説明

ボビン搬送装置

【課題】部品配置に関する設計の自由度を損なうことがなく、しかも残糸付きのボビンから解舒された糸の絡み付きに起因する動作不良の発生を確実に防ぐことができるボビン搬送装置を提供する。
【解決手段】無端ベルト12が巻き掛けられる原動ローラ10の幅寸法(W1)を、無端ベルト12の幅寸法(W2)よりも小さく設定したので、上方視で幅寸法の両端部を含んで原動ローラ10の全体を無端ベルト12で覆うことができる。これによれば、ボビンBから解舒した残糸7が原動ローラ10に接触することを防いで、残糸7が原動ローラ10に絡み付くことを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空ボビンを上流側から下流側に向かって搬送するボビン搬送装置に関する。このボビン搬送装置は、例えば空ボビンを空ボビン回収箱に回収する自動ワインダーのボビン排出ラインに適用される。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダー装置においては、ボビン交換ユニットからワインディングユニットへの実ボビンの供給動作、およびワインディングユニットから排出された空ボビンのボビン交換ユニットへの回収動作をトレイ形態で行うものがある。
また、ワインディングユニットへの実ボビンの供給動作を手動とし、ワインディングユニットからの空ボビンの回収をコンベアで行うものもある。そこでは、ワインディングユニットから手動で抜き取られた空ボビンは、搬送ベルト上に載置された状態で、空ボビン回収箱に送られる(本発明の図2参照)。
【0003】
ワインディングユニットから排出されるボビンには、全く糸が残っていない空ボビンだけでなく、糸不良などによりワインディングユニットで巻き取り困難と判断された残糸付きのボビンも含まれる。このように残糸付きのボビンの場合には、コンベアによる搬送途中で残糸が解舒されると、残糸がコンベアのローラやシャフトなどに絡み付き、コンベアの動作不良を引き起こすおそれがある。特に、ローラ等に残糸が絡み付き、円滑な回転動作が阻害されると、コンベアの駆動モータに大きな負荷が掛かり、駆動モータが破損するおそれがあった。
【0004】
そこで特許文献1では、搬送ベルトの駆動ローラ及び偏向ローラを、糸の絡まりの発生し難い区間に配置することで、駆動ローラ等への糸の絡み付きを防ぎ、駆動モータが破損されることを防いでいる。
【0005】
【特許文献1】特許第310067号公報(図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1では、搬送ベルトの駆動ローラや偏向ローラの配設箇所を糸の絡まりの発生し難い箇所を選んでいる。このことは、コンベアの部品配置に影響を及ぼし、とくに、ボビン搬送の上流側よりも下流側における部品配置などに関して設計の自由度が低くなることを意味する。
【0007】
本発明は以上のような問題点を解決するためになされたものであり、部品配置に関する設計の自由度を損なうことがなく、しかも残糸付きのボビンから解舒された糸の絡み付きに起因する動作不良の発生を確実に防ぐことができるボビン搬送装置を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、残糸付きのボビンから解舒された糸がローラやシャフト等に絡み付いた場合にも、駆動モータに大きな負荷が掛かって駆動モータが破損することがなく、動作不良の無い信頼性に優れたボビン搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータからの駆動力を受ける原動ローラと、該原動ローラに対応して配置される従動ローラと、両ローラに巻き掛けられる無端ベルトとを含んで構成されており、該無端ベルト上に載置された空ボビンを上流側から下流側に向かって搬送するボビン搬送装置であって、少なくとも搬送方向の下流側に配されたローラの幅寸法が、前記無端ベルトの幅寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0009】
