説明

ポジ型レジスト組成物、レジストパターン形成方法

【課題】吐出ノズル式塗布法に好適に用いることができるポジ型レジスト組成物、及び該ポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法の提供。
【解決手段】吐出ノズルと基板とを相対的に移動させることによって基板の塗布面全体にレジスト組成物を塗布する工程を有する吐出ノズル式塗布法に用いられるポジ型レジスト組成物であって、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)及びナフトキノンジアジド基含有化合物(C)を、炭素数6以上のジオール(S1)を含む有機溶剤(S)に溶解してなることを特徴とするポジ型レジスト組成物;吐出ノズルと支持体とを相対的に移動させることによって支持体の塗布面全面に前記ポジ型レジスト組成物を塗布する工程、前記支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ノズル式塗布法に好適なポジ型レジスト組成物、及び該ポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型ガラス基板を用いた液晶表示素子製造分野においては、レジスト塗布方法として中央滴下後スピンする方法が用いられていた(下記非特許文献1)。
中央滴下後スピンする塗布法では、良好な塗布均一性が得られるものの、例えば1m角クラスの大型基板の場合は、回転時(スピン時)に振り切られて廃棄されるレジスト量がかなり多くなり、また高速回転による基板の割れや、タクトタイムの確保の問題が生じる。さらに中央滴下後スピンする方法における塗布性能は、スピン時の回転速度とレジストの塗布量に依存するため、さらに大型化される第5世代基板(1000mm×1200mm〜1280mm×1400mm程度)等に適用しようとすると、必要な加速度が得られる汎用モータがなく、そのようなモータを特注すると部品コストが増大するという問題があった。
また、基板サイズや装置サイズが大型化しても、例えば、塗布均一性±3%、タクトタイム60〜70秒/枚など、塗布工程における要求性能はほぼ変わらないため、中央滴下後スピンする方法では、塗布均一性以外の要求に対応するのが難しくなってきた。
【0003】
このように基板の大型化が進み、最近では第10世代基板(2880mm×3130mm)の製造も開始されている中、第4世代基板(680mm×880mm)以降、特に第5世代基板以降の大型基板に適用可能な新しいレジスト塗布方法として、吐出ノズル式によるレジスト塗布法が提案されてきている。
吐出ノズル式によるレジスト塗布法は、吐出ノズルと基板とを相対的に移動させることによって基板の塗布面全面にポジ型レジスト組成物を塗布する方法で、例えば、複数のノズル孔が列状に配列された吐出口やスリット状の吐出口を有し、レジスト組成物を帯状に吐出できる吐出ノズルを用いる方法が提案されている。また、吐出ノズル式で基板の塗布面全面にレジスト組成物を塗布した後、該基板をスピンさせて膜厚を調整する方法も提案されている。
【0004】
大型基板への塗布を目的とするレジスト組成物としては、アルカリ可溶性ノボラック樹脂、ナフトキノンジアジド基含有化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む有機溶剤、及び界面活性剤を含有するポジ型レジスト組成物(特許文献1)や、アルカリ可溶ノボラック樹脂、ナフトキノンジアジド感光性化合物、及び、ベンジルアルコール又はベンジルアルコール誘導体を含んでなる有機溶剤を含有するレジスト組成物(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−107130号公報
【特許文献2】特表2007−531897号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】エレクトリック・ジャーナル(Electronic Journal)2002年8月号、121〜123頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吐出ノズル式塗布法に関しては、最近、好適な塗布装置が開発、発表されてきたところであり、かかる塗布法に用いられるレジスト組成物の好適化がこれからの重要な課題となっている。
また、大型基板では、その塗布後の乾燥に減圧乾燥装置が用いられることが多い。減圧乾燥装置を使用する場合、基板のレジスト組成物塗布面の逆の面を、複数のピンにて多点支持した状態で減圧乾燥が行われる。その際、ピンの接点とそれ以外の部分とにおける熱伝導性の違い等から、乾燥後の塗膜にピンの痕が残るという問題があった。このピン痕の問題はレジスト組成物のベーク時にも起こっていた。
