説明

ボリン酸抗生物質の局所製剤およびそれらの使用法

例えば、尋常性座瘡または二次感染した皮膚病状に対して活性のボリン酸抗生物質化合物のクリーム、ゲル、またはローションなどの局所製剤が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、局所医薬製剤に関する。より具体的には、本発明は、尋常性座瘡または二次感染した皮膚病状に対する活性を有するボリン酸抗生物質化合物のクリーム、ゲル、またはローション製剤に向けたものである。したがって、本発明は、薬学、皮膚科学、および医薬品化学の分野に関する。
【0002】
参考文献
以下の出版物は、本願明細書全体を通じて第1の著者の姓および出版年を使用して引用される。
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2. Harrison, J. E., Watkinson, A. C., Green, D. M., Hadgraft, J., Brian, K.; "The relative effect of Azone and Transcutol on permeant diffusivity and solubility in human stratum corneum;" Pharm. Res., 13, pages 542-546, (1996).
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9. Williams, A. C., Barry, B. W.; "Penetration enhancers;" Adv. Drug Deliv. Rev., 56, pages 603-618, (2004).
【0003】
上の各出版物および出願は、あらゆる目的のために、参照によって全体をここに組み入れる。
【背景技術】
【0004】
技術水準
一般に「座瘡」と称される尋常性座瘡は、青年期および成人期初期の最も一般的な皮膚疾患である。推定値は全青年のおよそ85%が何らかの程度の座瘡を経験することを示唆し、最近の研究は、およそ1700万人のアメリカ人がこの病状に冒されることを示した。一般に青年期の病状と見なされているが、座瘡は24〜34才のアメリカ人の8%、35〜44才のアメリカ人の3%にも影響する。研究はまた、尋常性座瘡が、不安、鬱病、および引きこもりなどの心理学的効果を引き起こすことをはじめとして、患者の生活の質に直接かつ顕著に影響できることを示した。
【0005】
座瘡に罹患した患者は、30年超にわたり抗生剤で治療されてきた。これらの薬剤は、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)(P.アクネス(acnes))の個体数とその随伴する炎症介在物質を低下させることによって、ならびに直接抗炎症薬作用を有することによって、それらの治療効果を発揮すると考えられている。座瘡治療のための抗生物質の使用に伴う主要な懸念は、抵抗性生物の不可避な出現である。かつて珍しいと思われていた抗生物質抵抗性は、いまや臨床的に顕著な問題として認識されている。出版された研究の系統的レビューは、抗生物質抵抗性P.アクネス(acnes)の全発生率が、1978年の20%から1996年の62%に増大したことを示した。イーディ(Eady)ら(2003年)は、P.アクネス(acnes)の抵抗性株が、治療失敗に伴うことを示した。さらに皮膚は、抗菌剤抵抗性の交換のための強力な部位であるので、ブドウ球菌などのその他の種に抗生物質抵抗性を拡大する危険性は、非常に現実性の高い懸念である。
【0006】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(S.aureus)は、アトピー性皮膚炎などの皮膚病状における二次感染の頻繁な原因である。アトピー性皮膚炎がある患者では黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成し、該生物は感染した湿疹から、慢性病変から、およびアトピー性皮膚炎がある患者の臨床的に正常な皮膚から単離されている。黄色ブドウ球菌(S.aureus)はまた、顕性の臨床感染不在下における疾患活性に影響し、いくつかの機序によって湿疹を悪化させる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)細胞壁中に含有されるタンパク質Aを皮内注射すると、二相性の反応を引き起こし、初期膨疹および発赤および後期硬結性反応をもたらす。循環する抗ブドウ球菌IgE抗体が、アトピー性皮膚炎がある患者の30%以下に見つかっており、これらがIgE媒介反応を通じて肥満細胞脱顆粒を引き起こすかもしれない。アトピー性皮膚炎がある患者から単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、超抗原を生成する能力を有する。これらはT−リンパ球およびマクロファージを活性化することで炎症を引き起こし、サイトカインを放出し、肥満細胞脱顆粒を引き起こしてIgE媒介反応を増強する。
【0007】
未治療の重篤な座瘡は、恒久的な瘢痕をもたらすかもしれない。局所薬物療法は、一般にコメド座瘡を除去するのに十分であるのに対し、炎症性座瘡は通常、経口薬物療法の追加を必要とする。治療はまた具体的病状、遺伝的性質、および疾患の重篤性次第で、座瘡治療製品の組み合わせも必要とするかもしれない。座瘡が重篤な場合、座瘡患者にとって医師に相談することが非常に重要である。尋常性座瘡の効果的な治療は、心の傷および肉体的瘢痕を防止できる。
【0008】
したがって座瘡、表在性皮膚感染、病原体コロニー形成、および炎症性皮膚病状を治療するための新しい局所製剤に対する必要性がある。このような治療は、好ましくは反復使用によって病原体の抵抗性をもたらさない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明は、尋常性座瘡および/または二次感染皮膚病状に対して活性である、ボリン酸抗生物質化合物の新規製剤を提供する。より具体的には、本発明は、薬学的に許容可能な局所キャリアと、式1、
【化1】

(式中、
およびR**は、独立して、置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のシクロアルキル、および置換または非置換の複素環から選択されるメンバーである。変数zは0または1であるが、ただしzが1であればAはCR10およびNから選択されるメンバーであり、Dは、NおよびCR12から選択されるメンバーであり、さらにただしzが0であればDはO、S、およびNR12aから選択されるメンバーである。Eは水素、ヒドロキシ、アルコキシ、(シクロアルキル)オキシ、(シクロヘテロアルキル)オキシ、カルボキシ、またはアルキルオキシカルボニルから選択されるメンバーである。変数mは、0または1である。R12は、水素、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アミド、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アラルキルアミノ、およびジアラルキルアミノから選択されるメンバーである。さらにR12について列挙されるあらゆる部分のアルキルまたはアリール部分は任意に置換される。R12aは、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のシクロアルキル、および置換または非置換の複素環から選択されるメンバーである。RおよびR10は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、カルボニル、ヒドロキシイミノ、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリールチオ、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、アミノ、アルコキシ、ニトロ、スルホ、およびヒドロキシから選択されるメンバーである。RまたはR10について列挙されるあらゆる部分のアルキルまたはアリール部分は任意に置換される)の化合物、およびその薬学的に許容可能な塩形態を含んでなる局所医薬製剤を提供する。
【0010】
いくつかの実施態様では、Eは、水素と、ヒドロキシと、または2−モルホリノエトキシなどの(シクロヘテロアルキル)オキシとから選択されるメンバーである。その他の実施態様では、R12は(CHOH(k=1、2または3)、CHNH、CHNH−アルキル、CHN(アルキル)、COH、COアルキル、CONH、OH、アルコキシ、アリールオキシ、SH、S−アルキル、S−アリール、SOアルキル、SON(アルキル)、SONHアルキル、SONH、SOH、SCF、CN、ハロゲン、CF、NO、NH、2°−アミノ、3°−アミノ、NHSO、およびCONHである。さらに別の実施態様では、RおよびR10は、水素、アルキル、シクロアルキル、(CHOH(n=1〜3)、CHNH、CHNHアルキル、CHN(アルキル)、ハロゲン、CHO、CH=NOH、COH、CO−アルキル、S−アルキル、SO−アルキル、S−アリール、SON(アルキル)、SONHアルキル、SONH、NH、アルコキシ、CF、SCF、NO、SOH、およびOHである。
【0011】
式1では、図示される供与結合(矢印)は存在してもしなくてもよく、すなわち本発明は、その中でホウ素原子とピコリン酸環の窒素との配位が存在する化合物、およびこのような配位が欠けている化合物を含む。また、本発明は、その中でホウ素と別の分子の原子との間に供与結合が形成される、式1の化合物も含む。さらに、例えば有機および医薬品化学当業者は、炭素とホウ素の間の原子半径の大きな違いによって、その中で水などの溶剤分子がホウ素原子とピコリン酸環の窒素原子との間に挿入できる、溶剤配位錯体の形成が可能になることを理解するであろう。本発明は、式1の化合物のこのような付加物を含む。
【0012】
その中で、zが1である本発明の一の実施態様では、式1の化合物は、式、
【化2】

(式中、
Dは、NおよびCR12から選択されるメンバーである)
に従った構造を有する。
【0013】
その中で、zが、0である本発明の別の実施態様では、式1の化合物は、式、
【化3】

(式中、
Dは、O、S、およびNR12aから選択されるメンバーである)
に従った構造を有する。
【0014】
本発明の一の実施態様では、RおよびR**は同一である。より具体的な実施態様では、RおよびR**は、置換または非置換のアリールである。さらにより具体的な実施態様では、RおよびR**は、置換または非置換のフェニルであり、前記置換または非置換のフェニルは、構造、
【化4】

を有し、さらに式中、各R〜Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、ジアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、2°−アミノ、3°−アミノ、アミノスルホニル、アミノアルキルオキシ、(アルキルアミノ)アルキルオキシ、(ジアルキルアミノ)アルキルオキシ、およびシクロヘテロアルキルから選択されるメンバーである。R〜Rについて列挙される各部分の各アルキルまたはアリール部分は、任意に置換される。すぐ上で述べたように、その中で、RおよびR**がどちらも任意に置換フェニルである本発明のより具体的な実施態様では、各R〜Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、(CHOH(式中、k=1、2または3)、CHNH、CHNH−アルキル、CHN(アルキル)、COH、COアルキル、CONH、CONHアルキル、CON(アルキル)、OH、アルコキシ、アリールオキシ、SH、S−アルキル、S−アリール、SOアルキル、SON(アルキル)、SONHアルキル、SONH、SOH、SCF、CN、ハロゲン、CF、NO、NH、2°−アミノ、3°−アミノ、NHSO、OCHCHNH2、OCHCHNHアルキル、OCHCHN(アルキル)、オキサゾリジン−2−イル、およびアルキル置換オキサゾリジン−2−イルよりなる群から選択されるメンバーである。
