説明

ボールペン用油性インキ組成物

【課題】 本発明は、有機溶剤を液媒体として使用した、いわゆる油性ボールペンに使用する油性インキ組成物に関し、下向けで、長期間放置しても、インキ吐出部よりインキ漏れがしない油性ボールペン用インキ組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 着色材と有機溶剤と該有機溶剤に可溶な樹脂と珪酸アルミニウムの金属塩の凝集体とを少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤を液媒体として使用した、いわゆるボールペン用の油性インキ組成物に関し、下向けで、長時間放置されても、インキ吐出部よりのインキの漏れが少ない又は、書き出し時のインキのボテの少ないボールペン用油性インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油性インキ組成物を使用したボールペンは、不使用時にボールペンチップ先端部のインキ吐出口よりインキ組成物が漏れ、書き出し時に、インキのボテとして発生することがある。又、圧縮気体などの圧力によって、筆記する際のインキ組成物の吐出を支援するボールペン場合、それが密閉構造中に常に圧力を高めるよう気体を圧縮封入したもののみならず、必要に応じてポンピング機構などにて気体を圧縮して導入するようなものであっても、高められた圧力が筆記にてすべて消費されなかった場合など、蓄積された圧力によってインキ吐出口よりインキが漏れる欠点が起こり易かった。
【0003】
このような欠点を解決しようとして、従来より種々の工夫が試されている。例えば、特開2002−3772公報(特許文献1)に記載の発明では、平均分子量が25万以上のポリビニルピロリドンを1〜5%使用したボールペン用の油性インキが開示されており、インキのボタ落ちを改善したとしている。また、特開平10−195365号公報(特許文献2)に記載の発明では、一次平均粒子径7〜40nmで、比表面積50〜380m/gのシリカを使用したボールペン用油性インキが開示されており、インキ吐出口を下向けにした状態で長時間放置した際のインキ漏れを改善したとしている。
【特許文献1】特開2002−003772公報
【特許文献2】特開平10−195365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の各特許文献に記載された発明においても、油性ボールペンのインキ吐出口を下向けにした状態で長時間放置した場合、ボタ落ち、インキの漏れが発生し、未だ十分とは言えるものではなかった。特に、圧縮気体などの圧力によって、筆記する際のインキ組成物の吐出を支援するボールペンであればなおさら不十分なものであった。
本発明は、油性ボールペンのインキ吐出口を下向けにした状態で長時間放置した場合でも、圧縮気体などの圧力によって、筆記する際のインキ組成物の吐出を支援するボールペンに使用しても、インキ漏れが発生しないボールペン用油性インキ組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、着色材と有機溶剤と該有機溶剤に可溶な樹脂と珪酸アルミニウムの金属塩の凝集体とを少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に使用されるケイ酸アルミニウムの金属塩の凝集体は、水溶液から沈殿法によってつくられるが、粒子同士が結合し合い二次、三次構造をとり、緊密に組みあげられた網目構造が生成される。この網目構造を有した粒子が、ボールペンチップ内のインキ通路の小さい断面積となる部分に堆積する。すると、見かけ上そこに形成される隙間は小さくなる、インキ組成物に対する流動抵抗がきわめて大きいものとなるので、インキ組成物の不必要な流動を抑制することができるものと推察される。
特に、ナトリウム塩の場合、粒子径がより細かく生成され、更に緊密な網目構造を形成すると推察され、インキ組成物の不必要な流動を抑制することが顕著である。
この珪酸アルミニウムのナトリウム塩の網目構造を有した凝集体が堆積する部分は、インキ通路の小さい断面積となる部分であり、それはボールの周辺部分となるので、筆記する際にはボールの回転という大きな力で網目構造を有した凝集体の堆積が崩され、筆記に必要なインキの流出を阻害することはない。この珪酸アルミニウムのナトリウム塩の網目構造は、緊密に組みあげられており、少ない量で効果を上げることができる。尚、従来技術に使用されているシリカは、凝集性が少なく、緊密な網目構造を形成しにくいと推察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のボールペン用油性インキ組成物は、セルロース系高分子化合物及び/又はポリビニルブチラール樹脂を使用することによって、ボールペンにしたときの高湿環境化での経時安定性が保たれ、また、セルロース系化合物の中でもエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートを用いることによって、より高湿環境化での影響を受けにくいインキにすることが出来る。
【0008】
