説明

ボール用表皮材

【課題】汚れが顕著に付着するエナメル外観でありながら、意匠外観の優れたボール用表皮材を提供すること。
【解決手段】コート層を有するボール用表皮材であって、表面の光沢度が65以上であり、コート層が最表面側の最表面フィルム層とそれに接する第2表面層を含み、最表面フィルム層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa以上であって無機粒子を含有し、かつ第2表面層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa未満であることを特徴とするボール用表皮材。さらには、無機粒子が無機顔料であって、最表面フィルム層中における固形分濃度が30重量%以上であることや、無機粒子がシリカであって、最表面フィルム層中における固形分濃度が3重量%以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボール用表皮材に関し、さらに詳しくは足で扱うことが多い球技用ボールとして特に適したボール用表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サッカー等のスポーツのプレーは芝や土のグランドで行われることが通常であったが、近年では人工芝のグランドで行われることが増えてきた。ところが人工芝としてもっとも多く採用されているものは、フィールドターフとしてポリエチレンまたポリプロピレン樹脂からなる人工芝に、珪砂と冷凍粉砕ゴムチップを混ぜて構成されているものを使用している。しかしこのような人工芝上で、特にサッカー等の強く芝と接触するような競技を行った場合には、人工芝を構成する樹脂またはゴムが、ボールと強く擦れるために溶融し、ボール表面にフィルム状の汚れとして付着する問題があった。特にこの汚れは、ボールの表面がフラットな形状であるエナメル外観の場合に顕著に発生する。
【0003】
従来の汚れ防止の技術としては、基体層の表面にフッ素含有高分子を有する樹脂からなる最表面層が形成することで防汚性に優れたシート状物が考案されている(特許文献1)が、このようなフッ素成分をその表面に配置した場合、ボールを製造する際の接着性が低下したり、表面柄をプリントできないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−54079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エナメル外観でありながら汚れが付着しにくく、かつ意匠外観の優れたボール用表皮材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボール用表皮材は、コート層を有するボール用表皮材であって、表面の光沢度が65以上であり、コート層が最表面側の最表面フィルム層とそれに接する第2表面層を含み、最表面フィルム層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa以上であって無機粒子を含有し、かつ第2表面層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa未満であることを特徴とする。
【0007】
さらには、無機粒子が無機顔料であって、最表面フィルム層中における固形分濃度が30重量%以上であることや、無機粒子がシリカであっって、最表面フィルム層中における固形分濃度が3重量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エナメル外観でありながら汚れが付着しにくく、かつ意匠外観の優れたボール用表皮材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のボール用表皮材は、2層以上のコート層を有するボール用表皮材である。そしてこのコート層は、繊維絡合体と高分子からなる基体層の表面に存在するものであることが好ましい。
【0010】
ここでこの繊維絡合体と高分子からなる基体層は、繊維絡合体に高分子弾性体を含浸・凝固するなどして得られるものである。そして繊維絡合体に用いられる繊維としては、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの再生繊維、あるいは天然繊維などの単独または混合した繊維を挙げることができる。さらに好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、さらに好ましくは、ポリアミド繊維またはポリエステル繊維からなる0.2dtex以下の極細繊維が挙げられる。そのような極細繊維を得る方法としては、例えば溶剤溶解性の異なる2成分以上の繊維形成性高分子重合体からなる複合繊維または混合紡糸繊維を作成し、絡合繊維不織布を作成し、1成分を抽出除去して極細繊維絡合繊維質基材とすることができる。そして、このような繊維絡合体は、それらの繊維をカード、ウェバー、レーヤー、ニードルパンチングなど公知の手段で絡合繊維不織布とすることができる。
