説明

ボイル加工装置

【課題】 加圧ボイル室の圧力調整がより一層正確に図れるようにし、最適な茹で上げを可能とする新規なボイル加工装置を提供する。
【解決手段】 本発明のボイル加工装置1は、加圧ボイル室2の加圧状態を維持するための二重密閉構造7を、投入側及び排出側の双方に具え、加圧ボイル室2に食品Wを投入する場合や加圧ボイル室2から食品Wを排出する場合でも加圧ボイル室2の加圧状態が高いレベルで維持できるようにし、また加圧ボイル室2の前段には、加圧または常圧状態に設定できる前室ボイル室3が設けられ、ここは均圧連通管28によって加圧ボイル室2との均圧化が図れるように構成されて成り、更に加圧ボイル室2には加圧手段25を設け、前室ボイル室3と加圧ボイル室2との内圧を均圧化する場合や、食品Wを前室ボイル室3から加圧ボイル室2に投入する場合等に生じ得る圧力低下を補えるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、うどん等の麺類を工業的に茹でるボイル装置に関するものであって、特にボイル温度を100℃以上とする場合において麺類の出し入れ等に起因して微妙に変化し易かった室内の加圧状況を維持・安定させることにより最適なボイル処理が行えるようにした新規なボイル加工装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、うどん等の麺類を加圧下において100℃以上の湯で茹でると、その食感等が良好となることが知られており、これに対応した茹で加工装置が種々実用化されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1では、ボイル室を常圧より高い圧力として、湯の沸点を100℃以上に上げ、この状況下で麺類の茹で加工を行うようにしている。
【0003】
ところで当然ながら冷凍食品として市場に供給される麺類等を製造するにあたっては、ほぼ一定厚に薄く延ばされた麺生地を細長く切り出した後、上述した装置によってボイルし、その後、一食分毎、個分け状態に冷凍加工されるものであるが、これら一連の加工は、すべて連続的な加工として、その生産効率を維持しなければならない。
この場合、当然ながら前記ボイル室は、加圧状態であるから、未加工の麺類を次々に受け入れるにあたっては、加圧状態が損なわれないような工夫、例えば二重ハッチ構造が採られ、且つこれに伴い必ず前処理室を設置している。
すなわち、この前処理室は、未加工麺を受け入れる際には常圧雰囲気であるが、この麺をボイル室に供給する際には、受入ハッチを閉じ、前処理室を密閉した上で加圧蒸気ないしエアの供給を受け、主ボイル室と同圧にした後、送出しハッチを開け、麺を主ボイル室に供給して行く形態を採っている。
【0004】
ところで、この主ボイル室の圧力設定は、わずかな違いで湯の沸点に影響を与えてしまうから、その厳密な管理のために、主ボイル室と前処理室とを送出しハッチ開放前に連通させ、均等化することが行われている。
しかしながら、現実には、このような対策を採ったにも拘らず、好ましい茹で上げ状態が得られないことがあった。このことから、更に本発明者が、その原因究明を鋭意進めた結果、前処理室を主ボイル室と同じ圧力に設定したとしても、連通した途端に主ボイル室側の圧力が前処理室にとられ、好ましい圧力値から外れてしまうことが見出された。この理由は必ずしも明確ではないが、前処理室における湯量が主ボイル室に比べ少なく、熱容量がないこと、更には前処理室は外気に晒されるため周壁等の関連機材温度が低温方向に変動しがちであること等が原因と考えられる。
【特許文献1】特開平9−190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、前処理室から主ボイル室に麺類を送る前に、予め主ボイル室と前処理室とを連通させ圧力バランスを図るタイプのボイル装置であっても、主ボイル室の圧力設定が更に正確に図れ、もって最適な茹で上げを可能とするボイル加工装置の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載のボイル加工装置は、ボイル槽を具えた加圧ボイル室の内圧を適宜高め、100℃以上の湯で麺類等の食品を茹でるボイル装置において、この装置は、加圧ボイル室の加圧状態を維持するための二重密閉構造を、投入側及び排出側の双方に具え、加圧ボイル室に食品を投入する場