またインキ組成物の製造方法として、前記セルロース系高分子化合物及び/又はポリビニルブチラール樹脂に顔料をあらかじめ微分散したものを粉砕するなどして、粒子化し、この粒子を前記セルロース系高分子化合物及び/又はポリビニルブチラール樹脂が可溶な有機溶剤又は前記セルロース系高分子化合物及び/又はポリビニルブチラール樹脂が可溶な有機溶剤を含有する組成物中に配合することで、顔料が細かく、均一に分散されるため、通常の生顔料から分散するものより、経時的に安定なインキ組成物得ることができる。前記油性ボールペン用インキ組成物は、上記成分をラボミキサー、ビーズミル、3本ロール等を用いて溶解・分散してインキを得ることができる。
本発明に使用するケイ酸アルミニウムのナトリウム塩の凝集体は、前述したセルロース系高分子化合物及び/又はポリビニルブチラール樹脂の溶剤に溶解した樹脂液に混合し、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等で分散処理したものを顔料分散時に混入すると分散しやすい。
【0009】
使用できるボールペンのチップは、一般的に使用されているチップで良く、ボールホルダーは、ステンレス、真鍮、青銅、洋白等の金属を切削加工されたものが使用でき、ボールは、タングステンカーバイトや炭化ケイ素、ジルコニア等の焼結体が使用でき、前述したボールホルダーとボールとの如何なる組み合わせが可能で、ボールペンのチップとして使用できる。図1にボールペンチップの一例について要部縦断面図をしめす。筆記部材としてのボール1を先端より一部突出して抱持するボールホルダー2とを備えており、ボールホルダー2は、インキの通り道としての貫通孔3を有している。貫通孔3はボール1を抱持するボール抱持室3aとボール1の後退規制をなす内方突出部4の中心部分として形成されている中孔3bとインキタンクへとつながる後孔3cとを有しており、内方突出部4のボール抱持室3a側のボール受け座面4aに開口する放射状溝5と連通している。ボール1が最も後退して内方突出部4と接触した状態で、ボール1の最大径部分の近傍部からボールホルダー2の開口部までの部分は、筆記時を想定してにボール1がボールホルダー2の中心線に沿って位置していると仮定すると、インキの通り道としては隙間が最も狭い部分となっており、概ね2.0μm以下となっている。中でも最も狭い隙間部分は、ボール1の最大径部分の近傍(図中I部として円形で囲んだ部分)であり、ほぼゼロに近い隙間となっており、開口部における隙間はこれよりいくらか大きい5.0μm程度となっている。
本発明で使用するケイ酸アルミニウムのナトリウム塩の凝集体は、インキが流れ出ていない不使用時においては、この最小隙間部分に堆積して、不要なインキの流出を抑制するものと推察される。
【0010】
着色材としては、染料及び/または顔料が特に限定無く使用できる。
着色材として油溶性染料を用いる場合は、従来公知の油溶性染料を使用することが出来、具体例として、ローダミンBベース(C.I.45170B、田岡染料製造(株))、ソルダンレッド3R(C.I.21260、中外化成(株))、メチルバイオレット2Bベース(C.I.42535B、米国、National Aniline Div.社製)、ビクトリアブルーF4R(C.I.42563B)、ニグロシンベースLK(C.I.50415)(以上、BASF社製、独国)、バリファーストイエロー♯3104(C.I.13900A)、バリファーストイエロー♯3105(C.I.18690A)、オリエントスピリットブラックAB(C.I.50415)、バリファーストブラック♯3804(C.I.12195)、バリファーストイエロー♯1109、バリファーストオレンジ♯2210、バリファーストレッド♯1320、バリファーストブルー♯1605、バリファーストバイオレット♯1701(以上、オリエント化学工業(株)製)、スピロンブラックGMHスペシャル、スピロンイエローC−2GH、スピロンイエローC−GNH、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンブルーC−RH、スピロンバイオレットC−RH、S.P.T.オレンジ6,S.P.T.ブルー111(以上、保土ヶ谷化学工業(株)製)などが例示できる。更に、C.I.ベーシックブルー1、同7、同8、C.I.ベーシックバイオレット1、同3、C.I.ベーシックレッド1などの塩基染料とC.I.アシッドイエロー23、同36などから選ばれる酸性染料との造塩染料なども用いることができる。上記例示した油溶性染料は、1種又は2種以上混合して使用でき、その使用量は油性ボールペン用インキ全量に対して6〜45重量%が好ましい。
【0011】
