ボルト締結構造
【課題】 ベース部材及び板状部材間、且つ板状部材及びボルト間に電食が起きる点を解決し、ベース部材及び板状部材間、且つ板状部材及びボルト間の電食を簡易に防止することを可能にする。
【解決手段】 絶縁ワッシャ部材43が、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、絶縁ワッシャ部材43に、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51と、この上部ワッシャ本体51に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔53と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52と、この下部ワッシャ本体52に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔54と、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55と、を備えた。
【解決手段】 絶縁ワッシャ部材43が、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、絶縁ワッシャ部材43に、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51と、この上部ワッシャ本体51に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔53と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52と、この下部ワッシャ本体52に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔54と、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材に第2の部材を絶縁しつつボルトで締結するボルト締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルト締結構造として、特定金属材料で形成した第1の部材に特定金属とは異なる金属材料で形成した第2の部材を取付けるボルト締結構造が実用に供されている。
実用のボルト締結構造は、特定金属材料で形成した第1の部材と特定金属とは異なる金属材料で形成した第2の部材との間に絶縁ワッシャを介在させれば実用上十分であった。
【0003】
このようなボルト締結構造として、ディスクブレーキ固定部とナックルとの間に絶縁ワッシャを介在させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−303906号公報(第5頁、図1)
【0004】
図12は従来の基本構成を説明する図であり、ボルト締結構造200は、第1の部材(ディスクブレーキ固定部)202を鋼材で形成し、この第1の部材202に座ぐり孔203を設け、この座ぐり孔203に嵌め込む絶縁ワッシャ204を絶縁材料で形成し、第1の部材202に取付ける第2の部材(ナックル)205をアルミニウム合金で形成し、第1の部材202に絶縁ワッシャ204を介して第2の部材205をボルト206にて固定したものである。
【0005】
しかし、ボルト締結構造では、第1の部材(ディスクブレーキ固定部)202と第2の部材(ナックル)205との間に絶縁ワッシャを介在させたものであり、一般的にボルト206は鋼材なので、このボルト206を介して第1の部材202と第2の部材205との間に電食が起こるという欠点があった。すなわち、第2の部材205とボルト206との間に電食が起こる。
【0006】
また、この電食を防止するためにボルト205と第2の部材205との間に別の絶縁ワッシャを追加するのでは、作業性の悪化を招くことになり、ボルトに絶縁被膜を施すのでは、コストの高騰を招くことになる。
【0007】
さらに、ボルト締結構造200では、第1の部材202の座ぐり孔203に絶縁ワッシャ204を嵌め込む際に、絶縁ワッシャ204に接着材を塗布して接着するものなので、絶縁ワッシャ204を嵌め込む作業が困難であり、第2の部材(ナックル)205の組立性を損なうという問題もあった。
【0008】
すなわち、第1の部材及び第2の部材間の電食、且つ第2の部材及びボルト間の電食を簡易に防止することができるとともに、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるボルト締結構造が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ベース部材(前述した「第1の部材」に相当する)及び板状部材(前述した「第2の部材」に相当する)間、且つ板状部材及びボルト間に電食が起きる点を解決し、ベース部材及び板状部材間、且つ板状部材及びボルト間の電食を簡易に防止することができるとともに、ベース部材及び板状部材間、且つ板状部材及びボルト間の電食を防止する際に作業性が悪化する点を解決し、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるボルト締結構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、特定金属材料にて形成したベース部材と、このベース部材に取付けるために特定金属材料とは異なる金属材料にて形成した板状部材と、これらのベース部材と板状部材との間に介在させる絶縁ワッシャ部材と、これらのベース部材、板状部材及び絶縁ワッシャ部材を一体的に結合するボルトと、からなるボルト締結構造において、絶縁ワッシャ部材が、板状部材に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、絶縁ワッシャ部材に、板状部材の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体と、この上部ワッシャ本体に形成することで板状部材のボルト貫通孔に臨ます上面孔と、板状部材の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体と、この下部ワッシャ本体に形成することでボルト貫通孔に臨ます下面孔と、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
例えば、第1の部材(ベース部材)及び第2の部材(板状部材)間の電食、且つ第2の部材(板状部材)及びボルト間の電食を簡易に防止できるとすれば、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるので好ましいことである。
【0012】
そこで、絶縁ワッシャ部材を、板状部材に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップに構成し、上部ワッシャ本体で板状部材の上面を覆い、下部ワッシャ本体で板状部材の下面を覆い、板状部材のボルト貫通孔に上面孔及び下面孔を臨ませ、ベース部材に板状部材をボルトで締結することで、板状部材及びベース部材間、且つ板状部材及びボルト間を絶縁するようにした。
【0013】
絶縁ワッシャ部材に、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部を設けることで、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を連結する。
【0014】
請求項2に係る発明は、上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成したことを特徴とする。
上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成することで、ボルト貫通孔のエッジとボルトの側面との接触を確実に防止するようにした。
