説明

ポインティングデバイス

【課題】ポインティングデバイスの検出電位の安定化を図り、より正確な指示動作を実現する。
【解決手段】電位検出用の第一電極45およびその第一電極の周囲に形成される電圧印加用またはアース用の複数の第二電極41を互いに非接触状態で配置する印刷回路基板40の上方に第一電極と非接触状態で配置され、下方への押し込みにより指示する位置を決定する位置指示駆動体10と、位置指示駆動体と印刷回路基板との間に、その中央部分において印刷回路基板側に凹部28を有する導電性弾性体から成るプレート20と、位置指示駆動体およびプレートを、それらの外周にて印刷回路基板の上方に保持する保持部材50とを備えたポインティングデバイス1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面上の任意の方向を指示可能なポインティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポインティングデバイスは、パーソナルコンピュータ、携帯通信端末、ゲーム装置等の入力手段として広く利用されている。特に、柱状突出型の操作手段を少なくともX−Y平面上において自在に駆動するタイプのポインティングデバイスは、ディスプレイ上に表示される対象物を自在に動かすのに非常に便利な操作手段として知られている。かかるポインティングデバイスには多種多様な構造のものがあり、導電性弾性体の下方に設けた球面部を印刷回路基板上の電極面に接触させて、そのX軸方向およびY軸方向の接触位置に基づき指示位置の(X,Y)座標を検出するタイプのポインティングデバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、このタイプのポインティングデバイスの位置検出機構について、図面を用いて説明する。
【0003】
図10は、導電性弾性体を操作手段に利用したポインティングデバイスの簡易断面図である。図11は、図10に示すポインティングデバイスの下方に配置される印刷回路基板(Printed Circuit Board: PCB)の平面図である。
【0004】
このポインティングデバイスは、略円環形状のクランプリング150の中央に設けられた貫通穴にラバーセンサー100を固定し、ラバーセンサー100の下部をPCB140と対向させ非接触状態に保持した形態を有する。ラバーセンサー100は、その下方にあって導電性弾性体から成る下方駆動部101と、その下方駆動部101の上方にて柱状立設するように固定される絶縁性の樹脂成形体102とを備える。下方駆動部101と樹脂成形体102とは、例えば、嵌め込み式あるいは嵌め込みと接着の両方にて接続される。下方駆動部101は、薄型のドーム形状を有し、PCB140側に凹部を有する。下方駆動部101の凹部の天面略中央には、ラバーセンサー100をPCB140に向かって押し込まない状態でPCB140に非接触な位置および形状で、PCB140側に突出する球面部103を有する。また、下方駆動部101の外周部分には、下方駆動部101をPCB140側に押し込むときに弾性変形し、その押し込みの解除によって元の形状に回復する薄肉の屈曲部104が形成されている。屈曲部104のさらに外側には、クランプリング150に固定するためのフランジ部105が形成されている。
【0005】
PCB140の上面には、図11に示すように、複数の電極が形成されている。当該複数の電極の配置は、次の通りである。大きな円形電極145の外側に、90度間隔で1個ずつ合計4個の小さな矩形電極141,142,143,144が配置されている。これらの電極145,141,142,143,144は互いに非接触の状態でPCB140上に形成されている。4個の矩形電極141,142,143,144は、その上方に配置されるラバーセンサー100のフランジ部105の底面が常に接触できる位置に配置されている。また、互いに対向する矩形電極間においては、一方の矩形電極141等に電圧(VCC)を印加した際に他方の矩形電極143等がアースされ、他方の矩形電極143等にVCCを印加した際に一方の矩形電極141等がアースされるように、VCCおよびアースの切り替えが行われる。
【0006】
図12は、ラバーセンサーを印刷回路基板に向けて押し込んだ際の状態を示すポインティングデバイスの断面図である。また、図13は、図12の状態におけるラバーセンサーと印刷回路基板上の円形電極との接触領域から指示位置の検出を行う方法を説明するための図である。
【0007】
