説明

ボール供給装置

【課題】簡素な設備としつつも、作業者の負担および手間を軽減して、簡便にボールを作業機に供給することのできるボール供給装置を提供する。
【解決手段】ボール供給装置1は、ボール2を貯溜するボール貯溜部5と、ボール貯溜部5の下部に設けた供給口6から、ボール2に作用する重力を利用して当該ボール2を作業機4に供給するボール供給部7と、ボール貯溜部5にボール2を補充するボール補充部8とを備える。ボール補充部8は、その内部空間12にボール2を投入可能なボール投入口13を有するもので、ボール貯溜部5の上部を閉塞可能な閉塞可能位置14と、閉塞可能位置14よりも低い投入可能位置15との間を移動可能に構成されている。また、ボール補充部8の底部には、ボール補充部8を閉塞可能位置14に配した状態で、ボール補充部8の内部空間12とボール貯溜部5との間を連通状態と非連通状態とに切替え可能な連通口18が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール供給装置に関し、特に、ボールに作用する重力を利用して当該ボールを所定の作業機に供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジンを構成するシリンダヘッドの製造工程においては、シリンダヘッドに穴開け加工等により穴を形成した後、当該穴をボールで封止することでシリンダヘッドに油路が形成されるようになっている。この封止工程は、シリンダヘッドを搬送するコンベアとほぼ同じ高さに配置された圧入装置によりシリンダヘッドに対してボールを圧入することにより行われる。
【0003】
この際、圧入装置へのボールの供給は、ボールの重力を利用することにより行われるのが一般的であり、ボールをストックする容器は圧入装置よりも高い位置に配設される。そのため、ボールを補充する際には、圧入装置よりも高い位置に配設されたボールストック用容器のさらに上方開口部までボールを持上げる必要があり、このことが作業者にとって大きな負担となっていた。また、相当の重量を有する複数のボールを高位置に(通常は作業者の頭上に)まで持上げる動作は非常に危険であり、安全性の面からも改善が求められていた。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、ボール収納部内で上下動する支持板を備え、この支持板の上昇によりボール収納部内のボールをボール収納部の床面より高い位置まで上昇させて、支持板上のボールをボール収納部の側面に開口したボール供給孔から自重落下(ボールに作用する重力を利用して落下)させることにより、当該落下させたボールを圧入装置に供給する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−178627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置では、ボールをボール供給孔まで上昇させるための駆動源(シリンダ)やその駆動を制御するための装置等が別に必要となる。そのため、ボール供給装置の設置スペースが増大し、またボール供給装置を含む圧入設備のコストアップを招くおそれがある。
【0007】
また、上述の構造を採る場合、ボール収容部の上方からボールを直接補充することになるが、ボール収容部の内部には、ボールを載せた状態で昇降する支持板が存在する。そのため、例えばボール収納部の上方からボールを補充するタイミングと、ボールを載せた支持板をボール供給孔の高さまで上昇させるタイミングとをずらす必要が生じ、補充作業に手間がかかる。
【0008】
上記の問題は、圧入装置にボールを供給する場合のみならず、他の作業機にボールを供給する場合にも同様に起こり得る。
【0009】
以上の事情に鑑み、簡素な設備としつつも、作業者の負担および手間を軽減して、簡便にボールを作業機に供給することのできるボール供給装置を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の解決は、本発明に係るボール供給装置により達成される。すなわち、この供給装置は、ボールに作用する重力を利用してボールを作業機に供給するためのボール供給装置であって、ボールを貯溜するボール貯溜部と、ボール貯溜部の下部に設けたボール供給口から重力を利用してボールを作業機に供給するボール供給部と、ボール貯溜部にボールを補充するボール補充部とを備え、ボール補充部は、その内部空間にボールを投入可能なボール投入口を有するもので、ボール貯溜部の上部を閉塞可能な閉塞可能位置と、閉塞可能位置よりも低い位置との間を移動可能に構成され、ボール補充部の底部には、ボール補充部を閉塞可能位置に配した状態で、ボール補充部の内部空間とボール貯溜部との間を連通状態と非連通状態とに切替え可能な連通口が形成されている点をもって特徴付けられる。
【0011】
