説明

ボーリングマシンの安全装置

【課題】ボーリングマシン自体を利用して、スイベルジョイントに接続したホースが回転しているボーリングロッドに近づいて巻き込むことを防止して作業中の安全性を高める。
【解決手段】ボーリングマシン1のベース14に着脱自在に取り付けて立てた支柱13の上部に設けたホースガイド12のリングホルダー20でボーリングロッド2に取り付けられたスイベルジョイント8に連結されたホース9,10を通して滑らせながら案内して、地表に向かって垂れ下がったホース9,10が回転しているボーリングロッド2に近づくことを防いで、スイベルジョイント8に連結されたホース9,10が回転しているボーリングロッド2に巻き付くことを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に孔を掘削するロータリー式ボーリングマシンの安全装置、特に作業中の安全性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木工事や土壌の測定あるいは地層の把握等を目的として地中に孔を掘削するためロータリー式ボーリングマシン(以下、ボーリングマシンという)が広く利用されている。ボーリングマシンは、特許文献1に示すように、ボーリングロッドの先端に取り付けたビットを回転して地中を掘進する。この掘進をするときのビットの冷却や掘削した土砂の地上への搬出などのため、ボーリングロッドの上端部に取り付けたスイベルジョイントに連結された注入用のホースに圧送されている泥水をスイベルジョイントとボーリングロッドを経由してビット先端より噴出している。
【特許文献1】特開2001−220987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記スイベルジョイントに接続したホースは、ボーリングマシンで孔を掘削しているとき、回転しているボーリングロッドに巻き込まれる可能性があり、ホースが回転しているボーリングロッドに巻き込まれると作業者にとって危険である。この作業者の危険を防止するため、スイベルジョイントに接続したホースを適当な位置でやぐら等に固定する必要がある。この場合、スイベルジョイントとホース固定部との間のホースの長さは、ボーリングロッドの前進や後退に支障のない程度に余裕を持たせる必要がある。
【0004】
しかしながらボーリングロッドの前進量が大きい場合、ホース固定部をボーリングマシンの近くに設けると、ボーリングロッドの後退端と前進端でスイベルジョイントとホース固定部との間の長さが大きく変わり、スイベルジョイントの位置によってはホースが弛んで回転しているボーリングロッドに巻き込まれる危険性がある。
【0005】
この危険性を回避するためにはボーリングマシンから十分に離れた位置にホースを固定するやぐら等を別個に設ける必要があり、その設置や除去作業に多くの時間がかかるという短所がある。
【0006】
また、スイベルジョイントとホース固定部との間のホースの長さをボーリングロッドの前進や後退に支障のない程度に余裕を持たせホースを固定しても、ボーリングロッドに取り付けたスイベルジョイントが何らかの原因によりボーリングロッドと共回りするとボーリングロッドにホースが巻き付いてしまう。
【0007】
この発明は、このような短所を解消し、ボーリングマシン自体を利用してスイベルジョイントに接続したホースが回転しているボーリングロッドに近づいて巻き込むことを防止することができるボーリングマシンの安全装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
また、ボーリングロッドに取り付けたスイベルジョイントがボーリングロッドと共回りすることを防止し、スイベルジョイントに接続したホースが回転しているボーリングロッドに巻き付くことを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のボーリングマシンの安全装置は、ボーリングマシンのボーリングロッドに取り付けられたスイベルジョイントに連結されたホースが回転しているボーリングロッドに巻き込まれることを防止する安全装置であって、ホースガイドと、該ホースガイドを支持する支柱と、該支柱をボーリングマシンのベース上に着脱自在に保持する支柱ホルダーを有し、前記ホースガイドは、前記支柱に着脱自在に取り付けられるクランプと、該クランプに回転自在に取り付けられ、スイベルジョイントに連結されたホースを通して滑らせながら案内するホース位置規制部を有し、前記支柱は、前記支柱ホルダーで保持して前記ホース位置規制部を取り付けた高さが作業性に影響しない位置になるようにあらかじめ定めた長さを有し、前記支柱ホルダーは金属管からなり、ボーリングマシンのスピンドルの位置からもっとも離れたベース上に固定されていることを特徴とする。
【0010】
前記ホース位置規制部は、金属製の丸棒又は管を円形に曲げ、交差している部分にホースを通す隙間を有するリングホルダーからなり、一方の端部が前記クランプに取り付けられていることが望ましい。