具体的には、ローラの幅寸法と前記無端ベルトの幅寸法の差は、少なくとも2mm以上に設定することが好ましい。寸法差の上限値は10mmとする。
【0010】
また、少なくとも搬送方向の下流側に配されたローラを支持するシャフトが、前記無端ベルトの幅方向の縁部から上方視で当該幅方向に張り出しており、前記シャフトの無端ベルトからの張り出し部分が、保護カバーで覆われた形態を採ることができる。
【0011】
具体的には、前記シャフトの両端は、ベアリングユニットに支持されており、前記ベアリングユニットが、スペーサを介して、前記無端ベルトから幅方向に離れて配置されており、このベアリングユニットに保護カバーが装着されている形態を採ることができる。
【0012】
前記保護カバーは、前記ベアリングユニットに装着支持されるフランジ部と、前記シャフトの挿通を許す筒状の本体部とを有し、前記本体部の遊端部が、前記ローラの内部に至っている形態を採ることができる。
【0013】
また本発明は、第1コンベアと、該第1コンベアの下流端に近接配置されて、該第1コンベアと一連の搬送経路を構成するように設置された第2コンベアとを有し、前記第1コンベアの下流端に至った空ボビンを第2コンベアで受けて搬送するボビン搬送装置を対象とする。両コンベアは、上流端と下流端に位置する一対のローラと、両ローラのそれぞれを支持するシャフトと、両ローラに巻き掛けられる無端ベルトとを含んで構成されている。前記第1コンベアの下流端に位置する原動シャフトと、前記第2コンベアの上流端に位置する受動シャフトの間には、第1コンベアのモータの駆動力を第2コンベアに伝動するための動力伝動機構が設けられており、該動力伝動機構を介して前記モータの駆動力を受けることで、前記第2コンベアは従動駆動されるように構成されている。前記受動シャフトには、前記動力伝動機構を構成して、前記モータの駆動力を受ける受動体が装着されており、前記受動体と前記受動シャフトとの間に、両者間の動力伝達をオン/オフ制御する連結機構が設けられていることを特徴とする。
【0014】
具体的には、前記連結機構は、前記受動体と前記受動シャフトとの間に配された摩擦板と、前記摩擦板を前記受動体に押し付ける付勢部材とを含むものとすることができる。
【0015】
前記連結機構は、前記付勢部材による前記受動体に対する前記摩擦板の付勢力を調整する調整部材を備える形態を採ることができる。
【0016】
前記第2コンベアの駆動状態を検知するための検知手段をさらに備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
無端ベルトが巻き掛けられるローラの幅寸法を、無端ベルトのそれよりも小さく設定したボビン搬送装置によれば、上方視で幅寸法の両端部を含んでローラの全体を無端ベルトで覆うことができるので、ボビンから解舒した残糸がローラに接触することを無端ベルトで阻止して、残糸がローラに絡み付くことを防ぐことができる。これにて、残糸がローラに絡み付くことにより、ローラの円滑な回転動作が損なわれ、モータに大きな負荷が掛かって、モータが破損することを防ぐことができる。このことは、ボビン搬送装置の信頼性の向上に資する。
【0018】
また、ローラの幅寸法を無端ベルトのそれよりも小さくするだけの簡単な構成で、ローラに対する残糸の絡み付きを防ぐことができるので、動作不良の無い信頼性に優れたボビン搬送装置を低コストに提供できる利点もある。無端ベルトの幅寸法をローラのそれよりも大きく設定していると、無端ベルトの両端部がローラの両端のコーナー部に係合した状態で、無端ベルトを走行させることができ、したがって、無端ベルトが蛇行し難い利点もある。
加えて、糸の絡まりの発生し難い箇所を選んで原動ローラ等を配設する必要がなく、部品配置に関する設計の自由度が損なわれることもない。
【0019】
ローラの幅寸法と無端ベルトの幅寸法の差は、少なくとも2mm以上、10mm以下に設定することが好ましい。2mm以下では、無端ベルトから零れて垂れ下がった残糸がローラに接触して絡まるおそれが残る。一方、10mmを超えても、上記範囲を超える残糸の絡み付きの防止効果を期待することはできない。
