体は、内側伝熱管列と外側伝熱管列とを備える。この場合、内側伝熱管列は、上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列された複数の内側伝熱管から構成される。また、外側伝熱管列は、内側伝熱管列を取り囲むように、上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列された複数の外側伝熱管から構成される。このように伝熱管列を複数とする場合、各伝熱管列は同心円筒状に配列される。
【0018】
缶体は、通常、上下方向一方が閉塞され、上下方向他方にバーナが設けられる。このようにして、最も内側に配列される伝熱管列よりも内側が燃焼室とされ、この燃焼室内へ向けてバーナから燃料の燃焼が可能とされる。但し、廃熱ボイラや排ガスボイラとする場合には、缶体は、上下方向一方が閉塞され、上下方向他方の開口部から排ガスが導入される。つまり、廃熱ボイラや排ガスボイラの場合には、最も内側に配列される伝熱管列よりも内側の空間へ、排ガスが導入される。いずれの場合も、缶体の外周部は、缶体カバーにて覆われる。
【0019】
缶体カバーは、各伝熱管列を取り囲むように、上部管寄せと下部管寄せとの間に設けられる円筒状の部材である。この際、缶体カバーは、上端部において、上部管寄せとの隙間が封止され、下端部において、下部管寄せとの隙間が封止される。この缶体カバーには、煙道が接続される。燃焼室からの燃焼ガス(廃熱ボイラや排ガスボイラの場合には排ガス)は、各伝熱管と熱交換後、排ガスとして煙道から排出される。
【0020】
燃焼ガスは、伝熱管との熱交換が有効になされるように、伝熱管列と伝熱管列との間、および/または、伝熱管列と缶体カバーとの間を、設定された経路で流通する。この経路を規定するために、一部または全部の伝熱管列には、その上下方向一端部または上下方向他端部を残して、隣接する伝熱管間の隙間を閉塞するための縦ヒレを設けてもよい。この場合、縦ヒレが設けられないことで形成された隣接伝熱管間の隙間を介して、燃焼ガスは流通する。
【0021】
たとえば、缶体が内側伝熱管列と外側伝熱管列とを備える場合、内側伝熱管列には、その上下方向一端部を残して、隣接する内側伝熱管間の隙間を閉塞するように、内側縦ヒレが設けられる。また、外側伝熱管列には、その上下方向他端部を残して、隣接する外側伝熱管間の隙間を閉塞するように、外側縦ヒレが設けられる。そして、内側伝熱管列よりも内側を燃焼室とする。
【0022】
この場合、燃焼室からの燃焼ガスは、内側伝熱管列の上下方向一端部において、内側縦ヒレが設けられないことで形成された内側伝熱管間の隙間を介して、内側伝熱管列と外側伝熱管列との隙間へ導入される。さらに、外側伝熱管列の上下方向他端部において、外側縦ヒレが設けられないことで形成された外側伝熱管間の隙間を介して、外側伝熱管列と缶体カバーとの隙間へ導入される。そして、その排ガスは、缶体カバーに接続された煙道を介して外部へ排出される。
【0023】
このように、最も外側に配列される外側伝熱管列の上下方向一端部または上下方向他端部の全周から燃焼ガスが排出される構成の缶体の場合、外側伝熱管列の外側全周に缶体カバーを設ける必要がある。そして、その缶体カバーを介して、排ガスが煙道へ排出される。
【0024】
このような構成の缶体の場合、各伝熱管は、その内部の圧力における媒体(水や蒸気など)の飽和温度に近いが、缶体カバーは、伝熱管温度よりもたとえば50〜150℃ほど高い燃焼ガスと接触するために、各伝熱管よりも高温とされる。従って、缶体カバーには、伝熱管との温度差に基づき、熱応力が生じる不都合がある。
【0025】
この熱応力を緩和するためには、各伝熱管の熱膨張と、缶体カバーの熱膨張とをバランスさせればよい。そのために、外側伝熱管列と缶体カバーとの間の円筒状隙間の内、上下方向の設定領域に、断熱材が充填される。これにより、缶体カバーは、断熱材が設けられない領域は、燃焼ガスまたは排ガスによって、伝熱管温度よりも高温部とされるが、断熱材が設けられた領域は、燃焼ガスまたは排ガスと接触せず、しかも伝熱管からの伝熱が抑制されることによって、伝熱管温度よりも低温部とされる。従って、断熱材の厚さと高さとを調整しておくことで、伝熱管の熱膨張量に対し、前記高温部の伸びと前記低温部の縮みとをキャンセルさせ、結果的に伝熱管と缶体カバーとが同程度の伸びとなるようにすることができる。
【0026】
