説明

ボンディングツール

【課題】ボンディングヘッドの長辺が長い場合や、ボンディング時の温度が高い場合でも温度上昇時のフェイスの平面度が悪化しないボンディングツールを得る。
【解決手段】ボンディング面と底面両側に底面縁を有するT字棒状のボンディングヘッドが、長平板状の金属ホルダーに平行となるように固定されてなるボンディングツールの構造において、ボンディングヘッドの底面縁を押さえ金とホルダーとの間で挟むようにクランプすることで、ホルダーに固定することにより、フェイスの平面度を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル、FPD(フラットパネルディスプレー)等の製造の加熱圧着工程に使用するボンディングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的従来のボンディングヘッドをセラミック製としたボンディングユニットの構造は図4に示すように、長辺方向に設けられた複数のボルトにてボンディングヘッドとホルダーを固定する構造である。ヒーターはホルダー内もしくはボンディングヘッドの裏面側に備えている。
この構造は、ボンディングヘッドをセラミックスとすることにより、昇温時の平面度の悪化に伴う圧着不良の防止を目的とした提案である。
【0003】
また、特許文献1には、加熱圧着接合体は基板と、その上に設けられた加熱圧着部材とを備え、加熱圧着部材の熱伝導率が50W/mK以上であり、かつビッカース硬度が100以上1000以下であり、かつヤング率が200GPa以上であることを特徴とするボンディングツールが提案されている。

【特許文献1】特開2003−300391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術で示した長辺方向に設けられた複数のボルトにてボンディングヘッドとホルダーを固定する図4に示すような構造では、低温ではさほど問題にならないが、例えば250℃を超える高温でのボンディングでは問題が起こる。ボルト8でボンディングヘッド2とホルダー6を強固に固定しているために、温度が上がるに従って両者の熱膨張差から生じる歪みが生じるためである。熱膨張の小さいセラミックスと、熱膨張の大きい金属とを強固に接合しているために、温度上昇によりセラミックス側を凹面として全体がバイメタルのように湾曲する。金属が厚く剛性が高い場合は、金属の湾曲は小さくなるが、セラミックスの湾曲はさらに増大する。
【0005】
また、ボルト締めされた近傍とボルト間との歪みの違いも平面度を悪化させる。ボルトの近傍は締め付け応力によりホルダー側に押しつけられる一方で、ボルト穴を中心に長辺方向には引っ張られ、短辺方向には大きな応力は掛からないために変形を生じる。
【0006】
さらに温度が上がれば、ホルダーの熱膨張に追従できずに、脆性材料であるセラミックスのボンディングヘッドは割れる。
【0007】
これらの現象は、長辺が長ければ長いほど、また、ボンディング温度が高いほどに顕著に現れる。そのために、この技術では高温でのボンディング及び長辺の長いボンディングを高品位にて行うことはできない。
特許文献1に示す技術であっても、結局は基板とボンディングヘッドおよびその中間層の熱膨張差によりフェイスの歪みが生じる。
【0008】
本発明は、前記技術を踏まえた上で、下記を満たすボンディングツールを得ることを課題とする。
1.ボンディングヘッドの長辺が例えば300mmと長い場合でも、温度上昇時のフェイスの平面度が悪化しない。
2.ボンディング時の温度が例えば400℃以上と高い場合でも、温度上昇時のフェイスの平面度が悪化しない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のボンディングツールは、ボンディング面と底面両側に底面縁を有するT字棒状のボンディングヘッドが、長平板状の金属ホルダーに平行となるように固定されてなるボンディングツールにおいて、ボンディングヘッドの底面縁を押さえ金とホルダーとの間で挟むようにクランプすることで、ホルダーに固定されていることを特徴する。
本発明のボンディングツールは、一例として図1に示すようにボンディングヘッドの底面縁を押さえ金とホルダーとの間で挟むようにクランプする。ボンディングヘッドの固定方法については、熱膨張などで動かないように充分固定する必要がある一方で、従来技術のようにホルダーの熱膨張に左右されるような方法だと、昇温時にフェイスの平面度を悪化させることになる。そこで、本発明に示すように、ボンディングヘッドの底面縁を押さえ金とホルダーとの間で挟むようにクランプすることが有効である。また、この際に位置ズレ防止のために、短辺方向および長辺方向に圧力を掛けることも有効である。
【0010】
挟むようにクランプする際には、固定用部材を用いるが、固定用部材として特に適しているのはネジ、ボルト、リベット、バネである。
【0011】