【0011】
また、この繊維絡合体とともに基体層に好適に用いられる高分子弾性体としては、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタンウレアエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリエステルエラストマー、合成ゴムなどを挙げることが出来る。中でもポリウレタン系エラストマーが好ましい。衝撃吸収性を高めるためには基体層に用いられるポリウレタンエラストマーの100%伸長応力が5〜15MPaであることが好ましい。特にこの範囲はサッカーボール等の足などで強い衝撃を与える用途に適する。さらには基体層の高分子弾性体は多孔質であることが好ましく、DMF溶解性の湿式凝固用ポリウレタンなどが好ましく用いられる。
【0012】
このような基体層は、繊維絡合体に高分子弾性体を処理して得ることができ、例えば繊維絡合体に高分子弾性体の有機溶剤の溶液を含浸した後に湿式凝固させる方法によって得ることができる。
【0013】
さて本発明のボール用表皮材は、例えば上記のような基体層の表面に2層以上のコート層が存在するものであり、表面の光沢度が65以上であり、コート層が最表面側の最表面フィルム層とそれに接する第2表面層を含み、最表面フィルム層には無機粒子を含有することを必須とする。
【0014】
この本発明のボール用表皮材は、その表面光沢が65以上のものである。通常このように光沢度が高い、いわゆるエナメル調の表面を有する場合には、表面が平滑で人工芝等の対象物に衝突した際の摩擦が高くなり汚れやすくなる。しかし本発明では、エナメル調であるにもかかわらず無機粒子をその表面に含有することにより、汚れの付着を防止することができるようになった。なお、ここでの光沢度は測定角度60度の条件にて測定したものである。
【0015】
本発明の最表層の最表面フィルム層には無機粒子が含有されるが、この無機粒子としては無機顔料やシリカであることが好ましい。例えば無機粒子としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等、一般に用いられる顔料であれば特に制限は無い。また、無機粒子として顔料を用いる場合、その無機顔料の含有量としては、固形分濃度にて30重量%以上の無機顔料を含むことが好ましい。さらには、無機顔料は30〜70重量%、特には40〜60重量%の範囲で含有することが好ましい。通常このように過剰に無機顔料を含有した場合には光沢が損なわれ、エナメル調の表皮材は得られにくいが、本発明では最表面のフィルム層のモジュラスを高め、さらに鏡面ラミネート等の手法を用いることにより可能となった。無機顔料の粒径としては0.1〜1μmであることが好ましく、無機顔料の中では酸化チタンが汚れ防止には最も適している。
【0016】
また他方、無機粒子としてはシリカを使用することも好ましい。その固形分濃度としては最表面のフィルム層全体に対して、3重量%以上であることが好ましく、さらには3〜25重量%の範囲であることが好ましい。通常、最表面のフィルム層にシリカを使用するとマット調になりやすく、エナメル外観を得ることは困難である。しかし先にも述べたように本発明では、最表面のフィルム層のモジュラスを高め、さらに鏡面ラミネート等の手法を用いることにより良好なエナメル外観を得ることができたものである。中でも防汚性を高めるためには、シリカの粒径が0.01μから10μmの範囲であることが好ましい。
【0017】
そして本発明のボール用表皮材は、最表面フィルム層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa以上であることを必須とする。このように硬い高分子弾性体を最表面に使用することにより、無機粒子を含有しながらエナメル調の光沢を有することが可能となった。さらに好ましくは、最表面フィルム層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10〜25MPa、特には15〜20MPaの範囲であることが好ましい。柔らかめの高分子弾性体を使用すると、例えば人工芝で使用する場合、その人工芝との摩擦が強くなり、汚れが非常につきやすくなる傾向にある。また、反対に、硬めの高分子弾性体を使用すると、人工芝との摩擦を低下させることができるが、樹脂の屈曲性の低下により、外観の耐久性が悪化したり、表面に硬さを感じさせるものとなる。
