説明

ボイラ

【課題】本発明の目的は、ボイラ火炉内に注入した還元剤のアンモニアが炉外へ流出することを抑制し、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを提供することにある。
【解決手段】化石燃料を理論空気比以下で燃焼させる複数のバーナと、前記バーナの下流側に該バーナでの不足分の燃焼用空気を火炉内に供給するアフタエアノズルを備えたボイラにおいて、最上段に位置する前記バーナと前記アフタエアノズルとの間の領域の火炉の壁面に、少なくとも一つの出口孔を備えた還元剤注入ノズルを配設し、前記還元剤注入ノズルの出口孔から還元剤を含有する流体と酸素を含有する流体との混合流体を火炉内に供給するように構成したボイラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭又は石油等の化石燃料を燃焼するボイラに係り、特にボイラの火炉に還元剤を投入し、窒素酸化物(NOx)を低減するボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を燃焼するボイラではボイラ内で燃料を燃焼させる際に発生する燃焼ガスに含まれるNOx濃度を抑制することが求められており、その対策として一般に2段燃焼法を採用している。
【0003】
2段燃焼法を適用したボイラとしては、例えば特開平9−310807号公報に開示されているように、微粉炭焚きボイラの火炉に微粉炭バーナと、この微粉炭バーナの下流側にアフタエアノズルとを設け、微粉炭バーナから燃料の微粉炭と燃焼用空気を供給し、アフタエアノズルからは燃焼用の空気のみを供給して燃料の微粉炭を燃焼するように構成している。
【0004】
さらにボイラの火炉内でのNOx低減を目的として無触媒脱硝法が用いられている。例えば特開2006−64291号公報に開示されているように、アフタエア下流の酸化域で、ガス温度が約1000℃となる領域に還元剤であるアンモニアを注入し、NOxをNに還元しNOxを低減する方法が開示されている。
【0005】
またWO2005/001338公報には尿素を炉内に均一に吹き込むノズル構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−310807号公報
【特許文献2】特開2006−64291号公報
【特許文献3】WO2005/001338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アフタエア下流の酸化域に還元剤を注入する無触媒脱硝法ではNOxが低減する温度帯域が狭いため温度分布のあるボイラ内では脱硝効率が悪い。また、NOxを低減しようと還元剤投入量を増していくと、未反応のアンモニアが火炉から流出する。
【0008】
アンモニアは、燃焼ガス中の三酸化硫黄(SO)と反応して硫安となり、エアヒータに付着して閉塞を生じさせ、また、塩化水素と反応し白煙が生じるという問題がある。また、バーナ近傍に尿素を注入する従来技術では、尿素の注入位置、注入位置でのガス温度など詳細な脱硝条件が明確でない。
【0009】
本発明の目的は、ボイラ火炉内に注入した還元剤であるアンモニアが火炉外に流出することを抑制し、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボイラは、化石燃料を理論空気比以下で燃焼させる複数のバーナと、前記バーナの下流側に該バーナでの不足分の燃焼用空気を火炉内に供給するアフタエアノズルを備えたボイラにおいて、最上段に位置する前記バーナと前記アフタエアノズルとの間の領域の火炉の壁面に、少なくとも一つの出口孔を備えた還元剤注入ノズルを配設し、前記還元剤注入ノズルの出口孔から還元剤を含有する流体と酸素を含有する流体との混合流体を火炉内に供給するように構成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のボイラは、化石燃料を理論空気比以下で燃焼させる複数のバーナと、前記バーナの下流側に該バーナでの不足分の燃焼用空気を火炉内に供給するアフタエアノズルを備えたボイラにおいて、最上段に位置する前記バーナと前記アフタエアノズルとの間の領域の火炉の壁面に、複数の出口孔を備えた還元剤注入ノズルを配設し、還元剤を含有する流体及び酸素を含有する流体を、前記還元剤注入ノズルの異なる出口孔からそれぞれ火炉内に供給するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボイラ火炉内に還元剤を投入しても火炉外にアンモニアが排出することを抑制して、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施例であるボイラの概略構造を示す構成図。
