説明

ボンディング装置

【課題】ボンディング装置において、ボンディング対象に対するマイクロプラズマによる表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことである。
【解決手段】ワイヤボンディング装置は、絶縁体からなる筒状のプラズマキャピラリ本体42と、その外側に取り付けられた円筒状の外部電極56と、その中心に配設された線状の内部電極54と、その外周に取り付けられたシールガスノズル74とを含んで構成されるプラズマキャピラリ40を備えている。プラズマキャピラリ40の内部で生成されたマイクロプラズマ300は、本体開口48から噴出し、先端の環状開口76から噴出したシールガス流400によって外気とシールされた状態でボンディングパッド5の表面処理を行う。その表面処理と連動してボンディングキャピラリを用いてボンディングが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンディング装置に係り、特にボンディング対象について表面処理を行った後ボンディング処理を行うボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンディング装置として、半導体チップの電極部と回路基板のリード端子との間を金属細線で接続するワイヤボンディング装置が知られている。金属細線が接続される半導体チップの電極部はボンディングパッドと呼ばれ、回路基板のリード端子はボンディングリードと呼ばれることがあるが、これらに金属細線を超音波接続技術あるいは熱圧着接続技術等を用いて接続する際に、これらの表面状態の重要性が認識されている。すなわち、ボンディングパッドの金属層又はボンディングリードの金属層の表面が汚染され、あるいは異物があると、金属細線との間で良好な電気的接合を行うことができず、また機械的接合強度も弱い。そこで、ボンディング処理を行う前に、ボンディングパッドあるいはボンディングリードの表面処理を行うことが試みられる。
【0003】
そのために、1つはボンディング処理を行う前に、ボンディングパッドあるいはボンディングリードの表面処理を行うことが試みられる。例えば、特許文献1には、被接続表面をクリーニングしてからワイヤボンディングを行う装置等が開示され、そこでは、プラズマジェット部とワイヤボンディング部とが一体構成されるワイヤボンディング装置が述べられている。プラズマジェット部は、外側誘電体管と内側誘電体管とからなる同軸の二重構造で、外側誘電体管には接地された円錐状電極が、内側誘電体管の内部には丸棒状の高周波電極がそれぞれ設けられ、この間に例えばアルゴンガスを導入した上で大気中グロー放電を起こさせて、低温プラズマを生じさせる。このようにして発生したプラズマをガス噴出口から噴出させて電極上のコンタミネーションを除去し、その後ワイヤボンディングを行う。
【0004】
また、特許文献2には、プラズマ処理装置等が開示され、ここでは、安定したグロー放電によるプラズマ処理を行うため、ストリーマー放電を抑制する方法として、電極を冷却すること等が述べられている。このプラズマ処理装置を用いたシステムとして、ベルトコンベア等で搬送されるIC搭載回路基板の電子部品を囲む複数のボンディングパッドの表面処理を行うものが述べられている。ここでは、基板の各ボンディングパッドの座標を読み込み、その座標に従ってプラズマジェットの吹き出し位置の移動を制御し、順次送りによりプラズマ処理を行う。
【0005】
また、特許文献3にはマイクロプラズマCVD装置が開示され、そこでは絶縁材料からなる筒状のプラズマトーチの細くなっている先端部に高周波コイルを設け、プラズマトーチ内にワイヤを通す構成において、プラズマトーチ内のワイヤと高周波コイルとの間で高周波電力による誘導プラズマを生じさせることが述べられている。ここで、プラズマトーチの先端の直径はおよそ100μmで、これにより200μm程度の領域に、高密度マイクロプラズマを用いて、カーボン等の材料を大気中で堆積させることができると述べられている。
【0006】
また、特許文献4には、高速、高温プラズマを用いた表面処理装置及びこれを用いた表面処理方法が開示されている。ここでは、誘導コイルの巻回されたプラズマ発生部のラバルノズル入口に二重管を接続し、内管にはプラズマ発生用ガスを流し、外管にはラバルノズル内面と発生したプラズマとをシールするシールガスを流して、ラバルノズル内面を保護する構造が述べられている。これにより、ラバルノズル内面から不純物のパーチクルがプラズマガス中に入り込んで表面処理品質の低下を低下させることを防止する。
【0007】
高温のプラズマについては、特許文献5に、タンディシュ内の溶鋼をプラズマアークにより加熱するプラズマトーチが開示されている。ここでは、カソード電極とこのカソード電極を中心としてその外周に同心円上にプラズマ作動ガスを供給するプラズマ作動ガス供給管を配設し、その外周で前記カソード電極の同心円上に前記カソード電極と前記プラズマ作動ガスにより発生するプラズマアークをシールするシールガス供給管を配設している。このシールガスによって、電極が空気中の酸素などに接触して損耗することを少なくすることが開示されている。
【0008】
もう1つの試みは、金属層を予め保護しておくことである。たとえば、特許文献6には、半導体装置等が開示され、ここでは、銅又は銅系合金を配線材料に用いる半導体装置のボンディングワイヤ結線用電極パッドを多層構造にすることが述べられている。すなわち、半導体基板上に凹部を形成し、その凹部に下層から銅膜、拡散防止膜、酸化防止膜の順に成膜する。また、銅膜の下面と接続する銅系アンカー層が半導体装置の絶縁膜層に埋め込まれる。拡散防止層は、TiN、W等で、酸化防止膜はAl、Au、Ag等を主体とした合金である。これらはすべて凹部の中に形成され、化学機械研摩(CMP)によって、これ以外の部分に堆積した拡散防止膜、酸化防止膜は除去され、絶縁膜と同じ高さの電極パッドが得られる。
【0009】
【特許文献1】特開2000−340599号公報
【特許文献2】特開平11−260597号公報
【特許文献3】特開2003−328138号公報
【特許文献4】特開平9−316645号公報
【特許文献5】特開平11−291023号公報
【特許文献6】特開2001−15549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
低温のマイクロプラズマをボンディングパッドやボンディングリードに照射して、その表面処理を行う際に、プラズマ化したガスの噴流の周囲にある外気や外気中の有機物などがガスの噴流に巻き込まれることがある。これは、マイクロプラズマの速度が、超音速のような高速でない場合であっても起こりうる。そして、このように外気や有機物がプラズマ噴流の中に巻き込まれると、一端表面処理したボンディングパッドやボンディングリードの表面を表面処理手段であるマイクロプラズマ自身によって再度酸化させてしまったり、一端表面から除去した有機物を再度付着させたりすることが発生する。すると、マイクロプラズマによる表面処理を行っても、ボンディングワイヤとボンディングパッド、あるいはボンディングリードとの間で良好な電気的接合を行うことができず、また機械的接合強度も弱くなってしまうという問題がある。
【0011】
特許文献1又は3に記載された従来技術は、いずれも低温の微細なマイクロプラズマによって、ボンディングパッドあるいはボンディングリードの表面処理を行うことは開示されているが、上記のようなマイクロプラズマが周囲の外気を巻き込んで処理対象物の表面を再酸化、再汚染してしまうという問題点については開示されていない。また、特許文献4の従来技術には超音速のプラズマがプラズマ発生器のラバルノズル内面を保護するためにプラズマとラバルノズルの間にシールガスを流してこれらが直接接触することを防止すということは開示されているが、低温プラズマが周囲の外気や有機物を巻き込むという点については記載も開示もされていない。更に、特許文献5の従来技術には2000℃というような高温状態において動作する加熱プラズマにおいて、プラズマ作動ガスにより発生するプラズマアークをシールするシールガスを外周に供給し、電極が空気中の酸素などに接触して損耗を少なくすることが開示されているが、低温の表面処理用プラズマについては記載されていない。
【0012】
一方、ワイヤボンディング装置等は、現在高精度化、高速化等の要求が強く、ワイヤを保持してボンディング処理を行うボンディングヘッドの移動は、高精度の位置決めを高速に行っている。したがって、ボンディング処理の前に表面処理を行うには、この高速化のボンディング装置特有の要求等を考慮しなければならない。特許文献2、3に記載の従来技術はボンディング処理との関係を顧慮せず、特許文献1に記載の従来技術はプラズマジェット部とワイヤボンディング部との一体構成の具体的内容が述べられていない。また、特許文献6に記載された従来技術はプラズマ処理との関係が述べられていない。
【0013】
このように、従来技術のボンディング装置においては、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する表面処理を効果的に行うことが困難である。また、ボンディング対象に対する表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことも困難である。ここで、ボンディング対象の表面処理を除去処理と堆積処理に大別することができ、除去処理としては、還元、エッチング等によりボンディング対象の表面の汚染や酸化膜や異物を除去して清浄面とすることが有り、堆積処理としては、ボンディング性のよい材料、例えば、ボンディングワイヤと同じ金をボンディング対象の表面に堆積させることが有る。いずれの処理もマイクロプラズマによる処理であることから、上記の従来技術では、除去処理、堆積処理共に処理の際の再酸化、再汚染の問題が未解決である。更に、再酸化、再汚染を解決してそれをどのようにボンディング技術と結びつけるかも未解決である。
【0014】
本発明の目的は、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にするボンディング装置を提供することである。また、他の目的は、ボンディング対象に対する表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことを可能とするボンディング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のボンディング装置は、ボンディングツールを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、内部でプラズマ化したガスを先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のボンディング装置は、ボンディングキャピラリを有するボンディングアームを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、内部でプラズマ化したガスを先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを用いてボンディング対象に表面処理を行うプラズマ処理部と、ボンディングアームの動作と、プラズマアームの動作とを、連動して制御する制御部と、を備えることを特徴とする。ここで、ボンディング処理部は、ボンディング用ステージに保持されたボンディング対象に対しボンディング処理を行い、プラズマ処理部は、ボンディング処理部で処理されるボンディング対象と同種類であって表面処理用ステージに保持されたボンディング対象に対し表面処理を行い、制御部は、同種類の各ボンディング対象の同じ部位においてそれぞれボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることとしても好適である。また、プラズマ発生部は、絶縁体からなる筒状部材と同軸上に取り付けられた円筒型外面電極と筒状部材の中心軸上に取り付けられた線状の内部電極とへの電力供給によって、筒状部材の内部でプラズマ化したガスを、筒状部材の先端部の開口から噴出させる容量結合型のマイクロプラズマ発生部であること、としても好適である。
【0017】
