説明

ボビン送給システム、および残糸処理方法

【課題】残糸層の除去に失敗した極少ボビンがそのまま送給されるのを確実に防止して、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分できるボビン送給システムを提供する。
【解決手段】自動ワインダーから搬出されたボビンを搬送する主搬送路に、自動ワインダーから搬出されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置と、ボビンの残糸層を除去しするストリッパー装置を設ける。主搬送路には、ストリッパー装置の下流側から残糸量検知装置の上流側へボビンを再送するためのバイパス路を接続する。ストリッパー装置で処理された後のボビンを、バイパス路を介して残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、満巻き状態のボビンを自動ワインダーに送給し、さらに、自動ワインダーから返還された全てのボビンの残糸量を検知して、再利用可能なボビンを自動ワインダーへ再送給するボビン送給システム、およびボビン送給システムにおける残糸処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のボビン送給システムは、特許文献1および2に公知である。そこでは、主搬送路と、ボビン供給路と、ボビン帰還路と、バイパス路などでボビンの給経路を構成している。主搬送路には、自動ワインダーから返還されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置と、残糸量が極少のボビンの糸を除去して空ボビン化するストリッパー装置と、糸端をボビンの所定位置に位置保持する口出し装置などが設けてある。
【0003】
ボビン供給路は、口出し装置より下流側の部分で主搬送路から分岐されており、口出し処理された満巻きボビンや半玉ボビンなどを自動ワインダーへ送給する。ボビン帰還路は、残糸量検知装置より上流側で主搬送路と合流しており、自動ワインダーから排出された空ボビンや、糸切れした再利用可能な半玉ボビンなどを主搬送路へ返還する。バイパス路は、ボビン供給路の分岐個所と、ボビン帰還路の合流個所とをバイパスしており、口出しに失敗した満巻きボビンや半玉ボビンを再び主搬送路へ循環させる。
【0004】
特許文献1のボビン供給システムでは、ストリッパー装置と口出し装置との間に設けた搬送路において満巻きボビンを供給しており、口出し装置で口出し処理を行なった満巻きボビン、および半玉ボビンをボビン供給路へと送り出す。特許文献2の主搬送路は、一対の搬送路を介して紡績装置と接続してあり、残糸量検知装置を通過した空ボビンは一方の搬送路を介して紡績装置へ送給され、紡績装置からは満巻きボビンが別の搬送路を介して口出し装置へと供給される。
【0005】
本発明のボビン送給システムにおける残糸量検知装置は、ボビンの縦軸心に沿って揺動する検知ブラシと、ボビンに巻かれた残糸層に外接する検知アームとでボビンの残糸量を検知するが、この種の残糸量検知装置は特許文献3に公知である。そこでは、供給されたボビンが、空ボビンと、残糸量が極く僅かな極少ボビンと、再利用できる半玉ボビンのいずれであるかを残糸量検知装置で判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平05−086964号公報(段落番号0030、図1)
【特許文献2】特開平09−110305号公報(段落番号0013、図1)
【特許文献3】実開昭63−107370号公報(第4頁第4〜12行、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のボビン送給システムにおいては、極少ボビンの残糸層をストリッパー装置で除去して空ボビンとしている。しかし、稀にストリッパー装置が機能不良に陥ることがある。例えば、ストリッパー装置の構成部品が摩耗し、あるいは調整不良状態に陥っているような場合等に、極少ボビンの残糸層を確実に除去できないことがある。問題は、先のように残糸層を確実に除去できていない場合でも、ストリッパー装置から排出された極少ボビンを空ボビンであるとみなして、そのまま紡績装置等の次段工程へ送給する点にある。そのため、例えば残糸層の残る極少ボビンが紡績装置へ送給されて、その表面に紡績糸が巻き付けられるなどの不具合を生じるおそれがある。
【0008】
始業時など、ボビン送給システムを起動する直前の状態においては、前回終業時に主搬送路やバイパス路に残っていたボビンの残糸状況や口出し状況を把握することはできない。また、主搬送路等に残っているボビンの状況を無視して、ボビン送給システムを起動すると、自動ワインダーに適合できない状態のボビンが送給されるおそれがある。このような不具合を解消するには、主搬送路に残っているすべてのボビンを取り除くか、問題のありそうなボビンを取り除いて、ボビンの状況に応じて主搬送路やボビン帰還路に戻す必要があり、その作業に余分な手間が掛かる。