このように、本発明では、ボール貯溜部にボールを補充するためのボール補充部を、ボール貯溜部と別体に形成し、かつ、このボール補充部を、ボール貯溜部の上部を閉塞可能な閉塞可能位置と、閉塞可能位置よりも低い位置との間を移動可能に構成したので、比較的低い位置で補充用のボールをボール補充部に投入し、このボール補充部を例えば所定の移動機構を利用して上方に移動させ、かつ連通口を連通状態に切り替えることにより、ボールをボール貯溜部に補充することができる。これにより、作業性が向上すると共に、ボール補充時における作業者の肉体的負担を低減することができる。また、作業者の手で直接多数のボールを上方に持上げる必要も無いため、安全性も向上する。また、ボール補充部を上述のように移動可能に構成するのであれば、上記特許文献1に記載のようにボールを上昇させるための駆動源は必ずしも必要ではなく、例えば作業者の外部からの操作力を利用した移動機構を採用してボール(ボール補充部)を上方に移動させることができる。従って、スペースを取る駆動設備を簡略化又は省略化して、ボール供給に係る設備の簡素化を図ることができる。また、ボール補充部をボール貯溜部の上部に移動可能とし、かつボール供給部をボール貯溜部の下部に配設するようにしたので、ボール貯溜部へのボールの補充作業が、圧入装置へのボールの供給作業を邪魔するおそれもなく、上記特許文献1のようにボールを供給するタイミングを調整する必要もない。よって、作業者は煩雑な作業を行うことなく簡便にボールを供給することが可能となる。もちろん、ボール貯溜部と別体に形成したボール補充部がボール貯溜部の上部を閉塞可能な位置に移動させれば、このボール補充部がボール貯溜部の上蓋としても機能する。そのため、ゴミや異物等がボール貯溜部に侵入して、ボールに付着する心配もない。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る供給装置によれば、作業者の負担および手間を軽減して、簡便にボールを作業機に供給することができるので、ボール供給に係る作業性及び安全性を大幅に向上させることができる。また、上記作用を奏する供給装置を簡素な設備とすることで、設備に係るコストの低減化を図ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るボール供給装置の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るボール供給装置の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、この実施形態では、シリンダヘッドの油路形成のためのボール圧入を行う圧入装置に当該ボールを供給する場合を例にとって説明する。なお、説明の便宜上、鉛直方向を上下方向として以下説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るボール供給装置1の正面図を示している。このボール供給装置1は、油路形成用のボール2をシリンダヘッド3の孔に圧入する圧入装置4に供給するためのものであって、ボール2を貯溜するボール貯溜部5と、ボール貯溜部5の下部に設けたボール供給口6から、ボール2に作用する重力を利用して当該ボール2を圧入装置4に供給するボール供給部7と、ボール貯溜部5にボール2を補充するボール補充部8とを具備する。
【0016】
ボール貯溜部5は、概して筒状をなしており、その上部に形成された開口部9は、ボール補充部8により閉塞される。また、ボール貯溜部5の下部には、テーパ状に縮径する縮径部10が一体に設けられており、この縮径部10の最下部に形成されたボール供給口6を介してボール供給管11の一端につながっている。このボール供給管11の他端は圧入装置4につながっており、これにより、ボール貯溜部5のボール供給口6から重力により落下したボール2がボール供給管11を伝って圧入装置4に供給されるようになっている。従って、この実施形態では、縮径部10、ボール供給口6、およびボール供給管11によりボール供給部7が形成されている。
【0017】
ボール補充部8は、その内部空間12にボール2を投入可能なボール投入口13を有する。また、このボール補充部8は、ボール貯溜部5の外部で、ボール貯溜部5の開口部9を閉塞可能な閉塞可能位置14と、閉塞可能位置14よりも低い位置、ここでは例えばボール貯溜部5の最下部に形成されたボール供給口6よりも低く、かつ作業者が直立した姿勢でボール補充部8にボール2を投入可能な高さの投入可能位置15、との間を往復移動できるように構成されている。この実施形態では、ボール補充部8は、2本のアーム部16の一端に傾動自在に連結されており(図1では、紙面奥方向のアーム部16のみを図示している。)、アーム部16の他端に設けた水平方向の固定軸17まわりにアーム部16を回転させることで、アーム部16の一端に連結したボール補充部8がアーム部16と一体的に回転移動するようになっている。また、ボール補充部8が閉塞可能位置14と投入可能位置15とに位置した状態では、ボール補充部8は水平姿勢を保つようになっている。もちろん、ボール補充部8が常時水平姿勢を保つように構成してもよい。
【0018】
ボール補充部8の底部には、ボール補充部8を閉塞可能位置14に配した状態で、ボール補充部8の内部空間12とボール貯溜部5との間を連通する連通口18が形成されている。また、ボール補充部8の底部に設けた差込み口19には、連通口18を閉塞する底板20が差込まれており、この底板20を抜き差しする(脱着する)ことで、ボール補充部8の内部空間12とボール貯溜部5との間が連通状態と非連通状態とに切替るようになっている。この図示例では、ピン21を鉛直可能に向けて差込むことで底板20とボール補充部8とが連結されるようになっている。また、底板20の反差込み側端部(差込み側から遠い側の端部)には、把持部22が形成されており、ピン21を差込んだ状態で把持部22を把持して上下に移動させることにより、ボール補充部8をアーム部16を介して固定軸17まわりに回転できるようになっている。
【0019】
以下、上記構成のボール供給装置1の動作の一例を説明する。
【0020】
まず、図1に示すように、ピン21が差込まれた状態のボール補充部8の把持部22を作業者が把持し、引き下げることにより、ボール補充部8を2本のアーム部16と共に固定軸17まわりに回転させ(図1中、矢印aで示す方向に回転させ)、投入可能位置15まで移動させる。そして、ボール補充部8の上部に設けたボール投入口13から多数のボール2を投入する。これにより、ボール補充部8の内部空間12に補充用のボール2が供給される。