【0018】
また本発明のボール用表皮材は、最表面フィルム層の次の層である第2表面層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa未満であることが必要である。このように最表面よりも柔らかいフィルム層を介在させることにより、硬めの最表面のフィルム層の屈曲等による表皮の割れを効果的に防ぐことができる。また柔らかいフィルム層が衝撃を緩和させることにより耐摩耗性も向上し、さらには風合い的にもやわらかいボール用表皮材となる。この下層の第2表面フィルム層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスとしてはさらには3〜10MPa、特には4〜8MPaであることが好ましい。また、この2つのフィルム層のさらに下の基材との間に、よりやわらかい接着層となるバインダー層が存在することも好ましい。
【0019】
これら最表面のフィルム層やその下層の第2表面フィルム層には、その主体として樹脂が用いられることが好ましい。好ましく使用される樹脂としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の公知の高分子弾性体を挙げることができるが、特に好ましくはポリウレタン樹脂が用いられる。
【0020】
このような本発明のボール用表皮材は、たとえば基体層の上に転写(ラミネート)方式によりコート層を形成する製造方法により得ることができる。
この場合、まず離型紙等の転写ベース上に転写する表皮材用の最表面フィルム層を作成する。すなわち離型紙上に、高分子弾性体の塗布液をコートし、乾燥することで、離型紙上に最表面のフィルム層を作成する。次にその最表面用の高モジュラスのフィルム層の上に、2番目の低モジュラスの第2表面用のフィルム層を積層する。その後、必要に応じその2層のフィルム層の上にバインダー層となる塗布液をコートし、転写ベースと貼り合せを行う。このように高分子弾性体のコート、乾燥を複数回行い、目的の色、外観、表面のタッチに適した塗布液をコートしていく。
【0021】
なお本発明においては、その表面光沢が65以上である必要があるので、離型紙についてはエナメル外観のものを用いることが通常である。特にサッカーボール用途においては、エナメル外観がもっとも人気があり、本発明はエナメル外観であるにもかかわらず、人工芝等からの汚れが非常につきにくいという特徴を有している。
【実施例】
【0022】
以下本発明を実施例で詳細に説明する。なお本発明は実施例の範囲に制限されるものではない。また測定項目は下記方法により測定したものである。
【0023】
(1)光沢度
対象となるボール用表皮材を日本電色工業(株)製 「PG−1」を用い、測定角度60度の条件にて光沢度を測定した。
【0024】
(2)外観耐久性
ボール用表皮材を用いてサッカーボールを作成し、2000回のシューティングテストを行った。下記の段階にて評価した。
5級;変化無し
4級;光沢の低下のみ
3級;長辺5mm未満のフィルム層の剥がれがみられる
2級;長辺1cm未満のフィルム層の剥がれがみられる
1級;長辺1cm以上のフィルム層が剥がれ、または、ベース基材が見える。
【0025】
(3)人工芝汚れ付着
ボール用表皮材を用いてサッカーボールを作成し、人工芝上で1試合の実用テストを行った。下記の段階にて評価した。
5級;汚れ無し
4級;わずかに汚れ付着
3級;5%以上20%未満の面積に汚れ付着
2級;20%以上50%未満の面積に汚れ付着
1級;50%以上の面積に汚れ付着。
【0026】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート繊維(単糸繊度2detex、長さ51mm)を、カード、クロスラッパー、ニードルロッカー、温水収縮処理、カレンダーの工程を通し、重さ400g/m、厚さ1.42mm、見掛け密度0.28g/cmの不織布を得た。
この不織布に、100%モジュラス7MPaのポリエステルエーテル系ポリウレタン(P,P′−ジフェニルメタンジイソシアネートより合成されたもの)の14%濃度のジメチルホルムアミド溶液を含浸した。次いで、基材厚さの80%でスクイズし基材の圧縮が回復する前に、100%モジュラスが7MPaのポリエステルエーテル系ポリウレタンの20%濃度のジメチルホルムアミド溶液を片面に650g/mの目付でコーティングした後、水浸凝固、水洗、乾燥して、目付け1250g/mとなるように塗布し、10%のジメチルホルムアミドを含有する40℃の水中で高分子弾性体を湿式凝固させ、水洗、乾燥を行った。
得られたシート状物は、多孔質ポリウレタンとポリエステル繊維からなる基体層と片面に多孔質ポリウレタンコート層で構成されており、このシート状物の厚さは1.6mm、この内コート層の厚さが270μm、目付750g/mであった。このシート状物を、転写ベースとした。