また、ボルト貫通孔に縦壁部を嵌合させるようにすることで、縦壁部に位置決め機能を持たす。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、絶縁ワッシャ部材に、板状部材の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体と、この上部ワッシャ本体に形成することで板状部材のボルト貫通孔に臨ます上面孔と、板状部材の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体と、この下部ワッシャ本体に形成することでボルト貫通孔に臨ます下面孔と、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部と、を備えたので、板状部材及びベース部材間、且つ板状部材及びボルト間を絶縁を容易に行うことができる。
【0016】
この結果、板状部材及びベース部材間、且つ板状部材及びボルト間の電食を簡易に防止することができ、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるという利点がある。
【0017】
絶縁ワッシャ部材に、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部を設けたので、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を連結することができる。
この結果、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を一体的に形成することができ、部品点数の低減を図ることができる。さらに、電食を防止するためのコストの低減を図ることができるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成したので、ボルト貫通孔のエッジとボルトの側面との接触を確実に防止することができる。
この結果、例えば、ボルトに絶縁被膜などの表面処理を施す必要はないので、電食防止のためにかかるコストの増加を抑えることができるという利点がある。
また、ボルト貫通孔に縦壁部を嵌合させるようにしたので、縦壁部に位置決め機能を持たすことができる。この結果、ベース部材に板状部材を締結する際の作業性の向上を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るボルト締結構造を採用した車両の斜視図であり、10は車両、11は車体、12はフロントボデー、13はフロントバンパ、14はフロントグリル、15は前照灯、16はボンネット、42は板状部材としてのフロントフェンダ、18は前輪、19はドアミラー、21はルーフ、22は前ドア、23は後ドア、24は後輪、25はリヤバンパ、26はトランクリッド、27はフロントウインドである。
ボルト締結構造40は、後述するように、車体11側にフロントフェンダ42を固定するための締結構造である。
【0020】
図2は本発明に係るボルト締結構造を採用した車両のフロントボデーの斜視図である。
フロントボデー12は、左右のサイドフレーム31,31の先端近くにそれぞれ左右の縦フレーム32,32を取付け、これらの左右の縦フレーム32,32の上端同士にアッパクロスメンバ33を渡し、左右の縦フレーム32,32の下端同士にロアクロスメンバ34を渡し、これらのアッパ・ロアクロスメンバ33,34の中央にセンタ縦フレーム35を渡し、アッパクロスメンバ33の左右端部からそれぞれベース部材としての左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41を延ばし、これらの左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41の先端同士にダッシュボード37を渡し、左右のサイドフレーム31,31及び左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41の間にそれぞれ左右のダンパハウジング38,38を設け、左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41にそれぞれ左右のフロントフェンダ42,42を取付けるものである。
図中、39は、左右の縦フレーム32,32、アッパ・ロアクロスメンバ33,34及びセンタ縦フレーム35で構成するバルクヘッドを示す。
【0021】
以下、フロントホイールハウスアッパメンバ41を「ベース部材41」と記載するとともに、フロントフェンダ42を「板状部材42」を記載し、ボルト締結構造40を詳細に説明する。
【0022】
図3は本発明に係るボルト締結構造の分解斜視図であり、ボルト締結構造40は、特定金属材料としての鋼材でベース部材41形成し、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)で板状部材42形成し、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させるために樹脂(絶縁材料)にて絶縁ワッシャ部材43を形成し、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43をボルト44で一体的に結合するものである。
【0023】
ベース部材41は、ボルト44をねじ込む角形のナット45と、このナット45を臨ませる孔48と、を備える。
また、板状部材42は、絶縁ワッシャ部材43を差込むエッジ部46と、ボルト44を貫通させるボルト貫通孔47と、を備えたものである。なお、ボルト44はフランジ付のボルトである。
【0024】
図4は図3の4−4線断面図であり、絶縁ワッシャ部材43の断面を示す。
絶縁ワッシャ部材43は、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51にボルト貫通孔47に臨ます上面孔53を形成し、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52にボルト貫通孔47に臨ます下面孔54を形成し、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を連結部55で繋ぎ、上面孔53の周りにボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部としての上縦壁部57を形成し、下面孔54の周りにボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部としての下縦壁部58を形成し、上部ワッシャ本体51に板状部材42に嵌合するときの案内部56を形成したものである。
【0025】
図5は図1の5−5線断面図であり、ボルト締結構造40は、特定金属材料(鋼材)にて形成したベース部材(第1の部材)41と、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて形成した板状部材(第2の部材)42と、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させる絶縁ワッシャ部材43と、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43を一体的に結合するボルト44と、からなるボルト締結構造において、絶縁ワッシャ部材43が、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、絶縁ワッシャ部材43に、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51と、この上部ワッシャ本体51に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔53と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52と、この下部ワッシャ本体52に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔54と、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55と、を備えたものと言える。
【0026】
例えば、第1の部材(ベース部材)及び第2の部材(板状部材)間の電食、且つ第2の部材(板状部材)及びボルト間の電食を簡易に防止できるとすれば、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるので好ましいことである。
【0027】
