説明

ボンディング装置

【課題】ボンディング装置において、ボンディング対象に対するマイクロプラズマによる表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことである。
【解決手段】ワイヤボンディング装置10は、先端にボンディングキャピラリ24を有するボンディングアーム21を移動駆動するボンディング用XYZ駆動機構20と、先端部に巻回された高周波コイルを有するプラズマキャピラリ40を備えるプラズマアーム31を駆動する表面処理用XYZ駆動機構30と、プラズマキャピラリ40にガスを供給するガス供給部60と、高周波コイルに高周波電力を供給する高周波電力供給部80とを含んで構成される。高周波電力の供給によって、プラズマキャピラリ40の内部でガスがプラズマ化し、その先端部からボンディング対象8に対し噴出して表面処理が行われる。その表面処理と連動してボンディングキャピラリ24を用いてボンディングが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンディング装置に係り、特にボンディング対象について表面処理を行った後ボンディング処理を行うボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンディング装置として、チップの電極部と回路基板のリード端子との間を金属細線で接続するワイヤボンディング装置が知られている。金属細線が接続されるチップの電極部はボンディングパッドと呼ばれ、回路基板のリード端子はボンディングリードと呼ばれることがあるが、これらに金属細線を超音波接続技術あるいは熱圧着接続技術等を用いて接続する際に、これらの表面状態の重要性が認識されている。すなわち、ボンディングパッドの金属層又はボンディングリードの金属層の表面が汚染され、あるいは異物があると、金属細線との間で良好な電気的接合を行うことができず、また機械的接合強度も弱い。そこで、ボンディング処理を行う前に、ボンディングパッドあるいはボンディングリードの表面処理を行うことが試みられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、被接続表面をクリーニングしてからワイヤボンディングを行う装置等が開示され、そこでは、プラズマジェット部とワイヤボンディング部とが一体構成されるワイヤボンディング装置が述べられている。プラズマジェット部は、外側誘電体管と内側誘電体管とからなる同軸の二重構造で、外側誘電体管には接地された円錐状電極が、内側誘電体管の内部には丸棒状の高周波電極がそれぞれ設けられ、この間に例えばアルゴンガスを導入した上で大気中グロー放電を起こさせて、低温プラズマを生じさせる。このようにして発生したプラズマをガス噴出口から噴出させ、BGA基板の電極の上に暴露し、この上にあるコンタミネーションを除去し、その後ワイヤボンディングを行う。
【0004】
また、特許文献2には、プラズマ処理装置等が開示され、ここでは、安定したグロー放電によるプラズマ処理を行うため、ストリーマー放電を抑制する方法として、電極を冷却すること等が述べられている。このプラズマ処理装置を用いたシステムとして、ベルトコンベア等で搬送されるIC搭載回路基板の電子部品を囲む複数のボンディングパッドの表面処理を行うものが述べられている。ここでは、基板の各ボンディングパッドの座標を読み込み、その座標に従ってプラズマジェットの吹き出し位置の移動を制御し、順次送りにより、ボンディングパッドのみにプラズマ処理を行う。
【0005】
また、特許文献3にはマイクロプラズマCVD装置が開示され、そこでは絶縁材料からなる筒状のプラズマトーチの細くなっている先端部に高周波コイルを設け、プラズマトーチ内にワイヤを通す構成において、プラズマトーチ内のワイヤと高周波コイルとの間で高周波電力による誘導プラズマを生じさせることが述べられている。ここで、プラズマトーチの先端の直径はおよそ100μmで、これにより200μm程度の領域に、高密度マイクロプラズマを用いて、カーボン等の材料を大気中で堆積させることができると述べられている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−340599号公報
【特許文献2】特開平11−260597号公報
【特許文献3】特開2003−328138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2の技術は、グロー放電によってプラズマ化したガスを用いている。この方法は容量結合型のプラズマ発生方法で、放電を伴うので、素子への損傷等の影響がある。現実に特許文献1,2で述べられている実施例は、回路基板の接続部、つまりボンディングリードに限られている。
【0008】
特許文献3の技術は、高周波コイルによる誘導プラズマを用いるもので、いわゆる誘導結合型のプラズマ発生方法に属する。一般的に誘導結合型プラズマは、熱プラズマであり、プラズマ温度は高温で、そのままでは素子に損傷を与える。特許文献3のマイクロプラズマ技術は、この熱プラズマを極めて狭い空間で安定に発生させる技術を開示しており、それによれば、限定した小さな領域にプラズマを照射でき、熱的損傷を与えることが少ない。これらのことから、特許文献3のマイクロプラズマ技術はボンディング処理の前の表面処理に使用可能と考えられる。
【0009】
ところで、ワイヤボンディング装置等は、現在高精度化、高速化等の要求が強く、ワイヤを保持してボンディング処理を行うボンディングヘッドの移動は、高精度の位置決めを高速に行っている。したがって、ボンディング処理の前に表面処理を行うには、この高速化のボンディング装置特有の要求等を考慮しなければならない。引用文献2,3はボンディング処理との関係を顧慮せず、引用文献1はプラズマジェット部とワイヤボンディング部との一体構成の具体的内容が述べられていない。
【0010】
このように、従来技術のボンディング装置においては、ボンディング処理との関係で効率的な表面処理を行うことが困難である。
【0011】
