説明

ポリアセタール樹脂組成物の製造方法及びポリアセタール樹脂組成物

【課題】長時間の連続した押出し生産性に優れ、材料の熱分解や、変性を効果的に抑制できるポリアセタール樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】222℃で50分間、−500mmHg以下の圧力条件下で加熱したときの加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%であるポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)を得る工程と、
下記一般式(I)及び/又は(II)に示す構造を含むアクリルアミド重合体(B)の水分量を、1500ppm以下に調整する工程と、
前記ヒドラジド化合物(C)の水分量を、1500ppm以下に調整する工程と、
前記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)と、前記アクリルアミド重合体(B)と、前記ヒドラジド化合物(C)と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とを、溶融混練する工程とを有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法及びポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は結晶性樹脂であり、剛性、強度、靭性、摺動性、クリープ性に優れた樹脂材料である。
ポリアセタール樹脂の用途は、自動車部品や電気・電子部品及び工業部品などの機構部品用材料等、広範囲に亘っている。
【0003】
これらの各種の機構部品を連続生産する場合、先ずポリアセタール樹脂に各種添加剤、安定剤を配合し、押出し機等により溶融混練し、ポリアセタール樹脂組成物を得る。その後、得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを用いて所望の成形品を射出成形し、各種機構部品を連続生産する。
その際、長期間に亘り連続生産を行うと、押出し機や成形機の温度と滞留時間とによっては、ポリアセタール樹脂が熱分解を起こし、ホルムアルデヒドを放出する。
放出されたホルムアルデヒドは、糖化反応(ホルモース反応)により炭化物となり、ポリアセタール樹脂組成物中に混入する。
また、ポリアセタール樹脂中に添加されている各種添加剤、安定剤も、上記押出し機や成形機の温度と滞留時間とによっては、いわゆる焼けにより変性し、これらの変性(変質)物がポリアセタール樹脂組成物中に混入する。
上記ホルムアルデヒドの炭化物及び添加剤、安定剤の変性物は、ポリアセタール樹脂組成物を用いた成形品中にも混入することとなり、これら炭化物や変性物が混入したポリアセタール樹脂成形品を長期間連続使用すると、炭化物や変性物が存在する箇所に、使用時の応力が集中し、破壊の起点となり、ポリアセタール樹脂が本来持つ耐久性を阻害する。
【0004】
そのため、ポリアセタール樹脂組成物を用いて各種の機構部品を連続生産する際は、ポリアセタール樹脂温度を、融点近傍まで極力下げ、更には押出し機や成形機内の滞留時間を抑えるなどの条件で生産し、炭化物や変性物の発生を抑制し、また定期的に押出し機や成形機内を洗浄するなどの処置を施すことにより、上述した炭化物や変性物の混入を防止している。
さらには、ポリアセタール樹脂組成物を用いた成形品中に異物が混入していないか、目視で検査するなどの工程検査を行い、品質管理に多大な労力を要しているのが現状である。
【0005】
従来において、ポリアセタール樹脂の熱安定性を改良する方法として、3元共重合ポリアミドを添加配合する方法(例えば、特許文献1参照。)や、ポリ−β−アラニン重合体を添加配合する方法(例えば、特許文献2参照。)、2種以上のポリアミド樹脂を添加配合する方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭34−5440号公報
【特許文献2】特開平2−247247号公報
【特許文献3】特開昭51−64559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来提案されている方法によると、短時間で連続押出し生産する場合は、ポリアセタール樹脂の熱分解や、添加剤の変性を抑制でき、高耐久性のポリアセタール樹脂組成物が得られるが、長期間連続して押出し生産を行う場合には、ポリアセタール樹脂が熱分解したことにより発生するホルムアルデヒドに起因する炭化物や、各種添加剤、安定剤起因の変性物の発生を完全に抑制することはできず、長期間連続生産することが困難である。
【0008】
そこで、本発明においては、長時間連続して押出し生産を行っても、ポリアセタール樹脂の熱分解や、各種添加剤等の変性を効果的に抑制し、実用上良好な機械的特性、熱安定性、耐久性を有する成形品を製造することのできるポリアセタール樹脂組成物の製造方法、当該製造方法により得られるポリアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するべく鋭意検討した結果、所定の温度・時間・圧力条件下での加熱重量減少量を特定したポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)に、特定の水分量を含有するアクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)、さらには、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とを添加し、溶融混練することにより得られるポリアセタール樹脂組成物が上記従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)、
下記一般式(I)及び/又は(II)に示す構造を含むアクリルアミド重合体(B)、
ヒドラジド化合物(C)、
及び、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)
を、含有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法であって、
222℃で50分間、−500mmHg以下の圧力条件下で加熱したときの加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%であるポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)を得る工程と、
前記アクリルアミド重合体(B)の水分量を1500ppm以下に調整する工程と、
前記ヒドラジド化合物(C)の水分量を1500ppm以下に調整する工程と、
前記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)と、前記アクリルアミド重合体(B)と、前記ヒドラジド化合物(C)と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とを、溶融混練する工程と、
を、有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
〔2〕
前記アクリルアミド重合体(B)の平均粒子径が、0.1〜10μmである前記〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0013】
〔3〕
前記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)100質量部に対して、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)の添加量の合計量(B+C)が、0.001〜1.0質量部である前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0014】
〔4〕
前記アクリルアミド重合体(B)と、前記ヒドラジド化合物(C)との配合比率(B)/(C)が、1〜25である前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【0015】
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法により得られるポリアセタール樹脂組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長時間連続して押出し生産を行っても、ポリアセタール樹脂の熱分解や、各種添加剤等の変性を効果的に抑制でき、実用上良好な機械的特性、熱安定性、耐久性を有する成形品を製造することのできるポリアセタール樹脂組成物の製造方法、当該製造方法により得られるポリアセタール樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、説明する。
本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0018】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態においては、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)、下記一般式(I)及び/又は(II)に示す構造を含むアクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)、及び、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を、含有するポリアセタール樹脂組成物を製造する。
【0019】
本実施形態の製造方法は、222℃で50分間、−500mmHg以下の条件下で加熱したときの重量減少量が0.1〜1.0質量%であるポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)を得る工程と、前記アクリルアミド重合体(B)の水分量を1500ppm以下に調整する工程と、前記ヒドラジド化合物(C)の水分量を1500ppm以下に調整する工程と、前記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)と、前記アクリルアミド重合体(B)と、前記ヒドラジド化合物(C)と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とを、溶融混練する工程とを有する。
【0020】
【化2】

【0021】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いる原料について説明する。
(ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A))
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)は、オキシメチレン基を主鎖に有しているものであり、後述するように222℃で50分間、−500mmHg以下の減圧条件下で加熱したときの加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%の範囲にあるものとするためには、重合体の末端基が、エステル基又はエーテル基の構造を有するものとすることが好ましい。