そこで、絶縁ワッシャ部材43を、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップに構成し、上部ワッシャ本体51で板状部材42の上面を覆い、下部ワッシャ本体52で板状部材42の下面を覆い、板状部材42のボルト貫通孔47に上面孔53及び下面孔54を臨ませ、ベース部材41に板状部材42をボルト44で締結することで、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト44間を絶縁するようにした。
【0028】
すなわち、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51と、この上部ワッシャ本体51に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔53と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52と、この下部ワッシャ本体52に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔54と、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55と、を備えることで、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト44間を絶縁を容易に行うことができる。
【0029】
この結果、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト42間の電食を簡易に防止することができ、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができる。
【0030】
絶縁ワッシャ部材43に、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55を設けることで、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を連結することができる。この結果、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を一体的に形成することができ、部品点数の低減を図ることができる。さらに、電食を防止するためのコストの低減を図ることができる。
【0031】
ボルト締結構造40は、上面孔53及び下面孔54の周りに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う上・下縦壁部(縦壁部)57,58を形成したものとも言える。
上面孔53及び下面孔54の周りに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う上・下縦壁部(縦壁部)57,58を形成することで、ボルト貫通孔47のエッジ47aとボルト44の側面との接触を確実に防止することができる。
この結果、例えば、ボルト44に絶縁被膜などの表面処理を施す必要はないので、電食防止のためにかかるコストの増加を抑えることができる。
【0032】
また、ボルト締結構造40は、ボルト貫通孔47に上・下縦壁部(縦壁部)57,58を嵌合させるようにしたので、上・下縦壁部57,58に位置決め機能を持たすことができる。この結果、ベース部材41に板状部材42を締結する際の作業性の向上を図ることができる。
【0033】
また、ボルト締結構造40は、ベース部材41を特定金属材料(鋼材)にて形成し、板状部材42を特定金属材料とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて形成し、ボルト44を特定金属材料(鋼材)にて形成し、鋼材とアルミニウム合金との間を板状部材42で絶縁したので、鋼材(ベース部材41及びボルト44)とアルミニウム合金(板状部材42)との電食を防止することができるとも言える。
【0034】
図6(a),(b)は本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する前の作用説明図である。
(a)において、鋼材にて形成したベース部材41と、このベース部材41に取付けるためにアルミニウム合金にて形成した板状部材42と、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させる絶縁ワッシャ部材43と、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43を一体的に結合するボルト44と、を用意する。
【0035】
(b)において、板状部材42に絶縁ワッシャ部材43を矢印a1の如く嵌合させる。 これにより、板状部材42のボルト貫通孔47のエッジ47a、板状部材42の上面の一部、板状部材42の下面の一部を覆うことができる。この結果、板状部材42にボルト44が接触することを防止することができる。
【0036】
図7(a),(b)は本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する後の作用説明図である。
(a)において、ベース部材41に絶縁ワッシャ部材43を嵌合済みの板状部材42を矢印a2の如く載置する。板状部材42に絶縁ワッシャ部材43を嵌合させたので、ベース部材41に板状部材42が接触することはない。
【0037】
(b)において、ベース部材41のナット45に矢印a3の如くボルト44をねじ込むことで、このボルト44でベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43を一体的に結合する。
すなわち、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップに構成し、上部ワッシャ本体51で板状部材42の上面を覆い、下部ワッシャ本体52で板状部材42の下面を覆い、板状部材42のボルト貫通孔47に上面孔53及び下面孔54を臨ませ、ベース部材41に板状部材42をボルト44で締結することで、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト44間を絶縁することができる。
【0038】
図8は本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の分解斜視図であり、ボルト締結構造40(図3参照)と同一部品は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
ボルト締結構造60は、特定金属材料としての鋼材にてベース部材(第1の部材)41形成し、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて板状部材(第2の部材)42形成し、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させるために樹脂(絶縁材料)にて絶縁ワッシャ部材63形成し、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材63をボルト44で一体的に結合するものであり、絶縁ワッシャ部材63の上部ワッシャ本体71側に縦壁部77を設けたものである。
【0039】
図9は本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の断面図であり、詳細には、絶縁ワッシャ部材63は、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップにであり、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体71と、この上部ワッシャ本体71に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔73と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体72と、この下部ワッシャ本体72に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔74と、上部ワッシャ本体71及び下部ワッシャ本体72を繋ぐ連結部75と、を備え、上面孔73の周りに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部77を形成し、上部ワッシャ本体71に板状部材42に嵌合するときの案内部76を形成したものである。