【0009】
本発明の目的は、残糸層の除去に失敗した極少ボビンがそのまま送給されるのを確実に防止でき、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分できるボビン送給システム、および残糸処理方法を提供することにある。
本発明の目的は、始業前等に主搬送路に残っているボビンを除去する手間を省いて、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分できるボビン送給システム、および残糸処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るボビン送給システムは、自動ワインダーから搬出されたボビンを搬送する主搬送路を備えている。主搬送路には、自動ワインダーから搬出されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置と、ボビンの残糸層を除去して空ボビン化するストリッパー装置とが配置してある。これらの構成において、ストリッパー装置で処理された後のボビンを前記残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認することを特徴とする。
【0011】
主搬送路には、ストリッパー装置の下流側から残糸量検知装置の上流側へボビンを再送するためのバイパス路が接続してある。ストリッパー装置で処理された後のボビンを、バイパス路を介して残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認する。
【0012】
ボビン送給を再起動した状態において、主搬送路およびバイパス路で構成される環状経路に残存する全てのボビンが残糸量検知装置を通過するように、搬送状態を制御する制御部を備えている。
【0013】
残糸量検知装置は、検知対象のボビンが再利用可能な半玉ボビンであるか否かを判定する第1検出部と、第1検出部で識別されたボビンの残糸量を検知する第2検出部とを備えている。第2検出部は、検出対象のボビンの表面に沿って下向きに揺動変位して、残糸の有無を検出する検知アームと、検知アームの揺動量を検知する揺動センサーとを含む。これらの構成によって、検知アームの先端に設けたブラシ体が、ボビン表面の残糸に引っ掛かった状態における検知アームの揺動量の違いから、検出対象のボビンを空ボビンと、極少ボビンと、再利用可能な少玉ボビンとに判別する。
【0014】
本発明に係る残糸処理方法は、自動ワインダーから搬出されたボビンを搬送する主搬送路に、自動ワインダーから搬出されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置と、ボビンの残糸層を除去して空ボビン化するストリッパー装置とが配置してあるボビン送給システムを前提とする。ストリッパー装置で処理された後のボビンを前記残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認することを特徴とする。
【0015】
主搬送路に、ストリッパー装置の下流側から残糸量検知装置の上流側へボビンを再送するためのバイパス路を接続する。ストリッパー装置で処理された後のボビンを、バイパス路を介して前記残糸量検知装置へと搬送してボビンの残糸を確認する。
【0016】
ボビン送給を再起動した状態において、主搬送路およびバイパス路で構成される環状経路に残存する全てのボビンが残糸量検知装置を通過するように、制御部でボビンの搬送状態を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のボビン送給システムにおいては、ストリッパー装置で処理された後のボビンを残糸量検知装置へと搬送して、ボビンが空ボビン化されたか否かを再確認するので、残糸層の除去に失敗したボビンがそのまま次段工程へ送給されるのを確実に防止できる。したがって、本発明のボビン送給システムによれば、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分して、ボビンや製品の不良を一掃できる。
【0018】
主搬送路にバイパス路を接続し、ストリッパー装置で処理された後のボビンを、バイパス路を介して残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認するボビン送給システムによれば、既存の設備をそのまま利用しながらボビンの残糸状況を再確認できる。したがって、ボビンの残糸状況を再確認するのに新たな設備を導入する必要がなく、制御プログラムの一部を変更するなどの最小限の対応のみで、ボビンや製品の不良を一掃できる。
【0019】
ボビン送給を再起動した状態において、環状経路に残存する全てのボビンが残糸量検知装置を通過するように、ボビンの搬送状態を制御部で制御すると、環状経路に残っていたボビンの残糸状況や口出し状況に適合して残糸処理や口出し処理を自動的に行なえる。したがって、始業前等に主搬送路に残っているボビンを除去する手間を省いて、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分できる。
