ボツリヌス神経毒を含む治療用組成物

【課題】本発明の目的は、ボツリヌス毒素、又は化学的変性によってか又は遺伝子操作によってボツリヌス毒素から誘導される毒素を含む医薬組成物中で、哺乳類由来の蛋白に代わる非−蛋白性代替物を提供することにある。この新規の製剤は、ヒト患者に注射された場合、低い、そして好ましくはごく僅かな、免疫原性を有しなければならない。
【解決手段】本発明は、ボツリヌス菌由来のボツリヌス神経毒を含む医薬組成物に関し、この神経毒はボツリヌス神経毒複合体中に自然に存在する複合体形成蛋白、又は化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているボツリヌス神経毒を含まず、この変性されたボツリヌス毒素は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない。更に、本発明の医薬組成物は良好な安定性を有し、そしてヒト血清アルブミン不含で製剤化−されるのが有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のボツリヌス神経毒を含む医薬組成物に関し、この神経毒はボツリヌス神経毒複合体中に自然に存在する複合体形成蛋白、又は化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているボツリヌス神経毒を含まず、この変性されたボツリヌス毒素は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない。更に、本発明の医薬組成物は良好な安定性を有し、そしてヒト血清アルブミン不含で製剤化−されるのが有利である。
【背景技術】
【0002】
ヒトに由来するアルブミンは、医薬組成物中に存在する蛋白有効成分のためのバルクキャリヤー(bulk carrier)及び安定剤として利用されている。アルブミンは、有効成分の癒着の減少及び有効成分の変性の減少によって医薬組成物中で蛋白性有効成分を安定化すると立証されている。更に、アルブミンは、ヒト患者に注射した場合免疫原性を有しない。
【0003】
しかしながら、顕著な欠点が医薬組成物中でのアルブミンの使用にある。アルブミンは、特定の安定なウイルス、プリオン又はその他の感染性又は病原性化合物の感染の原因になっている。たとえばヒト感染性海綿状脳症(TSE)。結果して、ヒト血清アルブミンを含有する医薬組成物は、ますます規制する監視を受ける。同様に、ゼラチンは、アルブミン代替物として蛋白有効成分を含有する、いくつかの医薬組成物中に使用されている。哺乳類由来の蛋白として、ゼラチンも病原体感染の同一の危険性を有する。したがって哺乳類由来の蛋白性安定剤の代わるものが必要である。
【0004】
ボツリヌス毒素複合体は、クロストリジウム蛋白の混合物からなる。これらは種々の分子量の血球凝集素、非毒性、非−血球凝集蛋白(分子量約120,000)及び神経毒 (分子量約150,000)である。これらは、食中毒の場合経口毒性に関与する酸安定な複合体を生じる。純神経毒とは対照的に、この複合体は消化管中で攻撃的環境に抵抗し、そして神経毒の腸吸収を可能にし、ついでこれはリンパ系の血流を介して標的細胞に達し、そこで神経伝達物質の放出の遮断を誘発する。ついで筋麻痺及び種々の自律機能の停止が起こる。中毒患者は呼吸筋障害で死亡する。純神経毒は消化管で分解され、ひいては腸内吸収されないので、摂取後にこれは無毒である。非経口投与で、神経毒及びその複合体の治療効果は相違しない。というのはその複合体が組織中でその構成成分に分解され、そして神経毒のみが標的細胞によって取り込まれるからである。
【0005】
現在、ボツリヌス神経毒A型を含む2つの製品が、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん及び痙性斜頸の治療に許可されている:BOTOX(登録商標)及びDYSPORT(登録商標)。ボツリヌス神経毒を現在の技術水準においてジストニー性又は痙性筋に直接注射し、そこで神経毒が生理学的pHでその複合体から放出され、所望の薬理作用を引き出す。神経系のその他の障害(たとえば痙縮、偏頭痛、腰痛、頚椎障害、過流ぜん)を治療するための臨床試験は最近行われている。ボツリヌス毒素複合体A型(分子量900,000)は、種々のジストニアの治療に許可されている。許可された製品は、美容適応症、たとえば多汗症及び目立つしわにも使われる。その他のボツリヌス菌毒素複合体(B,C1,D,E,F,G型)並びにこれらのボツリヌス菌毒素から化学変性又は遺伝子操作によって導かれる毒素も、これらの治療に適する。
【0006】
2つのBOTOX(登録商標)及びDYSPORT(登録商標)は、使用直前に凍結乾燥形で臨床医学者に再構成のために提供される。あいにく、すべての患者及び適応症が同一の投薬量を必要とするわけではない。したがって、再構成される調製物は、後の使用のためにしばしば凍結されているか又は冷蔵される。これらの維持され、再構成される調製物は効力の安定性が検討された。BOTOX(登録商標)が、これを再構成し、ついで12時間冷蔵貯蔵した場合、その効力の少なくとも44%を失うことが観察された。さらに、再構成される調製物を−70℃で凍結させた場合、これはその効力の70%を失う。 非特許文献1。このような不安定性は著しい投薬量変化及び無駄な生成物を結果としてもたらす。かくして、本発明の目的は、安定な液体の開発及び製造、及び現行の製剤よりもよい取り扱い適性を有するボツリヌス毒素の凍結乾燥製剤である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gartlan, M.G., and Hoffman, H.T. Crystalline preparation of botulinum toxin type A (Botox): Degradation in potency with storage., Otolaryngology − Head and Neck Surgery 102(2): 135−140 (1992)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
血球凝集素 及びその他の外来蛋白を含まないボツリヌス神経毒(A,B,C1,D,E,F,又はG型)を含む、新規の医薬組成物が開発された。これは、毒素の量を低下させることなく、製剤の総蛋白含量を減少させる。本発明者は、すべての型の純神経毒が、A型の市販品及びB〜G型の複合体とは対照的に、抗体の形成をまったく誘発しないか、又はせいぜいほんの少し誘発することを、抗原性研究で見出した。この新規に開発された医薬(A,B,C1,D,E,F又はG型の純神経毒)の治療適用で、繰り返し投与後でさえ、抗体による治療に失敗がない。
【0009】
