ボンディングワイヤのループ形状及びそのループ形状を備えた半導体装置並びにボンディング方法
【課題】少なくとも複数個の第1ボンディング点(パッド)が直線上に一列に並んで配置され、これら第1ボンディング点と第2ボンディング点(リード)との間を結ぶボンディングワイヤが隣り合うワイヤ同士で接触するおそれがあるような場合でも、各ボンディングワイヤのネック部高さを高くすることなしに迂回配線することができ、半導体装置の小型化・薄型化を図る。
【解決手段】最も内寄りに位置して対向する第1のパッド2aとリード3a間を結ぶワイヤ4aは、直線m−m上を通る垂直面内において配線するとともに、それ以外の他のパッド2b,2cとリード3b,3c間を結ぶワイヤ4b,4cについては、それぞれパッド位置において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出し、他のワイヤを迂回しながら対となるリード3b,3cに向けて配線する。
【解決手段】最も内寄りに位置して対向する第1のパッド2aとリード3a間を結ぶワイヤ4aは、直線m−m上を通る垂直面内において配線するとともに、それ以外の他のパッド2b,2cとリード3b,3c間を結ぶワイヤ4b,4cについては、それぞれパッド位置において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出し、他のワイヤを迂回しながら対となるリード3b,3cに向けて配線する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置のためのボンディングワイヤのループ形状と、そのループ形状を備えた半導体装置、さらにはそのループ形状を得るためのボンディング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9及び図10に、従来の半導体装置におけるボンディングワイヤのループ形状の例を示す。図9は半導体チップ1のパッド2(第1ボンディング点)とリードフレームのリード3(第2ボンディング点)との間を結ぶボンディングワイヤ(以下、「ワイヤ」と略称)4のループ形状を側面視で台形状とした場合の例(特許文献1参照)、図10は側面視で三角形状とした場合の例である(特許文献2参照)。図中、5はワイヤ4の先端に形成されたボールである。
【0003】
図9の台形ループは、図11に示すようなワイヤボンディング方法によって実現される。すなわち、まず、図11(a)(b)に示すように、ボールボンディング用のキャピラリ6を下降してワイヤ4の先端に形成されているボール5を第1ボンディング点たるパッド2にボンディングする。
【0004】
次いで、図11(c)に示すように、キャピラリ6をネック部高さHに相当するA点まで上昇させた後、図11(d)に示すように、リード3(第2ボンディング点)とは反対方向のB点まで移動させる。これにより、ワイヤ4はB点まで傾斜した状態となる。なお、このようにキャピラリ6を第2ボンディング点とは反対方向に移動させる動作を「リバース動作」という。
【0005】
次に、図11(e)に示すように、キャピラリ6をC点まで上昇させ、ワイヤ4を図9中の水平部Lに相当する長さだけ繰り出す。これにより、ワイヤ4のB点部分に所定角度からなる第1の癖が付く。この第1の癖までの部分が図9中のネック部高さHとなる。続いて、図11(f)に示すように、キャピラリ6をD点までリバース動作させる。これにより、ワイヤ4はB点からD点まで更に傾斜した状態となる。
【0006】
次いで、図11(g)中に実線で示すように、キャピラリ6をE点まで上昇させ、ワイヤ4を図9中の傾斜部Sに相当する長さだけ繰り出す。これにより、ワイヤ4のD点部分に所定角度からなる第2の癖が付く。この第2の癖から前記第1の癖までの間が図9中の水平部Lとなる。
【0007】
そして、図11(g)中に点線で示すように、キャピラリ6を第2ボンディング点たるリード3に向けて下降していき、ワイヤ4をリード3にボンディングする。
【0008】
上記のようにしてパッド2とリード3間のボンディングが終了したら、図11(h)に示すように、キャピラリ6をF点まで上昇させてワイヤ4を所定長さ繰り出した後、ワイヤクランパ7によってワイヤ4をつかみ、このワイヤ4をつかんだ状態でキャピラリ6を更に上昇させる。これによって、図11(i)に示すようにワイヤ4が引きちぎられるようにして切断され、キャピラリ6の先端から所定長さだけ突出した状態となる。
【0009】
次いで、図11(j)に示すように、ワイヤ先端部に向けてスパークロッド8を近づけ、スパークロッド8とワイヤ先端との間で放電を行わせる。これにより、ワイヤ4の先端部が溶融し、図示するように、その表面張力によってワイヤ4の先端に球状のボール5が形成される。以上の処理によってボンディング動作の1サイクルが終了し、再び図11(a)に戻り、次の個所のボンディング動作を繰り返す。
【0010】
一方、図10の三角形ループは、図12(a)〜(i)に示すようなボンディング方法によって実現される。この三角形ループの場合も、基本的な工程は前記台形ループの場合と同じであるが、ループ形状が三角形であるので、台形ループにおける水平部Lの形成が不要である。従って、図11の(e)(f)に該当する工程を省略し、図12の(d)でB点までリバース動作させたら、図12(e)に示すようにE点まで上昇させ、ワイヤ4を図10の傾斜部Sに相当する分だけ繰り出す。そして、図12(f)に示すように、キャピラリ6を第2ボンディング点たるリード3に向けて下降していき、ワイヤ4をリード3にボンディングすればよい。これにより、図10に示すような三角形ループからなるボンディングが実現される。以後のワイヤ先端へのボール5の形成工程(図12(g)〜(i))は、図11の台形ループの場合と同じである。
【0011】
【特許文献1】特開平10−256297号公報(図6)
【特許文献2】特開2000−277558号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したように、従来、半導体装置のワイヤボンディングに際しては、台形ループや三角形ループが多く採用されているが、半導体装置の小型化・薄型化を図るには、ワイヤ4のネック部高さHをできるだけ低くすることが望まれる。
【0013】