外側伝熱管列の上方外周部から燃焼ガスが排出される場合には、外側伝熱管列と缶体カバーとの円筒状隙間の内、下側の領域に断熱材を充填すればよい。一方、外側伝熱管列の下方外周部から燃焼ガスが排出される場合には、外側伝熱管列と缶体カバーとの円筒状隙間の内、上側の領域に断熱材を充填すればよい。
【0027】
缶体カバーに生じる熱応力の緩和を一層確実に行うためには、缶体カバーをボイラの給気を用いて冷却するのがよい。具体的には、缶体カバーは、前記高温部となる箇所に大径部を設ける一方、このような缶体カバーを取り囲むように、ケーシングを設ければよい。そして、缶体カバーとケーシングとの間の空間を介して、燃焼用空気が燃焼室へ送り込まれる。このようにして、送風機への吸込空気、または送風機からの吐出空気により、缶体カバーの冷却を図ることができる。
【0028】
さらに、缶体カバーの一部に、蛇腹状の伸縮部を設ければ、一層確実に熱応力の緩和を図ることができる。
【実施例1】
【0029】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のボイラの実施例1を示す概略縦断面図である。本実施例のボイラ1は、円筒状の缶体2を備えた多管式小型貫流ボイラである。缶体2は、上部管寄せ3と下部管寄せ4との間を、円筒状に配列された多数の水管(伝熱管)5,5,…、6,6,…で接続して構成される。
【0030】
上部管寄せ3と下部管寄せ4とは、上下に離隔して平行に配置され、それぞれ中空の円環状とされている。また、上部管寄せ3と下部管寄せ4とは、それぞれ水平に配置されると共に、同一軸線上に配置される。
【0031】
各水管5,6は、垂直に配置され、下端部が下部管寄せ4に接続される一方、上端部が上部管寄せ3に接続される。各水管5,6は、上部管寄せ3と下部管寄せ4との周方向へ順次に配列されることで、円筒状の水管列を構成する。本実施例では、内側水管列7と外側水管列8とが同心円筒状に配列されている。内側水管列7は、円筒状に配列された内側水管5,5,…にて構成される。一方、外側水管列8は、内側水管列7を取り囲むように、円筒状に配列された外側水管6,6,…にて構成される。
【0032】
内側水管列7には、下端部の設定領域を残して、隣接する内側水管5,5間の隙間を閉塞するように、内側縦ヒレ9が設けられる。つまり、内側水管5,5間の隙間は、下端部の設定領域を残して、内側縦ヒレ9にて閉塞される。内側水管列7は、内側縦ヒレ9が設けられない下端部において、隣接する内側水管5,5間に隙間が空けられる。この隙間は、内側水管列7の内側と外側とを連通するための連通部(内列連通部という)10とされる。
【0033】
外側水管列8には、上端部の設定領域を残して、隣接する外側水管6,6間の隙間を閉塞するように、外側縦ヒレ11が設けられる。つまり、外側水管6,6間の隙間は、上端部の設定領域を残して、外側縦ヒレ11にて閉塞される。外側水管列8は、外側縦ヒレ11が設けられない上端部において、隣接する外側水管6,6間に隙間が空けられる。この隙間は、外側水管列8の内側と外側とを連通するための連通部(外列連通部という)12とされる。
【0034】
ところで、各内側水管5には、所望により、その外周面から突出する内側横ヒレ(図示省略)をさらに設けてもよい。また、同様に、各外側水管6には、所望により、その外周面から突出する外側横ヒレ(図示省略)をさらに設けてもよい。各横ヒレは、上下に離隔して各水管5,6に複数設けることができる。また、各横ヒレは、通常、各水管5,6の径方向外側へツバ状に延出して設けられる。この際、水平方向に対し所望角度だけ傾斜させておくことで、燃焼ガスに旋回流を生じさせることができる。横ヒレの設置の有無、設置領域および設置位置、設置枚数、形状や大きさなどは適宜に設定される。
【0035】
上部管寄せ3と下部管寄せ4との間にはさらに、外側水管列8を取り囲むように、円筒状の缶体カバー13が設けられる。缶体カバー13は、上端部において、上部管寄せ3との隙間が封止され、下端部において、下部管寄せ4との隙間が封止される。缶体カバー13の周側壁上部には、煙道14が接続される。
【0036】
上部管寄せ3の下面および下部管寄せ4の上面には、各管寄せ3,4と各水管5,6との接続部を覆うように、耐火材15が設けられる。この際、下部管寄せ4側の耐火材15は、下部管寄せ4の中央部をも閉塞するように設けられる。下部管寄せ4側の耐火材15の中央部には、円柱状または円錐台状の凹部が形成されている。
【0037】