しかしながら、そして上述のように、問題が製剤化(formulation)に生じる。蛋白性活性物質として、ボツリヌス毒素は極めて不安定である。更に、ボツリヌス毒素複合体は、表面変化、熱、及びアルカリ条件に起因する変性に極端に影響を受けやすい。
【0010】
一般に酵素と同様に、ボツリヌス毒素(これは細胞内ペプチダーゼである。)の生物学的活性は、少なくとも一部それらの3次元立体構造に依存する。したがって、ボツリヌス毒素を、熱、種々の化学物質、表面伸張(surface stretching)及び表面乾燥によって解毒することができる。更に、承認された適応症で使用される希釈毒素濃度は、適する安定剤がある場合にかぎり毒素の急速な解毒をもたらすことが知られている。また、毒素安定性は貯蔵の際の重要なファクターである。したがって安定剤は絶対必要である。今まで、安定性は、哺乳類由来の蛋白アルブミン及びゼラチンの製剤によって達成されてきた。上述のように、哺乳類由来の蛋白は、特定の安定なウイルス、プリオン又はドナー由来のその他の感染性又は病原性化合物が毒素に悪影響を及ぼすという危険を引き起こす。
【0011】
更に、凍結乾燥の条件(pH、温度、希釈及び減圧を含む)は、毒素を解毒する働きをする。今まで、哺乳類由来の蛋白、たとえばゼラチン及び血清アルブミンは、ボツリヌス毒素の安定化のためにある程度うまく使用されてきた。それゆえにこれは標準的な安定剤である。
【0012】
たとえば、医薬組成物BOTOX(登録商標)(Allergan社、アーヴァイン、カルフォルニアから入手できる)を含有する市販のボツリヌス毒素は、無菌の、真空乾燥された形で包装された精製されたボツリヌス毒素A型複合体、アルブミン及び塩化ナトリウムからなる。BOTOX(登録商標)のそれぞれのバイアルは、約100単位(U) のボツリヌス菌毒素A型複合体、0.5mgのヒト血清アルブミン及び0.9mgの塩化ナトリウムを、保存剤不含の無菌の、真空乾燥された形で含有する。
【0013】
蛋白調製物を安定化する方法が多く試みられている。 Carpender 等、 Interactions of Stabilizing Additives with Proteins During Freeze−Thawing and Freeze−Drying, International Symposium on Biological Product Freeze−Drying and Formulation, 24−26 October 1990; Karger (1992), 225−239。
【0014】
アルブミン及び塩化ナトリウムと同時に、賦形剤としてのジサッカライド セロビノースの使用は、アルブミンのみによる凍結乾燥後の毒性(>75% 〜>90% 回復(recovery))に比べて、結晶性ボツリヌス毒素A型の凍結乾燥後の毒性分解(10% 回復)を実証した。Goodnough等,Stabilization of Botulinum Toxin Type A During Lyophilization, App &
Envir. Micro. 58 (10) 3426−3428 (1992)。
【0015】
更に、サッカライド(たとえばグルコース又はグルコースのポリマー)又は炭水化物を含む蛋白製剤は安定であると知られていない。というのは蛋白及びグルコースが一緒に作用し、グルコース及びグルコースポリマーの還元性質の故にミラー分解(Maillard degradation)されることが実証されたからである。これに反して、アルコール、たとえば、イノシトール、マンニトールは、非還元性であり、凍結乾燥中、蛋白を安定化する抗凍結剤賦形剤として長く使用されている。
【0016】
ボツリヌス毒素の不安定性及び哺乳類由来の安定剤及びポリサッカライドの付帯リスクを踏まえて、安定な蛋白安定剤が、製剤科学者にとって目標となり続けている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
要旨
本発明の目的は、ボツリヌス毒素、又は化学的変性によってか又は遺伝子操作によってボツリヌス毒素から誘導される毒素を含む医薬組成物中で、哺乳類由来の蛋白に代わる非−蛋白性代替物を提供することにある。この新規の製剤は、ヒト患者に注射された場合、低い、そして好ましくはごく僅かな、免疫原性を有しなければならない。
【0018】
したがって本発明によって包含されねばならない事項は、特に下記用語に要約される:
【0019】
A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のボツリヌス神経毒、あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物[この神経毒又は神経毒の混合物は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白(the complexing proteins)を含まない]、及び水溶液中でボツリヌス神経毒の生物学的活性を保持する非蛋白性(non−proteinaceous)安定剤を含む、医薬組成物。
【0020】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、上記医薬組成物。
【0021】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及び ポリエチレングリコールから選ばれる、上記医薬組成物。
【0022】
pH緩衝剤を含む、上記医薬組成物。
【0023】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、上記医薬組成物。
【0024】
抗凍結剤を含む、上記医薬組成物。
【0025】
抗凍結剤がポリアルコールである、上記医薬組成物。
【0026】
ポリアルコールが1種以上のイノシトール、マンニトール及びソルビトールから選ばれる、上記医薬組成物。
【0027】
凍結乾燥されている、上記医薬組成物。
【0028】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして組成物が凍結乾燥されている、上記医薬組成物。
【0029】
ヒアルロン酸を含み、そして組成物が凍結乾燥されている、上記医薬調製物。
【0030】
ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態の治療に有効な量で、ヒトを含む動物に投与されるための、上記医薬組成物。
【0031】
ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態が、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸、痙縮、ジストニア、偏頭痛、腰痛、頚椎障害、斜視、多汗症及び過流ぜんから選ばれる、上記医薬組成物。
【0032】
美容コンディションが目立つしわである、上記医薬組成物。
【0033】