しかしながら、例えば図13あるいは図14に示すように、複数個(図示例では3個)のパッド2a〜2cとリード3a〜3cが直線m−m上に一列に並んで配置されているような場合には、ワイヤ同士の接触や干渉を避けるため、図示するように、各ワイヤ4a〜4cは垂直面内で上下方向に一定間隔をおいて配線するしかなかった。このため、ネック部の最大高さHが高くなってしまい、半導体装置の小型化・薄型化の妨げとなっていた。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、第1ボンディング点(パッド)と第2ボンディング点(リード)との間を結ぶボンディングワイヤが隣り同士で接触するおそれがあるような場合でも、各ボンディングワイヤのネック部高さを高くすることなしに迂回配線することができ、半導体装置の小型化・薄型化を図ることができるボンディングワイヤのループ形状と、そのループ形状を備えた半導体装置、さらにはそのループ形状を得るためのワイヤボンディング方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は次のような手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の発明は、第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続したボンディングワイヤのループ形状に係るもので、複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて配線されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記請求項1に係るボンディングワイヤのループ形状において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3記載の発明は、前記請求項1に係るボンディングワイヤのループ形状において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4記載の発明は、リードフレーム上に半導体チップが搭載され、該半導体チップ上の第1ボンディング点たるパッドとリードフレーム上の第2ボンディング点たるリードとの間をボンディングワイヤによって接続した半導体装置に係るもので、複数対のパッドとリードを備え、これら複数対のパッドとリードのうち、少なくともパッドは直線上に一列に並んで配置され、最も内寄りに位置して対向するパッドとリードの間を結ぶボンディングワイヤは、当該パッドとリードの間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他のパッドとリード間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれパッド位置において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となるリードに向けて配線されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記請求項4に係る半導体装置において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項6記載の発明は、前記請求項4に係る半導体装置において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項7記載の発明は、複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、これら対となる第1ボンディング点と第2ボンディング点との間をボールボンディング用のキャピラリを用いてボンディングする方法に係るもので、最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内においてルーピングすることにより、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続し、それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平方向に引き出し、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて迂回配線することを特徴とするものである
。
【0022】
請求項8記載の発明は、前記請求項7に係るボンディングワイヤのボンディング方法において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が台形状となるようにルーピングすることを特徴とするものである。
【0023】
請求項9記載の発明は、前記請求項7に係るボンディングワイヤのボンディング方法において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が三角形状となるようにルーピングすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点(パッド)と第2ボンディング点(リード)の間を結ぶボンディングワイヤについては、当該第1ボンディング点(パッド)と第2ボンディング点(リード)の間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線し、それ以外の他のボンディングワイヤについては、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出し、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて迂回配線するようにしたので、隣り合うボンディングワイヤ同士が接触する恐れがある場合でも、各ボンディングワイヤのネック部高さを高くすることなしに充分な余裕を持って迂回配線することが可能となり、半導体装置の小型化・薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第1の実施の形態を示す。なお、前述した従来例と同一もしくは相当部分には同一の符号を付して示した。
【0026】
この第1の実施の形態は、側面視台形ループを採用した図13の半導体装置に本発明を適用した場合の例を示すもので、第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cを平面視で台形状の迂回配線とした場合の例である。
【0027】
この第1の実施の形態の場合、最も内寄りに位置して対向配置されている第1のパッド2aと第1のリード3aの間を結ぶワイヤ4aについては、従来例(図9)と同じく直線m−mを通る垂直面内において側面視で台形状のループを形成するように配線されている。すなわち、第1のワイヤ4aは、第1ボンディング点たるパッド2aからネック部高さHまで垂直に立ち上げ、直線m−mを通る垂直面内で水平に引き出した後、第2のボンディング点たるリード3aまで所定の傾斜角で下降させ、第2ボンディング点たるリード3aにボンディングしたものである。このワイヤ4aのボンディングは、前述した従来のボンディング方法(図11)によって実現される。