【0020】
少なくとも搬送方向の下流側に配されたローラを支持して回転するシャフトを、無端ベルトの幅方向の端部から上方視で幅方向に張り出して、シャフトの無端ベルトからの張り出し部分を保護カバーで覆ったボビン搬送装置によれば、ボビンから解除した残糸がシャフトに接触することを保護カバーで阻止して、残糸がシャフトに絡み付くことを防ぐことができる。これにて、残糸がシャフトに絡み付くことにより、シャフトの円滑な回転動作が損なわれて、モータに大きな負荷が掛かって破損することを防ぐことができる。
また、シャフトを保護カバーで覆うだけの簡単な構成で、シャフトに対する残糸の絡み付きを防ぐことができるので、動作不良の無い信頼性に優れたボビン搬送装置を低コストに提供できる利点もある。
加えて、糸の絡まりの発生し難い箇所を選んで原動ローラ等を配設する必要がなく、部品配置に関する設計の自由度が損なわれることもない。
【0021】
シャフトの両端は、ベアリングユニットに支持されており、ベアリングユニットが、スペーサを介して無端ベルトから幅方向に離れて配置されているボビン搬送装置によれば、ベアリングユニットを無端ベルトから離れた位置に配置したので、該ベアリングユニットに対して残糸が接触すること、および残糸がベアリングユニットに絡み付くことを防ぐことができる。また、ベアリングユニットに保護カバーが装着されていると、該保護カバーを組み付けるための専用の部材を排して、部品点数の削減化に貢献することができる。
【0022】
保護カバーをベアリングユニットに装着支持されるフランジ部と、シャフトの挿通を許す筒状の本体部とを有し、本体部の遊端部がローラの内部に至っている形態を採ることができる。このように、本体部の遊端部がローラの内部に至っていると、シャフトの全体を本体部で覆うことができるので、シャフトに残糸が接触することはなく、シャフトに残糸が絡み付くことを確実に防ぐことができる。
【0023】
第1コンベアと第2コンベアとで構成され、第2コンベアの従動シャフトが第1コンベアの原動シャフトから動力伝動機構を介して駆動され、第2コンベアの受動シャフトに装着された従動体と、該受動シャフトとの間に動力伝達をオン/オフ制御する連結機構が設けられているボビン搬送装置によれば、例えば残糸付きのボビンから解舒された残糸が受動シャフト等に絡み付いて第2コンベアが回転不能に陥った場合には、連結機構によって受動シャフトと従動体との間の動力伝達をオフ制御することができる。これにて、第2コンベアの動作不良に由来する大きな負荷がモータに掛かることを防ぐことができるので、モータが破損されることを防いで、動作不良の少ない信頼性に優れたボビン搬送装置を提供できる。
【0024】
連結機構を受動体と受動シャフトとの間に配された摩擦板と、摩擦板を受動体に押し付ける付勢部材とを含むものとすることができる。これによれば、常態においては、従動体の駆動回転動作に従って、摩擦板を介して受動シャフトが従動回転されるオン状態となる。何らかの理由で第2コンベアの無端ベルトの回転が強制停止されると、摩擦板を介しての受動シャフトへの動力伝達が途絶えるオフ状態となる。つまり、第2コンベアの無端ベルトの回転が強制停止された状態においては、受動シャフトに対して摩擦板が遊転し、或いは従動体に対して摩擦板が遊転するため、従動体から受動シャフトへの動力伝達が途絶えるオフ状態となる。
この連結機構によれば、摩擦板と付勢部材と含む簡単な構成で、確実に動力伝達をオン・オフ制御することができる。メンテナンス時においては、摩擦板を交換するだけで済み、メンテナンス性に優れた連結機構を得ることができる。連結機構の小型化が容易であり、第1コンベアや第2コンベアの構造の如何にかかわらず、連結機構の適用が容易である点でも優れている。
【0025】
付勢部材による受動体に対する摩擦板の付勢力を調整する調整部材を備えていると、コンベアの搬送力やユーザーの趣向に応じた適正なオン/オフ制御力を連結機構に与えることができる。
【0026】