さらに、A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のボツリヌス神経毒、あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物(この神経毒又は神経毒の混合物は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない)、及び水溶液中でボツリヌス神経毒の生物学的活性を保持する非蛋白性安定剤を含む、ボツリヌス神経毒調製物。
【0034】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0035】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選ばれる、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0036】
水溶液がpH緩衝剤を含む、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0037】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0038】
哺乳類由来の蛋白性安定剤を含まない、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0039】
調製物が哺乳類由来の蛋白性安定剤、アルブミン及びゼラチンを含まない、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0040】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして調製物が凍結乾燥されている、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0041】
ヒアルロン酸を含み、そして調製物が凍結乾燥されている、上記ボツリヌス神経毒調製物。
【0042】
更に、A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のボツリヌス神経毒あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物(この神経毒又は神経毒の混合物は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない)を安定化する方法において、ボツリヌス神経毒を生物学的活性を保持するのに有効な量で、上記神経毒と非蛋白性安定剤とを水溶液中で混合することからなる、前記方法。
【0043】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、上記方法。
【0044】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選ばれる、上記方法。
【0045】
水溶液がpH緩衝剤を含む、上記方法。
【0046】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、上記方法。
【0047】
水溶液が抗凍結剤を含む、上記方法。
【0048】
水溶液が凍結乾燥されている、上記方法。
【0049】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして調製物が凍結乾燥されている、上記方法。
【0050】
ヒアルロン酸を含み、そして調製物が凍結乾燥されている、上記方法。
【0051】
更に、ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態の治療方法において、この治療を必要とするヒト又は動物に、A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のボツリヌス神経毒あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物(この神経毒又は神経毒の混合物は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない)と、水溶液中でボツリヌス神経毒の生物学的活性を保持する非蛋白性安定剤とを混合して含む組成物を投与する段階を包含する、前記治療方法。
【0052】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、上記方法。
【0053】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選ばれる、上記方法。
【0054】
水溶液がpH 緩衝剤を含む、上記方法。
【0055】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、上記方法。
【0056】
水溶液が抗凍結剤を含む、上記方法。
【0057】
抗凍結剤がポリアルコールである、上記方法。
【0058】
ポリアルコールが1種以上のイノシトール、マンニトール及びソルビトールから選ばれる、上記方法。
【0059】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして組成物が凍結乾燥されている、上記方法。
【0060】
水溶液がヒアルロン酸を含み、そして組成物が凍結乾燥されている、上記方法。
【0061】
ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態が、美容コンディション、眼瞼けいれん、 片側顔面けいれん、痙性斜頸、痙縮、偏頭痛、腰痛、頚椎障害、斜視、多汗症、過流涎及びジストニアから選ばれる、上記方法。
【0062】
美容コンディションが目立つしわである、上記方法。
【0063】
更に、美容コンディションを処置するための、上記ボツリヌス神経毒調製物の使用。
【0064】
更に、ボツリヌス神経毒治療が必要である病態用薬剤を製造するための、上記ボツリヌス神経毒調製物の使用。
【0065】
定義
本明細書において、下記用語又は表現は次の定義を有する。
【0066】
“医薬組成物”は、有効成分、この場合ボツリヌス毒素、又は本発明の血球凝集素蛋白不含ボツリヌス毒素、又は化学変性によって又は遺伝子操作によってボツリヌス毒素から導かれる毒素が、哺乳類由来の蛋白以外の物質によって安定化されている製剤である。このような医薬組成物は、ヒト患者に診断的又は治療的投与(すなわち筋肉内又は皮下注射によって)適する。医薬組成物は凍結乾燥されるか又は真空乾燥されるか、再構成されるか、又は溶解されていてよい。ボツリヌス毒素有効成分はボツリヌス毒素血清型A,B,C1,D,E,F又はGのうちの1つであることができ、これらのすべては更に変性されて、天然の神経毒中にある複合蛋白を含まないか、又は化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されている。