また着色材として、顔料を用いる場合は、顔料は従来公知の顔料を使用することができ、有機顔料としては、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同8、同17、同22、同31、同38、同41、同48:1、同48:2、同48:3、同49、同50:1、同53:1、同57:1、同58:2、同60、同63:1、同63:2、同64:1、同88、同112、同122、同123、同144、同146、同149、同166、同168、同170、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同190、同194、同202、同206、同207、同208、同209、同211、同213、同216、同245、同254、同255、同264、同270、同272、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、同61、同64、同71、同73、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同37、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同22、同25、同28、同29、同36、同60、同66、同68、同76、C.I.PIGMENT BROWN 23、同25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同83、同93、同94、同95、同97、同99、同108、同109、同110、同117、同120、同128、同139、同147、同151、同153、同166、同167、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36、C.I.PIGMENT BLACK 7等の有機顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は1種又は2種以上混合して使用することができ、その使用量は、インキ組成物全量に対して1〜45重量%使用でき、十分な筆跡濃度を得る為に、好ましくは6〜40重量%である。使用量が、少ないと筆跡が薄くなり、多くなるとインキのボールペン先からの追従性が悪くなりカスレがでたりインキが吐出しなくなることがある。
【0012】
また、無機顔料としては、黒色酸化鉄、ファーネストブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
これらの無機顔料は、1種又は2種以上混合して使用することができ、その使用量は、インキ組成物全量に対して1〜50重量%使用でき、好ましくは、10〜40重量%である。
その他の顔料として、蛍光顔料、パール顔料、蓄光顔料、金属顔料、複合金属顔料、金属酸化物顔料等を使用しても良い。例えば、蛍光顔料としては、FZ−5000シリーズ(シンロイヒ(株)製)などが挙げられる。パール顔料としては、パールグレイズMRY−100や同ME−100等(日本光研化学(株)製)が挙げられる。蓄光顔料としては、GSS(根本特殊化学(株))などが挙げられる。また、金属顔料としては、筆跡の色と異なる光輝感を醸し出す目的として使用するもので、アルミニウム粉やブロンズ粉、亜鉛粉等が、具体例として、市販されているアルミニウム粉末としては、スーパーファインNo.22000、同No.18000、ファインNo.900、同No.800(以上、大和金属粉工業(株)製)等が挙げられる。
これらの顔料は、1種又は2種以上混合して使用することができ、その使用量は、インキ組成物全量に対して1〜45重量%使用でき、好ましくは、10〜40重量%である。
【0013】
顔料の分散効率を上げるため、前記高分子化合物中に顔料をあらかじめ微分散したものを粒子化したものを使用しても良い。特に、このような顔料を用いた場合は、製造上容易に分散できるので、製造上有用な手段として用いることが出来る。一例を挙げると、マイクロリスYellow 3G−K、同Yellow 4G−K、同Yellow 3R−K、同Scarlet R−K、同DPP Red B−K、同Magenta 5B−K、同Violet B−K、同Blue A3R−K、同Blue 4G−K、同Green G−K、同Black C−K、同White R−K(塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂に微分散させた顔料、チバスペシャルティ ケミカルズ(株)製)、IKイエロー、IKレッド、IKブルー、IKグリーン、IKブラック (塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂に微分散させた顔料、富士色素(株)製)、マイクロリス Yellow 2G−T、同Yellow 3R−T、同Brown 5R−T、同Scarlet R−T、同Red BR−T、同Blue GS−T、同Green G−T、同Black C−T(ロジンエステル樹脂に微分散させた顔料、チバスペシャルティ ケミカルズ(株)製)、マイクロリス Yellow 4G−A、同Yellow MX−A、同Yellow 2R−A、同Brown 5R−A、同Scarlet R−A、同 Red 2C−A、同Red 3R−A、同Magenta 2B−A、同Violet B−A、同Blue 4G−A、同Green G−A、同Black C−A、同White R−A(エチルセルロース樹脂に微分散させた顔料、チバスペシャルティ ケミカルズ(株)製)、L1/SイエローNIF、L1/8レッドF3RK−70、L1/8バイオレットRN50、L1/8オレンジ501、L1/8ブラウン5R、L1/8ブラックMA100、NC790ホワイト(ニトロセルロース樹脂に微分散させた顔料、太平化学製品(株)製)、RenolイエローGG−HW、同イエローHR−HW、同オレンジRL−HW、同レッドFGR−HW、同レッドHF2B−HW、同レッドF5RK−HW、同カーミンFBB−HW、同バイオレットRL−HW、同ブルーB2G−HW、同グリーンGG−HW、同ブラウンHFR−HW、同ブラックR−HW、同ホワイトT−HW(ポリビニルブチラール樹脂に微分散させた顔料、クラリアントジャパン(株)製)、フジASブラック810、同ASレッド575、同ASブルー650、同ASグリーン737、同ASホワイト165(ポリビニルブチラール樹脂に微分散させた顔料、冨士色素(株)製)等が挙げられる。
