説明

ポリアセタール樹脂組成物

【課題】剛性、熱変形温度、熱伝導性、成形加工性に優れ、低比重で灰分も少ないポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(b)平均粒子径5〜70μmのセルロースパウダー10〜150重量部、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部
を含有させてなるポリアセタール樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性、熱変形温度、熱伝導性、成形加工性に優れ、比重の増大や焼却時の灰分の増加を生じさせることのないポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性などにおいて優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品などとして電気機器、自動車部品、精密機械部品などに広く使用されている。ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。
【0003】
例えば、ポリアセタール樹脂の強度や剛性を向上させ、熱変形温度を高めるためには、ガラス系無機充填材などの強化材を配合する方法が一般的であるが、この方法では得られるポリアセタール樹脂組成物の比重が高くなる上、焼却後に灰分(焼却残渣)が多量に残る問題がある。また、ポリアセタール樹脂が本来持つ摺動性などの特長を大きく損なう。更に、近年は、機構部品などの精密化が進む中で、強度・剛性や熱変形温度の向上に加え、熱伝導性や成形加工性などの改良も要求される場合があるが、ガラス系無機充填材などの強化材を配合する方法では、この要求に応えることは難しい。
【0004】
上記の課題に対し、特開平3−217447号公報(特許文献1)には、ポリアセタール樹脂にパルプを配合したポリアセタール樹脂組成物が開示され、機械的強度、耐熱性、燃焼性(燃焼時の樹脂のドリッピング)等の改善が示されている。しかしながら、この方法では、ポリアセタール樹脂とパルプとの混合が不十分になり易く、安定して優れた特性を得ることが難しく、実用には適していない。また、この特許文献1には、ポリアセタール樹脂組成物の熱伝導性や成形加工性などの改善については、何も開示されていない。
【0005】
また、特開平3−28260号公報(特許文献2)に記載された発明は、ポリアセタール樹脂に対して微結晶セルロース及び繊維質性セルロースからなる群より選ばれる安定剤を少量配合し、ポリアセタール樹脂の熱安定性を改良するものであるが、この発明ではポリアセタール樹脂組成物の剛性、熱変形温度、熱伝導性、成形加工性などの改良はいずれも達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−217447号公報
【特許文献2】特開平3−28260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から知られた技術では、上記のように、剛性、熱変形温度、熱伝導性、成形加工性に優れ、低比重、低灰分であるポリアセタール樹脂を得ることはできなかった。
【0008】
本発明は、これらの課題を解決し、剛性、熱変形温度、熱伝導性、成形加工性に優れ、低比重で灰分も少ないポリアセタール樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂に特定の選択された充填材と添加剤とを組み合わせて配合することにより、上記課題が解決し目的を達成し得るポリアセタール樹脂組成物およびその成形品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、
(b)平均粒子径5〜70μmのセルロースパウダー10〜150重量部、
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び
(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部
を含有させてなるポリアセタール樹脂組成物とその成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、剛性、熱変形温度、熱伝導性、成形加工性に優れ、比重の増大や灰分の増加も生じないものであり、自動車部品、電気・電子部品、雑貨、文房具類などに関連した成形品に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリアセタール樹脂組成物について詳細に説明する。
【0013】
本発明のポリアセタール樹脂組成物を構成する主要な成分は以下に説明する通りである。
<(a)ポリアセタール樹脂>
(a)成分のポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−OCH2−)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン単位の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマーが代表的な樹脂である。更に、ポリアセタール樹脂には、分岐形成成分や架橋形成成分を共重合することにより分岐構造や架橋構造が導入された共重合体や、オキシメチレン基の繰返しからなる重合体単位と他の重合体単位とを有するブロック共重合体やグラフト共重合体なども含まれる。これらのポリアセタール樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0014】
一般に、ポリアセタールホモポリマーは、無水ホルムアルデヒドやトリオキサン(ホルムアルデヒドの環状三量体)の重合により製造され、通常、その末端をエステル化することにより、熱分解に対して安定化されている。
【0015】
これに対して、ポリアセタールコポリマーは、一般的に、ホルムアルデヒドまたは一般式(CH2O)n[式中、nは3以上の整数を示す]で表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマー(例えばトリオキサン)と、環状エーテルや環状ホルマールなどのコモノマーとを共重合することによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。
【0016】
ポリアセタールコポリマーの主原料としては、トリオキサンやテトラオキサンなどが挙げられ、通常、トリオキサンが使用される。
【0017】
コモノマーには、環状エーテル、グリシジルエーテル化合物、環状ホルマール、環状エステル(例えば、β−プロピオラクトンなど)、ビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルエーテルなど)などが含まれる。
【0018】
環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキサンなどが挙げられる。
【0019】
