説明

ボビンおよびインクシートカートリッジ

【課題】ばね部材を用い、軸方向のテンションが付与された状態で2枚の壁面間に張設させることが簡単にできるボビンを提供する。
【解決手段】軸本体23の端部に形成された嵌合部24に対し、ばね部材27を介装させて摺動させることでボビン20の軸方向長さを伸縮可能に、軸部26aが形成された軸部材26Aを嵌合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の壁面間において軸方向のテンションが付与された状態で保持され、回転自在に軸支されるボビンと、このボビンを収納するインクシートカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録紙への行ごと、または頁ごとの記録を迅速に行う記録装置として、記録紙の幅方向に沿って発熱素子が整列配置された長尺なサーマルヘッドを有するラインサーマルプリンタが使用されている。そして、このようなラインサーマルプリンタには、イエロー、マゼンタ、シアン等の着色部から成る着色領域が連続した長尺なインクシートがロール状に巻装されたボビンがカートリッジケース内に軸支されている。
【0003】
前記ボビンは、例えば、前記インクシートを巻装する円筒状の軸本体と、前記軸本体の一端側に形成された支持軸と、他端側に形成され、プリンタの駆動系が接続される駆動軸とから構成されている。
【0004】
そして、このような従来の構成のボビンを収納するインクシートカートリッジは、ボビンとカートリッジケースとの間にインクシートの弛み防止用のばね部材を介挿し、そのばね部材によって前記ボビンを軸方向に押圧することにより、ボビンの他端側を前記カートリッジケースの側壁に接触させ、プリンタに装着されていない状態において、ボビンの空転を防止し、インクシートの弛みを防止するように構成されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−86828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように、インクシートの弛み防止用のばね部材がボビンとカートリッジケースとの間に介挿される構成のインクシートカートリッジにおいては、使用済みのインクシートを未使用のインクシートに交換する際に、前記ボビンをカートリッジケースから取り出すと、前記ばね部材までもが外れてしまったり、ボビンをカートリッジケースに組み込むときには、ばね部材を指で押さえていなければならなかった。
【0007】
このように、インクシートカートリッジに限らず、例えば、感熱紙を用いるファクシミリなどであっても、ボビンに組み込まれていないばね部材を用いて、2枚の壁面間において軸方向のテンションが付与された状態で前記ボビンを保持し、回転自在に軸支させることは非常に面倒であり、時間を要するものであった。
【0008】
さらに、前記軸本体と該軸本体の両端に配設されるフランジとが一体に形成されたボビンにおいては、ボビン全体が同一材料で形成される。一般的には、最も剛性が求められる部材の特性に合わせた材料を用いて他の部材も形成するため、ボビンにおいては、巻取の張力がかかる軸本体に適切な材料を用いて軸部も形成される。しかしながら、前記軸部は軸本体ほどの剛性を要しないため、本来ならば、もっと成型加工が簡単であったり、安価な材料の使用が可能である。
【0009】
そこで、本発明は、ばね部材を用い、軸方向のテンションが付与された状態で2枚の壁面間に保持させることが簡単にでき、しかも、ばね部材の紛失を防止することができるボビンと、このボビンを用いることにより、さらに、カートリッジケースの再利用を可能にして資源の有効利用を果たすことができるとともに、ランニングコストも低廉となるインクシートカートリッジを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明のボビンの特徴は、2枚の壁面間において軸方向のテンションが付与された状態で保持され、回転自在に軸支されるボビンであって、一端部に一方の軸部が一体形成され他端部に嵌合部が形成された外形円筒状の軸本体の前記嵌合部に、他方の軸部が形成された軸部材を、ばね部材を介装させて摺動させることで該ボビンの軸方向長さを伸縮可能に嵌合させた点にある。