【0011】
また、前記ホース位置規制部として、前記クランプに回転自在に取り付けたシャックルを使用しても良い。
【0012】
さらに、前記スイベルジョイントのホースを接続している部分と反対側に連結した位置出し軸と、前記ボーリングロッドの近傍に立てて前記位置出し軸を係止する支柱とを有することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、ボーリングマシンのベースに着脱自在に取り付けて立てた支柱の上部に設けたホース位置規制部でボーリングロッドに取り付けられたスイベルジョイントに連結されたホースを通して滑らせながら案内することにより、地表に向かって垂れ下がったホースが回転しているボーリングロッドに近づくことを防ぐことができ、スイベルジョイントに連結されたホースが回転しているボーリングロッドに巻き付くことを防止することができる。
【0014】
また、何らかの原因でホースが回転しているボーリングロッドに巻き付いて作業者がホースに触れようとしても、ホースはボーリングマシンのベース上で作業性に影響しない位置にあるホースガイドで案内しているから、作業者がホースに触れることができず、ボーリングマシンのスイッチを切るなど、労働安全衛生規則の基本動作に移行して、安全性を確保することができる。
【0015】
このホース位置規制部を、金属製の丸棒又は管を円形に曲げ、交差している部分にホースを通す隙間を有するリングホルダーで構成することにより、スイベルジョイントに連結されたホースを簡単に通すことができると共に円滑に滑らせることができる。
【0016】
また、ホース位置規制部をクランプに回転自在に取り付けたシャックルで構成することにより、スイベルジョイントに連結されたホースを円滑に滑らせることができる。
【0017】
さらに、スイベルジョイントのホースを接続している部分と反対側に連結した位置出し軸とボーリングロッドの近傍に立てて位置出し軸を係止する支柱でスイベルジョイントを位置決めすることにより、スイベルジョイントが何らかの原因によりボーリングロッドと共回りすることを防ぐことができ、ホースが回転しているボーリングロッドに巻き付くことを確実に防止することができ、安全性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1はこの発明のボーリングマシンの構成図である。図に示すように、ボーリングマシン1は、先端にビットを取り付けたボーリングロッド2を把持するチャックが設けられたスピンドル3と、歯車群やクラッチを有する駆動伝達部4と、油圧ユニット5から送られ油圧のエネルギーにより回転する油圧モータ5と、油圧モータ5を駆動する油圧を供給する油圧ユニット6及び動力盤7を有し、油圧モータ5の回転により駆動伝達部4でスピンドル3を回転させるとともに上下動を行い、ボーリングロッド2の先端に取り付けたビットを回転して地中を掘進する。このビットを掘進するとき、ビットの冷却や掘削した土砂の地上への搬出などのため、泥水タンク(不図示)により圧送される泥水を、泥水ポンプとボーリングロッド2の上端部に取り付けたスイベルジョイント8との間に連結された注入用のホース9からスイベルジョイント8とボーリングロッド2を経由してビット先端より噴出している。
【0019】
このようにビットで削孔しているとき、スイベルジョイント8に連結された注入用のホース9と排出用のホース10が回転しているボーリングロッド2に巻き込まれることを防止するための安全装置11は、ホースガイド12と、ホースガイド12を支持する支柱13と、支柱13をボーリングマシン1のベース14上に保持する支柱ホルダー15と、支柱ホルダー15で保持された支柱13をボーリングマシン1に固定するクランプ16を有する。
【0020】
ホースガイド12は、図2に示すように、支柱13に着脱自在に取り付けられるクランプ17と、クランプ17に取り付けられた支持軸18に回転自在に取り付けられた円筒部材19と、円筒部材19の側面に固定されたリングホルダー20を有する。リングホルダー20は、巻き数が1巻きのねじりコイルばねのように金属製の丸棒や管を円形に曲げ、交差している部分にホース9,10を通す隙間を有し、一方の端部が円筒部材19に接合されている。支柱13も金属製の丸棒や管からなり、支柱ホルダー15に取り付けたときの上端部の高さは、ボーリングロッド2の交換時の作業性やホース9,10と作業者の相互位置及びホース9,10の挙動を考慮して1.8m〜2.0m程度になる長さを有する。支柱ホルダー15は金属製の管からなり、ボーリングマシン1の油圧ユニット5や油圧モータ6及び動力盤7を挟んでスピンドル3の位置とは反対側のベース14上で動力盤7に近接した位置に接合又はクランプで固定されている。クランプ16は支柱ホルダー15で保持された支柱13を把持して動力盤7のカバー止めボルト21で固定する。
【0021】