【0040】
すなわち、ボルト締結構造60は、上面孔73の周りにのみに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部77を形成することで、絶縁ワッシャ部材63の金型を簡易に(シンプルに)形成することができる。この結果、金型費の低減を図ることができる。
【0041】
図10は本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の分解斜視図であり、ボルト締結構造40(図3参照)と同一部品は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
ボルト締結構造80は、特定金属材料としての鋼材にてベース部材(第1の部材)41形成し、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて板状部材(具体的にはフロントフェンダである第2の部材)82形成し、これらのベース部材41と板状部材82との間に介在させるために樹脂(絶縁材料)にて絶縁ワッシャ部材83形成し、これらのベース部材41、板状部材82及び絶縁ワッシャ部材83をボルト44で一体的に結合するものである。
【0042】
板状部材(第2の部材)82は、絶縁ワッシャ部材83を差込むエッジ部86と、ボルト44を貫通させるボルト貫通孔87と、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする位置決め孔88と、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする切り欠き89を形成した。図中、87aはボルト貫通孔87のエッジを示す。
【0043】
図11は本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の断面図であり、絶縁ワッシャ部材83は、板状部材82に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、板状部材82の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体91と、板状部材82の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体92と、上部ワッシャ本体91及び下部ワッシャ本体92を繋ぐ連結部95と、を備える。
【0044】
上部ワッシャ本体91は、板状部材82のボルト貫通孔87に臨ます上面孔93と、
板状部材82の位置決め孔に嵌合させる位置決めボス97と、板状部材82の切り欠きに嵌合させる突起98と、板状部材82に嵌合するときの案内部96と、を形成したものである。
【0045】
下部ワッシャ本体92は、ボルト貫通孔87に臨ます下面孔94と、位置決めボス97を臨ます逃げ孔99とを形成した。
上面孔93及び下面孔94はボルト貫通孔87よりも小径に形成した孔である。
【0046】
ボルト締結構造80は、板状部材82に、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする位置決め孔88と、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする切り欠き89を形成し、上部ワッシャ本体91に、板状部材82の位置決め孔88に嵌合させる位置決めボス97と、板状部材82の切り欠きに嵌合させる突起98と、を形成したので、ボルト44の締付け時の板状部材82の回転止め機能を強固にすることができる。この結果、板状部材82の位置決め性の向上を図ることができ、組立時の見栄え(セット性)を向上させることができる。
【0047】
尚、本発明に係るボルト締結構造は、図2に示すように、ベース部材41はフロントホイールハウスアッパメンバであり、板状部材42はフロントフェンダであったが、これに限るものではなく、ベース部材である第1の部材に板状部材(板状の部材のみならずブロック状の部材を含む)である第2の部材をボルトで締結する構造であればよい。
【0048】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、板状部材42を特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)で形成したが、これに限るものではなく、アルミニウム合金は、アルミニウム若しくはマグネシウム合金であってもよい。
【0049】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、絶縁ワッシャ部材43を樹脂にて形成したが、これに限るものではなく、絶縁ワッシャ部材は、絶縁材料ならばよく、紙若しくはゴム等であってもよい。
【0050】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、ボルト44にフランジ付のボルトを用いたが、これに限るものではなく、フランジのないボルト若しくはタッピンねじ等を含む締結手段であってもよい。
【0051】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、ベース部材41にボルト44をねじ込むナットを溶接したが、これに限るものではなく、例えば、ねじ孔若しくはバーリングを形成し、ボルト(タッピンねじを含む)をねじ込むように形成したものであってもよい。
【0052】
本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造は、図9に示すように、上面孔73の周りに縦壁部77を設けたが、これに限るものではなく、下面孔の周りに縦壁部を設けたものであってもよい。
【0053】
本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造は、図11に示すように、上部ワッシャ本体91に位置決めボス97を形成したが、これに限るものではなく、下部ワッシャ本体に位置決めボスを形成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るボルト締結構造は、異種金属にて形成した部材の締結構造これに限るものではなく、に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るボルト締結構造を採用した車両の斜視図 である。
【図2】本発明に係るボルト締結構造を採用した車両のフロントボデーの斜視図である。
【図3】本発明に係るボルト締結構造の分解斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する前の作用説明図である。
【図7】本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する後の作用説明図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の分解斜視図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の断面図である。
【図10】本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の分解斜視図である。
【図11】本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の断面図である。
【図12】従来の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
40…ボルト締結構造、41…ベース部材(フロントホイールハウスアッパメンバ)、42…板状部材(フロントフェンダ)、43…絶縁ワッシャ部材、44…ボルト、47…ボルト貫通孔、47a…エッジ、51…上部ワッシャ本体、52…下部ワッシャ本体、53…上面孔、54…下面孔、55…連結部、57,58…縦壁部(上・下縦壁部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の部材に第2の部材を絶縁しつつボルトで締結するボルト締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルト締結構造として、特定金属材料で形成した第1の部材に特定金属とは異なる金属材料で形成した第2の部材を取付けるボルト締結構造が実用に供されている。