【0011】
このような特徴点を有する本発明のボビンは、軸部材を摺動させて介装させたばね部材をその弾性復元力に抗して押圧し、その軸方向長さを縮めた状態で2枚の壁面間に差し入れ、その後、前記ばね部材の押圧を解除することで、前記ばね部材の弾性復元力を利用して該ボビンの軸方向長さを伸ばし、前記ボビンを前記2枚の壁面間に挟持させることで、前記ボビンに軸方向のテンションを付与することができる。
【0012】
また、本発明のボビンの別の特徴は、外形円筒状の軸本体の両端部に形成された嵌合部に軸部材がそれぞれ嵌合されてなり、2枚の壁面間において軸方向のテンションが付与された状態で保持され、回転自在に軸支されるボビンであって、少なくとも一方の軸部材は、前記軸本体の端部との間にばね部材を介装させて摺動させることで該ボビンの軸方向長さを伸縮可能に嵌合させた点にある。
【0013】
このような特徴点を有する本発明のボビンにおいても、軸部材を摺動させて介装させたばね部材をその弾性復元力に抗して押圧し、その軸方向長さを縮めた状態で2枚の壁面間に差し入れ、その後、前記ばね部材の押圧を解除することで、前記ばね部材の弾性復元力を利用して該ボビンの軸方向長さを伸ばし、前記ボビンを前記2枚の壁面間に挟持させることで、前記ボビンに軸方向のテンションを付与することができる。
【0014】
なお、本発明のボビンは、前記ばね部材を軸本体の両端部において各軸部材との間に介装させることも可能であるし、いずれか一方の端部において軸部材との間に介装させることも可能である。
【0015】
また、ボビンを、軸本体と2つの軸部材そしてばね部材といった個々の構成部材を組み合わせて形成することにより、各々の構成部材をその作用・用途に要求される特性に応じた材料で形成することができるので、製品としても優れたものとなり、また、経済面でも材料を吟味したり、加工方法を工夫することで無駄なコストを省くことが可能となり、しかも、廃棄処分も簡単かつ適切に行うことができる。
【0016】
そして、本発明のインクシートカートリッジの特徴は、軸本体にインクシートがロール状に巻装された前述の構成のボビンを、前記カートリッジケースの対向する駆動側側壁部と支持側側壁部との間に回転自在に軸支した点にある。
【0017】
このような特徴点を有するインクシートカートリッジにおいては、自らが備えたばね部材によって付与されるテンションを利用して駆動側側壁部と支持側側壁部との間に挟持させることにより、セミオープンタイプのカートリッジケースに保持させることができ、カートリッジケースの構造を簡略化できる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明のボビンは、ばね部材を用い、軸方向のテンションが付与された状態で2枚の壁面間に保持させることが簡単にでき、しかも、ばね部材の紛失を防止することができ、さらには、安価に製造することができる。
【0019】
また、本発明のインクシートカートリッジは、このボビンを用いることにより、インクシートの交換が簡便になり、カートリッジケースの再利用を可能にして資源の有効利用を果たすことができるとともに、ランニングコストも低廉となるといった優れた効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のボビンは、2枚の壁面間において軸方向のテンションが付与された状態で保持され、回転自在に軸支されるものである。以下、2つの実施形態について説明する。
【0021】
本発明の第1の実施形態のボビン20は、図1および図2に示すように、インクシートや記録紙などのシート状の対象物を巻装する外形円筒状の軸本体23を有しており、この軸本体23の一端部には、該ボビン20の一方の軸部としての支持軸部25が一体に形成されている。
【0022】
本実施形態において、前記支持軸部25は、軸本体23と同軸に延在させて形成され、図示しない一方の軸受部に軸支される支持軸25aと、前記軸本体23と支持軸25aとの境部に形成され、前記軸本体23よりも大径とされた鍔状のフランジ25bとから構成されている。