【図2】実験炉を示す構成図。
【図3】本実施例のNH/NOxモル比と出口NOxの関係を示す特性図。
【図4】本実施例のNOx、NH残存率の関係を示す特性図。
【図5】本実施例のO/NHモル比と出口NOxの関係を示す特性図。
【図6】本発明の第2実施例であるボイラの概略構造を示す構成図。
【図7】本発明の第3実施例であるボイラの概略構造を示す構成図。
【図8】本発明の第4実施例であるボイラの概略構造を示す構成図。
【図9】第1実施例乃至第4実施例で使用される還元剤注入ノズルを示す一例。
【図10】第1実施例乃至第4実施例で使用される還元剤注入ノズルを示す他の一例。
【図11】本発明の第5実施例であるボイラの概略構造を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例であるボイラについて図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の第1実施例であるボイラについて図1を用いて説明する。図1に示した本発明の第1実施例であるボイラ50において、ボイラ50を構成する火炉1の下部の壁面には、微粉炭又は石油等の化石燃料と燃焼用空気とを共に火炉1の内部に供給して燃焼する複数個のバーナ2を上下方向の複数段に設置して、燃料を完全燃焼させるために必要な理論空気比以下となる量の燃焼用空気を前記バーナ2から火炉1内に供給して空気不足の状態で燃料を燃焼させ、バーナ2による燃焼によって発生するNOxを窒素に還元して火炉2内に生じたバーナ部燃焼ガス5に含まれるNOxの生成を抑えている。
【0016】
前記バーナ2よりも燃焼ガス下流側に位置する火炉1の上部の壁面には、燃焼用空気をアフタエアとして火炉1の内部に供給するアフタエアノズル3が設置されている。前記アフタエアノズル3から火炉1の内部に供給するアフタエア7によって火炉1内で完全燃焼した排ガス6は、ボイラ50の火炉1の下流側に設置された熱交換器8を通過して該熱交換器8で蒸気を発生させ、その後、煙道9を通って煙突10から大気に放出される。
【0017】
本実施例のボイラ50を構成している火炉1の壁面におけるバーナ2とアフタエアノズル3との間の領域に、バーナ部燃焼ガス5に含まれたNOxを窒素(N)に還元する還元剤を火炉1内に注入する還元剤注入ノズル4を配置している。本実施例では還元剤注入ノズル4から火炉1内に注入する還元剤はアンモニアガスである。図1に示された実施例では還元剤注入ノズル4は1個しか示されていないが、前記還元剤をバーナ部燃焼ガス5と均一に混合させるためには前記還元剤注入ノズル4を複数個設置することが望ましい。
【0018】
還元剤注入ノズル4には、還元剤のアンモニアガスを含有する流体を供給する還元剤供給系統18と、空気を供給する空気供給系統14がそれぞれ接続されている。還元剤供給系統18にはアンモニアガスタンク15から還元剤のアンモニアガスを供給するように構成されており、供給するアンモニアガス流量は制御装置40からの制御信号16によって還元剤供給系統18に設けた流量調節弁17の開度を操作して必要時に必要量のアンモニアガス流量を供給して前記還元剤注入ノズル4から火炉1内に注入する。
【0019】
前記アンモニアガスタンク15に貯蔵される還元剤は、アンモニアガスだけでなく、窒素、アルゴンなどの不活性ガスと混合希釈したアンモニアガスとしても良い。また、還元剤供給系統18に別系統を通じて不活性ガスを混合し、アンモニアガスを希釈しても良い(図示せず)。
【0020】
空気供給系統14にはブロア12から空気を供給し、供給する空気流量は制御装置40からの制御信号11によって空気供給系統14に設けた流量調節弁13の開度を操作して必要時に必要量の空気流量を供給して前記還元剤注入ノズル4から火炉1内に注入する。