第2コンベアの駆動状態を検知するための検知手段を設けていると、第2コンベアが回転不能に陥ったときには、例えばアラームなどを鳴らすことにより、ユーザーに警告を発するように構成できる。これによれば、第2コンベアを早期に復旧させることが可能となって、第2コンベアの搬送能力の向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1ないし図8に、本発明に係るボビン搬送装置を自動ワインダーに適用した実施形態を示す。図2に示すように、自動ワインダーは、左右方向に列状に配置した一群のワインディングユニット1と、これらワインディングユニット1から抜き取られた空ボビンB1を空ボビン回収箱3に搬送するためのボビン搬送装置4とを備える。ボビン搬送装置4は、ワインディングユニット1の前方位置に配されて左右の水平方向に走る第1コンベア5と、第1コンベア5の下流端(図示例では右端)に近接配置されて、第1コンベア5と一連の搬送経路を構成するように設置された第2コンベア6とを有する。図3に示すように、第2コンベア6は、空ボビンB1をボビン回収箱3の上面開口から投入するものであり、右上がりの傾斜姿勢に設置されている。
【0028】
図2に示すように、ワインディングユニット1から排出されるボビンBには、全く糸が残っていない空ボビンB1だけでなく、糸不良などによりワインディングユニット1で巻き取り困難と判断された残糸付きのボビンB2も含まれる。このような残糸付きのボビンB2も、空ボビンB1と同様に、第1コンベア5および第2コンベア6によって空ボビン回収箱3に回収される。
【0029】
図3および図1に示すように、第1コンベア5は、モータ9からの駆動力を受ける原動ローラ10と、該原動ローラ10に対応して配置される従動ローラ11と、両ローラ10・11に巻き掛けられる無端ベルト12とを含んで構成されており、無端ベルト12上に載置されたボビンBを左方の上流側から右方の下流側に向かって搬送する。
第2コンベア6は、後述する動力伝動機構Mを介してモータ9からの駆動力を受けて回転する原動ローラ20と、該原動ローラ20に対応して配置される従動ローラ21と、両ローラ20・21に巻き掛けられる無端ベルト22とを含んで構成されており、無端ベルト22上に載置されたボビンBを左下方の上流側から右上方の下流側に向かって搬送する。第2コンベアの無端ベルト22には、ボビンBを持ち上げるための羽22aが、無端ベルト22の全周にわたって所定間隔を置いて形成されている。
これら第1および第2コンベア5・6は、前後壁31・32を有するベース30に組み付けられている。
【0030】
第1コンベア5および第2コンベア6を構成するローラ10・11・20・21のそれぞれは、対応するシャフトとベアリングユニットにより支持されている。以下においては、これらシャフトとベアリングユニットの構成について第1コンベア5の原動ローラ10の支持機構Sを例にして説明する。
図5に示すように、原動ローラ10の支持機構Sは、前後壁31・32の軸孔33に挿通されて、原動ローラ10を支持する原動シャフト13と、原動シャフト13の両端部を回転自在に支持する前後一対のベアリングユニット14・14と、原動シャフト13の外面を覆う前後一対の保護カバー15・15で構成する。
【0031】
図5および図6に示すように、原動ローラ10は、中央部に原動シャフト13が挿嵌される軸孔10aを有する前後に長い円筒状の金属成形品であり、その前後面の軸孔10aのまわりには、後に詳述する保護カバー15の遊端部の挿入を許す円形の凹み10b・10bが形成されている。原動ローラ10の筒壁の外面には、無端ベルト12に動力を伝達するためのキー10cが突設されている(図6参照)。
【0032】
図1および図5に示すように、原動シャフト13の長さ寸法は、無端ベルト12の前後の幅寸法よりも大きく設定されており、その前後の両端部は、無端ベルト12の幅方向(前後方向)の縁部から上方視で幅方向に張り出している。原動シャフト13の前後の両端は、無端ベルト12を挟んで配された前後一対のベアリングユニット14・14で支持されている。原動シャフト13の後端部は、後方側のベアリングユニット14から外向きに大きく張り出しており、モータ9に付設の減速機16の出力軸に、連結部材17を介して連結されている(図1参照)。