【0023】
また、前記軸本体23の他端部には、該ボビン20の他方の軸部としての駆動軸26aが形成された駆動軸部材26Aを嵌合させる、凹状の本体側嵌合部24(本体駆動側嵌合部24b)が形成されている。この本体側嵌合部24の内壁面には、前記駆動軸部材26Aに形成された凸状の軸側係合部26dをスライド可能に嵌入させる溝状の本体側係合部24dが形成されている。
【0024】
前記駆動軸部材26Aは、前記軸本体23よりも大径とされた鍔状のフランジ26bと、前記フランジ26bの片面側に形成され、図示しない他方の軸受部に軸支される駆動軸26aと、前記フランジ26の他面側に形成され、前記軸本体23の凹状の本体側嵌合部24(24b)に嵌合させる円環状の軸側嵌合部26cとから構成されている。前記円環状の駆動軸側嵌合部26cの外壁面には、前記溝状の本体側係合部24dにスライド可能に嵌入される凸状の軸側係合部26dが形成されている。
【0025】
そして、この駆動軸部材26Aの前記軸側嵌合部26cを、前記本体側嵌合部24の凹部内においてコイル状のばね部材27を介装させつつ、前記本体側係合部24dに軸側係合部26dを係合させるようにして嵌合させることにより、該ボビン20の駆動軸部26が構成されており、また、該ボビン20は、この軸本体23と駆動軸部材26Aの嵌合部分を軸方向に摺動させることで該ボビンの軸方向長さが伸縮自在とされている。
【0026】
このような構成を有する本実施形態のボビン20においては、前記本体側嵌合部24の凹部内に配設され、前記軸本体23と駆動軸部材26Aとの間に介装されたばね部材27を、弾性復元力に抗して押圧し、該ボビン20の軸方向長さを縮めた状態で配設目的の2枚の壁面間に差し入れ、続いて、ばね部材27の弾性復元力を利用して該ボビン20の軸方向長さを伸ばすことで、前記2枚の壁面間にボビン20に軸方向のテンションを付与した状態で挟持させることができる。また、前記2枚の壁面にそれぞれ形成された軸受部に、前記軸本体23に一体形成された支持軸25aと、駆動軸部材26Aに形成された駆動軸26aとを軸支させ、前記駆動軸26aに、図示しない駆動系を接続させることで、前記軸側係合部26dが本体側係合部24dにその回転駆動力を伝達し、回転自在とすることができる。
【0027】
このように、本実施形態のボビン20は、ばね部材27を用いて軸方向のテンションが付与された状態で2枚の壁面間に保持させることが簡単にできる。しかも、ばね部材27はボビン20内に配設されているので、ボビン20を脱着させる際にばね部材27が紛失するようなこともなく、ばね部材27が外れて飛び出す危険も回避することができる。
【0028】
続いて、第2の実施形態のボビンについて説明する。
【0029】
第2の実施形態のボビンは、図3に示すように、インクシートや記録紙などのシート状の対象物を巻装する外形円筒状の軸本体23を有しており、この軸本体23の両端部にはそれぞれ、該ボビン20の一方の軸部としての支持軸25aが形成された支持軸部材25Aを嵌合させる凹状の嵌合部24(本体支持側嵌合部24a)、該ボビン20の他方の軸部としての駆動軸26aが形成された駆動軸部材26Aを嵌合させる凹状の嵌合部24(本体駆動側嵌合部24b)が形成されている。本実施形態においては、本体支持側嵌合部24aおよび本体駆動側嵌合部24bの内壁面には、該ボビン23の軸方向に延在する溝状の本体側係合部24dがそれぞれ形成されている。
【0030】
ここで、前記支持軸部材25Aは、前記軸本体23よりも大径とされた鍔状のフランジ25bと、前記フランジ25bの片面側に形成され、図示しない一方の軸受部に軸支される支持軸25aと、前記フランジ25bの他面側に形成され、前記軸本体23の凹状の本体支持側嵌合部24aに嵌合させる円環状の軸側嵌合部25cとから構成されている。前記円環状の軸側嵌合部25cの外壁面には、前記溝状とされた前記本体側係合部24dにスライド可能に係合させる凸状の軸側係合部25dが形成されている。
【0031】
そして、この支持軸部材25Aの前記軸側嵌合部25cを前記本体側係合部24dに軸側係合部26dを係合させるようにして嵌合させることにより、該ボビン20の支持軸部25が構成されている。