【0028】
一方、第2のパッド2bと第2のリード3bの間を結ぶ第2のワイヤ4bについては、第1のワイヤ4aとの接触を避けるため、平面視で台形状に迂回配線されている。すなわち、ワイヤ4bは、パッド2bからネック部高さHまで垂直に立ち上げた後、第2のリード3b側に向けて斜め外方へ所定の距離だけ水平に引き出し、第1のワイヤ4aから所定の距離だけ引き離す。次いで、直線m−mと平行にリード3b側に向けて水平に配線した後、リード3bに向けて所定の傾斜角で下降させ、リード3bにボンディングしたものである。この第2のワイヤ4bの立体的な配線形状を図2に示す。
【0029】
また、第3のパッド2cと第3のリード3cの間を結ぶ第3のワイヤ4cについては、パッド2cからネック部高さHまで垂直に立ち上げた後、第1のワイヤ4aを中に挟んで前記第2のワイヤ4bとは反対方向へ、第3のリード3c側に向けて斜め外方へ所定の距離だけ水平に引き出し、第1のワイヤ4aから所定の距離だけ引き離す。次いで、直線m−mと平行にパッド3cに向けて水平に配線した後、リード3cに向けて所定の傾斜角で下降させ、リード3bにボンディングしたものである。
【0030】
このように第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cについては、第1のワイヤ4aを中に挟んで外側に向けて左右に迂回して引き出してやることにより、第1のワイヤ4と接触することなしに第1のワイヤ4aと同じネック部高さHで配線することができる。したがって、ワイヤ本数が増えてもネック部高さを同じにすることができ、半導体装置の小型化・薄型化を図ることができる。
【0031】
次に、迂回配線された前記第2のワイヤ4bのボンディング方法について、図3を参照して説明する。
【0032】
まず最初に、図3(a)(b)に示すように、キャピラリ6を下降してワイヤ4bの先端に形成されているボール5を第1ボンディング点たるパッド2bにボンディングする。次に、図3(c)に示すように、キャピラリ6をネック部高さHに相当するA点まで上昇させた後、図3(d)に示すようにB点までリバース動作させる。
【0033】
次いで、図3(e)に示すように、キャピラリ6をC点まで上昇移動させる。
【0034】
次いで、図3(f)に示すように、キャピラリ6をD点まで水平移動(リバース)させる。このD点位置は、図3(h)におけるボンディング後の屈曲点Dを与えるための方向と距離とする。
【0035】
次いで、図3(g)に示すように、E点まで上昇移動させる。このE点の位置は、図3(h)におけるボンディング点Eを与えるための方向と距離とする。
【0036】
上記のようにしてE点までルーピングしたら、図3(h)に示すように、キャピラリ6を第2のボンディング点たるリード3bに向けて下降していき、リード3b上にボンディングする。これにより、図1に示すような迂回配線からなる第2のワイヤ4bのボンディングが終了する。
【0037】
なお、図3(h)以降におけるワイヤ先端へのボール5の形成工程は、従来の図11(h)〜(j)と同じであるので、図3では図示を省略した。
【0038】
第3のワイヤ4cについては、前記図3のボンディング工程において、迂回時のワイヤの引き出し方向(図3(d)〜(g))を直線m−mに対して第2のワイヤ4bとは反対方向とすればよい。したがって、第3のワイヤ4cについてのボンディング工程図は省略する。
【0039】
図4に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第2の実施の形態を示す。この第2の実施の形態は、前記第1の実施の形態(図1)と同様なパッドとリード構成において、第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cの両方を同じ側に向かって引き出し、迂回配線したものである。
【0040】
図5に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第3の実施の形態を示す。この第3の実施の形態は、2つの配線グループを備えた半導体装置の例を示すもので、第1の配線グループを構成するパッド2a〜2cとリード3a〜3cは第1の直線m−mに沿って一列に並べて配置されているとともに、第2の配線グループを構成するパッド2a’〜2c’とリード3a’〜3c’は第2の直線m’−m’に沿って一列に並べて配置されている場合の例である。
【0041】
第1の配線グループを構成するパッド2a〜2cとリード3a〜3cを結ぶワイヤ4a〜4cについては、すべて同じ側に向けて引き出して迂回するとともに、第2の配線グループを構成するパッド2a’〜2c’とリード3a’〜3c’を結ぶワイヤ4a’〜4c’については、 すべて第1のグループとは反対側に向けて引き出して迂回したものである。
【0042】
図6に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第4の実施の形態を示す。この第4の実施の形態は、側面視三角形ループを採用した図14の半導体装置に本発明を適用した場合の例を示すもので、第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cを平面視で三角形状(図6(b)参照)の迂回配線とした場合の例である。図7に第2のワイヤ4bの立体的な配線形状を、図8にそのボンディング工程図をそれぞれ示した。
【0043】
迂回配線の形状を平面視で三角形状とする場合も、基本的なボンディング工程は前述した図3の場合と同様であるが、図3の台形ループにおける水平辺の形成工程(図3(f))が不要である。したがって、図8のボンディング工程図の場合、図8(e)において、キャピラリ6を三角形の頂点C(図8(f)参照)を与えるためのC点位置まで移動させた後、直ちにリード3bへのボンディング点E(図8(f)参照)を与えるためのE点位置に向けて上昇移動させ、図8(f)に示すようにリード3bに向けて下降し、ボンディングすればよい。
【0044】
第3のワイヤ4cについては、前記図8のボンディング工程において、迂回時のワイヤの引き出し方向(図8(d)(e))を直線m−mに対して第2のワイヤ4bとは反対方向とすればよい。したがって、第3のワイヤ4cについてのボンディング工程図は省略する。
【0045】