ところで、図示例では、各内側水管5の下端部は、それより上部よりも小径部16に形成されている。これは、内列連通部10を通過する燃焼ガスの流量を所望に確保するためである。従って、内列連通部10を通過する燃焼ガスの流量を所望に確保できる場合には、小径部16は必須ではない。内列連通部10の大きさは、隣接する内側水管5,5間の隙間と、内側縦ヒレ9の下端部の高さ位置にも左右されるため、小径部16を設ける代わりに、これら寸法を調整してもよい。一方、図示例では、各外側水管6の上端部には、小径部16は形成されていないが、各内側水管5と同様に小径部16を形成してもよい。
【0038】
上部管寄せ3の中央部には、下方へ向けてバーナ17が設けられる。このバーナ17には、燃料が供給されると共に、燃焼用空気が供給される。バーナ17を作動させることで、缶体2内において燃料の燃焼が行われる。この際、内側水管列7の内側は、燃焼室18として機能する。
【0039】
燃焼室18での燃料の燃焼による燃焼ガスは、内列連通部10を介して、内側水管列7と外側水管列8との間の燃焼ガス流路19へ導出される。そして、その燃焼ガスは、外列連通部12を介して、外側水管列8と缶体カバー13との間の円筒状隙間20へ導出される。その後、排ガスとして、缶体カバー13に接続された煙道14を介して、外部へ排出される。この間、燃焼ガスは、各水管5,6内の水と熱交換し、各水管5,6内の水の加熱が図られる。これにより、上部管寄せ3から蒸気を取り出すことができ、その蒸気は気水分離器(図示省略)などを介して、蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。
【0040】
外側水管列8と缶体カバー13との間の円筒状隙間20には、下方の設定領域に断熱材21が充填される。断熱材21は、その種類を特に問わないが、たとえばセラミックファイバーまたはロックウールである。このような断熱材21を設ける理由は、次のとおりである。
【0041】
図2は、図1の缶体2に断熱材21を充填していない状態を示す図である。仮に図2の状態でボイラ1を使用すると、燃焼室18からの燃焼ガスは燃焼ガス流路19を通って、外側水管列8と缶体カバー13との間の円筒状隙間20の全域へ導入される。この場合、各水管5,6は、その内部の圧力における水や蒸気の飽和温度(たとえば150〜180℃)に近いが、缶体カバー13は、排ガス温度(たとえば350℃)に近くなる。従って、缶体カバー13には、各水管5,6との温度差に基づく熱膨張量の差により、熱応力が生じることになる。
【0042】
この熱応力を緩和するために、本実施例では、図1に示すように、外側水管列8と缶体カバー13との間の円筒状隙間20の内、下方の設定領域に断熱材21を充填している。これにより、缶体カバー13は、断熱材21が設けられない領域は、排ガスによって、水管温度よりも高温部とされるが、断熱材21が設けられた領域は、排ガスと接触せず、しかも各水管5,6からの伝熱が抑制されることで、水管温度よりも低温部とされる。従って、前記高温部と前記低温部とを併せた缶体カバー13全体の熱膨張量が、各水管5,6の熱膨張量と同程度となるように、断熱材21の厚さと高さとを調整しておくことで、缶体カバー13に生じる熱応力の緩和を図ることができる。
【0043】
このように、本実施例のボイラ1では、排ガスを封止するための缶体カバー13の内側には、下方の設定領域にのみ断熱材21が充填される。従って、断熱材21が充填された下方の設定領域には、排ガスが流れない。これにより、缶体カバー13の上下方向に温度差を設け、上方を各水管5,6より高温部とする一方、下方を各水管5,6より低温部とすることができる。そして、缶体カバー13と各水管5,6とを同程度の伸びとして、缶体カバー13に生じる熱応力を緩和することができる。
【0044】
しかも、本実施例では、外側水管列8の下方領域において、断熱材21は、外側水管列8と缶体カバー13との隙間を完全に埋めるよう設けられる。従って、缶体カバー13の前記低温部は、燃焼ガスまたは排ガスの温度からではなく、それよりも低温の外側水管列8の温度から、さらに低温に保持される。これにより、断熱材21の厚さを小さくすることができる。
【0045】
また、本実施例では、各水管列7(8)は、隣接する水管5,5(6,6)間に隙間を空けて、その隙間に縦ヒレ9(11)を設ける構成である。このような構成により、各水管5,5(6,6)間の隙間への燃焼ガスの流入を可能として、その隙間がデッドスペースとなるのを防止し、また縦ヒレ9(11)により、燃焼ガスから各水管5(6)への伝熱効率を高めることができる。さらに、外側水管列8の全周から放射状に排ガスを出した後、缶体カバー13との間の円筒状隙間20を介して煙道14へ排ガスを導く構成であるから、外側水管列8の周方向全域で均等な排ガスの流れを確保することができる。
