説明

ボトル等の容器に印刷を施すための印刷システム及びこのような印刷システムを備えた印刷装置

【課題】プリントヘッドが印刷システムにおける可動部あるいは回転部に設けられていても、高い品質の印刷を実現することが可能な印刷システムを提供すること。
【解決手段】印刷位置に配置された容器へ印刷を施すための、インクジェット方式で動作し、かつ、容器の搬送路に沿って回転可能な少なくとも1つの電気式のプリントヘッド3と、該プリントヘッド3へインクを供給するための供給システムとを備えて成る印刷システムにおいて、プリントヘッド3と共に移動しない固定部8と、プリントヘッド3と共に移動する回転部10とで構成し、プリントヘッド3と共に移動しない、供給システムにおける固定部を前記固定部8に設け、少なくとも1つのインク用のサブタンク23,24を可動部10に更に設け、サブタンク23,24をプリントヘッド3に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した印刷システム及び印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル式、かつ、電気式に動作するインクジェット方式のプリントヘッドを用いて容器に印刷を施す印刷システム又は印刷装置は、基本的によく知られている。特に、少なくとも1つの垂直方向の軸回りに回転駆動される容器搬送要素である、特に印刷装置の垂直方向の軸中心線回りに回転駆動されるロータにおいて印刷されるべき容器を収容するための複数の印刷位置が形成された印刷システム又は印刷装置がよく知られている。また、このような印刷位置においては、電子制御されるデジタル式でありインクジェット方式で動作する複数のプリントヘッドによって容器に印刷がなされる。
【0003】
これらプリントヘッドも少なくとも1つの垂直方向の軸回りに回転駆動されるプリントヘッド搬送要素を備えており、このプリントヘッド搬送要素は、例えば容器搬送装置又は独立した搬送装置である。いずれの場合においても、プリントヘッドは例えば書く印刷装置の回転部などの可動部に設けられている。プリントヘッドのこのような構造には、非常に流動的なインクをこれらプリントヘッドに確実に供給することが必要である。特に、一定の、あるいはできる限り一定の圧力、濃度及び品質のインクをプリントヘッドへ供給する必要がある。このようなことによってのみ高い品質の印刷を容器に施すことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、プリントヘッドが印刷システムにおける可動部あるいは回転部に設けられていても、高い品質の印刷を実現することが可能な印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1記載の発明による印刷システムによって達成される。なお、印刷システムも特許請求の範囲の対象である。
【0006】
また、本発明による印刷システムの本質的な特徴は、固定部と、プリントヘッドを備えつつ移動する例えば回転部におけるこのような印刷システムあるいはインク供給の分配にある。そして、固定部には、特にインクの十分なストックを収容する少なくとも1つのメインタンクと、インクの補充及び/又は調整(特に温度調整、抜気及びフィルタリングの少なくともいずれか)のための要素が設けられている。
【0007】
一方、印刷システムにおける可動部あるいは回転部には、プリントヘッドへの供給用タンクとして形成されたサブタンクと、プリントヘッドからのインク排出用のタンクとしてのサブタンクとが設けられている。そして、これらサブタンクは、プリントヘッド及び/又はその移動軌道に関して同心状に配置されているとともに、その内部の圧力及び充填レベルが制御されるようになっている。
【0008】
本発明の他の利点、実施の形態については、図面を参照しつつ以下の説明において詳述する。また、本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。さらに、特許請求の範囲は、明細書に開示した内容に基づいて記載されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリントヘッドが印刷システムにおける可動部あるいは回転部に設けられていても、高い品質の印刷を実現することが可能な印刷システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】容器への印刷を施す、本発明による循環式の印刷装置の平面図である。
【図2】図1に示す印刷装置の印刷システムにおける基本的な部材をプリントヘッドと共に示す図である。
【図3】図2に示す印刷システムの回転部及び固定部の縦断面図である。
【図4】本発明による他の実施形態を示す図2に類似した図である。
【図5】本発明による印刷システムの供給用タンク及び排出用タンクを示す斜視図である。
