説明

ポリアミドイミド樹脂及びそれを含む硬化性樹脂組成物

【課題】樹脂組成物とした場合に低温でも十分な硬化性を得ることが可能なポリアミドイミド樹脂を提供すること。また、上記ポリアミドイミド樹脂を含み、良好な低温硬化性を有する硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構成単位を含む、ポリアミドイミド樹脂。
【化1】


[式中、Rはフェノール性水酸基を有する2価の有機基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂及びそれを含む硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド樹脂は、電子材料用途において広く用いられている。例えば、ポリアミドイミド樹脂を硬化剤等と混合して硬化性樹脂組成物とし、これを硬化させることにより、電子材料として用いる絶縁膜が得られる。
【0003】
ポリアミドイミド樹脂の製造方法としては、多価アミンと多価カルボン酸とを反応させる直接重合法(特許文献1参照)や、ジアミンと無水トリメリット酸クロリドとを反応させる酸クロリド法(特許文献2及び3参照)が知られている。直接重合法によると、重合後に樹脂と触媒との分離が必要となる場合があり、酸クロリド法によると、重合後に樹脂と副生成物である塩化物との分離が必要となる場合がある。
【0004】
一方、ポリアミドイミド樹脂の製造方法として、ジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させるイソシアネート法も知られている(特許文献4参照)。イソシアネート法によれば、触媒を添加する必要がなく、また、副生成物は気体であるため、重合後に樹脂と触媒又は副生成物とを分離する必要がない。この点でイソシアネート法は、直接重合法や酸クロリド法よりも生産性に優れる。
【0005】
特許文献5には、ジアミンと無水マレイン酸との重合により得られる、分子末端に不飽和結合を有するポリアミドイミド樹脂が開示されており、特許文献6には、カルボニル化合物とフェノール性水酸基を有するジアミンとを直接重合法により反応させて得られる、フェノール性水酸基を含むポリアミドイミド樹脂が開示されている。
【特許文献1】特開2001−270939号公報
【特許文献2】特公平4−018562号公報
【特許文献3】特公昭61−044928号公報
【特許文献4】特開平06−172516号公報
【特許文献5】特許2582636号公報
【特許文献6】特開2004−091734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の製造方法によって得られるポリアミドイミド樹脂は、樹脂組成物とした場合に低温で十分な硬化性が得られない場合があり、この点で更なる改良が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、樹脂組成物とした場合に低温でも十分な硬化性を得ることが可能なポリアミドイミド樹脂を提供することを目的とする。本発明はまた、上記ポリアミドイミド樹脂を含み、良好な低温硬化性を有する硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリアミドイミド樹脂である。式中、Rはフェノール性水酸基を有する2価の有機基を示す。
【0009】
【化1】

【0010】
一般に、ポリアミドイミド樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂を硬化剤等と混合して得られるが、フェノール性水酸基は、これら硬化剤等が有する官能基と反応して結合を生じることが可能な反応性有機基である。本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、このようなフェノール性水酸基を側鎖に有することにより、樹脂組成物として硬化させる場合に、効率よく架橋構造を生じることができるため、低温でも十分な硬化性を得ることが可能となる。また、硬化物は十分な耐熱性を有する。
【0011】
本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸と、ジカルボン酸、トリカルボン酸一無水物及びテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性水酸基を有しない化合物とを含み、イミド基を有する化合物及び/又は酸無水物基を有する化合物が含まれるように選ばれるカルボニル化合物を、ジイソシアネートと反応させて得られるものであることが好ましい。
【0012】
このように、カルボニル化合物とジイソシアネートとを反応させるイソシアネート法を用いることにより、生成物であるポリアミドイミド樹脂と副生成物又は触媒との分離操作が必要なくなるため、直接重合法等による場合と比べて生産性が向上する。また、触媒を用いず、副生成物は気体であり、分離操作も行わないため、固形不純物、金属性不純物、イオン性不純物等の不純物の混入が最小限に抑えられ、不純物の混入に起因する外観不良や性能低下を防止することができる。
【0013】
上記カルボニル化合物が、フェノール性水酸基を有しない化合物を含むことによって、得られるポリアミドイミド樹脂が、フェノール性水酸基を有する側鎖を適度に含むものとなり、樹脂組成物が過度に硬化されて脆くなるのを防止することができる。また、フェノール性水酸基を有しない特定の化合物を用いて、溶解性、耐熱性等の調節をすることも可能となる。
【0014】
さらに、本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、上記カルボニル化合物を、当該カルボニル化合物に含まれる酸無水物基及びカルボキシル基の総量に対して0.7〜1.3当量のジイソシアネートと反応させて得られるものであることが好ましい。ジイソシアネートの量を上記範囲とすることによって、分子量が大きく、樹脂組成物として硬化させた場合に良好な強度及び耐熱性を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
【0015】
上記フェノール性水酸基を有するジカルボン酸は、例えば、フェノール性水酸基を有するアミノ酸と、トリカルボン酸一無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との反応により得られるイミドジカルボン酸である。
【0016】
別の側面において、本発明は、上記ポリアミドイミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物である。本発明に係る硬化性樹脂組成物は、熱により硬化するものであり、ポリアミドイミド樹脂のほか、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂組成物とした場合に低温でも十分な硬化性を得ることが可能なポリアミドイミド樹脂を提供することができる。また、上記ポリアミドイミド樹脂を含み、良好な低温硬化性を有する硬化性樹脂組成物を提供することができる。さらに、上記硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、耐熱性、強度及び外観が良好な硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
一実施形態に係るポリアミドイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位を含む。式中、Rはフェノール性水酸基を有する2価の有機基を示す。
【0020】
【化2】