【0020】
残糸量検知装置の第1検出部で半玉ボビンであるか否かを判定し、さらに第2検出部で検出対象のボビンを空ボビンと、極少ボビンと、再利用可能な少玉ボビンとに判別すると、残糸量検知装置に再送されたボビンが空ボビンであるか否かをより明確に判別できる。ストリッパー装置から再送されるボビンは、空ボビンか極少ボビンのいずれかであるが、ボビンに僅かでも残糸層があれば、検知アームの先端に設けたブラシ体が残糸層に引っ掛かって、糸が残っていることを明確に識別できるからである。
【0021】
本発明に係る残糸処理方法においては、ストリッパー装置で処理された後のボビンを前記残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認するので、残糸層の除去に失敗したボビンがそのまま送給されるのを確実に防止できる。したがって、本発明の残糸処理方法によれば、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分して、自動ワインダーや紡績装置に対して適正なボビンを送給できる。
【0022】
主搬送路にバイパス路を接続し、ストリッパー装置で処理された後のボビンを、バイパス路を介して前記残糸量検知装置へと搬送してボビンの残糸を確認する残糸処理方法によれば、既存の設備をそのまま利用しながらボビンの残糸状況を再確認できる。したがって、ボビンの残糸状況を再確認するのに新たな設備を導入する必要がなく、制御プログラムの一部を変更するなどの最小限の対応のみで、不適正なボビンが次段工程へ配分されるのを解消できる。
【0023】
ボビン送給を再起動した状態において、環状経路に残存する全てのボビンが残糸量検知装置を通過するように、制御部でボビンの搬送状態を制御する残糸処理方法によれば、ボビンの状況に適合して残糸処理や口出し処理を自動的に行なうことができる。したがって、始業前等に主搬送路等に残っているボビンを除去する手間を省いて、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ボビン送給システムの平面図である。
【図2】ボビン送給システムの概略平面図である。
【図3】残糸量検知装置の側面図である。
【図4】残糸量検知装置の平面図である。
【図5】第1検出部の平面図である。
【図6】第1検出部の動作説明図である。
【図7】残糸量検知装置の判別手順を示すフローチャートである。
【図8】ボビン送給システムの別の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例) 図1ないし図7は本発明に係るボビン送給システムの実施例を示す。図2において符号1はボビン送給システムであり、その一側は自動ワインダー2に隣接し、他側は紡績装置3に隣接している。ボビン送給システム1は、状態が異なる各種のボビンを一方向へ搬送する主搬送路5と、主搬送路5から分岐されて自動ワインダー2へ向かうボビン供給路6と、自動ワインダー2から帰還して主搬送路5に合流するボビン帰還路7とを備えている。主搬送路5には、残糸量検知装置11と、ストリッパー装置12と、糸切断装置13と、口出し装置14とが配置してある。ストリッパー装置12より下流側の主搬送路5から、空ボビンを紡績装置3へ戻すボビン戻し路18が分岐され、糸切断装置13より上流側の主搬送路5に、満巻きボビンを紡績装置3から主搬送路5へ供給するボビン送出路19が合流している。主搬送路5は、自動ワインダー2から搬出されたボビンを搬送し、同時に紡績装置3から供給されたボビンを搬送する。
【0026】
自動ワインダー2から搬出されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置11は、ボビン帰還路7の主搬送路5との合流個所15より下流側に配置してある。また、同装置11に隣接して極少ボビンの残糸層を除去して空ボビン化するストリッパー装置12が配置してある。糸切断装置13は満巻きボビンのボトムバンチを切断し、さらにバックワインド糸を切断して口出し装置14へ送り出す。ボビン供給路6は、口出し装置14より下流側の主搬送路5から分岐してあり、この分岐個所16と、ボビン帰還路7の合流個所15とがバイパス路17で接続してある。主搬送路5とバイパス路17とによって、ボビンを循環させる環状経路が構成してある。
【0027】
図1に示すように、上記の各搬送路5・6・7・17の複数箇所には、ボビン搬送用のトレーを一時的に停止保持し、あるいはトレーの送給方向を切り換えるための第1〜第5の各ゲート体21〜25が設けてある。これらのゲート体21〜25と、先の各装置11・12・13・14の動作状態とを、図示していない制御部で制御することにより、ボビンの搬送状態を好適化して、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分している。