ラバーセンサー100を操作しないときには、球面部103は円形電極145とは接触していないが、ラバーセンサー100の上部の樹脂成形体102を下方に押し込み、PCB140上の面内を自在に動かすと、図12に示すように、ラバーセンサー100の下方にある球面部103は、円形電極145に接触する。円形電極145への球面部106の接触領域は、樹脂成形体102の駆動方向とその押し込みの程度により変化する。
【0008】
例えば、図13に示すように、球面部103が円形電極145と領域160の部分で接触したとする。その場合、矩形電極141、円形電極145および矩形電極143を結ぶX軸上において、矩形電極141に印加されるVCCと矩形電極143のアース間では領域160の左端P(X1,0)の位置で短絡する。同様に、矩形電極143に印加されるVCCと矩形電極141のアース間では領域160の右端Q(X2,0)の位置で短絡する。理論上、上記各短絡した位置の電位は、矩形電極141からの距離(L1)および矩形電極143からの距離(L2)に比例する。よって、上記P(X1,0)およびQ(X2,0)の各位置は、矩形電極141と矩形電極143との間の距離L0が一定であるため、それぞれの短絡した位置の電位を検出すると、VCCに対する各検出電位の比に距離L0を掛けることにより求めることができる。次に、P(X1,0)およびQ(X2,0)の中間点であるR((X1+X2)/2,0)を求め、RをポインティングデバイスのX軸上の指示位置(X座標)とする。同様に、矩形電極144、円形電極145および矩形電極142を結ぶY軸上でも同様の検出を行うことで、Y軸上の指示位置(Y座標)が決定され、先に求めたX座標とY座標からX−Y平面上の指示位置である(X,Y)座標が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報WO99/17180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の従来技術には、次のような問題がある。先に述べたように、本来、VCCを印加した矩形電極からアースされている矩形電極の間では、その距離に比例して電気抵抗の値が変化するのが理想的である。しかし、実際には、球面部103が円形電極145と接触する領域160における電気抵抗の値は、VCCを印加した矩形電極141等からの距離に対してリニアに変化せず、理論値より大きくなり、あるいは小さくなるといった不安定なものとなる傾向がある。電気抵抗の値が不安定であると、検出電位が不安定になり、その結果、指示位置が操作者の意思に反する可能性が高まることになる。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたもので、ポインティングデバイスの検出電位の安定化を図り、より正確な指示動作を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上述のような電気抵抗の値が不安定になる原因を調べてきた結果、ラバーセンサーの下方にある導電性弾性体の端部よりもその中央部の厚みが大きく、かつその厚みがVCCを与えた矩形電極からアースされている矩形電極までの間でばらついていることが原因であることを突き止めた。一方、PCB平面上において自在に操作するためには、ラバーセンサー下方の球面部が必要であるため、球面部を維持しながら導電性の領域を一定の厚さにする必要があると考えた。具体的には、次のような手段を解決手段として採用した。
【0013】
本発明の一形態は、電位検出用の第一電極およびその第一電極の周囲に形成される電圧印加用またはアース用の複数の第二電極を互いに非接触状態で配置する印刷回路基板の上方に第一電極と非接触状態で配置され、下方への押し込みにより指示する位置を決定する位置指示駆動体と、位置指示駆動体と印刷回路基板との間に、その中央部分において印刷回路基板側に凹部を有する導電性弾性体から成るプレートと、位置指示駆動体およびプレートを、それらの外周にて印刷回路基板の上方に保持する保持部材とを備え、位置指示駆動体は、その下方中央部に配置され、その押し込みの際に下方に移動可能な下方突出形状の球面部と、その球面部の外周にあって、その弾性変形によって球面部の上下動を可能にする屈曲部とを少なくとも有し、プレートは、その一部若しくは全部を第二電極に接触させる外周底部と、球面部の下方において、第一電極と非接触状態になるように、外周底部の内方に連接される上方突出形状の突出部とを有し、プレートの突出部における少なくとも第一電極に接触可能な領域を一定の厚さとしたポインティングデバイスである。
【0014】