上記条件における加熱重量減少量は、好ましくは0.1〜0.8質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の、上記条件における加熱重量減少量が0.1質量%〜1.0質量%の範囲であると、このポリアセタール樹脂ホモポリマーを用いて作製したポリアセタール樹脂組成物により、各種成型加工を行う際、優れた押出し生産性が実現できる。詳細には、ポリアセタール樹脂の熱分解によって発生するホルムアルデヒドは、ヒドラジド化合物(C)と反応する。この反応物がポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)とアクリルアミド重合体(B)の相溶化剤的な効果を有し、アクリルアミド重合体(B)の分散性を向上させる。
アクリルアミド重合体(B)の分散性が向上することにより、アクリルアミド重合体(B)は、押出し機スクリューへの付着が減少し、更にはアクリルアミド重合体(B)自身の凝集が抑制され、アクリルアミド重合体の焼けによる変性物及び凝集物の発生量が減少し、またヒドラジド化合物(C)がホルムアルデヒドを捕捉することにより、ホルムアルデヒド起因の炭化物の発生量も減少する。
これにより、ポリアセタール樹脂組成物を長期間連続的に押出し生産した場合、押出し機ダイス部の樹脂圧上昇を効果的に抑えることができ、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を著しく向上させることができる。
更には、ポリアセタール樹脂組成物の成形品中に混入する炭化物や変性物の混入量も低減化し、長期耐久性に優れたポリアセタール樹脂製成形品を提供することができる。
【0022】
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の、上記条件における加熱重量減少量が、1.0質量%を超える場合は、ヒドラジド化合物(C)の捕捉能力以上のホルムアルデヒドが熱分解により発生し、ホルムアルデヒド起因の炭化物(異物)が増加し、押出し機スクリーンメッシュの目詰まりによる押出し機のダイス圧が上昇(スクリーン交換頻度が増加)し、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性が低下する。
更には、除去しきれなかった炭化物や変性物がポリアセタール樹脂製成形品中に混入し、長期耐久性に優れたポリアセタール樹脂製成形品を提供することができない。
一方、上記条件における加熱重量減少量が、0.1質量%未満である場合には、ホルムアルデヒドとヒドラジド化合物(C)との反応物が少なく、アクリルアミド重合体(B)が押出し機や成形機のスクリューに付着し、押出し時の温度により焼け(変性物)が発生し、またアクリルアミド重合体自身の凝集が起こる。
この変性物が押出し機スクリーンのメッシュを詰まらせ、押出し機のダイス圧力を上昇させ、長期間連続的に押出し生産することが困難になる。
また、除去しきれなかった変性物がポリアセタール樹脂成形品中に混入し、長期耐久性に優れたポリアセタール樹脂製成形品を提供することができないという問題もある。
【0023】
(ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の製造方法)
上記のように、222℃で50分間、−500mmHg以下の減圧条件下で加熱したときの加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%の範囲にある、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の元となる粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーは、従来公知の方法により製造することができる。
例えば、モノマーであるホルムアルデヒド、連鎖移動剤(分子量調節剤)及び重合触媒を、炭化水素系溶媒で満たした重合反応器にフィードし、スラリー重合法により粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーが得られる。
得られた粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーは、重合体の末端基が熱的に不安定であるので、この不安定末端基をエステル化剤やエーテル化剤等でポリマー末端基を封鎖し安定化処理する。
具体的には、原料モノマーであるホルムアルデヒド、連鎖移動剤、炭化水素系重合溶媒は、連鎖移動可能な成分(不安定末端基を生成する成分)、例えば水やメタノール及び蟻酸を含んでいるため、先ず、これら連鎖移動可能な成分の含有量を調整し、粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーを重合する。
この時の連鎖移動可能な成分の含有量は、モノマーであるホルムアルデヒドに対して、好ましくは1〜1000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppm、さらに好ましくは1〜300ppmであるものとする。
連鎖移動可能な成分量を上記範囲に調整することにより、上記条件における加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%のポリアセタール樹脂ホモポリマーを容易に得られる。
【0024】
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の分子量は、無水カルボン酸またはカルボン酸を用いて連鎖移動させることにより調節できる。
分子量調節剤としては、特に、無水プロピオン酸、無水酢酸が好ましく、より好ましくは無水酢酸である。
分子量調節剤の導入量は、目的とする特性に応じて分子量を調節し決定することができ、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)のメルトフローレート:MFR値(ISO1133に準拠)で0.1〜100g/10分の範囲であるようにし、好ましくは1.0g/10分〜70g/10分の範囲になるようにする。
【0025】
上記重合触媒としては、アニオン系重合触媒が好ましく、下記一般式(III)で表されるオニウム塩系重合触媒がより好ましい。
オニウム塩系重合触媒のなかでも、テトラエチルホスホニウムイオダイド、トリブチルエチルホスホニウムイオダイドの様な、第4級ホスホニウム塩系化合物や、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムアセテートの様な第4級アンモニウム塩系化合物が好ましい。これら第4級ホスホニウム塩系化合物や第4級アンモニウム塩系化合物の添加量は、ホルムアルデヒド1モルに対して0.0003〜0.01molであり、好ましくは0.0008〜0.005mol、更に好ましくは0.001〜0.003molである。
【0026】
[R1234M]+- ・・・(III)
(上記式(III)中、R1、R2、R3、R4は、各々独立にアルキル基を示し、Mは孤立電子対を持つ元素、Xは求核性基を示す。)
【0027】
上記炭化水素系重合溶媒は、ホルムアルデヒドと反応しない溶媒であればよく、何等制限されるものではないが、一般的にはペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼンなどの溶媒を用いることができる。
これらの炭化水素系溶媒は2種以上を混合して用いることも可能であるが、ヘキサンが特に好ましい。
【0028】
また、粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーを製造する重合装置は、モノマーであるホルムアルデヒド、連鎖移動剤(分子量調節剤)、重合触媒と炭化水素系重合溶媒を同時に供給できる装置であれば特に制限されるものではないが、生産性の観点から連続式重合装置が好ましい。
【0029】
上記方法により得られた粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーは、222℃で50分間、−500mmHg以下の圧力下で加熱した際の加熱重量減少量が1.0質量%以上のポリアセタール樹脂ホモポリマーであるため、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いるポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)とするためには、ポリマーの末端基を特に、エステル化剤により封鎖し安定化することが好ましい。
この粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーの末端安定化方法は、粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーとエステル化剤とエステル化触媒とを、炭化水素系溶媒で満たした末端安定化反応機に夫々投入し、粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーの不安定末端安定化する。
この時の反応温度は130〜155℃であり、反応時間は1〜100分間が好ましく、より好ましくは、反応温度が135〜155℃で、反応時間5〜100分であり、さらに好ましくは反応温度が140〜155℃、反応時間が10〜100分である。
上記条件により末端基が安定化されたポリアセタール樹脂ホモポリマーは、熱風式乾燥機や真空乾燥機等の乾燥機を用いて、100〜150℃に調整した窒素ガスを封入し、水分を除去、乾燥する。
この時の乾燥時間は、ポリアセタール樹脂ホモポリマー中に含まれる水分量が500ppm以下になるよう適宜選択し、調整する。
具体的には、1〜100時間の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜80時間、さらに好ましくは1〜50時間の範囲である。
上記のように、ポリアセタール樹脂ホモポリマーに含まれる水分量を管理し、調整することにより、後述するアクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)への水分の移行を防止でき、これらに含まれる水分量も調整することができ、アクリルアミド重合体(B)の分散性を向上し、アクリルアミド重合体(B)の分散性向上と押出し機スクリューへの付着性減少、更にはアクリルアミド重合体(B)自身の凝集物の抑制等が図られ、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を向上させることができる。
【0030】
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)に含まれる水分量は、一般に液体成分や固体成分の水分量を定量する方法、例えばカールフィッシャー(電量滴定)法を用いて測定することができる。
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)に含まれる水分量は、500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。
【0031】
上記粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーの末端基を封鎖し安定化するエステル化剤は、下記一般式(IV)で表される酸無水物を用いることができる。
具体的には、無水安息香酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水酢酸であり、好ましくは無水酢酸である。
