説明

ボルト結合方法

【課題】枠構造に使用される補強材において、必要な強度を確保しつつ、できるだけ軽量化を図ることができる補強材の構造及びそのボルト結合方法を実現することを目的とする。
【解決手段】補強材1の両端部にバーリング加工を行った2のような断面形状を有したボルト通し孔を備え、枠構造102側のボルト固定部104とともにボルト107及び締結用ナット108、座金109にてボルト結合を行うことにより従来の板厚でのボルト通し孔部の強度を確保しつつ、補強材の板厚をより薄いものにすることができるという効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体に鋼板製部材をボルト結合する場合において、構造体の自重もしくは外的な作用によりボルト結合部に引っ張りまたは圧縮応力などが発生する構造をもつボルト結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばビル用空調機では空調機の筐体は鋼材によって立方体の枠構造を形成し、その面にパネルを取り付けることにより箱型の形態を成している。筐体の内部には空調を行うためのコイルや送風機などの部材がとりつけられている。筐体の寸法が大きい場合もしくは筐体内の部材の質量が大きい場合は吊り上げ時や運搬、設置、運用時に筐体の変形を防止するために筐体内に補強材を追加する必要がある。この補強材の構造は曲げに対する強度を上げるために鋼板の断面形状をコの字状などに曲げ加工したものの両端にボルト通し孔を設け、その孔にて筐体の枠構造にボルト結合する方法が用いられている。
【0003】
以下、その補強材の構造およびボルト結合方法について図9および図10を参照しながら説明する。
【0004】
図9および図10に示すように、筐体101の枠102を補強するための補強材103は鋼板を用いて断面形状をコの字状とすることにより所定の強度を満たすようになっている。この補強材103を枠102と結合するために補強材103の両端にボルト通し孔105を設け、また枠102側にもボルト固定部104にボルト通し孔106を設ける。この孔にボルト107を通してナット108、座金109を用いて締結することにより枠102と補強材103を結合する。
【0005】
あるいは、一般に、金属薄板をタッピングネジによってを結合する場合、雌ネジと結合部材との螺合する長さを確保するためにバーリング加工を施すことが行われている。
【特許文献1】特開2001−214911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の補強材103に荷重が作用したとき、仮にボルトの締付力が十分でない場合はボルト通し孔近傍にせん断応力が発生する。このため、補強材103の板厚はボルト通し孔近傍のせん断応力が許容値以下になるものを選定する必要がある。一方で枠102を支えるために必要な補強材103の板厚は断面形状を工夫することにより、より薄いものを選定することが可能である。しかしながら実際には前述の通りボルト通し孔105の強度を確保するのに必要な板厚を選定せざるを得ないという課題がある。環境に対する負荷の軽減が求められている現在では必要な強度を確保しつつ、できるだけ軽量化を図ることが省資源、省エネルギーの観点から重要視されている。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、必要な強度を確保しつつ、補強材の材料使用量を極少化することができ、また、構造物全体の質量を低減することにより運搬、設置、運用時に必要なエネルギーの低減を図ることができる補強材の構造および結合方法を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を解決するための第1の手段は、二つの鋼板材料をボルト結合する方法において、一方の鋼板材料のボルト通し孔にバーリング加工し、ボルトとナットで結合するものである。
【0009】
上記手段により、薄い鋼板材料におけるボルト結合部の強度をあげることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば必要な強度を確保しつつ、補強材の材料使用量を極少化することができるボルト結合方法を実現できる。
【0011】
また、構造物全体の質量を低減することにより運搬、設置、運用時に必要なエネルギーの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の請求項1記載の内容は、二つの鋼板材料をボルト結合する方法において、一方の鋼板材料のボルト通し孔にバーリング加工し、ボルトとナットで結合するものであり、薄い鋼板材料におけるボルト結合部の強度をあげることができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1および図2を用いて、薄板を曲げ加工した補強材1と枠102との結合において本発明の第1実施の形態を説明する。図1、2に示すように、補強材1の端部には、ボルト通し孔11が設けられている。このボルト通し孔11は、補強材1が枠102と当接する面と反対側に突出するバーリング加工(バーリング加工部2)が施されている。一方、枠102側には、ボルト固定部104が設けられ、ボルト固定部104にボルト通し孔106が開けられている。補強材1と枠102は、ボルト通し孔11とボルト通し孔106とにボルト107を通し、締結用のナット108、座金109にてボルト結合を行う。
【0015】