【0021】
還元剤注入ノズル4から火炉1内に還元剤を注入してバーナ部燃焼ガス5に含まれたNOxを効率良く脱硝する条件の決定にあたって図2に示す実験炉60を用いて燃焼実験を行った。
【0022】
図2の実験炉60は実機ボイラと同様に2段燃焼を行い、火炉1の下部にバーナ2を配置し、バーナ2の下流にアフタエアノズル3を配置した。バーナ2から供給して燃焼させる燃料はプロパンを使用した。火炉1の壁面であるバーナ2とアフタエアノズル3との間の領域には還元剤を注入する還元剤注入ノズル4を配置した。
還元剤注入ノズル4にはアンモニアガスを供給する還元剤供給系統18と空気を供給する空気供給系統14をそれぞれ接続した。アフタエアノズル3から火炉1内に供給したアフタエア7によって火炉1内で完全燃焼した排ガス6は、熱交換器33で冷却されて屋外へ放出する。火炉1の出口のNOxの濃度は、熱交換器33の下流で十分冷却され反応が停止した下流側の位置32で測定した。
【0023】
以下に実験炉60での燃焼実験結果から最適な脱硝条件について述べる。
【0024】
図3は図2に示した実験炉60で還元剤としてアンモニアを注入する雰囲気ガス温度の影響を示した。横軸はノズルNH/NOxモル比で縦軸は出口NOxである。出口NOxはNH注入なしのときを基準として示した。
【0025】
雰囲気ガス温度は図2の実験炉60における火炉1内の位置30にて測定した。ガス温度が1200℃未満ではNHを注入しても排ガス6中のNOxは低下せず、排ガス6中のNOxの脱硝には1200℃以上のガス温度が必要である。NHの熱分解は温度が高いほど反応が促進するため還元剤注入ノズル4の位置での燃焼ガス温度は高いほどよい。
【0026】
従来の無触媒脱硝ではアフタエアノズル3の下流の火炉1内の酸化域で、ガス温度約800から900℃の狭い温度帯域でしかNOxが低減しないが、本方式ではアフタエアノズル上流の還元域で高温度の領域にアンモニアを注入すればよい。バーナ部の火炎温度は約1600℃以上であり、バーナ2とアフタエアノズル3の還元領域では高温のガス温度となる。
【0027】
次にNHの注入量であるが、図3に示したように、NH/NOxモル比1〜2近傍でNOxは極小となりNH/NOxモル比を増大するとNOxも増加する傾向にある。
【0028】
排ガス6中のNOxが低減するNH/NOxモル比の範囲はLで示した0.5〜3.0の範囲であって、最適値は1.0〜2.0の範囲である。
【0029】
ここで、横軸のNOxモルは、図2で示した還元剤注入ノズル4の上流域である火炉1内の位置31での平均NOx濃度から算出した。図1に示した実施例のボイラにおいても図3に示した上記範囲LのNH量を還元剤注入ノズル4から火炉1内に注入することで排ガス6中のNOxが低減する。
【0030】
ところでバーナ2の下流側とアフタエアノズル3の上流側の火炉1内の還元域では空気不足で燃焼しており、酸素不足の領域である。本発明ではこの還元域に外部から還元剤注入ノズル4によって還元剤であるアンモニアを火炉1内に注入することで、還元剤を増やし、排ガス6中のNOxの低減を図る。
【0031】
還元域ではアンモニアはOHラジカルと反応し、NHラジカルとなりNHラジカルがNOと反応して、(1)式、(2)式のようにNOを窒素(N2)に還元する。
【0032】
NH+OH → NH+HO・・・・・・・(1)
NH+NO → N+HO・・・・・・・・(2)
上式からわかるようにNOを窒素に還元するにはOHラジカルと反応してNHラジカルを生成することが重要である。
【0033】
ところで還元域でのOHラジカル濃度はバーナ空気比に依存しており、バーナ空気比が高い、すなわちバーナ部へ供給する空気量が多いほどOHラジカルは多く生成する。
【0034】
図4に還元域の違いによるアンモニア注入後のNOxとNHの残存率を示す。図2の実験炉60におけるアフタエアノズル3の直上流の還元域の空間でガスサンプリングを行い、NOx、NH濃度を測定した。NOxはNHを注入しない時のNOx濃度を100%とし、測定位置でのNOx濃度から残存率を算出した。またNHはNHを注入した濃度を100%とし、測定位置でのNH濃度から残存率を算出した。アンモニア注入量は脱硝に最適なNOxモルと等モル量とした。横軸の弱還元域はバーナ空気比0.8より高い場合を、強還元域はバーナ空気比0.8以下の場合を示す。