本発明の目的は、ボンディング対象に対する表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことを可能とするボンディング装置を提供することである。また、他の目的は、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する表面処理を可能にするボンディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るボンディング装置は、 ボンディングツールを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、先端部に巻回された高周波コイルを有するプラズマキャピラリを含み、高周波コイルへの電力供給によって、プラズマキャピラリの内部でプラズマ化したガスを、プラズマキャピラリの先端部の開口からボンディング対象に噴出させて表面処理を行う誘導結合型のマイクロプラズマ発生部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るボンディング装置は、ボンディングキャピラリを有するボンディングアームを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、先端部に巻回された高周波コイルを有するプラズマキャピラリであって、高周波コイルへの電力供給によって、プラズマキャピラリの内部でプラズマ化したガスをその先端部の開口からボンディング対象に噴出させて表面処理を行うプラズマキャピラリと、プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを用いてボンディング対象に表面処理を行うプラズマ処理部と、ボンディングアームの動作と、プラズマアームの動作とを、連動して制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るボンディング装置において、 ボンディング処理部は、ボンディング用ステージに保持されたボンディング対象に対しボンディング処理を行い、プラズマ処理部は、ボンディング処理部で処理されるボンディング対象と同種類であって表面処理用ステージに保持されたボンディング対象に対し表面処理を行い、制御部は、同種類の各ボンディング対象の同じ部位においてそれぞれボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るボンディング装置において、ボンディング対象は、チップのボンディングパッドと、基板のボンディングリードとであって、制御部は、ボンディングパッドに対する表面処理条件とボンディングリードに対する表面処理条件とを異ならせる制御をすることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るボンディング装置において、制御部は、同一のボンディング対象についてボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることが好ましい。
【0017】
また、制御部は、ボンディングアームとプラズマアームとを一体として移動させる制御をすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成により、ボンディング処理部とともに、先端部に巻回された高周波コイルを有するプラズマキャピラリを含み、高周波コイルへの電力供給によって、プラズマキャピラリの内部でプラズマ化したガスを、プラズマキャピラリの先端部の開口からボンディング対象に噴出させて表面処理を行う誘導結合型のマイクロプラズマ発生部とを備える。したがって、1台のボンディング装置で、ボンディング対象に対し小さい領域にマイクロプラズマを照射して熱損傷の少ない表面処理を行う機能とボンディング処理機能とを備えることができ、ボンディング対象に対する表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことが可能となる。
【0019】
また、ボンディングキャピラリを有するボンディングアームの動作と、プラズマキャピラリを有するプラズマアームの動作とを、連動して制御するので、ボンディング処理との関係で効率的な表面処理を行うことが可能となる。ここで連動とは、バッチ処理ではなく同時並行的に動作することを意味しているが、同期的に動作すること、同期的ではないがほぼ同時期に順次的に動作すること等を含む。
【0020】
また、同種類のボンディング対象をA、Bとして、その同じ部位、例えば同じボンディングパッドについて、ボンディング処理部はボンディング用ステージにおいてボンディング処理を行い、プラズマ処理部は、表面処理用ステージにおいて表面処理を行うこととしたので、同時並行的にボンディング処理と表面処理とを行うことが可能となる。例えば、同様なシーケンスソフトウェアによって、ボンディング処理と表面処理とを実行させることができる。
【0021】
また、ボンディングパッドに対する表面処理条件とボンディングリードに対する表面処理条件とを異ならせるので、表面処理の対象に応じて適切な処理を行うことができる。
【0022】
また、同一のボンディング対象についてボンディング処理と表面処理とを連動して行わせるので、例えば1つのチップについて表面処理とボンディング処理とを同時並行的、あるいは順次的に行うことができ、表面処理の直後にボンディング処理を行うことが可能となる。
【0023】
また、ボンディングアームとプラズマアームとを一体として移動させるので、移動機構が簡単なものとなる。
【0024】
以上のように、本発明に係るボンディング装置によれば、ボンディング対象に対する表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことが可能となる。また、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する表面処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、チップのボンディングパッドと基板のボンディングリードに関する、表面処理とボンディング処理とについて、特に通常のワイヤボンディングについて詳細に説明する。ここで通常のワイヤボンディング技術とは、基板上に搭載されたチップのボンディングパッドにワイヤのファーストボンディングを行い、そのワイヤを延ばしてボンディングリードにセカンドボンディングを行うものである。ボンディングパッドとボンディングリードに関する接続技術は、ボンディング対象の性質に応じ、ワイヤボンディング技術の他にも、チップを積層するスタックド素子におけるワイヤボンディング、フリップチップを形成する技術、COF(Chip on Film)技術、BGA(Ball Grid Array)技術等様々な技術が用いられる。以下では通常のワイヤボンディング技術の他に、できるだけ多くの実施例を説明するが、これら以外のボンディングパッドとボンディングリードとに関する表面処理とボンディング処理についても、本発明が適用できる。