上記構成によれば、補強材1のバーリング加工部2は、断面形状がボルト107の頭側に突出しており、ボルト107、ナット108は、補強材1をその板厚でなく、バーリング加工の突出部分で挟み込んでいる。そのため、ボルト通し孔近傍の補強材1の断面積はバーリング加工を行った分だけ大きくなっているので、バーリング加工を行わない場合よりもボルト通し孔近傍のせん断応力が許容値に達するまでに補強材1にかけることができる加重を大きくすることが可能となる。これによりボルト通し孔11部の強度を上げることになる。従って、補強材1の板厚を厚くすることなく、より薄いものによって結合強度を確保することができるようになる。
【0016】
このようなボルト通し孔に施すバーリング加工は、接合する2つの鋼板材料のうち、薄いものに施すとよい。
【0017】
なお、枠102側のボルト固定部104のボルト通し孔106にもバーリング加工を施すことによりボルト固定部104においても強度を向上させることができる。
【0018】
(実施の形態2)
図3および図4を用いて本発明の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同様、補強材1の端部には、バーリング加工(バーリング加工部2)を施したボルト通し孔21が設けられている。このバーリング加工部2には、その突出部分の外径に合わせた穴径をもつ鋼板製金具3をにはめ合わせる。
【0019】
一方、枠102側には、ボルト固定部104が設けられ、ボルト固定部104にボルト通し孔106が開けられている。補強材1と枠102は、ボルト通し孔21、すなわち、補強材1のバーリング加工部2とそれにはめ合わせた鋼板製金具3とボルト通し孔106とにボルト107を通し、締結用のナット108、座金109にてボルト結合を行う。
【0020】
上記構成によれば、バーリング立ち上げ高さaを鋼板製金具板厚bよりわずかに低くすることによりボルトの締付力を鋼板製金具3で受けることができるようになり、十分な締付力を得ることができるようになる。また、荷重によりボルト通し孔近傍に発生するせん断力は、ボルト通し孔近傍の補強材1の断面だけでなく、鋼板製金具3の断面によっても受けることになるので、バーリング加工のみの場合よりもさらに大きな荷重に耐えることが出来る。
【0021】
なお、鋼板製金具3は、図5、図6に示すように平座金4を用いれば、専用の鋼板を製作する必要がなくなり、より安価に目的の作用を実現することができる。
【0022】
(実施の形態3)
図7および図8に示すように、補強材5両端部の一部をヘミング曲げ加工し、ヘミング曲げ部6の鋼材が重なる部分にボルト通し孔7を設ける。
【0023】
枠102側のボルト固定部104にはボルト通し孔106があり、補強材5のボルト通し孔7とボルト107及び締結用のナット108、座金109にてボルト結合を行う。
【0024】
上記構成において、補強材5のボルト通し孔7の構造により従来の板厚でのボルト通し孔部の強度を確保しつつ、補強材の板厚をより薄いものにすることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
枠構造を有する構造体に鋼板を曲げ加工した補強材を結合することにより全体の強度を確保する構造体に対して、結合部の構造に本発明を用いることにより容易に補強材の省資源化、省エネルギー化を図ることができるため、枠構造を有する設備(例えばビル用空調機の筐体や、枠構造を有する水槽等)に幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示す構成図
【図2】同ボルト結合部の断面図
【図3】本発明の実施の形態2の構成を示す構成図
【図4】同ボルト結合部の断面図
【図5】本発明の実施の形態2の構成を示す構成図
【図6】同ボルト結合部の断面図
【図7】本発明の実施の形態3の構成を示す構成図
【図8】同ボルト結合部の断面図
【図9】従来の補強材固定部の構成図
【図10】同ボルト結合部の断面図
【符号の説明】
【0027】
1 補強材
2 バーリング加工部
3 鋼板製金具
4 平座金
5 補強材
6 ヘミング曲げ部
7 ボルト通し孔
11 ボルト通し孔
21 ボルト通し孔
a バーリング立ち上げ高さ
b 鋼板製金具板厚
c 平座金板厚
101 筐体
102 枠
103 補強材
104 ボルト固定部
105 ボルト通し孔
106 ボルト通し孔
107 ボルト
108 ナット
109 座金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの鋼板材料をボルト結合する方法において、一方の鋼板材料のボルト通し孔にバーリング加工し、ボルトとナットで結合するボルト結合方法。
【請求項2】
二つの鋼板材料のうち、薄い方の鋼板材料にバーリング加工を施した請求項1記載のボルト結合方法。
【請求項3】
バーリング加工部の外径に合わせた穴径をもつ鋼板製金具をバーリング加工部にはめ合わせた上でボルトとナットで結合する請求項1記載のボルト結合方法。
【請求項4】
前記鋼板製金具は、ボルト結合用平座金である請求項3記載のボルト結合方法。
【請求項5】
二つの鋼板材料をボルト結合する方法において、一方の鋼板材料のボルト結合部の一部をヘミング曲げ加工し、このヘミング曲げ部の鋼材が重なる部分にボルト通し孔を設け、ボルトとナットで結合するボルト結合方法。
【請求項6】
二つの鋼板材料のうち、薄い方の鋼板材料にヘミング曲げ加工を施した請求項5記載のボルト結合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−204081(P2009−204081A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47063(P2008−47063)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】