この安全装置11を有するボーリングマシン1でスイベルジョイント8に接続するホース9,10は剛性が高い硬質ホースを使用する。また、スイベルジョイント8とホース9,10を連結するニップルは、一般にホース交換時の作業性を考慮して、上側のホース10を接続するニップル23を水平(横向き)にして、下側のホース9を接続するニップル22を角度45度だけ下向きにするが、下側のホース9を接続するニップル22も水平に取り付けることが望ましい。
【0022】
このボーリングマシン1を作業現場に搬送するときは、安全装置11の支柱13を支柱ホルダー15から取り外して搬送する。このように支柱13をボーリングマシン1から取り外して搬送するから、ボーリングマシン1の搬送時の高さを低くすることができ、容易に搬送することができる。ボーリングマシン1を作業現場に設置して、一方の端部にホース9,10を接続したスイベルジョイント8を取り付け、他方の端部にビットを取り付けたボーリングロッド2をスピンドル3に把持させて立てた後、支柱13の下部を支柱ホルダー15に挿入して立て、クランプ16で動力盤7に固定する。このベース14上に立てた支柱13の上端部にホースガイド12を取り付ける。このホースガイド12を取り付けるとき、支柱13の上端部の高さが1.8m〜2.0m程度であるから、作業者が容易に取り付けることができる。その後、ホースガイド12のリングホルダー20にホース9,10を通して位置決めする。この状態でボーリングロッド2を回転して地中を掘進する。
【0023】
このボーリングマシン1で地中を掘進しているときのホース9,10の挙動を図3の工程図を参照して説明する。
【0024】
図3(a)に示すように、掘進を開始したとき、スイベルジョイント8は地表から最も高い例えば約5mの位置にあり、支柱13に取り付けられたホースガイド12より上にある。そしてホース9,10をスイベルジョイント8に接続したニップル22,23は水平に取り付けられ、ホース9,10は硬質のホースを使用しているから、スイベルジョイント8の近くでホース9,10がボーリングロッド2に近づくことを防ぐことができる。また、ボーリングロッド2から十分に離れた位置でホースガイド12によりホース9,10の位置を規制しているから、地表に向かって垂れ下がったホース9,10の中間部がボーリングロッド2に近づくことを防ぐことができ、ホース9,10が回転しているボーリングロッド2に巻き付くことを防止することができる。
【0025】
この状態で掘進が進行すると、図3(b)に示すように、スイベルジョイント8が掘進に応じて下降し、スイベルジョイント8の下降に応じてホース9,10も下降する。このようにホース9,10が下降するとき、ホースガイド12で位置決めされたホース9,10はリングホルダー20に沿って滑って移動し、スイベルジョイント8とホースガイド12の間でホース9,10は撓むことなしに移動することができ、回転しているボーリングロッド2に近づくことを防ぐ。さらに掘進が進行してボーリングロッド2が前進端近傍まで下降して、図3(c)に示すように、スイベルジョイント8がホースガイド12の高さと同じ程度まで下降すると、ホース9,10をスイベルジョイント8に接続したニップル22,23は水平に取り付けられているから、ホース9,10は回転しているボーリングロッド2の近くで撓むことなしにホースガイド12で案内している近傍で上に凸状に撓み、回転しているボーリングロッド2に近づくことを防ぐことができる。
【0026】
また、このように掘進中にホース9,10はホースガイド12に沿って移動しているとき、ホースガイド12は高さが1.8m〜2.0m程度の位置にあるから、移動しているホース9,10が作業者の頭上や顔面に近づくことを防いで安全な作業環境にすることができる。
【0027】
さらに、何らかの原因でホース9,10が回転しているボーリングロッド2に巻き付いて作業者がホース9,10に触れようとしても、ホース9,10はボーリングマシン1の近傍で高さが1.8m〜2.0m程度の位置にあるホースガイド12で案内しているから、作業者がホース9,10に触れることができず、ボーリングマシン1のスイッチを切るなど、労働安全衛生規則の基本動作に移行して、安全性を確保することができる。
【0028】
また、ホースガイド12を取り付けた支柱13はボーリングマシン1に簡単に着脱できるから、ボーリングロッド2の交換を容易に行うこともでき、作業性を向上することができる。
【0029】
前記説明ではホースガイド12に金属製の丸棒や管を円形に曲げたリングホルダー20を設け場合について説明したが、図4に示すように、ホースガイド12のクランプ17に取り付けられた支持軸18に着脱自在なシャックル24を回転できるように取り付けても良い。
【0030】