【0026】
上記のように、ボンディング処理とは、ワイヤボンディングのみに限られず、広くチップのボンディングパッドと基板のボンディングリードとに関する接続処理を意味するものとするので、したがって、ボンディング処理に用いるボンディングツールは、ワイヤボンディングの場合においてワイヤを挿通するキャピラリであるが、その他の技術においては必ずしもキャピラリでないことがある。例えば、COFの場合には、チップを把持してボンディングするコレットが、ボンディングツールとなる。
【0027】
また、以下において、表面処理は、ボンディングパッド及びボンディングリードの双方に適用することを基本に説明するが、具体的なボンディング対象の性質によっては、いずれか一方を省略することも可能である。
【0028】
また、表面処理としては、酸化、還元、エッチング等がある。以下では、プラズマキャピラリを1つとし、表面処理の内容はガス源の切換で行うものとして説明するが、ガス切換の遅れを無くすために、プラズマキャピラリを予め複数搭載し、それぞれを異なる表面処理用とすることもできる。
【実施例1】
【0029】
図1は、表面処理とボンディング処理とを行うことができるワイヤボンディング装置10の構成図である。なお、ワイヤボンディング装置10の構成要素ではないが、ボンディング対象8として基板に搭載されたチップが図示されている。ワイヤボンディング装置10は、ボンディング対象8に対し、ボンディングを行う狭い領域、具体的にはチップのボンディングパッドと基板のボンディングリードに、ボンディング処理前の表面処理をプラズマ化したガスの作用により行い、その後にボンディング処理を行う機能を有するワイヤボンディング装置である。
【0030】
ワイヤボンディング装置10は、ボンディング対象8を保持し所定の位置に搬送する搬送機構12、ボンディングキャピラリ24をボンディングアーム本体22の先端に取り付けたボンディングアーム21、ボンディングアーム21を移動駆動するボンディング用のXYZ駆動機構20、プラズマキャピラリ40をプラズマアーム本体32の先端に取り付けたプラズマアーム31、プラズマアーム31を移動駆動する表面処理用のXYZ駆動機構30、表面処理用のガス供給部60、表面処理用の高周波電力供給部80、各要素を一体として制御する制御部90を含んで構成される。ここで、プラズマキャピラリ40、ガス供給部60、高周波電力供給部80は、マイクロプラズマ発生部34を構成する。
【0031】
ボンディング用XYZ駆動機構20は、ボンディングアーム21を図1に示すX軸方向及びY軸方向の任意の位置に移動駆動し、その任意の位置でボンディングキャピラリ24の先端をZ軸方向に上下駆動できる機能を有する。ボンディングアーム21は、ボンディングアーム本体22と、その先端に取り付けられるボンディングキャピラリ24とを含んで構成される。ボンディング用XYZ駆動機構20は、ボンディングアーム本体22を搭載する高速XYテーブルと、ボンディングアーム本体22を揺動駆動してその先端に取り付けられたボンディングキャピラリ24を上下動させる高速Zモータとを含んで構成される。位置決めには、センサを用いたサーボ機構が用いられる。
【0032】
ボンディングアーム21は、上記のようにボンディングアーム本体22と、その先端に取り付けられるボンディングキャピラリ24とから構成されるが、図示されていない超音波トランスデューサによって超音波エネルギをボンディングキャピラリ24に供給し、ボンディングキャピラリ24に挿通されたボンディングワイヤをボンディング対象8に押し付けて接合させる機能を有する。ボンディングキャピラリ24は、周知のように、ボンディングワイヤを挿通する細い筒状の部材である。ボンディングワイヤとしては金やアルミニウム等の細線を用いることができる。なお、図1には、ボンディングワイヤを供給するスプール、ボンディングワイヤの動きをクランプ又は解放するクランパ等の機構の図示を省略してある。
【0033】
表面処理用のXYZ駆動機構30は、後に詳述する表面処理用のプラズマキャピラリ40を先端に有するプラズマアーム31を図1に示すX軸方向及びY軸方向の任意の位置に移動駆動し、その任意の位置でプラズマキャピラリ40の先端をZ軸方向に上下駆動できる機能を有する。プラズマアーム31は、プラズマグアーム本体32と、その先端に取り付けられるプラズマキャピラリ40とを含んで構成される。図2は、プラズマアーム31を抜き出して示したものである。このように、プラズマアーム本体32およびプラズマキャピラリ40の外観は、それぞれ、ボンディングアーム本体22、ボンディングキャピラリ24の外観と類似する。
【0034】
表面処理用のXYZ駆動機構30は、ほぼボンディング用XYZ駆動機構20と同様の機能を有する。相違するのは、ボンディング用XYZ駆動機構20は高速高精度の移動駆動を必要とするが、表面処理用のXYZ駆動機構30はそれほどの位置決め精度を要しないところである。すなわち、表面処理が適用される領域は、ワイヤがボンディングパッド又はボンディングリードに接合される投影面積より広く、また、そのばらつきもある程度許容できるからである。したがって、表面処理用のXYZ駆動機構30を構成するXYテーブル、Zモータの性能は、ボンディング用XYZ駆動機構20のものと比較して緩和することができる。
【0035】