これらエステル化剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
5COOCOR6 ・・・(IV)
(上記式(IV)中、R5、R6は、各々独立にアルキル基を示す。R5、R6は同じであっても異なっていてもよい。)
【0032】
上記エステル化触媒は、炭素数1〜18のカルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく、その添加量は、ポリアセタール樹脂ホモポリマーに対して、1〜1000ppmの範囲で適宜選択し投入する。
炭素数1〜18のカルボン酸のアルカリ金属塩とは、例えば、カルボン酸が蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプリル酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸であり、アルカリ金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムであり、これらカルボン酸とアルカリ金属とから構成されるカルボン酸金属塩である。これらカルボン酸金属塩の中でも、好ましくは酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムである。
【0033】
一方、上述した粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーの末端基を、エーテル化により封鎖し、安定化することも可能である。
この場合のエーテル化剤とは、脂肪族または芳香族酸と、脂肪族、脂環式族または芳香族アルコールとのオルトエステル、例えばメチルまたはエチルオルトホルメート、メチルまたはエチルオルトアセテートおよびメチルまたはエチルオルトベンゾエート、およびオルトカーボネート、例えばエチルオルトカーボネートから選択し、p−トルエンスルホン酸、酢酸及び臭酸のような中強度有機酸、ジメチル及びジエチルスルフェートのような中強度鉱酸等のルイス酸型の触媒を用いて得ることができる。
エーテル化反応に用いる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン及びベンゼン等の低沸点脂肪族、脂環式族及び芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム及び四塩化炭素等のハロゲン化低級脂肪族等の有機溶媒が好ましい。
【0034】
(ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の加熱重量減少量の測定方法)
次に、本実施形態において使用するポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の加熱重量減少量の測定方法について述べる。
加熱重量減少量の測定方法は、先ず、錠剤成形機にて、粉末状のポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)を錠剤化し、この錠剤から約1mm四方以下の大きさの粒に切り出し、試験管の中に投入する。
この時の、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の投入量は、10〜50mgの範囲で決定する。
その後、−500mmHg以下の減圧度で10分間減圧し、その後、50分間222℃に設定した油浴中に浸漬させる。
加熱終了後、試験管全体の重量を測定し、加熱前後の重量差により加熱重量減少量を求める。
上記のポリアセタール樹脂ホモポリマーの重合及び末端安定化条件を適宜選択し、加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%のポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)を製造することができる。
【0035】
(アクリルアミド重合体(B))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いるアクリルアミド重合体(B)は、下記一般式(I)及び/又は(II)に示す構造を含むアクリルアミド重合体である。 なお、アクリルアミド以外のビニル基を有するモノマーを共重合成分として導入したアクリルアミド重合体であってもよい。
好ましくは、第一級アミド基が30〜70mol%含有されており、アクリルアミド以外のビニル基を有するモノマーを共重合成分として導入したアクリルアミド重合体であって、1500ppm以下の水分を含有し、平均粒子径が0.1〜10μmのアクリルアミド重合体である。
このアクリルアミド重合体(B)を用いることにより、本実施形態の製造方法により得られるポリアセタール樹脂組成物は、押出し生産性に優れたものとなる。
【0036】
【化3】

【0037】
(アクリルアミド重合体(B)の製造方法)
アクリルアミド重合体(B)は、触媒としてアリカリ土類金属のアルコラートを用い、アクリルアミドの重合、又はアクリルアミドとアクリルアミド以外のビニル基を有するモノマーとの重合を行うことによって製造できる。
上記アクリルアミド重合体(B)を構成する、アクリルアミド以外のビニル基を有するモノマーとは、ビニル基を1個又は2個有するモノマーである。
ビニル基を1個有するモノマーは、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、セシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等である。
ビニル基を2個有するモノマーは、ジビニルベンゼン、エチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等である。
これらのビニル基を有するモノマーの中で、N,N’−メチレンビスアクリルアミドが好ましい。
上記ビニル基を有するモノマーの導入量は、アクリルアミド成分とビニル基を有するモノマーとの合計量に対して0.05〜20質量%であることが好ましい。
これらのビニル基を有するモノマーと共重合する(架橋構造を持たせる)ことにより、更にポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を向上させることができる。
アクリルアミド重合体(B)の重合の際に用いる重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素などが挙げられ、脱水精製したアクリルアミドに重合触媒を加えて、不活性ガス雰囲気中で加熱し製造する。
重合温度は70〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。
【0038】
上述した条件により製造されたアクリルアミド重合体(B)は、重合溶媒や重合反応によって生成した水分を含んでいる。
そのため、例えば熱風式乾燥機や減圧乾燥機等の乾燥機を用いて乾燥処理を行うことにより水分量を調整することが好ましい。
減圧乾燥機を用いて乾燥する場合、乾燥温度は例えば50〜150℃とし、減圧度を例えば−600mmHg以下とし、乾燥時間は目的の水分量になるまで適宜選択する。
熱風乾燥機を用いて乾燥する場合は、50〜150℃に制御した窒素ガスを封入することで乾燥機内の温度を調整し、重合溶媒、水分を除去し乾燥することが好ましい。
これらの乾燥条件の中でも、減圧乾燥機を用いて乾燥する方法が好ましく、50〜70℃の温度範囲で、減圧度−600mmHgとし、乾燥時間10〜30時間の条件とすることがより好ましい。
本実施形態においては、アクリルアミド重合体(B)の水分量を1500ppm以下に調整する。これにより、アクリルアミド重合体(B)同士の凝集が防止でき、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)中への分散性向上と押出し機スクリューへの付着性減少の効果が得られポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を向上させることができる。
【0039】
アクリルアミド重合体(B)に含まれる水分量は、一般に、液体成分や固体成分の水分量を定量する方法、例えばカールフィッシャー(電量滴定)法を用いて測定することができる。
アクリルアミド重合体(B)に含まれる水分量は1500ppm以下であり、好ましくは1000ppm以下であるものとする。
アクリルアミド重合体(B)の水分量が上記範囲であると、優れた押出し生産性を有するポリアセタール樹脂組成物が提供できる。
【0040】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法を実施する際に用いるアクリルアミド重合体(B)は、平均粒子径が0.1〜10μmであることが好ましい。
アクリルアミド重合体(B)は、ジェットミルやボールミルなどの粉砕機を用いて粉砕し、目的とする平均粒子径に調整することができる。
アクリルアミド重合体(B)の平均粒子径は、アクリルアミド重合体(B)をアルコールに分散させ、この懸濁物を粒度測定装置に仕込み、測定することができる。具体的には、後述する実施例において記載した方法により測定できる。
上記方法により測定したアクリルアミド重合体(B)の平均粒子径は、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.1〜3μmである。
アクリルアミド重合体(B)の平均粒子径が上記範囲であると、押出し生産性に優れるポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【0041】
上述したように、アクリルアミド重合体(B)は、第一級アミド基が30〜70mol%含有されているものであることが好ましいが、このアクリルアミド重合体(B)の第一級アミド基定量方法について説明する。
まず、かき混ぜ機付フラスコ内に、アクリルアミド重合体(B)と40質量%水酸化カリウム水溶液とを加え、かき混ぜながら105〜110℃で20分間加熱し、第一級アミド基をアンモニアで加水分解する。
次に、フラスコ内容物を50℃以下に冷却し、メタノールを加え、アンモニアをメタノールと共に抽出する。
この抽出液を0.1規定硫酸水溶液に吸収させ、指示薬にメチルレッドを用いて0.1規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、一級アミド基を定量することができる。
上記方法で製造したアクリルアミド重合体(B)は、大気中の水分を遮断する目的で、密封した容器、又は袋に投入し管理する。
【0042】
(ヒドラジド化合物(C))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いるヒドラジド化合物(C)は、カルボン酸(含芳香環、脂環)とヒドラジンとの反応により合成される、カルボン酸モノ/又はジヒドラジド化合物やアルキル基置換モノ/又はジヒドラジド化合物であり、水分量が1500ppm以下のヒドラジド化合物である。
【0043】
カルボン酸モノ/又はジヒドラジド化合物を構成するカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ナフタリン酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、ニトロカルボン酸が挙げられる。
【0044】