グリシジルエーテル化合物としては、例えば、アルキルまたはアリールグリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなど)、アルキレンまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、アルキルまたはアリールグリシジルアルコールなどが挙げられる。
【0020】
環状ホルマールとしては、例えば、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマールなどが挙げられる。
【0021】
これらのコモノマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのコモノマーのうち、通常、環状エーテル及び/または環状ホルマールが用いられ、特に、エチレンオキシドなどの環状エーテルや、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールなどの環状ホルマールが好ましい。
【0022】
これらのコモノマー(例えば、環状エーテル及び/または環状ホルマール)単位の割合は、ポリアセタール樹脂全体に対して、一般的には0.1〜20重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは0.5〜15重量%(特に1〜10重量%)程度である。
【0023】
(a)成分のポリアセタール樹脂のメルトインデックスは、特に限定されないが、1〜100g/10分の範囲が好ましく、特に、5〜50g/10分の範囲が好ましい。メルトインデックスが過小および過大の場合には、本発明の効果が十分に得られない場合がある。なお、メルトインデックスは、ASTM−D1238に準じて、190℃、2.16kgf(21.2N)の条件下で測定した値である。
<(b)セルロースパウダー>
本発明において、上記の(a)ポリアセタール樹脂に配合する(b)セルロースパウダーは、天然物でも工業製品でもよく、麻繊維、竹繊維、綿繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維などのセルロース繊維をパウダー形状としたものを用いることができる。特に、精製パルプを原料とし、パウダー形状としたものが好ましい。具体的な商品名としては、例えば、日本製紙ケミカル社製のKCフロック W−50GK、W−200、W−400G、W−10MG2などが挙げられる。また、(b)セルロースパウダーは、カップリング剤(アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基、グリシジル基などの官能基を有するシランカップリング剤など)で表面処理されていてもよい。
【0024】
本発明で使用する(b)セルロースパウダーの平均粒子径は5〜70μmの範囲で選ばれる。特に10〜50μmの範囲が好ましい。なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)などにより、粒度分布測定装置などで測定することができる。(b)セルロースパウダーの平均粒子径が5μmを下回る場合には、剛性(曲げ弾性率)、熱変形温度(荷重たわみ温度)、熱伝導性(熱伝導率)などの改善効果が低くなり、また、平均粒子径が70μmを超える場合には、ポリアセタール樹脂組成物の溶融粘度が上昇し、成形加工性が低下するために好ましくない。
【0025】
本発明において、(b)セルロースパウダーの含有量は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して10〜150重量部であり、好ましくは15〜120重量部である。含有量が過少および過多の場合には、本発明の効果が十分に得られないため好ましくない。
<(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明で使用する(c)ヒンダードフェノール系化合物としては、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)、炭化水素基またはイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など)、エステル基またはアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。
【0026】
本発明において、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。含有量が過少および過多の場合には、本発明の効果が十分に得られないため好ましくない。
【0027】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、前記の(b)セルロースパウダーとの混合に先立ち、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合しておくのが特に好ましい。
<(d)窒素含有化合物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物が配合される。
【0028】
アミノトリアジン化合物としては、メラミンまたはその誘導体[メラミン、メラミン縮合体(メラム、メレム、メロン)など]、グアナミンまたはその誘導体、及びアミノトリアジン樹脂[メラミンの共縮合樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−メラミン樹脂、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、芳香族ポリアミン−メラミン樹脂など)、グアナミンの共縮合樹脂など]などが挙げられる。
【0029】
グアナミン化合物としては、脂肪族グアナミン化合物(モノグアナミン類、アルキレンビスグアナミン類など)、脂環族グアナミン系化合物(モノグアナミン類など)、芳香族グアナミン系化合物[モノグアナミン類(ベンゾグアナミン及びその官能基置換体など)、α−またはβ−ナフトグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体、ポリグアナミン類、アラルキルまたはアラルキレングアナミン類など]、ヘテロ原子含有グアナミン系化合物[アセタール基含有グアナミン類、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類(CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンなど)、イソシアヌル環含有グアナミン類、イミダゾール環含有グアナミン類など]などが挙げられる。また、上記のメラミン、メラミン誘導体、グアナミン系化合物のアルコキシメチル基がアミノ基に置換した化合物なども含まれる。
【0030】
ヒドラジド化合物としては、脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物(ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド 、セバシン酸ジヒドラジド 、ドデカン二酸ジヒドラジド 、エイコサン二酸ジヒドラジドなど)、脂環族カルボン酸ヒドラジド系化合物(1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインなど)、芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル安息香酸ヒドラジド、1−ナフトエ酸ヒドラジド、2−ナフトエ酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドなど)、ヘテロ原子含有カルボン酸ヒドラジド系化合物、ポリマー型カルボン酸ヒドラジド系化合物などが挙げられる。