また、本発明の別の形態は、プレートにおいて、その外周底部の一部に、第二電極側に面状突出する面状突出部を備えるポインティングデバイスである。
【0015】
また、本発明の別の形態は、プレートにおいて、その外周底部に、上方側に窪む溝であって凹部から外方に繋がる1または複数の空気流出入溝を備えるポインティングデバイスである。
【0016】
また、本発明の別の形態は、位置指示駆動体とプレートとを一体として固定しているポインティングデバイスである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポインティングデバイスの検出電位の安定化を図り、より正確な指示動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るポインティングデバイスの位置指示駆動体とプレートとを接合する状況を斜め上方からみたときの分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す位置指示駆動体とプレートとを接合する状況を斜め下方からみたときの分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るポインティングデバイスおよびその下方の印刷回路基板の断面図である。
【図4】図4は、図3に示す状態から、図1に示す位置指示駆動体を印刷回路基板側に向かって押し込んだ際に、プレートが印刷回路基板上の第一電極に接触する状態を示す断面図である。
【図5】図5は、図4に示す印刷回路基板およびその上に形成される第一電極における球面部の接触領域を示す上面図である。
【図6】図6は、図1に示す位置指示駆動体を印刷回路基板の面内で種々駆動した際に第一電極にプレートが接触した複数の接触領域を示す図である。
【図7】図7は、図1に示す位置指示駆動体の一例の断面図である。
【図8】図8は、図1に示すプレートの一例の断面図である。
【図9】図9は、図3に示すポインティングデバイスを用いたときの互いに対向する第二電極間の電位の変化を示すグラフである。
【図10】図10は、導電性弾性体を操作手段に利用したポインティングデバイスの簡易断面図である。
【図11】図11は、図10に示すポインティングデバイスの下方に配置される印刷回路基板の平面図である。
【図12】図12は、ラバーセンサーを印刷回路基板に向けて押し込んだ際の状態を示すポインティングデバイスの断面図である。
【図13】図13は、図12の状態におけるラバーセンサーと印刷回路基板上の円形電極との接触領域から指示位置の検出を行う方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明のポインティングデバイスの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係るポインティングデバイスの位置指示駆動体とプレートとを接合する状況を斜め上方からみたときの分解斜視図である。図2は、図1に示す位置指示駆動体とプレートとを接合する状況を斜め下方からみたときの分解斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係るポインティングデバイスおよびその下方の印刷回路基板の断面図である。
【0021】
第一の実施の形態に係るポインティングデバイス1は、図3に示すように、位置指示駆動体10と、位置指示駆動体10の下方に配置されるプレート20と、位置指示駆動体10およびプレート20とをそれらの下方の印刷回路基板(Printed Circuit Board: PCB)40上に対して固定する保持部材50とを備える。
【0022】
位置指示駆動体10は、操作者がプレート20に向かって押し込み、PCB40の面に平行な面上にて任意の方向に操作することにより所望の方向を指示し、その指示位置を決定するための部材である。位置指示駆動体10は、図1から図3に示すように、略円環形状のフランジ部11と、当該フランジ部11の内方でかつ上方に一段高く形成され、その弾性変形により上下方向に屈曲可能な略ドーム形状の屈曲部12と、屈曲部12の内方略中央に柱状立設される略円柱形状の操作部13とを有する。操作部13の下部は、屈曲部12の裏方向に突出しており、操作部13の下方への押し込みによりプレート20を弾性変形させてPCB40上の第一電極45に接触させる球面部16を備える。フランジ部11の互いに180度間隔で対向する外周部には、外方向に突出する2個の外突出部14が形成されている。外突出部14のそれぞれには、上下方向に貫通する1個の貫通穴15が形成されている。