カルボン酸モノ(ジ)ヒドラジド化合物の具体例としては、カルボジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ラウリン酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、プロピオン酸モノヒドラジド、ラウリン酸モノヒドラジド、ステアリン酸モノヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタリン酸ジヒドラジド、p−ヒドロキシベンゾイックヒドラジン、p−ヒドロキシベンゾイックヒドラジン、1,4−シクロへキサンジカルボン酸ジヒドラジン、アセトヒドラジド、アクリロヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ベンゾヒドラジド、ニコチノヒドラジド、イソニコチノヒドラジド、イソブチルヒドラジン、オレイン酸ヒドラジド等が挙げられる。
特に、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ラウリン酸ヒドラジド、ラウリン酸ジヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジドが好ましく、より好ましくは、アジピン酸ジヒドラジドとセバシン酸ジヒドラジドである。
【0045】
上記各種ヒドラジド化合物は、製造工程中で使用される水分を含有しており、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)に添加混合する際は、例えば熱風式乾燥機や真空乾燥機等の乾燥機を用いて除去し、水分量を調整する。
この時の乾燥温度は、100〜150℃が好ましく、乾燥時間は所望の水分量になるまで適宜選択し、1500ppm以下の水分量になるよう調整することとし、好ましくは1000ppm以下の水分量とする。
ヒドラジド化合物(C)に含有されている水分量が上記範囲にあるとき、目的とするポリアセタール樹脂組成物において、優れた押出し生産性が実現できる。
【0046】
ヒドラジド化合物(C)の水分量は、一般に液体成分や固体成分の水分量を定量する方法、例えばカールフィッシャー(電量滴定)法を用いて測定することができる。
ヒドラジド化合物(C)は、大気中の水分を遮断する目的で、密封した容器、又は袋に投入し管理する。これにより、水分の吸着を防止できる。
【0047】
上述のようにして得られたアクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)とを、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)に添加配合することにより、押出し生産性に優れるポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【0048】
アクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)に含まれる水分量が、それぞれ1500ppmを超える場合、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)から放出するホルムアルデヒドと、ヒドラジド化合物(C)との反応が十分に進行せず、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)とアクリルアミド重合体(B)との相溶性が低下し、アクリルアミド重合体(B)が押出し機スクリューに付着し易くなり、この付着物が押出し機の熱と滞留時間により変性物となり、また、アクリルアミド重合体(B)自身の凝集による凝集物が増加し、ポリアセタール樹脂組成物の連続生産性を阻害する。
さらには、これらの変性物や凝集物が、ポリアセタール樹脂組成物中に混入し、ポリアセタール樹脂が本来有する長期耐久性も低下する。
そのため、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)とに含まれる水分量を1500ppm以下に調整することにより、ホルムアルデヒドとドラジド化合物(C)が容易に反応し、この反応物がポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)とアクリルアミド重合体(B)の相溶性を向上させ、押出し生産性に優れるポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【0049】
(アクリルアミド重合体(B)と、ヒドラジド化合物(C)の添加量)
アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)との添加量は、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)との合計量(B+C)が、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)100質量部に対して0.001〜1.0質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.6質量部、さらに好ましくは0.1〜0.3質量部であり、これら添加量の合計量の範囲内で、アクリルアミド重合体とヒドラジド化合物との配合比率(B/C)を、後述するように適宜選択することにより、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を向上させ、かつ、ポリアセタール樹脂が本来持つ長期耐久性を有するポリアセタール樹脂製成形品を提供することができる。
【0050】
(アクリルアミド重合体(B)と、ヒドラジド化合物(C)との配合比率)
アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)に含まれる水分量の他に、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)と配合比率も、優れた押出し生産性を実現するために重要である。
【0051】
アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)との配合比率(B)/(C)は、1〜25の範囲が好ましく、より好ましくは1〜20の範囲、さらに好ましくは1〜15の範囲である。
アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)との配合比率が、上記の範囲であると、目的であるポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を向上させることができ、且つポリアセタール樹脂が本来持つ長期耐久性を有するポリアセタール樹脂製成形品を提供することができる。
【0052】
アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)との配合比率(B/C)が25を超える場合、ホルムアルデヒドとヒドラジド化合物(C)との反応物量が少なく、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)とアクリルアミド重合体(B)との相溶性が向上せず、アクリルアミド重合体(B)自身の凝集と、押出し機スクリューへの付着、焼けによる変性物量が増加し、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を阻害する。
また、凝集物と変性物がポリアセタール樹脂組成物に混入し、ポリアセタール樹脂本来の長期耐久性も低下する。
一方、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)の配合比率(B/C)が1未満である場合、過剰に添加したヒドラジド化合物(C)がポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の主鎖分解を誘発、促進し、分解によって発生したホルムアルデヒド起因による炭化物量が増加し、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を阻害する。
また、ポリアセタール樹脂本来の長期耐久性も低下する。
すなわち、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)との配合比率(B)/(C)が1〜25の範囲であると、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)とアクリルアミド重合体(B)との相溶性を向上させるのに必要な反応物を生成し、アクリルアミド重合体(B)自身の凝集と、押出し機スクリューへの付着、焼けによる変性物量が低減され、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性を向上させることができる。また、これら凝集物と変性物の混入量が少ないことにより、ポリアセタール樹脂本来の長期耐久性も向上する。
【0053】
(ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法に用いるヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)としては、下記一般式(1)で表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用できる。
【0054】
【化4】

【0055】
上記一般式(1)中、R7、R8は、水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素であり、R9は脂肪族炭化水素又はエーテル結合を持った脂肪族炭化水素である。
nは、R9の価数と一致する。
【0056】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の具体例としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n− オクタデシル−3−(3’−メチル−5−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6 −ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t− ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピ オネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N, N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミド等である。
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタンが好ましい。
【0057】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0.05〜3質量部の範囲で用いることが好ましく、0.05〜1質量部の範囲で用いることがより好ましく、0.1〜0.5質量部の範囲で用いることがさらに好ましい。
【0058】
また、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)は、アクリルアミド重合体(B)及びヒドラジド化合物(C)と同様に、熱風式乾燥や真空乾燥等の方法により、水分量を管理し、調整することが好ましい。