【0015】
前述のように、その中でRおよびR**がどちらも任意に置換フェニルである本発明の一の実施態様では、RはHであり、zは1であり、AはCHであり、DはCHであり、EはOHであり、mは0である。前述のより具体的な実施態様では、RおよびR**はどちらも3−クロロ−4−メチルフェニルである。別の具体的な実施態様では、RおよびR**はどちらも2−メチル−4−クロロフェニルである。特に有用な化合物としては、3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシ−ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボランおよび3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシ−ビス(2−メチル−4−クロロフェニル)−ボラン、およびそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0016】
一の実施態様では、薬学的に許容可能な局所キャリアは、その中で式Iの化合物が可溶性である、少なくとも1つの溶剤を含む。好ましくは式Iの化合物は、1溶剤中で少なくとも約10%wt/wtの溶解性を有する。この溶剤はまた、好ましくは水と混和性である。本発明で好ましい水混和性溶剤は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである。本発明の溶剤はまた、例えば水とジエチレングリコールモノエチルエーテル、またはアルコールと水の溶剤混合物である。有用な発明の一の実施態様に従って、溶剤混合物は、溶剤混合物に溶解する化合物の量が、少なくとも約1%の化合物(wt/wt)を含む局所医薬製剤を作り出すのに十分になる量で、水を含有する。
【0017】
一の実施態様では、局所医薬製剤は、式Iの化合物、少なくとも1つの溶剤、および少なくとも1つの乳化剤を含む。
【0018】
別の一の実施態様では、局所医薬製剤は、式Iの化合物と組み合わさって、少なくとも1つの溶剤、少なくとも1つの皮膚軟化剤、少なくとも1つの抗酸化剤、少なくとも1つの乳化剤、少なくとも1つの保存料、少なくとも1つのキレート剤、少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの中和剤を含む。好ましくは、局所医薬製剤は、式Iの化合物、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)72)、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)721)、メチルパラベン、プロピルパラベン、EDTA、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、25%トロラミン溶液、および水を含む。
【0019】
別の実施態様では、局所医薬製剤は角質化変性剤を含む。
【0020】
また、本発明は、ここで述べられるような治療的に有効量の局所医薬製剤を皮膚科病状がある患者に局所投与するステップを含む、このような患者を治療する方法も提供する。このような方法の特定例では、皮膚科病状は、炎症性病状、座瘡、掻痒症、または二次感染した皮膚病状(膿痂疹およびアトピー性皮膚炎をはじめとする)であってもよい。
【0021】
別の実施態様では、局所医薬製剤は、少なくとも1つの溶剤、少なくとも1つの皮膚軟化剤、少なくとも1つの抗酸化剤、少なくとも1つの乳化剤、少なくとも1つの保存料、少なくとも1つのキレート剤、少なくとも1つの増粘剤、少なくとも1つの中和剤、および水を含む。例示的な実施態様では、皮膚軟化剤は、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピルとステアリルアルコールの混合物である。例示的な実施態様では、抗酸化剤はブチル化ヒドロキシトルエンである。例示的な実施態様では、乳化剤はポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)72)とポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)721)の組み合わせである。例示的な実施態様では、保存料はメチルパラベンとプロピルパラベンの組み合わせである。例示的な実施態様では、増粘剤はジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび/またはカーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10である。例示的な実施態様では、キレート剤はEDTAである。別の例示的な実施態様では、トロラミンは25%トロラミン溶液中にある。例示的な実施態様では、この局所医薬製剤は、掻痒症、またはかゆみを治療するのに使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、尋常性座瘡および/または二次感染したアトピー性皮膚炎に対して活性であるボリン酸抗生物質化合物の新規製剤に向けたものである。しかし本発明を詳細に説明するのに先だって、以下の用語を最初に定義する。
【0023】
定義
本発明において「アルキル」、「低級アルキル」、および「C〜Cアルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、および3−メチルペンチルなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。
【0024】
「ヘテロアルキル」という用語は、特に断りのない限り、それ自体で、または別の用語との組み合わせで、規定数の炭素原子と、O、N、Si、およびSよりなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる安定した直鎖または分枝鎖、または環式炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、窒素およびイオウ原子群は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、およびS、およびSiは、ヘテロアルキル基のあらゆる内部位置、またはアルキル基が分子残部に付着する位置に配置されてもよい。例としては、−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、および−CH−CH−N(CH)−CHが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば−CH−NH−OCHおよび−CH−O−Si(CHなどのように、2個までのヘテロ原子が連続していてもよい。同様に「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、−CH−CH−S−CH−CH−および−CH−S−CH−CH−NH−CH−によって例示されるがこれに限定されない、ヘテロアルキルから誘導される二価のラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基では、ヘテロ原子はまた、鎖末端の片方または双方を占有できる(例えばアルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおもさらにアルキレンおよびヘテロアルキレン結合基では、結合基の式が記述される方向によって結合基のいかなる配向も暗示されない。例えば、式、−C(O)R’−は、−C(O)R’−および−R’C(O)−の双方を表す。
【0025】
本発明において「アルコキシ」、「低級アルコキシ」、および「C〜Cアルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、2−ペンチル、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、および3−メチルペントキシなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルコキシ基を意味する。
【0026】
本発明において「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、およびヨウ素を意味する。
【0027】
本発明において、例えば、C〜Cシクロアルキルなどの「シクロアルキル」は、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルなどの3〜7個の原子を有するシクロアルキル基を意味する。C〜Cシクロアルキル基、好ましくはC〜Cシクロアルキル基では、環を形成する炭素原子の1つまたは2つが、イオウ、酸素または窒素などのヘテロ原子で置換できる。このような基の例は、ピペンジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、ペルヒドロアゼピニル、ペルヒドロオキサザピニル、オキセパニル、およびペルヒドロオキセパニルである。窒素または酸素によって置換されたメンバーを有するCおよびCシクロアルキル基としては、アジリジニル、アゼチジニル、オキセタニル、およびオキシラニルが挙げられる。
【0028】
「シクロヘテロアルキル」は、上の「シクロアルキル」として定義されるが、環の少なくとも1つの原子は、窒素、イオウ、または酸素などのヘテロ原子である。シクロヘテロアルキル基の例としては、フラニル、ピペラジル、チオフェニル、ピラニルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0029】
「アリール」とは、単環(例えば、フェニル)、多重環(例えば、ビフェニル)、またはその中で少なくとも1つが芳香族(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)である多重縮合環を有する芳香族炭素環式基を意味し、それは任意に、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、トリフルオロメチル、低級アシルオキシ、アリール、ヘテロアリール、およびヒドロキシによって、一置換、二置換、または三置換される。好ましいアリール基としては、それぞれここで定義されるように任意に置換される、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0030】
「ヘテロアリール」とは、窒素、酸素、またはイオウから選択される少なくとも1個、最大4個のヘテロ原子を含有する1つ以上の5−、6−、または7−員環芳香族環系を意味する。このようなヘテロアリール基としては、例えば、チエニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、ナプチリジニル、ベンゾイミダゾリル、およびベンゾオキサゾリルが挙げられる。好ましいヘテロアリールは、チアゾリル、ピリミジニル、好ましくはピリミジン−2−イル、およびピリジルである。その他の好ましいヘテロアリール基としては、1−イミダゾリル、2−チエニル、1−(または2−)キノリニル、1−(または2−)イソキノリニル、1−(または2−)テトラヒドロイソキノリニル、2−(または3−)フラニルおよび2−テトラヒドロフラニルが挙げられる。