【0032】
同様に、前記駆動軸部材26Aは、前記軸本体23よりも大径とされた鍔状のフランジ26bと、前記フランジ26bの片面側に形成され、図示しない他方の軸受部に軸支される駆動軸26aと、前記フランジ26bの他面側に形成され、前記軸本体23の凹状の本体駆動側嵌合部24bに嵌合させる円環状の軸側嵌合部26cとから構成されている。前記円環状の軸側嵌合部26cの外壁面には、前記溝状とされた前記本体側係合部24bにスライド可能に嵌入される凸状の軸側係合部26dが形成されている。
【0033】
そして、この駆動軸部材26Aの前記軸側嵌合部26cを、前記本体側嵌合部24の凹部内においてコイル状のばね部材27を介装させつつ、前記本体側係合部24dに軸側係合部26dを係合させるようにして嵌合させることにより、該ボビン20の駆動軸部26が構成されており、また、該ボビン20は、この軸本体23と駆動軸部材26Aの嵌合部分を軸方向に摺動させることで該ボビン20の軸方向長さが伸縮自在とされている。
【0034】
このような構成を有する本実施形態のボビン20においても、前述の第1実施形態と同様にばね部材が作用し、同様の効果を得ることが可能となる。特に、ボビンを一体形成せずに、軸本体と2つの軸部材とを分けて加工形成し、それらを組み合わせて完成品を形成することにより、各々の部材をその作用・用途に要求される特性に応じた材料で形成することができるので、製品としても優れたものとなり、また、経済面でも材料を吟味したり、加工方法を工夫することで無駄なコストを省くことが可能となり、しかも、廃棄処分も簡単かつ適切に行うことができるものとなる。
【0035】
次に、本発明のインクシートカートリッジとして、前記第2実施形態のボビンを装着した一実施形態を図4乃至図8を用いて説明する。
【0036】
本実施形態のインクシートカートリッジは、インクシートがロール状に巻装される、前記構成を有する2本の前記ボビン20(21、22)を、カートリッジケースの対向する駆動側側壁部と支持側側壁部との間に回転自在に軸支する構成を有するインクシートカートリッジである。
【0037】
前記インクシートカートリッジ1は、図4に示すように、インクシートユニット2と、前記インクシートユニット2を収納するカートリッジケース3とから構成される。
【0038】
前記インクシートユニット2は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の着色部から成る着色領域が連続して形成された長尺なインクシート(図示省略。以下、同じ。)と、前記インクシートを一端側から巻回したシート供給用ボビン21と、前記インクシートを他端側から巻回したシート巻取用ボビン22とを有している。
【0039】
前記シート供給用ボビン21、および、シート巻取用ボビン22は、前述した本発明のボビンの第2実施形態に示す構成を備え、さらに、本実施形態においては、図5に示すように、各駆動軸部材26Aに配設されたフランジ26bの前記駆動軸26aが形成された面には、嵌合部としての複数の矩形状をした矩形溝26fが形成され、駆動軸26aの周囲に均等な放射状に配列されている。
【0040】
そして、シート供給用ボビン21の軸本体23には未使用のインクシートが一端側から巻回されており、シート巻取用ボビン22の軸本体23には前記インクシートが他端側から巻回されている。
【0041】
また、前記カートリッジケース3は、その中央部に図示しないプリンタの記録部を、前記シート供給用ボビン21とシート巻取用ボビン22との間に展張されるインクシートに当接させるための開口部32が形成された1つのケース基体31を有している。
【0042】
本実施形態において、前記ケース基体31は樹脂製の略板状部材からなり、その中央部に窓枠状の前記開口部32が形成されている。そして、前記ケース基体31の両端部はそれぞれ半円筒状に曲げ形成され、一方は巻回したインクシートとともに前記シート供給用ボビン21を収納するシート供給側ドーム部33とされ、他方は巻回されたインクシートとともに前記シート巻取用ボビン22を収納するシート巻取側ドーム部34とされている。