【実施例2】
【0046】
図3は、本発明のボイラの実施例2を示す概略縦断面図である。本実施例2のボイラも、基本的には前記実施例1のボイラ1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0047】
前記実施例1では、缶体カバー13は、単なる円筒状であったが、本実施例2では、缶体カバー13は、蛇腹状の伸縮部22を備えている。この伸縮部22は、断熱材21が充填されない前記高温部に設けられる。缶体カバー13が伸縮部22を備える場合、各水管5,6の熱膨張量との差を一層確実に軽減することができる。その他の構成は、前記実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【実施例3】
【0048】
図4は、本発明のボイラの実施例3を示す概略縦断面図である。本実施例3のボイラも、基本的には前記実施例1のボイラ1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0049】
前記実施例1では、缶体カバー13は、単なる円筒状であったが、本実施例3では、缶体カバー13は、大径部23を備えている。この大径部23は、断熱材21が充填されない前記高温部の側に設けられる。この大径部23は、外側水管列8の上部から放射状に排出される排ガスを受け入れて、周方向全域で均等な排ガスの流れを確保するものである。また、外列連通部12からの排ガスが煙道14へ排出されるまでの圧力損失を低減することもできる。さらに、本実施例3のボイラ1は、缶体カバー13を取り囲むように、円筒状のケーシング24が設けられる。そして、缶体カバー13とケーシング24との間の円筒状空間は、上端部が開口される一方、下端部は閉塞されている。そして、ケーシング24の周側壁下部には、連絡路25を介して送風機26の吸込口が接続される。この送風機26は、バーナ17へ燃焼用空気を送り込むためのものである。
【0050】
従って、外気は、上部管寄せ3上面のバーナ17を取り囲む位置から、缶体カバー13とケーシング24との間の空間を介して、燃焼用空気として燃焼室18へ送り込まれることになる。そして、送風機26への吸込空気により、缶体カバー13(特にその高温部となる大径部23)の冷却を図ることができる。但し、送風機26への吸込みではなく、送風機26からの吐出により、缶体カバー13の冷却を図ってもよい。具体的には、送風機26からの吐出空気を、缶体カバー13とケーシング24との空間を介して、燃焼用空気として燃焼室18へ送り込んでもよい。
【0051】
本実施例3のボイラ1の場合、ボイラ1の給気を用いて、缶体カバー13を積極的に冷却することができる。これにより、断熱材21の厚さを最小限に抑えることができる。
【実施例4】
【0052】
図5は、本発明のボイラの実施例4を示す概略縦断面図である。本実施例4のボイラも、基本的には前記実施例1のボイラ1と同様である。そこで、以下においては、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0053】
前記実施例1のボイラ1では、内側水管列7の下端部に内列連通部10を設け、外側水管列8の上端部に外列連通部12を設けた。これにより、缶体2上部のバーナ17からの燃焼ガスは、内側水管列7の下端部の内列連通部10から燃焼ガス流路19へ入り、外側水管列8の上端部の外列連通部12から缶体カバー13へ排出される構成であった。一方、本実施例4のボイラ1では、内側水管列7の上端部に内列連通部10を設け、外側水管列8の下端部に外列連通部12を設けた。これにより、缶体2上部のバーナ17からの燃焼ガスは、内側水管列7の上端部の内列連通部10から燃焼ガス流路19へ入り、外側水管列8の下端部の外列連通部12から缶体カバー13へ排出される構成である。
【0054】
本実施例4の場合、断熱材21は、外側水管列8と缶体カバー13との間の円筒状隙間20の内、上方の設定領域に充填される。その他の構成は、前記実施例1と同様であるため、説明は省略する。
【0055】