なお、上記各実施の形態は、いずれの場合も、説明を分かりやすくするため、パッド2a〜2cとリード3a〜3cのすべてが直線m−m上に一列に並んで配置されている場合を例に取って説明したが、本発明はこの配置だけに限定されるものではない。一般的に、半導体チップ1上のパッド2a〜2cはチップの縁などに沿って一列に並んで配列されるのが普通であるが、リード3a〜3cは必ずしも一列に配置されるとは限らず、例えば、図6(b)中に点線で示すように、直線m−mからずれた位置に配置される場合もあり得る。このような場合、各パッド2a〜2cと各リード3a〜3cの間を従来と同じようにワイヤ4a〜4cによって直線的に結んで接続した場合、ワイヤ4a〜4c同士が接触する場合も起こり得る。このような場合でも、本発明を適用すれば、隣り合うワイヤ同士の接触を回避することができる。
【0046】
このように、本発明は、複数対のパッド(第1ボンディング点)とリード(第2ボンディング点)を備え、これら複数対のパッド(第1ボンディング点)とリード(第2ボンディング点)のうち、少なくともパッド(第1ボンディング点)が直線上に一列に並んで配置された半導体装置であれば、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】図1中の第2のボンディングワイヤの配線形状を示す立体斜視図である。
【図3】図1中の第2のボンディングワイヤのループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図4】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第2の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第3の実施の形態を示す図である。
【図6】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第4の実施の形態を示す図である。
【図7】図6中の第2のボンディングワイヤの配線形状を示す立体斜視図である。
【図8】図6中の第2のボンディングワイヤのループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図9】側面視台形ループからなる従来の半導体装置の例を示す図である。
【図10】側面視三角形ループからなる従来の半導体装置の例を示す図である。
【図11】図9のループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図12】図10のループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図13】ボンディングワイヤを垂直面内で台形状に配線した場合の例を示す図である。
【図14】ボンディングワイヤを垂直面内で三角形状に配線した場合の例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体チップ
2a〜2c、2a’〜2c’ パッド(第1ボンディング点)
3a〜3c、3a’〜3c’ リード(第2ボンディング点)
4a〜4c、4a’〜4c’ ボンディングワイヤ
5 ボール
6 キャピラリ
7 クランパ
8 スパークロッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置のためのボンディングワイヤのループ形状と、そのループ形状を備えた半導体装置、さらにはそのループ形状を得るためのボンディング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9及び図10に、従来の半導体装置におけるボンディングワイヤのループ形状の例を示す。図9は半導体チップ1のパッド2(第1ボンディング点)とリードフレームのリード3(第2ボンディング点)との間を結ぶボンディングワイヤ(以下、「ワイヤ」と略称)4のループ形状を側面視で台形状とした場合の例(特許文献1参照)、図10は側面視で三角形状とした場合の例である(特許文献2参照)。図中、5はワイヤ4の先端に形成されたボールである。
【0003】
図9の台形ループは、図11に示すようなワイヤボンディング方法によって実現される。すなわち、まず、図11(a)(b)に示すように、ボールボンディング用のキャピラリ6を下降してワイヤ4の先端に形成されているボール5を第1ボンディング点たるパッド2にボンディングする。
【0004】
次いで、図11(c)に示すように、キャピラリ6をネック部高さHに相当するA点まで上昇させた後、図11(d)に示すように、リード3(第2ボンディング点)とは反対方向のB点まで移動させる。これにより、ワイヤ4はB点まで傾斜した状態となる。なお、このようにキャピラリ6を第2ボンディング点とは反対方向に移動させる動作を「リバース動作」という。
【0005】
次に、図11(e)に示すように、キャピラリ6をC点まで上昇させ、ワイヤ4を図9中の水平部Lに相当する長さだけ繰り出す。これにより、ワイヤ4のB点部分に所定角度からなる第1の癖が付く。この第1の癖までの部分が図9中のネック部高さHとなる。続いて、図11(f)に示すように、キャピラリ6をD点までリバース動作させる。これにより、ワイヤ4はB点からD点まで更に傾斜した状態となる。
【0006】
次いで、図11(g)中に実線で示すように、キャピラリ6をE点まで上昇させ、ワイヤ4を図9中の傾斜部Sに相当する長さだけ繰り出す。これにより、ワイヤ4のD点部分に所定角度からなる第2の癖が付く。この第2の癖から前記第1の癖までの間が図9中の水平部Lとなる。
【0007】
そして、図11(g)中に点線で示すように、キャピラリ6を第2ボンディング点たるリード3に向けて下降していき、ワイヤ4をリード3にボンディングする。
【0008】
上記のようにしてパッド2とリード3間のボンディングが終了したら、図11(h)に示すように、キャピラリ6をF点まで上昇させてワイヤ4を所定長さ繰り出した後、ワイヤクランパ7によってワイヤ4をつかみ、このワイヤ4をつかんだ状態でキャピラリ6を更に上昇させる。これによって、図11(i)に示すようにワイヤ4が引きちぎられるようにして切断され、キャピラリ6の先端から所定長さだけ突出した状態となる。
【0009】
次いで、図11(j)に示すように、ワイヤ先端部に向けてスパークロッド8を近づけ、スパークロッド8とワイヤ先端との間で放電を行わせる。これにより、ワイヤ4の先端部が溶融し、図示するように、その表面張力によってワイヤ4の先端に球状のボール5が形成される。以上の処理によってボンディング動作の1サイクルが終了し、再び図11(a)に戻り、次の個所のボンディング動作を繰り返す。