具体的には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)に含まれる水分量を、熱風式乾燥機や真空乾燥機等の乾燥機を用いて除去し、調整し、水分量を500ppm以下にすることが好ましい。
乾燥温度と時間は、乾燥温度が20℃〜50℃の範囲であり、乾燥時間は目的とする水分量になるまで適宜選択し、500ppm以下の水分量になるようにすることが好ましく、より好ましくは300ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下の範囲である。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)に含まれる水分量の定量方法は、一般に液体成分や固体成分の水分量を定量する方法、例えばカールフィッシャー(電量滴定)法を適用できる。
この方法により製造したヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、大気中の水分を遮断する目的で、密封した容器、又は袋に投入し管理する。この方法により、ヒンダードフェノール系酸化防止剤中に含まれる水分量を調整することができる。
【0059】
(ポリアセタール樹脂組成物を製造する工程)
本実施形態におけるポリアセタール樹脂組成物の製造方法においては、上述したポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)、下記一般式(I)及び/又は(II)に示す構造を含むアクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含有するポリアセタール樹脂組成物を製造する。
【0060】
【化5】

【0061】
前記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)としては、222℃で50分間、−500mmHg以下の条件で加熱し、加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%であるポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)を用いる。
前記アクリルアミド重合体(B)としては、上述のようにして水分量を1500ppm以下に調整したものを用いる。
前記ヒドラジド化合物(C)としては、上述のようにして水分量を1500ppm以下に調整したものを用いる。
上記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)と、前記アクリルアミド重合体(B)と、前記ヒドラジド化合物(C)と、さらに前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とを用い、これらを溶融混練することにより、ポリアセタール樹脂組成物を得る。
【0062】
具体的には、上記アクリルアミド重合体(B)、上記ヒドラジド化合物(C)、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を、上記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)に添加配合し、溶融混練を行う。これにより、押出し生産性に優れるポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【0063】
具体的には、アクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の添加配合方法については、先ず、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)で満たした攪拌式混合機(例えば、ヘンシェルミキサーやコーンブレンダー、遊星運動型攪拌混合機などの攪拌式混合機)に、密封された容器(袋)に入れられたアクリルアミド重合体(B)及びヒドラジド化合物(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を所定量取り出し、攪拌式混合機に投入する。
次に、攪拌式混合機に窒素ガスを封入し加圧状態とする。この時の攪拌式混合機の圧力は、1〜20kPaとすることが好ましい。
その後、この加圧状態を保持した状態で攪拌混合する。
【0064】
攪拌混合条件は、攪拌温度が室温〜100℃の範囲になるように攪拌混合機の回転数と攪拌混合時間を制御することが好ましい。
具体的には、攪拌混合時の回転数は1〜50rpmであることが好ましく、攪拌混合時間は1〜100時間であることが好ましい。
上述した条件で攪拌混合することにより、アクリルアミド重合体(B)自身の凝集を防止することができ、押出し生産性に優れるポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【0065】
攪拌混合機については、特に制限されるものではなく、上記攪拌条件で攪拌混合可能な装置であればよいが、好ましくは遊星運動型攪拌混合機のような低回転速度で攪拌可能で、かつ乾燥可能な攪拌式混合機が好ましい。
攪拌混合時の圧力を、上記のように1〜20kPaの加圧状態に保持する目的は、大気中に存在する水分を攪拌混合物と遮断するためである。
大気中の水分を遮断することにより、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)に含まれる水分量を調整することができ、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の熱分解によって発生するホルムアルデヒドとヒドラジド化合物(C)との反応が溶融混練時に容易に起こり、アクリルアミド重合体(B)の分散性が向上し、更にはアクリルアミド重合体(B)の分散性が向上し、アクリルアミド重合体(B)の押出し機スクリューへの付着性の減少が図られ、アクリルアミド重合体(B)自身の凝集防止、アクリルアミド重合体の焼けによる変性物(異物)量の減少が実現できる。またヒドラジド化合物(C)がホルムアルデヒドを捕捉することによりホルムアルデヒド起因の炭化物(異物)の発生量が夫々減少するという効果も得られる。
【0066】
上述のように、攪拌混合時の圧力を上記のように制御し、大気中に存在する水分を攪拌混合物と遮断することにより、押出し機スクリーンメッシュの目詰まりが無くなり、スクリーン交換頻度や押出し機洗浄頻度が減少し、ポリアセタール樹脂組成物の連続生産が著しく向上する。
さらには、異物の混入も低減化でき、かかるポリアセタール樹脂組成物を用いて各種成形品を製造することにより、長期耐久性に優れたポリアセタール樹脂成形品が提供できる。
【0067】
(その他の添加剤(E))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の製造方法においては、上述した原料であるポリアセタールホモポリマー(A)、アクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の添加剤、安定剤を添加することができる。
例えば、ポリアミド重合体などのホルムアルデヒド捕捉剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、エステル系離型剤、顔料、無機系、有機系の各種強化材等が挙げられる。これら従来公知の添加剤、安定剤は、単独又はこれらを組み合わせて用いることもできる。
また、これらの添加剤、安定剤も、アクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)と同様に、水分量を乾燥等の方法により管理調整することが好ましい。
これらの添加剤、安定剤に含まれる水分量は、500ppm以下の範囲が好ましく、より好ましくは300ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下の範囲である。
添加剤、安定剤の水分量は、乾燥温度、乾燥温度により、管理調整することができる。
また大気中の水分を遮断する目的で、密封した容器、又は袋に投入し管理することが好ましい。
【0068】
上記ホルムアルデヒド捕捉剤としてのポリアミド重合体とは、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノカルボン酸を、単独あるいは二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類であり、融点が140〜230℃のポリアミド重合体であることが好ましい。
ポリアミド重合体の具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/612、ポリアミド6/66/610などが挙げられる。
【0069】
耐候(光)安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。好ましくは2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。
【0070】
シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤としては、 例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2− エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2, 2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β‘,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物である。
これらのヒンダードアミン系光安定剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
上記耐候(光)安定剤としては、上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤を組み合わせて用いることが好ましい。
【0073】
ポリアルキレングリコール系可塑剤としては、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物が挙げられる。
例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックポリマー等である。
ポリアルキレングリコールの重付加モル数は5〜1000であることが好ましい。
ポリオキシアルキレングリコールの第二のグループとしては、上記第一のグループと脂肪族アルコールとのエーテル化合物が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜20)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオ キサイド重合モル数5〜30)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜30)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数5〜30)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数2〜100)、ポリエチレングリコールオキチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合モル数4〜50)等が挙げられる。