実用のボルト締結構造は、特定金属材料で形成した第1の部材と特定金属とは異なる金属材料で形成した第2の部材との間に絶縁ワッシャを介在させれば実用上十分であった。
【0003】
このようなボルト締結構造として、ディスクブレーキ固定部とナックルとの間に絶縁ワッシャを介在させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−303906号公報(第5頁、図1)
【0004】
図12は従来の基本構成を説明する図であり、ボルト締結構造200は、第1の部材(ディスクブレーキ固定部)202を鋼材で形成し、この第1の部材202に座ぐり孔203を設け、この座ぐり孔203に嵌め込む絶縁ワッシャ204を絶縁材料で形成し、第1の部材202に取付ける第2の部材(ナックル)205をアルミニウム合金で形成し、第1の部材202に絶縁ワッシャ204を介して第2の部材205をボルト206にて固定したものである。
【0005】
しかし、ボルト締結構造では、第1の部材(ディスクブレーキ固定部)202と第2の部材(ナックル)205との間に絶縁ワッシャを介在させたものであり、一般的にボルト206は鋼材なので、このボルト206を介して第1の部材202と第2の部材205との間に電食が起こるという欠点があった。すなわち、第2の部材205とボルト206との間に電食が起こる。
【0006】
また、この電食を防止するためにボルト205と第2の部材205との間に別の絶縁ワッシャを追加するのでは、作業性の悪化を招くことになり、ボルトに絶縁被膜を施すのでは、コストの高騰を招くことになる。
【0007】
さらに、ボルト締結構造200では、第1の部材202の座ぐり孔203に絶縁ワッシャ204を嵌め込む際に、絶縁ワッシャ204に接着材を塗布して接着するものなので、絶縁ワッシャ204を嵌め込む作業が困難であり、第2の部材(ナックル)205の組立性を損なうという問題もあった。
【0008】
すなわち、第1の部材及び第2の部材間の電食、且つ第2の部材及びボルト間の電食を簡易に防止することができるとともに、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるボルト締結構造が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ベース部材(前述した「第1の部材」に相当する)及び板状部材(前述した「第2の部材」に相当する)間、且つ板状部材及びボルト間に電食が起きる点を解決し、ベース部材及び板状部材間、且つ板状部材及びボルト間の電食を簡易に防止することができるとともに、ベース部材及び板状部材間、且つ板状部材及びボルト間の電食を防止する際に作業性が悪化する点を解決し、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるボルト締結構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、特定金属材料にて形成したベース部材と、このベース部材に取付けるために特定金属材料とは異なる金属材料にて形成した板状部材と、これらのベース部材と板状部材との間に介在させる絶縁ワッシャ部材と、これらのベース部材、板状部材及び絶縁ワッシャ部材を一体的に結合するボルトと、からなるボルト締結構造において、絶縁ワッシャ部材が、板状部材に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、絶縁ワッシャ部材に、板状部材の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体と、この上部ワッシャ本体に形成することで板状部材のボルト貫通孔に臨ます上面孔と、板状部材の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体と、この下部ワッシャ本体に形成することでボルト貫通孔に臨ます下面孔と、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
例えば、第1の部材(ベース部材)及び第2の部材(板状部材)間の電食、且つ第2の部材(板状部材)及びボルト間の電食を簡易に防止できるとすれば、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるので好ましいことである。
【0012】
そこで、絶縁ワッシャ部材を、板状部材に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップに構成し、上部ワッシャ本体で板状部材の上面を覆い、下部ワッシャ本体で板状部材の下面を覆い、板状部材のボルト貫通孔に上面孔及び下面孔を臨ませ、ベース部材に板状部材をボルトで締結することで、板状部材及びベース部材間、且つ板状部材及びボルト間を絶縁するようにした。
【0013】
絶縁ワッシャ部材に、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部を設けることで、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を連結する。
【0014】
請求項2に係る発明は、上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成したことを特徴とする。
上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成することで、ボルト貫通孔のエッジとボルトの側面との接触を確実に防止するようにした。
また、ボルト貫通孔に縦壁部を嵌合させるようにすることで、縦壁部に位置決め機能を持たす。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、絶縁ワッシャ部材に、板状部材の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体と、この上部ワッシャ本体に形成することで板状部材のボルト貫通孔に臨ます上面孔と、板状部材の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体と、この下部ワッシャ本体に形成することでボルト貫通孔に臨ます下面孔と、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部と、を備えたので、板状部材及びベース部材間、且つ板状部材及びボルト間を絶縁を容易に行うことができる。
【0016】
この結果、板状部材及びベース部材間、且つ板状部材及びボルト間の電食を簡易に防止することができ、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるという利点がある。
【0017】
絶縁ワッシャ部材に、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部を設けたので、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を連結することができる。
この結果、上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を一体的に形成することができ、部品点数の低減を図ることができる。さらに、電食を防止するためのコストの低減を図ることができるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成したので、ボルト貫通孔のエッジとボルトの側面との接触を確実に防止することができる。
この結果、例えば、ボルトに絶縁被膜などの表面処理を施す必要はないので、電食防止のためにかかるコストの増加を抑えることができるという利点がある。
また、ボルト貫通孔に縦壁部を嵌合させるようにしたので、縦壁部に位置決め機能を持たすことができる。この結果、ベース部材に板状部材を締結する際の作業性の向上を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るボルト締結構造を採用した車両の斜視図であり、10は車両、11は車体、12はフロントボデー、13はフロントバンパ、14はフロントグリル、15は前照灯、16はボンネット、42は板状部材としてのフロントフェンダ、18は前輪、19はドアミラー、21はルーフ、22は前ドア、23は後ドア、24は後輪、25はリヤバンパ、26はトランクリッド、27はフロントウインドである。