【0035】
図4から理解できるように、強還元域では、弱還元域に比べてNHが分解せず残存することを示している。還元域で残留したNHはアフタエアノズル3から供給される空気で酸化されNOxに転換する。よって還元域でNHが高濃度で残留すれば、出口NOxが増大するため、脱硝率は低下する。
【0036】
これは前述したようにOHラジカルが強還元域では少ないことによる。図4に空気を添加した場合の残存率を示す。強還元域の条件下で少量のO(酸素)を添加し、OHラジカルを増大することでNHの分解を促進し、NHの残存率が低下する。よって、アフタエア部でのNOx転換率を低減し、脱硝効果を高めることができる。
【0037】
図5にO注入の影響を示す。強還元域の条件でNHをNOxと等モル注入時に、少量の空気を注入した。図5に示すようにO/NHモル比が1.0近傍でNOxは最小となることがわかる。Oの注入量は図中のMで示す0.5〜1.5の範囲が最適範囲である。このように強還元域でも少量の酸素を注入することで、OHラジカルを増大させ、NHの分解を促進し、出口NOxが低減する。
【0038】
実験では強還元域の条件であるが、弱還元域でも少量の酸素を注入することでNHの分解を促進する効果は同じである。図1の実施例のボイラにおいてもOの注入量がO/NHモル比で上記した0.5〜1.5の範囲の最適範囲となるように、空気供給系統14を通じて大気中のOを含む空気を火炉1内に注入することでNOxが低減する。
【0039】
このように本実施例のボイラによれば、制御装置40からの指令信号によって還元剤供給系統18に設置した流量調節弁17の開度を制御すると共に、吸気供給系統14に設置した流量調節弁13の開度を制御することによって、NHを前記した図3に示した範囲であるNHの注入量が、NH/NOxモル比で上記した0.5〜3.0の範囲、最適範囲としては1.0〜2.0の範囲となるように調節すると共に、Oを前記した図5に示した最適範囲であるOの注入量がO/NHモル比で上記した0.5〜1.5の範囲となるように調節して火炉1内の還元域に注入することで、効率よく排ガス6中のNOxを低減することができる。また、本実施例のボイラでのNH注入位置はアフタエアノズル3より上流側であり、未反応のNHはアフタエア7の空気で酸化されNOxに転換するので炉外へのNHの流出がない。
【0040】
よって燃焼ガス6中にアンモニアが存在しないので火炉1の下流側に配置されたエアヒータ(図示せず)の閉塞も白煙も生じない。また、NHの分解促進に高価な薬品等を注入せずに、空気や排ガス6中に含まれる酸素を少量注入すればよく、低コストで効果が得られる。
【0041】
本実施例によれば、ボイラ火炉内に還元剤を投入しても火炉外にアンモニアが排出することを抑制して、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを実現することができる。
【実施例2】
【0042】
次に本発明の第1実施例であるボイラ50について図6を用いて説明する。図6に示した本発明の第2実施例であるボイラ50は、図1に示した第1実施例のボイラと基本的な構成が共通しているので両者に共通した構成の説明は省略し、相違する点について以下に説明する。
【0043】
図6に示した本実施例のボイラ50は、還元剤注入ノズル4に煙道9から分岐した分岐系統19を経由して排ガス6の一部を供給する排ガス供給系統23が接続されている。排ガス供給系統23にはブロア20が設置されており、煙道9に接続した分岐系統19から酸素を含んだ排ガス6の一部を吸い込み、第1実施例と同様に、制御装置40からの制御信号21で前記排ガス供給系統23に設けた流量調節弁22の開度を調整し、排ガスの供給量を制御して該排ガス供給系統23を通じて酸素を含んだ排ガス6を前記還元剤注入ノズル4に供給して火炉1内に注入する。
【0044】