【0028】
詳しくは、合流個所15の近傍のバイパス路17とボビン帰還路7のそれぞれに、第1ゲート体(ゲート体)21と、第2ゲート体(ゲート体)22を配置している。また、ストリッパー装置12に臨む主搬送路5に第3ゲート体(ゲート体)23を配置し、ボビン戻し路18の分岐個所に第4ゲート体(ゲート体)24を配置している。さらに、ボビン供給路6の分岐個所16に臨んで、第5ゲート体(ゲート体)25を配置している。
【0029】
残糸量検知装置11は、図3に示すように第1検出部31と、第2検出部32とで構成している。第1検出部31は、主搬送路5に臨んで配置されて、縦軸回りに揺動するアーム33と、アーム33の一側に固定されるL字状の検知ロッド34と、アーム33が揺動変位したか否かを検知するアームセンサー35などで構成している。アーム33は、図示していないばねで図4に示す中立位置に位置保持してある。
【0030】
図4に示すように、検知対象のボビンの残糸層の直径寸法が小さい場合には、検知ロッド34は中立位置を保持して揺動変位せず、アームセンサー35はオン信号を出力する。また、検知対象のボビンが再利用可能な半玉ボビンである場合には、図5に示すように、検知ロッド34が残糸層に乗り上がってアーム33が復帰ばねに逆らって揺動するので、アームセンサー35はオフ状態となる。以上により、検知対象のボビンが再利用が充分に可能な半玉ボビンであるか、そうでないかを判定できる。第2検出部32は、アームセンサー35がオン信号を出力する状態においてのみ作動する。
【0031】
第2検出部32は、検出対象のボビンの表面に沿って下向きに揺動変位する検知アーム38と、検知アーム38の揺動量を検知する第1・第2の揺動センサー39・40と、検知アーム38を待機位置に復帰操作するロータリーソレノイド41などで構成する。検知アーム38の先端には極細の線材からなるブラシ体42が設けてあり、検知アーム38がボビンの表面に沿って下向きに揺動するとき、ブラシ体42が残糸層に引っ掛かるか否かで残糸状況を判別する。具体的には、図3に実線で示すように、検知アーム38が水平姿勢になるまで揺動した場合には、第2揺動センサー40がオン状態に切り換わり、制御部にオン信号を出力が出力され、これにより検知対象のボビンが空ボビンであることを識別できる。この状態の検知アーム38の揺動限界を規定するためにストッパー43を設けている。
【0032】
また、ブラシ体42が残糸層に引っ掛かった場合には、少なくとも空ボビンではないと判別するが、第2検出部32では、検知対象のボビンが再利用可能なボビンか、再利用できない極少ボビンであるかをさらに判別する。図6(a)に示すように、利用できる糸が僅かに残っている再利用可能な少玉ボビンの場合には、ブラシ体42は少玉ボビンの上端寄りで残糸層に引っ掛かる。そのときの検知アーム38の待機位置からの揺動角度は小さいので、第1揺動センサー39はオフ状態を維持する。ところが、図6(b)に示すように残糸量が極く僅かで再利用できない場合には、ブラシ体42は極少ボビンの過半下部で残糸層に引っ掛かるため、検知アーム38は大きく揺動し、第1揺動センサー39がオン状態に切り換わる。このように第1揺動センサー39がオン状態であるか、オフ状態であるかによって再利用可能な少玉ボビンを判別する。
【0033】
残糸量検知装置11で判別された空ボビンは、ストリッパー装置12を素通りして、第4ゲート体24でボビン戻し路18側へ案内されて紡績装置3へ送給される。また、半玉ボビンや、利用できる糸が僅かに残っている少玉ボビンは、ストリッパー装置12を素通りして、第4ゲート体24で主搬送路5に沿って移行案内され、口出し装置14で口出し処理されたのち、第5ゲート体25でボビン供給路6側へ送給される。
【0034】
残糸量がごく僅かな極少ボビンは、ストリッパー装置12に捕捉されて、残糸層が除去される。極少ボビンを捕捉したストリッパー装置12は、ボビンを搬送トレイから取り外して上昇操作する。次に、一対のクランプ体でボビンの下部を挟み、残糸層の下部を受け止めた状態でボビンを下降操作する。これにより、過半下部に位置していた残糸層は、ボビンの上下中途部まで強制的に移動される。再び、一対のクランプ体でボビンを挟み、残糸層の下部を受け止めた状態でボビンを下降操作することにより、残糸層をボビンから抜外して分離することができる。分離された残糸層はクランプ体の近傍に設けたサクションパイプで吸引除去される。残った空状態のボビンは搬送トレイへ戻される。
【0035】
上記のようにストリッパー装置12で残糸層の除去処理が行ななわれたボビンは、空ボビンになっているはずであるが、ストリッパー装置の故障等によって空ボビン化されていない場合が生じうる。そこで、本発明においては、ストリッパー装置12で残糸層の除去処理が行なわれたボビンについて、空ボビン化されているか否かを再度確認して、極少ボビンが紡績装置3へ送給されるのを防止している。具体的には、ストリッパー装置12から排出されたボビンの搬送トレーを主搬送路5に沿って搬送し、さらに第5ゲート体25で搬送トレーをバイパス路17へ送給案内したのち主搬送路5へ戻して、残糸量検知装置11で残糸状況を再度確認している。