【0031】
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/またはジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/またはジカルボン酸との併用により誘導されるポリアミドが含まれる。また、2種以上の異なったポリアミド形成成分により形成される共重合ポリアミドも含まれる。
【0032】
具体的なポリアミドの例としては、ポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸および/またはイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族および脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド及びこれらの共重合体などが挙げられる。また、ポリアミドハードセグメントとポリエーテル成分などの他のソフトセグメントの結合したポリアミド系ブロックコポリマーの使用も可能である。
【0033】
(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれる窒素含有化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。含有量が過少および過多の場合には、本発明の効果が十分に得られないため好ましくない。
【0034】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた窒素含有化合物は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、前記(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と同様に、(b)セルロースパウダーとの混合に先立ち、(d)窒素含有化合物を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合しておくのが特に好ましい。
<(e)金属化合物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、更に、(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた少なくとも一種の金属化合物を配合するのが好ましい。
【0035】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物としてはCaO、MgO、ZnOなどが挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物としてはLiOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2などが挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の無機酸塩としては炭酸塩(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3など)、ホウ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0036】
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とカルボン酸塩を形成する有機カルボン酸としては、飽和モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸など)、飽和ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸など)、及びこれらのオキシ酸(グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、クエン酸など)、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸など]、不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸など)、及びこれらのオキシ酸(プロピオール酸など)、重合性不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸などの重合性不飽和モノカルボン酸、重合性不飽和多価カルボン酸(イタコン酸、マレイン酸、フマル酸など)、多価カルボン酸の酸無水物またはモノエステル(マレイン酸モノエチルなどのモノアルキルエステルなど)など]とオレフィン(エチレン、プロピレンなど)との共重合体などが挙げられ、形成されるカルボン酸金属塩としては、アルカリ金属有機カルボン酸塩(クエン酸リチウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムなど)、アルカリ土類金属有機カルボン酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなど)、アイオノマー樹脂(前記重合性不飽和多価カルボン酸とオレフィンとの共重合体に含有されるカルボキシル基の少なくとも一部が前記金属のイオンにより中和されている樹脂)などが挙げられる。
【0037】
これらの(e)金属化合物の中でも、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩及びカルボン酸塩が特に好ましい。
【0038】
これらの(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた金属化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
その好ましい配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、特に好ましくは0.02〜1重量部から選択できる。含有量が過少の場合には(e)金属化合物の配合による耐熱安定性などに対する効果が十分に発現せず、逆に過多の場合には、本発明が目的とする剛性等の特性を損ねる恐れがあるため好ましくない。
本発明において、かかる(e)金属化合物を配合する場合、(e)金属化合物は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、(b)セルロースパウダーとの混合に先立ち、(e)金属化合物を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合しておくのが特に好ましい。
<(f)加工助剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、更に、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤を配合するのが好ましい。