【0067】
“治療製剤”とは、病態、たとえば末梢筋肉の多動(すなわち痙縮)から起こる病態を治療/緩和する本発明の製剤の能力を意味する。
【0068】
“安定化する(stabilizing)”、“安定させる(stabilizes)”又は“安定化(stabilization)”とは、有効成分、すなわちボツリヌス毒素、又は再構成された又は水溶液の医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素から化学変性によって又は遺伝子操作によって導かれた毒素を、生物学的に活性なボツリヌス毒素が医薬組成物中に導入される前に有した毒性に対して約20%より多く、最高約100%まで有することを意味する。
【0069】
“抗凍結剤”とは、有効成分(すなわちボツリヌス毒素、又は再構成された又は水溶液の医薬組成物中に存在するボツリヌス毒素から化学変性によって又は遺伝子操作によって導かれた毒素を、医薬組成物中に凍結乾燥される前に、生物学的に活性なボツリヌス毒素が有する毒性の約20%より多く、最高約100%まで有する。)をもたらす賦形剤を意味する。
【0070】
“pH緩衝剤”とは、組成物、溶液等々のpH値を特定の値に又は特定のpH範囲に調整することができる化学物質を意味する。
【0071】
“ポリアルコール”とは、カルボニル官能基(たとえば糖化合物におけるように)でなく、1個より多くのヒドロキシ官能基を有する脂肪族又は環状脂肪族炭水化物を意味する。
【0072】
“哺乳類由来の蛋白安定剤不含”とは、組成物又は調製物が哺乳類蛋白に由来する安定剤の検出可能な量を含まないことを意味する。
【0073】
“化学変性”とは、化学反応等々によってあらゆる血清型の天然の(native)ボツリヌス毒素を変性する従来公知の方法を意味する。これはボツリヌス毒素のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加又は翻訳後修飾を特に意味する。
【0074】
“遺伝子操作”は、ボツリヌス毒素あるいはそれぞれの核酸、たとえばDNA又はRNAをコードする遺伝子を改変することによってあらゆる血清型の天然のボツリヌス毒素を変性する、従来公知の方法を示す。
【発明の効果】
【0075】
詳細な説明
本発明は、本発明者が安定な神経毒含有医薬組成物が、非蛋白性安定剤を添加することによって、特にヒアルロン酸又はポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール又はそれらの2種以上の混合物を添加することによって、あらゆる哺乳類由来の蛋白又はドナープールアルブミンを含むことなく製剤化されることを見出したことを示す。本発明は、ヒアルロン酸又はポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール又はそれらの2種以上の混合物を用いて製剤化される、ボツリヌス毒素組成物の開発に関する。このような組成物は、顕著な安定性を有する、より安全な組成物である。
【0076】
幸いなことに、本発明の組成物は、ボツリヌス毒素、又は化学変性によって又は遺伝子操作によってボツリヌス毒素から導かれる毒素が哺乳類由来の蛋白性安定剤中で製剤化されない点で重要である。ヒアルロン酸又はポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール製剤又はその混合物(特にこれらにpH 緩衝剤、特に酢酸ナトリウム、緩衝剤及び(又は)抗凍結剤が添加される)が本発明の医薬組成物の安定性及び有用な保存期間を増すように作用することが解明された。
【0077】
更に、本発明の医薬組成物又は調製物は、好ましくは哺乳類由来の蛋白性安定剤を含まないばかりでなく、あらゆる安定化用蛋白も含まない。
【0078】
本発明は、医薬組成物だけでなく、ボツリヌス毒素組成物、又はボツリヌス毒素又は化学変性によって又は遺伝子操作によってボツリヌス毒素から導かれる毒素の組成物を安定化する方法に関する。ヒアルロン酸又はポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール又はその混合物を組成物に添加することによって、ボツリヌス毒素、又は化学変性によって又は遺伝子操作によって、ボツリヌス毒素から導かれる毒素を安定化する。更に、安定性は、pH緩衝剤を医薬組成物に添加して強化され、それによってpHを安定化し、そして再構成される毒素の保存期間を助長するか及び(又は)抗凍結剤を医薬組成物に添加して強化され、それによって凍結乾燥安定性及び保存期間を増加させる。
【0079】
pH緩衝剤は、その性質及び量で本発明の組成物又は調製物のpHを安定化することができるか、又はほぼ4〜約7.5の範囲の値に調整することができるのが好ましい。適するpH 緩衝剤は、クエン酸塩、リン酸塩及び特に酢酸塩緩衝剤系、特に酢酸ナトリウム緩衝剤系である。驚くべきことに、本発明者は、酢酸塩緩衝剤が本発明の組成物又は調製物に使用され、そしてその組成物又は調製物が凍結乾燥された場合、酢酸塩を凍結乾燥の間に組成物又は調製物から除去することができることを見出した。再構成又は解凍後、組成物又は調製物はほぼ中性pH(約6.5〜約7.5の範囲に)を有する。これは、組成物又は調製物をこれを必要とするヒト又は患者に投与する場合、特に筋肉内に注射する場合に有利である。というのはその時に(ほとんど)中性のボツリヌス毒素組成物又は調製物が、酸性pH、たとえば4である、対応する組成物又は調製物に比べて少ない痛みを生じるからである。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明の詳細な実施態様は、ヒト患者への注射に適する医薬組成物である。この組成物は、ボツリヌス毒素、又は化学変性によって又は遺伝子操作によって、ボツリヌス毒素から導かれる毒素、及びヒアルロン酸又はポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコールを含む。このような組成物を、場合によりpHが、適するpH緩衝剤によって、特に酢酸ナトリウム緩衝剤、及び(又は)抗凍結剤ポリアルコールによって安定化される。
【0081】
医薬組成物は、治療効果を達成するためにヒト患者への投与に適し、そして神経毒はボツリヌス毒素血清型A,B,C1,D,E,F及びGの1つであることができ、好ましくは、天然の神経毒中に存在する複合体形成蛋白、又は化学的に変性された又は遺伝子操作によって変性された神経毒を含まないボツリヌス毒素であることができる。変性された神経毒は、ボツリヌス神経毒と複合体を自然に生じる複合体形成蛋白も含まない。
【0082】