【0031】
「ヘテロシクロ」とは、ここで定義されるようなシクロヘテロアルキルおよびヘテロアリールの双方を総称的に指す。
【0032】
「薬剤」、「活性剤」、「活性成分」、または「医薬品」とは、所望の生物学的、薬理学的または栄養的効果を提供する、局所または経皮投与に適したあらゆる化学物質、化合物または組成物を指す。また、これらの用語は、1つを超える活性剤の混合物を含むことを意図する。
【0033】
「アラルキル」という用語は、アリール基がアルキル基を通じてコア構造に結合するアリール−アルキル−を意味する。
【0034】
「アリールオキシ」という用語は、アリール−O−基を意味する。
【0035】
「アミノ」という用語は−NH基を意味する。「二級アミノ」または「2°−アミノ」という用語は−NHRを意味し、式中、Rは任意に置換アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリールなどから選択される。「三級アミノ」または「3°−アミノ」という用語は−NRR’を意味し、式中、各RおよびR’は、任意に置換アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリールなどから選択される。
【0036】
「任意に置換された」という用語は、置換できるまたは非置換の基を意味する。置換基は好ましくは、ニトロ、シアノ、ハロゲン、任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環、アリール、ヘテロアリール、アミノ、チオール、アルキルチオール、アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アミノアシル、カルボキシル、カルボニルエステル、およびSO−R、(式中、Rは任意に置換されたアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、複素環式、アリール、およびヘテロアリールから選択される)から選択される1〜3個の置換基を有する。
【0037】
「有効」量の薬剤、製剤、または浸透剤とは、所望の局所性または全身性効果を提供するのに十分な量の活性剤を意味する。「局所性に有効な」、「美容的に有効な」、「薬学的に有効な」または「治療的に有効な」量とは、所望の治療的結果をもたらすのに必要な薬剤量を指す。
【0038】
「局所性に有効な」とは、皮膚に塗布すると、塗布部位で局所性にまたは材料中の活性成分の経皮通過の結果として全身的に、所望の薬理学的結果を生じる材料を指す。
【0039】
「美容的に有効な」とは、皮膚に塗布すると、塗布部位で局所性にまたは材料中の活性成分の経皮通過の結果として全身的に、所望の美容的結果を生じる材料を指す。
【0040】
「薬学的に許容可能な塩」とは、化合物の薬学的に許容可能な塩を指し、その塩は技術分野でよく知られている多様な有機および無機対イオンに由来し、ほんの一例として塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸、硫酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、硝酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸ヨウ化水素酸、乳酸、コハク酸、また酢酸やHOOC−(CH−CH(式中、pは0〜4である)のようなアルカン酸などが挙げられる。さらに薬学的に適合性の塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムなどの塩基の塩をはじめとする無毒の製薬基剤付加塩をはじめとするが、これに限定されるものではない多数の酸によって形成できる。当業者は、多種多様な非毒性で薬学的に許容可能な付加塩を認識する。
【0041】
「薬学的に許容可能なキャリア」または「薬学的に許容可能なビヒクル」という用語は、ここで定義されるような有効量の活性剤の適切な送達を提供し、活性剤の生物学的活性の有効性を妨げず、宿主または患者にとって十分に無毒である、あらゆる製剤またはキャリア媒体を指す。代表的なキャリアとしては、水、植物性および鉱物性双方の油、クリーム基剤、ローションベース基剤、軟膏基剤などが挙げられる。これらの基剤は、懸濁剤、増粘剤、浸透促進剤などを含む。それらの配合については、化粧品および局所医薬品の当業者によく知られている。キャリアに関する追加的情報は、参照によってここに編入するレミントン(Remington)著、「製薬科学(Pharmaceutical Sciences)」第17版のパート8、1985年、Mack Publishing Company、Easton,Pa.にある。
【0042】
「薬学的に許容可能な局所キャリア」および同等の用語は、ここで上述したような局所塗布に適した薬学的に許容可能なキャリアを指す。活性剤を懸濁または溶解でき、皮膚に塗布した際に無毒であり非炎症性特性を有する不活性液体またはクリームビヒクルが、薬学的に許容可能な局所キャリアの例である。この用語は、局所化粧品中での使用が認可されたキャリア材料を包含することも特に意図される。
【0043】
「薬学的に許容可能な添加剤」という用語は、薬剤配合分野で知られまたは使用されており、活性剤の生物学的活性の有効性を過度に妨げず、宿主または患者にとって十分に無毒な保存料、抗酸化剤、香料、乳化剤、染料、および賦形剤を指す。局所製剤のための添加剤は技術分野でよく知られ、それらが薬学的に許容可能で上皮細胞またはそれらの機能に有害でない限り、局所組成物に添加されてもよい。さらにそれらは組成物の安定性に悪化を引き起こしてはならない。例えば不活性充填材、抗刺激剤、粘着付与剤、賦形剤、香料、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、保存料、緩衝剤、その他の透過促進剤、およびその他の従来の局所または経皮送達製剤の構成要素が技術分野で知られている。
【0044】
「改良」、「浸透改良」または「透過改良」という用語は、薬剤が皮膚、爪、髪、鉤爪または蹄を通って透過する速度を増大させるような、薬剤に対する皮膚、爪、髪、鉤爪または蹄透過度の増大について述べる。このような促進剤の使用を通じてもたらされる増強された透過効果は、例えば拡散セル装置を使用して、動物またはヒトの皮膚、爪、髪、鉤爪または蹄を通る薬剤拡散速度を測定して観察できる。拡散セルについては、メリット(Merritt)ら著、「皮膚透過のための拡散装置(Diffusion Apparatus for Skin Penetration)」、J of Controlled Release、1(1984年)161〜162頁で述べられる。「透過促進剤」または「浸透促進剤」という用語は、単独でまたは組み合わさって作用して、皮膚の薬剤に対する透過度を増大する薬剤または薬剤混合物を表す。
【0045】
「賦形剤」という用語は、所望の用途に有効な薬剤組成物を調合するのに使用されるキャリア、希釈剤および/またはビヒクルを意味することが従来から知られている。
【0046】
「局所投与」という用語は、薬剤が皮膚の外面を越えて下にある組織に入るような、皮膚外面への医薬品塗布を指す。局所投与としては、無傷の皮膚への、または皮膚の損傷、生傷または開放創への組成物の塗布が挙げられる。医薬品の局所投与は、皮膚および周囲組織への薬剤の限定的分布をもたらすことができ、または薬剤が血流によって治療領域から除去されると、薬剤の全身性分布をもたらすことができる。
【0047】
「経皮送達」という用語は、組成物の局所投与またはその他の塗布から帰結する、皮膚のバリアを越える薬剤の拡散を指す。角質層はバリアとして機能し、無傷の皮膚にはわずかな医薬品しか浸透できない。対照的に、表皮および真皮は多くの溶質に透過性であるため、擦過または別のやり方で角質層がはぎ取られて表皮が暴露された皮膚を通った薬剤の吸収は、より容易に起きる。経皮送達としては、注射または皮膚または粘膜のあらゆる部分を通るその他の送達、および残りの部分を通る吸収または透過が挙げられる。無傷の皮膚を通る吸収は、皮膚への塗布前に、適切な薬学的に許容可能なビヒクル中に活性剤を入れることで増強できる。受動的局所投与は、皮膚軟化剤または浸透促進剤と組み合わせて、活性剤を直接に治療部位に塗布することからなってもよい。ここでの用法では、経皮送達は、外皮、すなわち皮膚、髪、または爪を通じたまたは通過する透過による送達を含むことが意図される。
【0048】
活性剤
本願明細書で特許請求される局所製剤中で有用な活性剤は、尋常性座瘡および/または二次感染した皮膚病状に対して活性の化合物である。本願明細書で特許請求される局所製剤中で有用な活性剤の例は、その内容全体を本願明細書に引用する2004年6月16日に出願された米国特許出願第10/867,465号明細書で開示される。好ましくは活性剤は、上述の式Iのボリン酸錯体である。
【0049】
本発明は、局所医薬組成物に向けたものである。これらの局所医薬組成物は、それ自体が既知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、研和、乳化、封入、閉じ込めまたは凍結乾燥処理の手段によって製造できる。
【0050】
したがって、本発明に従って使用される医薬組成物は、活性化合物の薬学的に使用できる製剤への加工を容易にする、賦形剤および添加剤を含んでなる1つ以上の生理学的に許容可能なキャリアを使用して、従来の様式で調合できる。適切な剤形は、選択される所望の製品に左右される。
【0051】
製剤
本発明の組成物は、ポリマー、増粘剤、緩衝液、中和剤、キレート剤、保存料、界面活性剤または乳化剤、抗酸化剤、ワックスまたは油、皮膚軟化剤、日焼け止め、および溶剤または混合溶剤系をはじめとするが、これに限定されるものではない、流体または半固形ビヒクルを含む。溶剤または混合溶剤系は主として薬剤を溶解することに関与するので、構成において重要である。最良の溶剤または混合溶剤系はまた、製剤への不良溶剤の添加にもかかわらず、溶液中に臨床的に妥当なレベルの薬剤を保持できる。主題発明において有用な局所組成物は、多種多様な製品タイプにすることができる。これらとしては、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、ペースト、フォーム、ムース、およびクレンザーが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの製品タイプは、粒子、ナノ粒子、およびリポソームをはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかのタイプのキャリアシステムを含んでなることができる。所望ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加できる。配合および投与のための技術は、レミントン(Remington)著、「製薬科学(Pharmaceutical Sciences)」、Mack Publishing Co.、Easton,PA.にある。製剤は、身体中の所望の標的部位への送達を最大化するように選択できる。
【0052】
皮膚表面に摩擦なしに塗布するための製剤であるローションは、典型的にその中で超微粒子固体、ワックス、または液体が分散する液体または半液体製剤である。ローションは、より良い分散体を生じる懸濁剤、ならびに例えばメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチル−セルロースなど、活性剤を局在化させて皮膚との接触を保つのに有用な化合物を典型的に含有する。
【0053】