さらに、上述のように大型基板においても塗布性能の要求は小型基板と同じであるため、塗布後にモヤ斑やすじ状痕のない、均一な塗膜を形成可能なレジスト組成物が求められている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、吐出ノズル式塗布法に好適に用いることができるポジ型レジスト組成物、及び該ポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第一の態様は、吐出ノズルと基板とを相対的に移動させることによって基板の塗布面全体にレジスト組成物を塗布する工程を有する吐出ノズル式塗布法に用いられるポジ型レジスト組成物であって、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)及びナフトキノンジアジド基含有化合物(C)を、炭素数6以上のジオール(S1)を含む有機溶剤(S)に溶解してなることを特徴とするポジ型レジスト組成物である。
本発明の第二の態様は、吐出ノズルと支持体とを相対的に移動させることによって支持体の塗布面全面に前記第一の態様のポジ型レジスト組成物を塗布する工程、前記支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法である。
【0009】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「アルキル基」とは、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吐出ノズル式塗布法に好適に用いることができるポジ型レジスト組成物、及び該ポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪ポジ型レジスト組成物≫
本発明の第一の態様であるポジ型レジスト組成物は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)(以下、「(A)成分」という。)及びナフトキノンジアジド基含有化合物(C)(以下、「(C)成分」という。)を、炭素数6以上のジオール(S1)を含む有機溶剤(S)(以下、「(S)成分」という。)に溶解してなる。
【0012】
<(A)成分>
本発明において(A)成分は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂であり、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられているアルカリ可溶性ノボラック樹脂を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ここで、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
【0013】
(A)成分の具体例としては、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で反応させて得られるノボラック樹脂が挙げられる。
前記フェノール類としては、たとえばフェノール;m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール等のクレゾール類;2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等のキシレノール類;m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール等のアルキルフェノール類;p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−プロポキシフェノール、m−プロポキシフェノール等のアルコキシフェノール類;o−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類;フェニルフェノール等のアリールフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシフェノール類等を挙げることができる。これらのフェノール類の中では、m−クレゾール、p−クレゾールが特に好ましい。
これらフェノール類は、単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、m−クレゾールとp−クレゾールとを組み合わせて用いることが最も好ましい。
【0014】
前記アルデヒド類としては、たとえばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレイン、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類の中では、入手のしやすさからホルムアルデヒドが好ましい。
これらアルデヒド類は、単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
前記酸性触媒としては、たとえば塩酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられ、シュウ酸が好ましい。
【0016】
(A)成分は、1種のノボラック樹脂からなっていてもよく、2種以上のノボラック樹脂からなっていてもよい。特に2種以上のノボラック樹脂を混合することにより、レジスト組成物の感度を適宜調整することができる。
本発明において、(A)成分としては、以下に例示する、(A’)成分のノボラック樹脂を含むものが好ましい。
【0017】
[(A’)成分]