尚、上記染料、有機顔料、無機顔料等は混合して使用することもできる。
【0014】
樹脂としては、通常ボールペンインキ組成物に使用されているもので良く、定着材や分散剤として使用されている。例えばケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を併用することが出来る。これらの樹脂は単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良く、その配合量は、インキ組成物全量に対して、0.1〜30重量%範囲である。これらの樹脂は、インキ組成物の粘度を調整したり、固着性、耐水性等を向上させる作用がある。
【0015】
セルロース系化合物は、有機溶剤に溶解した状態で水分に対して強靱な界面を作るため好ましい。セルロース系化合物の中でもエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート及びニトロセルロースは、特に良好な効果をもたらす。尚、セルロース系化合物でも、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースは、水に溶解するが、有機溶剤に可溶で水に溶解しない高分子化合物と併用して、本発明の効果以外の目的、例えば洩れ防止剤などのために、本発明の作用効果に対して悪影響を及ぼさない範囲で使用することは可能である。
【0016】
ボリビニルブチラール樹脂は、セルロース系化合物はと同様、有機溶剤に溶解した状態で水分に対して強靱な界面を作ることと、顔料の分散性を向上する働きがある。一例を挙げると、電気化学工業(株)製のデンカブチラール#2000L、同#3000−1、同#3000−2、同#3000−3、同#3000−4、同#3000−K、同#4000−1、同#4000−2、同#5000−A、同#6000−C、積水化学工業(株)製のエスレックBL−1、同BL−2、同BL−3、同BL−S、同BX−L、同BM−1、同BL−2、同BM−5、BM−S、同BH−3、同BX−1、同BX−2、同BX−5、同BX−55、同BH−S等が挙げられる。その使用量は、インキ組成物全量に対して0.5〜15重量%使用でき、好ましくは5〜10重量%である。
【0017】
樹脂として上記高分子化合物以外にも、通常ボールペンインキ組成物に定着剤や分散剤として使用されている樹脂、例えばケトン樹脂、スルフォアミド樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸又はそのエステルとの共重合体、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を併用することが出来る。これらの樹脂は単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良く、その配合量は、インキ組成物全量に対して、0.1〜30重量%範囲である。これらの樹脂は、インキ組成物の粘度を調整したり、固着性、耐水性等を向上させる作用がある。
【0018】
本発明において使用する有機溶剤は、沸点が150℃以上であることがも望ましく、前記溶剤は、従来公知のボールペン用溶剤を使用することが出来る。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルグリコール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールノルマルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等のグリコール系溶剤、酢酸−2−エチルへキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、等のエステル系溶剤、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリドデシルアルコール、等のアルコール系溶剤等が使用可能である。上記溶剤の中でも、好ましくはグリコールエーテル系溶剤がセルロース系樹脂の溶解性が良く、また経時安定性に効果がある。これらは、単独で用いても2種以上混合して用いても良く、配合量はインキ全量に対し20〜90重量%好ましくは35〜75重量%である。
【0019】
これらの有機溶剤と高分子化合物との可溶する例として、一例をあげると、高分子化合物として、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール等の樹脂と、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤や、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系の溶剤との組み合わせが挙げられる。