【図6】本発明による印刷システムにおける固定部の供給用タンク及び排出用タンクを2つのプリントヘッドと共に示す図である。
【図7】本発明による印刷システムの他の実施の形態をバイパス制御と共に示す図4に類似した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
<実施の形態1>
図中において、ボトル等の容器2の印刷をインクジェット方式で動作するデジタル式のプリントヘッド3によって行う回転(循環)式の印刷装置が符号1を付して示されており、このプリントヘッド3には、垂直方向に列をなすよう互いに隣接させて配置され、かつ、電気的に個々に制御可能な複数のノズル3.1が設けられている。また、このノズル3.1へのインクの供給は、電極又はピエゾ素子(圧電素子)の適当な制御によりなされるようになっている。
【0013】
本実施の形態において、印刷装置1は垂直方向のその軸中心線MA回りに回転駆動されるロータ4を備えており、このロータ4には、その外周において複数の印刷位置4.1がプリントヘッド3と共に形成されている。また、印刷されるべき容器2は、容器搬入部6を通って前記印刷位置4.1へ供給される。そして、印刷された容器2は、容器搬出部7において各印刷位置4.1から搬出されるようになっている。
【0014】
また、本実施の形態においては、各印刷位置4.1にプリントヘッド3が設けられており、容器2の印刷は、印刷位置4.1において、容器2をプリントヘッド3に対して相対変位させつつ列状に(1行ずつ)なされるようになっており、図示の実施の形態においては、容器の軸中心線を垂直方向(すなわちロータ4の回転軸と平行)に配向された各容器2が印刷中にその軸中心線回りに制御しながら回転されることで行われている。
【0015】
特に軸中心線回りに回転駆動されるロータ4上へのプリントヘッド3の配置による特別な問題は、各プリントヘッド3へのインクの規則的な供給にある。したがって、プリントヘッド3の欠点のない動作ため、及び印刷された表示の質のために、各プリントヘッド3あるいはそのノズル3.1に十分な量のインクを供給するだけではなく、各プリントヘッド3あるいはそのノズル3.1に所定の圧力(通常は大気圧よりもわずかに低いか又は高い圧力)でインクを供給することが必要である。印刷装置1が回転式に形成されているにもかかわらず、プリントヘッド3へのインクのこのような供給は、図2及び図3に基づいて後述する、符号5を付して示された印刷システム5によって最適に行われるようになっている。また、使用に適したプリントヘッドは、いわゆるドロップオンデマンド方式として知られている。
【0016】
本発明による印刷システム5は、基本的に2つの構成要素である、図2及び図3において符号8を付して示されている固定部と、ロータ4及びプリントヘッド3を備えて成る回転部10によって構成されている。ここで、前記固定部8は、ロータ4と共に回転しない印刷装置1の機台9に収容されている。なお、図中において、同一要素には同一の符号を付して示している。
【0017】
しかして、印刷システム5の固定部8は、インクのストックを収容するメインタンク11と、インクの調整をするためのすべての機能部材、すなわち、メインタンク11内のインクの定常的な温度調整(冷却又は加熱)を行う温度調整モジュール12と、フィード循環ポンプ15を備えるとともにメインタンク11を包含し、かつ、定常的に温度調整、抜気及びフィルタを行うための第1インク循環回路内の抜気装置13及びフィルタ14とを含んで構成されている。
【0018】
印刷工程中において、インクによって部分的に満たされたメインタンク11は制御された圧力P11下にあり、この圧力P11は、例えば大気圧よりもわずかに低く設定されている。このような圧力によれば、特にインクである媒体の抜気が補助されるという利点が得られる。一方、図示の実施の形態では使用していないが、前記圧力を大気圧よりもわずかに高い圧力としてもよい。
【0019】
印刷システム5の固定部8は、カートリッジ17から印刷システム5へのインクの補充を可能にする補充用バルブ16を更に含んで構成されている。また、印刷システム5の固定部8は、固定部8におけるインク循環回路においてインク流通方向に見たメインタンク11の手前かつフィルタの後ろに配置されたマルチポートバルブ18又は該マルチポート18に接続された配管19及びロータリジョイント20を介して、印刷システム5における回転部10のバルブ22を有する供給用配管21に接続されている。
【0020】
一方、印刷システム5の回転部10は2つのサブタンク23,24を含んで構成されており、このうち、サブタンク23は供給側タンクあるいはプリントヘッド3へ供給されるインクの供給源としての機能を果たし、サブタンク24は排出側タンク、あるいは印刷時に不要な、プリントヘッド3を通過したインクを収容する皿の機能を果たすものとなっている。これら両サブタンク23,24は、それぞれリング状に形成されているとともに、軸中心線MAと同軸に、かつ、サブタンク23がサブタンク24の上になるよう上下に配置されている。また、各プリントヘッド3はサブタンク23,24の周囲に配置されている。