化学変性又は遺伝子操作によってボツリヌス神経毒から導かれた神経毒の変性は、神経毒蛋白の各部分に、たとえば神経毒分子の重鎖部分及び(又は)軽鎖部分にあることができる。1つ以上の変性があってよい。好ましくは、ボツリヌス神経毒に由来する神経毒蛋白の重鎖は、天然の神経毒と比べると神経細胞への結合に対する神経の親和性を減少させるか又は増加させることができる、1つ以上の変性を含む。このような変性された神経毒は、神経毒のアミノ酸の及び好ましくは神経毒の重鎖の置換及び(又は)欠失及び(又は)挿入及び(又は)付加及び(又は)翻訳後修飾を含むことができる。
【0083】
医薬組成物が神経毒有効成分と共に、ヒアルロン酸又はポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール安定剤のみを含むかどうかにかかわらず、+8℃〜約−20℃の温度で貯蔵した場合、医薬組成物が6ヶ月,1年,2年,3年及び(又は)4年の期間実質上変化せずにその効力を保持する。更に、示された医薬組成物は、再構成の間、約20%〜約100%の有効性又はパーセント回復(percent recovery)を有することができる。
【0084】
本発明の範囲内の医薬組成物は、神経毒及びヒアルロン酸を含むことができる。ヒアルロン酸は神経毒を安定化する。本明細書に開示される医薬組成物は、再構成される場合又は注射時に、約4〜7.5のpHを有することができる。本発明の医薬組成物中のヒアルロン酸は、本発明のボツリヌス毒素と、200U/mlのボツリヌス毒素溶液中にmlあたり、0.1〜10mg、特に1mgのヒアルロン酸の量で混合するのが好ましい。更に好ましくは、目的溶液はさらに1−100mM、特に10mM酢酸ナトリウム緩衝剤を含む。
【0085】
もう一の別の実施態様において、調製物は抗凍結剤としてポリアルコールを含むことができる。使用されるポリアルコールの例として、たとえばイノシトール、マンニトール及びその他の非−還元アルコールが挙げられる。
【0086】
当然のことながら、本発明の組成物又は調製物は、トレハロース又はマルトトリオース又は関連の糖、又は抗凍結剤として時々使用されるポリヒドロキシ化合物を含まない。
【0087】
本発明の医薬組成物中のポリビニルピロリドンは、本発明のボツリヌス毒素と、200U/mlのボツリヌス毒素溶液中にmlあたり、10〜500mg、特に100mgのポリビニルピロリドンの量で混合するのが好ましい。更に好ましくは、目的の溶液はまた1−100mM、特に10mM酢酸ナトリウム緩衝剤を含む。
【0088】
本発明の医薬組成物中のポリエチレングリコールは、200U/mlのボツリヌス毒素溶液中にmlあたり、10〜500mg、特に100mgのポリエチレングリコールの量で混合するのが好ましい。更に好ましくは、目的の溶液はまた1−100mM、特に10mM酢酸ナトリウム緩衝剤を含む。
【0089】
したがって、本発明は、ヒアルロン酸安定剤又はポリビニルピロリドン安定剤又はポリエチレングリコール安定剤を含有する医薬組成物中で製剤化されるボツリヌス毒素を包含する。更に、医薬組成物は、酢酸ナトリウム緩衝剤系及び(又は)アルコール抗凍結剤を含むことができる。下記例は本発明を説明するにすぎず、これによって限定することを意図するものでない。
【0090】
本発明の調製物又は医薬組成物は、ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態を治療するのに有用である。1つの態様において、この組成物を、しわ及び目立つしわのような美容コンディションを処置するのに使用することができる。別の態様において、この組成物を、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸、痙縮、偏頭痛、腰痛、頚椎障害、斜視、多汗症、過流ぜん及びジストニアから選ばれる病態を治療するために使用することができる。更に、本発明の調製物又は組成物は、またボツリヌス神経毒治療が必要である病態用薬剤の製造に使用される。この病態は美容コンディション、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸、痙縮、偏頭痛、腰痛、頚椎障害、斜視、多汗症、過流ぜん、及びジストニアから選ばれるのが好ましい。本発明の組成物又は調製物を用いて治療可能な別の医療適応症は、とりわけ良性筋けいれん、本態性振せん、マイコミア(mykomia)、神経原性筋肉肥大、パランタルミオクロヌス(palantal myoclonus)、脊椎ミオクロヌス、連合運動/脳神経VII障害、デュアン(Duanne)眼球後退症候群、眼振、治療的角膜保護下垂症(therapeutic ptosis for corneal protection)、動揺視、けいれん性発声障害、肉芽腫、発声障害(puberophonia)、後部声門狭窄、リバランシング、どもり、TEP障害、本態性発声けいれん、声帯チック、輪状咽頭、歯ぎしり、咬筋肥大、病的肥満、無弛緩症、裂肛、排便時の筋肉障害(アニスムス)、難治性吃逆、重度の便秘、肛門直腸疼痛、胃不全麻痺、良性肛門障害、食道憩室、オディ括約筋、そら涙、唾液腺腫瘤、唾液分泌過多、よだれ(drooling)、耳下腺、フレイ症候群、唾液過多、利尿筋・括約筋共同運動障害、過活動膀胱、膣痙、尿閉、過形成、良性過形成、緊張型頭痛、後頭部痛(cervicogenic pain)、筋筋膜疼痛、眼瞼開裂失行、顔面神経麻痺に後発する連合運動、声門障害を伴うどもり、体臭、内因性鼻炎である。
【0091】
〔実施例〕
本発明のボツリヌス毒素調製物、及びその医薬組成物及びこれを用いる治療方法は、本明細書に記載したような“発明の対象全体”に進歩性があるとする、特定の有利な性質を有することを実証する。
ボツリヌス毒素調製物及びその医薬組成物は、標準的に許容された、信頼のある試験操作で、下記の重要な性質及び特性を提示する。
【0092】
例1:ボツリヌス毒素調製物
ボツリヌス菌A型由来の純神経毒を、DasGupta & Sathyamoorthyの方法に基づく方法によって得る。ボツリヌス菌A型を20Lの醗酵容器で、2% プロテアーゼペプトン、1%酵母抽出物、1%グルコース及び0.05%チオグリコール酸ナトリウムからなる培地中で培養する。72時間の増殖後、毒素を3N硫酸(最終pH=3.5)の添加によって沈殿させる。沈殿及び遠心分離されたバイオマスを、0.2 Mリン酸ナトリウム緩衝剤を用いてpH6.0で抽出する。
【0093】
核酸を硫酸プロタミンを用いる沈殿によって除去した後、毒素を硫酸アンモニウムの添加によって沈殿させる。可溶化され、そしてpH 6.0で50mMリン酸ナトリウムに対して透析された沈殿を、同一pHでDEAE−Sephadex(登録商標)カラムに結合させ、150mMNaClで溶離させる。ついで50mMTris/HCl緩衝剤 pH7.9で平衡化されたQAE−Sephadex(登録商標)カラム上でクロマトグラフィー分離する。毒素を、NaCl勾配を介して溶離させる。最後の工程で、毒素をSP−Sephadex(登録商標)上でpH7.0でクロマトグラフィー分離する。この場合、結合した毒素を、NaCl勾配(0−300mM)を用いてカラムから溶離する。精製した毒素を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分析し、純度95+/−5%を示す。その生物学的活性をマウスLD50アッセイで測定する:1つのLD50単位は4.8pgの蛋白に相当する。