【0040】
長鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、その一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。このような長鎖脂肪酸としては、炭素数10以上の1価または2価の脂肪酸、炭素数10以上の一価の不飽和脂肪酸、炭素数10以上の二価の脂肪酸(二塩基性脂肪酸)が例示される。前記脂肪酸には、1つまたは複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0041】
長鎖脂肪酸の誘導体には、脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドなどが含まれる。
【0042】
脂肪酸エステルとしては、前記長鎖脂肪酸とアルコールとのエステルが挙げられる。その構造は特に制限されず、直鎖状または分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用できる。脂肪酸エステルの具体例としては、エチレングリコールモノまたはジパルミチン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジステアリン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジベヘン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジモンタン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリパルミチン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリベヘン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリモンタン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラモンタン酸エステル、ポリグリセリントリステアリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノウンデシル酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)のモノまたはジラウレート、モノまたはジパルミテート、モノまたはジステアレート、モノまたはジベヘネート、モノまたはジモンタネート、モノまたはジオレート、モノまたはジリノレートなどが挙げられる。
【0043】
脂肪酸アミドの例としては、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドなどの飽和脂肪酸の第1級酸アミド、オレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸の第1級酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミドなどの飽和及び/または不飽和脂肪酸とモノアミンとの第2級酸アミド、エチレンジアミン−ジパルミチン酸アミド、エチレンジアミン−ジステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、ヘキサメチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、エチレンジアミン−ジベヘン酸アミド、エチレンジアミン−ジモンタン酸アミド、エチレンジアミン−ジオレイン酸アミド、エチレンジアミン−ジエルカ酸アミドなどが挙げられ、更にエチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなどのアルキレンジアミンのアミン部位に異なるアシル基が結合した構造を有するビスアミドなどが例示できる。
【0044】
前記ポリオキシアルキレングリコールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのアルキレングリコールなど)の単独または共重合体、それらの誘導体などが挙げられる。
【0045】
ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ランダムまたはブロック共重合体など)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルなどの共重合体などが挙げられる。これらのうち、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体及びそれらの誘導体などが好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの平均分子量は、3×102〜1×106、好ましくは1×103〜1×105程度である。
【0046】
前記シリコーン系化合物には、(ポリ)オルガノシロキサンなどが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサン(ジフェニルシロキサンなど)などのモノオルガノシロキサン、これらの単独重合体(ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)または共重合体などが例示できる。なお、ポリオルガノシロキサンは、オリゴマーであってもよい。
【0047】
また、(ポリ)オルガノシロキサンには、分子末端や主鎖に、エポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基または置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、エーテル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサンなども含まれる。
【0048】
本発明において(f)加工助剤を配合する場合、上記の長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた化合物を単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。その好ましい配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、特に好ましくは0.02〜1重量部である。含有量が過少の場合には加工助剤としての効果が得られず、逆に過多の場合にも加工性を損ねたり、本発明が本来目的とする効果を損ねる恐れがあるため好ましくない。
本発明において、かかる(f)加工助剤を配合する場合、(f)加工助剤は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、(b)セルロースパウダーとの混合に先立ち、(f)加工助剤を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合しておくのが特に好ましい。