【0021】
また、供給用配管21はバルブ22を介してサブタンク23へ開口しており、このサブタンク23は、配管25を介して、流入口としての、各プリントヘッド3の接続部に接続されている。各プリントヘッド3の流出口としての接続部は減圧器27を備えた配管26を介してマルチポートバルブ28に接続されており、このマルチポートバルブ28を介して、配管26とサブタンク24の連通、サブタンク24と配管21の連通若しくはロータリジョイント20を介したサブタンク24と配管19の連通又は配管26と配管21の連通若しくはロータリジョイント20を介した配管26と配管19の連通が可能である。通常の印刷工程において、マルチポートバルブ28は、該マルチポートバルブ28を介して配管2とサブタンク24が連通するよう制御される。なお、図示の実施形態においては、両サブタンク23,24は同様に形成されている。
【0022】
各サブタンク23,24は、印刷工程中にインクが部分的に充填されるこれらのサブタンク23,24内の圧力、配管25,26内の圧力及びプリントヘッド3の接続部を、サブタンク23内の圧力P23がサブタンク24内の圧力P24よりもわずかに高く、かつ、サブタンク内の圧力P23が例えば大気圧よりもわずかに低くなるよう正確に制御する手段を備えている。このような圧力制御により、印刷工程中においてプリントヘッド3にインクを流通させることができ、印刷工程において配管25を介して各プリントヘッド3に供給される不要なインクを配管26を介して排出することが可能である。ここで、サブタンク23からプリントヘッド3に供給されるインクの流量とプリントヘッド3からサブタンク24へのインクの流量は、サブタンク23内及びサブタンク24内の各圧力P23,P24を適当に選択することで調整することができる。
【0023】
また、印刷工程中にロータ4の回転速度に依存しないかほぼ依存しない状態を得るために、両サブタンク23,24をロータ4における中心部に設け、各プリントヘッド3をそれぞれサブタンク23,24の周囲においてこれらサブタンク23,24に対して同様の径方向の間隔をもって配置するだけではなく、プリントヘッド3へ導入され、かつ、独立して設けられた配管25,26は、ロータ4において各プリントヘッド3に対して同様に、例えばこれら配管25,26が軸中心線MAにの径方向あるいはほぼ径方向に延在するように設けられる。
【0024】
さらに、サブタンク23,24は、印刷装置1の動作中に、各サブタンク23,24内のインクの正確な充填高さ(充填量)を保証する手段を備えている。図示の実施の形態において、これら手段は、リング状に形成されたサブタンク23,24の内側においてリング状の仕切り29を備えている。この仕切り29は、軸中心線MAを同心状に包囲しているとともに、インクを収容するためのタンク内室23.1,24.1を各サブタンク23,24に形成されたリング状の貯留スペース23.2,24.2から隔離するものである。なお、この貯留スペース23.2,24.2は、余剰インクを貯留するものであり、タンク内室23.1,24.1を包囲するように設けられている。
【0025】
ところで、印刷システムは、各サブタンク23,24内において所定流量のインクをタンク内室23.1,24.1から仕切り29を介して貯留スペース23.2,24.2へ定常的に流通させるよう動作する。本実施の形態においては、貯留スペース23.2が配管30及び不図示の減圧器を介して貯留スペース24.2に接続され、該貯留スペース24.2が配管31、ロータリジョイント20及びコントロールバルブ34を介してメインタンク11へ接続されることで、貯留スペース23.2,24.2がメインタンク11に接続されている。
【0026】
さらに、印刷システム5は、その動作中に、フィード循環ポンプ15及びバルブ18,22,34を適切に制御することで、メインタンク11が充填レベルを制御されつつインクによって充填されるだけでなく、すなわち、メインタンク11におけるインクレベルが所定のレベルを下回った場合に、インクが、補充用バルブ16、フィーと循環ポンプ15、抜気装置13、フィルタ14及びマルチポートバルブ18を介して、補充用バルブ16に接続されたカートリッジ17からメインタンク11へ補充されるだけでなく、各貯留スペース23.2,24.2がその充填レベルを制御されつつインクで補充されるよう制御されている。なお、メインタンク11及び貯留スペース23.2,24.2は、それぞれ充填レベルセンサ35,36を備えている。
【0027】