ところで排ガス6に含まれた酸素濃度は約2〜3%であり、空気の酸素濃度21%に比べて約1/10の濃度である。同一の酸素濃度を供給する場合、排ガス6は空気より約10倍の流量となる。よって、第1実施例のボイラにおける空気供給に比べて、前記還元剤注入ノズル4から火炉1内に注入する酸素を含有する流体の流量が増大するため運動量が増加し、火炉1内のバーナ部から上昇してくるバーナ部燃焼ガス5との混合が促進する。
【0045】
本実施例のボイラ50においても、制御装置40からの指令信号16によって還元剤供給系統18に設置した流量調節弁17の開度を制御すると共に、煙道9から分岐した分岐系統19を経由して排ガス6の一部を供給する排ガス供給系統23に設置した流量調節弁22の開度を制御することによって、NHを前記した図3に示した範囲であるNHの注入量が、NH/NOxモル比で上記した0.5〜3.0の範囲、最適範囲としては1.0〜2.0の範囲となるように調節すると共に、Oを前記した図5に示した最適範囲であるOの注入量がO/NHモル比で上記した0.5〜1.5の範囲となるように調節して火炉1内の還元域に注入することで、効率よく排ガス6中のNOxを低減することができる。
【0046】
また、本実施例のボイラでのNH注入位置はアフタエアノズル3より上流側であり、未反応のNHはアフタエア7の空気で酸化されNOxに転換するので炉外へのNHの流出がない。よって燃焼ガス6中にアンモニアが存在しないので火炉1の下流側に配置されたエアヒータ(図示せず)の閉塞も白煙も生じない。
【0047】
本実施例のボイラによれば、第1実施例のボイラと同様の効果が得られ、さらに還元剤のアンモニアと燃焼ガス5との混合が促進して短時間で均一に混合するため、排ガス中のNOx低減率が増大するというメリットがある。
【0048】
本実施例によれば、ボイラ火炉内に還元剤を投入しても火炉外にアンモニアが排出することを抑制して、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを実現することができる。
【実施例3】
【0049】
次に本発明の第3実施例であるボイラについて図7を用いて説明する。図7に示した本発明の第3実施例であるボイラ50は、図1に示した第1実施例のボイラと基本的な構成が共通しているので両者に共通した構成の説明は省略し、相違する点について以下に説明する。
【0050】
図7に示した本実施例のボイラ50は、還元剤注入ノズル4に排ガス6の一部を供給する排ガス供給系統23に加えて、空気を供給する空気供給系統14が接続されている。還元剤の供給方法は先の第1実施例と同様である。
【0051】
本実施例のボイラ50においても、制御装置40からの指令信号によって還元剤供給系統18に設置した流量調節弁17の開度を制御すると共に、煙道9から分岐した分岐系統19を経由して排ガス6の一部を供給する排ガス供給系統23に設置した流量調節弁22の開度、及び酸素を含んだ空気を供給する空気供給系統14に流量調節弁13の開度をそれぞれ制御することによって、NHを前記した図3に示した範囲であるNHの注入量が、NH/NOxモル比で上記した0.5〜3.0の範囲、最適範囲としては1.0〜2.0の範囲となるように調節すると共に、Oを前記した図5に示した最適範囲であるOの注入量がO/NHモル比で上記した0.5〜1.5の範囲となるように調節して火炉1内の還元域に注入することで、効率よく排ガス6中のNOxを低減することができる。
【0052】
また、本実施例のボイラでのNH注入位置はアフタエアノズル3より上流側であり、未反応のNHはアフタエア7の空気で酸化されNOxに転換するので炉外へのNHの流出がない。よって燃焼ガス6中にアンモニアが存在しないので火炉1の下流側に配置されたエアヒータ(図示せず)の閉塞も白煙も生じない。
【0053】
即ち、酸素を含んだ空気と酸素を含んだ排ガス6の両者を混合して前記還元剤注入ノズル4に供給することで、還元剤注入ノズル4から供給する酸素を含有する流体流量を広範囲で調整でき、ボイラ50の負荷が変動して燃焼ガス5の流量が変化した場合でも、流量調節弁13、22の開度を調整し、燃焼ガス5との混合に最適な流量に調整でき、効率よく混合を促進することが可能となる。
【0054】
本実施例によれば、前記第1実施例のボイラと同様の効果が得られ、さらにボイラの負荷変動に対応して還元剤注入ノズルから注入する還元剤と燃焼ガス5とを効率よく混合でき、NOx低減率が増大するというメリットがある。