また、前記のようにボーリングマシン1で地中を掘進しているとき、ホース9,10をホースガイド12で案内して滑らしているとき、スイベルジョイント8が何らかの原因によりボーリングロッド2と共回りすると、ホース9,10がボーリングロッド2に巻き付くおそれがある。そこで、図5に示すように、スイベルジョイント8とホース10を接続しているニップル23の代わりにT継手25を使用しホース10を接続した部分と反対側に位置出し軸26を連結すると共に、ボーリングロッド2の近傍に金属製の丸棒や管からなるストッパー用の支柱27を立て、支柱27に位置出し軸26を係止させて、スイベルジョイント8がボーリングロッド2と共回りすることを防ぐようにすると良い。このようにしてスイベルジョイント8が何らかの原因によりボーリングロッド2と共回りすることを防ぐことができ、ホース9,10が回転しているボーリングロッド2に巻き付くことを確実に防止して安全性をより高めることができる。
【0031】
さらに、図6に示すように、上部に吊ピース28を有するT継手25を使用し、支柱27の上端部に滑車29を有するアーム30を取り付け、滑車29を使用してスイベルジョイント8をロープ31で吊り下げるようにしても良い。この場合、ボーリングマシン1で掘進中はロープ31に牽引力を与えないでおき、ボーリングロッド2が下降して前進端に達してボーリングロッド2を継ぎ足すとき、継ぎ足すボーリングロッド2とスイベルジョイント8を連結した後にロープ31に牽引力を与えてスイベルジョイント8を吊り上げる上昇ことにより、ボーリングロッド2の継ぎ足し作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明のボーリングマシンの構成図である。
【図2】安全装置のホースガイドの構成図である。
【図3】地中を掘進中のホースの挙動を示す工程図である。
【図4】他のホースガイドの構成図である。
【図5】この発明の第2のボーリングマシンの構成図である。
【図6】この発明の第3のボーリングマシンの構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1;ボーリングマシン、2;ボーリングロッド、3;スピンドル、4;駆動伝達部、
5;油圧モータ、6;油圧ユニット、7;動力盤、8;スイベルジョイント、
9,10;ホース、11;安全装置、12;ホースガイド、13;支柱、
14;ベース、15;支柱ホルダー、16;クランプ、17;クランプ、
18;支持軸、19;円筒部材、20;リングホルダー、21;カバー止めボルト、
22,23;ニップル、24;シャックル、25;T継手、26;位置出し軸、
27;支柱、28;吊ピース、29;滑車、30;アーム、31;ロープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングマシンのボーリングロッドに取り付けられたスイベルジョイントに連結されたホースが回転しているボーリングロッドに巻き込まれることを防止する安全装置であって、
ホースガイドと、該ホースガイドを支持する支柱と、該支柱をボーリングマシンのベース上に着脱自在に保持する支柱ホルダーを有し、
前記ホースガイドは、前記支柱に着脱自在に取り付けられるクランプと、該クランプに回転自在に取り付けられ、スイベルジョイントに連結されたホースを通して滑らせながら案内するホース位置規制部を有し、前記支柱は、前記支柱ホルダーで保持して前記ホース位置規制部を取り付けた高さが作業性に影響しない位置になるようにあらかじめ定めた長さを有し、前記支柱ホルダーは金属管からなり、ボーリングマシンのスピンドルの位置からもっとも離れたベース上に固定されていることを特徴とするボーリングマシンの安全装置。
【請求項2】
請求項1記載のボーリングマシンの安全装置であって、
前記ホース位置規制部は、金属製の丸棒又は管を円形に曲げ、交差している部分にホースを通す隙間を有するリングホルダーからなり、一方の端部が前記クランプに取り付けられていることを特徴とするボーリングマシンの安全装置。
【請求項3】
請求項1記載のボーリングマシンの安全装置であって、
前記ホース位置規制部は、前記クランプに回転自在に取り付けたシャックルからなることを特徴とするボーリングマシンの安全装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のボーリングマシンの安全装置であって、
前記スイベルジョイントのホースを接続している部分と反対側に連結した位置出し軸と、前記ボーリングロッドの近傍に立てて前記位置出し軸を係止する支柱とを有することを特徴とするボーリングマシンの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−2555(P2007−2555A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184564(P2005−184564)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【出願人】(595114698)水研グラウト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】