しかして、サブタンク23,24あるいはタンク内室23.1,24.1を空にするために各タンクには排出用バルブ32が設けられており、タンク内室23.1,24.1は、この排出用バルブ32を介して貯留スペース23.2,24.2の流出口又は配管30,31に接続されている。ただし、この排出用バルブ32は、印刷装置1の通常動作時には閉鎖されている。また、印刷装置の動作時には、インクが印刷システム5内で2つの回路を循環する。すなわち、インクは、フィード循環ポンプ15、抜気装置13、フィルタ14及びメインタンクを包含する固定部8の第1インク循環回路と、印刷システム5における固定部8及び回転部10並びにプリントヘッド3を包含する第2インク循環回路を循環する。
【0028】
前記第2インク循環回路では、インクは、例えばサブタンク23からプリントヘッド3へ流通し、そして、マルチポートバルブ28を通ってサブタンク24へ到達し、このサブタンク24から仕切り29及び貯留スペース24.2を通ってメインタンク11へ到達し、このメインタンク11からフィード循環ポンプ15、抜気装置13、フィルタ14、マルチポートバルブ18、配管19、ロータリジョイント20及び配管21を通ってサブタンク23へ戻される。
【0029】
2つのインク循環回路は適当な温度に調整されたメインタンク11、抜気装置13及びフィルタ14を包含しているため、これらのインク循環回路を循環するインクには定常的に調整がなされている。すなわち、インクについて、最適な印刷に必要な質と温度が維持されている。印刷装置1あるいは印刷システム5の制御は、印刷工程中に両インク循環回路に同時にインクが流通するようになされている。また、印刷工程中に、固定部及び回転部19を包含する第2インク循環回路のみを少なくとも優先的に動作させる一方、追加的なインクをサブタンク23に供給する必要がなくなったときにインクの迅速かつ集中的な調整を行う第1インク循環回路を作動させるよう制御することも考えられる。
【0030】
印刷システム5を2つの部分、すなわち固定部8と回転部10で構成したことにより、以下のような利点が得られる。
【0031】
・フィード循環ポンプ15及びインクの調整に必要なすべての機能部材を固定部8内に収容することができるため、ロータ4における部品点数及び設置空間を削減することが可能である。
【0032】
・印刷結果に悪影響を及ぼすような、フィード循環ポンプ15や他のモータ駆動の機能部材(例えばバキュームポンプ)あるいはその駆動による機械的振動をロータ4から遮断することが可能である。
【0033】
・補充用バルブ16を介して新たなインクを各カートリッジ17から印刷システム5へ補充することができ、この補充されたインクは、少なくとも抜気装置13及びフィルタ14において、印刷システム5へ至る前に処理される。
【0034】
・ロータ4における中心部に配置され、かつ、軸中心線MAに関して回転対称な両サブタンク23,24を使用することでインクの均一な分配(特にプリントヘッド3の接続部における圧力配分)を達成することが可能である。
【0035】
・圧力P23,P24を制御することで、プリントヘッド3のサブタンク23,24に対する配置を考慮し、かつ、ロータ4の回転速度に依存して、プリントヘッド3あるいはノズルにおけるインクの圧力及びプリントヘッド3を通過する流量を制御することが可能である。
【0036】
・サブタンク23,24を使用することで、インクの供給時及び/又は排出時に生じ得る圧力脈動又は水撃作用を回避され、これによりこのような圧力脈動による印刷表示の質の低下を防止することが可能である。
【0037】
・タンク内室23.1,24.1におけるインクのレベル制御によって、プリントヘッド3における圧力状態が一定に保持され、再現性のある最適な印刷性能が得られる。
【0038】
・特に回転部10内におけるインク循環回路により、特にインクが乾いてこびりつくのを防ぐことができる。また、このようなこびりつきが原因の異常(故障)を防止することも可能である。
【0039】
ところで、各貯溜スペース23.2,24.2から配管30又は配管31を介したインクの通路においてロータ4の回転速度に依存しない状態を得るために、配管30,31及びこれらの接続部は、それぞれ軸中心線MAに対して同心状となるよう配置されている。また、サブタンク23,24は、軸中心線MAに対して径方向外方に位置するタンク内室23.1,24.1及び径方向内方に位置する貯留スペース23.2,24.2を形成している。
【0040】
なお、プリントヘッドあるいはノズル3.1をメンテナンスサイクルにおいて洗い流し、洗浄することも可能である。このために、印刷システム5及びこれに付随する複数のバルブの制御により、高い圧力のインクが固定部8から配管19,20を介して回転部へ供給され、ここで例えば配管26を介して各プリントヘッド3へ供給される。そして、高い圧力のインクの少なくとも一部が洗い流し及び洗浄のためにこのプリントヘッド3のノズル3.1から排出される。
【0041】
<実施の形態2>