本発明に従った送達のための活性剤を含有するクリームは、粘稠な液体または水中油または油中水のどちらかの半固形エマルジョンである。クリーム基剤は、水洗可能であり、油相、乳化剤、および水相を含有する。油相は、一般にワセリンまたはセチル−またはステアリルアルコールなどの脂肪アルコールと、必須でないが通常、容積が油相を上回って一般に保湿剤を含有する水相とを含んでなる。クリーム製剤中の乳化剤は、前出のレミントン(Remington)著、「医薬品の科学と実際(The Science and Practice of Pharmacy)」で解説されるように、一般に非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性界面活性剤である。
【0054】
また、ゲル製剤も、本発明との関連で使用できる。局所薬剤製剤の当業者によって理解されるように、ゲルは半固形である。単相ゲルは、典型的に水性であるが溶剤または溶剤混合物であってもよいキャリア液体に、実質的にくまなく均一に分布する有機巨大分子を含有する。
【0055】
半固形製剤である軟膏は、典型的にワセリンまたはその他の石油誘導体を基剤とする。当業者によって理解されるように、使用する具体的な軟膏基剤は特定製剤のために選択された活性剤の最適送達を提供するものであり、好ましくは例えば皮膚軟化などのその他の所望の特性もまた提供する。その他のキャリアまたはビヒクル同様、軟膏基剤は、不活性、安定、非刺激性、および非感作性でなくてはならない。レミントン(Remington)著、「医薬品の科学と実際(The Science and Practice of Pharmacy)」、第19版、(Easton,Pa.、Mack Publishing Co.、1995年)、1399〜1404頁で解説されるように、軟膏基剤は、油性基剤、乳化性基剤、エマルジョン基剤、および水溶性基剤の4つのクラスに分類される。油性軟膏基剤としては、例えば植物油、動物から得られる脂肪、および石油から得られる半固形炭化水素が挙げられる。乳化性軟膏基剤はまた吸収性軟膏基剤としても知られており、わずかなまたは皆無の水を含有し、例えば、ヒドロキシステアリンスルファート、無水ラノリン、および親水性ワセリンが挙げられる。エマルジョン軟膏基剤は、油中水(W/O)エマルジョンまたは水中油(O/W)エマルジョンのどちらかであり、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリン、およびステアリン酸が挙げられる。好ましい水溶性軟膏基剤は、様々な分子量のポリエチレングリコールから調製される。さらに詳しくは、前出のレミントン(Remington)著、「医薬品の科学と実際(The Science and Practice of Pharmacy)」を参照できる。
【0056】
また、本発明の有用な製剤は、スプレーを包含する。スプレーは、一般に、送達のために皮膚上に吹き付けることができる水性および/またはアルコール溶液中の活性剤を提供する。このようなスプレーとしては、送達に続いて投与部位において活性剤溶液の濃縮を提供するように調合されたものが挙げられ、例えば、スプレー溶液は、主としてその中に薬剤または活性剤を溶解できるアルコールまたはその他の類似揮発性液体から構成できる。皮膚への送達時にキャリアは蒸発し、投与部位に濃縮された活性剤が残る。
【0057】
また、局所医薬組成物は、適切な固相またはゲル相キャリアを含んでなってもよい。このようなキャリアの例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、局所医薬組成物は、適切な乳化剤を含んでなってもよく、それは水中油または油中水の混合および懸濁を増強するまたは容易にする薬剤を指す。ここで使用される乳化剤は、単一乳化剤からなってもよく、または非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性界面活性剤または2つ以上のこのような界面活性剤の配合物であってもよい。ここでの使用に好ましいのは、非イオン性またはアニオン性乳化剤である。このような表面活性剤については、McCutcheon Division、MC Publishing Company,175 Rock Road,Glen Rock,NJ.07452,USAが出版する年報である「マカッチャンの洗剤および乳化剤(McCutcheon’s Detergent and Emulsifiers)」北米版、1980年で述べられる。
【0059】
ここでの使用に好ましいのは、セテアリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、乳化ろう、モノステアリン酸グリセリンなどの高分子量アルコールである。その他の例は、ジステアリン酸エチレングリコール、トリステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン(スパン(SPAN)60)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、モノパルミチン酸ソルビタン、ジオレイン酸スクロース、ステアリン酸スクロース(クロデスタ(CRODESTA)F−160)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ブリッジ(BRIJ)30)、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ブリッジ(BRIJ)72)、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(ブリッジ(BRIJ)721)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(Myrj45)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン(TWEEN)60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン(TWEEN)80)、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ツイーン(TWEEN)20)、およびオレイン酸ナトリウムである。コレステロールおよびコレステロール誘導体もまた外用エマルジョン中で用いて、w/oエマルジョンを促進してもよい。
【0060】
特に適した非イオン性乳化剤は、Dekker,New York,N.Y.が出版するポールL.リンドナー(Paul L.Lindner)著、「エマルジョン群およびエマルジョン(Emulsions and Emulsion)」、ケネス・リサント(Kenneth Lissant)編、1974年、188〜190頁によって述べられる方法による判定で、親水性・親油性バランス(HLB)がw/o系では約3〜6、o/w系では8〜18のものである。ここでの使用により好ましいのは、約8〜約18のHLBを有する系を生じる1つ以上の非イオン性界面活性剤である。
【0061】
このような非イオン性乳化剤の例としては、HLB4.9を有するポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル商品名である「ブリッジ(BRIJ)72」、HLB15.5を有するポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテルの商品名である「ブリッジ(BRIJ)721」、HLB9.7を有するポリオキシエチレンラウリルエーテルの商品名である「ブリッジ(Brij)30」、HLB8.0を有する乳化ろうの商品名である「ポーラワックス(Polawax)」、のHLB4.7を有するモノステアリン酸ソルビタンの商品名である「スパン(Span)60」、HLB14.5を有するスクロースステアリン酸商品名である「クロデスタ(Crodesta)F−160」が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの材料は全て、ルーガー・ケミカルズ(Ruger Chemicals,Inc.)、クロダ(Croda)、ICIアメリカズ(ICI Americas,Inc.)、スペクトラム・ケミカルズ(Spectrum Chemicals)、およびBASFから入手できる。本発明の局所製剤が少なくとも1つの乳化剤を含有する場合、各乳化剤は約0.5〜約2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0%、より好ましくは1.0%または1.8%の量で存在する。好ましくは乳化剤は、ステアレス(steareth)21(約1.8%)とステアレス(steareth)2(約1.0%)の混合物を含んでなる。
【0062】
また、局所医薬組成物は、適切な皮膚軟化剤を含んでなってもよい。皮膚軟化剤は乾燥の予防または軽減、ならびに皮膚の保護のために使用される材料である。有用な皮膚軟化剤の例としては、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリルアルコールなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。多種多様な適切な皮膚軟化剤が知られており、ここで使用できる。例えばどちらもその内容全体を参照によって本願明細書に引用する、サガリン(Sagarin)著、「化粧品、科学および技術(Cosmetics,Science and Technology)」、第2版第1巻、32〜43頁(1972年)、および1990年4月24日に(Deckner)らに付与された米国特許第4,919,934号明細書を参照されたい。これらの材料は、ニュージャージー州アービントンのルーガー・ケミカル社(Ruger Chemical Co.(Irvington,NJ))から入手できる。
【0063】
本発明の局所製剤が少なくとも1つの皮膚軟化剤を含有する場合、各皮膚軟化剤は、約0.1〜15%、好ましくは0.1〜約3.0、より好ましくは0.5、1.0、または2.5重量%の量で存在する。好ましくは、皮膚軟化剤は、1/5/2の比率のセチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、およびステアリルアルコール混合物である。また、皮膚軟化剤は、1/2の比率のセチルアルコールとステアリルアルコール混合物であってもよい。
【0064】
また、局所医薬組成物は、酸化を阻害することが知られている物質である適切な抗酸化剤を含んでなってもよい。本発明に従った使用に適した抗酸化剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸パルミチン酸エステル(ascorbic palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、エリソルビン酸、グアヤク脂、没食子酸プロピル、チオジプロピオン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、tert−ブチルヒドロキノン、およびビタミンEなどのトコフェロール、これらの化合物の薬学的に許容可能な塩およびエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、それらの薬学的に許容可能な塩またはエステル、またはそれらの混合物である。最も好ましくは、抗酸化剤はブチル化ヒドロキシトルエンである。これらの材料は、ニュージャージー州アービントンのルーガー・ケミカル社(Ruger Chemical Co.(Irvington,NJ))から入手できる。
【0065】
本発明の局所製剤が少なくとも1つの抗酸化剤を含有する場合、存在する抗酸化剤の総量は約0.001〜0.5重量%、好ましくは0.05〜約0.5重量%、より好ましくは0.1%である。
【0066】