【0033】
ベアリングユニット14の筐体内には、ボールベアリングが内蔵されており、原動シャフト13を回転自在に軸支する。図5に示すように、ベアリングユニット14は、スペーサ18を介して、無端ベルト12から前後方向に離間した位置に配置されている。より詳しくは、ベース30の前後壁31・32のそれぞれからは、前後の外方向に向かって複数本のスペーサ18が張り出し形成されており、保護カバー15とともにベアリングユニット14は、スペーサ18にビス19で固定される。
【0034】
保護カバー15は、ベアリングユニット14に支持されるフランジ部15aと、原動シャフト13の挿通を許す筒状の本体部15bとを有する金属成形品である。本体部15bの前後の長さ寸法は、スペーサ18の長さ寸法よりも大きく設定されており、その遊端部は原動ローラ10の凹み10bに至っている。
【0035】
かくして、前後壁31・32の間に原動ローラ10を配した状態で、軸孔33から原動シャフト13を原動ローラ10に挿嵌し、前後壁31・32から突出する原動シャフト13に保護カバー15およびベアリングユニット14を差し込む。次いで、ベアリングユニット14および保護カバー15をスペーサ18にビス19で固定することにより、ベース30に対して原動ローラ10および原動シャフト13を組み付けることができる。
【0036】
図6に示すように、原動ローラ10の前後の幅寸法W1は、無端ベルト12の前後の幅寸法W2よりも小さく設定されている。具体的には、前後それぞれにおける原動ローラ10の縁部は、無端ベルト12の縁部よりも1mm以上、5mm以下の範囲で、内方寄りに位置している(2mm≦2W3≦10mm)。
【0037】
第1コンベア5の従動ローラ11の支持機構S、および第2コンベア6の原動ローラ20および従動ローラ21の支持機構Sも、先に詳述したの第1コンベア5の原動ローラ10の支持機構Sと実質的に同様である。また、全てのローラ11・20・21が、先に述べた無端ベルト12・22の幅寸法との関係(W1<W2)を満たしている。
【0038】
図4および図1に、モータ9の駆動力を第2コンベア6に伝動するための動力伝動機構Mを示す。動力伝動機構Mは、第1コンベア5の原動シャフト13に装着された駆動プーリ40と、第2コンベア6の受動シャフト23に装着された受動プーリ41(受動体)と、これら駆動プーリ40と受動プーリ41との間に巻き掛けられた無端ベルト42と、無端ベルト42の緩みを吸収するテンションローラ43とで構成される。駆動プーリ40と受動プーリ41およびテンションローラ43は、外周面にV字溝を有するVプーリであり、無端ベルト42はV字状の断面形状を有するVベルトである。
【0039】
図1、図7および図8に示すように、受動プーリ41と受動シャフト23との間には、両者41・23間の動力伝達をオン/オフ制御する連結機構Cが設けられている。連結機構Cは、受動シャフト23に装着されて、該受動シャフト23と同行回転する連動部材45と、連動部材45と受動プーリ41との間に配された摩擦板46と、連動部材45を摩擦板46に押し付けるバネ47とを有する。
【0040】
図8に示すように、受動プーリ41にはベアリング41aが内蔵されており、該ベアリング41aを介して受動プーリ41は受動シャフト23に対して回転自在に装着されている。
【0041】
連動部材45は、前壁45aと、前壁45aの周縁から連設した筒壁45bと、筒壁45bの後端から外側に張り出し形成されて、摩擦板46に面接触される円盤状のフランジ45cとを有する金属成形品である。前壁45aの中央部には、受動シャフト23の前端に形成された小径の軸部分24の挿通を許す通孔45dが開設されている。受動シャフト23と連動部材45の対向面には係合溝が凹み形成されており、両者23・45は係合溝に挿入された連結片44によって連結されて、同行回転する。
【0042】