【0010】
一方、図10の三角形ループは、図12(a)〜(i)に示すようなボンディング方法によって実現される。この三角形ループの場合も、基本的な工程は前記台形ループの場合と同じであるが、ループ形状が三角形であるので、台形ループにおける水平部Lの形成が不要である。従って、図11の(e)(f)に該当する工程を省略し、図12の(d)でB点までリバース動作させたら、図12(e)に示すようにE点まで上昇させ、ワイヤ4を図10の傾斜部Sに相当する分だけ繰り出す。そして、図12(f)に示すように、キャピラリ6を第2ボンディング点たるリード3に向けて下降していき、ワイヤ4をリード3にボンディングすればよい。これにより、図10に示すような三角形ループからなるボンディングが実現される。以後のワイヤ先端へのボール5の形成工程(図12(g)〜(i))は、図11の台形ループの場合と同じである。
【0011】
【特許文献1】特開平10−256297号公報(図6)
【特許文献2】特開2000−277558号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したように、従来、半導体装置のワイヤボンディングに際しては、台形ループや三角形ループが多く採用されているが、半導体装置の小型化・薄型化を図るには、ワイヤ4のネック部高さHをできるだけ低くすることが望まれる。
【0013】
しかしながら、例えば図13あるいは図14に示すように、複数個(図示例では3個)のパッド2a〜2cとリード3a〜3cが直線m−m上に一列に並んで配置されているような場合には、ワイヤ同士の接触や干渉を避けるため、図示するように、各ワイヤ4a〜4cは垂直面内で上下方向に一定間隔をおいて配線するしかなかった。このため、ネック部の最大高さHが高くなってしまい、半導体装置の小型化・薄型化の妨げとなっていた。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、第1ボンディング点(パッド)と第2ボンディング点(リード)との間を結ぶボンディングワイヤが隣り同士で接触するおそれがあるような場合でも、各ボンディングワイヤのネック部高さを高くすることなしに迂回配線することができ、半導体装置の小型化・薄型化を図ることができるボンディングワイヤのループ形状と、そのループ形状を備えた半導体装置、さらにはそのループ形状を得るためのワイヤボンディング方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は次のような手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の発明は、第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続したボンディングワイヤのループ形状に係るもので、複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて配線されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項2記載の発明は、前記請求項1に係るボンディングワイヤのループ形状において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3記載の発明は、前記請求項1に係るボンディングワイヤのループ形状において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4記載の発明は、リードフレーム上に半導体チップが搭載され、該半導体チップ上の第1ボンディング点たるパッドとリードフレーム上の第2ボンディング点たるリードとの間をボンディングワイヤによって接続した半導体装置に係るもので、複数対のパッドとリードを備え、これら複数対のパッドとリードのうち、少なくともパッドは直線上に一列に並んで配置され、最も内寄りに位置して対向するパッドとリードの間を結ぶボンディングワイヤは、当該パッドとリードの間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他のパッドとリード間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれパッド位置において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となるリードに向けて配線されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項5記載の発明は、前記請求項4に係る半導体装置において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項6記載の発明は、前記請求項4に係る半導体装置において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項7記載の発明は、複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、これら対となる第1ボンディング点と第2ボンディング点との間をボールボンディング用のキャピラリを用いてボンディングする方法に係るもので、最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内においてルーピングすることにより、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続し、それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平方向に引き出し、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて迂回配線することを特徴とするものである
。
【0022】
請求項8記載の発明は、前記請求項7に係るボンディングワイヤのボンディング方法において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が台形状となるようにルーピングすることを特徴とするものである。
【0023】