ホルダーは金属製がよいが、なかでも強度、剛性、製造費用の面からステンレス鋼、鉄材などの安価な材料が望ましい。ホルダーとボンディングヘッドは、同じ構造のホルダーでボンディングヘッドだけ取り替えることにより、違う大きさおよび形状に対してボンディングを行うこともできる。
一方従来方法では、ボンディングヘッドを直接ボルトにて固定するために、長辺方向のボンディングヘッドとホルダーの熱膨張差により、小さな温度変化でも平面度が変化する。また、ボンディングヘッド自体にネジやボルト締めのための穴があいていると、熱伝導が均一でなくなり、フェイスの温度を全面一定にするのが難しくなる。
【0012】
ボンディングヘッドの材質は温度上昇時の熱膨張が比較的小さく、昇温時のフェイスの平面度の悪化を押さえられる材料が良いが、これに適しているのはセラミックスである。また、セラミックスは研削加工により平面度を低く押さえることができるが、金属は加工により平面度を低くするのが難しく、この点からもセラミックスがよい。
【0013】
また、セラミックスの熱伝導率は、酸化ジルコニウム系など一部の例外を除いて、一般的にステンレス材料よりも高いために、フェイス温度の均一性を維持しやすいという利点もある。例として、代表的な材料の熱伝導率を述べると、SUS304ステンレスの熱伝導率は16W/m・Kであり、SiCセラミックスは46W/m・K、Siセラミックスは30W/m・K、AlNセラミックスは160W/m・Kといずれもステンレスに対し高い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ボンディングヘッドの長辺が例えば300mmと長い場合や、ボンディング温度が例えば250℃以上と高い場合でも、温度上昇時のフェイスの平面度を低く押さえることのできるボンディングツールを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のボンディングツールは、以下の形態にて最良に得ることができる。
まず、ボンディングヘッドにはセラミックスが適している。その中でも、熱膨張係数が小さいセラミックスが適している。セラミックスに対しステンレス系の材料は熱膨張係数が大きく、例えばSUS304は熱膨張係数が約17×10−6/Kであり、熱による変形は大きい。そのために、温度変化やボンディングヘッドの熱勾配に対して平面度が悪化しやすい。さらに金属は全般に、幅の狭い部材について、加工により平面度を低くすることが難しい。セラミックスはこの点、比較的容易である。
また、併せて使用時の高温で劣化しないこと、熱伝導がよく均熱性が優れていること、耐チッピング性が充分であることなどの特性も必要となる。これらの条件に適しているセラミックスとしてはSi、SiC、AlN、Alなどを主とする材料が挙げられる。
【0016】
ホルダーは比較的剛性が高く、腐食が起こらずに、製造が容易であるステンレス材料が最も適しているが、他の金属材料でも目的が充分達せられるのであれば、種類は問わない。
【0017】
ボンディングヘッドのホルダーへの固定は、特に長辺方向にボンディングヘッドを強く拘束しないことが重要である。
これを実現するためには、ボンディングヘッドにフェイスより幅の広い部分を設け、その幅の広い部分をホルダーにて挟み固定すればよい。図1に示すように、ボルトを使って押さえ金を固定し、間接的にボンディングヘッドを固定するような方法や、バネや板バネを用いて固定する方法も可能である。いずれにしても、長辺方向の拘束を弱くすることで、両者の熱膨張差によるフェイスの平面度悪化を防止することが本発明の特徴となる。
【0018】
以下実施例により、より詳細に本発明を説明する。
【実施例】
【0019】
フェイスの長辺が500mm、短辺が2mmの液晶ディスプレイ液晶ディスプレイの工程でのドライバ実装工程にて、本発明のボンディングツールを用いた実施例を示す。
【0020】
ボンディングヘッドの材質をSiとして、図3に示すような、T字型の断面を持つ長辺が500mm、短辺が2mmのセラミックスボンディングヘッド2を作製した。フェイス4の部分は常温での平面度が1μm以下となるように研削機にて仕上げ加工を行った。
【0021】
一方、ホルダー10は角柱状のステンレス鋼を用い、ボンディングヘッド側の面に図3に示すようにホルダーの押さえ金6を設け、押さえ金のボルトを締めることにより、ホルダー16に圧力を掛けた。なお、裏面に当たるために図示していないが、押さえ金6はホルダー10にボルトにより固定されており、押さえ金はその弾力にてボンディングヘッドと接する面16を介にて圧力をボンディングヘッドに加えている。
【0022】
また、ホルダーのボンディングヘッドに接してない部分にカートリッジヒーター14および熱電対12を取り付けた。押さえ金は、ホルダーを固定する部分に弾性があり、予め常温にて弾性変形する程度に応力を掛けた。
【0023】