【0055】
本実施例によれば、ボイラ火炉内に還元剤を投入しても火炉外にアンモニアが排出することを抑制して、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを実現することができる。
【実施例4】
【0056】
次に本発明の第4実施例であるボイラについて図8を用いて説明する。図8に示した本発明の第4実施例であるボイラ50は、図1に示した第1実施例のボイラと基本的な構成が共通しているので両者に共通した構成の説明は省略し、相違する点について以下に説明する。
【0057】
図8に示した本実施例のボイラ50は、火炉1のアフタエアノズル3が上下に2段で構成されている。本構成によればアフタエアノズル3からアフタエア(空気)を火炉1内に、より均一に分散して供給することが可能となるので、アフタエアと燃焼ガス5との混合が促進し、素早く完全燃焼ができ排ガス6内のCOや石炭燃焼の場合は未燃分が減少して燃焼効率が増大する。
【0058】
本実施例のボイラ50においても、制御装置40からの指令信号によって還元剤供給系統18に設置した流量調節弁17の開度を制御すると共に、煙道9から分岐した分岐系統19を経由して排ガス6の一部を供給する排ガス供給系統23に設置した流量調節弁22の開度、及び酸素を含んだ空気を供給する空気供給系統14に流量調節弁13の開度をそれぞれ制御することによって、NHを前記した図3に示した範囲であるNHの注入量が、NH/NOxモル比で上記した0.5〜3.0の範囲、最適範囲としては1.0〜2.0の範囲となるように調節すると共に、Oを前記した図5に示した最適範囲であるOの注入量がO/NHモル比で上記した0.5〜1.5の範囲となるように調節して火炉1内の還元域に注入することで、効率よく排ガス6中のNOxを低減することができる。
【0059】
また、本実施例のボイラでのNH注入位置はアフタエアノズル3より上流側であり、未反応のNHはアフタエア7の空気で酸化されNOxに転換するので炉外へのNHの流出がない。よって燃焼ガス6中にアンモニアが存在しないので火炉1の下流側に配置されたエアヒータ(図示せず)の閉塞も白煙も生じない。
【0060】
アフタエアノズル3を上下に2段に設置した本構成は、第1実施例乃至第3実施例のボイラにも適用可能であり、同様の効果が得られる。
【0061】
本実施例のボイラ50によれば、第1実施例乃至第3実施例と同様の効果が得られるだけでなく、さらに排ガス中のCO、未燃分が低減できて燃焼効率が改善するというメリットがある。
【0062】
次に、図9及び図10に第1実施例乃至第4実施例のボイラに適用する還元剤注入ノズル4の構造の一例をそれぞれ示す。図9に示した還元剤注入ノズル4は、還元剤の流体42を噴出するノズル出口孔41が1個の場合を、図10に示した還元剤注入ノズル4は、還元剤の流体42を噴出するノズル出口孔41aとノズル出口孔41bの2個のノズル出口孔を備えた場合の構造を示す。
【0063】
図9及び図10に示した還元剤注入ノズル4は高温場に設置するため、ノズルが溶損しないように還元剤注入ノズル4の内部に冷却水43を流通させる流路を形成している。
【0064】
また、図10に示した還元剤注入ノズル4は、ノズル出口孔41aとノズル出口孔41bの2個のノズル出口孔に還元剤と酸素とを混合した同一流体を供給しても良く、或いは、還元剤を含有する流体と、酸素を含有する流体とを別々に供給するようにしても良い。
【0065】
本実施例によれば、ボイラ火炉内に還元剤を投入しても火炉外にアンモニアが排出することを抑制して、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを実現することができる。
【実施例5】
【0066】
次に本発明の第5実施例であるボイラについて図11を用いて説明する。図11に示した本発明の第5実施例であるボイラ50は、図1に示した第1実施例のボイラと基本的な構成が共通しているので両者に共通した構成の説明は省略し、相違する点について以下に説明する。
【0067】