【0094】
例2:ヒアルロン酸を含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物及び1mgのヒアルロン酸を含む溶液を調製する。溶液をバイアルに分注する。
【0095】
例3:ヒアルロン酸及び酢酸ナトリウム緩衝剤を含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物及び1mgのヒアルロン酸を含む溶液を調製し、ついで10mM酢酸ナトリウム緩衝剤の添加によってpH4.5、5.0及び5.5に調整する。溶液をバイアルに分注する。
【0096】
例4:ボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例2の製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、2つの調製物は同一の活性を有する。24及び48時間で、例2の製剤の安定性はHSA調製物の安定性と、2つのサンプルに生じる初期活性の5%より少ない損失の点で一致する。
【0097】
例5:変化するpH下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例3の製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(すべてのpHポイントで)及びHSA調製物の2つは同一の活性を有する。pH4.5の調製物は、6日目までに約50%の活性の損失を示す。pH5.0及び5.5の調製物は6日目までにすべての活性を失う。
【0098】
例6:変化するpH及び凍結乾燥下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例3の製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(pH4.5で)はHSA調製物と同一の活性を有する。更に重要なことは、活性の損失が凍結乾燥で検出されなかった。
【0099】
例7:ポリビニルピロリドンを含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物及び100mgのポリビニルピロリドンを含む溶液を調製する。溶液をバイアルに分注する。
【0100】
例8:ポリビニルピロリドン及び酢酸ナトリウム緩衝剤を含有する、最終医薬組成物 例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物及び100mgのポリビニルピロリドンを含む溶液を調製し、ついで10mM酢酸ナトリウム緩衝剤の添加によってpH4.5、5.0及び5.5に調整する。溶液をバイアルに分注する。
【0101】
例8A:ポリビニルピロリドン、マンニトール及び酢酸ナトリウム緩衝剤を含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物、100mgのポリビニルピロリドン及び20mgのマンニトールを含む溶液を調製し、ついで10mM酢酸ナトリウム緩衝剤の添加によってpH4.5、5.0及び5.5に調整する。溶液をバイアルに分注する。
【0102】
例8B:ポリビニルピロリドン、ソルビトール及び酢酸ナトリウム緩衝剤を含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物、100mgのポリビニルピロリドン及び20mgのソルビトールを含む溶液を調製し、ついで10mM酢酸ナトリウム緩衝剤の添加によってpH4.5、5.0及び5.5に調整する。溶液をバイアルに分注する。
【0103】
例9:ボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例7の製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、2つの調製物は同一の活性を有する。
【0104】
例10:変化するpH下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例8の製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(すべてのpHポイントで)及びHSA調製物の2つは同一の活性を有する。pH4.5及び5.0ならびにHSA調製物は、製剤化の24時間内で活性の損失を示さない。pH5.5の調製物は、24時間以内にHSA及びその他の調製物に比べて20%活性を失う。
【0105】
例10A:変化するpH下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例8Aの製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(すべてのpH ポイントで)及びHSA調製物の2つは同一の活性を有する。pH4.5、5.0及び5.5ならびにHSA調製物は、製剤化の24時間以内に活性の損失を示さない。
【0106】
例10B:変化するpH下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例8Bの製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(すべてのpHポイントで)及びHSA調製物の2つは同一の活性を有する。pH4.5、5.0及び5.5ならびにHSA調製物は、製剤化の24時間以内に活性の損失を示さない。
【0107】
例11:変化するpH及び凍結乾燥下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例8の製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(すべてのpHポイントで)はHSA調製物と同一の活性を有する。更に重要なことは、10%より少ない活性損失が凍結乾燥で最高6ヶ月間すべての製剤に関して検出される。
【0108】
例11A:変化するpH及び凍結乾燥下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例8Aの製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(すべてのpHポイントで)はHSA調製物と同一の活性を有する。更に重要なことは、10%より少ない活性損失が凍結乾燥で最高6ヶ月間すべての製剤に関して検出される。
【0109】