前記押さえ金を介してネジにてクランプしたのは、押さえ金の弾力を用いずに常温でただ固定していても、高温使用時には熱膨張にてホルダーがボンディングヘッド以上に伸びるために、両者に隙間が生じるためこれを防止するためである。
【0024】
この様にして得られたボンディングユニットを、常温からボンディング温度である300℃まで加熱した。温度が上昇するにつれ、ホルダーおよびボンディングヘッドは熱膨張を起こした。ホルダーの熱膨張係数は17×10/K、ボンディングヘッドの熱膨張係数は3.4×10/Kであるために、両者の熱膨張差には大きな開きがある。押さえ金およびネジにより、フェイスに垂直な方向には圧力が加わっており、その方向にはボンディングヘッドは動くことはできない。一方、長辺方向には大きな力が加わっていないために、熱膨張に合わせてボンディングヘッドとホルダーはすべり、相互に干渉することなく、それぞれの膨張率のまま膨張した。
設定温度の300℃まで上昇後に、温度が安定するまで待った後にフェイスとの平面度を測定したところ、2μmであった。
【0025】
この状態で液晶ディスプレイドライバ実装のボンディングに使用したところ、全ての素子で圧着不良がない、良好なボンディングを行うことができた。
【0026】
また、同じく液晶ディスプレイ製造工程であるTAB実装やプリント基板実装などの工程でも、そのまま問題なく使用が可能であった。
【0027】
さらに、使用温度に保持したままフェイスの研削加工を行うことにより、平面度はより向上でき、1μmとすることができた。

(比較例)
【0028】
ボンディングツールのボンディングヘッドをSiからなるセラミックス材料、ホルダーをSUS304として、長辺方向に設けられた複数のボルトにてボンディングヘッドとホルダーと固定する図4に示す構造とし、その他の条件を実施例と同様にした。
【0029】
加熱に従って、ボンディングヘッドとホルダーの熱膨張差によりフェイスの平面度は20μm以上と大きくなり、調整しても温度の微妙な変化により平面度が大きく変わるために、結果的に平面度10μm以下で安定させることができなかった。
【0030】
このボンディングツールを用いて液晶パネルのボンディングを行ったところ、約3%の素子がボンディング不良となり、ネジなどによる加圧にてボンディングヘッドの平面度を微調整しなければ実用できなかった。微調整には時間と手間が掛かるために、製造費用の上昇に繋がった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のボンディングツールの構造の一実施例を示す。
【図2】セラミック製ヘッドの模式図を示す
【図3】押さえ金を用いた本発明の一実施例を示す
【図4】従来のセラミックボンディングツールの構造を示す。
【符号の説明】
【0032】
2 ボンディングヘッド
4 加熱圧着面であるフェイス
6 押さえ金
8 固定用部材であるボルト
10 ホルダー
12 熱電対挿入口
14 カートリッジヒーター挿入口
16 押さえ金とボンディングヘッドの接する面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング面と底面両側に底面縁を有するT字棒状のボンディングヘッドが、長平板状の金属ホルダーに平行となるように固定されてなるボンディングツールにおいて、ボンディングヘッドの底面縁が押さえ金とホルダーとの間で挟むようにクランプすることで、ホルダーに固定されていることを特徴とするボンディングツール。
【請求項2】
加熱膨張、冷却収縮によるボンディングヘッドの伸縮が、
クランプによる固定により妨げられないことを特徴とする請求項1に記載のボンディングツール。
【請求項3】
加熱膨張、冷却収縮によるボンディングヘッドの伸縮が、
クランプによる固定により妨げられず可能であることを特徴とする請求項1に記載のボンディングツール。
【請求項4】
押さえ金とホルダーとのクランプが固定用部材によりなされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のボンディングツール。
【請求項5】
押さえ金の弾力によりボンディングヘッドが固定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のボンディングツール。
【請求項6】
固定用部材が、ネジまたはボルトまたはリベットからなることを特徴とする請求項4記載のボンディングツール。
【請求項7】
ボンディングヘッドが、Si、SiC、AlN、Alの少なくとも1種を主成分とするセラミックからなることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のボンディングツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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