本発明において、(A’)成分は、m−クレゾールとp−クレゾールとの仕込みの割合(モル比)がm−クレゾール/p−クレゾール=20/80〜80/20の混合フェノール類に対し、ホルムアルデヒドを縮合剤として用いて合成された、質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)が1000〜15000のノボラック樹脂である。(A)成分に(A’)成分が含まれていると、高感度のレジスト組成物の調製に適し、未露光部の残膜性が向上するため、好ましい。
【0018】
(A’)成分において、m−クレゾールとp−クレゾールとの仕込みの割合(モル比)は、m−クレゾール/p−クレゾール=20/80〜50/50であることが特に好ましい。
【0019】
本発明において、(A)成分は、m−クレゾールとp−クレゾールとの仕込みの割合やMwの異なる複数の(A’)成分を混合して用いてもよく、また、(A’)成分以外のノボラック樹脂を含んでいてもよい。ただし、(A)成分中における(A’)成分の合計の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%でもよい。最も好ましくは100質量%である。
【0020】
また、本発明の(A)成分としては、アルカリ溶解性が好ましくは25〜400nm/秒、より好ましくは25nm/秒超400nm/秒以下、さらに好ましくは50〜400nm/秒の範囲であるノボラック樹脂からなるアルカリ可溶性ノボラック樹脂を用いることが好ましい。アルカリ溶解性が前記範囲であると、吐出ノズル式塗布法用としてより好適なポジ型レジスト組成物が調製できる。
特に、アルカリ溶解性が50〜400nm/秒の範囲内にあると、高感度が得られ、露光部での残渣が少なく、コントラストに優れ、さらに低NA条件における高解像とレジストプロファイルの垂直性に優れるため、好ましい。
なお、本明細書において、「アルカリ溶解性」とは、アルカリ可溶性ノボラック樹脂からなるレジスト層を所定の膜厚(0.5〜2.0μm程度)で支持体上に設け、該レジスト層を2.38質量%テトラメチルアンモニムヒドロキシド(以下、TMAHという。)水溶液(約23℃)に浸漬し、該レジスト層の膜厚が0μmとなるまでに要する時間を求め、次式[アルカリ溶解性=レジスト層の膜厚/該膜厚が0となるまでに要する時間]により算出される値(nm/秒)をいう。アルカリ可溶性ノボラック樹脂からなるレジスト層は、例えば、ノボラック樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解して20質量%濃度の溶液とし、3インチシリコンウェーハ上にスピンコートして、110℃に設定されたホットプレート上で90秒間加熱処理を行うことにより形成される。
前記「アルカリ溶解性」は、(A)成分を構成する構成単位の種類またはその割合、(A)成分のMwなどを調整することにより制御できる。
【0021】
(A)成分全体のMwは、1000以上であることが好ましく、2000〜15000であることがより好ましく、3000〜10000であることがさらに好ましい。該Mwが1000以上であると、レジスト膜の膜厚を均一にする上で好ましく、レジスト組成物のリソグラフィー特性が向上する。
(A)成分が2種以上のノボラック樹脂からなる場合、それぞれのノボラック樹脂のMwは特に限定されるものではなく、(A)成分全体としてMwが1000以上となるように調製されていることが好ましい。
【0022】
<(C)成分>
本発明において、(C)成分はナフトキノンジアジド基含有化合物であり、感光性成分である。(C)成分は、従来、吐出ノズル式塗布法用ポジ型レジスト組成物の感光性成分として用いられてきたものを用いることができる。
(C)成分の具体例としては、たとえば、下記化学式(II)で表されるフェノール性水酸基含有化合物と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応生成物(c1)(以下、(c1)成分という。)が好適なものとして挙げられる。
【0023】
【化1】

【0024】
前記1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル化合物、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル化合物等が挙げられ、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル化合物が好ましい。
前記(c1)成分の平均エステル化率は、50〜70%であることが好ましく、55〜65%であることがより好ましい。該平均エステル化率が50%以上であると、アルカリ現像後の膜減りが抑制され、残膜率が高くなる点で好ましい。該平均エステル化率が70%以下であれば、保存安定性が向上する。
前記(c1)成分は、非常に安価でありながら、高感度のポジ型レジスト組成物を調製できる点で特に好ましい。
【0025】
また、(C)成分としては、前記(c1)成分以外に、他のキノンジアジドエステル化物(c2)(以下、(c2)成分という。)を用いることができる。