請求項9記載の発明は、前記請求項7に係るボンディングワイヤのボンディング方法において、前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が三角形状となるようにルーピングすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点(パッド)と第2ボンディング点(リード)の間を結ぶボンディングワイヤについては、当該第1ボンディング点(パッド)と第2ボンディング点(リード)の間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線し、それ以外の他のボンディングワイヤについては、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出し、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて迂回配線するようにしたので、隣り合うボンディングワイヤ同士が接触する恐れがある場合でも、各ボンディングワイヤのネック部高さを高くすることなしに充分な余裕を持って迂回配線することが可能となり、半導体装置の小型化・薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第1の実施の形態を示す。なお、前述した従来例と同一もしくは相当部分には同一の符号を付して示した。
【0026】
この第1の実施の形態は、側面視台形ループを採用した図13の半導体装置に本発明を適用した場合の例を示すもので、第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cを平面視で台形状の迂回配線とした場合の例である。
【0027】
この第1の実施の形態の場合、最も内寄りに位置して対向配置されている第1のパッド2aと第1のリード3aの間を結ぶワイヤ4aについては、従来例(図9)と同じく直線m−mを通る垂直面内において側面視で台形状のループを形成するように配線されている。すなわち、第1のワイヤ4aは、第1ボンディング点たるパッド2aからネック部高さHまで垂直に立ち上げ、直線m−mを通る垂直面内で水平に引き出した後、第2のボンディング点たるリード3aまで所定の傾斜角で下降させ、第2ボンディング点たるリード3aにボンディングしたものである。このワイヤ4aのボンディングは、前述した従来のボンディング方法(図11)によって実現される。
【0028】
一方、第2のパッド2bと第2のリード3bの間を結ぶ第2のワイヤ4bについては、第1のワイヤ4aとの接触を避けるため、平面視で台形状に迂回配線されている。すなわち、ワイヤ4bは、パッド2bからネック部高さHまで垂直に立ち上げた後、第2のリード3b側に向けて斜め外方へ所定の距離だけ水平に引き出し、第1のワイヤ4aから所定の距離だけ引き離す。次いで、直線m−mと平行にリード3b側に向けて水平に配線した後、リード3bに向けて所定の傾斜角で下降させ、リード3bにボンディングしたものである。この第2のワイヤ4bの立体的な配線形状を図2に示す。
【0029】
また、第3のパッド2cと第3のリード3cの間を結ぶ第3のワイヤ4cについては、パッド2cからネック部高さHまで垂直に立ち上げた後、第1のワイヤ4aを中に挟んで前記第2のワイヤ4bとは反対方向へ、第3のリード3c側に向けて斜め外方へ所定の距離だけ水平に引き出し、第1のワイヤ4aから所定の距離だけ引き離す。次いで、直線m−mと平行にパッド3cに向けて水平に配線した後、リード3cに向けて所定の傾斜角で下降させ、リード3bにボンディングしたものである。
【0030】
このように第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cについては、第1のワイヤ4aを中に挟んで外側に向けて左右に迂回して引き出してやることにより、第1のワイヤ4と接触することなしに第1のワイヤ4aと同じネック部高さHで配線することができる。したがって、ワイヤ本数が増えてもネック部高さを同じにすることができ、半導体装置の小型化・薄型化を図ることができる。
【0031】
次に、迂回配線された前記第2のワイヤ4bのボンディング方法について、図3を参照して説明する。
【0032】
まず最初に、図3(a)(b)に示すように、キャピラリ6を下降してワイヤ4bの先端に形成されているボール5を第1ボンディング点たるパッド2bにボンディングする。次に、図3(c)に示すように、キャピラリ6をネック部高さHに相当するA点まで上昇させた後、図3(d)に示すようにB点までリバース動作させる。
【0033】
次いで、図3(e)に示すように、キャピラリ6をC点まで上昇移動させる。
【0034】
次いで、図3(f)に示すように、キャピラリ6をD点まで水平移動(リバース)させる。このD点位置は、図3(h)におけるボンディング後の屈曲点Dを与えるための方向と距離とする。
【0035】
次いで、図3(g)に示すように、E点まで上昇移動させる。このE点の位置は、図3(h)におけるボンディング点Eを与えるための方向と距離とする。
【0036】
上記のようにしてE点までルーピングしたら、図3(h)に示すように、キャピラリ6を第2のボンディング点たるリード3bに向けて下降していき、リード3b上にボンディングする。これにより、図1に示すような迂回配線からなる第2のワイヤ4bのボンディングが終了する。
【0037】
なお、図3(h)以降におけるワイヤ先端へのボール5の形成工程は、従来の図11(h)〜(j)と同じであるので、図3では図示を省略した。
【0038】
第3のワイヤ4cについては、前記図3のボンディング工程において、迂回時のワイヤの引き出し方向(図3(d)〜(g))を直線m−mに対して第2のワイヤ4bとは反対方向とすればよい。したがって、第3のワイヤ4cについてのボンディング工程図は省略する。
【0039】
図4に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第2の実施の形態を示す。この第2の実施の形態は、前記第1の実施の形態(図1)と同様なパッドとリード構成において、第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cの両方を同じ側に向かって引き出し、迂回配線したものである。
【0040】
図5に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第3の実施の形態を示す。この第3の実施の形態は、2つの配線グループを備えた半導体装置の例を示すもので、第1の配線グループを構成するパッド2a〜2cとリード3a〜3cは第1の直線m−mに沿って一列に並べて配置されているとともに、第2の配線グループを構成するパッド2a’〜2c’とリード3a’〜3c’は第2の直線m’−m’に沿って一列に並べて配置されている場合の例である。
【0041】