合や加圧ボイル室から食品を排出する場合等において加圧ボイル室の加圧状態が高いレベルで維持できるように構成されて成り、また前記加圧ボイル室の前段には、加圧状態または常圧状態に設定できる前室ボイル室が設けられ、この前室ボイル室は、加圧ボイル室との均圧化が図れるように構成されて成り、更に前記加圧ボイル室には加圧手段が設けられ、前室ボイル室と加圧ボイル室との内圧を均圧化する場合や、麺類等の食品を前室ボイル室から加圧ボイル室に投入する場合等に生じ得る圧力低下を補えるようにしたことを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載のボイル加工装置は、前記請求項1記載の要件に加え、前記前室ボイル室には、加圧手段が設けられることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項3記載のボイル加工装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記前室ボイル室を加圧ボイル室と均圧化させるにあたっては、双方の室内に接続された連通管によって均圧化を図るようにしたことを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項4記載のボイル加工装置は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記加圧ボイル室または前室ボイル室の内圧を高めるための加圧手段は、加圧エアまたは蒸気のうちの一方または双方であり、これらの少なくとも一方を室内に供給して内圧を高めるようにしたことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0010】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち請求項1記載の発明によれば、加圧ボイル室に加圧手段を設けるため、前室ボイル室を加圧ボイル室と均圧連通させる場合や、麺類を前室ボイル室から加圧ボイル室に送り込む際の扉の開放時等において、加圧ボイル室の内圧が低下しても補うことができる。このため、加圧ボイル室の加圧状態を確実に維持することができ、麺類等の食品のボイルが好適な状態で行える。もちろん、本発明は加圧ボイルであるため、湯の温度を100℃以上に設定しても、未沸騰状態の湯(沸点に達していない湯)で麺類をボイル槽の底で静かに茹でることができ、いわゆる煮崩れを防止することができる。逆に言えば、沸騰した湯で茹でた場合には、麺類がボイル槽の中で激しく踊るように動くため、麺類どうしが互いに擦れ合って麺類に傷が付いたり、ちぎれたりすることがあり、商品価値を損なうことがある。
【0011】
また請求項2記載の発明によれば、前室ボイル室にも加圧手段を設けるため、前室ボイル室の内圧を充分に高めてから加圧ボイル室と連通させることができ、その分、加圧ボイル室の圧力降下を抑えることができる。従って、より一層良好な状態で麺類等のボイルを行うことができる。
【0012】
また請求項3記載の発明によれば、連通管によって前室ボイル室と加圧ボイル室との均圧化を図るため、均圧化の作動をより確実に行うことができる。
【0013】
また請求項4記載の発明によれば、加圧ボイル室または前室ボイル室の内圧を確実に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
【実施例】
【0015】
本発明のボイル加工装置1は、適宜密閉可能に構成されたボイル室を加圧し(これを加圧ボイル室2とする)、これにより湯(水)の沸点を100℃以上に高め、短時間でうどん等の麺類(食品)Wを茹でる装置である。なお、100℃以上の高温で茹でることにより、特に麺類W等の場合には、その食感を向上させ、強いコシや歯ごたえを引き出すことができるものである。
【0016】
また、麺類Wをより最適に茹で上げるには(より高い品質に茹で上げるには)、調理中、加圧ボイル室2の加圧状況(加圧維持)をほぼ一定に維持することが重要である。すなわち、加圧ボイル室2に麺類Wを投入または排出する場合においても、できる限り加圧ボイル室2の内圧を低下させないことが肝要である。このため本発明のボイル加工装置1では、一例として図1、2に示すように、加圧ボイル室2の前段と後段とに加圧ボイル室1の圧力を維持調整するための室(空間)を設けるものであり、各々前室ボイル室3、後室ボイル室4とする。もちろん、前室ボイル室3及び後室ボイル室4は、単に圧力の調整作用を担うだけでなく、麺類Wを茹でる作業も行う空間でもある。