位置指示駆動体10は、フランジ部11、屈曲部12および操作部13を一体的に連接した形状を有し、操作部13の下方にある球面部16および操作部13の外周にある屈曲部12の裏側に空間を有し、PCB40に向けての押し込みおよびその押し込みの解除により、球面部16を上下動させることができる。位置指示駆動体10は、好適には、絶縁性のゴム状弾性体から構成され、特に、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、天然ゴム等の材料を好適に使用でき、それらの中でも、シリコーンゴムをより好適に使用できる。また、位置指示駆動体10において、少なくとも屈曲部12をシリコーンゴム等のゴム状弾性体から構成し、それ以外の部分(例えば、操作部13およびその下方の球面部16)をポリプロピレン等の樹脂から構成しても良い。
【0023】
プレート20は、その上方にある位置指示駆動体10の球面部16からの押圧を受けて下方に弾性変形して、PCB40表面上の第一電極45に接触可能な部材である。プレート20は、薄型の皿を逆さにした形状を有しており、その外周底部となる略円環状のリング状部材21と、そのリング状部材21の内方にて面状に上方突出する突出部23とを備える。突出部23の外周部分22は、その下方のリング状部材21と接続する斜面になっている。リング状部材21の互いに180度間隔で対向する外周部には、外方向に突出する2個の外突出部24が形成されている。外突出部24のそれぞれには、上下方向に貫通する1個の貫通穴25が形成されている。プレート20は、ほぼ一定の厚さを有する円板状の導電性弾性体を、リング状部材21と突出部23とを備える逆皿形状に成形した部材である。この結果、特に、突出部23の厚さは、その面内でほぼ一定である。ただし、外周部分22を含めた突出部23全体を一定の厚さにせずに、外周部分22を除く突出部23の天面部分を一定の厚さにしても良い。すなわち、プレート20において、少なくとも第一電極45と接触する領域が一定の厚さであれば良い。
【0024】
プレート20は、導電性のフィラーと絶縁性のゴム状弾性体の材料とを混練して成る導電性弾性体である。導電性フィラーとしては、粒子状、繊維状、板状等の導電性材料を好適に使用でき、その材料にはカーボン、金属等の導電性材料を使用できる。その中でも、粒子状のカーボン(カーボンブラック)を好適に使用できる。また、ゴム状弾性体には、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、天然ゴム等の材料を好適に使用でき、その中でもシリコーンゴムを好適に使用できる。導電性材料は、導電性弾性体中に5〜50重量%の範囲で含有されるのが好ましく、さらには15〜35重量%が好ましい。
【0025】
図3に示すように、プレート20は、プレート20の上方からの球面部16の押圧を受けて変形し、PCB40上の第一電極45に接することができるように、突出部23の下方に凹部28を有している。また、図2に示すように、プレート20のリング状部材21の底面には、PCB40上の4個の第二電極41,42,43,44に接触する位置でPCB40側に向かってわずかに面状突出する4個の面状突出部27が、リング状部材21の中心から略90度間隔で形成されている。プレート20と第二電極41,42,43,44との電気的な接触を確実にするためである。また、その面状突出部27を避けるように、リング状部材21には、その中心から略90度間隔で、内方の空間と外界とを繋ぐように空気流入出溝26が形成されている。空気流入出溝26は、突出部23の外周部分22にも延出するように形成されている。空気流出入溝26は、プレート20がPCB40に向けて押し込まれ、その後に弾性変形して元の状態に戻る動作をする際に、凹部28と外界との間で空気の流入および流出を容易にし、凹部28内が減圧状態になることにより生じる上下動作の不具合を防止するために設けられている。
【0026】