(c2)成分としては、たとえば、後述の一般式(III)で表わされるフェノール性水酸基含有化合物と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物(好ましくは、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル化合物または1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル化合物)とのエステル化反応生成物が挙げられる。
【0026】
(C)成分中の(c2)成分の含有割合は、50質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
本発明のポジ型レジスト組成物における(C)成分の含有割合は、(A)成分と、必要に応じて配合される(B)成分(後述)との合計量100質量部に対して15〜40質量部の範囲内であることが好ましく、18〜35質量部の範囲内であることがより好ましく、18〜30質量部の範囲内であることがさらに好ましい。(C)成分の含有割合が15質量部以上であると、転写性が向上して、所望の形状のレジストパターンが形成されやすくなる。一方、40質量部以下であれば、感度や解像性が向上し、また、アルカリ現像処理後における残渣物の発生が抑制される。
【0028】
<(S)成分>
本発明のレジスト組成物は、炭素数6以上のジオール(S1)(以下、「(S1)成分」という。)を含む(S)成分に溶解して製造される。
(S)成分は、(S1)成分の他に、(S1)成分に該当しない有機溶剤(S2)(以下、「(S2)成分」という。)を含んでいてもよい。
【0029】
((S1)成分)
本発明において、(S1)成分は、炭素数6以上のジオールである。
炭素数6以上のジオールとしては、炭素数6〜9のジオールが好ましく、具体的には、例えば、ヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオール等が挙げられる。
なかでも、本発明における(S1)成分としては、炭素数6〜7のジオールが好ましく、ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、又は1,7−ヘプタンジオールがさらに好ましい。
(S1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(S)成分中の(S1)成分の割合は、(S)成分の総質量に対し、100質量%であってもよいが、0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内とすることにより、減圧乾燥やベーク時のピン痕残存が低減され、塗膜のモヤ斑やすじ状痕も低減される。
【0030】
((S2)成分)
(S2)成分は、特に限定されるものではなく、従来、吐出ノズル式塗布法に用いられるポジ型レジスト組成物の有機溶剤を1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
なかでも、本発明における(S2)成分としては、塗布性に優れ、大型ガラス基板上でもレジスト被膜の膜厚均一性に優れていることから、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を含むことが好ましい。
(S2)成分においてPGMEAは単独溶媒で用いることが最も好ましいが、PGMEA以外の溶媒を併用することもでき、例えば乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
乳酸エチルを用いる場合は、PGMEAに対して質量比で0.1〜10倍量、好ましくは1〜5倍量の範囲で配合することが望ましい。
また、γ−ブチロラクトンを用いる場合は、PGMEAに対して質量比で0.01〜1倍量、好ましくは0.05〜0.5倍量の範囲で配合することが望ましい。
【0031】
(S)成分中の(S2)成分の割合は、(S)成分の総質量に対し、60〜99.9量%であることが好ましく、80〜99.5質量%であることがより好ましく、90〜99.0質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明においては、(S)成分を使用して、ポジ型レジスト組成物中における、上記(A)成分及び(C)成分と、後述する(B)成分との合計割合を、30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることがより好ましく、20質量%以下とすることがさらに好ましい。また、該割合は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。該含有割合が前記範囲であると、レジストパターン形成において、吐出ノズルからポジ型レジスト組成物を帯状に吐出して支持体上に塗布する際、良好な塗布性が得られる。また、該塗布の後、スピンした場合であっても、良好な流動性が得られるため、膜厚の均一性が良好なレジスト膜を歩留まり良く形成する上で好ましい。
【0033】
<任意成分・(B)成分>
本発明のポジ型レジスト組成物は、感度向上等の目的で、さらに、分子量1000以下のフェノール性水酸基含有化合物(B)(以下、「(B)成分」という。)を含有することが好ましい。
(B)成分の分子量は1000以下であり、200〜1000であることが好ましい。(B)成分の分子量が1000以下であると、感度向上の効果が得られやすくなる。