<ポリアセタール樹脂組成物の調製方法>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、前記の(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(b)平均粒子径5〜70μmのセルロースパウダー10〜150重量部、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部、(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部を含有させることにより、また、好ましくは更に(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた少なくとも一種の金属化合物0.01〜3重量部、及び/または、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤0.01〜3重量部を含有させることにより調製する。
【0049】
本発明において、上記ポリアセタール樹脂組成物の調製方法の具体的態様は特に限定されるものではなく、一般に合成樹脂組成物またはその成形品の調製法として公知の設備と方法により調製することができる。即ち、必要な成分を混合し、1軸または2軸の押出機またはその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。また、押出機またはその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。
【0050】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、前述したように、(b)セルロースパウダー以外の配合成分、即ち(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、好ましい配合成分である(e)金属化合物及び(f)加工助剤、から選ばれた1種又は2種以上を予め(a)ポリアセタール樹脂に溶融混合しておき、しかる後、この溶融混合物を(b)セルロースパウダー及び組成物を構成する残余成分と混合し、溶融混練して目的とする組成物を調製する方法は特に好ましい。
【0051】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、(a)ポリアセタール樹脂と(b)セルロースパウダーとの密着性を改善する物質を使用することができる。ここで、密着性を改善する物質としては、一般式O=C=N-R-N=C=O(R:2価の基)で表されるイソシアネート化合物、S=C=N-R-N=C=S (R:2価の基)で表されるイソチオシオネート化合物、及びそれらの変性体イソシアネート化合物、熱可塑性ポリウレタン樹脂、α,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体及び共重合体などが挙げられる。
【0052】
イソシアネート化合物の例としては、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが、またイソチオシオネート化合物の例としては上記イソシアネート化合物に対応するジイソチオネートが、また変性体としてはこれらのイソシアネート化合物或いはイソチオシオネート化合物の二量体、三量体、更にはイソシアネート基が何らかの形で保護されている化合物等が挙げられ、これらはいずれも有効であるが、溶融処理等の変色度等の諸性質、あるいは取扱い上の安全性を考慮すると、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,5 −ナフタレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート並びにこれらの二量体、三量体等の変性体(又は誘導体)が好ましい。
【0053】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂の例としては、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)分子量が500〜5000の高分子量ポリオール、(iii)分子量が60〜500の低分子量ポリオール及び/又はポリアミンを構成成分とする反応生成物などが挙げられる。
【0054】
また、α,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体及び共重合体の例としては、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体、スチレン系単量体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなど)と無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物との共重合体、エチレン及び/またはプロピレン系単量体などと無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物との共重合体などが挙げられる。
【0055】
更に本発明の組成物には目的とする用途に応じてその物性を改善するため、公知の各種の添加物を配合し得る。添加物の例を示せば、各種の着色剤、滑剤、核剤、界面活性剤、異種ポリマー、有機高分子改良剤及び無機、有機、金属などの繊維状、粉粒状、板状の充填剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できる。
【0056】
また、上記安定剤、添加剤などの配合は任意のいかなる段階、例えば、(a)ポリアセタール樹脂に一旦加えても、或いは樹脂組成物の調整時に加えてもよく、又最終成形品を得る直前で、添加、混合することも可能である。
【0057】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、190℃、1000s-1における溶融粘度が475Pa・s以下であることが好ましく、特に、450Pa・s以下であることが好ましい。475Pa・sを超える場合には、一般的な強化手法であるガラス繊維等による強化ポリアセタール樹脂組成物よりも流動性が低下し、成形加工性が低下するため好ましくない。なお、溶融粘度は、キャピラリー式レオメータを用いて測定した値である
<ポリアセタール樹脂組成物の成形方法ならびに用途>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形などの方法)で、種々の成形品を成形することができる。また、これらの成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建材、生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品など各種用途に利用することができる。
【0058】
具体的には、自動車部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーター、コネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などの機構部品などが挙げられる。
【0059】