図11に示した本実施例のボイラ50は、還元剤としてアンモニアガスの代わりにアンモニア水または尿素水を供給する還元剤供給系統28が還元剤注入ノズル4に接続されている。アンモニア水または尿素水は還元剤タンク24からポンプ25で送液され、還元剤供給系統28に設けた流量調節弁27で流量を制御する。流量調節弁27の開度は制御装置40からの制御信号26で操作される。
還元剤注入ノズル4から火炉1内に注入する液滴は、素早く気化しないで炉中央まで還元剤が到達するように微細化せず燃焼ガス5と混合させることが望ましい。
前述した図9及び図10に示す還元剤注入ノズル4のノズル構造を用いて1流体ノズル、2流体ノズルを使用するとよい。
【0068】
1流体ノズルを使用する場合は、還元剤を含有する液体をポンプなどで昇圧して一流体ノズルに供給し、酸素を含有する気体は別のノズルから供給するのが望ましい。
2流体ノズルを使用する場合は、還元剤を含有する液体と酸素を含有する気体を2流体ノズルに各々所定の圧に昇圧して供給し、ノズルで気液を混合して炉内に注入する。2流体ノズルは液量に対して気体量が少ないほど粗粒な液滴となる。よって、空気および酸素濃度の低い排ガス6の供給量を調整することで、所望の液滴径で炉内に注入でき、還元剤と燃焼ガスの混合が促進する。
【0069】
ところで尿素水は尿素を水に溶解した水溶液であり、安全で取り扱いが容易である。尿素水は高温場では(3)式のようにアンモニアに分解し、還元剤として作用する。
【0070】
CO(NH)2+HO → 2NH +CO・・・・・・(3)
また、水溶液を火炉内に注入するため、水の蒸発潜熱により燃焼ガス温度が低下し、アフタエア燃焼で生成するサーマルNOxが低減し、出口NOxが低下する。
【0071】
本実施例のボイラ50においても、制御装置40からの指令信号によって還元剤タンク24からアンモニア水または尿素水を供給する還元剤供給系統28に設置した流量調節弁27の開度を制御すると共に、煙道9から分岐した分岐系統19を経由して排ガス6の一部を供給する排ガス供給系統23に設置した流量調節弁22の開度、及び酸素を含んだ空気を供給する空気供給系統14に流量調節弁13の開度をそれぞれ制御することによって、NHを前記した図3に示した範囲であるNHの注入量が、NH/NOxモル比で上記した0.5〜3.0の範囲、最適範囲としては1.0〜2.0の範囲となるように調節すると共に、Oを前記した図5に示した最適範囲であるOの注入量がO/NHモル比で上記した0.5〜1.5の範囲となるように調節して火炉1内の還元域に注入することで、効率よく排ガス6中のNOxを低減することができる。
【0072】
また、本実施例のボイラでのNH注入位置はアフタエアノズル3より上流側であり、未反応のNHはアフタエア7の空気で酸化されNOxに転換するので炉外へのNHの流出がない。よって燃焼ガス6中にアンモニアが存在しないので火炉1の下流側に配置されたエアヒータ(図示せず)の閉塞も白煙も生じない。
【0073】
本実施例によれば、第1実施例のボイラと同様の効果が得られるだけでなく、さらにサーマルNOxが低減するというメリットがある。
【0074】
本実施例によれば、ボイラ火炉内に還元剤を投入しても火炉外にアンモニアが排出することを抑制して、排ガス中のNOxを確実に低減させることを可能としたボイラを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は化石燃料の燃焼に好適なNOxを低減するボイラに適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1:火炉、2:バーナ、3:アフタエアノズル、4:還元剤注入ノズル、41、41a、41b:ノズル出口孔、42:ノズル内流体、43:ノズル用冷却水、5:バーナ部燃焼ガス、6:排ガス、7:アフタエア、8、33:熱交換器、9:煙道、10:煙突、11、16、21、26:制御信号、13、17、22、27:流量調節弁、12、20、:ブロア、15:アンモニアガスタンク、18:還元剤供給系統、23:排ガス供給系統、24:アンモニア水および尿素水タンク、25:ポンプ、30、31、32:測定箇所、L、M:最適範囲、40:制御装置、50:ボイラ、60:実験炉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料を理論空気比以下で燃焼させる複数のバーナと、前記バーナの下流側に該バーナでの不足分の燃焼用空気を火炉内に供給するアフタエアノズルを備えたボイラにおいて、