【0034】
特に、液晶素子製造等の吐出ノズル式塗布法を用いる分野においては、スループットの向上が非常に大きい問題であり、また、レジスト消費量が多くなりがちである。そのため、ポジ型レジスト組成物にあっては、高感度でしかも安価であることが好ましく、該(B)成分を用いると、比較的安価で高感度化を達成できる。また、(B)成分を用いると、レジストパターン形成において表面難溶化層が強く形成されるため、アルカリ現像時に未露光部分のレジスト膜の膜減り量が少なく、現像時間の差から生じる現像ムラの発生が抑えられることから好ましい。
【0035】
(B)成分としては、従来、吐出ノズル式塗布法用のポジ型レジスト組成物に用いられている分子量1000以下のフェノール性水酸基含有化合物を適宜用いることができる。
(B)成分の具体例としては、たとえば、下記一般式(III)で表されるフェノール性水酸基含有化合物が、感度を効果的に向上できることから好適なものとして挙げられる。
【0036】
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を表し;R〜R11はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し;Qは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、Rと結合して形成される炭素数3〜6のシクロアルキル基、または下記の化学式(IV)で表される残基を表し;a、bは1〜3の整数を表し;dは0〜3の整数を表し;nは0〜3の整数を表す。)
【0037】
【化3】

(式中、R12およびR13はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を表し;cは1〜3の整数を表す。)
これらは、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記式(III)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。
〜Rにおいて、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、又はtert−ブチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、又はtert−ブトキシ基が好ましい。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
なかでも、R〜Rとしては水素原子、又はメチル基であることが好ましい。
【0039】
〜R11は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子、又はメチル基であることが好ましい。
a、bは、1〜3の整数を表し、1であることが最も好ましい。
dは、0〜3の整数を表し、1であることが最も好ましい。
nは0〜3の整数を表し、0又は1であることが最も好ましい。
Qは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、Rと結合して形成される炭素数3〜6のシクロアルキル基、または前記一般式(IV)で表される残基を表し、前記一般式(IV)で表される残基であることが最も好ましい。
【0040】
前記式(IV)中、R12およびR13は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を表し、水素原子であることが最も好ましい。
12およびR13としては、R〜Rと同様のものが挙げられる。
cは、1〜3の整数を示し、1であることが最も好ましい。
【0041】
上記の中でも、下記化学式(I)又は(I’)で表されるフェノール性水酸基含有化合物は、感度、残膜率に特に優れることから特に好ましい。
【0042】
【化4】

【0043】
本発明において(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポジ型レジスト組成物が(B)成分を含有する場合、(B)成分の配合量は、(A)成分であるアルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対し1〜25質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲が好ましい。レジスト組成物における(B)成分の含有量が少なすぎると、高感度化、高残膜率化の向上効果が十分に得られず、多すぎると現像後の基板表面に残渣物が発生しやすく、また原料コストも高くなるので好ましくない。
【0044】
<任意成分・(E)成分>
本発明のポジ型レジスト組成物は、さらに、すじ状痕の発生抑止を目的として、界面活性剤(E)(以下、「(E)成分」という。)を含有することが好ましい。(E)成分の含有量は、ポジ型レジスト組成物全体に対して900ppm以下の範囲内が、すじ状痕の発生を効果的に防止できる点で好ましい。
(E)成分としては、特に制限はなく、例えば従来からレジスト用界面活性剤として知られている化合物を1種または2種以上用いることができる。