電気・電子部品としては、ポリアセタール樹脂成形品で構成され、かつ金属接点が多数存在する機器の部品または部材、例えば、オーディオ機器、ビデオ機器、または、電話機、コピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA機器、玩具類の部品または部材、具体的には、シャーシ、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。
【0060】
更に、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、ファスナー類、文具、リップクリーム・口紅容器、洗浄器、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器、エアゾール容器、一般的な容器、注射針のホルダーなどの広範な生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品に好適に使用される。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0062】
実施例1〜10、比較例1
(a)ポリアセタール樹脂に、表1及び表2に示す割合で(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、(e)金属化合物および(f)加工助剤を予め押出機で溶融混合しておき、この混合物と表1に示す割合の(b)セルロースパウダーとを混合し、二軸押出機で溶融混錬し、ペレット状のポリアセタール樹脂組成物を調製した。
得られたペレットを用いて、射出成形機により所定の試験片を成形し、試験評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0063】
〔使用成分〕
使用した成分の詳細は、以下のとおりである。
(a)ポリアセタール樹脂
(a−1)ポリアセタール樹脂、メルトインデックス=27g/10分(ポリプラスチックス(株)製)
(b)セルロースパウダー
(b−1)KCフロック W−50GK、平均粒子径:約45μm(日本製紙ケミカル社製)
(b−2)KCフロック W−200、平均粒子径:約32μm(日本製紙ケミカル社製)
(b−3)KCフロック W−400G、平均粒子径:約24μm(日本製紙ケミカル社製)
(b−4)KCフロック W−10MG2、平均粒子径:約10μm(日本製紙ケミカル社製)
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
(c−1)ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(d)窒素含有化合物
(d−1)メラミン
(e)金属化合物
(e−1)12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
(f)加工助剤
(f−1)エチレンビスステアリルアミド
【0064】
〔押出条件〕
押出機:TEX−30α(L/D=38.5)、日本製鋼所社製
吐出量:15kg/h
スクリュー回転数:129rpm
バレル温度:C2=160℃、C3〜C11・D=200℃
【0065】
〔成形条件〕
成形機:ROBOSHOT S2000i100B、スクリュー径28mm、ファナック社製
シリンダ温度:200℃
金型温度:90℃(水温調)
【0066】
〔試験方法〕
試験方法の詳細は、以下のとおりである。
(1)剛性(曲げ弾性率)
ISO178に準拠し、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
(2)熱変形温度(荷重たわみ温度)
ISO75−1,2に準拠し、荷重たわみ温度(℃)(荷重: 1.8MPa)を測定した。
(3)比重
試験片の容積(水中浸漬による増加分を測定)と試験片の重量により算出した。
(4)熱伝導性(熱伝導率)
ホットディスク法により、熱伝導率(W/m・K)を測定した。熱伝導率が高い方が熱伝導性に優れていることを示している。
(5)流動性(溶融粘度)
ペレット状の試料を用い、キャピラリー式レオメータ(東洋精機社製キャピログラフ)にて、190℃、1000s-1における溶融粘度(Pa・s)を測定した。なお、溶融粘度が475Pa・sを超える場合には、一般的なガラス繊維強化ポリアセタール樹脂組成物よりも流動性が低下するため好ましくない。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
表1の結果の比較から、本発明のポリアセタール樹脂組成物(実施例1〜4)は、比重・溶融粘度の上昇を少なく抑えながら、他のポリアセタール樹脂組成物(比較例1)よりも、剛性(曲げ弾性率)、熱変形温度(荷重たわみ温度)、熱伝導性(熱伝導率)を向上させていることがわかる。また、表2の結果から、本発明のポリアセタール樹脂組成物(実施例5〜10)は、比重の上昇を少なく抑えながら、剛性(曲げ弾性率)、熱変形温度(荷重たわみ温度)を向上させていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、
(b)平均粒子径5〜70μmのセルロースパウダー10〜150重量部、
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び
(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部
を含有させてなるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた少なくとも一種の金属化合物0.01〜3重量部を含有させてなる請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤0.01〜3重量部を含有させてなる請求項1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
(b)セルロースパウダー以外の配合成分から選ばれた1種又は2種以上が、予め(a)ポリアセタール樹脂に溶融混合されて配合されたものである請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
(a)ポリアセタール樹脂のメルトインデックス(ASTM−D1238に準拠、190℃、2.16kgf)が5〜50g/10分である、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
(b)セルロースパウダーの平均粒子径が10〜50μmである請求項1〜5のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
ポリアセタール樹脂組成物の190℃、1000s-1における溶融粘度が475Pa・s以下である請求項1〜6のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2010−265439(P2010−265439A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60133(P2010−60133)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】