【0027】
次いで、エナメル用の離型紙上に、ボール用表皮材の最表面となる最表面フィルム層を作成するため、100%モジュラスが15MPaのポリカーボネート系ポリウレタン(固形分濃度25%)を100部に対し、DMF(ジメチルホルムアミド)35部、MEK(メチルエチルケトン)35部を混合した混合液1を作成し、これに無機粒子として、酸化チタン含有無機顔料(酸化チタン50%/ポリウレタン樹脂10%/溶剤40%)50部を混合したものを塗布液とした。この塗布液を、先のエナメル用の離型紙上に、目付け60g/mとなるようにコートし、110℃で乾燥して、厚さ7μmの最表面用のフィルム層を得た。この最表面のフィルム層全体に対して、酸化チタンの固形分濃度は、45%であった。また、酸化チタンの粒径は、電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径0.3μmであった。
次いで、第2表面層として、100%モジュラス6.5Mpaのポリエステルエーテル系ポリウレタン(固形分濃度25%)を100部に対し、DMF 50部、MEK 50部、さらに白色顔料(固形分濃度50%)20部を混合したものを塗布液とした。この塗布液を、先の最表面フィルム層の上に、目付け170g/mとなるようにコートし、110℃で乾燥して、最表面フィルム層及び第2表面層を合わせて厚さ32μmのフィルムを得た。
【0028】
次いで、バインダー層として、2液型ポリエステルエーテル系ポリウレタン(固形分濃度65%)を100部に対し、DMF 20部、MEK 40部、架橋剤 9部、架橋促進剤 1部、さらに白色顔料(固形分濃度50%)5部を混合したものを塗布液とした。この塗布液を、先の第2表面層の上に、目付け200g/mとなるようにコートし、110℃で20秒乾燥後、樹脂のタックが残る状態で、先の転写ベースのコート層面と貼り合わせて、さらに温度100℃で30秒乾燥し、架橋のため温度70℃の雰囲気下で48時間熟成を行った。熟成後、離型紙と分離を行い、基体層およびコート層上に高分子弾性体の表皮層70μmを有するサッカーボール用に適したボール用表皮材を得た。
この表皮材は、光沢度94でエナメル調であった。また、この表皮材を使用してサッカーボールを作製し、人工芝上でおよそ1試合程度の時間で実用テストをしたところ、人工芝の汚れは、薄くわずかに見られるが良好であった。外観の耐久性確認のため、2000回のシューティングテストを行ったところ、外観の変化は、光沢の若干の低下のみで良好であった。評価結果を表1に示す。
【0029】
[実施例2]
最表面のフィルム層用の塗布液を、実施例1の混合液1に加える酸化チタン含有無機顔料を、シリカ粒子含有液、DIC(株)製「HuA1008K」(シリカ15%/ポリウレタン樹脂5%/溶剤80%)30部に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて塗布し、ボール用表皮材を得た。なお、この最表面のフィルム層全体に対して、シリカの固形分濃度は15%となる。また、シリカの粒径は電子顕微鏡で観察したところ、平均粒子径1.5μmであった。
得られた表皮材は、光沢度78で実施例1の表皮材には劣るものの、エナメル調の表面を有していた。また、人工芝上での実用テストでは、人工芝の汚れは、全く見られず実施例1よりも良好であった。さらに、外観の耐久性確認のシューティングテストでは、外観の変化は、光沢変化のみで良好であった。評価結果を表1に併せて示す。
【0030】
[実施例3]
最表面のフィルム層用の塗布液を、実施例1の混合液1に加える酸化チタン含有無機顔料を、実施例2よりも粒径の小さいシリカ粒子含有液、日産化学工業(株)製「MEK-ST」(シリカ30%/溶剤70%)15部に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて塗布し、ボール用表皮材を得た。なお、この最表面のフィルム層全体に対して、シリカの固形分濃度は32%となる。また、シリカの粒径はBET法測定で0.010〜0.015μmであった。
得られた表皮材は、光沢度76で実施例1の表皮材には劣るものの、エナメル調の表面を有していた。また、人工芝上での実用テストでは、人工芝の汚れは、全く見られず実施例1よりも良好であった。さらに、外観の耐久性確認のシューティングテストでは、外観の変化は、光沢変化のみで良好であった。評価結果を表1に併せて示す。
【0031】
[実施例4]
最表面のフィルム層用の塗布液を、実施例1の混合液1に加える酸化チタン含有無機顔料の添加量を50部から30部に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて塗布し、ボール用表皮材を得た。なお、この最表面のフィルム層全体に対して、酸化チタンの固形分濃度は、35%であった。