(E)成分としては、フッ素−ケイ素系界面活性が好適であり、中でもパーフルオロアルキルエステル基とアルキルシロキサン基とエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基が結合した非イオン性フッ素−ケイ素系界面活性剤(E−1)が好ましい。当該界面活性剤(E−1)としては、例えばメガファックR−08、R−60(製品名、大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。
またフッ素含有量が10〜25質量%であり、かつケイ素含有量が3〜10質量%の界面活性剤成分(E−2)は更に好ましく、例えばX−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093(製品名、信越化学工業社製)等が挙げられ、特にX−70−093は、レジスト滴下量が少量であっても、すじ状痕や乾燥ムラの発生を抑制する効果が高いのでより好ましい。
さらにまた特定のシロキサン骨格を有するポリエステル変性ポリジアルキルシロキサン系界面活性剤(E−3)も好ましく、例えばBYK−310、BYK−315、(製品、ビックケミー社製)等が挙げられ、特にBYK−310は、モヤムラや滴下跡、及びスジムラ(すじ状痕)の発生を良く抑制することができるのでより好ましい。
これら(E−1)〜(E−3)の界面活性剤の合計量が(E)成分中の50質量%以上を占めることが好ましく、その割合は100質量%であってもよい。
上記(E−1)〜(E−3)以外の界面活性剤の具体例としては、ストリエーション防止のための界面活性剤、例えばフロラードFC−430、FC431(製品名、住友3M社製)、エフトップEF122A、EF122B、EF122C、EF126(製品名、トーケムプロダクツ社製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0045】
(E)成分は上記範囲のフッ素含有量およびケイ素含有量を満たすものあれば、特に限定されるものではないが、好適な具体例として、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093(いずれも信越化学工業社製)のようなパーフルオロアルキル基とアルキルシロキサン基とアルキレンオキシ基が結合した非イオン性フッ素・シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。ここに挙げた具体例は、いずれもフッ素含有量21質量%、ケイ素含有量7質量%である。
これらの中でも、特にX−70−093は、レジスト滴下量が少量であっても、すじ状痕や乾燥ムラの発生を抑制する効果が高いのでより好ましい。
【0046】
(E)成分の配合量は、吐出ノズル式塗布法におけるすじ状痕の発生を効果的にかつ効率良く防止するためには、レジスト組成物のうちの有機溶剤(S)と(E)成分を除いた固形分に対して、0.001〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲とするのが好ましい。
【0047】
<その他の成分>
本発明の組成物には、さらに本発明の目的を損なわない範囲において、保存安定剤などの各種添加剤を用いることができる。
例えばハレーション防止のための紫外線吸収剤、例えば2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ−2’,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、5−アミノ−3−メチル−1−フェニル−4−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)ピラゾール、4−ジメチルアミノ−4’−ヒドロキシアゾベンゼン、4−ジエチルアミノ−4’−エトキシアゾベンゼン、4−ジエチルアミノアゾベンゼン、クルクミン等を適宜含有させることができる。
【0048】
また、レジスト組成物からなる層とその下層との密着性を向上させるための密着性向上剤(G)((G)成分)を適宜含有させることができる。密着性向上剤としては、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジンが好ましく、これをレジスト組成物に適宜含有させることにより、例えばCr膜等の金属膜上にレジストパターンを形成する場合に、レジスト組成物からなる層と金属膜との密着性を効果的に向上させることができる。
密着性向上剤を含有させる場合、その配合量が多すぎるとレジスト組成物の経時変化が劣化する傾向にあり、少なすぎると密着性向上効果が十分に得られないので、全固形分に対して0.1〜10質量%の範囲内とするのが好ましい。
【0049】
以上説明したように、本発明のポジ型レジスト組成物は、吐出ノズル方式の塗布法に好適であり、吐出ノズルからレジスト組成物を帯状に吐出させて基板上に塗布した際のモヤ斑やすじ状痕の発生を防止することができ、且つ、該塗膜を乾燥やベークした際のピン痕の発生を低減することができる。
上記効果が得られる理由は明らかではないが、本発明のポジ型レジスト組成物が(S1)成分を含むことにより、ポジ型レジスト組成物の(S)成分の揮発性を低下させることができ、且つ、該塗膜の乾燥工程やベーク工程における(S)成分の揮発速度が均一化されるためと考えられる。