【0043】
そして、前記ケース基体31の両側部にはそれぞれ、前記シート供給用ボビン21とシート巻取用ボビン22のそれぞれの一端側に設けられた支持軸部材25Aを回転自在に軸支する支持側側壁部37と、前記シート供給用ボビン21とシート巻取用ボビン22のそれぞれの他端側に設けられた駆動軸部材26Aを回転自在に軸支する駆動側側壁部35、36が垂設されている。
【0044】
詳しくは、本実施形態における前記駆動側側壁部35、36は前記ケース基体31の一側部に形成されており、前記シート供給側ドーム部33に対応させて垂設された外形略円状の駆動側側壁部35と、前記シート巻取側ドーム部34に対応させて垂設された外形略円状の駆動側側壁部36とからなる。
【0045】
本実施形態において、前記シート供給側ドーム部33に対応させて垂設された外形略円状の駆動側側壁部35と、前記シート巻取側ドーム部34に対応させて垂設された外形略円状の駆動側側壁部36とは同様に構成されているので、以下では、図6用いて、シート巻取側ドーム部34の駆動側側壁部36の構成を代表的に詳説する。なお、括弧内はシート供給側ドーム部33における対応部材の符号である。
【0046】
前記駆動側側壁部36(35)の壁面中央部には、シート巻取用ボビン22(21)の前記駆動軸部材26Aの駆動軸26aを回転可能に軸支する孔状の軸受部36a(35a)が形成されている。そして、前記駆動側側壁部36(35)の内壁面には、前記孔状の軸受部36a(35a)の径方向に延在し、前記駆動軸部材26Aのフランジ26bの外壁面に形成された矩形溝26fに嵌合する係合突起36b(シート供給側ドーム部の係合突起は図示せず)が突設されている。
【0047】
また、本実施形態における前記支持側側壁部37は、前記カートリッジケース3の外壁を構成する1枚の外壁部38と、前記カートリッジケース3の前記シート供給側ドーム部33内および前記シート巻取側ドーム部34内においてそれぞれ前記外壁部38と一定の間隔を以て平行に垂設された内壁部39、40とを有している。
【0048】
本実施形態において、前記支持側側壁部37は、前記シート供給側ドーム部33側と前記シート巻取側ドーム部34側とにおいて同様に構成されているので、以下では、図7を用い、シート巻取側ドーム部34の支持側側壁部37の構成を代表的に詳説する。なお、括弧内はシート供給側ドーム部33における対応部材の符号である。
【0049】
前記支持側側壁部37の内壁部40(39)には、前記シート巻取用ボビン22(21)の支持軸部材25Aにおける支持軸25aを回転可能に軸支する孔状の軸受部40a(39a)が形成されている。
【0050】
本実施形態において、前記内壁部40(39)は、図7に示すように、その内面側先端辺部分が面取りされた傾斜面とされ、前記シート巻取用ボビン22(21)の前記支持軸25aの先端部を前記軸受部40a(39a)へ案内する案内壁として作用するように構成されている。
【0051】
次に、カートリッジケース3に対するインクシートユニット2の脱着方法の一例を説明する。
【0052】
前記カートリッジケース3に未使用のインクシートユニット2を装着する場合、前記カートリッジケース3をその内側を上向きにして置く。そして、前記駆動側側壁部35、支持側側壁部37、シート供給側ドーム部33とにより囲まれた断面半円弧状の空間部(以下、シート供給用ボビン収納部という。)内に、インクシートユニット2のシート供給用ボビン21を収納する。
【0053】
先ず、前記シート供給用ボビン21の駆動軸部材26Aの駆動軸26aを前記駆動側側壁部35に形成された孔状の軸受部35aに摺動回転可能に嵌入させる。このとき、前記フランジ26bの外壁面に形成された矩形溝26fを、駆動側側壁部35に形成された係合突起と嵌合させるようにする。
【0054】