例11B:変化するpH及び凍結乾燥下でのボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例8Bの製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、本発明の調製物(すべてのpHポイントで)はHSA調製物と同一の活性を有する。更に重要なことは、10%より少ない活性損失が凍結乾燥で最高6ヶ月間すべての製剤に関して検出される。
【0110】
例12:ポリエチレングリコールを含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物及び100mgのポリエチレングリコールを含む溶液を調製する。溶液をバイアルに分注する。
【0111】
例12A:ポリエチレングリコール及びマンニトールを含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物、100mgのポリエチレングリコール及び20mgのマンニトールを含む溶液を調製する。溶液をバイアルに分注する。
【0112】
例12B:ポリエチレングリコール及びソルビトールを含有する、最終医薬組成物
例1の精製した神経毒を使用して、蒸留水mlあたり200Uのボツリヌス毒素調製物、100mgのポリエチレングリコール及び20mgのソルビトールを含む溶液を調製する。溶液をバイアルに分注する。
【0113】
例13:ボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例12の製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、2つの調製物は同一の活性を有する。
【0114】
例14:ボツリヌス毒素製剤安定性の判定
例12A及び12Bの製剤を調製し、ヒト血清アルブミン(HSA)中で製剤化されたボツリヌス毒素と比べる。製剤化の間、2つの調製物は同一の活性を有する。本発明の調製物及びHSA調製物は、製剤化の24時間以内に20%より少ない活性の損失を示す。
【0115】
例15:ボツリヌス毒素医薬組成物の用途
50歳の女性は、眼瞼けいれんための治療を求める。ヒアルロン酸含有ボツリヌス毒素調製物(例3)約10U〜約20Uを、患者に筋肉内注射する。1−7日以内に、眼瞼けいれんの症状は緩和され、症状の緩和は少なくとも約2ヶ月〜約6ヶ月間継続する。
【0116】
例16:Aボツリヌス毒素医薬組成物の用途
50歳の女性は、眼瞼けいれんための治療を求める。ポリビニルピロリドン含有ボツリヌス毒素調製物(例8)約10U〜約20Uを、患者に筋肉内注射する。1−7日以内に、眼瞼けいれんの症状は緩和され、症状の緩和は少なくとも約2ヶ月〜約6ヶ月間継続する。
【0117】
例17:ボツリヌス毒素医薬組成物の用途
50歳の女性は、眼瞼けいれんための治療を求める。ポリエチレングリコール含有ボツリヌス毒素調製物(例12)約10U〜約20Uを、患者に筋肉内注射する。1−7日以内に、眼瞼けいれんの症状は緩和され、症状の緩和は少なくとも約2ヶ月〜約6ヶ月間継続する。
【0118】
例18:ボツリヌス毒素医薬組成物の用途
50歳の女性は、眼瞼けいれんための治療を求める。ポリエチレングリコール含有ボツリヌス毒素調製物(例12A)約10U〜約20Uを、患者に筋肉内注射する。1−7日以内に、眼瞼けいれんの症状は緩和され、症状の緩和は少なくとも約2ヶ月〜約6ヶ月間継続する。
【0119】
例19:ボツリヌス毒素医薬組成物の用途
50歳の女性は、眼瞼けいれんための治療を求める。ポリエチレングリコール含有ボツリヌス毒素調製物(例12B)約10U〜約20Uを、患者に筋肉内注射する。1−7日以内に、眼瞼けいれんの症状は緩和され、症状の緩和は少なくとも約2ヶ月〜約6ヶ月間継続する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のボツリヌス神経毒、あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物[この神経毒又は神経毒の混合物は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白(the complexing proteins)を含まない]、及び水溶液中でボツリヌス神経毒の生物学的活性を保持する非蛋白性(non−proteinaceous)安定剤を含む、医薬組成物。
【請求項2】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選ばれる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
pH緩衝剤を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗凍結剤を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
抗凍結剤がポリアルコールである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
ポリアルコールが1種以上のイノシトール、マンニトール及びソルビトールから選ばれる、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
凍結乾燥されている、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項10】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして組成物が凍結乾燥されている、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項11】
ヒアルロン酸を含み、そして組成物が凍結乾燥されている、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項12】
ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態の治療に有効な量で、ヒトを含む動物に投与するための、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項13】
ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態が、美容コンディション、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸、痙縮、ジストニア、偏頭痛、腰痛、頚椎障害、斜視、 多汗症及び過流ぜんから選ばれる、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