本発明のボンディング装置は、ボンディングツールを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、内部でプラズマ化したガスを、先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、プラズマ発生部の中に挿入される所定材料の細線の先端位置をプラズマ発生部の内部でガスがプラズマ化するプラズマ領域との関係で変更する手段であって、細線の先端位置がプラズマ領域の外側にあり、ボンディング対象物の表面をプラズマ化したガスで除去する除去位置と、細線の先端位置がプラズマ領域の内側にあり、細線の材料をプラズマ化したガスとともにボンディング対象物に噴出させて堆積させる堆積位置との間で変更する位置変更手段と、位置変更手段によってマイクロプラズマ発生部における細線位置を表面除去位置に移動させてボンディング対象物の表面の汚染や酸化膜を除去したのち、細線位置を堆積位置に移動させてボンディング対象物に所定材料を堆積させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のボンディング装置は、ボンディングキャピラリを有するボンディングアームを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、内部でプラズマ化したガスを、先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを用いてボンディング対象に表面処理を行うプラズマ処理部と、プラズマ発生部の中に挿入される所定材料の細線の先端位置をプラズマ発生部の内部でガスがプラズマ化するプラズマ領域との関係で変更する手段であって、細線の先端位置がプラズマ領域の外側にあり、ボンディング対象物の表面をプラズマ化したガスで除去する除去位置と、細線の先端位置がプラズマ領域の内側にあり、細線の材料をプラズマ化したガスとともにボンディング対象物に噴出させて堆積させる堆積位置との間で変更する位置変更手段と、ボンディングアームの動作と、プラズマアームの動作とを、連動して制御する制御部と、を備え、制御部は、位置変更手段によってプラズマ発生部における細線位置を表面除去位置に移動させてボンディング対象物の表面を除去したのち、細線位置を堆積位置に移動させてボンディング対象物に所定材料を堆積させ、次に、ボンディング処理部によって、所定材料の堆積した部位にボンディング処理を行わせることを特徴とする。ここで、ボンディング処理部は、ボンディング用ステージに保持されたボンディング対象に対しボンディング処理を行い、プラズマ処理部は、ボンディング処理部で処理されるボンディング対象と同種類であって表面処理用ステージに保持されたボンディング対象に対し表面処理を行い、制御部は、同種類の各ボンディング対象の同じ部位においてそれぞれボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることとしても好適である。
【0019】
本発明のボンディング装置において、制御部は、同一のボンディング対象についてボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることを特徴ととても好適であるし、更に、制御部は、ボンディングアームとプラズマアームとを一体として移動させる制御をすることとしても好適である。また、プラズマ発生部は、絶縁体からなる筒状部材に巻回された高周波コイルへの電力供給によって、筒状部材の内部でプラズマ化したガスを、筒状部材の先端部の開口から噴出させる誘導結合型のマイクロプラズマ発生部であること、としても好適である。
【0020】
本発明のボンディング装置において、シールガスはプラズマ化するガスと同等あるいは該ガスよりも化学的活性の低いガスであること、としても好適であるし、シールガスは不活性ガスであること、としても好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にすることができるという効果を奏する。また、ボンディング対象に対する表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、半導体チップのボンディングパッドと基板のボンディングリードに関する、表面処理とボンディング処理とについて、特に通常のワイヤボンディングについて詳細に説明する。ここで通常のワイヤボンディング技術とは、基板上に搭載された半導体チップのボンディングパッドにワイヤのファーストボンディングを行い、そのワイヤを延ばしてボンディングリードにセカンドボンディングを行うものである。ボンディングパッドとボンディングリードに関する接続技術は、ボンディング対象の性質に応じ、ワイヤボンディング技術の他にも、半導体チップを積層するスタックド素子におけるワイヤボンディング、フリップチップを形成する技術、COF(Chip on Film)技術、BGA(Ball Grid Array)技術等様々な技術が用いられる。以下では通常のワイヤボンディング技術の他に、できるだけ多くの実施例を説明するが、これら以外のボンディングパッドとボンディングリードとに関する表面処理とボンディング処理についても、本発明が適用できる。
【0023】
上記のように、ボンディング処理とは、ワイヤボンディングのみに限られず、広く半導体チップのボンディングパッドと基板のボンディングリードとに関する接続処理を意味するものとするので、したがって、ボンディング処理に用いるボンディングツールは、ワイヤボンディングの場合においてワイヤを挿通するキャピラリであるが、その他の技術においては必ずしもキャピラリでないことがある。例えば、COFの場合には、半導体チップを把持してボンディングするコレットが、ボンディングツールとなる。
【0024】
また、以下において、表面処理は、ボンディングパッド及びボンディングリードの双方に適用することを基本に説明するが、具体的なボンディング対象の性質によっては、いずれか一方を省略することも可能である。
【実施例1】
【0025】
図1は、表面処理とボンディング処理とを行うことができるワイヤボンディング装置10の構成図であり、ボンディング対象8として基板に搭載された半導体チップも図示されている。ワイヤボンディング装置10は、ボンディング対象8に対し、ボンディングを行う狭い領域、具体的には半導体チップのボンディングパッドと基板のボンディングリードに、ボンディング処理前の表面処理をプラズマ化したガスの作用により行い、その後にボンディング処理を行う機能を有するワイヤボンディング装置である。
【0026】
ワイヤボンディング装置10は、ボンディング対象8を保持し所定の位置に搬送する搬送機構12、ボンディングキャピラリ24をボンディングアーム本体22の先端に取り付けたボンディングアーム21、ボンディングアーム21を移動駆動するボンディング用のXYZ駆動機構20、プラズマキャピラリ40をプラズマアーム本体32の先端に取り付けたプラズマアーム31、プラズマアーム31を移動駆動する表面処理用のXYZ駆動機構30、表面処理用のガス供給部60、表面処理用の高周波電力供給部80、シールガス供給部86、各要素を一体として制御する制御部90を含んで構成される。ここで、プラズマキャピラリ40、ガス供給部60、高周波電力供給部80はマイクロプラズマ発生部34を構成し、プラズマキャピラリ40先端のシールガスノズル74と、シールガス供給部86はシールガス噴出部を構成する。
【0027】
ボンディング用XYZ駆動機構20は、ボンディングアーム21を図1に示すX軸方向及びY軸方向の任意の位置に移動駆動し、その任意の位置でボンディングキャピラリ24の先端をZ軸方向に上下駆動できる機能を有する。ボンディングアーム21は、ボンディングアーム本体22と、その先端に取り付けられるボンディングキャピラリ24とを含んで構成される。ボンディング用XYZ駆動機構20は、ボンディングアーム本体22を搭載する高速XYテーブルと、ボンディングアーム本体22を揺動駆動してその先端に取り付けられたボンディングキャピラリ24を上下動させる高速Zモータとを含んで構成される。位置決めには、センサを用いたサーボ機構が用いられる。
【0028】
ボンディングアーム21は、上記のようにボンディングアーム本体22と、その先端に取り付けられるボンディングキャピラリ24とから構成されるが、図示されていない超音波トランスデューサによって超音波エネルギをボンディングキャピラリ24に供給し、ボンディングキャピラリ24に挿通されたボンディングワイヤをボンディング対象8に押し付けて接合させる機能を有する。ボンディングキャピラリ24は、周知のように、ボンディングワイヤを挿通する細い筒状の部材である。ボンディングワイヤとしては金やアルミニウム等の細線を用いることができる。なお、図1には、ボンディングワイヤを供給するスプール、ボンディングワイヤの動きをクランプ又は解放するクランパ等の機構の図示を省略してある。
【0029】
表面処理用のXYZ駆動機構30は、後に詳述する表面処理用のプラズマキャピラリ40を先端に有するプラズマアーム31を図1に示すX軸方向及びY軸方向の任意の位置に移動駆動し、その任意の位置でプラズマキャピラリ40の先端をZ軸方向に上下駆動できる機能を有する。プラズマアーム31は、プラズマアーム本体32と、その先端に取り付けられるプラズマキャピラリ40とを含んで構成される。また、プラズマキャピラリ40先端にはシールガスノズル74が備えられている。図2は、プラズマアーム31を抜き出して示したものである。このように、プラズマアーム本体32およびプラズマキャピラリ40の外観は、それぞれ、ボンディングアーム本体22、ボンディングキャピラリ24の外観と類似する。
【0030】
表面処理用のXYZ駆動機構30は、ほぼボンディング用XYZ駆動機構20と同様の機能を有する。相違するのは、ボンディング用XYZ駆動機構20は高速高精度の移動駆動を必要とするが、表面処理用のXYZ駆動機構30はそれほどの位置決め精度を要しないところである。すなわち、表面処理が適用される領域は、ワイヤがボンディングパッド又はボンディングリードに接合される投影面積より広く、また、そのばらつきもある程度許容できるからである。したがって、表面処理用のXYZ駆動機構30を構成するXYテーブル、Zモータの性能は、ボンディング用XYZ駆動機構20のものと比較して緩和することができる。
【0031】
また、このように表面処理用のXYZ駆動機構30及びプラズマアーム本体32およびプラズマキャピラリ40は、ボンディング用のXYZ駆動機構20及びボンディングアーム本体22およびボンディングキャピラリ24とほぼ同様な機能であるので、プラズマキャピラリ40の先端の位置とボンディングキャピラリ24の先端位置を較正することで、両者の移動制御を同じシーケンスで実行させることができる。つまり、同じシーケンスプログラムを適用して、ボンディング対象8に対するプラズマキャピラリ40の先端の移動と、ボンディングキャピラリ24の先端の移動を全く同じとできる。換言すれば、同じシーケンスプログラムを、同時に、表面処理用のXYZ駆動機構30とボンディング用のXYZ駆動機構20に与えると、プラズマキャピラリ40の先端の移動と、ボンディングキャピラリ24の先端の移動とは同じとできる。つまりあたかも、表面処理用装置とボンディング用装置の2台が、全く同じ動きを同時に行うようにできる。
【0032】
表面処理のためのマイクロプラズマ発生部34であるプラズマキャピラリ40、ガス供給部60、高周波電力供給部80、及びシールガスシール噴出部35であるシールガスノズル74、シールガス供給部86の内容を説明する前に、残る構成要素を先に説明する。搬送機構12は、ボンディング対象8を、プラズマキャピラリ40の処理領域である表面処理用ステージ14に搬送してそこで位置決め固定し、表面処理を受けさせ、その後、ボンディングキャピラリ24の処理領域であるボンディング用ステージ16に移動搬送し、そこで位置決め固定してボンディング処理を受けさせる機能を有する。かかる搬送機構12は、搬送物をクランプさせて移動させる機構等を用いることができる。
【0033】
制御部90は、搬送機構12、ボンディング用のXYZ駆動機構20、表面処理用のXYZ駆動機構30、ガス供給部60、高周波電力供給部80、シールガス供給部86等と接続され、これらの要素に対し、ボンディング対象8に表面処理を行い、次いでボンディング処理を行わせる制御をする機能を有する電子回路装置である。かかる機能は、ソフトウェアで実現でき、具体的には、表面処理とボンディング処理とを連動して実行する手順を具体化したワイヤボンディングプログラムを実行することで実現できる。かかる機能の一部をハードウェアで実現してもよい。