【0036】
再送されたボビンの残糸量を残糸量検知装置11で判別した結果、空ボビンであることが確認されたボビンは、第4ゲート体24でボビン戻し路18側へ案内されて紡績装置3へ送給される。また、空ボビンではないと判別されたボビンは、再びストリッパー装置12において残糸層の除去処理が行なわれたのち、バイパス路17を介してもう一度残糸量検知装置11によって残糸状況を再度確認する。このように、ストリッパー装置12で残糸層の除去処理が行なわれたボビンを、再度残糸量検知装置11によって残糸状況を確認することにより、極少ボビンがボビン戻し路18を介して紡績装置3へ送給されるのを防いで、確実に空ボビンのみを紡績装置3へ送給できる。なお、残糸層の除去処理の繰り返えし回数が一定数を越えた場合には、ストリッパー装置12が故障しているものとみなして、ボビン送給システムを停止し、アラームを発動させる。上記の一連の判別作業をまとめると、図7に示すフローチャートに示すようになる。なお、バイパス路17は、口出し処理に失敗したボビンを再び口出し装置14へ循環させる際にも使用される。
【0037】
始業前の主搬送路5やバイパス路17には、各種の状態のボビンが残っており、その口出し状況や残糸状況は制御部によって認識されていない。これらのボビンを他に先行して処理して、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分するために、制御部は、主搬送路5とバイパス路17とからなる環状経路に残存する全てのボビンを残糸量検知装置11へ搬送して残糸量を確認する。
【0038】
具体的には、残糸量検知装置11において、第1検出部31のアームセンサー35がオフ状態に切り換わったボビンは、口出し装置14で口出し処理されて、ボビン供給路6へと送給される。また、アームセンサー35がオン状態であったボビンは、第2検出部32の検知アーム38によって残糸量が検知されて、空ボビンか、極少ボビンか、再利用できる少玉ボビンであるかが判別される。空ボビンは紡績装置3へ送給され、極少ボビンはストリッパー装置12で残糸が除去された後、バイパス路17を介して再び第2検出部32で残糸量が検知される。再利用できる少玉ボビンは、口出し装置14において口出し処理されて、ボビン供給路6へと送給される。以後は、通常の制御状態に戻って、満巻きボビンをボビン送出路19から受け入れ、あるいはボビン帰還路7から戻されたボビンの残糸量を残糸量検知装置11で検出する。
【0039】
上記のように、本発明のボビン送給システムによれば、ストリッパー装置12で処理された後のボビンを、残糸量検知装置11へと再送して、極少ボビンが空ボビン化されたか否かを再確認する。したがって、極少ボビンがボビン戻し路18を介して紡績装置3へ送給されるのを防いで、確実に空ボビンのみを紡績装置3へ送給できる。また、ボビン送給システムを起動した状態において、主搬送路5とバイパス路17とからなる環状経路に残存する全てのボビンの残糸状況を残糸量検知装置11で再確認するので、残糸状況や口出し状況が異なるボビンを次段工程へ適正に配分できる。環状経路等に残っているボビンを除去する手間を省くこともできる。さらに、制御部の制御プログラムを変更してボビンの送給形態を変更することで、既存のボビン送給システムであっても、極少ボビンが空ボビン化されたか否かを再確認できる。
【0040】
本発明に係るボビン送給システムにおける残糸処理方法は、以下の形態および手順で実施することができる。自動ワインダーから搬出されたボビンを搬送する主搬送路に、自動ワインダーから搬出されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置と、ボビンの残糸層を除去して空ボビン化するストリッパー装置とを配置する。これらの構成によって、ストリッパー装置で処理された後のボビンを残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認する。
【0041】
具体的には、上記の残糸処理方法において、主搬送路に、ストリッパー装置の下流側から残糸量検知装置の上流側へボビンを再送するためのバイパス路を接続する。ストリッパー装置で処理された後のボビンを、バイパス路を介して残糸量検知装置へと搬送してボビンの残糸を確認する。
【0042】
ボビン送給を再起動した状態において、主搬送路およびバイパス路で構成される環状経路に残存する全てのボビンが残糸量検知装置を通過するように、制御部でボビンの搬送状態を制御する。
【0043】