【0020】
本発明で使用されるケイ酸アルミニウムの金属塩の凝集体は、インキ組成物中に分散されると粒子同士の構造を組み、ボールペン先端部よりのインキの漏れを防ぐ働きがある。別名、アルミノ珪酸塩と呼ばれる。アルミノ珪酸塩は、珪酸塩あるいは二酸化珪素において珪素の一部がアルミニウムにより置換されて生ずる塩。又は、他の陽イオン成分の置換あるいは新しい陽イオン成分の導入を伴って生ずる塩である。製造方法は、水溶液から沈殿法によって製造され、平均一次粒子径は、約35mμmであるが、この一次粒子が、沈殿が起こるときに、粒子同士が結合し合い、凝集して、二次構造、三次構造をとり、特にナトリウム塩の場合、緊密に組みあげられた網目構造を有した凝集体となる。市販品の具体例としては、シペルナート820、同820A(ドイツ国、デグッサ社製)が挙げられる。その使用量は、インキ組成物全量に対して、0.1〜3重量%で、好ましくは、0.2〜1重量%である。使用量が3重量%以上使用すると、インキの吐出が悪くなる。
【0021】
その他必要に応じて、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、ベントナイト、合成微粉シリカ等の粘性調節剤や有機リン酸エステル、ジシクロヘキシルアミンのオレイン酸塩、脂肪族多価カルボン酸のエステル等の防錆剤、ポリシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等の消泡剤、ラウロイルサルコシン、オレオイルサルコシン等の潤滑剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、アルキルエーテルソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、カスレ防止剤、洩れ防止剤等のインキ組成物に慣用されている助剤を含有させても良い。
【0022】
本発明のボールペン用インキ組成物は、上記各成分をダイノーミル、ボールミル、ロールミル、アトライター、サンドグラインダー、ターボミキサー、ラボミキサー、ホモミキサー等の分散機を使用して分散混合することによって得られる。
尚、粘度測定は、全て、Bohlin社製STRESSレオメーターを用い、25℃の測定環境で剪断速度1s−1で測定し求めた。
【実施例】
【0023】
(シペルナート820分散液)
シペルナート820(珪酸アルミニウムのナトリウム塩、ドイツ国、デグッサ社製) 8重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 64重量部
エトセル7のエチレングリコールモノフェニルグリコール10重量%溶解液(エチルセルロース、ダウ・ケミカル日本(株)製) 28重量部
上記配合をラボミキサーで攪拌混合した後、3本ロールで、分散処理をし、シペルナート820分散液を得た。
【0024】
(シペルナート820A分散液)
シペルナート820A(珪酸アルミニウムのナトリウム塩、ドイツ国、デグッサ社製) 8重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 64重量部
デンカブチラール2000Lのエチレングリコールモノフェニルグリコール10重量%溶解液(ポリビニルブチラール樹脂、電気化学工業(株)製) 28重量部
上記配合をラボミキサーで攪拌混合した後、3本ロールで、分散処理をし、シペルナート820A分散液を得た。
【0025】
(実施例1)
カーボンブラック♯750(顔料、C.I.PIGMENT BLACK7、三菱化学(株)製) 30重量部
ソルスパース20000(高分子顔料分散剤、アビシア(株)製) 8重量部
エトセル4(エチルセルロース、ダウ・ケミカル日本(株)製) 16重量部
シペルナート820分散液(前述) 6重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 32重量部
ベンジルアルコール 8重量部
上記各成分中のカーボンブラック#750を除いた成分を加熱攪拌し、カーボンブラック#750を添加し、ビーズミルで1時間分散し、粘度4400mPa・s(25℃)の黒色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0026】
(実施例2)
イルガジンRED2030(顔料、C.I.PIGMENT RED 254、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 20重量部
Disperbyk−160(高分子顔料分散剤、ビックケミー・ジャパン(株)製)
2重量部
エトセル7(エチルセルロース、ダウ・ケミカル日本(株)製) 8重量部
T−20SF(水添ヒマシ油化合物、伊東製油(株)製) 0.1重量部
シペルナート820分散液(前述) 7重量部
プロピレングリコールモノフェニルエーテル 48重量部
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 14.9重量部