また、局所医薬組成物は、適切な保存料を含んでなってもよい。保存料は医薬製剤に添加されて抗微生物剤として作用する化合物である。非経口製剤中で有効であり許容可能であるとして技術分野で知られている保存料としては、塩化ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロロヘキシジン、フェノール、m−クレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、o−クレゾール、p−クレゾール、クロロクレゾール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、安息香酸、およびそれらの様々な混合物が挙げられる。例えばヴァルハウザー(Wallhausser),K.H.著、Develop.Biol.Standard、24:9〜28頁(1974年)(S.Krager,Basel)を参照されたい。好ましくは保存料は、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびそれらの混合物から選択される。これらの材料は、ペンシルベニア州フィラデルフィアのイノレックス・ケミカル社(Inolex Chemical Co.(Philadelphia,PA))、またはスペクトラム・ケミカルズ(Spectrum Chemicals)から入手できる。
【0067】
本発明の局所製剤が少なくとも1つの保存料を含有する場合、存在する保存料の総量は約0.01〜約0.5重量%、好ましくは約0.1〜0.5%、より好ましくは約0.03〜約0.15である。好ましくは、保存料は5/1の比率のメチルパラベンおよびプロピルパラベンの混合物である。保存料としてアルコールが使用される場合、量は通常15〜20%である。
【0068】
また、局所医薬組成物は、適切なキレート剤を含んで、脂質二重層を越えない金属カチオンと錯体形成してもよい。適切なキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、および8−アミノ−2−[(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)メチル]−6−メトキシキノリン−N,N,N’,N’−四酢酸、テトラカリウム塩(QUIN−2)が挙げられる。好ましくは、キレート剤はEDTAおよびクエン酸である。これらの材料は、スペクトラム・ケミカルズ(Spectrum Chemicals)から入手できる。
【0069】
本発明の局所製剤が少なくとも1つのキレート剤を含有する場合、存在するキレート剤の総量は、約0.005%〜2.0重量%、好ましくは約0.05%〜約0.5重量%、より好ましくは約0.1重量%である。
【0070】
また、局所医薬組成物は、薬学的に許容可能な範囲内で製剤のpHを調節するのに使用される適切な中和剤を含んでなってもよい。中和剤の例としては、トロラミン、トロメタミン、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、および酢酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。このような材料は、カリフォルニア州ガーディナのスペクトラム・ケミカルズ(Spectrum Chemicals(Gardena,CA))から入手できる。
【0071】
本発明の局所製剤が少なくとも1つの中和剤を含有する場合、存在する中和剤の総量は約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは0.1重量%〜約5.0重量%、より好ましくは約1.0重量%である。中和剤は、一般に、製剤を所望のpHにするのに必要なあらゆる量で添加される。
【0072】
また、局所医薬組成物は、適切な増粘剤を含んでなってもよい。これらの構成要素は、薬剤ポリマーとの相互作用を通じてポリマー含有溶液の粘度を増大できる拡散性化合物である。カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10を増粘剤として使用してもよい。これらの材料は、オハイオ州クリーブランドのノベオン・ケミカルズ(Noveon Chemicals(Cleveland,OH))から入手できる。
【0073】
本発明の局所製剤が少なくとも1つの増粘剤を含有する場合、存在する増粘剤の総量は約0.25%〜約5.0重量%、好ましくは約0.25%〜約1.0重量%、およびより好ましくは約0.4%〜約0.6重量%である。
【0074】
また、局所医薬組成物は、1つ以上の適切な溶剤を含んでなってもよい。あらゆる固体物質(溶質)があらゆる液体物質(溶剤)中に溶解する能力は、溶質および溶剤の物理特性に左右される。溶質および溶剤が同様の物理特性を有する場合、溶質の溶剤中の溶解性は最大になる。これが「似たもの同士はよく溶ける」という伝統的理解を生み出す。溶剤は一極端において非極性の親油性油として、もう一極端では極性親水性溶剤として特徴づけることができる。油性溶剤がファンデルワールス相互作用によってその他の非極性物質を溶解するのに対し、水およびその他の親水性溶剤は、イオン性、双極子、または水素結合相互作用によって極性物質を溶解する。全ての溶剤は、最小極性、すなわちデカンなどの炭化水素から、水である最大極性溶剤に至る連続体に沿って列挙できる。溶質は同等の極性を有する溶剤中で、その最大の溶解性を有する。したがって、最小の水溶解度を有する薬剤では、極性のより小さい溶剤が改善された溶解性を提供し、溶質とほぼ同等の極性を有する溶剤が最大溶解性を提供する。ほとんどの薬剤は中間極性を有するので、極性が水よりも顕著に小さいプロピレングリコールまたはエタノールなどの溶剤中で溶解性が最大になる。薬剤が、水(例えば0.1%(w/w))よりもプロピレングリコール(例えば8%(w/w))中でより大きな溶解性を有するならば、プロピレングリコールへの水の添加は、純粋なプロピレングリコールと比較して、溶剤混合物への薬剤溶解性の最大量を減少させるはずである。良溶剤への不良溶剤の添加は、良溶剤中の最大溶解性と比較して、混合物への最大溶解性を減少させる。
【0075】
化合物を局所製剤に組み込む場合、製剤中の活性成分の濃度は、選択された溶剤および/またはキャリア中の活性成分の溶解性によって制限されるかもしれない。非親油性薬剤は、薬学的に許容可能な溶剤および/またはキャリア中で典型的に非常に低い溶解性を示す。例えば、いくつかのボリン酸錯体の水中での溶解性は、0.00025%wt/wt未満である。同じボリン酸錯体の溶解性は、プロピレングリコールまたはミリスチン酸イソプロピルのいずれかの中で、約2%wt/wt未満であることができる。本発明の一実施態様では、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)が式Iの化合物を溶解するのに使用される溶剤である。本製剤中で有用なボリン酸錯体は、DGME中で約10%wt/wt〜約25%wt/wtの溶解性を有すると考えられる。別の実施態様では、DGME水補助溶剤系が使用されて、式Iの化合物を溶解する。DGMEの溶剤能力は水が添加されると低下するが、DGME/水補助溶剤系は、約0.1%〜約5%wt/wt活性成分の所望の濃度を維持するようにデザインできる。好ましくは、活性成分は、塗布された局所製剤中に、約0.5%〜約3%wt/wt、およびより好ましくは約1%wt/wtで存在する。DGMEは揮発性が水よりも低いので、塗布に際して局所製剤が蒸発するにつれて、活性剤はクリーム製剤中でより可溶性になる。この溶解性の増大は、皮膚表面における薬剤の沈殿よって引き起こされる生体利用能低下の可能性を低下させる。
【0076】
局所投与に適した、または美容的塗布に適したローションなどの液体形態は、緩衝液、懸濁および分散剤、増粘剤、浸透促進剤などが添加された適切な水性または非水性ビヒクルを含んでもよい。クリームまたはペーストなどの固形形態は、例えば以下の成分のいずれでも含んでもよい。水、油、界面活性剤添加基材としてのアルコールまたはグリース、ポリエチレングリコールなどのポリマー、増粘剤、固形物など。液体または固体製剤は、リポソーム、ミクロソーム、マイクロスポンジなどの増強された送達技術を含んでもよい。
【0077】
さらに、化合物は、治療薬を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどの徐放系を使用して送達できる。様々な徐放材料が確立されており、当業者によく知られている。
【0078】
本発明の実施に従った局所治療計画は、毎日1回から数回、組成物を塗布部位において皮膚に直接に塗布するステップを含む。
【0079】
本発明の製剤は、細菌感染症、座瘡、炎症などに関わる病状または症状を治療、改善または防止するのに使用できる。
【0080】
追加的活性剤
以下は、本発明の局所医薬製剤に添加できる化粧品および医薬品の例である。以下の薬剤は既知の化合物であり、商業的に容易に入手できる。
【0081】
抗炎症薬剤の例としては、ビサボロール、メンソレータム、ダプソン、アロエ、ヒドロコルチゾンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
ビタミンの例としては、ビタミンB、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンDなどと、タザロテン、カルシポトリエン、トレチノイン、アダパレンなどのビタミン誘導体などとが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
抗老化剤の例としては、ナイアシンアミド、レチノールおよびレチノイド誘導体、AHA、アスコルビン酸、リポ酸、補酵素Q10、βヒドロキシ酸、サリチル酸、銅結合ペプチド、ジメチルアミノエチル(DAEA)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
日焼け止めおよびまたは日光皮膚炎緩和剤の例としては、PABA、ホホバ、アロエ、パディメート−O、メトキシケイ皮酸、プロキサミンHCl、リドカインなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。サンレス・タンニング剤の例としては、ジヒドロキシアセトン(DHA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
抗微生物剤としては、クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、テルビナフィンHCLなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
乾癬治療薬および/または座瘡治療薬の例としては、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、コールタール、硫化セレン、酸化亜鉛、ピリチオン(亜鉛および/またはナトリウム)、タザロテン、カルシポトリエン、トレチノイン、アダパレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
角質化を制御または緩和するのに有効な薬剤としては、トレチノイン、タザロテン、およびアダパレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
式Iの活性剤、および任意にこれらの追加的薬剤の少なくとも1つを含む組成物は、局所的に投与されるためのものである。主要な用途では、これはボリン酸およびあらゆるその他の活性剤が、皮膚に作用して治療することをもたらす。代案としては、局所的に塗布された活性剤のいずれでも、経皮経路によって全身的に送達されてもよい。