【0021】
すなわち、本実施形態に係るポリアミドイミド樹脂は、アミド基とイミド基とを有する主鎖と、この主鎖に結合した、フェノール性水酸基を有する側鎖とを含む。式(1)に示されるように、上記フェノール性水酸基は、カルボキシル基を有する化合物に由来する場合が多い。
【0022】
ここで、フェノール性水酸基とは、ベンゼン環に結合した水酸基のことをいう。このフェノール性水酸基には、側鎖が有しているベンゼン環に結合した水酸基と、主鎖が有しているベンゼン環に直接結合した水酸基との両方が含まれる。後者の場合、その部分の「側鎖」は、水酸基のみから構成されることになる。
【0023】
一般に、ポリアミドイミド樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂を硬化剤等と混合して得られるが、フェノール性水酸基は、これら硬化剤等が有する官能基と反応して結合を生じることが可能な反応性有機基である。本実施形態に係るポリアミドイミド樹脂は、このようなフェノール性水酸基を側鎖に有することにより、樹脂組成物として硬化させる場合に、効率よく架橋構造を生じることができるため、低温でも十分な硬化性を得ることが可能となる。また、硬化物は十分な耐熱性を有する。
【0024】
ポリアミドイミド樹脂は、フェノール性水酸基を有する側鎖を、分子内に複数含むことが好ましい。このような反応性有機基を有する側鎖を分子内に複数含むことにより、より3次元架橋が生じ易くなり、低温でも十分な硬化性を得ることが可能となる。
【0025】
上記側鎖は、フェノール性水酸基と共に、又はフェノール性水酸基に代えて、エポキシ基等と反応して結合を生じることができる反応性有機基を有していてもよい。このような反応性有機基としては、アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、エポキシ基等が挙げられる。ただし、樹脂組成物を硬化する際に3次元架橋が特に形成され易く、より優れた低温硬化性が得られ易くなる傾向にあることから、反応性有機基はフェノール性水酸基であることが好ましい。
【0026】
本実施形態に係るポリアミドイミド樹脂は、カルボニル化合物を、ジイソシアネートと反応させて得られる。ここで、カルボニル化合物とは、カルボニル基を有する化合物のことをいう。このように、カルボニル化合物とジイソシアネートとを反応させてポリアミドイミド樹脂を生成させる方法(イソシアネート法)を用いることにより、生成物であるポリアミドイミド樹脂と副生成物又は触媒との分離操作が必要なくなるため、直接重合法等による場合と比べて生産性が向上する。また、触媒を用いず、副生成物は気体であり、分離操作も行わないため、固形不純物、金属性不純物、イオン性不純物等の不純物の混入が最小限に抑えられ、不純物の混入に起因する外観不良や性能低下を防止することができる。
【0027】
上記カルボニル化合物は、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸と、ジカルボン酸、トリカルボン酸一無水物及びテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性水酸基を有しない化合物とを含む。これらの化合物から選ばれるカルボニル化合物のいずれかが、イミド基及び/又は酸無水物基を有していればよい。
【0028】
このようなカルボニル化合物をジイソシアネートと反応させると、得られるポリアミドイミド樹脂は、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸に由来する構成単位と、フェノール性水酸基を有しない化合物に由来する構成単位と、ジイソシアネートに由来する構成単位を含むものとなる。各構成単位は、これらの構成単位の末端同士で形成される、アミド結合又はイミド結合を介して繰返し結合されている。
【0029】