上記各成分中のイルガジンRED2030を除いた成分を加熱攪拌し、イルガジンRED2030を添加し、ビーズミルで1時間分散し、粘度6600mPa・s(25℃)赤色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0027】
(実施例3)
マイクロリス BLACK C−A(エチルセルロースに微分散した加工顔料、C.I.PIGMENT BLACK7とエチルセルロースの重量比率が6:4、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 20重量部
ルビスコールK−90(ポリビニルピロリドン、BASF社製) 0.3重量部
ハイラック110H(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 13重量部
シペルナート820分散液(前述) 8重量部
オレイン酸 2重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 43重量部
エチレングリコールモノベンジルエーテル 13.7重量部
上記各成分中のマイクロリス BLACK C−Aを除いた成分を加熱攪拌し、完全に溶解が確認できた時点でマイクロリス BLACK C−Aを徐々に添加し、80℃・1時間攪拌混合し、粘度5900mPa・s(25℃)黒色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0028】
(実施例4)
L1/8ブラックMA100(ニトロセルロース樹脂に微分散した加工顔料、C.I.PIGMENT BLACK7とニトロセルロース樹脂の重量比率が1:1、太平化学製品(株)製) 33重量部
デンカブチラール2000L(ポリビニルブチラール樹脂、電気化学工業(株)製)
2重量部
シペルナート820分散液(前述) 6重量部エチレングリコールモノフェニルエーテル 42重量部
エチレングリコールモノヘキシルエーテル 17重量部
上記各成分中のL1/8ブラックMA100を除いた成分を加熱攪拌し、完全に溶解が確認できた時点でL1/8ブラックMA100を徐々に添加し、80℃・3時間攪拌混合し、粘度7000mPa・s(25℃)黒色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0029】
(実施例5)
スピロンオレンジ#6(油溶性染料、保土ヶ谷化学(株)製) 14.8重量部
スピロンレッドC−GH(油溶性染料、保土ヶ谷化学(株)製) 11.9重量部
スピロンレッドC−BH(油溶性染料、保土ヶ谷化学(株)製) 0.6重量部
スピロンイエローC−2GH(油溶性染料、保土ヶ谷化学工業(株)製) 3重量部
ハイラック110H(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 20重量部
ルビスコールK−90(前述) 0.7重量部
シペルナート820A分散液(前述) 7重量部エチレングリコールモノフェニルエーテル 33重量部
ベンジルアルコール 9重量部
上記各成分中のスピロンオレンジ#6、スピロンレッドC−GH、スピロンレッドC−BH、スピロンイエローC−2GHを除いた上記各成分をラボミキサーで攪拌溶解後、残りの成分を配合し、ラボミキサーで、1時間高速分散し、粘度が3400mPa・s(25℃)の赤色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0030】
(実施例6)
RenolブラックR−HW(ポリビニルブチラール樹脂に微分散した加工顔料、カーボンブラック40重量%、ポリビニルブチラール樹脂60重量%、クラリアントジャパン(株)製) 25重量部
ニグロシンEX(染料、オリエント化学工業(株)製) 8重量部
ルビスコールK−90(前述) 0.3重量部
ハイラック111(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 16重量部
シペルナート820A分散液(前述) 6重量部
オレイン酸 2重量部
エチレングリコールモノベンジルエーテル 32重量部
ベンジルアルコール 10.7重量部
上記各成分中のRenolブラックR−HWとニグロシンEXを除いた成分を加熱攪拌し、完全に溶解が確認できた時点でニグロシンEXを加え、80℃・1時間攪拌混合後、更にRenolブラックR−HWを添加し、80℃・1時間攪拌混合し、粘度69500mPa・s(25℃)の黒色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0031】
(実施例7)
RenolブルーB2G−HW(ポリビニルブチラール樹脂に微分散した加工顔料、フタロシアニンブルー50重量%、ポリビニルブチラール樹脂50重量%、クラリアントジャパン(株)製) 17重量部
スピロンブルーBPNH(染料、保土ヶ谷化学(株)製) 5重量部
スピロンブルーC−RH(染料、保土ヶ谷化学(株)製) 3重量部
スピロンバイオレットC−RH(染料、保土ヶ谷化学(株)製) 2重量部
レジンSK(ケトン樹脂、ヒュルス社製) 7重量部