図4には、図2に類似する、印刷装置の印刷システム5aが示されている。この印刷システム5aはここでも固定部8a及び回転部10aで構成されており、この固定部8aは、図2に示す印刷システム5における固定部8と同一である。また、回転部10aは軸中心線MA回りに回転駆動されるロータ4においてデジタル式かつ電気式に制御される複数のプリントヘッド3aを有しており、このプリントヘッド3aは、プリントヘッド3と同様に、インクジェット方式で動作し、それぞれインクを制御しつつ噴射する複数のノズル3a.1を備えている。また、このノズル3a.1は、軸中心線MAに対して平行な垂直方向に互いに並べて設けられている。
【0042】
ここで、プリントヘッド3aは、プリントヘッド3と異なり、静的なインク供給をするいわゆる「エンドシュータープリントヘッド」として形成されている。また、このプリントヘッド3aは、それぞれ1つのみの接続部を有しており、この接続部を介して所定の圧力(例えば大気圧よりわずかに低い圧力)を有するインクが供給されるようになっている。なお、大気圧よりわずかに高い圧力に設定することについては、上述のとおりである。
【0043】
印刷システム5aの回転部10aはここでも2つのサブタンク23,24を備えているが、そのうちサブタンク23あるいはそのタンク内室23.1のみが配管25及び該配管25内に追加的に設けられたマルチポートバルブ37を介して各プリントヘッド3aの唯一の流入口へ接続されている。また、マルチポートバルブ37には減圧器27を有する配管26も接続されており、この配管26は、本実施の形態においては配管21に直接接続されているとともに、ロータリジョイント20を介して配管19に接続されている。
【0044】
一方、本実施の形態においてサブタンク24はプリントヘッドから供給されるインクを収容する皿の役目を果たすものではなく、このサブタンク24の貯留スペース24.2が貯留スペース23.2からの余剰のインクを単に収容し、このインクを固定部8aにおけるメインタンク11へ導出させるものとなっている。
【0045】
印刷システム5aにおいても、2つのインク循環回路を設けることが可能である。すなわち、第1インク循環回路がフィード循環ポンプ15、抜気装置13、フィルタ14及びメインタンクを含んで固定部8a内に設けられ、第2インク循環回路が固定部8a及び回転部10aを含んで構成されている。この第2インク循環回路は、例えばサブタンク23のタンク内室23.1から配管19を介して貯留スペース23.2へ、そして、この貯留スペース23.2から貯留スペース24.2へ、更にこの貯留スペース24.2からメインタンク11へと延在しており、このメインタンク11からフィード循環ポンプ15、抜気装置13、フィルタ14及び配管19,21を介してサブタンク23あるいはタンク内室23.1へ戻るように構成されている。
【0046】
また、この印刷システム5aにおいても、インクは、固定部8aにおいてのみ延在する第1インク循環回路においてだけでなく、固定部8a及び回転部10aにおいて延在する第2インク循環回路においても定常的に調整、すなわち抜気、フィルタリング及び温度調整がなされるようになっている。したがって、インクは、必要に応じて加熱又は冷却されるようになっている。
【0047】
<実施の形態3>
上述の事項はそれぞれ同様かつリング状に形成された両サブタンク23,24が軸中心線MAの方向に互いに上下にずらして設置されることを前提としているが、他の形態も考えられ、図5には各サブタンク23a,24aで構成されたタンク構造38の斜視図が示されており、このタンク構造38は、ここでもリング状に形成され、かつ、軸中心線MAと同軸にこれを包囲するよう形成されている。しかし、このタンク構造38は、上述の実施の形態とは異なり、サブタンクが上下に重ねて配置されておらず、例えばサブタンク23aがサブタンク24aをリング状に包囲するようになっている。また、仕切り29aによって、サブタンク23a,24aがここでもタンク内室23a.1,24a.1と貯留スペース23a.2,24a.2に分けられている。
【0048】
図6には、プリントヘッド3を備えた印刷システム5bにおける回転部が、軸中心線MAに対して同心状かつ互いに上下に重ねて配置されたサブタンク23b,24bと共に示されている。サブタンク23b,24bのうち、サブタンク23bがここでもインク供給源あるいはプリントヘッド3へのインク供給部として形成され、サブタンク24bはインク受け皿あるいはプリントヘッド3の排出タンクとして形成されている。なお、図6には2つのプリントヘッド3のみを示しているが、印刷システムには多数のプリントヘッド3が設けられている。
【0049】
両サブタンク23b,24bは、軸中心線MAについて同心状に配置され、この軸中心線MA回りに回転対称に、すなわちリング状に形成されているものの、仕切り29及びこの仕切り29によって形成される貯溜スペースを有していない。なお、図6には、ロータ4の回転により生じる放物線状のインク表面が明確に示されている。
【0050】
ロータの回転速度の変化による圧力状態の変化は、サブタンク23b,24bにおける圧力P23b,P24b及びこれらサブタンク23b,24b間の圧力差を制御することで補償される。そのため、プリントヘッド3と、該プリントヘッド3におけるノズル3.1における一定の圧力(例えば一定あるいは定常的な負圧(メニスカス負圧))により、インクの一定の流通速度が得られる。