【0034】
図3を参照しながら、表面処理のためのマイクロプラズマ発生部34及びシールガス噴出部35の詳細な内容を説明する。図3はマイクロプラズマ発生部34の全体構成を示す図である。マイクロプラズマ発生部34は、上記のようにプラズマアーム31の先端のプラズマキャピラリ40、及びこれに接続されるガス供給部60、高周波電力供給部80、シールガス供給部86を含んで構成され、シールガス噴出部35はプラズマキャピラリ40先端のシールガスノズル74、シールガス供給部86を含んで構成される。
【0035】
プラズマキャピラリ40は、絶縁体から構成される細い筒状部材の内部で表面処理用のマイクロプラズマを発生させ、これを先端部開口から噴出させてボンディング対象に照射するとともに、噴出したマイクロプラズマの周囲を取り囲んでマイクロプラズマを外気からシールするシールガスを噴出させる機能を有する部材である。プラズマを照射する面積は、先端部開口の大きさ等で限定され、きわめて狭い領域であるので、噴出するプラズマをマイクロプラズマと呼ぶことができる。プラズマキャピラリ40は、絶縁体からなる筒状のプラズマキャピラリ本体42と、プラズマキャピラリ本体42が取り付けられている導電性材料からなるパイプ58と、プラズマキャピラリ本体42の外側に取り付けられた円筒状の外部電極56と、一端がパイプ58の内面に接し他の一端はプラズマキャピラリ本体42の中心に配設された線状の内部電極54と、プラズマキャピラリ本体42の先端部の外周に取り付けられたシールガスノズル74とを含んで構成される。
【0036】
プラズマキャピラリ本体42には、パイプ58の上端のプラズマ用ガス供給口44からマイクロプラズマの源となるガスが供給され、全体的な大きさは、ほぼボンディングキャピラリ24と同じである。例えば、先端部46の本体開口48の直径が約0.05mm程度で材質もボンディングキャピラリ24と同様に、アルミナ等のセラミックを用いることができる。また、本体開口の直径は0.5から1.0mm程度までの太いものとすることもできる。
【0037】
プラズマキャピラリ本体42の外面の円筒状の外部電極は、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができ、プラズマキャピラリ本体42と密着していてもよいし、微小な隙間を持って取り付けられていてもよい。プラズマキャピラリ本体42の中心軸上に配設された内部電極54の一端は外部電極56のキャピラリ先端側端面と略同一位置まで延びている。また、内部電極はプラズマ発生と安定化のために高融点貴金属が好適である。
【0038】
プラズマキャピラリ本体42の外側にはプラズマキャピラリ本体42よりも内径の大きな円筒状のシールガスノズル74がプラズマキャピラリ本体42と同軸となるように取り付けられている。シールガスノズル74の上端は閉止されてプラズマキャピラリ本体42に固定されており、下端は開放端となっている。シールガスノズル74はプラズマキャピラリ本体42と二重管を構成して、プラズマキャピラリ本体42との間にプラズマキャピラリ本体42の長手軸方向に沿った環状流路を構成している。プラズマキャピラリ本体42の下端の本体開口42はシールガスノズル74の下端の開口よりも突出しており、シールガスノズル74の下端の開放端は環状開口76となっている。シールガスノズル74にはシールガスを供給するシールガス供給パイプ72が固定されている。シールガスノズル74はプラズマキャピラリ本体42と同様にアルミナ等のセラミックスを用いることができる。シールガスノズル74はプラズマキャピラリ本体42の本体開口48から噴出するマイクロプラズマを取り囲むようにシールガスを噴出させることができれば、上記のように円筒状である必要はなく四角形や六角形の角管でもよいし、外面が角型で円筒状の穴があいているような形状であってもよい。また、環状開口76からのシールガス流の流速を高くしたい時には先端をノズル形状に絞っても好適である。
【0039】
ガス供給部60は、マイクロプラズマの源となるガスを供給する機能を有し、具体的には、表面処理用のガスをキャリアガスに混合するための混合ボックス64と、各種ガス源と、これら及びプラズマキャピラリ40を接続する各種配管とを含んで構成される。ここで各種ガス源は、表面処理用ガス源として、還元処理用の水素ガス源68が、キャリアガス源としてアルゴンガス源70がそれぞれ用いられる。
【0040】
混合ボックス64は、送られてきた還元ガスを、適当な混合比でキャリアガスに混合し、プラズマキャピラリ40のプラズマ用ガス供給口44に供給する機能を有する。混合ボックス64の制御は、制御部90の下で行われる。なお、消費するガスの量は微量であるので、各ガス源は、小型のガスボンベを用いることができる。勿論、外部ガス源から専用配管によって混合ボックス64に接続するものとすることもできる。
【0041】
表面処理用のガス源として、水素ガスを用いるときは、ボンディング対象の表面における酸化膜等を還元によって除去することができる。この他に、ボンディング対象によっては、フッ素系のエッチングガスを表面処理用のガス源として用いてもよい。
【0042】
高周波電力供給部80は、プラズマキャピラリ本体42の外面に取り付けられた外部電極56、マイクロプラズマの生成を持続するための高周波電力を供給する機能を有し、整合回路82と高周波電源84を含んで構成される。整合回路82は、外部電極56に高周波電力を供給するときの電力反射を抑制するための回路で、例えばLC共振回路を構成する回路等が用いられる。高周波電源84は、例えば100MHzから500MHz等の周波数の電源を用いることができる。供給する電力の大きさは、ガス供給部60から供給されるガスの種類、流量、マイクロプラズマの安定性等を考慮して決定される。高周波電源84の制御は、制御部90の下で行われる。
【0043】
シールガス供給部86は、シールガスノズルの先端から噴出させるシールガスの源となるガスを供給する機能を有し、具体的には、シールガス源と、これら及びプラズマキャピラリ40を接続する各種配管とを含んで構成される。ここでシールガスは、ボンディングパッド、又はボンディングリード表面を酸化させたり電気的接合、機械的接合度を低下させるような表面劣化を生じさせたりすることが無いように、不活性ガスまたは窒素であって、シールガスはプラズマ化したガスと接触することから、プラズマ発生源として供給されるガスよりも化学的な活性が同等あるいはそれよりも化学的活性が低いガスが用いられる。従ってプラズマ発生用のキャリアガス源としてアルゴンガスが用いられる場合には、アルゴンガスあるいはこれよりも活性の低いヘリウム、ネオンガスを用いる。本実施形態ではプラズマ発生用のキャリアガスにアルゴンガスを用いているので、シールガス源もアルゴンガス源88としている。なお、プラズマ発生用のキャリアガス源として窒素ガスが用いられる場合には、シールガス源として窒素ガス源を用いてもよい。
【0044】
供給ボックス89は、送られてきたシールガスをプラズマキャピラリ40のシールガス供給パイプ72に供給する機能を有する。供給ボックス89の制御は、制御部90の下で行われる。なお、消費するガスの量は微量であるので、シールガス源は、小型のガスボンベを用いることができる。勿論、外部ガス源から専用配管によって供給ボックス89に接続するものとすることもできる。
【0045】
図4は、マイクロプラズマ発生部34及びシールガス噴出部35の作用として、プラズマキャピラリ40の内部で生成されるマイクロプラズマ300とシールガスノズル74の先端の環状開口76から噴出するシールガスが半導体チップ6のボンディングパッド5に照射される様子を示す図である。マイクロプラズマ300を生成するには、次の手順が行われる。最初にガス供給部60を制御し、適当な流量のガスをプラズマキャピラリ40のプラズマ用ガス供給口44に供給する。供給されたガスは、先端部の開口48から外部に流れる。ついで、高周波電力供給部80を制御し、適当な高周波電力を外部電極56に供給する。これらの適当な条件は予め実験で求めておくことができる。そして、供給されたガスの条件と、高周波電力の条件が適当であると、流れているガスに高周波電力によるマイクロプラズマ300が生成される。供給されるガスがプラズマ化するプラズマ領域52は、おおよそ外部電極56の配置された位置から、ガスの下流側である。生成されたマイクロプラズマ300は、プラズマキャピラリ40先端の本体開口48から噴出し、広がりながらボンディングパッド5に向かって流れていく。
【0046】
一方、シールガス流の生成は、最初にシールガス供給部86を制御し、適当な流量のガスをプラズマキャピラリ40のシールガス供給パイプに72に供給する。供給されたシールガスは、シールガスノズル74の中の円環状の流路を流れて先端の環状開口76から円環状のシールガス流400として噴出する。噴出したシールガス流400は、円環状の断面の外径が広がり、内径が小さくなるようにその流路幅を広げながらボンディングパッド5に向かって流れていく。そしてプラズマキャピラリ42の本体開口48とボンディングパッド5との間でマイクロプラズマ300の外周部に接し、マイクロプラズマ300の周囲をシールガス流400が取り囲むような一体の流れとなって、ボンディングパッド5に到達する。図4の下のグラフに示すように、この一体のガス流の中心部は外からシールガスが入ってこないのでプラズマ密度が高く、周辺部はシールガス流400とマイクロプラズマ300が混合してプラズマ密度が次第に低くなり、外気と触れる外周面はシールガスのみが流れている。このようにマイクロプラズマ300の周りをシールガス流が取り囲むことにより、マイクロプラズマ300に外気中の酸素分やコンタミネーションが混入することを防止している。そして、ボンディングパッド5にはプラズマ密度の高い中心部が当たり表面の酸化膜等の除去処理が行われる。
【0047】
本実施形態では、本体開口48の直径が0.05mm程度であるので、ボンディング対象物までの距離を適当に取ることで、ボンディングパッド及びボンディングリードの狭い領域のみにプラズマ密度の高い部分を照射することができる。また、マイクロプラズマ300、シールガス流400を噴出させたままでも、ボンディング対象から遠く離せば、マイクロプラズマ300、シールガス流400はボンディング対象物に作用を及ぼさない。したがって、プラズマキャピラリ40の上下によって、ボンディング対象に対するマイクロプラズマ300の作用を制御できる。図5は、その様子を示す図で、ここでは、ボンディング対象8が、回路基板7に搭載された半導体チップ6として示される。そして、表面処理用XYZ駆動機構30を適当に制御することでプラズマキャピラリ40の位置を移動させ、半導体チップ6のボンディングパッド5と、回路基板7のボンディングリード4との位置において、プラズマキャピラリ40からそれぞれマイクロプラズマ300、シールガス流400が照射される様子が示される。また、本体開口48の直径が0.5から1.0mm程度までの太いものを用いる場合には、ボンディング対象物までの距離を適当に取ることで、複数のボンディングパッド、ボンディングリードにマイクロプラズマ300、シールガス流400を照射することもできる。
【0048】
上記構成のワイヤボンディング装置10の動作について図6を用いて説明する。図6は、表面処理とボンディング処理とを連動して行わせる手順を示す工程図である。ワイヤボンディングを行うには、ワイヤボンディング装置10を起動させ、搬送機構12によってボンディング対象8を表面処理用ステージ14に搬送し、位置決めする(表面処理位置決め工程)。
【0049】
そして、制御部90の指令により、マイクロプラズマ発生部34の起動が行われ、プラズマキャピラリ40においてマイクロプラズマ300が生成される。ガス種は、キャリアガスのみとし、まだ表面処理用ガスを混合しなくてもよい。このときは、プラズマキャピラリ40はボンディング対象8より遠く離れており、マイクロプラズマ300は何も作用しない(マイクロプラズマ生成工程)。
【0050】
次にワイヤボンディングプログラムを起動させると、表面処理用ステージ14においてボンディング用ステージ16におけるのと同様な位置決めがなされ、最初のボンディングパッド5の真上における高い位置にプラズマキャピラリ40が移動する(ボンディングパッド位置決め工程)。そして、制御部90の指令により、還元性ガス、すなわち水素をキャリアガスに混合し、マイクロプラズマを還元性のマイクロプラズマ301とする(マイクロプラズマ設定工程)。