シペルナート820A分散液(前述) 5重量部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 46重量部
エチレングリコールモノヘキシルエーテル 15重量部
上記各成分中のRenolブルーB2G−HWを除いた成分を加熱攪拌し、完全に溶解が確認できた時点でRenolブルーB2G−HWを徐々に添加し、80℃・1時間攪拌混合し、粘度56600mPa・s(25℃)の青色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0032】
(実施例8)
RenolブラックR−HW(ポリビニルブチラール樹脂に微分散した加工顔料、カーボンブラック40重量%、ポリビニルブチラール樹脂60重量%、クラリアントジャパン(株)製) 19重量部
ニグロシンEX(染料、オリエント化学工業(株)製) 17重量部
シペルナート820A分散液(前述) 6重量部
オレイン酸 2重量部
エチレングリコールモノベンジルエーテル 43重量部
ベンジルアルコール 13重量部
上記各成分中のRenolブラックR−HWとニグロシンEXを除いた成分を加熱攪拌し、完全に溶解が確認できた時点でニグロシンEXを加え、80℃・1時間攪拌混合後、更にRenolブラックR−HWを添加し、80℃・1時間攪拌混合し、粘度23800mPa・s(25℃)の黒色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、シペルナート820分散液(前述)中のシペルナート820を除いた他は、実施例1と同様になして、粘度が4300mPa・s(25℃)の黒色ボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0034】
(比較例2)
実施例6において、シペルナート820A分散液(前述)中のシペルナート820Aを除いた他は、実施例6と同様になして、粘度が69300mPa・s(25℃)の黒色ボールペン用油性インキ組成物を得た。
【0035】
(比較例3)
実施例8においてシペルナート820A分散液(前述)中のシペルナート820Aの代わりにアエロジル#200(シリカ、日本アエロジル(株)製)を使用し、他は実施例8と同様になして粘度24100mPa・s(25℃)の黒色油性ボールペン用インキ組成物を得た。
【0036】
以上、実施例1〜8、比較例1〜3で得られた油性インキ組成物を市販の油性ボールペン(BP107、ぺんてる(株)製、ペン先はステンレス製のボールホルダーにてとタングステンカーバイトを主成分とした超硬合金のボールを回転可能に抱持したボールペンチップ)と同様の筆記具に0.3g充填し、試験サンプルとした。
但し、実施例6〜8及び比較例2〜3は、筆記する場合、上記サンプルのリフィル後端に圧力機を取り付け、大気圧に対して差圧が50KPaで加圧している状態で筆記できるように工夫改造して、実施した。
試験項目としては、インキ漏れ試験を行った。結果を表1に示す。
【0037】
インキ漏れ試験
実施例1〜8及び比較例1〜3のインキを充填したサンプルをキャップ外し、試し書きをしてカスレないことを確認し後、ペン先のインキを拭き取り、キャップをしないで、ペン先の露出したボールが他の何者にも触れない状態で下向きにして室温にて12時間放置後、各々のサンプルのペン先を目視でインキ漏れ状態を確認する。漏れたインキの量の評価をするため、ペン先部に付着した漏れたインキをマイクロスライドガラスS−7224(松浪硝子工業(株)製)の中央部にこすりつけて、その上に同ガラスを同方向に静かに載せ、2分間放置する。自重で円状に広がったインキの最大直径とそれと直角方向の直径を測定する。そして、各々の直径を乗じた値を、漏れたインキ量の代用とした。
但し、実施例6〜8及び比較例2〜3は、リフィル後端に圧力機を取り付け、大気圧に対して差圧が50KPaで加圧している状態で下向け室内放置した。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色材と有機溶剤と該有機溶剤に可溶な樹脂と珪酸アルミニウムの金属塩の凝集体とを少なくとも含むボールペン用油性インキ組成物。
【請求項2】
前記金属塩がナトリウムである請求項1に記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項3】
前記樹脂がセルロース系高分子化合物及び/又はポリビニルブチラール樹脂である請求項1又は請求項2に記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項4】
前記セルロース系高分子化合物が、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースアセテートプロピオネートから選ばれる一種もしくは二種以上の混合物を含有する請求項3に記載のボールペン用油性インキ組成物。

【公開番号】特開2006−124511(P2006−124511A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314813(P2004−314813)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】