第1の配線グループを構成するパッド2a〜2cとリード3a〜3cを結ぶワイヤ4a〜4cについては、すべて同じ側に向けて引き出して迂回するとともに、第2の配線グループを構成するパッド2a’〜2c’とリード3a’〜3c’を結ぶワイヤ4a’〜4c’については、 すべて第1のグループとは反対側に向けて引き出して迂回したものである。
【0042】
図6に、本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第4の実施の形態を示す。この第4の実施の形態は、側面視三角形ループを採用した図14の半導体装置に本発明を適用した場合の例を示すもので、第2のワイヤ4bと第3のワイヤ4cを平面視で三角形状(図6(b)参照)の迂回配線とした場合の例である。図7に第2のワイヤ4bの立体的な配線形状を、図8にそのボンディング工程図をそれぞれ示した。
【0043】
迂回配線の形状を平面視で三角形状とする場合も、基本的なボンディング工程は前述した図3の場合と同様であるが、図3の台形ループにおける水平辺の形成工程(図3(f))が不要である。したがって、図8のボンディング工程図の場合、図8(e)において、キャピラリ6を三角形の頂点C(図8(f)参照)を与えるためのC点位置まで移動させた後、直ちにリード3bへのボンディング点E(図8(f)参照)を与えるためのE点位置に向けて上昇移動させ、図8(f)に示すようにリード3bに向けて下降し、ボンディングすればよい。
【0044】
第3のワイヤ4cについては、前記図8のボンディング工程において、迂回時のワイヤの引き出し方向(図8(d)(e))を直線m−mに対して第2のワイヤ4bとは反対方向とすればよい。したがって、第3のワイヤ4cについてのボンディング工程図は省略する。
【0045】
なお、上記各実施の形態は、いずれの場合も、説明を分かりやすくするため、パッド2a〜2cとリード3a〜3cのすべてが直線m−m上に一列に並んで配置されている場合を例に取って説明したが、本発明はこの配置だけに限定されるものではない。一般的に、半導体チップ1上のパッド2a〜2cはチップの縁などに沿って一列に並んで配列されるのが普通であるが、リード3a〜3cは必ずしも一列に配置されるとは限らず、例えば、図6(b)中に点線で示すように、直線m−mからずれた位置に配置される場合もあり得る。このような場合、各パッド2a〜2cと各リード3a〜3cの間を従来と同じようにワイヤ4a〜4cによって直線的に結んで接続した場合、ワイヤ4a〜4c同士が接触する場合も起こり得る。このような場合でも、本発明を適用すれば、隣り合うワイヤ同士の接触を回避することができる。
【0046】
このように、本発明は、複数対のパッド(第1ボンディング点)とリード(第2ボンディング点)を備え、これら複数対のパッド(第1ボンディング点)とリード(第2ボンディング点)のうち、少なくともパッド(第1ボンディング点)が直線上に一列に並んで配置された半導体装置であれば、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】図1中の第2のボンディングワイヤの配線形状を示す立体斜視図である。
【図3】図1中の第2のボンディングワイヤのループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図4】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第2の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第3の実施の形態を示す図である。
【図6】本発明のワイヤループ形状を採用した半導体装置の第4の実施の形態を示す図である。
【図7】図6中の第2のボンディングワイヤの配線形状を示す立体斜視図である。
【図8】図6中の第2のボンディングワイヤのループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図9】側面視台形ループからなる従来の半導体装置の例を示す図である。
【図10】側面視三角形ループからなる従来の半導体装置の例を示す図である。
【図11】図9のループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図12】図10のループ形状を得るためのボンディング工程図である。
【図13】ボンディングワイヤを垂直面内で台形状に配線した場合の例を示す図である。
【図14】ボンディングワイヤを垂直面内で三角形状に配線した場合の例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体チップ
2a〜2c、2a’〜2c’ パッド(第1ボンディング点)
3a〜3c、3a’〜3c’ リード(第2ボンディング点)
4a〜4c、4a’〜4c’ ボンディングワイヤ
5 ボール
6 キャピラリ
7 クランパ
8 スパークロッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続したボンディングワイヤのループ形状であって、
複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、
最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて配線されていることを特徴とするボンディングワイヤのループ形状。
【請求項2】
請求項1記載のボンディングワイヤのループ形状において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とするボンディングワイヤのループ形状。
【請求項3】
請求項1記載のボンディングワイヤのループ形状において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とするボンディングワイヤのループ形状。
【請求項4】
リードフレーム上に半導体チップが搭載され、該半導体チップ上の第1ボンディング点たるパッドとリードフレーム上の第2ボンディング点たるリードとの間をボンディングワイヤによって接続した半導体装置において、
複数対のパッドとリードを備え、これら複数対のパッドとリードのうち、少なくともパッドは直線上に一列に並んで配置され、