美容コンディションが目立つしわである、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌由来のボツリヌス神経毒、あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物(この神経毒又は神経毒の混合物は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない)、及び水溶液中でボツリヌス神経毒の生物学的活性を保持する非蛋白性安定剤を含む、ボツリヌス神経毒調製物。
【請求項16】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、請求項15記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項17】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選ばれる、請求項15記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項18】
水溶液がpH緩衝剤を含む、請求項15記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項19】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項18記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項20】
哺乳類由来の蛋白性安定剤を含まない、請求項15記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項21】
調製物が哺乳類由来の蛋白性安定剤、アルブミン及びゼラチンを含まない、請求項18記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項22】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして調製物が凍結乾燥されている、請求項15記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項23】
ヒアルロン酸を含み、そして調製物が凍結乾燥されている、請求項19記載のボツリヌス神経毒調製物。
【請求項24】
A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌由来のボツリヌス神経毒あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物(この神経毒又は神経毒の混合物が、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない)を安定化する方法において、ボツリヌス神経毒を生物学的活性を保持するのに有効な量で、上記神経毒と非蛋白性安定剤とを水溶液中で混合することからなる、前記方法。
【請求項25】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選ばれる、請求項24記載の方法。
【請求項27】
水溶液がpH緩衝剤を含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
水溶液が抗凍結剤を含む、請求項24記載の方法。
【請求項30】
水溶液が凍結乾燥されている、請求項29記載の方法。
【請求項31】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして調製物が凍結乾燥されている、請求項24記載の方法。
【請求項32】
ヒアルロン酸を含み、そして調製物が凍結乾燥されている、請求項28記載の方法。
【請求項33】
ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態の治療方法において、この治療を必要とするヒト又は動物に、A,B,C1,D,E,F又はG型ボツリヌス菌由来のボツリヌス神経毒あるいは2種以上のボツリヌス神経毒の混合物(この神経毒又は神経毒の混合物は、ボツリヌス神経毒との複合体を自然に生じる複合体形成蛋白を含まない)と、水溶液中でボツリヌス神経毒の生物学的活性を保持する非蛋白性安定剤とを混合して含む組成物を投与する段階を包含する、前記治療方法。
【請求項34】
ボツリヌス神経毒が化学的に変性されているか又は遺伝子操作によって変性されているか、あるいはその混合物である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
非蛋白性安定剤が1種以上のヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールから選ばれる、請求項33記載の方法。
【請求項36】
水溶液がpH緩衝剤を含む、請求項33記載の方法。
【請求項37】
pH緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
水溶液が抗凍結剤を含む、請求項33記載の方法。
【請求項39】
抗凍結剤がポリアルコールである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
ポリアルコールが1種以上のイノシトール、マンニトール及びソルビトールから選ばれる、請求項39記載の方法。
【請求項41】
非蛋白性安定剤がヒアルロン酸であり、そして組成物が凍結乾燥されている、請求項33記載の方法。
【請求項42】
水溶液がヒアルロン酸を含み、そして組成物が凍結乾燥されている、請求項37記載の方法。
【請求項43】
ボツリヌス神経毒治療又は処置が必要である病態が、眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、痙性斜頸、痙縮、偏頭痛、腰痛、頚椎障害、斜視、多汗症、過流ぜん及びジストニア、から選ばれる、請求項33記載の方法。
【請求項44】
美容コンディションが目立つしわである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
美容コンディションを処置するための、請求項13〜20のいずれか1つに記載のボツリヌス神経毒調製物の使用。
【請求項46】
ボツリヌス神経毒治療が必要である病態用薬剤を製造するための、請求項13〜20のいずれか1つに記載のボツリヌス神経毒調製物の使用。

【公開番号】特開2013−107904(P2013−107904A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−45137(P2013−45137)
【出願日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【分割の表示】特願2010−232458(P2010−232458)の分割
【原出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】