【0050】
LCD製造分野では、半導体素子製造分野で使用されるシリコンウェーハに比べて、大型の基板(たとえば360mm×460mm以上)が通常用いられているため、吐出ノズル式塗布法が適用される。また、LCD製造用の基板表面には、非常にマクロな凹凸が存在し、また、基板自体の歪も存在する等、レジスト組成物が塗布される基板表面の状態がLCD製造用と半導体素子製造用とでは異なっている。そのため、LCD製造用のレジスト組成物と半導体素子製造用のレジスト組成物とは、技術的に異なるものである。
本発明にかかるポジ型レジスト組成物によれば、支持体上への濡れ性に優れる。かかる効果は、レジスト膜が形成される支持体が、LCD製造用の大型ガラス角基板であっても、または、基板の表面にモリブデン層やモリブデン合金層などモリブデンを主要な成分として含有する層(表面層)が形成された支持体であっても、有効に得られる。
したがって、本発明のポジ型レジスト組成物は、吐出ノズル式塗布法を用いる液晶素子製造用として好適に用いることができる。
【0051】
本発明のレジスト組成物は、吐出ノズル式塗布法で基板の塗布面全面にレジスト組成物を最終的に要求される膜厚に塗布してスピンを行わない方法(ノンスピン法)にも好適であり、また基板の塗布面全面にレジスト組成物を塗布した後、基板をスピンさせて膜厚の調整を行う方法にも好適である。特に後者の方法に好適であり、レジスト塗布量を抑えつつスピン後のすじ状痕を防止することができるので、レジスト消費量の削減、歩留まり向上、コスト低減に寄与することができる。
【0052】
≪レジストパターンの形成方法≫
本発明の第二の態様であるレジストパターンの形成方法は、上記本発明のポジ型レジスト組成物を、吐出ノズル式塗布法を用いて、基板上に塗布する工程を有するものである。この塗布工程は、吐出ノズルと基板とを相対的に移動させる手段を備えた装置によって行うことができる。吐出ノズルは、ここから吐出されたポジ型レジスト組成物が基板上に帯状に塗布されるように構成されているものであればよく、特に限定されないが、例えば複数のノズル孔が列状に配列された吐出口を有する吐出ノズルや、スリット状の吐出口を有する吐出ノズルを用いることができる。当該塗布工程を有する塗布装置としては、ノンスピン方式のTR28000S、TR45000S、TR63000S、TR70000S、TR90000S、TR117000S、TR130000S(いずれも製品名;東京応化工業(株)製)が知られている。
【0053】
また、上記塗布工程は、吐出ノズル式塗布法により基板上にポジ型レジスト組成物を塗布した後、基板をスピンさせて膜厚を薄く調整する手段を用いることもできる。当該塗布工程を有する塗布装置としては、スリット&スピン方式のSK−1100G(製品名;大日本スクリーン製造(株)製)、MMN(マルチマイクロノズル)によるスキャン塗布+スピン方式のCL1200(製品名;東京エレクトロン(株)製)、コート&スピン方式のTR63000F(製品名;東京応化工業(株)製)などが知られている。
【0054】
このようにして基板の塗布面全面にポジ型レジスト組成物を塗布した後の、レジスト膜を形成するための工程、及びレジストパターンを形成するための工程は周知の方法を適宜用いることができる。
例えば、レジスト組成物が塗布された基板を100〜140℃程度で加熱乾燥(プリベーク)してレジスト被膜を形成する。その後、レジスト被膜に対し、所望のマスクパターンを介して選択的露光を行う。露光時の波長は、ghi線(g線、h線、およびi線)またはi線を好適に用いることができ、それぞれ適宜の光源を用いる。
【0055】
この後、選択的露光後のレジスト被膜に対して、アルカリ性水溶液からなる現像液、例えば1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて現像処理する。
レジスト被膜に現像液を接触させる方法としては、例えば基板の一方の端部から他方の端部にかけて液盛りする方法や、基板の中心付近の上部に設置された現像液滴下ノズルより基板表面全体に現像液を行き渡らせる方法を用いることができる。
そして50〜60秒間程度静置して現像した後、レジストパターン表面に残った現像液を純水などのリンス液を用いて洗い落とすリンス工程を行うことによりレジストパターンが得られる。
【0056】
このようなレジストパターンの形成方法によれば、吐出ノズル式塗布法を用いているので、基板サイズ、装置サイズが大型化しても、塗布均一性やタクトタイムを悪化させずに、基板上にレジスト被膜を形成することができる。
しかも、用いるレジスト組成物は吐出ノズル方式に好適化されたものであり、レジスト被膜のすじ状痕、モヤ斑の発生や、ピン痕の発生が防止される。特に、塗布後スピンを行う場合には、レジスト塗布量を抑えつつすじ状痕の発生を防止できるので、製造コストの低減に寄与することができる。
【実施例】
【0057】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1〜7、比較例1〜5]