【0051】
上述の事項は、各印刷装置1が印刷システム5,5a又は5bを有し、この印刷システム5,5a又は5bが1色のインクによって容器2に印刷をすることが前提とされている。すなわち、1色の印刷のみが可能であることが前提となっている。複数の色による多色印刷を行うために、複数の印刷装置1を互いに隣接させて設けることが考えられる。この場合、1つの印刷装置1により1つの色が印刷されるようになっている。また、少なくとも一番目の印刷装置1につづく他の印刷装置1においては、実際の印刷前の容器2の(位置)調整のために、容器2に設置あるいは塗布されたマーカに印刷位置4.1が形成される。そのため、各色から成る多色印刷が正確な位置になされるよう保証される。
【0052】
基本的には、各容器2を各印刷位置4.1において完全に多色で、及び/又は他の印刷装置において完了した多色印刷における複数の色で印刷するために、異なる色での印刷のための複数の印刷システム5,5a又は5bを印刷装置1に設けることも考えられる。
【0053】
<実施の形態4>
図7には上述のものとは異なる実施の形態が示されている。この図7に示されたシステムにおいては、インクが、固定部においてポンプ39によりこのシステムの調整区間(15,13,14)を通って定常的に供給されている。このような工程は、管路19を介したシステムの回転部におけるインクの供給区間に依存しない。そのほか、サブタンク23.2とサブタンク24.2の間のバイパスは、サブタンク23.2の充填レベルに応じて制御される。これにより、サブタンク23.2における充填レベルを下げる必要がある場合にのみ、このバイパスを開放することが可能である。すなわち、充填レベルが目標範囲内にあれば、バイパスバルブ40は開弁されない。したがって、サブタンク23.2からの空気がサブタンク24.2へ吸引され、容器内の圧力が安定状態にとどまることが効果的に回避される。
【0054】
端部を円で表示した矢印で示すものは、通常の動作状態を示しており、このような動作状態においては、インクはポンプ39によりサブタンク23へ供給され、余剰のインクは、プリントヘッド3を通ってサブタンク24へ供給される。端部を四角で表示した矢印で示すものは洗浄工程を示しており、この洗浄工程においては、配管42に設けられた減圧器41を通る、ポンプ39によるプリントヘッド3への直接の供給がなされる。このような場合、高められた供給出力及び高められた圧力が生じ、ノズル3.1の洗浄がなされる。
【0055】
上記において、いくつかの実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるわけではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、さまざまな変更及びバリエーションが考えられる。
【0056】
また、上記において、印刷システムにおける回転部10,10a,10bが固定部8,8aの上方に位置していることを前提としているが、構造のコンパクト化を図るために、印刷システムの固定部を、該固定部が回転部を完全に又はほぼ完全に包囲するように形成することも考えられる。この場合、プリントヘッドのみが印刷システムの上部に突出することになる。
【0057】
さらに、上記において、容器2の搬送要素、すなわち容器搬送装置を形成するロータ4においてプリントヘッド3あるいは3aが設けられていること、すなわちロータ4が同時にプリントヘッド3あるいは3aを動作させる搬送要素となっていることを前提としているが、多色印刷における少なくとも1つの色におけるプリントヘッド3あるいは3aがそれぞれ軸中心線MA回りに回転する搬送部材(プリントヘッド搬送部材)を備えるようにしてもよい。
【0058】
なお、圧力P23,P24の制御は、ロータ4の回転速度及び/又は加速度に依存して、インクへ作用する圧力の制御により遠心力を相殺することでなされる。
【符号の説明】
【0059】
1 印刷装置
2 容器
3,3a プリントヘッド
3.1,3a.1 ノズル
4 ロータ
4.1 印刷位置
5,5a,5b 印刷システム
6 容器搬入部
7 容器搬出部
8,8a 固定部
9 機台
10,10a,10b 回転部
11 メインタンク
12 温度調整モジュール
13 抜気装置
14 フィルタ
15 フィード循環ポンプ
16 補充用バルブ
17 カートリッジ
18 マルチポートバルブ
19 配管
20 ロータリジョイント
21 供給用配管
22 バルブ
23,24 サブタンク
23a,24a サブタンク
23b,24b サブタンク
23a.1,24a.1 サブタンク
23.1,24.1 タンク内室
23.2,24.2 貯留スペース
23a.2,24a.2 貯留スペース
25 配管
26 配管
27 減圧器
28 マルチポートバルブ