続いて、前記本体駆動側嵌合部24bの凹部内に配設され、前記軸本体23と駆動軸部材26Aとの間に介装されたばね部材27を弾性復元力に抗して押圧し、前記シート供給用ボビン21の軸方向長さを縮めつつ、前記支持軸部材25Aの支持軸25aの先端部を、前記内壁部39に形成された案内壁面に当接させながら滑らせ、前記支持軸25aが前記軸受部39aに案内された時点で、ばね部材27の弾性復元力を利用して該シート供給用ボビン21の軸方向長さを伸ばし、前記軸受部39aに支持軸25aを嵌挿させて、回転可能に軸支させる(図8参照)。このとき、前記駆動側側壁部35と前記支持側側壁部37の内壁部39とに、前記駆動軸部材25A、支持軸部材26Aのそれぞれのフランジ25b、26bが当接する。これにより、前記シート供給用ボビン21は、前記ばね部材27の弾性復元力により軸方向のテンションを付与した状態で配設される。このとき、前記係合突起と矩形溝26fが嵌合するので、プリンタに装着されていない状態において、前記シート供給用ボビン21が空転することを防止でき、インクシートに弛みが発生することを防ぐことができる。
【0055】
また、前記駆動側側壁部35の軸受部35aに軸支された前記駆動軸部材26Aに、図示しないプリンタの駆動系を接続させる。そして、記録時には、プリンタの駆動系を駆動させ、回転させることにより、前記駆動軸部材26Aの前記軸側係合部26dが軸本体23の本体駆動側嵌合部24bに形成された本体側係合部24dにその回転駆動力を伝達し、本体支持側嵌合部24aに形成された前記本体側係合部24dが前記支持軸部材25Aの前記軸側係合部25dにさらに回転駆動力を伝達することで、前記シート供給用ボビン21を一体に回転させることができる。
【0056】
このようにしてシート供給用ボビン収納部内にシート供給用ボビン21を納めたら、シート供給用ボビン21から引き出された未使用のインクシートを、搬送経路に開口する前記ケース基体31の開口部32に展張させ、前記シート巻取用ボビン22を前記駆動側側壁部36、支持側側壁部37、シート巻取側ドーム部34により囲まれた断面半円弧状の空間部(以下、シート巻取用ボビン収納部という。)内に収納する。その収納方法については、前記シート供給用ボビン21の収納時と同様とし、説明を省略する。
【0057】
このようにしてカートリッジケース3内にインクシートユニット2が収納されたインクシートカートリッジ1は、プリンタの所定位置に装着され、記録に供される。本実施形態のインクシートカートリッジ1は、プリンタへの装着時には前記ケース基体31の外壁面を上面とし、前記インクシートユニット2を前記ケース基体31の下側に収納・保持する形のセミオープンタイプの構造となっている。本実施形態のインクシートカートリッジは、プリンタへの装着時においては、前記シート供給用ボビン21およびシート巻取用ボビン22は、それぞれの支持軸25a、駆動軸26aが軸支されるとともに、前記ばね部材から付与されるテンションによって前記支持側側壁部37と駆動側側壁部35、36との間に保持されているので、セミオープンタイプのカートリッジであっても開放側へ脱落することはない。
【0058】
また、前記カートリッジケース3から使用済みのインクシートユニット2を回収する場合、先ず、前記カートリッジケース3をその内側を上向きにして置く。そして、シート巻取側ボビン収納部から、使用済みのインクシートが巻回されたシート巻取用ボビン22を回収する。
【0059】
このとき、使用者は、前記支持軸部材25Aを把持し、前記ばね部材44の押圧力に抗して該シート巻取用ボビン22の軸方向長さを縮めるように押しながら、前記内壁部40の軸受部40aに対する前記支持軸部材25Aの支持軸25aの嵌入を解除し、続いて、前記駆動軸部材22cの駆動軸の前記駆動側側壁部36に形成された軸受部36aに対する嵌入を解除する。
【0060】
同様にして、シート巻取側ボビン収納部から、使用済みのインクシートが巻回されたシート供給用ボビン21を回収する。
【0061】
このように、本実施形態のインクシートカートリッジは、前記シート供給用ボビンおよびシート巻取用ボビンを、自らが備えたばね部材によって付与されるテンションを利用して駆動側側壁部と支持側側壁部との間に張設させることができるので、インクシートユニットの交換が簡便なものとなり、また、カートリッジケースにはばね部材の配設が不要となるので、カートリッジケースの構造を簡略化できる。
【0062】