位置指示駆動体10とプレート20とは、位置指示駆動体10の貫通穴15とプレート20の貫通穴25とを挿通するピン30にて連接され、一体化可能である。ピン30は、樹脂等により構成されている。2本のピン30にて接合された状態の位置指示駆動体10およびプレート20は、保持部材50の貫通穴の下方から挿入され、保持部材50の上方に抜けないように固定される。具体的には、保持部材50の貫通穴の下方の径を上方の径より大きくして貫通穴の途中に段差を形成し、その段差に、位置指示駆動体10のフランジ部11およびプレート20のリング状部材21を突き当てるようにしている。フランジ部11は、図3に示すように、内側の屈曲部12との接合部から外側に向かって厚さを大きくするように上方傾斜している。保持部材50は、フランジ部11の上面に接して位置指示駆動体10を上方に抜けないように保持している。フランジ部11が上方傾斜していることにより、位置指示駆動体10およびプレート20は、保持部材50から抜けにくくなっている。なお、ピン30を使用せず、位置指示駆動体10に、プレート20の貫通穴25の方向に突出する円柱形状の突出部を形成し、その突出部を貫通穴25に挿入して位置指示駆動体10とプレート20とを接合しても良い。また、プレート20に、位置指示駆動体10の貫通穴15の方向に突出する円柱形状の突出部を形成し、その突出部を貫通穴15に挿入して位置指示駆動体10とプレート20とを接合しても良い。
【0027】
図4は、図3に示す状態から、図1に示す位置指示駆動体を印刷回路基板側に向かって押し込んだ際に、プレートが印刷回路基板上の第一電極に接触する状態を示す断面図である。
【0028】
位置指示駆動体10をPCB40に向けて押し込むと、その直下に配置されているプレート20をPCB40に向けて押し込み、プレート20の一部がPCB40上の第一電極45に接する。プレート20が第一電極45に接触する部分は、球面部16がプレート20に接触している部分の略直下に相当する場所である。
【0029】
図5は、図4に示す印刷回路基板およびその上に形成される第一電極における球面部の接触領域を示す上面図である。
【0030】
PCB40は、絶縁性の高い樹脂、あるいは当該樹脂とガラスの複合体等から構成される回路基板である。PCB40の表面には、球面部16の下方に配置可能な第一電極45と、プレート20の面状突出部27と接触可能な位置に配置される4個の第二電極41,42,43,44とが互いに非接触状態で形成されている。第二電極41,42,43,44は、VCCの印加とアースとを切り替え可能な電極である。第二電極41,42,43,44の内、第一電極45を挟んで互いに対向する2つの第二電極は、一方の第二電極(例えば、第二電極41)にVCCを印加したときには、これと対向する他方の第二電極(例えば、第二電極43)がアースになり、その逆に、他方の第二電極(例えば、第二電極43)にVCCを印加したときには、これと対向する一方の第二電極(例えば、第二電極41)がアースになるように、VCCを印加する第二電極とアースする第二電極とを交互に切り替えるようにしている。また、第一電極45は、A/Dコンバータに接続されており、プレート20が第一電極45に接触した際に、VCCを印加した第二電極とアースされている第二電極間におけるその接触位置での分割電位を計測できるようにしている。
【0031】
例えば、図5に示すように、プレート20が接触領域60にて第一電極45と接触したとする。第二電極41と第二電極43とを結ぶ方向をX軸方向とし、第二電極41と第二電極43との間の距離をL0、接触領域60の第二電極41に近い側のX軸上の点をP(x1,0)とし、第二電極41と点Pとの間の距離をL1とする。同様に、接触領域60の第二電極43に近い側のX軸上の点をQ(x2,0)とし、第二電極43と点Qとの間の距離をL2とする。第二電極41にVCCを印加した際には、第二電極41からの電流は、点Pの位置で第一電極45に短絡する。一方、VCCを切り替えて、第二電極43にVCCを印加した際には、第二電極43からの電流は、点Qの位置で第一電極45に短絡する。
【0032】
プレート20は、その面内、特に、突出部23の面内において一定の厚さを有している。このため、第一電極45にて計測される分割電位(またはその分割電位から求めることのできる電気抵抗)は、電流がプレート20を通った距離に比例する。したがって、L1の長さに比例して電気抵抗は大きくなり、電気抵抗は、第一電極45の第二電極41側端部で最小値をとり、第一電極45の第二電極43側端部で最大値をとる。第二電極43にVCCを印加した場合も、同様に、電気抵抗は、第一電極45の第二電極43側端部で最小値をとり、第一電極45の第二電極41側端部で最大値をとる。このように、点Pおよび点Qにおける各分割電位を検出することにより、点P(x1,0)および点Q(x2,0)の各座標を求めることができる。点P(x1,0)と点Q(x2,0)との間の中心点R((x1+x2)/2,0)を操作者が指示した位置のX座標と定義すると、接触領域60がどの位置であっても、点P(x1,0)と点Q(x2,0)を求めることで指示位置を決定できる。これは、第二電極44と第二電極42とを結ぶ方向をY軸方向としたときにも同様の手法によりY軸上の座標を決定することができる。これによって、座標(X,Y)を指示位置の座標として決定できる。