なお、主搬送路5やバイパス路17等には複数のボビンが存在しているが、各搬送路のゲート体にボビン通過センサーを設けて、ボビンの出入りを監視することにより、ボビンの搬送順番を知ることができる。これにより、例えばストリッパー処理されているかどうか等、各ボビンの履歴を容易に把握することができる。また、ゲート体にボビン通過センサーを設ける替わりに、各ボビン搬送用のトレーにメモリーを搭載し、ボビンごとに処理状況を記録して、ボビンの履歴を把握してもよい。
【0044】
上記の実施例では、ストリッパー装置12で処理された後のボビンを、主搬送路5とバイパス路17を介して残糸量検知装置11へと再送するようにしたがその必要はない。図8に示すように、ストリッパー装置12の下流側と残糸量検知装置11の上流側とを連絡する循環路46を設けて、ストリッパー装置12で処理された後のボビンを、循環路46を介して残糸量検知装置11へ直接送給することができる。その場合には、極少ボビンの残糸処理と、満巻きボビンや半玉ボビンの口出し処理を併行して行なうことができる。循環路46は、主搬送路5とバイパス路17とで構成される環状経路に相当する。
【0045】
本発明のボビン送給システムは、ボビン戻し路18およびボビン送出路19を介して紡績装置3と直結する必要はない。その場合には、ストリッパー装置12と糸切断装置13との間の主搬送路5を利用して、空ボビンを回収し、同時に満巻きボビンを供給する。
【符号の説明】
【0046】
1 ボビン送給システム
2 自動ワインダー
3 紡績装置
5 主搬送路
6 ボビン供給路
7 ボビン帰還路
11 残糸量検知装置
12 ストリッパー装置
14 口出し装置
17 バイパス路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ワインダーから搬出されたボビンを搬送する主搬送路を備え、
前記主搬送路には、前記自動ワインダーから搬出されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置と、ボビンの残糸層を除去して空ボビン化するストリッパー装置とが配置されており、
前記ストリッパー装置で処理された後のボビンを前記残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認することを特徴とするボビン送給システム。
【請求項2】
前記主搬送路には、前記ストリッパー装置の下流側から前記残糸量検知装置の上流側へボビンを再送するためのバイパス路が接続されており、
前記ストリッパー装置で処理された後のボビンを、前記バイパス路を介して前記残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認する請求項1に記載のボビン送給システム。
【請求項3】
ボビン送給を再起動した状態において、前記主搬送路および前記バイパス路で構成される環状経路に残存する全てのボビンが前記残糸量検知装置を通過するように、搬送状態を制御する制御部を備えている請求項2に記載のボビン送給システム。
【請求項4】
残糸量検知装置は、検知対象のボビンが再利用可能な半玉ボビンであるか否かを判定する第1検出部と、
前記第1検出部で識別されたボビンの残糸量を検知する第2検出部とを備えており、
前記第2検出部は、検出対象のボビンの表面に沿って下向きに揺動変位して、残糸の有無を検出する検知アームと、前記検知アームの揺動量を検知する揺動センサーとを含み、
前記検知アームの先端に設けたブラシ体が、ボビン表面の残糸に引っ掛かった状態における前記検知アームの揺動量の違いから、検出対象のボビンを空ボビンと、極少ボビンと、再利用可能な少玉ボビンとに判別する請求項1、2または3に記載のボビン送給システム。
【請求項5】
自動ワインダーから搬出されたボビンを搬送する主搬送路に、前記自動ワインダーから搬出されたボビンの残糸量を検知する残糸量検知装置と、ボビンの残糸層を除去して空ボビン化するストリッパー装置とが配置してあるボビン送給システムにおいて、
前記ストリッパー装置で処理された後のボビンを前記残糸量検知装置へと搬送して、ボビンの残糸を確認することを特徴とする残糸処理方法。
【請求項6】
前記主搬送路に、前記ストリッパー装置の下流側から前記残糸量検知装置の上流側へボビンを再送するためのバイパス路が接続されており、
前記ストリッパー装置で処理された後のボビンを、前記バイパス路を介して前記残糸量検知装置へと搬送してボビンの残糸を確認する請求項5に記載の残糸処理方法。
【請求項7】
ボビン送給を再起動した状態において、前記主搬送路および前記バイパス路で構成される環状経路に残存する全てのボビンが前記残糸量検知装置を通過するように、制御部でボビンの搬送状態を制御する請求項6に記載の残糸処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−235215(P2010−235215A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81872(P2009−81872)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】