ボルト締結構造40は、後述するように、車体11側にフロントフェンダ42を固定するための締結構造である。
【0020】
図2は本発明に係るボルト締結構造を採用した車両のフロントボデーの斜視図である。
フロントボデー12は、左右のサイドフレーム31,31の先端近くにそれぞれ左右の縦フレーム32,32を取付け、これらの左右の縦フレーム32,32の上端同士にアッパクロスメンバ33を渡し、左右の縦フレーム32,32の下端同士にロアクロスメンバ34を渡し、これらのアッパ・ロアクロスメンバ33,34の中央にセンタ縦フレーム35を渡し、アッパクロスメンバ33の左右端部からそれぞれベース部材としての左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41を延ばし、これらの左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41の先端同士にダッシュボード37を渡し、左右のサイドフレーム31,31及び左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41の間にそれぞれ左右のダンパハウジング38,38を設け、左右のフロントホイールハウスアッパメンバ41,41にそれぞれ左右のフロントフェンダ42,42を取付けるものである。
図中、39は、左右の縦フレーム32,32、アッパ・ロアクロスメンバ33,34及びセンタ縦フレーム35で構成するバルクヘッドを示す。
【0021】
以下、フロントホイールハウスアッパメンバ41を「ベース部材41」と記載するとともに、フロントフェンダ42を「板状部材42」を記載し、ボルト締結構造40を詳細に説明する。
【0022】
図3は本発明に係るボルト締結構造の分解斜視図であり、ボルト締結構造40は、特定金属材料としての鋼材でベース部材41形成し、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)で板状部材42形成し、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させるために樹脂(絶縁材料)にて絶縁ワッシャ部材43を形成し、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43をボルト44で一体的に結合するものである。
【0023】
ベース部材41は、ボルト44をねじ込む角形のナット45と、このナット45を臨ませる孔48と、を備える。
また、板状部材42は、絶縁ワッシャ部材43を差込むエッジ部46と、ボルト44を貫通させるボルト貫通孔47と、を備えたものである。なお、ボルト44はフランジ付のボルトである。
【0024】
図4は図3の4−4線断面図であり、絶縁ワッシャ部材43の断面を示す。
絶縁ワッシャ部材43は、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51にボルト貫通孔47に臨ます上面孔53を形成し、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52にボルト貫通孔47に臨ます下面孔54を形成し、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を連結部55で繋ぎ、上面孔53の周りにボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部としての上縦壁部57を形成し、下面孔54の周りにボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部としての下縦壁部58を形成し、上部ワッシャ本体51に板状部材42に嵌合するときの案内部56を形成したものである。
【0025】
図5は図1の5−5線断面図であり、ボルト締結構造40は、特定金属材料(鋼材)にて形成したベース部材(第1の部材)41と、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて形成した板状部材(第2の部材)42と、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させる絶縁ワッシャ部材43と、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43を一体的に結合するボルト44と、からなるボルト締結構造において、絶縁ワッシャ部材43が、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、絶縁ワッシャ部材43に、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51と、この上部ワッシャ本体51に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔53と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52と、この下部ワッシャ本体52に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔54と、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55と、を備えたものと言える。
【0026】
例えば、第1の部材(ベース部材)及び第2の部材(板状部材)間の電食、且つ第2の部材(板状部材)及びボルト間の電食を簡易に防止できるとすれば、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができるので好ましいことである。
【0027】
そこで、絶縁ワッシャ部材43を、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップに構成し、上部ワッシャ本体51で板状部材42の上面を覆い、下部ワッシャ本体52で板状部材42の下面を覆い、板状部材42のボルト貫通孔47に上面孔53及び下面孔54を臨ませ、ベース部材41に板状部材42をボルト44で締結することで、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト44間を絶縁するようにした。
【0028】
すなわち、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体51と、この上部ワッシャ本体51に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔53と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体52と、この下部ワッシャ本体52に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔54と、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55と、を備えることで、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト44間を絶縁を容易に行うことができる。
【0029】
この結果、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト42間の電食を簡易に防止することができ、電食を防止する際に組立の作業性の低下を最小限に止めることができる。
【0030】
絶縁ワッシャ部材43に、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を繋ぐ連結部55を設けることで、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を連結することができる。この結果、上部ワッシャ本体51及び下部ワッシャ本体52を一体的に形成することができ、部品点数の低減を図ることができる。さらに、電食を防止するためのコストの低減を図ることができる。