29,29a 仕切り
30 配管
31 配管
32 排出用バルブ
34 コントロールバルブ
35,36 充填レベルセンサ
37 マルチポートバルブ
38 タンク構造
39 ポンプ
40 バイパスバルブ
41 減圧器
42 配管
MA 軸中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル等の容器(2)に印刷を施すための印刷システムであって、印刷位置(4.1)に配置された容器(2)へ印刷を施すための、インクジェット方式で動作し、かつ、前記容器(2)の搬送路に沿って移動可能、特に回転可能な少なくとも1つの電気式のプリントヘッド(3,3a)と、少なくとも1つの該プリントヘッド(3,3a)へインクを供給するための供給システムとを備えて成る前記印刷システムにおいて、
少なくとも1つの前記プリントヘッド(3,3a)と共に移動しない固定部(8,8a)と、少なくとも1つの前記プリントヘッド(3,3a)と共に移動する可動部(10,10a,10b)とで構成し、少なくとも1つの前記プリントヘッド(3,3a)と共に移動しない、前記供給システムにおける固定部を前記固定部(8,8a)に設け、少なくとも1つのインク用のサブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)を前記可動部(10,10a,10b)に更に設け、前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)を少なくとも1つの前記プリントヘッド(3,3a)に接続したことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記可動部又は回転部(10,10a,10b)に複数のプリントヘッド(3,3a)を設けるとともに、少なくとも1つの前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)をすべての前記プリントヘッド(3,3a)に対して共通に設けたことを特徴とする請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)における圧力(P23,P23b;P24,P24b)及び/又はインクの充填高さすなわちインク表面レベルを制御する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷システム。
【請求項4】
少なくとも1つの前記プリントヘッド(3,3a)に接続されたタンク内室(23.1,23a.1;24.1,24a.1)を前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)に設けるとともに、前記タンク内室(23.1,23a.1;24.1,24a.1)を、インクの収容するよう形成し、かつ、当該タンク内室(23.1,23a.1;24.1,24a.1)におけるインク表面レベルの制御のために仕切り(29)を備える構成としたことを特徴とする請求項3記載の印刷システム。
【請求項5】
前記可動部(10,10a,10b)に少なくとも2つの前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)を設けるとともに、これらのうち第1サブタンク(23,23a,23b)を少なくとも1つの前記プリントヘッド(3,3a)へのインク供給用タンクとして形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項6】
少なくとも2つの前記サブタンクのうち第2サブタンク(24,24a,24b)を、印刷工程中にインクが通過する前記プリントヘッド(3)のための排出用タンクとして形成したことを特徴とする請求項5記載の印刷システム。
【請求項7】
前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)の前記プリントヘッド(3,3a)のための、垂直方向の軸中心線(MA)回りに回転駆動される例えばロータ(4)として形成された搬送要素を、前記軸中心線(MA)について、同心状に配置し、及び/又は回転対称に形成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)をリング状又は円筒状に形成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)へインクを供給するか、又は前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)からインクを排出するための少なくとも1つの配管(21,30,31)を軸中心線(MA)に対して同心状に配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項10】