また、このように表面処理用のXYZ駆動機構30及びプラズマアーム本体32およびプラズマキャピラリ40は、ボンディング用のXYZ駆動機構20及びボンディングアーム本体22およびボンディングキャピラリ24とほぼ同様な機能であるので、プラズマキャピラリ40の先端の位置とボンディングキャピラリ24の先端位置を較正することで、両者の移動制御を同じシーケンスで実行させることができる。つまり、同じシーケンスプログラムを適用して、ボンディング対象8に対するプラズマキャピラリ40の先端の移動と、ボンディングキャピラリ24の先端の移動を全く同じとできる。換言すれば、同じシーケンスプログラムを、同時に、表面処理用のXYZ駆動機構30とボンディング用のXYZ駆動機構20に与えると、プラズマキャピラリ40の先端の移動と、ボンディングキャピラリ24の先端の移動とは同じとできる。つまりあたかも、表面処理用装置とボンディング用装置の2台が、全く同じ動きを同時に行うようにできる。
【0036】
表面処理のためのマイクロプラズマ発生部であるプラズマキャピラリ40、ガス供給部60、高周波電力供給部80の内容を説明する前に、残る構成要素を先に説明する。搬送機構12は、ボンディング対象8を、プラズマキャピラリ40の処理領域である表面処理用ステージ14に搬送してそこで位置決め固定し、表面処理を受けさせ、その後、ボンディングキャピラリ24の処理領域であるボンディング用ステージ16に移動搬送し、そこで位置決め固定してボンディング処理を受けさせる機能を有する。かかる搬送機構12は、搬送物をクランプさせて移動させる機構等を用いることができる。
【0037】
制御部90は、搬送機構12、ボンディング用のXYZ駆動機構20、表面処理用のXYZ駆動機構30、ガス供給部60、高周波電力供給部80等と接続され、これらの要素に対し、ボンディング対象8に表面処理を行い、次いでボンディング処理を行わせる制御をする機能を有する電子回路装置である。かかる機能は、ソフトウェアで実現でき、具体的には、表面処理とボンディング処理とを連動して実行する手順を具体化したワイヤボンディングプログラムを実行することで実現できる。かかる機能の一部をハードウェアで実現してもよい。
【0038】
次に表面処理のためのマイクロプラズマ発生部34の詳細な内容を説明する。図3はマイクロプラズマ発生部34の全体構成を示す図である。マイクロプラズマ発生部34は、上記のようにプラズマアーム31の先端のプラズマキャピラリ40、及びこれに接続されるガス供給部60、高周波電力供給部80を含んで構成される。
【0039】
プラズマキャピラリ40は、絶縁体から構成される細い筒状部材の内部で表面処理用のマイクロプラズマを発生させ、これを先端部開口から噴出させてボンディング対象に照射する機能を有する部材である。照射する面積は、先端部開口の大きさ等で限定され、きわめて狭い領域であるので、噴出するプラズマをマイクロプラズマと呼ぶことができる。プラズマキャピラリ40は、絶縁体からなる筒状のプラズマキャピラリ本体42と、その先端部46に近いところの外周に巻回される高周波コイル50とを含んで構成される。
【0040】
プラズマキャピラリ本体42は、マイクロプラズマの源となるガスが供給される貫通穴44を有し、高周波コイル50が巻回される部分を除けばほぼボンディングキャピラリ24と同じ寸法、同じ形状を有する。寸法の一例を上げると、長さが約11mm、太い部分の直径が約1.6mm、貫通穴44のガス供給側の直径が約0.8mm、先端部の開口48の直径が約0.05mmである。材質もボンディングキャピラリ24と同様に、アルミナ等のセラミックを用いることができる。
【0041】
先端部46に近いところに巻回される高周波コイル50は、巻数が数ターンの導線である。なお、図3には図示されていなが、プラズマ点火用の点火装置が高周波コイルの近傍に配置される。
【0042】
ガス供給部60は、マイクロプラズマの源となるガスを供給する機能を有し、具体的には、表面処理用のガスを切り換える切換ボックス62と、表面処理用のガスをキャリアガスに混合するための混合ボックス64と、各種ガス源と、これら及びプラズマキャピラリ40を接続する各種配管とを含んで構成される。ここで各種ガス源は、表面処理用ガス源として、酸化処理用の酸素ガス源66と還元処理用の水素ガス源68が、キャリアガス源としてアルゴンガス源70がそれぞれ用いられる。
【0043】
切換ボックス62は、表面処理が酸化か還元かによって酸素ガス源66と水素ガス源68との間で切換を行い、適当な流量で混合ボックス64に送る機能を有する。混合ボックス64は、切換ボックス62から送られてきた酸化ガス又は還元ガスを、適当な混合比でキャリアガスに混合し、プラズマキャピラリ40の貫通穴44に供給する機能を有する。切換ボックス62、混合ボックス64の制御は、制御部90の下で行われる。なお、消費するガスの量は微量であるので、各ガス源は、小型のガスボンベを用いることができる。勿論、外部ガス源から専用配管によって切換ボックス62、混合ボックス64に接続するものとすることもできる。
【0044】
表面処理用のガス源として、酸素ガスを用いるときは、ボンディング対象の表面における有機物等の異物を酸化によって除去することができる。また、表面処理用のガス源として、水素ガスを用いるときは、ボンディング対象の表面における酸化膜等を還元によって除去することができる。この他に、ボンディング対象によっては、フッ素系のエッチングガスを表面処理用のガス源として用いてもよい。例えば、ボンディングパッドについてその表面に薄く形成された金属酸化膜を除去するには水素ガスを用い、ボンディングリードについてその表面に付着する有機物を除去するには酸素ガスを用いる等のように、ボンディング対象によってマイクロプラズマの性質を切り換えることができる。
【0045】
高周波電力供給部80は、プラズマキャピラリ40に、巻回された高周波コイル50に、マイクロプラズマの生成を持続するための高周波電力を供給する機能を有し、整合回路82と高周波電源84を含んで構成される。整合回路82は、高周波コイル50に高周波電力を供給するときの電力反射を抑制するための回路で、例えば高周波コイル50との間でLC共振回路を構成する回路が用いられる。高周波電源84は、例えば13.56MHz又は100MHz等の周波数の電源を用いることができる。供給する電力の大きさは、ガス供給部60から供給されるガスの種類、流量、マイクロプラズマの安定性等を考慮して決定される。高周波電源84の制御は、制御部90の下で行われる。
【0046】