【0089】
このような組成物中では、例えば、抗炎症薬剤、ビタミン、抗老化剤、日焼け止め、抗微生物剤および/または座瘡治療薬などの追加的な美容的または薬学的に有効な薬剤は、通常、微量構成要素であり(約0.001%〜約20重量%または好ましくは約0.01%〜約10重量%)、残部は所望の剤形を形成するのに役立つ、様々なビヒクルまたはキャリアおよび加工助剤である。
【0090】
一般合成方法
本発明の方法は、以下の一般方法および手順を使用して、容易に入手できる出発原料を用いる。典型的なまたは好ましい処理条件(すなわち反応温度、時間、反応物質のモル比、溶剤、圧力など)が提示される場合、特に断りのない限りその他の処理条件もまた使用できるものと理解される。最適反応条件は使用される特定の反応物質または溶剤によって変動してもよいが、このような条件は、当業者によって日常的な最適化手順を使用して判断されることができる。
【0091】
さらに、本発明の方法は、必要に応じて保護基を用いて、特定の官能基が望まれない反応を被るのを防止してもよい。様々な官能基の適切な保護基、ならびに特定官能基の保護および脱保護の適切な条件については技術分野でよく知られている。例えば多数の保護基について、T.W.グリーン(Greene)およびG.M.ワッツ(Wuts)著、「有機合成における保護基(Protecting Groups in Organic Synthesis)」、第3版、Wiley、New York、1999年、およびそこで引用される参考文献で述べられる。
【0092】
さらに、本発明の化合物が1つ以上のキラル中心を含有する場合、このような化合物は純粋な立体異性体として、すなわち個々の鏡像異性体またはジアステレオマーとして、または立体異性体濃縮混合物として調製または単離できる。このような全ての立体異性体(および濃縮混合物)は、特に断りのない限り本発明の範囲内に含まれる。純粋な立体異性体(または濃縮混合物)は、例えば技術分野でよく知られている光学活性出発原料または立体選択的試薬を使用して調製してもよい。代案としては、例えばキラルカラムクロマトグラフィー、キラル分解剤などを使用して、このような化合物のラセミ混合物を分離ができる。
【0093】
以下の反応の出発原料は、一般に既知の化合物であり、または既知の手順またはその明らかな修正によって調製できる。例えば出発原料の多くは、米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wisconsin,USA))、米国カリフォルニア州トランスのベイケム(Bachem(Torrance,California,USA))、エンカケム(Emka−Chem)または米国ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(St.Louis,MO,USA))などの販売元から入手できる。その他は、「フィーザー(Fieser)およびフィーザー(Fieser)著、「有機合成のための試薬(Reagents for Organic Synthesis)」、第1〜15巻(John Wiley and Sons、1991年)、ロッド(Rodd)著、「炭素化合物の化学(Chemistry of Carbon Compounds)」第1〜5巻および補遺(Elsevier Science Publishers、1989年)、「有機反応(Organic Reactions)」、第1〜40巻(John Wiley and Sons、1991年)、マーチ(March)著、「上級有機化学(Advanced Organic Chemistry)」、(John Wiley and Sons、第4版)、およびラロック(Larock)著、「有機変換総説(Comprehensive Organic Transformations)」(VCH Publishers Inc.、1989年)などの標準参考書で述べられる手順またはその明らかな修正によって調製してもよい。具体的には本発明の化合物は、一般的な有機化学技術、特にヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体合成分野で知られている様々な方法によって調製してもよい。ヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体調製の一般レビューとしては、1)マイケルソン(Michelson)A.M.著、「ヌクレオシドおよびヌクレオチドの化学(The Chemistry of Nucleosides and Nucleotides)」、Academic Press、New York、1963年、2)グッドマン(Goodman)L.著、「核酸化学の基本原理(Basic Principles in Nucleic Acid Chemistry)」、Academic Press、 New York、1974年、第1巻、第2章、および3)「核酸化学における合成手順(Synthetic Procedures in Nucleic Acid Chemistry)」、ゾルバック(Zorbach)W.およびティプソン(Tipson)R.編、Wiley、New York、1973年、第1および2巻が挙げられる。
【0094】
下のスキーム1に示すように、ボリン酸錯体は、適切な溶剤(すなわち、エタノール、イソプロパノール、ジオキサン、エーテル、トルエン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、またはテトラヒドロフラン)中の所望の複素環式リガンドの1当量との反応によって、前駆ボリン酸から得ることができる。
【化5】

【0095】
場合によっては、本発明の化合物は、化合物が異なる立体異性体形態で存在できるように、1つ以上の非対称性炭素原子を含有してもよい。これらの化合物は、例えばラセミ体または光学活性形態であることができる。これらの場合、単一鏡像異性体、すなわち光学活性形態は、非対称性合成によって、またはラセミ体の分解によって得ることができる。ラセミ体の分解は、例えば分解剤存在下における結晶化、または例えばキラルHPLCカラムを使用したクロマトグラフィーなどの従来の方法によって達成できる。
【0096】
有効性、試験、および投与
有効性
本発明の化合物は、細菌DNAメチル転移酵素などの重要な微生物酵素の阻害に関係する。ここで開示される化合物の多くは、微生物中のメチル転移酵素の選択的阻害物質であるが、哺乳類中のメチル転移酵素は阻害しない。しかし、本発明の化合物の抗細菌および抗真菌活性は前記酵素阻害活性によるものに限定されず、後者の効果は前記治療的な活性に必ずしも必須でない。
【0097】
生体外(invitro)アッセイは、活性化合物がP.アクネス(acnes)に対し、および座瘡の病態に関与するかもしれないその他の一般的に皮膚にコロニー形成する微生物に対して活性であることを示す。本発明の局所製剤は、座瘡および/または二次感染した皮膚病状の新規治療に相当する。
【0098】
試験
本局所製剤中で使用するのに好ましい化合物は、特定の薬理学特性を有する。このような特性の例としては、低毒性、低血清タンパク質結合、および望ましい生体外(in vitro)および生体内(in vivo)半減期が挙げられるが、これに限定されるものではない。アッセイを使用してこれらの望ましい薬理学特性を予測してもよい。生体利用能を予測するために使用されるアッセイとしては、Caco−2細胞単層を含むヒト腸細胞単層を越える輸送が挙げられる。血清タンパク質結合は、アルブミン結合アッセイから予測してもよい。このようなアッセイについては、オラブコヴァ(Oravcova)らによるレビュー(J.Chromat.(1996年)、B677巻、1〜27頁)で述べられる。化合物の半減期は、化合物の投薬頻度に反比例する。化合物の生体外(in vitro)半減期は、クンツ(Kuhnz)およびギーシェン(Gieschen)によって述べられるミクロソームの半減期アッセイ(Drug Metabolism and Disposition、(1998年)、26巻、1120〜1127頁)から予測してもよい。
【0099】
このような化合物の毒性および治療的有効性は、例えば、LD50(集団の50%の致死量)およびED50(集団の50%の治療的有効量)を判定するための細胞培養または実験動物における標準薬学的手順によって判定できる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、それはLD50とED50の比率として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量範囲を策定するのに使用できる。このような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がわずかなまたは皆無のED50を含む循環濃度の範囲内である。用いられる剤形および利用される投与経路次第で、投薬量はこの範囲内で変動できる。正確な配合、投与経路、および投薬量は、個々人の医師が患者の病状を考慮して選択できる。(例えば、フィングル(Fingl)ら著、1975年、「治療学の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、第1章、1頁を参照されたい。)
【0100】
投与
本発明の方法で使用されるあらゆる化合物について、ここで開示されるように、最初に細胞培養アッセイから治療的有効量を推定できる。例えば、動物モデルにおいて用量を策定して、細胞培養中で判定されるようなEC50(50%増大に有効な用量)、すなわち細菌細胞生育の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度を含む循環濃度範囲を得ることができる。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に判定できる。
【0101】
一般にここで述べられる方法によって中間体から調製される化合物は、同様の役割を果たす薬剤について受け入れられているいずれかの投与様式によって、治療的にまたは美容的に有効量で投与される。しかし、あらゆる特定患者に対する具体的用量レベルは、用いられる具体的化合物の活性、年齢、体重、一般健康、性別、食生活、投与時間、投与経路、および排出速度、薬剤の組み合わせ、治療を受ける特定疾患の重症度、および処方する医師の判断をはじめとする多様な要因に左右されるものと理解される。薬剤は毎日1回から2回、または毎日3回から4回まで投与できる。
【0102】
投薬量および間隔は個々に調節して、細菌細胞生育阻害効果を維持するのに十分な活性部分の血漿レベルを提供できる。全身性投与のための通常の患者投薬量は0.1〜1000mg/日、好ましくは1〜500mg/日、より好ましくは10〜200mg/日、なおもより好ましくは100〜200mg/日の範囲である。患者体表面積に関して述べると、通常の投薬量は50〜91mg/m/日の範囲である。
【0103】
製剤中の化合物の量は、当業者によって用いられる最大範囲内で変動できる。典型的に製剤は、重量%(wt%)で全製剤を基準として約0.01〜10重量%の薬剤を含有し、残りの部分は1つ以上の適切な製薬賦形剤である。好ましくは、化合物は、約0.1〜3.0重量%、より好ましくは約1.0重量%のレベルで存在する。
【実施例】
【0104】
本発明をその好ましい実施態様に関して述べたが、当業者には様々な変更および修正は明らかであるものと理解され、本発明は、このような変更および修正を添付の特許請求の範囲内に入るものとして包含することが意図される。本発明をさらに例証するために、続く制限を意図しない実施例が提供される。
【0105】
下の実施例ならびに本願明細書全体を通じて、以下の略語は以下の意味を有する。定義されない場合、用語はそれらの一般に受け入れられている意味を有する。