連動部材45の前壁45aから突出する受動シャフト23の軸部分24には、捻りコイル形のバネ47が外嵌装着されている。軸部分24の先端には雄ネジ体24aが形成されており、この雄ネジ体24aに、リング48を介してバネ47の一端を受け止める受ナット49と、受ナット49の緩み止め用のロックナット50とが螺合装着されている。雄ネジ体24aに対する受ナット49の螺合位置(前後位置)を調整することで、連動部材45の摩擦板46に対する付勢力を大小に調整することができる。
【0043】
モータ9からの回転駆動力を受けて、第1コンベア5の駆動プーリ40が回転駆動されると、この回転駆動力は無端ベルト42を介して受動プーリ41に伝動される。したがって、受動プーリ41は常に駆動プーリ40と同行回転される。
常態においては、受動プーリ41の回転駆動力は、摩擦板46を介して連動部材45に伝動され、これにて、受動シャフト23および原動ローラ20が回転駆動されて、第2コンベア6が従動駆動される。
【0044】
例えば第2コンベア6上でボビンBが詰まったり、ユーザが無端ベルト22を抑えることにより無端ベルト22の回転が強制停止された場合には、原動ローラ20、受動シャフト23、連動部材45の回転動作が停止される。残糸付きのボビンB2から解舒された残糸7が受動シャフト23等に絡み付いて第2コンベア6が回転不能に陥った場合でも同様である。このとき、受動プーリ41の回転駆動力は、摩擦板46が連動部材45のフランジ45cに対して空回りすること、或いは受動プーリ41が摩擦板46に対して空回りすることで無効化される。また、かかる強制停止状態においても、受動プーリ41は駆動プーリ40と同行回転し続けるため、駆動モータ9に多大な負荷が掛かることはない。
【0045】
図3において、符号55は、第2コンベア6の駆動状態を検出するセンサ(検知手段)を示す。このセンサ55は、第2コンベア6の従動ローラ21の回転状態を検出しており、従動ローラ21の回転が停止したとき、オン信号を自動ワインダーの制御装置に送出する。かかるオン信号に基づいて、制御装置は警告音を発するとともに、警告灯を点灯させる。
【0046】
以上のような構成からなる本実施形態に係るボビン搬送装置4は、以下のような作用効果を有する。すなわち、無端ベルト12が巻き掛けられる原動ローラ10の幅寸法(W1)を、無端ベルト12の幅寸法(W2)よりも小さく設定したので、上方視で幅寸法の両端部を含んで原動ローラ10の全体を無端ベルト12で覆うことができる。これによれば、ボビンBから解舒した残糸7が原動ローラ10に接触することを無端ベルト12で防いで、残糸7が原動ローラ10に絡み付くことを防ぐことができるので、残糸7が原動ローラ10に絡み付くことにより、原動ローラ10の円滑な回転動作が損なわれ、モータ9に大きな負荷が掛かって破損することを防ぐことができる。
【0047】
また、原動ローラ10の幅寸法を無端ベルト12のそれよりも小さくするだけの簡単な構成で、原動ローラ10に対する残糸7の絡み付きを防ぐことができるので、動作不良の無い信頼性に優れたボビン搬送装置4を低コストに提供できる。無端ベルト12の幅寸法を原動ローラ10のそれよりも大きく設定したので、無端ベルト12の両端部が原動ローラ10の両端のコーナー部に係合した状態で、無端ベルト12を走行させることができ、無端ベルト12を蛇行し難い構成とできる。
加えて、特許文献1のように、残糸7の絡まりの発生し難い箇所を選んで原動ローラ10等を配設する必要がなく、部品配置に関する設計の自由度が損なわれることもない。
【0048】
図1に示すように、原動シャフト13の無端ベルト12からの張り出し部分を保護カバー15で覆ったので、ボビンBから解除した残糸7が原動シャフト13に接触することを防いで、残糸7が原動シャフト13に絡み付くことを確実に防ぐことができる。これにて、原動シャフト13の円滑な回転動作が損なわれて、モータ9に大きな負荷が掛かって破損することを効果的に防ぐことができる。
また、原動シャフト13を保護カバー15で覆うだけの簡単な構成で、原動シャフト13に対する残糸7の絡み付きを防ぐことができるので、動作不良の無い信頼性に優れたボビン搬送装置4を低コストに提供できる。