【0074】
エステル系離型剤としては、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、脂肪酸アミド、金属石鹸、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物が挙げられる。
アルコールとしては1価アルコール、多価アルコールがある。
1価アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、 ベンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘブタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、ペヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、ユニリンアルコールが挙げられる。
【0075】
多価アルコールとしては、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトールが挙げられる。
【0076】
脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラギン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、 セロプラスチン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸及びかかる成分を含有してなる天然に存在する脂肪酸またはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0077】
アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、脂肪酸化合物の内、好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸から選ばれた脂肪酸と、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトールから選ばれた多価アルコールとから誘導された脂肪酸エステルが挙げられる。
上記脂肪酸エステル化合物の水酸基は、あってもよいし、無くてもよい。また、脂肪酸エステル化合物は、モノエステルであってもジエステル、トリエステルであってもよい。また、ほう酸等で水酸基が封鎖されていてもよい。
脂肪酸エステル化合物の具体例としては、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリントリパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリントリベヘネート、グリセリンモノモンタネート、グリセリンジモンタネート、グリセリントリモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、 ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールジベヘネート、ペンタエリスリトールトリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ペンタエリスリトールジモンタネート、ペンタエリスリトールトリモンタネート、ペンタエリスリトールテトラモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、 ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、 ソルビタントリベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールジパルミテート、ソルビトールトリパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールジベヘネート、ソルビトールトリベヘネートソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート、ソルビトールトリモンタネートが挙げられる。
また、ほう酸等で水酸基を封鎖した脂肪族エステル化合物として、グリセリンモノ脂肪酸エステルのほう酸エステルも挙げられる。
【0078】
アルコールとジカルボン酸とのエステルは、下記アルコールとジカルボン酸とのモノエステル、ジエステルである。
アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、 ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の飽和・不飽和アルコールが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカニン酸、ブラシリン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0079】
脂肪酸アミドとしては、C16以上の脂肪族カルボン酸と、アミン、ジアミンからなる脂肪族アミド化合物が用いられる。
これらの脂肪族アミドを構成する脂肪族カルボン酸としては、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、セトレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
また、脂肪族アミドを構成するアミンおよびジアミンとしては、アンモニア、エチレンジアミン等が挙げられる。
上記脂肪族アミド化合物の具体例としては、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、エチレンビスオレイルアミド等が挙げられる。
【0080】
金属石鹸としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0081】
平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物としては、下記式(2)により表される化合物が挙げられる。
(CH21011C)n ・・・(2)
上記一般式(2)中、R10、R11は水素、アルキル基、 アリール基、エーテル基よりなる群から選ばれるいずれかであり、各々同一でも異なっていてもよい。nは平均重合度で10〜500である。
上記式中のアルキル基は、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基等である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、p−ブチルフェニル基、p−オクチルフェニル基、p−ノニルフェニル基、ベンジル基、p−ブチルベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
また、エーテル基としては、例えばエチルエーテル基、プロピルエーテル基、ブチルエーテル基等が挙げられる。
オレフィン化合物を構成するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等で表されるオレフィン系モノマー、又は、アレン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、シクロペンタジエン等で表されるジオレフィン系モノマーがある。
平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物は、上記オレフィン系モノマー、ジオレフィン系モノマーの2種以上を共重合して得られる化合物であってもかまわない。
オレフィン化合物がジオレフィン系モノマーを重合して得られる化合物である場合は、熱安定性向上の観点から、慣用の水素添加法を用いて炭素−炭素不飽和結合を極力少なくしたオレフィン化合物を用いることが好ましい。
【0082】
上述した各種添加剤、安定剤の添加方法は、単軸又は二軸の押出し機を使用して溶融混練することができれば特に限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0084】
<実施例及び比較例における各種物性の測定方法>
〔1.メルトフローレート値 (以下、MFR値と言う。)〕
ASTM D1238に従い、東洋精機(株)製、MELT INDEXERを用いて、シリンダー温度190℃、荷重2.16kgでMFR値を測定した。
【0085】
〔2.ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の加熱重量減少量〕
ポリアセタール樹脂ホモポリマーを錠剤成形器にて錠剤化し、この錠剤を1mm四方以下の大きさに切り出し、内径2φ(長さ:50mm)の円筒形のガラス製の試験管1に0.25gを入れた。
前記試験管1を、更に内径30mmのガラス製の試験管2に入れ、10分間、−700mmHgの減圧条件で試験管2の中の空気を取り除いた。
その後、減圧状態を保持したまま、222℃に設定した油浴中に、前記試験管2浸漬させ、50分間加熱した。
50分後、前記ガラス管2を取り出し、減圧状態を保持した状態で室温まで空冷した。
空冷後、前記試験管2の中にある前記試験管1を取り出し、前記試験管1の重量を測定し、加熱前後の重量から重量減少量を求めた。
【0086】
〔3.水分量〕
溶融混練する前にポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)、アクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を各々取り出し、1gを精秤した。
この試料を、三菱化学社製カールフィッシャー水分計(CA−21型)に投入し、水分量を定量した。
試薬はアクアミクロンAX/CXUを用いた。
【0087】
〔4.アクリルアミド重合体(B)の平均粒子径〕
アクリルアミド重合体0.03gを、エタノール(和光純薬工業社製、試薬特級)中に分散させ、下記装置を用いて平均粒子径を測定した。
粒度測定装置:島津製作所製SALD−2000
【0088】
〔5.アクリルアミド(B)の還元粘度〕
蟻酸(特級試薬)50mLに、アクリルアミド重合体(B)を0.50g投入し、2時間攪拌した。
その後、オストワルド粘度計を用いて落下速度(t1)を測定し、ブランク値(アクリルアミド重合体なし)の落下速度(t0)の時間差から還元粘度を測定した。
なお、恒温槽温度は、35℃±1℃とした。粘度溶媒は蟻酸を使用した。
【0089】
〔6.ヒドラジド化合物の融点測定〕
ヒドラジド化合物を3mg精秤し、アルミポンで密封した。その後、下記条件にて融点を測定した。
装置:パーキンエルマー社製DSC−7
測定条件:30℃から200℃まで、2.5℃/分の速度で昇温し、熱量変化(ファーストスキャン)を測定した。この時の最大吸熱ピークのピークトップの温度を融点とした。
【0090】
〔7.ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性〕
日本製鋼所製TEX65φのベント付き2軸押出し機(L/D=32)を用いて、下記条件にて押出し、ポリアセタール樹脂組成物の押出し生産性の評価を行った。
(a) 押出し条件
シリンダー設定温度:205℃
スクリュー回転数 :60rpm
吐出量 :80kg/hr
スクリーンメッシュ:100メッシュ×150メッシュ×100メッシュの3枚重ね