【0051】
次に制御部90の指令により、シールガス流400がプラズマキャピラリ40のシールガスノズル先端の環状開口76から噴出される(シールガス設定工程)。
【0052】
ワイヤボンディングプログラムは、次にボンディングパッド5に向けてプラズマキャピラリ40を下降させる。ここで予め、プラズマキャピラリ40の先端位置を、ボンディングキャピラリの先端位置よりも還元性マイクロプラズマ301及びシールガス流400の作用高さ分オフセットさせておく。このことで、ワイヤボンディングプログラムがファーストボンディングする処理を行うとき、プラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングパッド5の上で、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流がそのボンディングパッド5を最適に照射し外気をシールする高さで止まる。そこで、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流が、外気からシールされた雰囲気の中でボンディングパッド5の表面の薄い酸化膜を除去し、清浄表面とする(ボンディングパッド表面処理工程)。その様子を図6(a)に示す。
【0053】
次に、ワイヤボンディングプログラムは、プラズマキャピラリ40を上方に引き上げ、ボンディングリード4の真上に移動させる(ボンディングリード位置決め工程)。
【0054】
ワイヤボンディングプログラムは、次にボンディングリード4に向けてプラズマキャピラリ40を下降させる。そして、プラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングリード4上で、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流がそのボンディングリード4を最適に照射し外気をシールする高さで止まる。そこで、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流が、外気からシールされた雰囲気の中でボンディングリード4の表面の汚染や異物を除去し、清浄表面とする(ボンディングリード表面処理工程)。その様子を図6(b)に示す。
【0055】
以下、ワイヤボンディングプログラムが進展するのにあわせ、制御部90がマイクロプラズマ発生部34を制御して、順次、各ボンディングパッド5とボンディングリード4の表面処理が進められる。そして、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5と、全部のボンディングリード4とが、表面処理されている(表面処理終了工程)。
【0056】
つぎに、制御部90の指令により、搬送機構12は、表面処理が終了したボンディング対象8を、ボンディング用ステージ16に搬送させ、位置決めさせる(ボンディング処理位置決め工程)。そして、ワイヤボンディングプログラムを起動させ、周知のように、ボンディングパッド5においてファーストボンディングを行い、ついでボンディングリード4においてセカンドボンディングを行う。その様子を図6(c),(d)に示す。このとき、ボンディングパッド5、ボンディングリード4は外気からシールされた状態で表面処理されており、再酸化、再汚染が低減された状態が保持されているので、ボンディング処理をより安定的に行うことができる。このようにしてボンディング処理が行われた様子を図6(e)に示す。これを繰り返し、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5と、全部のボンディングリード4とに関するボンディング処理が終了する(ボンディング処理終了工程)。
【0057】
なお、上記において、ボンディングパッド5、ボンディングリード4の表面処理を還元性マイクロプラズマ301による薄い酸化膜や汚染や異物の除去、として説明したが、ボンディング対象8の性質によって、別の表面処理を行ってもよい。このようなガス種やプラズマ強度等の設定は、制御部90への入力として、ユーザが選択できるものとすることができる。
【0058】
以上説明した本実施形態は、マイクロプラズマ300の周囲をシールガス流400が取り囲むような一体の流れとなって、ボンディング対象であるボンディングパッド5、ボンディングリード4に到達し、マイクロプラズマ300に外気中の酸素分やコンタミネーションが混入することを防止すると共に、プラズマ密度の高い中心部によってボンディング対象であるボンディングパッド5、ボンディングリード4の表面の薄い酸化膜や汚染や異物などの除去処理が行われる。このため、マイクロプラズマによる表面処理におけるボンディング対象の再酸化、再汚染を低減することができ、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にすることができる。更に、この効果的な表面処理によってボンディング処理をより安定的に行うことができるという効果を奏する。
【0059】
また、本実施形態は、ボンディング処理部とともに、プラズマキャピラリ40の先端部の本体開口48からマイクロプラズマ300を噴出させるマイクロプラズマ発生部34と先端の環状開口76から噴出させたシールガス流400を噴出させるシールガス噴出部35とを備える。したがって、1台のボンディング装置で、ボンディング対象に対し小さい領域にマイクロプラズマ300とシールガス流400とを照射して熱損傷、再酸化、再汚染の少ない表面処理を行う機能と、ボンディング処理機能とを備えることができ、ボンディング対象に対する効果的な表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことが可能となるという効果を奏する。
【0060】
また、本実施形態では、ボンディングキャピラリ24を有するボンディングアーム21の動作と、プラズマキャピラリ40を有するプラズマアーム31の動作とを、連動して制御するので、ボンディング処理との関係で効率的な表面処理を行うことが可能となる。ここで連動とは、バッチ処理ではなく同時並行的に動作することを意味しているが、同期的に動作すること、同期的ではないがほぼ同時期に順次的に動作すること等を含む。
【0061】
また、同種類のボンディング対象をA、Bとして、その同じ部位、例えば同じボンディングパッド5について、ボンディング処理部はボンディング用ステージ16においてボンディング処理を行い、プラズマ処理部は、表面処理用ステージ14において表面処理を行うこととしたので、同時並行的にボンディング処理と表面処理とを行うことが可能となる。例えば、同様なシーケンスソフトウェアによって、ボンディング処理と表面処理とを実行させることができる。
【実施例2】
【0062】
図3で説明したマイクロプラズマ発生部34及びシールガス噴出部35とを、バンプボンディング装置に適用することができる。バンプボンディング装置とは、フリップチップ技術において、金バンプを形成するための装置である。すなわち、チップのボンディングパッドにワイヤボンディングの原理を用いて、金ワイヤをボンディングし、それを金バンプとするもので、いわば、通常のワイヤボンディング処理においてセカンドボンディングを省略したものに相当する。したがって、図1のワイヤボンディング装置10において、搬送機構12によって搬送されるボンディング対象8を、完成LSIが配列された完成ウェーハとしたものに相当する。
【0063】
ボンディング対象8を完成ウェーハとするときは、表面処理用ステージ14において、複数の完成LSIについてそれぞれのボンディングパッド5を表面処理する。そして、1枚の完成ウェーハについて全部のボンディングパッドの表面処理が終了すれば、ボンディング用ステージ16に搬送される。そしてそこで、複数の完成LSIについてそれぞれのボンディングパッド5についてバンプが形成される。この場合においても、図6に関連して説明したように、ボンディング用XYZ駆動機構20に用いられるバンプボンディングプログラムを、表面処理用XYZ駆動機構30に同様に適用して、処理を共通化できる。
【0064】
搬送機構12を除き、他の構成要素の内容を図1のワイヤボンディング装置10と同様にして構成されるバンプボンディング装置の動作を図7の工程図を用いて説明する。表面処理は、表面処理用ステージ14において、プラズマキャピラリ40を用いて行われる。制御部90の指令によって、還元性ガス、すなわち水素をキャリアガスに混合し、マイクロプラズマを還元性のマイクロプラズマ301とする。
【0065】
そして、バンプボンディングプログラムを表面処理用XYZ駆動機構30に適用することで、最初のLSIの位置においてその最初のボンディングパッド5の真上にプラズマキャピラリ40が来て、ついで、プラズマキャピラリ40が下降し、ちょうどプラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングパッド5の上で、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流がそのボンディングパッド5を最適に照射し外気をシールする高さで止まる。そこで、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流が、外気からシールされた雰囲気の中でボンディングパッド5の表面の薄い酸化膜を除去し、清浄表面とする(ボンディングパッド表面処理工程)。その様子を図7(a)に示す。この工程は、図6(a)に関連して説明した内容と同じである。
【0066】
以下、バンプボンディングプログラムが進展するのにあわせ、順次各LSIの位置においてそれぞれのボンディングパッド5を表面処理する。そして、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5が、表面処理されている(表面処理終了工程)。
【0067】
つぎに、制御部90の指令により、搬送機構12は、表面処理が終了した完成ウェーハを、ボンディング用ステージ16に搬送させ、位置決めさせる(ボンディング処理位置決め工程)。そして、バンプボンディングプログラムを起動させ、最初のLSIの位置において、その最初のボンディングパッド5において、金ワイヤをボンディングし、金バンプを形成する。その様子を図7(b)に示す。このとき、ボンディングパッド5は外気からシールされた状態で表面処理されており、再酸化、再汚染が低減された状態が保持されているので、ボンディング処理をより安定的に行うことができる。このようにしてボンディング処理が終了し、金バンプ3が形成された様子を図7(c)に示す。これを繰り返し、1枚のウェーハについて全部のLSIにおける全部のボンディングパッド5について金バンプ3が形成される。
【0068】
以上説明した本実施形態も先に説明した実施形態と同様に、マイクロプラズマによる表面処理におけるボンディング対象の再酸化、再汚染を低減することができ、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にすることができるという効果を奏する。
【実施例3】
【0069】
図3で説明したマイクロプラズマ発生部34及びシールガス噴出部35とを、フリップチップボンディング装置に適用することができる。フリップチップボンディング装置は、図7で説明したようにバンプが形成されたチップを、回路基板にフェースダウンする装置である。したがって、この場合には、接続されるのは、半導体チップ6のバンプ3と、ボンディングリード4である。そして、フェースダウンするためにチップは反転され、またフェースダウンボンディングのためのボンディングツールは、ボンディングキャピラリではなくて、フェースダウンされたチップを保持するコレットとなる。このように、フリップチップボンディング装置の具体的構成は、かなり図1のワイヤボンディング装置と異なる。
【0070】
フリップチップボンディング装置においてマイクロプラズマ発生部34を適用する局面は、チップを反転してコレットで保持する前に、チップのバンプ3について表面処理するときと、コレットでフェースダウンボンディングする前にボンディングリード4について表面処理するときである。
【0071】