最も内寄りに位置して対向するパッドとリードの間を結ぶボンディングワイヤは、当該パッドとリードの間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他のパッドとリード間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれパッド位置において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となるリードに向けて配線されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4記載の半導体装置において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、これら対となる第1ボンディング点と第2ボンディング点との間をボールボンディング用のキャピラリを用いてボンディングする方法において、
最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内においてルーピングすることにより、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続し、
それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平方向に引き出し、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて迂回配線することを特徴とするボンディングワイヤのボンディング方法。
【請求項8】
請求項7記載のボンディングワイヤのボンディング方法において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が台形状となるようにルーピングすることを特徴とするボンディングワイヤのボンディング方法。
【請求項9】
請求項7記載のボンディングワイヤのボンディング方法において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が三角形状となるようにルーピングすることを特徴とするボンディングワイヤのボンディング方法。
【請求項1】
第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続したボンディングワイヤのループ形状であって、
複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、
最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて配線されていることを特徴とするボンディングワイヤのループ形状。
【請求項2】
請求項1記載のボンディングワイヤのループ形状において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とするボンディングワイヤのループ形状。
【請求項3】
請求項1記載のボンディングワイヤのループ形状において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とするボンディングワイヤのループ形状。
【請求項4】
リードフレーム上に半導体チップが搭載され、該半導体チップ上の第1ボンディング点たるパッドとリードフレーム上の第2ボンディング点たるリードとの間をボンディングワイヤによって接続した半導体装置において、
複数対のパッドとリードを備え、これら複数対のパッドとリードのうち、少なくともパッドは直線上に一列に並んで配置され、
最も内寄りに位置して対向するパッドとリードの間を結ぶボンディングワイヤは、当該パッドとリードの間を結ぶ直線上を通る垂直面内において配線されているとともに、それ以外の他のパッドとリード間を結ぶボンディングワイヤは、それぞれパッド位置において一旦垂直上方に起ち上げられた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平面内で外方へ向けて引き出され、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となるリードに向けて配線されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が台形状とされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4記載の半導体装置において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されたボンディングワイヤの平面視形状が三角形状とされていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点を備え、これら複数対の第1ボンディング点と第2ボンディング点のうち、少なくとも第1ボンディング点は直線上に一列に並んで配置され、これら対となる第1ボンディング点と第2ボンディング点との間をボールボンディング用のキャピラリを用いてボンディングする方法において、
最も内寄りに位置して対向する第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶ直線上を通る垂直面内においてルーピングすることにより、当該第1ボンディング点と第2ボンディング点との間を接続し、
それ以外の他の第1ボンディング点と第2ボンディング点の間を結ぶボンディングワイヤのボンディングに際しては、それぞれ第1ボンディング点において一旦垂直上方に起ち上げた後、他のボンディングワイヤと接触することがないように水平方向に引き出し、他のボンディングワイヤを迂回しながら対となる第2ボンディング点に向けて迂回配線することを特徴とするボンディングワイヤのボンディング方法。
【請求項8】
請求項7記載のボンディングワイヤのボンディング方法において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が台形状となるようにルーピングすることを特徴とするボンディングワイヤのボンディング方法。
【請求項9】
請求項7記載のボンディングワイヤのボンディング方法において、
前記水平方向へ引き出されて迂回配線されるボンディングワイヤの平面視形状が三角形状となるようにルーピングすることを特徴とするボンディングワイヤのボンディング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−73937(P2007−73937A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210811(P2006−210811)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【Fターム(参考)】
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