図4は、マイクロプラズマ発生部34の作用として、プラズマキャピラリ40の内部で生成されるマイクロプラズマ300の様子を示す図である。マイクロプラズマ300を生成するには、次の手順が行われる。最初にガス供給部60を制御し、適当なガス種と流量で、ガスをプラズマキャピラリ40の貫通穴44に供給する。供給されたガスは、先端部の開口48から外部に流れる。ついで、高周波電力供給部80を制御し、適当な高周波電力を高周波コイル50に供給する。これらの適当な条件は予め実験で求めておくことができる。そして、図示されていない点火装置により点火する。供給されたガスの条件と、高周波電力の条件が適当であると、流れているガスに高周波電力による誘導プラズマが生成される。すなわちプラズマが点火する。供給されるガスがプラズマ化するプラズマ領域52は、おおよそ高周波コイル50の配置された位置から、ガスの下流側である。生成されたマイクロプラズマ300は、プラズマキャピラリ40の先端部開口48から噴出する。
【0047】
上記の寸法例では、開口48の直径が0.05mmであるので、ボンディング対象物までの距離を適当に取ることで、ボンディングパッド及びボンディングリードの狭い領域のみにマイクロプラズマ300を照射することができる。また、マイクロプラズマ300を噴出させたままでも、ボンディング対象から遠く離せば、マイクロプラズマ300はボンディング対象物に作用を及ぼさない。したがって、プラズマキャピラリ40の上下によって、ボンディング対象に対するマイクロプラズマ300の作用を制御できる。図5は、その様子を示す図で、ここでは、ボンディング対象8が、回路基板7に搭載されたチップ6として示される。そして、表面処理用XYZ駆動機構30を適当に制御することでプラズマキャピラリ40の位置を移動させ、チップ6のボンディングパッド5と、回路基板7のボンディングリード4との位置において、プラズマキャピラリ40からそれぞれマイクロプラズマ300が照射される様子が示される。
【0048】
上記構成のワイヤボンディング装置10の動作について図6を用いて説明する。図6は、表面処理とボンディング処理とを連動して行わせる手順を示す工程図である。ワイヤボンディングを行うには、ワイヤボンディング装置10を起動させ、搬送機構12によってボンディング対象8を表面処理用ステージ14に搬送し、位置決めする(表面処理位置決め工程)。
【0049】
そして、制御部90の指令により、マイクロプラズマ発生部34の起動が行われ、プラズマキャピラリ40においてマイクロプラズマ300が点火され生成される。ガス種は、キャリアガスのみとし、まだ表面処理用ガスを混合しなくてもよい。このときは、プラズマキャピラリ40はボンディング対象8より遠く離れており、マイクロプラズマ300は何も作用しない(マイクロプラズマ生成工程)。
【0050】
次にワイヤボンディングプログラムを起動させると、表面処理用ステージ14においてボンディング用ステージ16におけるのと同様な位置決めがなされ、最初のボンディングパッド5の真上における高い位置にプラズマキャピラリ40が移動する(ボンディングパッド位置決め工程)。そして、制御部90の指令により、ガス種を還元性ガス、すなわち水素とし、これをキャリアガスに混合し、マイクロプラズマを還元性のマイクロプラズマ301とする(マイクロプラズマ設定工程)。
【0051】
ワイヤボンディングプログラムは、次にボンディングパッド5に向けてプラズマキャピラリ40を下降させる。ここで予め、プラズマキャピラリ40の先端位置を、ボンディングキャピラリの先端位置よりも還元性マイクロプラズマ301の作用高さ分オフセットさせておく。このことで、ワイヤボンディングプログラムがファーストボンディングする処理を行うとき、プラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングパッド5の上で、還元性マイクロプラズマ301がそのボンディングパッド5を最適に照射する高さで止まる。そこで、還元性マイクロプラズマ301は、ボンディングパッド5の表面の薄い酸化膜を除去し、清浄表面とする(ボンディングパッド表面処理工程)。その様子を図6(a)に示す。
【0052】
次に、ワイヤボンディングプログラムは、プラズマキャピラリ40を上方に引き上げ、ボンディングリード4の真上に移動させる(ボンディングリード位置決め工程)。そして、制御部90の指令により、ガス種を酸化ガス、すなわち酸素とし、これをキャリアガスに混合し、マイクロプラズマを酸化性マイクロプラズマ302とする(マイクロプラズマ設定工程)。
【0053】
ワイヤボンディングプログラムは、次にボンディングリード4に向けてプラズマキャピラリ40を下降させる。そして、プラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングパッド5の上で、酸化性マイクロプラズマ302がそのボンディングパッド5を最適に照射する高さで止まる。そこで、酸化性マイクロプラズマ302は、ボンディングリード4の有機物異物を除去する(ボンディングリード表面処理工程)。その様子を図6(b)に示す。
【0054】
以下、ワイヤボンディングプログラムが進展するのにあわせ、制御部90がマイクロプラズマ発生部34を制御して、還元性マイクロプラズマ301、酸化性マイクロプラズマ302の特性を切り換えることで、順次、各ボンディングパッド5とボンディングリード4の表面処理が進められる。そして、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5と、全部のボンディングリード4とが、表面処理されている(表面処理終了工程)。
【0055】
つぎに、制御部90の指令により、搬送機構12は、表面処理が終了したボンディング対象8を、ボンディング用ステージ16に搬送させ、位置決めさせる(ボンディング処理位置決め工程)。そして、ワイヤボンディングプログラムを起動させ、周知のように、ボンディングパッド5においてファーストボンディングを行い、ついでボンディングリード4においてセカンドボンディングを行う。その様子を図6(c),(d)に示す。このとき、ボンディングパッド5においては表面酸化膜が予め除去され、ボンディングリード4においては表面の有機物異物が除去されており、ボンディング処理をより安定的に行うことができる。このようにしてボンディング処理が行われた様子を図6(e)に示す。これを繰り返し、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5と、全部のボンディングリード4とに関するボンディング処理が終了する(ボンディング処理終了工程)。