EDTAエチレンジアミン四酢酸
L=リットル
kg=キログラム
N=規定濃度
h=時間
min=分
ステアレス(steareth) ポリオキシエチレンステアリルエーテル
Wt=重量
wt/wt=重量対重量比
v:v=容積対容積比
【0106】
さらに全反応温度および融点は、特に断りのない限り摂氏であり、全百分率はここでも特に断りのない限りモル%である。
【0107】
ここで述べられる、活性成分以外の製剤の個々の化合物および/または構成要素は、ニュージャージー州アービントンのルーガー・ケミカル社(Ruger Chemical Co.(Irvington,NJ))、ペンシルベニア州フィラデルフィアのイノレックス・ケミカル社(Inolex Chemical Company(Philadelphia,PA))、カリフォルニア州ガーディナのスペクトラム・ケミカルズ(Spectrum Chemicals(Gardena,CA))、ニュージャージー州ウェストウッドのガットフォセ社(Gattefosse Corporation(Westwood,NJ))、オハイオ州クリーブランドのノベオン社(Noveon,Inc.(Cleveland,OH))をはじめとするが、これに限定されるものではない販売元から購入されてもよい。
【0108】
実施例1
3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシ−ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボラン(化合物1)の合成
グリニャール試薬の合成
1.周囲温度でMg(3.7当量)およびテトラヒドロフラン(36L/kg Mg)を適切な反応器に装入する。
2.テトラヒドロフラン(1.9Lテトラヒドロフラン/kg 4−ブロモ−2−クロロトルエン)中の4−ブロモ−2−クロロトルエン(3.5当量)の溶液を装入する。混合物は発熱する。添加を調節して還流を制御する。4−ブロモ−2−クロロトルエンの添加完了直後に起きる還流停止は、グリニャール試薬形成の完了を示唆する。その他の点では淡い透明なグリニャール試薬溶液中に、少量のMg金属が残る。
【0109】
3−クロロ−4−メチルフェニルボリン酸の合成
3.グリニャール試薬溶液を10℃未満に冷却する。
4.テトラヒドロフラン(7.7Lテトラヒドロフラン/kgホウ酸トリメチル)中のホウ酸トリメチル(1.0当量)の溶液を装入する。
5.40〜50℃で16〜20時間混合する。
6.10℃未満に冷却する。
7.メタノール(12当量)を装入する。
8.真空下でテトラヒドロフランおよびメタノールを蒸留する。
9.得られたシロップをメチルtert−ブチルエーテル(27L/kgホウ酸トリメチル)と1N HCl(27L/kgホウ酸トリメチル)の間で分割する。
10.水層を濃HClでpH≦1に調節する。
11.層を分離して水層を廃棄する。
12.真空下でメチルtert−ブチルエーテル層を蒸留する。
13.トルエン(17Lトルエン/kgホウ酸トリメチル)を装入し、真空下で蒸留してテトラヒドロフラン、メタノール、メチルtert−ブチルエーテル、および水の除去を助ける。
14.エタノール(8L/kg活性剤)中に得られたシロップを溶解する。
15.活性炭を装入する(3−ヒドロキシピコリン酸基準で5重量%)(下記参照)。混合物をおよそ5〜10min還流し、次に濾過して活性炭素を除去する。
16.3−ヒドロキシピコリン酸(1.0同等物)、水(4L/kg活性剤)およびエタノール(4L/kg活性剤)を装入する。40〜50℃におよそ15min加熱して溶液をもたらす。
17.活性炭(3−ヒドロキシピコリン酸基準で5重量%)を装入し、活性炭添加後およそ15min撹拌する。濾過して活性炭を除去する。
18.濾過した炭素処理3−ヒドロキシピコリン酸溶液を適切なガラス反応器に装入する。
19.ステップ15からの濾過した炭素処理3−クロロ−4−メチルフェニルボリン酸溶液を装入する。
20.混合物を加熱する。およそ35〜45℃で沈殿物が形成し、次にそれは混合物を加熱して還流(およそ81℃)すると溶解する。還流に達したら、事実上透明な溶液が得られる。混合物をおよそ15min還流する。
21.溶液を冷却させる。およそ70〜75℃で、溶液に化合物1を添加する。混合物がおよそ10〜15h時間かけておよそ25℃に冷却するに連れて結晶化が生じる。結晶性スラリーを周囲温度におよそ12〜15時間保つ。生成スラリーを濾過し、冷(およそ5℃)エタノール/水(3:1v:v)(1〜2L/kg活性剤)で洗浄する。
22.湿潤ケークを真空にせず周囲温度においてトレー内で乾燥させる。加熱および真空は任意であるが、固形物の乾燥をもたらすのには必要でない。
23.通常の室温において物質を混和して、気密耐光性容器内に詰める。
【0110】
製剤実施例
実施例A
最終製品が、重量百分率あたりの重量基準で以下の賦形剤を含有するようにクリーム製剤を配合した。分散カルボマー(カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、0.4%)を添加したメチルパラベン(0.15%)、プロピルパラベン(0.03%)、およびEDTAナトリウム(0.1%)を含有する水性溶液を約70℃に加熱した。別個の容器内でセチルアルコール(0.5%)、ミリスチン酸イソプロピル(2.5%)、ステアリルアルコール(1.0%)ブチル化ヒドロキシトルエン(0.1%)、ブリッジ(BRIJ)721(1.8%)、およびブリッジ(BRIJ)72(1.0%)を約70℃に加熱して、透明な油剤を形成した。少なくとも5分間約70℃で均質化して、油剤を水性溶液に添加した。バッチの冷却を開始して、混合を継続して適量の25%トロラミン溶液(1.0%)を添加した。上の混合物が緩慢に冷却する最中に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(15%)を添加した。約75.42%の水を含有する滑らかで均質な室温クリームが形成されるまで、混合を継続した。
【0111】
実施例B
最終製品が、重量百分率あたりの重量基準で以下の賦形剤を含有するようにクリーム製剤を配合した。分散カルボマー(カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、0.4%)を添加したメチルパラベン(0.15%)、プロピルパラベン(0.03%)、およびEDTAナトリウム(0.1%)を含有する水性溶液を約70℃に加熱した。別個の容器内でセチルアルコール(0.5%)、ミリスチン酸イソプロピル(2.5%)、ステアリルアルコール(1.0%)ブチル化ヒドロキシトルエン(0.1%)、ブリッジ(BRIJ)721(1.8%)、およびブリッジ(BRIJ)72(1.0%)を約70℃に加熱して、透明な油剤を形成した。少なくとも5分間約70℃で均質化して、油剤を水性溶液に添加した。バッチの冷却を開始して、混合を継続して適量の25%トロラミン溶液(1.0%)を添加した。別個の容器内でジエチレングリコールモノエチルエーテル(15%)中に化合物1(1.0%)を完全に溶解し、定量的に冷却中のエマルジョンに添加した。約75.42%の水を含有する滑らかで均質な室温クリームが形成されるまで、混合を継続した。
【0112】
実施例C
最終製品が、重量百分率あたりの重量基準で以下の賦形剤を含有するようにクリーム製剤を配合した。実施例Aの水性溶液および油剤を少なくとも5分間約70℃で均質化した。バッチの冷却を開始して、混合を継続して適量の25%トロラミン溶液(1.0%)を添加した。別個の容器内でジエチレングリコールモノエチルエーテル(15%)中に化合物1(1.0%)を完全に溶解し、定量的に冷却中のエマルジョンに添加した。約76.32%の水を含有する滑らかで均質な室温クリームが形成されるまで、混合を継続した。
【0113】
実施例D
最終製品が、重量百分率あたりの重量基準で以下の賦形剤を含有するようにクリーム製剤を配合した。分散カルボマー(カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、0.4%)およびアクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー(0.2%)を添加したメチルパラベン(0.15%)、プロピルパラベン(0.03%)、ベンジルアルコール(1.5%)、およびEDTAナトリウム(0.1%)を含有する水性溶液を約70℃に加熱した。別個の容器内でセチルアルコール(0.5%)、ステアリルアルコール(1.0%)ブチル化ヒドロキシトルエン(0.1%)を約70℃に加熱して、透明な油剤を形成した。少なくとも5分間約70℃で均質化して、油剤を水性溶液に添加した。バッチの冷却を開始して、混合を継続して適量の25%トロラミン溶液(1.0%)を添加した。別個の容器内でジエチレングリコールモノエチルエーテル(9%)中に化合物1(1.0%)を完全に溶解し、定量的に冷却中のエマルジョンに添加した。約85.02%の水を含有する滑らかで均質な室温クリームが形成されるまで、混合を継続した。
【0114】
実施例E
最終製品が、重量百分率あたりの重量基準で以下の賦形剤を含有するようにクリーム製剤を配合した。分散カルボマー(カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、0.4%)およびアクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー(0.1%)を添加したメチルパラベン(0.15%)、プロピルパラベン(0.03%)、ベンジルアルコール(2%)、およびEDTAナトリウム(0.1%)を含有する水性溶液を約70℃に加熱した。別個の容器内でセチルアルコール(0.25%)、ステアリルアルコール(0.5%)ブチル化ヒドロキシトルエン(0.1%)、およびポリオキシエチレン−4ラウリルエーテル(3%)を約70℃に加熱して、透明な油剤を形成した。少なくとも5分間約70℃で均質化して、油剤を水性溶液に添加した。バッチの冷却を開始して、混合を継続して適量の25%トロラミン溶液(1.0%)を添加した。別個の容器内でジエチレングリコールモノエチルエーテル(8%)中に化合物1(1.0%)を完全に溶解し、定量的に冷却中のエマルジョンに添加した。約83.37%の水を含有する滑らかで均質な室温クリームが形成されるまで、混合を継続した。
【0115】
実施例F
最終製品が、重量百分率あたりの重量基準で以下の賦形剤を含有するようにクリーム製剤を配合した。分散カルボマー(カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、0.4%)およびアクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー(0.1%)を添加したメチルパラベン(0.15%)、プロピルパラベン(0.03%)、ベンジルアルコール(2%)、およびEDTAナトリウム(0.1%)を含有する水性溶液を約70℃に加熱した。別個の容器内でセチルアルコール(0.5%)、ステアリルアルコール(1%)ブチル化ヒドロキシトルエン(0.1%)、ブリッジ(BRIJ)721(1.8%)、およびブリッジ(BRIJ)72(1.0%)、およびポリオキシエチレン−4ラウリルエーテル(2%)を約70℃に加熱して、透明な油剤を形成した。少なくとも5分間約70℃で均質化して、油剤を水性溶液に添加した。バッチの冷却を開始して、混合を継続して適量の25%トロラミン溶液(1.0%)を添加した。別個の容器内でジエチレングリコールモノエチルエーテル(8%)中に化合物1(1.0%)を完全に溶解し、定量的に冷却中のエマルジョンに添加した。約80.82%の水を含有する滑らかで均質な室温クリームが形成されるまで、混合を継続した。