【0033】
図6は、図1に示す位置指示駆動体を印刷回路基板の面内で種々駆動した際に第一電極にプレートが接触した複数の接触領域を示す図である。
【0034】
位置指示駆動体10をPCB40の面内で種々駆動し、例えば、図6に示すような各接触領域60a,60b,60c,60d,60e,60f,60g,60h,60iの各位置で、プレート20がPCB40上の第一電極45に接触したとする。接触領域60a等が第二電極41,43を結ぶX軸上、あるいは第二電極44,42を結ぶY軸上に無い場合であっても、上述の分割電位の計測により、各接触領域の中心点の座標(X,Y)を求めることができ、それによって、操作者の指示する位置を求めることができる。また、プレート20は、位置指示駆動体10の球面部16とPCB40との間に介在し、第一電極45に接触するため、球面部16が第一電極45に接触する場合と比較して、より小さな接触領域で第一電極45と接触する。加えて、第一電極45上における接触領域60a,60b,60c,60d,60e,60f,60g,60h,60iは、ほぼ円形で、かつ同一の大きさになりやすい。したがって、指示する位置をより正確に検出することができる。
【0035】
図7は、図1に示す位置指示駆動体の一例の断面図である。
【0036】
位置指示駆動体10の一例の好適な形態は、次の通りである。位置指示駆動体10のフランジ部11の外径D1は、10mmである。屈曲部12の外径D2は、7.6mmである。フランジ部11の底面から球面部16の下方先端部までの高さSは、0.3mmである。フランジ部11の最外周部11bの厚さT1は、0.7mmで、フランジ部11と屈曲部12との接合部11aにおけるフランジ部11の厚さT2は、0.45mmである。このように、フランジ部11は、内側から外側に向かって上方傾斜して0.25mmだけ厚くなっている。
【0037】
図8は、図1に示すプレートの一例の断面図である。
【0038】
プレート20の一例の好適な形態は、次の通りである。プレート20の外径は、上述の位置指示駆動体10の外径D1と同一の10mmである。突出部23の外径D3は、7mmである。リング状部材21の底面から突出部23の上面までの高さHは、0.6mmである。リング状部材21の厚さT3は、0.3mmである。したがって、突出部23の厚さも0.3mmとなる。リング状部材21の底面の4箇所に形成される面状突出部27の厚さT4は、0.05mmである。リング状部材21の底面から突出部23の裏面までの高さLは、0.35mmである。
【0039】
図7に示す位置指示駆動体10を図8に示すプレート20の上に載せ両者をピン30にて一体化すると、位置指示駆動体10の球面部16は、突出部23の上面に接する。このように、位置指示駆動体10を操作していない状態で、球面部16を突出部23の上面に接するようにすると、位置指示駆動体10を下方に押し込んだ際に、プレート20をスムーズに下方に押し下げることができる。フランジ部11の底面から球面部16の下方先端部までの高さSを0.3mmより高く設計し、球面部16が突出部23に非接触の状態とすることも可能である。しかし、その場合には、位置指示駆動体10を下方に押し込んだ際に、プレート20に当接する感触が操作者に伝わるので、操作感に劣る。よって、位置指示駆動体10の非操作時に、球面部16が突出部23の上面に接している方が好ましい。
【0040】
図9は、図3に示すポインティングデバイスを用いたときの互いに対向する第二電極間の電位の変化を示すグラフである。
【0041】
図9のグラフ70から明らかなように、第二電極44にVCCを印加し、第二電極42をアースした場合、第二電極44と第二電極42との間における電位Aは、それら第二電極44,42間の距離に応じてリニアに変化する。第二電極42にVCCを印加して第二電極44をアースした場合も同様な電位の変化が認められる。さらに、第二電極41と第二電極43との間においても同様である。このような第二電極間の電位がその距離に応じてリニアに変化するグラフ70が得られるのは、プレート20の特に突出部23がほぼ同一の厚さであることに起因する。
【0042】
以上、本発明のポインティングデバイスの好適な実施の形態について説明したが、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々変形実施可能である。
【0043】