【0017】
また前室ボイル室3の前段には、常時、大気開放された常圧ボイル室5が設けられ、ここでも麺類Wのボイルを行うものである。すなわち、常圧ボイル室5、前室ボイル室3、加圧ボイル室2、後室ボイル室4ともに湯張りされたボイル槽を有し(各室の末尾に「A」を付し、各ボイル槽を5A、3A、2A、4Aとする)、麺類Wを段階的に茹で上げ得るように構成される。ここで図中符号Hは、ボイル用の湯を示す。
【0018】
また常圧ボイル室5、前室ボイル室3、加圧ボイル室2には、麺類Wを順次送るための搬送体51、31、21を設けて成り、ここでは湯抜孔が多数開口された回動式バケット52、32、22によって麺類Wを搬送する。すなわち、搬送体51、31、21としての回動バケット52、32、22は各室に直列状に設けられ、麺類Wはこのバケットによって順次移し替えられ、常圧ボイル室5→前室ボイル室3→加圧ボイル室2→後室ボイル室4に順次送られる。具体的には、回動式バケット52、32、22は、初期状態で湯Hに漬かった状態で待機しており、この状態で麺類Wの受け取りとボイルが行われるものであり、その後、約90度の反転(回動)によって湯Hから上がり、上方開放口53、33、23を後段のバケットに臨ませるものである。これにより麺類Wは自重によって後段のバケットに順次落下投入されて行くものである。
【0019】
また常圧ボイル室5の前段には、ボイル加工装置1に麺類Wを投入する投入コンベヤ10が設けられ、これによって麺類Wは一食分(一玉分)ずつ常圧ボイル室5の回動式バケット52に落下投入される。
また後室ボイル室4の後段には、茹で上がった麺類Wを冷却する冷却室6が設けられ、この冷却室6は、冷却用の水(冷却水L)が張られた冷却槽6Aを具え、槽内には前記と同様の搬送体61(回動式バケット62)が設けられる。これによって、麺類Wは、回動式バケット62によって順次移し替えられながら、冷却水Lによる冷却を受けるものである。
なお、後室ボイル室4には、側面部に湯抜孔が多数開口された籠状の排出部41が固定状態に設けられ、この排出部41の下部から冷却室6までが輸送管42で接続され、麺類Wを幾らかの湯Hとともに冷却室6に送る(流す)ように形成されている。因みに湯張り状態の後室ボイル室4は、排出部41の上方に形成される排出側第一ハッチ73(後述)の開放によってのみ加圧ボイル室2と連通するものであり、ボイル槽4Aに張られた湯Hによって水密構造が図られている。
【0020】
また、本発明のボイル加工装置1では、加圧ボイル室2の加圧状態を高い精度で維持すべく、投入側と排出側とにおいて各々二重の密閉手段が施されており(これを二重密閉構造7とする)、このうち投入側に設けられる二重の密閉手段を投入側密閉構造7Aとし、排出側に設けられる二重の密閉手段を排出側密閉構造7Bとするものである。
投入側密閉構造7Aは、常圧ボイル室5と前室ボイル室3との間(境界壁面)に設けられる投入側第一ハッチ71と、前室ボイル室3と加圧ボイル室2との間(境界壁面)に設けられる投入側第二ハッチ72とを密閉手段として成る。
一方、排出側密閉構造7Bは、加圧ボイル室2と後室ボイル室4との間に設けられる排出側第一ハッチ73と、後室ボイル室4と冷却室6とを接続する輸送管42の途中に設けられる排出側第二コック74とを密閉手段として成る。
【0021】
また前室ボイル室3には、密閉後、この室内の圧力を高めるための加圧手段35を設けるものである。具体的には加圧エアを室内に導くエア導入路36と、蒸気を室内に導く蒸気導入路37とを具えて成る。なお、前室ボイル室3を加圧する目的は、麺類Wを前室ボイル室3から加圧ボイル室2に投入する際に、前室ボイル室3の内圧を加圧ボイル室2と同じレベルに高めるためであり、これによって投入側第二ハッチ72を開放した際に、極力、加圧ボイル室2の圧力低下を防ぐことができるものである。
【0022】
また前室ボイル室3と加圧ボイル室2とは、開閉弁29を具えた均圧連通管28によって接続されて成り、開閉弁29を開放させることにより双方の室内を連通させ、両室の圧力を均等化することができる。
【0023】