【0056】
なお、上記において、ボンディングパッド5の表面処理を還元性マイクロプラズマ301による酸化膜除去、ボンディングリード4の表面処理を酸化性マイクロプラズマ302による有機物除去として説明したが、ボンディング対象8の性質によって、これらを組み合わせてもよく、また別の選択を行ってもよい。このようなガス種の設定は、制御部90への入力として、ユーザが選択できるものとすることができる。
【実施例2】
【0057】
図3で説明したマイクロプラズマ発生部34を、バンプボンディング装置に適用することができる。バンプボンディング装置とは、フリップチップ技術において、金バンプを形成するための装置である。すなわち、チップのボンディングパッドにワイヤボンディングの原理を用いて、金ワイヤをボンディングし、それを金バンプとするもので、いわば、通常のワイヤボンディング処理においてセカンドボンディングを省略したものに相当する。したがって、図1のワイヤボンディング装置10において、搬送機構12によって搬送されるボンディング対象8を、完成LSIが配列された完成ウェーハとしたものに相当する。
【0058】
ボンディング対象8を完成ウェーハとするときは、表面処理用ステージ14において、複数の完成LSIについてそれぞれのボンディングパッド5を表面処理する。そして、1枚の完成ウェーハについて全部のボンディングパッドの表面処理が終了すれば、ボンディング用ステージ16に搬送される。そしてそこで、複数の完成LSIについてそれぞれのボンディングパッド5についてバンプが形成される。この場合においても、図6に関連して説明したように、ボンディング用XYZ駆動機構20に用いられるバンプボンディングプログラムを、表面処理用XYZ駆動機構30に同様に適用して、処理を共通化できる。
【0059】
搬送機構12を除き、他の構成要素の内容を図1のワイヤボンディング装置10と同様にして構成されるバンプボンディング装置の動作を図7の工程図を用いて説明する。表面処理は、表面処理用ステージ14において、プラズマキャピラリ40を用いて行われる。ここでは、ガス種を水素とし、マイクロプラズマを還元性マイクロプラズマ301に設定する。
【0060】
そして、バンプボンディングプログラムを表面処理用XYZ駆動機構30に適用することで、最初のLSIの位置においてその最初のボンディングパッド5の真上にプラズマキャピラリ40が来て、ついで、プラズマキャピラリ40が下降し、ちょうどプラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングパッド5の上で、還元性マイクロプラズマ301がそのボンディングパッド5を最適に照射する高さで止まる。そこで、還元性マイクロプラズマ301は、ボンディングパッド5の表面の薄い酸化膜を除去する(ボンディングパッド表面処理工程)。その様子を図7(a)に示す。この工程は、図6(a)に関連して説明した内容と同じである。
【0061】
以下、バンプボンディングプログラムが進展するのにあわせ、順次各LSIの位置においてそれぞれのボンディングパッド5を表面処理する。そして、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5が、表面処理されている(表面処理終了工程)。
【0062】
つぎに、制御部90の指令により、搬送機構12は、表面処理が終了した完成ウェーハを、ボンディング用ステージ16に搬送させ、位置決めさせる(ボンディング処理位置決め工程)。そして、バンプボンディングプログラムを起動させ、最初のLSIの位置において、その最初のボンディングパッド5において、金ワイヤをボンディングし、金バンプを形成する。その様子を図7(b)に示す。このとき、ボンディングパッド5においては表面酸化膜が予め除去されており、ボンディング処理をより安定的に行うことができる。このようにしてボンディング処理が終了し、金バンプ3が形成された様子を図7(c)に示す。これを繰り返し、1枚のウェーハについて全部のLSIにおける全部のボンディングパッド5について金バンプ3が形成される。
【実施例3】
【0063】
図3で説明したマイクロプラズマ発生部34を、フリップチップボンディング装置に適用することができる。フリップチップボンディング装置は、図7で説明したようにバンプが形成されたチップを、回路基板にフェースダウンする装置である。したがって、この場合には、接続されるのは、チップ6のバンプ3と、ボンディングリード4である。そして、フェースダウンするためにチップは反転され、またフェースダウンボンディングのためのボンディングツールは、ボンディングキャピラリではなくて、フェースダウンされたチップを保持するコレットとなる。このように、フリップチップボンディング装置の具体的構成は、かなり図1のワイヤボンディング装置と異なる。
【0064】
フリップチップボンディング装置においてマイクロプラズマ発生部34を適用する局面は、チップを反転してコレットで保持する前に、チップのバンプ3について表面処理するときと、コレットでフェースダウンボンディングする前にボンディングリード4について表面処理するときである。
【0065】
図8に、フリップチップボンディング装置においてマイクロプラズマ発生部34を適用する場合の手順を示す。最初に、チップ6のボンディングパッド5上のバンプ3について、プラズマキャピラリ40からマイクロプラズマを照射する。このときのガス種は、例えば酸素とし、酸化性マイクロプラズマ302を用いることができる。場合によって、ガス種を水素とし、還元性マイクロプラズマ301を用いてもよい。その様子を図8(a)に示す。そして、表面処理が終了したチップ6は反転され、コレット26によってフェースダウン状態で保持される。フェースダウン状態とは、バンプ3が下向きであることである。コレット26のチップ6の保持は、真空吸引で行うことができる。その様子を図8(b)に示す。
【0066】