得られた表皮材は、光沢度93でエナメル調の表面を有していた。また、人工芝上での実用テストでは、人工芝の汚れは、1割程度のみの付着で使用に耐えるものであった。また、外観の耐久性確認のシューティングテストでは、外観の変化は、光沢変化のみで良好であった。評価結果を表1に併せて示す。
【0032】
[実施例5]
最表面のフィルム層用の塗布液を、実施例1の混合液1に加える酸化チタン含有無機顔料の添加量を50部から150部に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて塗布し、ボール用表皮材を得た。なお、この最表面のフィルム層全体に対して、酸化チタンの固形分濃度は、65%であった。
得られた表皮材は、光沢度80で実施例1には劣るもののエナメル調の表面を有していた。また、人工芝上での実用テストでは、人工芝の汚れは、薄くわずかに見られるが良好であった。また、外観の耐久性確認のシューティングテストでは、一部のみフィルム層の壊れが見られるが使用に耐えられるものであった。評価結果を表1に併せて示す。
【0033】
【表1】

【0034】
[比較例1]
最表面のフィルム層用の塗布液を、実施例1の混合液1をそのまま使用し、酸化チタン含有無機顔料を加えなかった以外は、実施例1と同様の条件にて塗布し、ボール用表皮材を得た。
得られた表皮材は、光沢度93でエナメル調の表面を有していた。また、人工芝上での実用テストでは、人工芝の汚れが、約3割付着し、外観上好ましくない状態となった。評価結果を表2に示す。
【0035】
[比較例2]
第2表面層用の塗布液を、実施例1の100%モジュラス6.5MPaのポリエステルエーテル系ポリウレタン(固形分濃度25%)から、最表面フィルム層用に用いた100%モジュラスが15MPaのポリカーボネート系ポリウレタン(固形分濃度25%)に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて塗布し、ボール用表皮材を得た。
得られた表皮材は、光沢度94でエナメル調の表面を有していたが、外観の耐久性確認のシューティングテストでは、大きくフィルム層の壊れる部分が見られ外観上好ましくない状態となった。評価結果を表2に併せて示す。
【0036】
[比較例3]
最表面のフィルム層用の塗布液を、実施例1の100%モジュラスが15MPaのポリカーボネート系ポリウレタン(固形分濃度25%)から、第2表面層用に用いた100%モジュラス6.5MPaのポリエステルエーテル系ポリウレタン(固形分濃度25%)に変更した以外は、実施例1と同様の条件にて塗布し、ボール用表皮材を得た。
得られた表皮材は、光沢度93でエナメル調の表面を有していたが、人工芝上での実用テストでは、人工芝の汚れが、3割程度に付着し外観上好ましくない状態となった。評価結果を表2に併せて示す。
【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のボール用表皮材は、例えば圧力空気を入れ膨らませたボディーに張り合わせるボール用表皮材として使用することができ、特に人工芝上で使用されることの多い、サッカー用の球技用ボールとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コート層を有するボール用表皮材であって、表面の光沢度が65以上であり、コート層が最表面側の最表面フィルム層とそれに接する第2表面層を含み、最表面フィルム層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa以上であって無機粒子を含有し、かつ第2表面層を構成する高分子弾性体の100%モジュラスが10MPa未満であることを特徴とするボール用表皮材。
【請求項2】
無機粒子が無機顔料であって、最表面フィルム層中における固形分濃度が30重量%以上である請求項1記載のボール用表皮材。
【請求項3】
無機粒子がシリカであっって、最表面フィルム層中における固形分濃度が3重量%以上である請求項1記載のボール用表皮材。

【公開番号】特開2010−284251(P2010−284251A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139076(P2009−139076)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(303000545)帝人コードレ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】