最上段に位置する前記バーナと前記アフタエアノズルとの間の領域の火炉の壁面に、少なくとも一つの出口孔を備えた還元剤注入ノズルを配設し、前記還元剤注入ノズルの出口孔から還元剤を含有する流体と酸素を含有する流体との混合流体を火炉内に供給するように構成したことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
化石燃料を理論空気比以下で燃焼させる複数のバーナと、前記バーナの下流側に該バーナでの不足分の燃焼用空気を火炉内に供給するアフタエアノズルを備えたボイラにおいて、
最上段に位置する前記バーナと前記アフタエアノズルとの間の領域の火炉の壁面に、複数の出口孔を備えた還元剤注入ノズルを配設し、還元剤を含有する流体及び酸素を含有する流体を、前記還元剤注入ノズルの異なる出口孔からそれぞれ火炉内に供給するように構成したことを特徴とするボイラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のボイラにおいて、
前記還元剤注入ノズルに供給される還元剤は、アンモニアガス、アンモニア水、又は尿素水であって、前記還元剤注入ノズルに供給する還元剤の量は、火炉内で生成する燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)1モルに対して0.5から3モルの範囲に設定されていることを特徴とするボイラ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のボイラにおいて、
前記還元剤注入ノズルに供給される酸素を含有する流体は、空気、燃焼排ガス、又は空気と燃焼排ガスとの混合流体であって、供給する酸素の量は、供給する還元剤1モルに対して0.5から1.5モルの範囲に設定されていることを特徴とするボイラ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のボイラにおいて、
前記還元剤注入ノズルに供給される酸素を含有する流体は、空気、燃焼排ガス、又は空気と燃焼排ガスとの混合流体であって、前記還元剤注入ノズルが2流体ノズルの場合は前記流体を噴霧用の気体流体とし、供給する酸素量は、供給する還元剤1モルに対して0.5から1.5モルの範囲に設定されていることを特徴とするボイラ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のボイラにおいて、
前記アフタエアノズルは炉の壁面に複数段配置されていることを特徴とするボイラ。
【請求項7】
請求項3に記載のボイラにおいて、
前記還元剤注入ノズルに供給する還元剤を含有する流体の流量を制御して、供給する還元剤の量が火炉内で生成する燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)1モルに対して0.5から3モルの範囲となるように前記還元剤注入ノズルに設置した流量調節弁と、この流量調節弁の開度を調節する制御装置が設置されていることを特徴とするボイラ。
【請求項8】
請求項4に記載のボイラにおいて、
前記還元剤注入ノズルに供給する酸素を含有する流体の流量を制御して、供給する酸素の量が供給する還元剤1モルに対して0.5から1.5モルの範囲に火炉内で生成する燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)1モルに対して0.5から3モルの範囲となるように前記還元剤注入ノズルに設置した流量調節弁と、この流量調節弁の開度を調節する制御装置が設置されていることを特徴とするボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−93013(P2012−93013A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239343(P2010−239343)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】