【0049】
ベアリングユニット14を、スペーサ18を介して無端ベルト12から幅方向に離れて配置したので、該ベアリングユニット14に対して残糸7が接触すること、および残糸7がベアリングユニット14に絡み付くことを防ぐことができる。また、ベアリングユニット14に保護カバー15を装着したので、該保護カバー15を組み付けるための専用の部材を廃して、部品点数の削減化に貢献できる。
【0050】
図5に示すように、保護カバー15をベアリングユニット14に装着支持されるフランジ部15aと、原動シャフト13の挿通を許す筒状の本体部15bとを有し、本体部15bの遊端部が原動ローラ10の内部に至る形態としていると、原動シャフト13の全体を本体部15bで覆うことができるので、原動シャフト13に残糸7が接触することがなく、原動シャフト13に残糸7が絡み付くことを確実に防ぐことができる。
【0051】
なお、以上のような作用効果は、第1コンベア5に限られず、第2コンベア6においても同様に得られるものである。
【0052】
第2コンベア6の受動プーリ41と受動シャフト23との間に動力伝達をオン/オフ制御する連結機構Cを組み付けていると、例えば残糸7が受動シャフト23等に絡み付いて第2コンベア6が回転不能に陥った場合などでも、連結機構Cによって受動シャフト23と受動プーリ41との間の動力伝達をオフ制御することができる。これによれば、第2コンベア6の動作不良に由来する大きな負荷がモータ9に掛かることを防ぐことができるので、モータ9が破損されることを防いで、動作不良の少ない信頼性に優れたボビン搬送装置4を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態のように、受動プーリ41と受動シャフト23との間に配された摩擦板46と、摩擦板46を受動プーリ41に押し付けるバネ47とで連結機構Cを構成していると、メンテナンス時においては、摩擦板46を交換するだけで済む。したがって、メンテナンス性に優れた連結機構Cを得ることができる。連結機構Cの小型化が容易であり、第1コンベア5や第2コンベア6の構造の如何にかかわらず、連結機構Cの適用が容易である点でも優れている。
【0054】
受ナット49の雄ネジ体24aに対する螺合装着位置を前後に調整するだけで、バネ47による受動プーリ41に対する摩擦板46の付勢力を調整できるようにしていると、コンベアの搬送力やユーザーの趣向に応じた適正なオン/オフ制御力を連結機構Cに与えることができる。
【0055】
第2コンベア6の駆動状態を検知するためのセンサ55を設けていると、第2コンベア6が回転不能に陥ったときには、例えばアラームなどを鳴らすことにより、ユーザーに警告を発するように構成できる。これによれば、第2コンベア6を早期に復旧させることが可能となって、第2コンベア6の搬送能力の向上に貢献できる。
【0056】
上記実施形態においては、駆動プーリ40と受動プーリ41と無端ベルト42とからなる巻掛伝動機構で動力伝動機構Mを構成したが、本発明はこれに限られず、例えばギヤトレインで動力伝動機構Mを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るボビン搬送装置の要部の平面図である。
【図2】本発明に係るボビン搬送装置が適用される自動ワインダーの概略構成図である。
【図3】本発明に係るボビン搬送装置の全体構成を示す正面図である。
【図4】動力伝動機構の正面図である。
【図5】第1コンベアの原動ローラの支持機構を示しており、図4のA−A線断面図である。
【図6】原動ローラと無端ベルトとを説明するための図である。
【図7】第2コンベアの原動ローラの支持機構を示しており、図4のB−B線断面図である。
【図8】連結機構の構成を示す横断平面図である。
【符号の説明】
【0058】
4 ボビン搬送装置
5 第1コンベア
6 第2コンベア
9 モータ
10 ローラ(原動ローラ)
11 ローラ(従動ローラ)
12 無端ベルト
13 シャフト(原動シャフト)