図8に、フリップチップボンディング装置においてマイクロプラズマ発生部34を適用する場合の手順を示す。最初に、半導体チップ6のボンディングパッド5上のバンプ3について、プラズマキャピラリ40から還元性マイクロプラズマ301及びシールガス流400を照射する。その様子を図8(a)に示す。そして、表面処理が終了した半導体チップ6は反転され、コレット26によってフェースダウン状態で保持される。フェースダウン状態とは、バンプ3が下向きであることである。コレット26の半導体チップ6の保持は、真空吸引で行うことができる。その様子を図8(b)に示す。
【0072】
そして、次に回路基板のボンディングリード4について上記と同様に表面処理が行なわれる。その様子を図8(c)に示す。そして、フェースダウンで保持された半導体チップ6を、このボンディングリード4に対し位置決めし、フェースダウンボンディングする。その様子を図8(d)に示す。ボンディングリード4に半導体チップ6のバンプ3が接合された様子を図8(e)に示す。
【0073】
以上説明した本実施形態も先に説明した実施形態と同様に、マイクロプラズマによる表面処理におけるボンディング対象の再酸化、再汚染を低減することができ、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にすることができるという効果を奏する。
【実施例4】
【0074】
図9に他の実施形態のプラズマキャピラリ40を示す。図3,4に示したプラズマキャピラリの実施形態と同様部分には同様の符号を付して説明は省略する。図9に示すように、この実施施形態は、プラズマキャピラリ40は、プラズマ発生用の外部及び内部電極56,54とシールガスノズル74とがガスの流れ方向に沿って並列に配置されたものである。図9に示すように、シールガスノズル74の上端は外部電極56とパイプ58との間のプラズマキャピラリ本体42に固定されており、プラズマキャピラリ本体42の外面に取り付けられた外部電極56の外側に円筒上のシールガスノズル74が形成されている。外部電極56への給電線はシールガスノズル74を貫通している。このため、シールガスノズル74とプラズマキャピラリ本体42との間の環状流路の中に外部電極56が入ることとなって全体の長さが短くなる。また、外部及び内部電極56,54の下端と本体開口48との距離が短くなるので、本体開口48におけるプラズマ強度を高く保つことができる。本実施形態において、環状開口76からのシールガス流400の流速を高くしたい時には先端をノズル形状に絞っても好適である。
【0075】
本実施形態のプラズマキャピラリ40を用いたボンディング装置10の動作、及び効果は上記の各実施形態と同様である。
【実施例5】
【0076】
図10に他の実施形態のマイクロプラズマ発生部34及びシールガス噴出部35を示す。マイクロプラズマ発生部34は、図3,4に示した実施形態と同様にプラズマアーム31の先端のプラズマキャピラリ40、及びこれに接続されるガス供給部60、高周波電力供給部80を含んで構成され、シールガス噴出部35はプラズマキャピラリ40先端のシールガスノズル74、シールガス供給部86を含んで構成される。以下、図3,4と同様の部分には同様の記号を付して説明は省略する。
【0077】
図10に示すように、プラズマキャピラリ40は、絶縁体からなる筒状のプラズマキャピラリ本体42と、その外周に巻回される高周波コイル50と、プラズマキャピラリ本体42の先端部46の外周に取り付けられたシールガスノズル74とを含んで構成される。
【0078】
プラズマキャピラリ本体42は、マイクロプラズマの源となるガスが供給されるプラズマ用ガス供給口44を有し、高周波コイル50が巻回される部分を除けばほぼボンディングキャピラリ24と同じ寸法、同じ形状を有する。寸法の一例を上げると、長さが約11mm、太い部分の直径が約1.6mm、プラズマ用ガス供給口44のガス供給側の直径が約0.8mm、先端部の開口48の直径が約0.05mmである。材質もボンディングキャピラリ24と同様に、アルミナ等のセラミックを用いることができる。
【0079】
プラズマキャピラリ本体42に巻回される高周波コイル50は、巻数が数ターンの導線である。なお、図10には図示されていなが、プラズマ点火用の点火装置が高周波コイルの近傍に配置される。
【0080】
高周波電力供給部80は、プラズマキャピラリ40に、巻回された高周波コイル50に、マイクロプラズマの生成を持続するための高周波電力を供給する機能を有し、整合回路82と高周波電源84を含んで構成される。整合回路82は、高周波コイル50に高周波電力を供給するときの電力反射を抑制するための回路で、例えば高周波コイル50との間でLC共振回路を構成する回路が用いられる。高周波電源84は、例えば13.56MHz,100MHz,450MHz等の周波数の電源を用いることができる。供給する電力の大きさは、ガス供給部60から供給されるガスの流量、マイクロプラズマの安定性等を考慮して決定される。高周波電源84の制御は、制御部90の下で行われる。ガス供給部60、シールガス供給部86は図3,4にて説明した実施形態と同様である。
【0081】
図11は、マイクロプラズマ発生部34及びシールガス噴出部35の作用として、プラズマキャピラリ40の内部で生成されるマイクロプラズマ300とシールガスノズル74の先端の環状開口76から噴出するシールガスが半導体チップ6のボンディングパッド5に照射される様子を示す図である。マイクロプラズマ300を生成するには、次の手順が行われる。最初にガス供給部60を制御し、適当な流量のガスをプラズマキャピラリ40のプラズマ用ガス供給口44に供給する。供給されたガスは、先端部の開口48から外部に流れる。ついで、高周波電力供給部80を制御し、適当な高周波電力を高周波コイル50に供給する。これらの適当な条件は予め実験で求めておくことができる。そして、供給されたガスの条件と、高周波電力の条件が適当であると、流れているガスに高周波電力によるマイクロプラズマ300が生成される。供給されるガスがプラズマ化するプラズマ領域52は、おおよそ高周波コイル50の配置された位置から、ガスの下流側である。生成されたマイクロプラズマ300は、プラズマキャピラリ40の本体開口48から噴出し、広がりながらボンディングパッド5に向かって流れていく。
【0082】
一方、シールガス流の生成は、最初にシールガス供給部86を制御し、適当な流量のガスをプラズマキャピラリ40のシールガス供給パイプに72に供給する。供給されたシールガスは、シールガスノズル74の中の円環状の流路を流れて先端の環状開口76から円環状のシールガス流400として噴出する。噴出したシールガス流400は、円環状の断面の外径が広がり、内径が小さくなるようにその流路幅を広げながらボンディングパッド5に向かって流れていく。そしてプラズマキャピラリ42の本体開口48とボンディングパッド5との間でマイクロプラズマ300の外周部に接し、マイクロプラズマ300の周囲をシールガス流400が取り囲むような一体の流れとなって、ボンディングパッド5に到達する。図11の下のグラフに示すように、この一体のガス流は、中心部にはシールガスが入ってこないのでプラズマ密度が高く、周辺はシールガス流400とマイクロプラズマ300が混合してプラズマ密度が次第に低くなり、外周面はシールガスのみが流れている。このような流れとなることによって、マイクロプラズマ300に外気中の酸素分やコンタミネーションが混入することを防止している。そして、ボンディングパッド5にはプラズマ密度の高い中心部が当たり表面の酸化膜等の除去処理が行われる。
【0083】
本実施形態のプラズマキャピラリ40を用いたボンディング装置10の動作は、及び効果は上記の各実施形態と同様である。
【実施例6】
【0084】
図12に図11に示したプラズマキャピラリ40の他の実施形態を示す。図11に示したプラズマキャピラリの実施形態と同様部分には同様の符号を付して説明は省略する。図12に示すように、この実施施形態は、プラズマキャピラリ40は、プラズマ発生用の高周波コイル50とシールガスノズル74とがガスの流れ方向に沿って並列に配置されたものである。図12に示すように、シールガスノズル74は高周波コイル50のガス上流側のプラズマキャピラリ本体42に固定されており、プラズマキャピラリ本体42の外面に取り付けられた高周波コイル50の外側に円筒上のシールガスノズル74が形成されている。高周波コイル50への給電線はシールガスノズル74を貫通している。このため、シールガスノズル74とプラズマキャピラリ本体42との間の環状流路の中に高周波コイル50が入ることとなって全体の長さが短くなる。また、高周波コイル50下端と本体開口48との距離が短くなるので、本体開口48におけるプラズマ強度を高く保つことができる。本実施形態において、環状開口76からのシールガス流400の流速を高くしたい時には先端をノズル形状に絞っても好適である。
【0085】
本実施形態のプラズマキャピラリ40を用いたボンディング装置10の動作、及び効果は上記の各実施形態と同様である。
【実施例7】
【0086】
図13は、表面処理とボンディング処理とを行うことができるワイヤボンディング装置200の他の実施形態の構成図である。図1に示したワイヤボンディング装置10と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。なお、ワイヤボンディング装置200の構成要素ではないが、ボンディング対象8として基板に搭載されたチップが図示されている。ワイヤボンディング装置200は、ボンディング対象8に対し、ボンディングを行う狭い領域、具体的にはチップのボンディングパッドと基板のボンディングリードに、ボンディング処理前の表面処理をプラズマ化したガスの作用により行い、その後にボンディング処理を行う機能を有するワイヤボンディング装置である。
【0087】
より具体的には、ボンディングパッド及びボンディングリードに対する表面処理として、その表面の酸化膜や汚染や異物等を除去処理し、その後にボンディングワイヤと同じ材料を堆積させる処理を行う。そしてその表面について除去・堆積処理のされたボンディングパッド及びボンディングリードにボンディングワイヤを接続処理する機能を有する。ボンディングワイヤとしては金やアルミニウム等の細線を用いることができる。
【0088】
ワイヤボンディング装置200は、図1に示したワイヤボンディング装置10に、更にプラズマキャピラリ40に挿通されるボンディングワイヤの位置を変更する位置変更部206を含んで構成され、位置変更部206は制御部90に接続されている。
【0089】
図14は位置変更部206を含む表面処理に関する要素を抜き出して示す図である。表面処理に関係する要素は、プラズマキャピラリ40の内部で表面処理用のマイクロプラズマを発生させ、これを先端部開口から噴出させてボンディング対象に照射するマイクロプラズマ発生部34と、噴出したマイクロプラズマの周囲を取り囲んでマイクロプラズマを外気からシールするシールガスを噴出させるためのシールガス噴出部35と、マイクロプラズマが生成されるプラズマ領域とボンディングワイヤ2の先端位置との関係を変更する位置変更部206とに大別される。
【0090】
位置変更部206は、ボンディングワイヤ2を供給するスプール208、ボンディングワイヤ2の動きをクランプ又は解放するクランパ210、スプール208の回転、クランパ210の開閉等を行うワイヤ位置駆動部212を含んで構成される。ワイヤ位置駆動部212の動作指令は制御部90の制御の下で行われ、これによってスプール208の正逆回転の方向、回転量、クランパ210の開閉のタイミング等が制御され、ボンディングワイヤ2の先端位置をプラズマキャピラリ40の中で上下させることができる。
【0091】
マイクロプラズマ発生部34は図10で説明した、プラズマキャピラリ本体42の先端付近の外面にプラズマ発生用の高周波コイル50取り付けたものと同様である。また、シールガス噴出部35も図10で説明したものと同様である。
【0092】
図15,16は、マイクロプラズマ発生部34及びシールガス噴出部35の作用として、プラズマキャピラリ40の内部で生成されるマイクロプラズマ301,303とシールガスノズル74の先端の環状開口76から噴出するシールガスが半導体チップ6のボンディングパッド5に照射される様子を示す図である。ここで、図15は表面の酸化膜等の除去処理における還元性マイクロプラズマ301の生成の様子、図16は堆積処理におけるスパッタされたボンディングワイヤ2の材料の微粒子、例えばスパッタされた金の微粒子を含むマイクロプラズマ303の生成の様子を示す。