表1に示す各成分を混合して溶解し、ポジ型のレジスト組成物を調整した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:m−クレゾール/p−クレゾール=40/60(仕込みモル比)の混合フェノール類を、ホルムアルデヒドを縮合剤とし、シュウ酸触媒を用いて常法により縮合反応して得られたノボラック樹脂を、水−メタノール混合溶媒にて分別処理を施して得られたMw=5000のノボラック樹脂。
(B)−1:下記化合物(B)−1。
(C)−1:下記化合物(C)−1。
(E)−1:BYK−310(商品名、ビッグケミー社製)。
(G)−1:2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン。
(S)−11:ヘキシレングリコール。
(S)−12:1,2−ヘキサンジオール。
(S)−13:1,7−ヘプタンジオール。
(S)−14:ベンジルアルコール。
(S)−15:1,4−ブタンジオール。
(S)−16:1,2−ブタジエン。
(S)−17:1,5−ペンタンジオール。
(S)−18:プロピレングリコール。
(S)−2:PGMEA。
【0060】
【化5】

【0061】
上記で得られたポジ型レジスト組成物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過して「試料」とし、該試料を用いて、以下に示す方法によりレジスト膜を形成し、すじ状痕の評価、モヤ斑の評価、減圧乾燥時のピン痕の評価、及びベーク時のピン痕の評価をそれぞれ行った。
【0062】
<レジスト膜の形成>
実施例1〜7及び比較例1〜5のポジ型ホトレジスト組成物を、減圧乾燥装置及び加熱処理装置等を備えたノンスピン塗布方式用塗布装置(東京応化工業社製、製品名TR45000S)を用いて、Cr膜が形成されたガラス基板(680×880mm)上に塗布後、60Paの減圧条件下にて減圧乾燥させた(減圧乾燥工程)。次いで、ホットプレートの温度を110℃とし、約2mmの間隔をあけたプロキシミティベークにより60秒間の第1回目の乾燥を行い、第2回目に直接ホットプレート上で80秒間の乾燥を施し、膜厚1.5μmのレジスト膜を形成した(ベーク工程)。
【0063】
[モヤ斑、スジ状痕の評価]
形成されたレジスト膜の表面をナトリウムランプ下で観察し、下記基準にしたがってモヤ斑又はすじ状痕(縦すじ)の評価をそれぞれ行った。その結果を表2に示す。
5:モヤ斑又はすじ状痕が認められなかった。
4:よく観察するとモヤ斑又はすじ状痕があった。
3:モヤ斑又はすじ状痕があった。
2:モヤ斑又はすじ状痕がすぐ分かる程度にあった。
1:モヤ斑又はすじ状痕が非常に濃くあった。
【0064】
[ピン痕の評価]
減圧乾燥(VCD)工程後又はベーク工程後のレジスト膜の表面をナトリウムランプ下で観察し、下記基準にしたがってピン痕の評価をそれぞれ行った。その結果を表2に示す。
5:ピン痕が認められなかった。
4:よく観察するとピン痕があった。
3:ピン痕があった。
2:ピン痕がすぐ分かる程度にあった。
1:ピン痕が非常に濃くあった。
【0065】
【表2】

【0066】
上記の結果から、本発明の実施例1〜7のレジスト組成物は、比較例1〜5のレジスト組成物に比べて、モヤ斑、スジ状痕、及びピン痕の発生が低減されていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ノズルと基板とを相対的に移動させることによって基板の塗布面全体にレジスト組成物を塗布する工程を有する吐出ノズル式塗布法に用いられるポジ型レジスト組成物であって、
アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)及びナフトキノンジアジド基含有化合物(C)を、炭素数6以上のジオール(S1)を含む有機溶剤(S)に溶解してなることを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記炭素数6以上のジオール(S1)が、炭素数6又は7のジオールである請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤(S)が、さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを有する溶剤(S2)を含む請求項1又は2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
さらに、分子量が1000以下のフェノール性水酸基含有化合物(B)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
さらに、界面活性剤(E)を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
吐出ノズルと支持体とを相対的に移動させることによって支持体の塗布面全面に請求項1〜5のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物を塗布する工程、前記支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、および前記レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。