ベント圧 :−700mmHg減圧
押出し機ポッパー内の圧力:5kPa
(b)押出し生産性判定基準
押出し開始後、押出し機ダイス部の樹脂圧が、押出し開始前よりも+10kg/cm2の樹脂圧に達したときの押出し時間を測定し評価した。
連続押出し時間が24時間以上であれば実用上良好であると判断した。
【0091】
〔8.成形生産性〕
東芝機械(株)製 射出成形機「IS100GN」を用いて、1万ショット連続成形し、1万ショット後の成形品に存在するポリアセタール樹脂以外の成分(ホルムアルデヒド起因の炭化物やアクリルアミド重合体の凝集物、及び焼けによる変性物)を、下記基準に従って測定し、成形生産性の評価を行った。
(a) 成形条件
シリンダー設定温度:205℃
金型温度 :70℃
成形サイクル :射出/冷却=15秒/10秒
成形品の形状 :60mm×40mm×1mmの平板
(b) 成形生産性
上記成形品の表面に存在する炭化物又は凝集物の大きさを下記の通り点数化し、この点数×個数により算出された数値をもって成形生産性を判定した。
(異物の大きさの点数基準)
最大炭化物の大きさが0.1mm未満の炭化物が存在する:0点
0.1mm〜0.3mm未満の大きさの炭化物が存在する:1点
0.3mm〜0.5mm未満の大きさの炭化物が存在する:3点
0.5mm超の大きさの炭化物が存在する :5点
上記点数×個数の値が、20点以下であれば、良好であると判断した。
【0092】
〔9.機械特性〕
東芝機械(株)製 射出成形機「IS100GN」を用い、下記成形条件にてISO試験片を成形し、引張破壊強度、引張破断伸度、引張弾性率を測定した。
(a) 成形条件
シリンダー設定温度:210℃
金型温度 :90℃
成形サイクル :射出/冷却=60秒/20秒
(b) 機械物性測定条件
ISO527に従って測定した。
引張破断強度≧60MPa、引張破断伸度≧50%、引張弾性率≧2500MPaであれば、実用上良好であると判断した。
【0093】
〔10.熱安定性〕
東芝機械(株)製 射出成形機「EC5P」を用い、下記の条件にて射出成形機に滞留させ、シルバーストリークが発生した時間を測定し、熱安定性の評価を行った。
(a) 成形条件
シリンダー設定温度:230℃
金型温度 :80℃
成形サイクル :射出/冷却=30秒/15秒
試験片 :127mm×12.7mm×3mm
(b)熱安定性測定及び評価方法
上記成形条件に設定した射出成形機に、ポリアセタール樹脂組成物を可塑化溶融させ、射出成形機内に溶融樹脂を滞留させた。
その後、一定時間毎に射出成形機内に滞留させた溶融樹脂を射出成形し、得られた成形品の表面状態を目視観察し、シルバーストリークスが発生した滞留時間をもって熱安定性の評価を行った。
上記滞留時間が30分以上であれば、熱安定性に優れているものと判断した。
【0094】
〔11.熱水エージング性〕
前記〔9.機械特性〕で作製したISO試験片を用い、この試験片を120℃に設定した容器に浸漬させ、一定期間毎に試験片を取り出し、物性を測定した。
熱水試験開始前の引張降伏強度に対して、熱水試験後の引張降伏強度保持率が90%以下に達した時の日数でもって、熱水エージング性の評価を行った。尚、引張降伏強度は、ISO527に準拠して測定した。
12日以上であれば、熱水エージング性に優れているものと判断した。
【0095】
〔12.クリープ特性〕
下記条件に従い、クリープ試験を行い、クリープ破断時間(hrs)で評価した。
(a) 成形条件
射出成形機 :東芝機械製「IS100GN」
シリンダー設定温度:205℃
金型温度 :80℃
試験片サイズ :110×15×3mmの引張試験片
(b) 試験条件
クリープ試験機 :東洋精機製クリープ試験機
試験温度と引張応力:80℃×22MPa
クリープ破断時間は、700時間以上であれば、実用上良好であると判断した。
【0096】
〔13.モールドデポジット性〕
ポリアセタール樹脂組成物を80℃で3時間乾燥した後、下記成形条件にて連続成形した。
連続成形後、金型を取り出し、金型表面の汚れの状態を目視で観察し、下記判定基準に従ってモールドデポジット性の評価を行った。
(a)成形条件
射出成形機 :東洋精機製Ti-30G
シリンダー設定温度:210℃
金型設定温度 :30℃
成形サイクル :射出/冷却=10/5秒
金型サイズ :30mm×12mm×2mmの鏃型
(流動末端先端部にガス抜き部設置)
成形ショット数 :10000ショット
(b)判定基準
金型キャビティ内外、ガス抜き部の何れも汚れなし:0
金型ガス抜き部に、僅かに汚れがある :1
金型キャビティの1/5程度の範囲で汚れあり :2
金型キャビティの1/2程度の範囲で汚れあり :3
金型キャビティ内外の全体に汚れがある :4
金型キャビティ全体に汚れがあり、不織布で拭いても汚れが落ちない:5
【0097】
<ポリアセタール樹脂組成物の原料>
〔ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A):(A−1)〜(A−7)〕
(A−1)
攪拌羽根を具備する重合反応器をn−へキサンで満たし、ホルムアルデヒドガス(水分量:110ppm)と、重合触媒(ジメチルジステアリルアンモニウムアセテート)と、分子量調節剤(無水酢酸)とを、夫々連続的にフィードし、重合反応させた。
このときの重合反応温度は、58℃とした。
この条件で得られた粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーを、ヘキサンと無水酢酸との1対1混合溶媒で満たした反応容器に投入し、150℃で2時間、粗ポリアセタール樹脂ホモポリマーの不安定末端をエステル化処理した。
この時のポリマーとヘキサンと無水酢酸の1対1混合溶媒の質量比(スラリー濃度)は、ヘキサンと無水酢酸との1対1混合溶媒100に対して20とした。
ポリアセタール樹脂ホモポリマーの末端安定化処理終了後、反応容器からヘキサンと無水酢酸の1対1混合溶媒とポリアセタール樹脂ホモポリマーとを取り出し、フレッシュのn−ヘキサン溶媒を加えてポリアセタール樹脂ホモポリマーを繰り返し洗浄し、無水酢酸を洗い落とした。
洗浄回数は、ポリアセタール樹脂ホモポリマー中の無水酢酸濃度が10ppm以下になるまで繰り返した。
その後、120℃で3時間、−700mmHgの条件で安定化したポリアセタール樹脂ホモポリマーを減圧乾燥し、洗浄に用いたn−へキサン溶媒を除去し、更に、120℃に設定した加熱式乾燥機を用いて5時間乾燥し、ポリアセタール樹脂ホモポリマー中に含まれる水分を除去した。
その後、室温まで冷却し、MFR値と加熱重量減少量及び水分量を、上記〔1〕及び〔2〕、〔3〕の方法に従って測定した。
得られたポリアセタール樹脂ホモポリマーのMFR値と加熱重量減少量とを、下記表1に示した。
【0098】
(A−2〜A−7)
粗ポリアセタール樹脂の末端安定化条件を変更し、MFR値と加熱重量減少量が異なるポリアセタール樹脂ホモポリマー(A−2〜A−7)を製造した。
【0099】
【表1】

【0100】
〔アクリルアミド重合体(B):(B−1)〜(B−7)〕
(B−1)
攪拌機を具備するバッチ式の5Lの反応機に、アクリルアミド2400gとメチレンビスアクリルアミド267g、触媒としてジルコニウムテトライソプロポキシド0.54g(アクリルアミドに対し1/10000mol)を加え、N2気流中で攪拌しながら125℃で4時間反応させた。
反応終了後に、固形物をジェットミル粉砕機で粉砕し、アセトンで洗浄した。
その後、更に水分量を除去する目的で、120℃で20時間、−700mmHgの減圧度で減圧乾燥し、アクリルアミド重合体中に含まれる水分量を調整した。
その後、第一級アミド基の含有量、還元粘度、平均粒子径を測定し、密封した袋に詰めた。測定結果を下記表2に示す。
【0101】
(B−2〜B−5、B−7)
アクリルアミド重合体の粉砕条件及び乾燥条件を変更し、水分量と平均粒子径とが異なるアクリルアミド重合体を製造した。測定結果を下記表2に示す。
粉砕条件は、アクリルアミド重合体の重合反応終了後、ジェットミル型粉砕機を用いて所定の粒子径になるまで粉砕することとし、粉砕時間を調節した。
また、乾燥条件は、減圧度−500mmHg〜−700mmHg、乾燥温度60〜70℃、乾燥時間1〜30時間の範囲でそれぞれ任意に選択し調節した。
【0102】
(B−6)
メチレンビスアクリルアミドを用いなかった。その他の条件は、上記(B−1)と同様の操作を行い、非架橋アクリルアミド重合体を製造した。
測定結果を下記表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
〔ヒドラジド化合物(C):(C−1)〜(C−7)〕
(C−1)
メタノールと水との1:1の混合液に、セバシン酸ジメチル1モルに対して水和ヒドラジン2.5モルを仕込み、60℃の温度で2時間、攪拌しながら反応させた。
その後、メタノール、水混合液を分離し、得られたセバシン酸ジヒドラジドを乾燥した。
乾燥条件は、120℃の温度で3時間、−700mmHgの減圧度とした。
得られたセバシン酸ジヒドラジドの融点と水分量とを、下記表3に示した。
【0105】
(C−2)〜(C−5)
減圧乾燥条件を下記のように変更し、セバシン酸ジヒドラジドを得た。
その他の条件は、上記(C−1)と同様の操作を行った。
(C−2):2時間乾燥
(C−3):1.5時間乾燥
(C−4):1時間乾燥
(C−5):30分間乾燥
(C−6):1.5時間乾燥
(C−7):30分間乾燥
得られたセバシン酸ジヒドラジドの融点及び水分量を、下記表3に示した。
【0106】
(C−6)〜(C−7)
セバシン酸ジメチルに代えてアジピン酸ジメチルを用いた。その他の条件は、上記(C−1)と同様の操作を行い、アジピン酸ジヒドラジドを得た。
得られたアジピン酸ジヒドラジドの融点及び水分量を、下記表3に示した。
【0107】
【表3】

【0108】
〔ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D):(D−1)〕
(D−1)
トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕を用いた。
水分量は34ppmであった。
【0109】
〔その他の添加剤(E):(E−1)〜(E−5)〕
(E−1)
下記のようにして製造されたポリアミド6/66/610の3元共重合体を用いた。
水分量は56ppmであった。
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩0.45kgと、セバシン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩0.32kg、ε−カプロラクタム1.67kg、及び純水2.5kgを、5Lのオートクレーブの中に仕込み、攪拌した。
十分にN2置換を行った後、攪拌しながら温度を室温から220℃まで約1時間かけて昇温した。
この際、オートクレーブ内の水蒸気による自然圧で、内圧は18kg/cm2−Gに、一定に保持し、これを超える圧力にしないように水を反応系外に除去しながらさらに加熱を続け、内温が230℃に到達したら加熱を止め、オートクレーブの排出バルブを閉止し、約8時間かけて室温まで冷却した。
冷却後、オートクレーブを開け、約2kgのポリマーを取出し粉砕し、粉状とした。
融点は150℃、相対粘度は2.0であった。
その後、減圧乾燥機を用いて、80℃で5時間、−700mmHgの減圧度で乾燥し、水分量を56ppmに調整した。
【0110】
(E−2)