【0093】
還元性マイクロプラズマ301を生成するには、次の手順が行われる。最初にガス供給部60を制御し、適当な流量のキャリアガスと還元性ガスをプラズマキャピラリ40のプラズマ用ガス供給口44に供給する。供給されたガスは、先端部の開口48から外部に流れる。ついで、高周波電力供給部80を制御し、適当な高周波電力を高周波コイル50に供給する。これらの適当な条件は予め実験で求めておくことができる。そして、供給されたガスの条件と、高周波電力の条件が適当であると、流れているガスに高周波電力による還元性マイクロプラズマ301が生成される。供給されるガスがプラズマ化するプラズマ領域52は、おおよそ高周波コイル50の配置された位置から、ガスの下流側である。生成された還元性マイクロプラズマ301は、プラズマキャピラリ40の本体開口48から噴出し、広がりながらボンディングパッド5に向かって流れていく。
【0094】
一方、シールガス流の生成は、最初にシールガス供給部86を制御し、適当な流量のガスをプラズマキャピラリ40のシールガス供給パイプに72に供給する。供給されたシールガスは、シールガスノズル74の中の円環状の流路を流れて先端の環状開口76から円環状のシールガス流400として噴出する。噴出したシールガス流400は、円環状の断面の外径が広がり、内径が小さくなるようにその流路幅を広げながらボンディングパッド5に向かって流れていく。そしてプラズマキャピラリ42の本体開口48とボンディングパッド5との間で還元性マイクロプラズマ301の外周部に接し、還元性マイクロプラズマ301の周囲をシールガス流400が取り囲むような一体の流れとなって、ボンディングパッド5に到達する。図15の下のグラフに示すように、この一体のガス流は、中心部にはシールガスが入ってこないのでプラズマ密度が高く、周辺はシールガス流400と還元性マイクロプラズマ301が混合してプラズマ密度が次第に低くなり、外周面はシールガスのみが流れている。このような流れとなることによって、還元性マイクロプラズマ301に外気中の酸素分やコンタミネーションが混入することを防止している。そして、ボンディングパッド5にはプラズマ密度の高い中心部が当たり表面の酸化膜等の除去処理が行われる。
【0095】
一方、堆積処理を行うときは、図16に示すように、ボンディングワイヤ2は、位置変更部206によって、プラズマ領域52の中にその先端が位置するように、プラズマキャピラリ40の内部に挿入される。また、例えばボンディングワイヤ2が金線であるとすると、還元性マイクロプラズマ301により、プラズマ領域52においてボンディングワイヤ2の材料が微粒子化し、そのスパッタされた金の微粒子を含むマイクロプラズマ303が先端部の本体開口48から噴出し、ボンディング対象の表面にボンディングワイヤ2と同じ材料の金が堆積する。この際、表面の酸化物等の除去処理の場合と同様に、表面のシールガス流400が環状開口76から噴出し、堆積した金が外気中の酸素分によって酸化されたり、外気中のコンタミネーションが混入して一緒に堆積されたりしないようにする。
【0096】
上記構成のワイヤボンディング装置100の動作について図17を用いて説明する。図17は、表面の除去処理と堆積処理を含む表面処理と、ボンディング処理とを連動して行わせる手順を示す工程図である。ワイヤボンディングを行うには、ワイヤボンディング装置100を起動させ、搬送機構12によってボンディング対象8を表面処理用ステージ14に搬送し、位置決めする(表面処理位置決め工程)。
【0097】
そして、制御部90の指令により、マイクロプラズマ発生部34の起動が行われ、プラズマキャピラリ40においてマイクロプラズマが生成される。これに先立ち、ボンディングワイヤ2は、位置変更部206の機能により、プラズマキャピラリ40の内部で十分高い位置に引き上げられている。ガス種は、キャリアガスのみとし、まだ表面処理用ガスを混合しなくてもよい。このときは、プラズマキャピラリ40はボンディング対象8より遠く離れており、マイクロプラズマは何も作用しない(マイクロプラズマ生成工程)。
【0098】
次にワイヤボンディングプログラムを起動させると、表面処理用ステージ14においてボンディング用ステージ16におけるのと同様な位置決めがなされ、最初のボンディングパッド5の真上における高い位置にプラズマキャピラリ40が移動する(ボンディングパッド位置決め工程)。そして、制御部90の指令により、ガス種を還元性ガス、すなわち水素とし、これをキャリアガスに混合し、マイクロプラズマを還元性マイクロプラズマ301とする(マイクロプラズマ設定工程)。
【0099】
ワイヤボンディングプログラムは、次にボンディングパッド5に向けてプラズマキャピラリ40を下降させる。ここで予め、プラズマキャピラリ40の先端位置を、ボンディングキャピラリの先端位置よりも還元性マイクロプラズマ301及びシールガス流400の作用高さ分オフセットさせておく。このことで、ワイヤボンディングプログラムがファーストボンディングする処理を行うとき、プラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングパッド5の上で、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流がそのボンディングパッド5を最適に照射し外気をシールする高さで止まる。そこで、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流が、外気からシールされた雰囲気の中でボンディングパッド5の表面の薄い酸化膜を除去し、清浄表面とする(ボンディングパッド表面処理工程)。その様子を図17(a)に示す。
【0100】
ついで、制御部90が位置変更部206に指示を与え、ボンディングワイヤ2の先端がプラズマキャピラリ40のプラズマ領域52の中に挿入されるように、ボンディングワイヤ2の先端位置を変更させる。ボンディングワイヤ2が金の細線であるとして、マイクロプラズマは還元雰囲気であるので、ここでプラズマ領域52に挿入されたボンディングワイヤ2の部分は還元性マイクロプラズマ301の作用を受け、微粒子化する。そしてスパッタされた金の微粒子を含むマイクロプラズマ303がボンディングパッド5に向けて照射され、これにより、ボンディングパッド5の清浄表面上に、ボンディングワイヤ2と同じ材料が堆積し、金薄膜が形成される。この際マイクロプラズマ303の周囲はシールガス流400によって外気からシールされている(ボンディングパッド表面堆積処理工程)。その様子を図17(b)に示す。
【0101】
次に、ワイヤボンディングプログラムは、プラズマキャピラリ40を上方に引き上げ、ボンディングリード4の真上に移動させる(ボンディングリード位置決め工程)。これに先立ち、制御部90が位置変更部206に指示を与え、ボンディングワイヤ2の先端がプラズマキャピラリ40のプラズマ領域52の外になるように、ボンディングワイヤ2の先端位置を変更させる。
【0102】
ワイヤボンディングプログラムは、次にボンディングリード4に向けてプラズマキャピラリ40を下降させる。そして、プラズマキャピラリ40の先端は、プラズマキャピラリ40の先端は、ちょうどそのボンディングパッド5の上で、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流がそのボンディングパッド5を最適に照射し外気をシールする高さで止まる。そこで、還元性マイクロプラズマ301とシールガス流400との一体ガス流が、外気からシールされた雰囲気の中でボンディングリード4の表面の汚染や異物等を除去し、清浄表面とする(ボンディングリード表面除去処理工程)。その様子を図17(c)に示す。
【0103】
ついで、制御部90が位置変更部206に指示を与え、ボンディングワイヤ2の先端がプラズマキャピラリ40のプラズマ領域52の中に挿入されるように、ボンディングワイヤ2の先端位置を変更させる。マイクロプラズマは還元雰囲気であるので、ここでプラズマ領域52に挿入されたボンディングワイヤ2の部分は還元性マイクロプラズマ301の作用を受け、微粒子化する。そしてスパッタされた金の微粒子を含むマイクロプラズマ303がボンディングリード4に向けて照射され、これにより、ボンディングリード4の清浄表面上に、ボンディングワイヤ2と同じ材料が堆積し、金薄膜が形成される。この際マイクロプラズマ303の周囲はシールガス流400によって外気からシールされている(ボンディングパッド表面堆積処理工程)。その様子を図17(d)に示す。
【0104】
以下、ワイヤボンディングプログラムが進展するのにあわせ、制御部90がマイクロプラズマ発生部34及び位置変更部206を制御して、マイクロプラズマの特性を表面の除去処理用と堆積処理用に切り換えることで、順次、各ボンディングパッド5とボンディングリード4の表面について表面の除去処理と堆積処理が進められる。そして、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5と、全部のボンディングリード4とについて、表面の酸化膜など除去処理と堆積処理とが終了する(表面処理終了工程)。
【0105】
つぎに、制御部90の指令により、搬送機構12は、表面処理が終了したボンディング対象8を、ボンディング用ステージ16に搬送させ、位置決めさせる(ボンディング処理位置決め工程)。そして、ワイヤボンディングプログラムを起動させ、周知のように、ボンディングパッド5においてファーストボンディングを行い、ついでボンディングリード4においてセカンドボンディングを行う(ボンディング処理工程)。その様子を図17(e),(f)に示す。このとき、各ボンディングパッド5、各ボンディングリード4においては、外気からシールされた状態で表面の酸化膜が除去され、その上にボンディングワイヤ2と同じ材料が薄膜状に堆積しており、ボンディング処理をより安定的に行うことができる。このようにしてボンディング処理が行われた様子を図17(g)に示す。これを繰り返し、ワイヤボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5と、全部のボンディングリード4とに関するボンディング処理が終了する(ボンディング処理終了工程)。
【0106】
以上説明した本実施形態は、還元性マイクロプラズマ301の周囲をシールガス流400が取り囲むような一体の流れとなって、ボンディング対象であるボンディングパッド5、ボンディングリード4に到達し、還元性マイクロプラズマ301に外気中の酸素分やコンタミネーションが混入することを防止すると共に、プラズマ密度の高い中心部によってボンディング対象であるボンディングパッド5、ボンディングリード4の表面の汚染や異物などの除去処理が行われる。また同様にシールガス流を流した状態でボンディングワイヤ2と同じ材料を表面に堆積させることができる。このため、マイクロプラズマによる表面の除去処理、堆積処理においてボンディング対象の再酸化、再汚染を低減することができ、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にすることができる。更に、この効果的な表面処理によってボンディング処理をより安定的に行うことができるという効果を奏する。
【0107】
また、本実施形態は、プラズマキャピラリ40の先端部の本体開口48からマイクロプラズマ300を噴出させるマイクロプラズマ発生部34と先端の環状開口76から噴出させたシールガス流400を噴出させるシールガス噴出部35とを備える。したがって、1台のボンディング装置で、ボンディング対象に対し小さい領域にマイクロプラズマ301とシールガス流400とを照射して熱損傷、再酸化、再汚染の少ない除去処理及び堆積処理を行う機能とボンディング処理機能と、を備えることができ、ボンディング対象に対する効果的な表面処理とボンディング処理とを効率的に行うことが可能となるという効果を奏する。
【実施例8】
【0108】
図13の2ステージ型ワイヤボンディング装置200を基本として、バンプボンディング装置を構成することができる。すなわち、図13のワイヤボンディング装置200において、搬送機構12によって搬送されるボンディング対象8を、完成LSIが配列された完成ウェーハとしたものに相当する。
【0109】