【0031】
ボルト締結構造40は、上面孔53及び下面孔54の周りに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う上・下縦壁部(縦壁部)57,58を形成したものとも言える。
上面孔53及び下面孔54の周りに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う上・下縦壁部(縦壁部)57,58を形成することで、ボルト貫通孔47のエッジ47aとボルト44の側面との接触を確実に防止することができる。
この結果、例えば、ボルト44に絶縁被膜などの表面処理を施す必要はないので、電食防止のためにかかるコストの増加を抑えることができる。
【0032】
また、ボルト締結構造40は、ボルト貫通孔47に上・下縦壁部(縦壁部)57,58を嵌合させるようにしたので、上・下縦壁部57,58に位置決め機能を持たすことができる。この結果、ベース部材41に板状部材42を締結する際の作業性の向上を図ることができる。
【0033】
また、ボルト締結構造40は、ベース部材41を特定金属材料(鋼材)にて形成し、板状部材42を特定金属材料とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて形成し、ボルト44を特定金属材料(鋼材)にて形成し、鋼材とアルミニウム合金との間を板状部材42で絶縁したので、鋼材(ベース部材41及びボルト44)とアルミニウム合金(板状部材42)との電食を防止することができるとも言える。
【0034】
図6(a),(b)は本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する前の作用説明図である。
(a)において、鋼材にて形成したベース部材41と、このベース部材41に取付けるためにアルミニウム合金にて形成した板状部材42と、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させる絶縁ワッシャ部材43と、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43を一体的に結合するボルト44と、を用意する。
【0035】
(b)において、板状部材42に絶縁ワッシャ部材43を矢印a1の如く嵌合させる。 これにより、板状部材42のボルト貫通孔47のエッジ47a、板状部材42の上面の一部、板状部材42の下面の一部を覆うことができる。この結果、板状部材42にボルト44が接触することを防止することができる。
【0036】
図7(a),(b)は本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する後の作用説明図である。
(a)において、ベース部材41に絶縁ワッシャ部材43を嵌合済みの板状部材42を矢印a2の如く載置する。板状部材42に絶縁ワッシャ部材43を嵌合させたので、ベース部材41に板状部材42が接触することはない。
【0037】
(b)において、ベース部材41のナット45に矢印a3の如くボルト44をねじ込むことで、このボルト44でベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材43を一体的に結合する。
すなわち、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップに構成し、上部ワッシャ本体51で板状部材42の上面を覆い、下部ワッシャ本体52で板状部材42の下面を覆い、板状部材42のボルト貫通孔47に上面孔53及び下面孔54を臨ませ、ベース部材41に板状部材42をボルト44で締結することで、板状部材42及びベース部材41間、且つ板状部材42及びボルト44間を絶縁することができる。
【0038】
図8は本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の分解斜視図であり、ボルト締結構造40(図3参照)と同一部品は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
ボルト締結構造60は、特定金属材料としての鋼材にてベース部材(第1の部材)41形成し、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて板状部材(第2の部材)42形成し、これらのベース部材41と板状部材42との間に介在させるために樹脂(絶縁材料)にて絶縁ワッシャ部材63形成し、これらのベース部材41、板状部材42及び絶縁ワッシャ部材63をボルト44で一体的に結合するものであり、絶縁ワッシャ部材63の上部ワッシャ本体71側に縦壁部77を設けたものである。
【0039】
図9は本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の断面図であり、詳細には、絶縁ワッシャ部材63は、板状部材42に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップにであり、板状部材42の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体71と、この上部ワッシャ本体71に形成することで板状部材42のボルト貫通孔47に臨ます上面孔73と、板状部材42の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体72と、この下部ワッシャ本体72に形成することでボルト貫通孔47に臨ます下面孔74と、上部ワッシャ本体71及び下部ワッシャ本体72を繋ぐ連結部75と、を備え、上面孔73の周りに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部77を形成し、上部ワッシャ本体71に板状部材42に嵌合するときの案内部76を形成したものである。
【0040】
すなわち、ボルト締結構造60は、上面孔73の周りにのみに、ボルト貫通孔47のエッジ47aを覆う縦壁部77を形成することで、絶縁ワッシャ部材63の金型を簡易に(シンプルに)形成することができる。この結果、金型費の低減を図ることができる。
【0041】
図10は本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の分解斜視図であり、ボルト締結構造40(図3参照)と同一部品は同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
ボルト締結構造80は、特定金属材料としての鋼材にてベース部材(第1の部材)41形成し、このベース部材41に取付けるために特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)にて板状部材(具体的にはフロントフェンダである第2の部材)82形成し、これらのベース部材41と板状部材82との間に介在させるために樹脂(絶縁材料)にて絶縁ワッシャ部材83形成し、これらのベース部材41、板状部材82及び絶縁ワッシャ部材83をボルト44で一体的に結合するものである。
【0042】
板状部材(第2の部材)82は、絶縁ワッシャ部材83を差込むエッジ部86と、ボルト44を貫通させるボルト貫通孔87と、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする位置決め孔88と、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする切り欠き89を形成した。図中、87aはボルト貫通孔87のエッジを示す。
【0043】
図11は本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の断面図であり、絶縁ワッシャ部材83は、板状部材82に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、板状部材82の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体91と、板状部材82の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体92と、上部ワッシャ本体91及び下部ワッシャ本体92を繋ぐ連結部95と、を備える。
【0044】