そして、次に回路基板のボンディングリード4について表面処理が行なわれる。このときのガス種は、例えば酸素とし、酸化性マイクロプラズマ302を用いることができる。場合によって、還元性マイクロプラズマ301を選択してもよい。その様子を図8(c)に示す。そして、フェースダウンで保持されたチップ6を、このボンディングリード4に対し位置決めし、フェースダウンボンディングする。その様子を図8(d)に示す。ボンディングリード4にチップ6のバンプ3が接合された様子を図8(e)に示す。
【0067】
フリップチップ技術において、回路基板がフィルム基板のときは、COF(Chip on Film)と呼ばれるが、この場合の1つの技術として、ボンディングリードに低温半田を設けて、バンプ3との間を熱圧着により接合することが行なわれる。このときには、ボンディングリード4側の表面処理を省略し、バンプ3の表面処理のみ行うものとしてもよい。
【実施例4】
【0068】
上記の各実施形態においては、表面処理用ステージとボンディング用ステージとをそれぞれ設定し、それぞれにおいて表面処理用XYZ駆動機構とボンディング用XYZ駆動機構を用いて、プラズマアームとボンディングアームとを連動、すなわちプラズマキャピラリとボンディングキャピラリとを連動して動作させている。すなわち、同じ種類のボンディング対象の別々の個体について、表面処理とボンディング処理とを平行して行っている。
【0069】
これに対し、同じ処理ステージ上で、同じボンディング対象の個体について、表面処理とボンディング処理とを連動して行うことも可能である。図9は、1つのXYZ駆動機構102、1つのアーム103、1つの処理ステージ106を備える1ステージ型のワイヤボンディング装置100の構成を示す図である。これと比較する意味で、図1のワイヤボンディング装置10を2ステージ型と呼ぶことができる。以下において図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0070】
1ステージ型のワイヤボンディング装置100において、アーム103は、1つのアーム本体104に、ボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40の双方が取り付けられる。その様子を図10に示す。ここで、プラズマキャピラリ40と、ガス供給部60、高周波電力供給部80とでマイクロプラズマ発生部34を構成すること、及びその内容は、図3に関連して説明したものと同じである。
【0071】
図10のように、1つのアーム103がボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40とを有することで、XYZ駆動機構が1つで済み、構成が簡単となる。この場合の表面処理とボンディング処理の手順は、一般的には逐次交互的に行うことができる。例えば、1つのボンディングパッドについてプラズマキャピラリ40を位置決めしてボンディングパッドの表面処理を行い、その後アーム103を移動させて対応するボンディングリードにプラズマキャピラリ40を位置決めしてボンディングリードの表面処理を行う。このようにして1組のボンディングパッドとボンディングリードの表面処理が終わると、次にアーム103を移動させボンディングキャピラリ24の位置をそのボンディングパッドのところに戻してワイヤのファーストボンディングを行い、続けて、ボンディングキャピラリ24の位置をそのボンディングリードのところに移してセカンドボンディングを行う。
【0072】
すなわち、2ステージ型ワイヤボンディング装置10の動作に関連して説明した図6の手順において、(a)から(e)を繰り返す。この手順は、表面処理−ボンディング処理−表面処理−ボンディング処理−というように、表面処理とボンディング処理とを交互に行い、そしてこれを、ボンディングパッドとボンディングリードの1組ごとに逐次的に行う。この方法は、ボンディングパッド及びボンディングリードについて、その表面処理の後、ボンディング処理までの時間を短くでき、表面処理の後に酸化膜や異物等が再付着する機会を減らしてボンディングを行うことができる。
【0073】
図10に示す構成は、1つのアーム本体104にボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40との双方が近接して平行に配置される。ボンディングキャピラリ24に対しプラズマキャピラリ40を傾けて取り付け、ボンディングキャピラリ24の向かう先と、プラズマキャピラリ40の向かう先をほぼ同じにすることで、アーム103の移動駆動はより簡単になる。すなわち、アーム103を移動させることなく、同じボンディングパッド又はボンディングリードに対し、プラズマキャピラリ40からマイクロプラズマを照射して表面処理を行い、その後マイクロプラズマの生成を止めて、ボンディングキャピラリ24を用いてワイヤをボンディングすることができる。
【0074】
図10の構成においては、1つのアーム本体104にボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40との双方が取り付けられるので、例えばアーム本体104が超音波エネルギをその先端側に効率よく伝達するためのホーンを兼ねる場合には、そのエネルギ伝達効率がプラズマキャピラリ40の存在によって必ずしも最適とならないことがありえる。したがって、図10の構成を用いるワイヤボンディング装置は、超音波エネルギを用いない方式、例えば熱圧着方式の場合に好適である。また、熱圧着を超音波エネルギによって支援する装置においても適用できる。
【0075】
図11は、1ステージ型ワイヤボンディング装置において、他のアーム構成の例を示す図である。この装置におけるアーム120は、基部122が共通で、ボンディングキャピラリ24用のボンディングアーム本体124と、プラズマキャピラリ40用のプラズマアーム本体126との2つが相互に干渉しないように分離して取り付けられる。基部122は、共通のXYZ駆動機構に取り付けられる。
【0076】
図11に示す構成によれば、超音波エネルギを主体にしてボンディング処理を行う方式のボンディング装置においても、プラズマキャピラリ40の影響をなくして、ボンディングアーム本体124の形状を最適に設定できる。
【0077】