【0116】
実施例G
最終製品が、重量百分率あたりの重量基準で以下の賦形剤を含有するようにクリーム製剤を配合した。分散カルボマー(カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、0.6%)およびアクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー(0.2%)を添加したメチルパラベン(0.15%)、プロピルパラベン(0.03%)、およびEDTAナトリウム(0.1%)を含有する水性溶液を約70℃に加熱した。別個の容器内でセチルアルコール(0.5%)、軽鉱物油(3%)、ステアリルアルコール(1.0%)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.1%)を約70℃に加熱して、透明な油剤を形成した。少なくとも5分間約70℃で均質化して、油剤を水性溶液に添加した。バッチの冷却を開始して、混合を継続して適量の25%トロラミン溶液(1.5%)を添加した。別個の容器内でジエチレングリコールモノエチルエーテル(15%)中に化合物1(1.0%)を完全に溶解し、定量的に冷却中のエマルジョンに添加した。約76.82%の水を含有する滑らかで均質な室温クリームが形成されるまで、混合を継続した。
【0117】
実施例H
70%のエチルアルコールおよび約22.8%の水に、1%の化合物1、0.1%のブチル化ヒドロキシトルエン、0.1%のEDTA二ナトリウム、3%のポリソルベート80、および3%のポリオキシエチレン−4ラウリルエーテルを溶解して局所溶液を調製した。溶液のpHをpH5.5に調節した。
【0118】
実施例I
70%のエチルアルコールおよび約25.8%の水に、1%の化合物1、0.1%のブチル化ヒドロキシトルエン、0.1%のEDTA二ナトリウム、および3%のポリオキシエチレン−4ラウリルエーテル溶解して局所溶液を調製した。溶液のpHをpH5.5に調節した。
【0119】
実施例J
化合物1(1%)、メチルパラベン(0.15%)、プロピルパラベン(0.03%)、ベンジルアルコール(2%)、ポリソルベート80(2%)、およびグリセリン(5%)を合わせて、未溶解固形物を含有しない透明溶液が形成されるまで混合して、ゲル製剤を調製した。上の溶液にカルボマー(カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、0.6%)を分散させて、10%水酸化ナトリウム溶液でpHを5.5に調節した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容可能な局所キャリアと、
式、
【化1】

(式中、
およびR**は、独立して、置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のシクロアルキル、および置換または非置換の複素環から選択されるメンバーであり、
zは、0または1であるが、ただしzが1であれば、AはCR10およびNから選択されるメンバーであり、DはNおよびCR12から選択されるメンバーであり、さらにただしzが0であれば、DはO、S、およびNR12aから選択されるメンバーであり、
Eは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、(シクロアルキル)オキシ、(シクロヘテロアルキル)オキシ、カルボキシ、またはアルキルオキシカルボニルから選択されるメンバーであり、
mは、0または1であり、
12は、水素、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アミド、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アラルキルアミノ、およびジアラルキルアミノから選択されるメンバーであり、R12について列挙されるあらゆる部分のアルキルまたはアリール部分は任意に置換され、
12aは、水素、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアラルキル、置換または非置換のアリール、置換または非置換のシクロアルキル、および置換または非置換の複素環から選択されるメンバーであり、
およびR10は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ハロ、カルボニル、ヒドロキシイミノ、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリールチオ、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、アミノ、アルコキシ、ニトロ、スルホ、およびヒドロキシから選択されるメンバーであり、RまたはR10について列挙されるあらゆる部分のアルキルまたはアリール部分は任意に置換される)
を有する化合物、およびその薬学的に許容可能な塩と、
を含む局所医薬製剤。
【請求項2】
前記化合物が、以下の式、
【化2】

(式中、
Dは、NおよびCR12から選択されるメンバーである)
に従った構造を有する、請求項1に記載の局所医薬製剤。
【請求項3】
前記化合物が、以下の式、
【化3】

(式中、
Dは、O、S、およびNR12aから選択されるメンバーである)
に従った構造を有する、請求項1に記載の局所医薬製剤。
【請求項4】
前記薬学的に許容可能な局所キャリアが、化合物が可溶性である少なくとも1つの溶剤を含む、請求項1に記載の局所医薬製剤。
【請求項5】
前記薬学的に許容可能な局所キャリアが、化合物が少なくとも約10%wt/wtの溶解性を有する少なくとも1つの溶剤を含む、請求項1に記載の局所医薬製剤。
【請求項6】
前記溶剤が水と混和性である、請求項5に記載の局所医薬製剤。
【請求項7】
前記溶剤がジエチレングリコールモノエチルエーテルである、請求項6に記載の局所医薬製剤。
【請求項8】
前記局所医薬製剤中に溶解する化合物量を少なくとも約1%wt/wtと同等であるようにする量の水をさらに含む、請求項7に記載の局所医薬製剤。
【請求項9】
前記薬学的に許容可能な局所キャリアが、皮膚軟化剤、抗酸化剤、乳化剤、保存料、キレート剤、増粘剤、および中和剤を含む、請求項1に記載の局所医薬製剤。
【請求項10】
前記薬学的に許容可能な局所キャリアが、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)72)、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)721)、メチルパラベン、プロピルパラベン、EDTA、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10、25%トロラミン溶液、および水を含む、請求項9に記載の局所医薬製剤。
【請求項11】
が、水素であり、AがCHであり、DがCHであり、Eがヒドロキシであり、mが0である、請求項2に記載の局所医薬製剤。
【請求項12】
およびR**が、同一である、請求項11に記載の局所医薬製剤。
【請求項13】
およびR**が、置換または非置換のアリールである、請求項12に記載の局所医薬製剤。
【請求項14】
およびR**が、構造、
【化4】

(式中、
各R〜Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシ、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、ジアミノスルホニル、アルキルアミノスルホニル、アミノスルホニル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アミノ、2°−アミノ、3°−アミノ、アミノスルホニル、アミノアルキルオキシ、(アルキルアミノ)アルキルオキシ、(ジアルキルアミノ)アルキルオキシ、およびシクロヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、R〜Rについて列挙される各部分のアルキルまたはアリール部分は任意に置換される)
を有する置換または非置換のフェニルである、請求項13に記載の局所医薬製剤。
【請求項15】
およびR**が、それぞれ3−クロロ−4−メチルフェニルである、請求項14に記載の局所医薬製剤。
【請求項16】
前記化合物が、3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシ−ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボランである、請求項15に記載の局所医薬製剤。
【請求項17】
およびR**が、それぞれ2−メチル−4−クロロフェニルである、請求項14に記載の局所医薬製剤。
【請求項18】
化合物が、3−ヒドロキシピリジン−2−カルボニルオキシ−ビス(2−メチル−4−クロロフェニル)−ボランである、請求項17に記載の局所医薬製剤。
【請求項19】
角質化変性剤をさらに含む、請求項1に記載の局所医薬製剤。
【請求項20】
皮膚病状がある患者に治療的に有効量の請求項1に記載の局所医薬製剤を局所投与するステップを含む、患者を治療する方法。
【請求項21】
前記病状が炎症性病状である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記病状が座瘡である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記病状が二次感染した皮膚病状である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
皮膚軟化剤、抗酸化剤、乳化剤、保存料、キレート剤、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、増粘剤、中和剤、および水を含む、局所医薬製剤。
【請求項25】
前記皮膚軟化剤が、セチルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、およびステアリルアルコールの混合物であり、抗酸化剤がブチル化ヒドロキシトルエンであり、キレート剤がEDTAであり、保存料がメチルパラベンとプロピルパラベンの混合物であり、乳化剤がポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)72)とポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(ブリッジ(Brij)721)の組み合わせであり、前記増粘剤がカーボポール・ウルトレズ(CARBOPOL ULTREZ)10であり、前記中和剤がトロラミンである、局所医薬製剤。
【請求項26】
皮膚病状がある患者に、治療的に有効量の請求項24に記載の局所医薬製剤を局所投与するステップを含んでなる、患者を治療する方法。
【請求項27】
前記病状が掻痒症である、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2008−534514(P2008−534514A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503239(P2008−503239)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/010856
【国際公開番号】WO2006/102604
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(505465841)アナコール ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】