少なくとも2つの前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)を使用する場合に、これらサブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)を軸中心線(MA)方向に互いにずらして配置するか、又は第2サブタンク(24a)が第1サブタンク(23a)を包囲するよう配置あるいは形成したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記可動部(10,10a,10b)を前記固定部(8,8a)の上方に設けるか、又は前記可動部(10,10a,10b)における前記プリントヘッド(3,3a)を前記固定部(8,8a)で包囲したことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記サブタンク(23,23a,23b;24,24a,24b)内及び/又は前記プリントヘッド(3,3a)内におけるインクの圧力(P23,P23b;P24,P24b)を制御する制御手段を、特にインクに作用する遠心力並びに/又は加速及び/若しくはにより生じるインクに対する力を相殺するよう、前記プリントヘッド(3,3a)の回転速度に依存するよう形成したことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項13】
前記固定部(8,8a)にインク用の少なくとも1つのメインタンク(11)並びにインクの補充手段(16)及び/又は特にインクの温度調整、抜気及びフィルタのうち少なくともいずれかを行うインクの調整手段(12,13,14)を設けたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項14】
当該印刷システム又はインク供給システムの前記固定部(8,8a)内におけるインク循環回路用並びに/又は前記固定部(8,8a)及び前記可動部(10,10a,10b)を包含するインク循環回路用に形成したことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項15】
ボトル等の容器(2)に印刷を施すための印刷装置であって、回転駆動される少なくとも1つの容器搬送装置(4)と、該容器搬送装置(4)の複数位置に形成された印刷位置(4.1)とを備えて成り、前記印刷位置(4.1)において、インクジョット方式で動作するデジタル式の少なくとも1つの、印刷システム(5,5a,5b)におけるプリントヘッド(3,3a)によって前記容器(2)に印刷を施すよう構成された前記印刷装置において、
前記印刷システム(5,5a,5b)を請求項1〜14のいずれかに記載のものとしたことを特徴とする印刷装置。
【請求項16】
特に垂直方向の軸中心線回りに回転可能である可動の搬送要素(4)に 複数の前記プリントヘッド(3,3a)を設けたことを特徴とする請求項15記載の印刷装置。
【請求項17】
前記プリントヘッド(3,3a)を有する前記搬送要素を、前記容器搬送装置(4)又は該容器搬送装置(4)から独立した搬送要素としたことを特徴とする請求項16記載の印刷装置。
【請求項18】
前記容器に多色印刷を施すために、それぞれ異なる色のインクが割り当てられた複数の印刷システムを設けたことを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項19】
それぞれ異なる色のインクが割り当てられた前記印刷システム及びそのプリントヘッド(3,3a)の少なくとも一部を、共通の搬送要素又はそれぞれ異なる搬送要素に設けたことを特徴とする請求項18記載の印刷装置。
【請求項20】
少なくとも2つの前記容器搬送装置(4)を前記容器(2)の搬送方向に互いに並べて配置するとともに、各容器搬送装置(4)に、多色印刷における1つの色のインクを前記容器(2)に印刷するための少なくとも1つの印刷システムを設けたことを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項21】
前記各印刷位置(4.1)を、前記プリントヘッド(3,3a)と前記容器(2)の間の相対変位に合わせて形成したことを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526030(P2012−526030A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510152(P2012−510152)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002867
【国際公開番号】WO2010/130397
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(598125028)カーハーエス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (125)
【Fターム(参考)】