また、加圧ボイル室2にも前記と同様の加圧手段25を設けるものであり、これは前室ボイル室3において加圧手段35や均圧連通管38を作動させても、まだ投入側第二ハッチ42を開けた際に加圧ボイル室2の圧が低下する傾向があるためである。この理由は必ずしも明確ではないが、単に二つのボイル室の圧力を数値的に同じ状態に設定しても、各ボイル室の容積が異なることや、投入する麺類Wの熱容量等によって加圧ボイル室2の圧力が低下するものと考えられる。
なお、加圧ボイル室2や冷却室6において直列状に配された回動式バケット22、62の数などは適宜変更可能である。
【0024】
本発明のボイル加工装置1は、以上述べた構成を基本構造として有するものであって、以下、この装置を適用して実際に麺類Wを茹でる態様について説明する(図3〜図7参照)。
(1)常圧ボイル室への投入
まず図3(a)に示すように、麺類Wが、一食分ずつ小分けされた状態で投入コンベヤ10に載って移送され、ここから常圧ボイル室5の回動式バケット52に落下投入される。常圧ボイル室5では、大気開放状態でのボイルであるため、麺類Wはここで100℃以下の湯で茹でられる(一例として約98℃で約60秒間のボイル)。
なお、常圧ボイル室5で麺類Wを茹でている間は、投入側第一ハッチ71及び投入側第二ハッチ72は閉鎖されている。
【0025】
(2)常圧ボイル室から前室ボイル室への移送
常圧ボイル室5で適宜の時間茹でられた麺類Wは、前室ボイル室3に移し替えられるものであり、この移送(移載)にあたっては、図3(b)に示すように、まず投入側第一ハッチ71を開放するとともに、常圧ボイル室5の回動式バケット52をほぼ90度反転(回動)させ、ここに収容していた麺類Wを、前室ボイル室3の回動式バケット32に移送する。
なお、移送中は、投入側第一ハッチ71が開放されているため、前室ボイル室3は常圧である。また、前室ボイル室3で麺類Wを茹でる際には、この常圧状態のまま茹でることもできるが、移送後、投入側第一ハッチ71を閉鎖して、室内を適宜の加圧状態とした後、100℃以上の高温で茹でることもできる(一例として、うどんの場合、約110℃で約30秒間のボイルである)。
もちろん、前室ボイル室3でのボイルを常圧下で行う場合であっても、その後、ここから加圧ボイル室2に麺類Wを移送する際には、事前に前室ボイル室3の内圧を高め、加圧ボイル室2との圧力バランスを図るため、以下、前室ボイル室3の内圧を高める作動(作業)について説明する。
【0026】
(3)前室ボイル室の加圧(蒸気&加圧エアの導入)
前室ボイル室3の内圧を高めるには、図4(a)に示すように、まず投入側第一ハッチ71を閉鎖して前室ボイル室3を密閉状態にする。もちろん、投入側第一ハッチ71の操作は、常圧ボイル室5の回動式バケット52が湯Hに漬かる初期状態に戻した後に行うものである。その後、前室ボイル室3に接続された加圧手段35を作動させ、エア導入路36や蒸気導入路37から、加圧エアや蒸気のうちの一方または双方を導入して、加圧ボイル室2とほぼ平衡になるまで内圧を高める。
【0027】
(4)加圧ボイル室との均圧(バランス)
続いて、図4(b)に示すように、閉鎖していた開閉弁29を開放させ、均圧連通管28によって加圧ボイル室2と前室ボイル室3との圧力バランスを図る。
なお、このような均圧連通管28の作動は、上述したように前室ボイル室3を常圧状態から加圧状態にした後、つまり前室ボイル室3を加圧ボイル室2とほぼ同じ程度の圧力まで高めてから行うものであり、これは均圧連通時に生じ得る加圧ボイル室2の内圧低下を極力抑えるためである。しかし、現実には、事前に前室ボイル室3の内圧を高める操作を行っても、加圧ボイル室2は、均圧連通時に幾らかの圧力低下を生じることが本発明者らによって究明されたため、ここでは、この圧力低下が補えるように均圧連通時またはその前後において、加圧ボイル室2の内圧を幾らか高めるようにしており、以下、この加圧手法について説明する。
【0028】
(5)加圧ボイル室の加圧(内圧低下時の対応)
加圧ボイル室2の内圧を高めるには、図5(a)に示すように、加圧ボイル室2に接続された加圧手段25を作動させる。具体的にはエア導入路26や蒸気導入路27から、加圧エアまたは蒸気のうちの一方または双方を導入して内圧を高める。もちろん、このような加圧ボイル室2の加圧調整(低下圧力の補給)は、均圧連通時に必ず行う作業ではなく、均圧連通時に圧力が降下する場合にのみ、行えばよいものである。
【0029】
(6)前室ボイル室から加圧ボイル室への移送