上部ワッシャ本体91は、板状部材82のボルト貫通孔87に臨ます上面孔93と、
板状部材82の位置決め孔に嵌合させる位置決めボス97と、板状部材82の切り欠きに嵌合させる突起98と、板状部材82に嵌合するときの案内部96と、を形成したものである。
【0045】
下部ワッシャ本体92は、ボルト貫通孔87に臨ます下面孔94と、位置決めボス97を臨ます逃げ孔99とを形成した。
上面孔93及び下面孔94はボルト貫通孔87よりも小径に形成した孔である。
【0046】
ボルト締結構造80は、板状部材82に、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする位置決め孔88と、絶縁ワッシャ部材83を位置決めする切り欠き89を形成し、上部ワッシャ本体91に、板状部材82の位置決め孔88に嵌合させる位置決めボス97と、板状部材82の切り欠きに嵌合させる突起98と、を形成したので、ボルト44の締付け時の板状部材82の回転止め機能を強固にすることができる。この結果、板状部材82の位置決め性の向上を図ることができ、組立時の見栄え(セット性)を向上させることができる。
【0047】
尚、本発明に係るボルト締結構造は、図2に示すように、ベース部材41はフロントホイールハウスアッパメンバであり、板状部材42はフロントフェンダであったが、これに限るものではなく、ベース部材である第1の部材に板状部材(板状の部材のみならずブロック状の部材を含む)である第2の部材をボルトで締結する構造であればよい。
【0048】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、板状部材42を特定金属材料(鋼材)とは異なる金属材料(アルミニウム合金)で形成したが、これに限るものではなく、アルミニウム合金は、アルミニウム若しくはマグネシウム合金であってもよい。
【0049】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、絶縁ワッシャ部材43を樹脂にて形成したが、これに限るものではなく、絶縁ワッシャ部材は、絶縁材料ならばよく、紙若しくはゴム等であってもよい。
【0050】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、ボルト44にフランジ付のボルトを用いたが、これに限るものではなく、フランジのないボルト若しくはタッピンねじ等を含む締結手段であってもよい。
【0051】
本発明に係るボルト締結構造は、図5に示すように、ベース部材41にボルト44をねじ込むナットを溶接したが、これに限るものではなく、例えば、ねじ孔若しくはバーリングを形成し、ボルト(タッピンねじを含む)をねじ込むように形成したものであってもよい。
【0052】
本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造は、図9に示すように、上面孔73の周りに縦壁部77を設けたが、これに限るものではなく、下面孔の周りに縦壁部を設けたものであってもよい。
【0053】
本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造は、図11に示すように、上部ワッシャ本体91に位置決めボス97を形成したが、これに限るものではなく、下部ワッシャ本体に位置決めボスを形成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るボルト締結構造は、異種金属にて形成した部材の締結構造これに限るものではなく、に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るボルト締結構造を採用した車両の斜視図 である。
【図2】本発明に係るボルト締結構造を採用した車両のフロントボデーの斜視図である。
【図3】本発明に係るボルト締結構造の分解斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する前の作用説明図である。
【図7】本発明に係るボルト締結構造のベース部材に板状部材を締結する後の作用説明図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の分解斜視図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態のボルト締結構造の断面図である。
【図10】本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の分解斜視図である。
【図11】本発明に係る第3実施形態のボルト締結構造の断面図である。
【図12】従来の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
40…ボルト締結構造、41…ベース部材(フロントホイールハウスアッパメンバ)、42…板状部材(フロントフェンダ)、43…絶縁ワッシャ部材、44…ボルト、47…ボルト貫通孔、47a…エッジ、51…上部ワッシャ本体、52…下部ワッシャ本体、53…上面孔、54…下面孔、55…連結部、57,58…縦壁部(上・下縦壁部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定金属材料にて形成したベース部材と、このベース部材に取付けるために特定金属材料とは異なる金属材料にて形成した板状部材と、これらのベース部材と板状部材との間に介在させる絶縁ワッシャ部材と、これらのベース部材、板状部材及び絶縁ワッシャ部材を一体的に結合するボルトと、からなるボルト締結構造において、
前記絶縁ワッシャ部材は、前記板状部材に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、
前記板状部材の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体と、この上部ワッシャ本体に形成することで前記板状部材のボルト貫通孔に臨ます上面孔と、前記板状部材の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体と、この下部ワッシャ本体に形成することで前記ボルト貫通孔に臨ます下面孔と、前記上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部と、を備えたことを特徴とするボルト締結構造。
【請求項2】
前記上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、前記ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成したことを特徴とする請求項1記載のボルト締結構造。
【請求項1】
特定金属材料にて形成したベース部材と、このベース部材に取付けるために特定金属材料とは異なる金属材料にて形成した板状部材と、これらのベース部材と板状部材との間に介在させる絶縁ワッシャ部材と、これらのベース部材、板状部材及び絶縁ワッシャ部材を一体的に結合するボルトと、からなるボルト締結構造において、
前記絶縁ワッシャ部材は、前記板状部材に挟み込むことが可能に形成するとともに絶縁材料にて形成した略U字状の板状クリップであり、
前記板状部材の上面の一部を覆う上部ワッシャ本体と、この上部ワッシャ本体に形成することで前記板状部材のボルト貫通孔に臨ます上面孔と、前記板状部材の下面の一部を覆う下部ワッシャ本体と、この下部ワッシャ本体に形成することで前記ボルト貫通孔に臨ます下面孔と、前記上部ワッシャ本体及び下部ワッシャ本体を繋ぐ連結部と、を備えたことを特徴とするボルト締結構造。
【請求項2】
前記上面孔及び/若しくは下面孔の周りに、前記ボルト貫通孔のエッジを覆う縦壁部を形成したことを特徴とする請求項1記載のボルト締結構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−2887(P2006−2887A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181099(P2004−181099)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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