なお、図11では、ボンディングキャピラリ24に対しプラズマキャピラリ40を傾けて取り付け、ボンディングキャピラリ24の向かう先と、プラズマキャピラリ40の向かう先をほぼ同じにする場合を示した。このようにすることで、上記のように、アーム120の移動駆動をより簡単にできる。もちろん、ボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40とを平行に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る実施の形態において、表面処理とボンディング処理とを行うことができるワイヤボンディング装置の構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、マイクロプラズマ発生部の全体構成を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、プラズマキャピラリの内部で生成されるマイクロプラズマの様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、ボンディング対象にマイクロプラズマが照射される様子を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、表面処理とボンディング処理とを連動して行わせる手順を示す工程図である。
【図7】他の実施形態として、バンプボンディング装置の動作を示す工程図である。
【図8】他の実施形態として、フリップチップボンディング装置の動作を示す工程図である。
【図9】他の実施形態として、1ステージ型のワイヤボンディング装置の構成を示す図である。
【図10】他の実施形態として、1ステージ型のワイヤボンディング装置のアームを示す図である。
【図11】他の実施形態として、1ステージ型ワイヤボンディング装置において、他のアーム構成の例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
3 バンプ、4 ボンディングリード、5 ボンディングパッド、6 チップ、7 回路基板、8 ボンディング対象、10,100 ワイヤボンディング装置、12 搬送機構、14 表面処理用ステージ、16 ボンディング用ステージ、20 ボンディング用XYZ駆動機構、21 ボンディングアーム、22,124 ボンディングアーム本体、24 ボンディングキャピラリ、26 コレット、30 表面処理用XYZ駆動機構、31 プラズマアーム、32,126 プラズマアーム本体、34 マイクロプラズマ発生部、40 プラズマキャピラリ、42 プラズマキャピラリ本体、44 貫通穴、46 先端部、48 開口、50 高周波コイル、52 プラズマ領域、60 ガス供給部、62 切換ボックス、64 混合ボックス、66 酸素ガス源、68 水素ガス源、70 アルゴンガス源、80 高周波電力供給部、82 整合回路、84 高周波電源、90 制御部、102 XYZ駆動機構、103,120 アーム、104 アーム本体、106 処理ステージ、122 基部、300 マイクロプラズマ、301 還元性マイクロプラズマ、302 酸化性マイクロプラズマ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングツールを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、
先端部に巻回された高周波コイルを有するプラズマキャピラリを含み、高周波コイルへの電力供給によって、プラズマキャピラリの内部でプラズマ化したガスを、プラズマキャピラリの先端部の開口からボンディング対象に噴出させて表面処理を行う誘導結合型のマイクロプラズマ発生部と、
を備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
ボンディングキャピラリを有するボンディングアームを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、
先端部に巻回された高周波コイルを有するプラズマキャピラリであって、高周波コイルへの電力供給によって、プラズマキャピラリの内部でプラズマ化したガスをその先端部の開口からボンディング対象に噴出させて表面処理を行うプラズマキャピラリと、
プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを用いてボンディング対象に表面処理を行うプラズマ処理部と、
ボンディングアームの動作と、プラズマアームの動作とを、連動して制御する制御部と、
を備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のボンディング装置において、
ボンディング処理部は、ボンディング用ステージに保持されたボンディング対象に対しボンディング処理を行い、
プラズマ処理部は、ボンディング処理部で処理されるボンディング対象と同種類であって表面処理用ステージに保持されたボンディング対象に対し表面処理を行い、
制御部は、同種類の各ボンディング対象の同じ部位においてそれぞれボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることを特徴とするボンディング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のボンディング装置において、
ボンディング対象は、チップのボンディングパッドと、基板のボンディングリードとであって、
制御部は、ボンディングパッドに対する表面処理条件とボンディングリードに対する表面処理条件とを異ならせる制御をすることを特徴とするボンディング装置。
【請求項5】
請求項2に記載のボンディング装置において、
制御部は、同一のボンディング対象についてボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることを特徴とするボンディング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のボンディング装置において、
制御部は、ボンディングアームとプラズマアームとを一体として移動させる制御をすることを特徴とするボンディング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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