また、セミオープンタイプとされた本実施形態のインクシートカートリッジ1によれば、カートリッジケース3を分解する手間やスキルを要せず、インクシートユニット2の交換が容易であり、また、前記カートリッジケース3は再利用も可能であるので、ランニングコストも低廉となる。
【0063】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、第1および第2実施形態のボビンにおいては、必ずしも前記ばね部材を前記軸本体の凹部内に収納する構成とする必要はない。例えば、前記ばね部材を、軸本体の前記凹部が形成された先端面と軸部材のフランジとの間に配設する構成とすることも可能である。但し、安全性やばねの紛失の問題等を鑑みれば、前記ばね部材をボビンの内部に収納する構成であることが好ましい。
【0065】
また、第2実施形態のボビンにおいては、軸本体の両端部において、ばね部材を配設する構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のボビンの第1実施形態の要部断面図
【図2】図1のII−II断面図
【図3】本発明のボビンの第2実施形態の要部断面図
【図4】本発明のインクシートカートリッジの本実施形態の要部平面図
【図5】本実施形態のインクシートカートリッジにおけるボビンの外形状を示す斜視説明図
【図6】本実施形態のインクシートカートリッジにおける駆動側側壁部の内壁面構造を示す斜視説明図
【図7】本実施形態のインクシートカートリッジにおける支持側側壁部の構造を示す斜視説明図
【図8】本実施形態のインクシートカートリッジにおけるボビンの支持軸部材の軸支状態を示す要部断面図
【符号の説明】
【0067】
1 インクシートカートリッジ
2 インクシートユニット
3 カートリッジケース
20 ボビン
21 シート供給用ボビン
22 シート巻取用ボビン
23 軸本体
24 本体側嵌合部
24a 本体支持側嵌合部
24b 本体駆動側嵌合部
24d 本体側係合部
25 支持軸部
25A 支持軸部材
25a 支持軸
25b フランジ
25c 軸側嵌合部
25d 軸側係合部
26 駆動軸部
26A 駆動軸部材
26a 駆動軸
26b フランジ
26c 軸側嵌合部
26d 軸側係合部
26f 矩形溝
27 ばね部材
31 ケース基体
32 開口部
33 シート供給側ドーム部
34 シート巻取側ドーム部
35 軸受部
35a 軸受部
36 駆動側側壁部
36a 軸受部
36b 係合突起
37 支持側側壁部
38 外壁部
39、40 内壁部
39a、40a 軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の壁面間において軸方向のテンションが付与された状態で保持され、回転自在に軸支されるボビンであって、
一端部に一方の軸部が一体形成され、他端部に嵌合部が形成された外形円筒状の軸本体の前記嵌合部に、他方の軸部が形成された軸部材を、ばね部材を介装させて摺動させることで該ボビンの軸方向長さを伸縮可能に嵌合させたことを特徴とするボビン。
【請求項2】
外形円筒状の軸本体の両端部に形成された嵌合部に軸部材がそれぞれ嵌合されてなり、2枚の壁面間において軸方向のテンションが付与された状態で保持され、回転自在に軸支されるボビンであって、
少なくとも一方の軸部材は、前記軸本体の端部との間にばね部材を介装させて摺動させることで該ボビンの軸方向長さを伸縮可能に嵌合させたことを特徴とするボビン。
【請求項3】
前記軸本体にインクシートがロール状に巻装される請求項1または請求項2に記載のボビンを、前記カートリッジケースの対向する駆動側側壁部と支持側側壁部との間に回転自在に軸支することを特徴とするインクシートカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−246247(P2007−246247A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74008(P2006−74008)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】