以上のようにして前室ボイル室3と加圧ボイル室2との内圧がほぼ平衡になった後、麺類Wを前室ボイル室3から加圧ボイル室2に移送する。この移送にあたっては、図5(b)に示すように、投入側第二ハッチ72のみを開放し、前室ボイル室3の回動式バケット32をほぼ90度回動させ、ここに収容していた麺類Wを、加圧ボイル室2の回動式バケット22に移送する。
なお、ここでは上述したように移送に先立ち、前室ボイル室3と加圧ボイル室2との均圧を図っているが、投入側第二ハッチ72は、均圧連通管28に比べると、大きな連通面積を有しており、また移送される麺類Wの熱容量等も影響してか、投入側第二ハッチ72の開放時には、再度、加圧ボイル室2の内圧が低下することが考えられる。そのため、このような場合には、再び、加圧手段25を作動させて、加圧ボイル室2の圧力低下分を補うものである。もちろん、ここでも圧力低下を補う作業、つまり加圧手段25を作動させるタイミングは、投入側第二ハッチ72の開放時のみならず、その前後に行ってもよい。
【0030】
(7)加圧ボイル室でのボイル
加圧ボイル室2の回動式バケット22に麺類Wが移送されると、図6(a)に示すように、前室ボイル室3の回動式バケット32が湯Hに漬かる初期状態に戻り、投入側第二ハッチ72も閉鎖される。このような密閉状態で麺類Wは、加圧ボイル室2でのボイルを受ける。その間、麺類Wは、加圧ボイル室2に直列状に設けられた回動式バケット22に順次移し替えられて、ボイル作業が進行する。もちろん、ここでのボイル中も圧力低下が起こるような場合には、加圧手段25を作動させ、加圧ボイル室2の加圧状態を積極的に維持することが可能である。また、このため加圧ボイル室2に設ける加圧手段25の数や設置場所については、必ずしも図示した実施例に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。なお、麺類Wは、加圧ボイル室2で一例として約115℃でトータル約420秒間のボイルを受けるものである。
また、加圧ボイル室2でのボイル中は、上述したように密閉加圧下で行われるため、当然、排出側第一ハッチ73も閉鎖されている。
【0031】
(8)加圧ボイル室から後室ボイル室への移送
加圧ボイル室2でのボイルが終了すると、麺類Wは、後室ボイル室4に移送される。この移送にあたっては、図6(b)に示すように、排出側第二コック74は閉鎖したまま(止水状態としたまま)、排出側第一ハッチ73のみを開放する。また、これに伴い、加圧ボイル室2の最終位置にある回動式バケット22をほぼ90度回動させ、ここに収容していた麺類Wを、後室ボイル室4のボイル槽4A(排出部41)に移す。
【0032】
(9)後室ボイル室から冷却室への移送
後室ボイル室4に麺類Wが移し替えられると、加圧ボイル室2の最終位置にある回動式バケット22を湯Hに漬かる状態に戻し、また排出側第一ハッチ73を閉鎖する(図7(a)参照)。
そして、このような状態で、図7(a)に併せて示すように、排出側第二コック74を開放し輸送管42を通水状態にすると、後室ボイル室4の排出部41に収容されたいた麺類Wは、幾らかの湯Hとともに冷却室6に移送される。
なお、排出側第二コック74を開放しても加圧ボイル室2の密閉(加圧)状態は確実に維持できるものであり、それは排出側第一ハッチ73が閉鎖されており、また排出部41の周囲が湯Hで満たされ、水密構造が採られているためである。
【0033】
(10)冷却室での冷却
冷却室6に送られた麺類Wは、図7(b)に示すように、冷却室6に直列状に配された回動式バケット62により順次移し替えられながら冷却を受ける。なお、麺類Wは、冷却室6で一例として約15℃まで冷却されるものである。
また、冷却室6に麺類Wを送った後、排出側第二コック74は止水状態に閉鎖される。
【0034】
このように、本発明は加圧下でのボイルであるため、湯Hの温度を100℃以上にしても、未沸騰状態(沸点に達していない湯Hの状態)で麺類Wをバケットの底で静かに茹でることができ、いわゆる煮崩れを防止することができる。因みに、沸騰した湯Hで茹でた場合には、麺類Wが沸騰した湯Hによって激しくあばれるように動くため、麺類Wどうしが互いに擦れ合って傷が付いたり、ちぎれたりすることがあり、商品価値を損なうことがある。
【0035】