紫外線吸収剤として、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α‘−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールを用いた。
水分量は、25ppmに調整した。
【0111】
(E−3)
ヒンダードアミン系光安定剤として、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β‘,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物を用いた。
水分量は35ppmに調整した。
【0112】
(E−4)
可塑剤として、ポリエチレングリコール(分子量:6000)を用いた。
水分量は87ppmに調整した。
【0113】
(E−5)
摺動剤として、1−プロペン(プロピレン):三井化学社製液状ポリオレフィンオリゴマー(商品名:ルーカントHC600)を用いた。
動粘度(100℃)が600mm2/sであった。
水分量は53ppmに調整した。
【0114】
〔実施例1〕
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A−2)を120℃で3時間、窒素雰囲気条件下で乾燥し、室温まで冷却した。
その後、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A−2)を、遊星運動型攪拌式混合機(神鋼ファウドラー社製SVミキサー)に投入し、更に密封された容器から取り出したアクリルアミド重合体(B−1)とセバシン酸ジヒドラジド(C−1)も遊星運動型攪拌混合機に投入した。
この時の質量比は、ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A−2)100質量部に対して、アクリルアミド重合体(B−1)0.1質量部、セバシン酸ジヒドラジド(C−1)0.05質量部とした。
更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D−1)0.15質量部を、遊星運動型攪拌混合機に投入した。
その後、攪拌混合機の上蓋を閉じ、窒素を流して攪拌混合機内の圧力を5kPaの圧力に調整し、攪拌混合を開始した。
この時の攪拌混合条件は、温度60℃、攪拌混合回転数を10rpm、攪拌混合時間を2時間とした。
攪拌混合終了後、攪拌混合機のボトムに設置されているバルブを開け、配管を通して押出し機ホッパー内に投入した。
この時の押出し機ホッパー内の圧力も、攪拌混合機と同様に窒素で5kPaの圧力に調整した。
その後、65φの2軸押出し機(L/D=32)(日本製鋼所製TEX65)で溶融混練を開始した。
この時の溶融混練条件は、シリンダー設定温度が205℃、スクリュー回転数が60rpm、吐出量が80kg/hr、スクリーンメッシュを100×150×100メッシュの3枚重ね、ベント減圧度を−700mmHgとした。
溶融混練開始後、押出し機ダイス部の樹脂圧の上昇を確認し、押出し開始直後の樹脂圧の+10kg/cm2に達した時の時間を測定し、押出し生産性の評価を行った。
また、得られたポリアセタール樹脂組成物を用いて、成形生産性と機械特性、熱安定性、熱水エージング性、クリープ特性、モールドデポジット性を評価した。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4に示し、評価結果を下記表5に示した。
【0115】
〔実施例2〜5〕、〔比較例1、2〕
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)の種類を変更した。
その他の条件は、実施例1と同様の操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4、6に示し、評価結果を下記表5、7に示した。
【0116】
〔実施例6〜9〕
アクリルアミド重合体(B)の種類を変更した。
その他の条件は、実施例1と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4に示し、評価結果を下記表5に示した。
【0117】
〔比較例3、4〕
アクリルアミド重合体(B)の種類を変更した。
その他の条件は、比較例2と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表6に示し、評価結果を下記表7に示した。
【0118】
〔実施例10〜13〕
ヒドラジド化合物(C)の種類を変更した。
その他の条件は、実施例1と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4に示し、評価結果を下記表5に示した。
【0119】
〔比較例5、6〕
ヒドラジド化合物(C)の種類を変更した。
その他の条件は、比較例2と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表6に示し、評価結果を下記表7に示した。
【0120】
〔実施例14〜18〕
アクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)の配合比率を変更した。
その他の条件は、実施例1と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4に示し、評価結果を下記表5に示した。
【0121】
〔比較例7〕
アクリルアミド重合体(B)、ヒドラジド化合物(C)の配合比率を変更した。
その他の条件は、比較例2と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表6に示し、評価結果を下記表7に示した。
【0122】
〔比較例8〕
ヒドラジド化合物(C)を添加しなかった。
その他の条件は、比較例2と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表6に示し、評価結果を下記表7に示した。
【0123】
〔比較例9〕
アクリルアミド(B)を添加しなかった。
その他の条件は、比較例2と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表6に示し、評価結果を下記表7に示した。
【0124】
〔実施例19〕
上記実施例1に記載のポリアセタール樹脂組成物の組成に加え、更に、ポリアミド6/66/610の3元共重合体(E−1)を、0.02質量部添加した。
その他の条件は実施例1と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4に示し、評価結果を下記表5に示した。
【0125】
〔実施例20〕
上記実施例1に記載のポリアセタール樹脂組成物の組成に加え、更に、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α’−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール(E−2)を0.25質量部、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β‘,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物(E−3)を0.15質量部、ポリエチレングリコール(E−4)を1.0質量部添加した。
その他の条件は実施例1と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4に示し、評価結果を下記表5に示した。
【0126】
〔実施例21〕
上記実施例1に記載のポリアセタール樹脂組成物の組成に加え、更に、1−プロパン(プロピレン)600(E−5)を0.2質量部、ポリエチレングリコール(E−4)を1.0質量部添加した。
その他の条件は、実施例1と同様として操作を行った。
ポリアセタール樹脂組成物の材料組成を下記表4に示し、評価結果を下記表5に示した。
【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

【0131】
表4、表6の樹脂組成物の組成、表5、表7の評価結果から明らかなように、実施例1〜21によれば、長時間連続して押出し生産を行っても、ポリアセタール樹脂の熱分解や、各種添加剤等の変性を効果的に抑制でき、これらのポリアセタール樹脂組成物を用いて作製した成形体は、実用上良好な機械特性、熱安定性、エージング特性、モールドデポジット性を有していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の製造方法により得られるポリアセタール樹脂組成物及びこれを用いた成形体は、電気、電子機器部品や、自動車機構部品や、工業用機構部品等として、産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)、
下記一般式(I)及び/又は(II)に示す構造を含むアクリルアミド重合体(B)、
ヒドラジド化合物(C)、
及び、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)
を、含有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法であって、
222℃で50分間、−500mmHg以下の圧力条件下で加熱したときの加熱重量減少量が0.1〜1.0質量%であるポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)を得る工程と、
前記アクリルアミド重合体(B)の水分量を1500ppm以下に調整する工程と、
前記ヒドラジド化合物(C)の水分量を1500ppm以下に調整する工程と、
前記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)と、前記アクリルアミド重合体(B)と、前記ヒドラジド化合物(C)と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とを、溶融混練する工程と、
を、有するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【化1】

【請求項2】
前記アクリルアミド重合体(B)の平均粒子径が、0.1〜10μmである請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアセタール樹脂ホモポリマー(A)100質量部に対して、アクリルアミド重合体(B)とヒドラジド化合物(C)の添加量の合計量(B+C)が、0.001〜1.0質量部である請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記アクリルアミド重合体(B)と、前記ヒドラジド化合物(C)との配合比率(B)/(C)が、1〜25である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法により得られるポリアセタール樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−116862(P2011−116862A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275836(P2009−275836)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】