説明

ボールねじ

【課題】冷却機構を備えたボールねじとして、冷却機構による冷却効率が高く、冷却機構を形成するための加工コストが低いものを提供する。
【解決手段】ボールねじは、内周面に螺旋溝1aが形成されたナット1と、外周面に螺旋溝2aが形成されたねじ軸2と、ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aで形成される軌道溝の間に配置されたボール3と、を備えたボールねじであって、ナット1の螺旋溝1aの研削逃げ溝1bまたはねじ軸2の螺旋溝2aの研削逃げ溝に冷却チューブ4を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道溝の間に配置されたボールと、を備えている。
工作機械、射出成形機、半導体素子製造装置等の精密送り機構として使用されるボールねじは、高温になると、ねじ軸やナットの熱変形により、ボールの負荷分布異常や作動性の悪化が生じて、送り機構としての位置決め精度等に影響を及ぼすため、冷却した状態で使用されている。
特許文献1には、ボールねじナットのボール転動溝の近傍に冷却液通路(軸方向に延びる貫通穴)を穿設し、この冷却液通路に冷却液源からの冷却液を供給、循環させて前記ボールねじナットの発熱部が直接的に冷却されるよう構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−24876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された冷却機構には、冷却効率と冷却液通路の加工コストの点で改善の余地がある。
この発明の課題は、冷却機構を備えたボールねじとして、冷却機構による冷却効率が高く、冷却機構を形成するための加工コストが低いものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明のボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道溝の間に配置されたボールと、を備えたボールねじであって、前記ナットまたはねじ軸の螺旋溝に研削逃げ溝が形成され、この研削逃げ溝に冷却管が配置されていることを特徴とする。
この発明のボールねじでは、発熱源であるボールと螺旋溝とが接触する部分の近傍を、螺旋溝に沿って冷却することができるため、ナットの軸方向に延びる貫通穴に冷却液を通して冷却する例と比較して冷却効率が高い。また、ナットに螺旋溝を形成する際に生じる研削逃げ溝を利用して冷却管を配置するため、加工コストが低減できる。
【発明の効果】
【0006】
この発明のボールねじは、ナットの軸方向に延びる貫通穴に冷却液を通して冷却する例と比較して、冷却効率が高く、加工コストが低いものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態のボールねじを示す断面図である。
【図2】実施形態のボールねじを構成するナットの螺旋溝の溝直角断面を示す拡大図である。
【図3】図1とは異なる実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の実施形態について説明する。
この実施形態のボールねじは、図1に示すように、ナット1と、ねじ軸2と、ボール3と、冷却チューブ(冷却管)4とを備えている。図1において、ボール循環部材およびシールは省略されている。
ナット1の内周面に螺旋溝1aが形成され、この螺旋溝1aの底面に研削逃げ溝1bが形成されている。ねじ軸2の外周面に螺旋溝2aが形成されている。ナット1の螺旋溝1aとねじ軸2の螺旋溝2aで形成される軌道溝の間にボール3が配置されている。ナット1の軸方向一端にはフランジ11が形成されている。
【0009】
ナット1の螺旋溝1aの研削逃げ溝1bには、螺旋溝1aが軌道溝を形成する全範囲(ボール3が転動する全範囲)に冷却チューブ4が配置されている。冷却チューブ4は研削逃げ溝1bの底面に接着剤で固定されている。冷却チューブ4は、図2に示すように、研削逃げ溝1bに固定された状態でボール3が接触しない外径のものを使用する。冷却チューブ4の長さ方向両端部は、ナット1に設けた貫通穴12から外部に出て、外部に配置された冷却源に接続されている。冷却源としては冷却水循環装置等を使用する。
【0010】
この実施形態のボールねじによれば、発熱源であるボール3と螺旋溝1aとが接触する部分の近傍を、螺旋溝1aに沿ってボール3が転動する全範囲で冷却できるため、冷却効率が高い。また、ナット1に螺旋溝1aを形成する際に生じる研削逃げ溝1bに冷却チューブ4を配置するため、冷却用にナット1に軸方向に延びる貫通穴を複数形成する方法と比較して、加工コストが低減できる。
【0011】
図1の実施形態では、ナット1の螺旋溝1aの研削逃げ溝1bに冷却チューブ4を配置しているが、これに代えて、図3のように、ねじ軸2の螺旋溝2aの研削逃げ溝2bに冷却チューブ4を配置してもよい。この例は、ナット1が回転し、ねじ軸2が回転しないタイプのボールねじに好適である。
この場合も、冷却チューブ4は、研削逃げ溝2bに固定された状態でボール3が接触しない外径のものを使用する。また、冷却チューブ4は、ねじ軸2の螺旋溝2aの研削逃げ溝2bの全体に配置されて、長さ方向両端部が、ねじ軸2の両端で外部に配置された冷却源に接続されている。冷却源としては冷却水循環装置等を使用する。
【符号の説明】
【0012】
1 ナット
1a ナットの螺旋溝
1b ナットの研削逃げ溝
11 フランジ
12 貫通穴
2 ねじ軸
2a ねじ軸の螺旋溝
2b ねじ軸の研削逃げ溝
3 ボール
4 冷却チューブ(冷却管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道溝の間に配置されたボールと、を備えたボールねじであって、
前記ナットまたはねじ軸の螺旋溝に研削逃げ溝が形成され、この研削逃げ溝に冷却管が配置されていることを特徴とするボールねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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