ボンディング対象8を完成ウェーハとするときは、ボンディング用ステージ24において、複数の完成LSIにおけるそれぞれのボンディングパッド5について、表面の除去処理−堆積処理−ボンディング処理が行われる。搬送機構12を除き、他の構成要素の内容を図13のワイヤボンディング装置200と同様にして構成されるバンプボンディング装置の動作を図18の工程図に示す。
【0110】
図18において、(a)は、プラズマキャピラリ40の内部においてボンディングワイヤ2の先端位置をプラズマ領域52の外側に設定し、還元性マイクロプラズマを301によってボンディングパッド5の表面の酸化膜を除去する工程である。この内容は、図17(a)に関連して説明したものと同様である。
【0111】
また、図18(b)は、ボンディングワイヤ2を金の細線として、キャピラリ40の内部においてボンディングワイヤ2の先端位置をプラズマ領域52の内部に設定し、ボンディングパッド5の表面に、ボンディングワイヤ2と同じ材料を堆積させる工程である。この内容は、図17(b)に関連して説明したものと同様である。
【0112】
以下、バンプボンディングプログラムが進展するのにあわせ、順次各LSIの位置においてそれぞれのボンディングパッド5について、表面の除去処理と堆積処理が行われる。そして、バンプボンディングプログラムが終了するときには、ボンディング対象8の全部のボンディングパッド5について、表面の除去処理と堆積処理が終了する。
【0113】
つぎに、制御部90の指令により、搬送機構12は、表面処理が終了した完成ウェーハを、ボンディング用ステージ16に搬送させ、位置決めさせる。そして、バンプボンディングプログラムを起動させ、最初のLSIの位置において、その最初のボンディングパッド5において、金ワイヤをボンディングし、金バンプを形成する。その様子を図18(c)に示す。このとき、ボンディングパッド5においては表面酸化膜が予め除去され、その上に金薄膜が堆積しているので、ボンディング処理をより安定的に行うことができる。このようにしてボンディング処理が終了し、金バンプ3が形成された様子を図18(d)に示す。これを繰り返し、1枚のウェーハについて全部のLSIにおける全部のボンディングパッド5について金バンプ3が形成される。
【0114】
以上説明した本実施形態も先に説明した実施形態と同様に、マイクロプラズマによる表面処理におけるボンディング対象の再酸化、再汚染を低減することができ、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にすることができるという効果を奏する。
【実施例9】
【0115】
図14で説明した位置変更部206とマイクロプラズマ発生部34とシールガス噴出部35を、フリップチップボンディング装置に適用することができる。フリップチップボンディング装置において、位置変更部206と、マイクロプラズマ発生部34と、シールガス噴出部35とを適用する局面は、チップを反転してコレットで保持する前に、チップのバンプ3について表面の除去処理と堆積処理を行うときと、コレットでフェースダウンボンディングする前にボンディングリード4について表面の除去処理と堆積処理を行うときである。図12に、フリップチップボンディング装置において、位置変更部206とマイクロプラズマ発生部34とを適用する場合の手順を示す。
【0116】
図19において、(a)は、ボンディングパッド5上の金バンプ3についてその表面を除去して清浄化する工程である。プラズマキャピラリ40の内部においてボンディングワイヤ2の先端位置をプラズマ領域52の外側に設定し、照射対象が金バンプ3となったことを除けば、図17(a)に関連して説明したものと同様である。
【0117】
また、図19(b)は、ボンディングワイヤ2が金の細線として、キャピラリ40の内部においてボンディングワイヤ2の先端位置をプラズマ領域52の内部に設定し、還元性のマイクロプラズマ301によって清浄化された金バンプ3の表面に、ボンディングワイヤ2と同じ材料を堆積させる工程である。この内容も、照射対象が金バンプ3となったことを除けば、図17(b)に関連して説明したものと同様である。
【0118】
そして、全バンプ3について表面の除去処理と堆積処理が終了した半導体チップ6は反転され、コレット26によってフェースダウン状態で保持される。フェースダウン状態とは、バンプ3が下向きであることである。コレット26の半導体チップ6の保持は、真空吸引で行うことができる。その様子を図19(c)に示す。
【0119】
そして、次に回路基板のボンディングリード4について表面処理が行なわれる。図19(d)は、プラズマキャピラリ40の内部においてボンディングワイヤ2の先端位置をプラズマ領域52の外側に設定し、ボンディングリード4についてその表面の除去処理をする工程である。この内容は、図17(c)に関連して説明したものと同様である。
【0120】
また、図19(e)は、キャピラリ40の内部においてボンディングワイヤ2の先端位置をプラズマ領域52の内部に設定し、還元性マイクロプラズマ301によってボンディングリード4の表面に、ボンディングワイヤ2と同じ材料を堆積させる工程である。この内容も、図17(d)に関連して説明したものと同様である。
【0121】
そして、フェースダウンで保持された半導体チップ6を、このボンディングリード4に対し位置決めし、フェースダウンボンディングする。その様子を図19(f)に示す。ボンディングリード4に半導体チップ6のバンプ3が接合された様子を図19(g)に示す。
【0122】
以上説明した本実施形態も先に説明した実施形態と同様に、マイクロプラズマによる表面処理におけるボンディング対象の再酸化、再汚染を低減することができ、マイクロプラズマによるボンディング対象に対する効果的な表面処理を可能にすることができるという効果を奏する。
【実施例10】
【0123】
上記の各実施形態においては、表面処理用ステージとボンディング用ステージとをそれぞれ設定し、それぞれにおいて表面処理用XYZ駆動機構とボンディング用XYZ駆動機構を用いて、プラズマアームとボンディングアームとを連動、すなわちプラズマキャピラリとボンディングキャピラリとを連動して動作させている。すなわち、同じ種類のボンディング対象の別々の個体について、表面処理とボンディング処理とを平行して行っている。
【0124】
これに対し、同じ処理ステージ上で、同じボンディング対象の個体について、表面処理とボンディング処理とを連動して行うことも可能である。図20は、1つのXYZ駆動機構102、1つのアーム103、1つの処理ステージ106を備える1ステージ型のワイヤボンディング装置100の構成を示す図である。これと比較する意味で、図1のワイヤボンディング装置10を2ステージ型と呼ぶことができる。以下において図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0125】
1ステージ型のワイヤボンディング装置100において、アーム103は、1つのアーム本体104に、ボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40の双方が取り付けられる。その様子を図20に示す。ここで、プラズマキャピラリ40と、ガス供給部60、高周波電力供給部80とでマイクロプラズマ発生部34を構成すること、プラズマキャピラリ40の先端のシールガスノズル74とシールガス供給部86とでシールガス噴出部35を構成すること、及びその内容は、図3、図10に関連して説明したものと同じである。
【0126】
図21のように、1つのアーム103がボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40とを有することで、XYZ駆動機構が1つで済み、構成が簡単となる。この場合の表面処理とボンディング処理の手順は、一般的には逐次交互的に行うことができる。例えば、1つのボンディングパッドについてプラズマキャピラリ40を位置決めしてボンディングパッドの表面処理を行い、その後アーム103を移動させて対応するボンディングリードにプラズマキャピラリ40を位置決めしてボンディングリードの表面処理を行う。このようにして1組のボンディングパッドとボンディングリードの表面処理が終わると、次にアーム103を移動させボンディングキャピラリ24の位置をそのボンディングパッドのところに戻してワイヤのファーストボンディングを行い、続けて、ボンディングキャピラリ24の位置をそのボンディングリードのところに移してセカンドボンディングを行う。
【0127】
すなわち、2ステージ型ワイヤボンディング装置10の動作に関連して説明した図6の手順において、(a)から(e)を繰り返す。この手順は、表面処理−ボンディング処理−表面処理−ボンディング処理−というように、表面処理とボンディング処理とを交互に行い、そしてこれを、ボンディングパッドとボンディングリードの1組ごとに逐次的に行う。この方法は、ボンディングパッド及びボンディングリードについて、その表面処理の後、ボンディング処理までの時間を短くでき、表面処理の後に酸化膜や異物等が再付着する機会を更に減らしてボンディングを行うことができる。
【0128】
図21に示す構成は、1つのアーム本体104にボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40との双方が近接して平行に配置される。ボンディングキャピラリ24に対しプラズマキャピラリ40を傾けて取り付け、ボンディングキャピラリ24の向かう先と、プラズマキャピラリ40の向かう先をほぼ同じにすることで、アーム103の移動駆動はより簡単になる。すなわち、アーム103を移動させることなく、同じボンディングパッド又はボンディングリードに対し、プラズマキャピラリ40からマイクロプラズマを照射して表面処理を行い、その後マイクロプラズマの生成を止めて、ボンディングキャピラリ24を用いてワイヤをボンディングすることができる。
【0129】
図21の構成においては、1つのアーム本体104にボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40との双方が取り付けられるので、例えばアーム本体104が超音波エネルギをその先端側に効率よく伝達するためのホーンを兼ねる場合には、そのエネルギ伝達効率がプラズマキャピラリ40の存在によって必ずしも最適とならないことがありえる。したがって、図21の構成を用いるワイヤボンディング装置は、超音波エネルギを用いない方式、例えば熱圧着方式の場合に好適である。また、熱圧着を超音波エネルギによって支援する装置においても適用できる。
【0130】
図22は、1ステージ型ワイヤボンディング装置において、他のアーム構成の例を示す図である。この装置におけるアーム120は、基部122が共通で、ボンディングキャピラリ24用のボンディングアーム本体124と、プラズマキャピラリ40用のプラズマアーム本体126との2つが相互に干渉しないように分離して取り付けられる。基部122は、共通のXYZ駆動機構に取り付けられる。
【0131】
図22に示す構成によれば、超音波エネルギを主体にしてボンディング処理を行う方式のボンディング装置においても、プラズマキャピラリ40の影響をなくして、ボンディングアーム本体124の形状を最適に設定できる。
【0132】
なお、図22では、ボンディングキャピラリ24に対しプラズマキャピラリ40を傾けて取り付け、ボンディングキャピラリ24の向かう先と、プラズマキャピラリ40の向かう先をほぼ同じにする場合を示した。このようにすることで、上記のように、アーム120の移動駆動をより簡単にできる。もちろん、ボンディングキャピラリ24とプラズマキャピラリ40とを平行に配置してもよい。
【0133】
また、図23に示すように、図23において説明したワイヤボンディング装置100に、更に、プラズマキャピラリ40にワイヤの位置変更部206を取付け、これを制御部90と接続して、ボンディング対象の表面の酸化膜等を除去処理した後にボンディングワイヤと同じ材料を堆積させる処理を行うことができるようにするワイヤボンディング装置110とすることができる。
【0134】