14 ベアリングユニット
15 保護カバー
18 スペーサ
20 ローラ(原動ローラ)
21 ローラ(従動ローラ)
22 無端ベルト
23 シャフト(受動シャフト)
41 受動体(受動プーリ)
46 摩擦板
47 付勢部材(バネ)
49 調整部材(受ナット)
55 検知手段(センサ)
B(B1) ボビン(空ボビン)
B(B2) ボビン(残糸付きボビン)
C 連結機構
M 動力伝動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータからの駆動力を受ける原動ローラと、該原動ローラに対応して配置される従動ローラと、両ローラに巻き掛けられる無端ベルトとを含んで構成されており、該無端ベルト上に載置された空ボビンを上流側から下流側に向かって搬送するボビン搬送装置であって、
少なくとも搬送方向の下流側に配されたローラの幅寸法が、前記無端ベルトの幅寸法よりも小さく設定されていることを特徴とするボビン搬送装置。
【請求項2】
前記ローラの幅寸法と前記無端ベルトの幅寸法の差が、少なくとも2mm以上に設定されている請求項1記載のボビン搬送装置。
【請求項3】
少なくとも搬送方向の下流側に配されたローラを支持するシャフトが、前記無端ベルトの幅方向の縁部から上方視で当該幅方向に張り出しており、
前記シャフトの無端ベルトからの張り出し部分が、保護カバーで覆われていることを特徴とする請求項1又は2記載のボビン搬送装置。
【請求項4】
前記シャフトの両端は、ベアリングユニットに支持されており、
前記ベアリングユニットが、スペーサを介して、前記無端ベルトから幅方向に離れて配置されており、
前記ベアリングユニットに前記保護カバーが装着されている請求項3記載のボビン搬送装置。
【請求項5】
前記保護カバーは、前記ベアリングユニットに支持されるフランジ部と、前記シャフトの挿通を許す筒状の本体部とを有し、
前記本体部の遊端部が、前記ローラの内部に至っている請求項3記載のボビン搬送装置。
【請求項6】
第1コンベアと、該第1コンベアの下流端に近接配置されて、該第1コンベアと一連の搬送経路を構成するように設置された第2コンベアとを有し、前記第1コンベアの下流端に至った空ボビンを第2コンベアで受けて搬送するボビン搬送装置であって、
両コンベアは、上流端と下流端に位置する一対のローラと、両ローラのそれぞれを支持するシャフトと、両ローラに巻き掛けられる無端ベルトとを含んで構成されており、
前記第1コンベアの下流端に位置する原動シャフトと、前記第2コンベアの上流端に位置する受動シャフトの間には、第1コンベアのモータの駆動力を第2コンベアに伝動するための動力伝動機構が設けられており、該動力伝動機構を介して前記モータの駆動力を受けることで、前記第2コンベアは従動駆動されるように構成されており、
前記受動シャフトには、前記動力伝動機構を構成して、前記モータの駆動力を受ける受動体が装着されており、
前記受動体と前記受動シャフトとの間に、両者間の動力伝達をオン/オフ制御する連結機構が設けられていることを特徴とするボビン搬送装置。
【請求項7】
前記連結機構は、前記受動体と前記受動シャフトとの間に配された摩擦板と、前記摩擦板を前記受動体に押し付ける付勢部材とを含む請求項6記載のボビン搬送装置。
【請求項8】
前記連結機構が、前記付勢部材による前記受動体に対する前記摩擦板の付勢力を調整する調整部材を備えている請求項7記載のボビン搬送装置。
【請求項9】
前記第2コンベアの駆動状態を検知するための検知手段を備えることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のボビン搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−51599(P2009−51599A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218875(P2007−218875)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】