本発明のボイラ1は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例では、内側水管列7と外側水管列8とを設けたが、水管列の数は適宜に増減できる。また、前記各実施例では、缶体2の下部を閉塞し、缶体2の上部にバーナ17を設けたが、これとは逆に、缶体2の上部を閉塞し、缶体2の下部にバーナ17を設けてもよい。
【0056】
また、前記各実施例では、蒸気ボイラに適用した例について説明したが、温水ボイラや熱媒ボイラにも同様に適用可能である。さらに、前記各実施例において、バーナ17を設ける代わりに、内側水管列7の内側に排ガスを導入すれば、廃熱ボイラや排ガスボイラとすることができる。
【0057】
また、前記各実施例の構成は、互いに組み合わせることが可能である。たとえば、実施例2の伸縮部22を、実施例3の大径部23などに適用することもできる。また、実施例4のボイラ1に、実施例2の伸縮部22や、実施例3に記載のボイラ1の給気を用いた缶体カバー13の冷却構成を付加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のボイラの実施例1を示す概略縦断面図である。
【図2】図1の缶体に断熱材を充填していない状態を示す図である。
【図3】本発明のボイラの実施例2を示す概略縦断面図である。
【図4】本発明のボイラの実施例3を示す概略縦断面図である。
【図5】本発明のボイラの実施例4を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ボイラ
2 缶体
3 上部管寄せ
4 下部管寄せ
5 内側水管(内側伝熱管)
6 外側水管(外側伝熱管)
7 内側水管列(内側伝熱管列)
8 外側水管列(外側伝熱管列)
9 内側縦ヒレ
11 外側縦ヒレ
13 缶体カバー
18 燃焼室
20 円筒状隙間
21 断熱材
22 伸縮部
23 大径部
24 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて伝熱管列を構成する複数の伝熱管と、
前記伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーと、
前記伝熱管の熱膨張と前記缶体カバーの熱膨張とをバランスさせるために、前記伝熱管列と前記缶体カバーとの間の円筒状隙間の内、上下方向の設定領域に充填される断熱材と
を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項2】
上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて内側伝熱管列を構成する複数の内側伝熱管と、
前記内側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に円筒状に配列されて外側伝熱管列を構成する複数の外側伝熱管と、
前記内側伝熱管列の上下方向一端部を残して、隣接する前記内側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の内側縦ヒレと、
前記外側伝熱管列の上下方向他端部を残して、隣接する前記外側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の外側縦ヒレと、
前記外側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーと、
前記外側伝熱管列と前記缶体カバーとの間の円筒状隙間の内、前記上下方向一端部の側に充填される断熱材と
を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項3】
前記缶体カバーは、前記上下方向他端部に大径部を有しており、
前記缶体カバーを取り囲むように、ケーシングが設けられており、
前記缶体カバーと前記ケーシングとの間の空間を介して、燃焼用空気が前記内側伝熱管列よりも内側の燃焼室へ送り込まれる
ことを特徴とする請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記缶体カバーには、上下方向への伸縮部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−267713(P2008−267713A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112229(P2007−112229)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】