以上述べた作動態様は、一食分の麺類Wがボイル加工装置1に投入され、ボイルを受け、更に冷却されるまでを述べたが、このような一連のボイル作業は次々と行われるものである。つまり、投入コンベヤ10から麺類Wを常圧ボイル室5に投入する作業は、断続的に行われるものであり、例えば、ある麺類Wが常圧ボイル室5でボイルされている間、その前に投入された麺類Wは加圧ボイル室2でボイルされており、更にその前に投入されていた麺類Wは冷却室6で冷却される等、種々の調理工程にある麺類Wが同時に存在し得るものである。
【0036】
また、本明細書では主にボイル対象として、うどん等の麺類Wを例に挙げて説明したが、必ずしも麺類Wに限定されるものではなく、イモや豆等の他の食品Wをボイルすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のボイル加工装置を骨格的に示す斜視図である。
【図2】同上側面図である。
【図3】麺類をボイルする様子を段階的に示す側面図である。
【図4】麺類をボイルする様子を段階的に示す側面図である。
【図5】麺類をボイルする様子を段階的に示す側面図である。
【図6】麺類をボイルする様子を段階的に示す側面図である。
【図7】麺類をボイルする様子を段階的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ボイル加工装置
2 加圧ボイル室
2A ボイル槽
3 前室ボイル室
3A ボイル槽
4 後室ボイル室
4A ボイル槽
5 常圧ボイル室
5A ボイル槽
6 冷却室
6A 冷却槽
7 二重密閉構造
7A 投入側密閉構造
7B 排出側密閉構造
10 投入コンベヤ
21 搬送体
22 回動式バケット
23 上方開放口
25 加圧手段
26 エア導入路
27 蒸気導入路
28 均圧連通管
29 開閉弁
31 搬送体
32 回動式バケット
33 上方開放口
35 加圧手段
36 エア導入路
37 蒸気導入路
41 排出部
42 輸送管
51 搬送体
52 回動式バケット
53 上方開放口
61 搬送体
62 回動式バケット
63 上方開放口
71 投入側第一ハッチ
72 投入側第二ハッチ
73 排出側第一ハッチ
74 排出側第二コック
L 冷却水
H 湯
W 麺類(食品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイル槽を具えた加圧ボイル室の内圧を適宜高め、100℃以上の湯で麺類等の食品を茹でるボイル装置において、
この装置は、加圧ボイル室の加圧状態を維持するための二重密閉構造を、投入側及び排出側の双方に具え、加圧ボイル室に食品を投入する場合や加圧ボイル室から食品を排出する場合等において加圧ボイル室の加圧状態が高いレベルで維持できるように構成されて成り、
また前記加圧ボイル室の前段には、加圧状態または常圧状態に設定できる前室ボイル室が設けられ、この前室ボイル室は、加圧ボイル室との均圧化が図れるように構成されて成り、
更に前記加圧ボイル室には加圧手段が設けられ、前室ボイル室と加圧ボイル室との内圧を均圧化する場合や、麺類等の食品を前室ボイル室から加圧ボイル室に投入する場合等に生じ得る圧力低下を補えるようにしたことを特徴とするボイル加工装置。
【請求項2】
前記前室ボイル室には、加圧手段が設けられることを特徴とする請求項1記載のボイル加工装置。
【請求項3】
前記前室ボイル室を加圧ボイル室と均圧化させるにあたっては、双方の室内に接続された連通管によって均圧化を図るようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のボイル加工装置。
【請求項4】
前記加圧ボイル室または前室ボイル室の内圧を高めるための加圧手段は、加圧エアまたは蒸気のうちの一方または双方であり、これらの少なくとも一方を室内に供給して内圧を高めるようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載のボイル加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−302119(P2008−302119A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153952(P2007−153952)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(595012121)株式会社加藤製缶鉄工所 (4)
【Fターム(参考)】