本実施形態は、先に説明した実施形態に加えて、同一のボンディング対象についてボンディング処理と表面処理とを連動して行わせるので、例えば1つのチップについて表面処理とボンディング処理とを同時並行的、あるいは順次行うことができ、表面処理の直後にボンディング処理を行うことが可能となるという効果を奏する。また、ボンディングアームとプラズマアームを一体として移動させるので、移動機構が簡単なものとなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明に係る実施の形態において、表面処理とボンディング処理とを行うことができるワイヤボンディング装置の構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、マイクロプラズマ発生部とシールガス噴出部の全体構成を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、プラズマキャピラリの内部で生成されるマイクロプラズマとシールガスノズルの先端の環状開口から噴出するシールガスが半導体チップのボンディングパッドに照射される様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、ボンディング対象にマイクロプラズマとシールガスが照射される様子を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、表面処理とボンディング処理とを連動して行わせる手順を示す工程図である。
【図7】他の実施形態として、バンプボンディング装置の動作を示す工程図である。
【図8】他の実施形態として、フリップチップボンディング装置の動作を示す工程図である。
【図9】他の実施形態として、他の実施形態のプラズマキャピラリの内部で生成されるマイクロプラズマとシールガスノズルの先端の環状開口から噴出するシールガスが半導体チップのボンディングパッドに照射される様子を示す図である。
【図10】他の実施形態として、他の実施形態のマイクロプラズマ発生部とシールガス噴出部の全体構成を示す図である。
【図11】他の実施形態として、他の実施形態のプラズマキャピラリの内部で生成されるマイクロプラズマとシールガスノズルの先端の環状開口から噴出するシールガスが半導体チップのボンディングパッドに照射される様子を示す図である。
【図12】他の実施形態として、他の実施形態のプラズマキャピラリの内部で生成されるマイクロプラズマとシールガスノズルの先端の環状開口から噴出するシールガスが半導体チップのボンディングパッドに照射される様子を示す図である。
【図13】他の実施形態として、表面処理とボンディング処理とを行うことができるワイヤボンディング装置の構成図である。
【図14】他の実施形態として、表面処理に関係する要素の構成図である。
【図15】他の実施形態として、プラズマキャピラリの内部で生成されるマイクロプラズマとシールガスノズルの先端の環状開口から噴出するシールガスが半導体チップのボンディングパッドに照射される様子を示す図である。
【図16】他の実施形態として、プラズマキャピラリの内部で生成される金の微粒子を含むマイクロプラズマの生成の様子とこのマイクロプラズマとシールガスノズルの先端の環状開口から噴出するシールガスが半導体チップのボンディングパッドに照射される様子を示す図である。
【図17】他の実施形態として、表面の除去および堆積を含む表面処理と、ボンディング処理とを連動して行わせる手順を示す工程図である。
【図18】他の実施形態として、バンプボンディング装置の動作を示す工程図である。
【図19】他の実施形態として、フリップチップボンディング装置の動作を示す工程図である。
【図20】他の実施形態として、1ステージ型のワイヤボンディング装置の構成を示す図である。
【図21】他の実施形態として、1ステージ型のワイヤボンディング装置のアームを示す図である。
【図22】他の実施形態として、1ステージ型ワイヤボンディング装置において、他のアーム構成の例を示す図である。
【図23】他の実施形態として、1ステージ型のワイヤボンディング装置の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
2 ボンディングワイヤ、3 バンプ、4 ボンディングリード、5 ボンディングパッド、6 半導体チップ、7 回路基板、8 ボンディング対象、10,100,110,200 ワイヤボンディング装置、12 搬送機構、14 表面処理用ステージ、16204 ボンディング用ステージ、20 ボンディング用XYZ駆動機構、21 ボンディングアーム、22,124 ボンディングアーム本体、24 ボンディングキャピラリ、26 コレット、30 表面処理用XYZ駆動機構、31,103,120 プラズマアーム、32,104,126 プラズマアーム本体、34 マイクロプラズマ発生部、35 シールガス噴出部、40 プラズマキャピラリ、42 プラズマキャピラリ本体、44 プラズマ用ガス供給口、46 先端部、48 本体開口、50 高周波コイル、52 プラズマ領域、54 内部電極、56 外部電極、58 パイプ、60 プラズマ化ガス供給部、64 混合ボックス、68 水素ガス源、70 アルゴンガス源、72 シールガス供給パイプ、74 シールガスノズル、76 環状開口、80 高周波電力供給部、82 整合回路、84 高周波電源、86 シールガス供給部、88 シールガス源、89 供給ボックス、90 制御部、102 XYZ駆動機構、103,120 アーム、104 アーム本体、106 処理ステージ、122 基部、124 ボンディングアーム本体、126 プラズマアーム本体、206 位置変更部、208 スプール、210 クランパ、212 ワイヤ位置駆動部、300 マイクロプラズマ、301 還元性マイクロプラズマ、303 スパッタされた金の微粒子を含むマイクロプラズマ、400 シールガス流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディングツールを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、
内部でプラズマ化したガスを先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、
を備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
ボンディングキャピラリを有するボンディングアームを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、
内部でプラズマ化したガスを先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、
プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを用いてボンディング対象に表面処理を行うプラズマ処理部と、
ボンディングアームの動作と、プラズマアームの動作とを、連動して制御する制御部と、
を備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のボンディング装置において、
ボンディング処理部は、ボンディング用ステージに保持されたボンディング対象に対しボンディング処理を行い、
プラズマ処理部は、ボンディング処理部で処理されるボンディング対象と同種類であって表面処理用ステージに保持されたボンディング対象に対し表面処理を行い、
制御部は、同種類の各ボンディング対象の同じ部位においてそれぞれボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることを特徴とするボンディング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のボディング装置であって、
プラズマ発生部は、絶縁体からなる筒状部材と同軸上に取り付けられた円筒型外面電極と筒状部材の中心軸上に取り付けられた線状の内部電極とへの電力供給によって、筒状部材の内部でプラズマ化したガスを、筒状部材の先端部の開口から噴出させる容量結合型のマイクロプラズマ発生部であること、
を特徴とするボディング装置。
【請求項5】
ボンディングツールを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、
内部でプラズマ化したガスを、先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、
プラズマ発生部の中に挿入される所定材料の細線の先端位置をプラズマ発生部の内部でガスがプラズマ化するプラズマ領域との関係で変更する手段であって、細線の先端位置がプラズマ領域の外側にあり、ボンディング対象物の表面をプラズマ化したガスで除去する除去位置と、細線の先端位置がプラズマ領域の内側にあり、細線の材料をプラズマ化したガスとともにボンディング対象物に噴出させて堆積させる堆積位置との間で変更する位置変更手段と、
位置変更手段によってマイクロプラズマ発生部における細線位置を表面除去位置に移動させてボンディング対象物の表面の汚染や酸化膜を除去したのち、細線位置を堆積位置に移動させてボンディング対象物に所定材料を堆積させる制御部と、
を備えることを特徴とするボンディング装置。
【請求項6】
ボンディングキャピラリを有するボンディングアームを用いてボンディング対象にボンディング処理を行うボンディング処理部と、
内部でプラズマ化したガスを、先端の開口からボンディング対象に噴出させるプラズマ発生部と、プラズマ発生部の外面に同軸上に取り付けられた環状流路先端の開口からシールガスを噴出させてプラズマ化したガスを外気からシールするシールガス噴出部と、を含むプラズマキャピラリと、
プラズマキャピラリを先端に有するプラズマアームを用いてボンディング対象に表面処理を行うプラズマ処理部と、
プラズマ発生部の中に挿入される所定材料の細線の先端位置をプラズマ発生部の内部でガスがプラズマ化するプラズマ領域との関係で変更する手段であって、細線の先端位置がプラズマ領域の外側にあり、ボンディング対象物の表面をプラズマ化したガスで除去する除去位置と、細線の先端位置がプラズマ領域の内側にあり、細線の材料をプラズマ化したガスとともにボンディング対象物に噴出させて堆積させる堆積位置との間で変更する位置変更手段と、
ボンディングアームの動作と、プラズマアームの動作とを、連動して制御する制御部と、
を備え、
制御部は、
位置変更手段によってプラズマ発生部における細線位置を表面除去位置に移動させてボンディング対象物の表面を除去したのち、細線位置を堆積位置に移動させてボンディング対象物に所定材料を堆積させ、
次に、ボンディング処理部によって、所定材料の堆積した部位にボンディング処理を行わせることを特徴とするボンディング装置。
【請求項7】
請求項6に記載のボンディング装置において、
ボンディング処理部は、ボンディング用ステージに保持されたボンディング対象に対しボンディング処理を行い、
プラズマ処理部は、ボンディング処理部で処理されるボンディング対象と同種類であって表面処理用ステージに保持されたボンディング対象に対し表面処理を行い、
制御部は、同種類の各ボンディング対象の同じ部位においてそれぞれボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることを特徴とするボンディング装置。
【請求項8】
請求項2又は6に記載のボンディング装置において、
制御部は、同一のボンディング対象についてボンディング処理と表面処理とを連動して行わせる制御をすることを特徴とするボンディング装置。
【請求項9】
請求項8に記載のボンディング装置において、
制御部は、ボンディングアームとプラズマアームとを一体として移動させる制御をすることを特徴とするボンディング装置。
【請求項10】
請求項1から3又は請求項5から9のいずれか1項に記載のボディング装置であって、
プラズマ発生部は、絶縁体からなる筒状部材に巻回された高周波コイルへの電力供給によって、筒状部材の内部でプラズマ化したガスを、筒状部材の先端部の開口から噴出させる誘導結合型のマイクロプラズマ発生部であること、
を特徴とするボディング装置。
【請求項11】
請求項1から3又は請求項5から9のいずれか1項に記載のボンディング装置において、シールガスはプラズマ化するガスと同等あるいは該ガスよりも化学的活性の低いガスであること、
を特徴とするボディング装置。
【請求項12】
請求項11に記載のボンディング装置において、シールガスは不活性ガスであること、
を特徴とするボディング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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