例えば、第二電極41,42,43,44は、VCCの印加とアースとを切り替え可能な電極としているが、VCCの印加若しくはアースのいずれかが可能な電極でも良い。プレート20と第一電極45との接触領域60等が極めて小さい場合には、互いに対向する第二電極41,43(若しくは第二電極44,42)のいずれか一方をVCC印加用の電極とし、他方をアース用の電極としても指示位置の誤差が小さいからである。
【0044】
また、プレート20は、リング状部材21の底面の一部に4個の面状突出部27を設け、第二電極41,42,43,44との接触を安定化させているが、面状突出部27は必須の構成ではない。また、プレート20に、リング状部材21を設けずに、突出部23から4方向に延出する脚部を設け、その脚部の底面(外周底部に相当する)と第二電極41,42,43,44とを接触させるようにしても良い。また、プレート20の突出部23のみを一定厚にし、リング状部材21を突出部23の厚さより大きく若しくは小さくしても良い。さらに、外周部分22を除く突出部23の領域を一定厚にして、それ以外の部分の厚さを当該領域と異なる厚さにしても良い。
【0045】
さらに、プレート20に設けている空気流出入溝26は、4本に限定されず、3本以下あるいは5本以上でも良い。また、空気流出入溝26は、プレート20に必須の構成ではなく、設けなくても良い。また、位置指示駆動体10とプレート20とを一体的に接続していなくても良い。さらに、位置指示駆動体10からフランジ部11を除外し、位置指示駆動体10の構成を、操作部13と屈曲部12とを備えるだけの構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、電子機器の操作手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ポインティングデバイス
10 位置指示駆動体
11 フランジ部
12 屈曲部
16 球面部
20 プレート
21 リング状部材(外周底部)
23 突出部
26 空気流出入溝
27 面状突出部
28 凹部
40 PCB(印刷回路基板)
41,42,43,44 第二電極
45 第一電極
50 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位検出用の第一電極およびその第一電極の周囲に形成される電圧印加用またはアース用の複数の第二電極を互いに非接触状態で配置する印刷回路基板の上方に上記第一電極と非接触状態で配置され、下方への押し込みにより指示する位置を決定する位置指示駆動体と、
上記位置指示駆動体と上記印刷回路基板との間に、その中央部分において上記印刷回路基板側に凹部を有する導電性弾性体から成るプレートと、
上記位置指示駆動体および上記プレートを、それらの外周にて上記印刷回路基板の上方に保持する保持部材と、
を備え、
上記位置指示駆動体は、
その下方中央部に配置され、その押し込みの際に下方に移動可能な下方突出形状の球面部と、
その球面部の外周にあって、その弾性変形によって上記球面部の上下動を可能にする屈曲部と、
を少なくとも有し、
そのプレートは、
その一部若しくは全部を上記第二電極に接触させる外周底部と、
上記球面部の下方において、上記第一電極と非接触状態になるように、上記外周底部の内方に連接される上方突出形状の突出部と、
を有し、
上記プレートの上記突出部における少なくとも第一電極に接触可能な領域が一定の厚さであることを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項2】
前記プレートは、前記外周底部の一部に、前記第二電極側に面状突出する面状突出部を備えることを特徴とする請求項1に記載のポインティングデバイス。
【請求項3】
前記プレートは、前記外周底部に、上方側に窪む溝であって前記凹部から外方に繋がる1または複数の空気流出入溝を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポインティングデバイス。
【請求項4】
前記位置指示駆動体と前記プレートとを一体として固定していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポインティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−44080(P2011−44080A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193116(P2009−193116)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】