【0021】
然る後、把持部22を作業者が把持して、押上げることにより、多数のボール2を内部空間12に保持した状態のボール補充部8を2本のアーム部16と共に固定軸17まわりに回転させ(図1中、矢印bで示す方向に回転させ)、閉塞可能位置14まで移動させる。そして、ピン21を上方(図1中、矢印cで示す方向)に引き抜いた後、把持部22を手前(図1中、矢印dで示す方向)に引き、底板20を引き抜く。これにより、ボール補充部8の内部空間12とボール貯溜部5とが連通状態となり、ボール補充部8の内部空間12に供給された多数のボール2が重力の作用により連通口18を介してボール貯溜部5へと落下する。以上の操作を経ることで、ボール2の補充作業が行われ、継続して圧入装置4にボール2が供給される。
【0022】
このように、本発明に係るボール供給装置1によれば、ボール貯溜部5にボール2を補充するためのボール補充部8を、ボール貯溜部5と別体に形成し、かつ、このボール補充部8を、ボール貯溜部5の上部に形成された開口部9を閉塞可能な閉塞可能位置14と、閉塞可能位置14よりも低く設定されるボール2の投入可能位置15との間を移動可能に構成した。そのため、作業者が立った状態で投入作業を行い得るような低い位置でボール2をボール補充部8に投入でき、かつこれをボール貯溜部5に供給することができる。これにより、ボール補充時における作業者の肉体的負担を低減することができる。また、作業者の手で直接多数のボール2を上方に持上げる必要も無いため、作業性と共に安全性も向上する。また、ボール補充部8に設けた把持部22を作業者が把持して上下させるだけで、アーム部16を介してボール補充部8を固定軸17まわりに回転させるように構成したので、ボール2を上昇させるための駆動源を特に設けることなくボール2(を保持したボール補充部8)を上方に移動させることができる。従って、駆動源などの設備を簡略化又は省略化して、ボール供給装置1の簡素化ひいては省スペース化を図ることができる。
【0023】
また、この実施形態では、底板20とボール補充部8とをピン21で連結すると共に、底板20に把持部22を設けたので、ピン21を差込んだ状態でのみボール補充部8を昇降させることができる。従って、例えばボール補充部8を閉塞可能位置14から投入可能位置15まで移動させる際、底板20はピン21によってボール補充部8と連結状態にあり、すなわち底板20によりボール補充部8の底部に形成された連通口18を必ず閉塞した状態でボール補充部8の移動が行われる。従って、ボール投入口13からボール2を投入する際、連通口18からボール2が落下する事態を確実に回避できる。
【0024】
また、上述のように構成することで、把持部22は、ボール補充部8の昇降操作用と、ボール補充部8の内部空間12とボール貯溜部5との間で連通状態と非連通状態とに切り替える操作用とを兼ねる。そのため、操作を単純化できると共に構成を簡素化して、ボール供給装置1の一層の簡素化ないし省スペース化を図ることができる。
【0025】
なお、上記実施形態では、ボール補充部8を、2本のアーム部16の一端に傾動自在に連結し、アーム部16の他端に設けた水平方向の固定軸17まわりにアーム部16を回転させることで、アーム部16の一端に連結したボール補充部8がアーム部16と一体的に回転移動するように構成したが、もちろんこれ以外の構成を取ることも可能である。例えば作業者の操作力により、ボール補充部8を閉塞可能位置14と投入可能位置15との間で往復移動させ得る図示以外の機構が採用可能である。
【0026】
また、以上の説明に係るボール供給装置1は、シリンダヘッド3以外の部品に対してボール2を圧入する場合にも適用することができ、あるいは、圧入装置4以外の作業機に対してボール2を供給する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ボール供給装置
2 ボール
3 シリンダヘッド
4 圧入装置
5 ボール貯溜部
6 ボール供給口
7 ボール供給部
8 ボール補充部
9 開口部
10 縮径部
11 ボール供給管
12 内部空間
13 ボール投入口
14 閉塞可能位置
15 投入可能位置
16 アーム部
17 固定軸
18 連通口
19 差込み口
20 底板
21 ピン
22 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールに作用する重力を利用して前記ボールを作業機に供給するためのボール供給装置であって、
前記ボールを貯溜するボール貯溜部と、該ボール貯溜部の下部に設けた供給口から重力を利用して前記ボールを前記作業機に供給するボール供給部と、前記ボール貯溜部にボールを補充するボール補充部とを備え、
前記ボール補充部は、その内部空間に前記ボールを投入可能なボール投入口を有するもので、前記ボール貯溜部の上部を閉塞可能な閉塞可能位置と、該閉塞可能位置よりも低い位置との間を移動可能に構成され、
前記ボール補充部の底部には、前記ボール補充部を前記閉塞可能位置に配した状態で、前記ボール補充部の内部空間と前記ボール貯溜部との間を連通状態と非連通状態とに切替え可能な連通口が形成されている、ボール供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−179666(P2012−179666A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42607(P2011−42607)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】