上記ポリアミドイミド樹脂において、アミド結合は、カルボニル化合物に含まれるジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸一無水物が有するカルボキシル基と、ジイソシアネートが有するイソシアネート基の反応により生じる。一方、イミド結合は、トリカルボン酸一無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物が有する酸無水物基と、ジイソシアネートが有するイソシアネート基との反応により生じる。また、上記ポリアミドイミド樹脂は、イミド基及びカルボキシル基を有するカルボニル化合物であるイミドジカルボン酸が有するイミド基に由来するイミド結合を含んでいてもよい。
【0030】
上記カルボニル化合物が、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸だけでなく、フェノール性水酸基を有しない化合物をも含むことによって、得られるポリアミドイミド樹脂が、フェノール性水酸基を有する側鎖を適度に含むようになる。フェノール性水酸基を有する側鎖が適度に含まれることによって、過度の3次元架橋が生じるのが好ましくない場合等に、3次元架橋の過度の形成を抑制して、樹脂組成物に好適な硬化性を付与し、樹脂組成物が過度に硬化されて脆くなることを防止することができる。また、フェノール性水酸基を有しない特定の化合物を用いて、溶解性、耐熱性等の調節をすることも可能となる。
【0031】
この際、カルボニル化合物中に含まれるフェノール性水酸基を有するジカルボン酸(A)とフェノール性水酸基を有しない化合物(B)とのモル比(A/B)は、0.99/0.01〜0.01/0.99の範囲であることが好ましく、0.75/0.25〜0.1/0.9の範囲であるとより好ましい。これにより、3次元架橋が良好に生じ、樹脂組成物に適度な硬化性を付与することが可能なポリアミドイミド樹脂が得られる。
【0032】
本実施形態に係るポリアミドイミド樹脂は、上記カルボニル化合物を、当該カルボニル化合物に含まれる酸無水物基及びカルボキシル基の総量に対して0.7〜1.3当量(モル当量)のジイソシアネートと反応させて得られるものであることが好ましく、1.0〜1.2当量のジイソシアネートと反応させて得られるものであると、より好ましい。反応させるジイソシアネートの量を上記範囲とすることによって、分子量が大きく、樹脂組成物として硬化させた場合に良好な強度及び耐熱性を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。カルボニル化合物に対して反応させるジイソシアネートの量が0.7当量未満であると、未反応のカルボニル化合物が残り易くなり、得られるポリアミドイミド樹脂の特性が十分でなくなる傾向にある。一方、ジイソシアネートの量が1.3当量を超えると、未反応のジイソシアネートが残り易くなり、得られるポリアミドイミド樹脂の分子量や耐熱性が十分でなくなる傾向、又は逆に、得られるポリアミドイミド樹脂が高分子量化することにより、取り扱い性が十分に良好でなくなる傾向にある。
【0033】
カルボニル化合物とジイソシアネートとの反応は、100℃以上で行うことが好ましく、140〜180℃で行うことがより好ましい。このような反応温度とすることで、良好な反応速度が得られ、効率よくポリアミドイミド樹脂を得ることが可能となる。上記反応に際しては、イミダゾールやトリアルキルアミン等の3級アミンを触媒として用いてもよい。これらの触媒を用いることで、より効率よくポリアミドイミド樹脂を生成させることが可能となる。また、触媒を用いる場合、反応温度を100℃未満としても十分に反応が進行するため、高温条件に起因して生じる副反応等を大幅に抑制することが可能となる。
【0034】
フェノール性水酸基を有するジカルボン酸とは、2つのカルボキシル基及び少なくとも1つのフェノール性水酸基を有する化合物である。当該化合物において、フェノール性水酸基は、2つのカルボキシル基間の構成単位に結合している側鎖に含まれるか、2つのカルボキシル基間の構成単位に直接結合している。
【0035】
フェノール性水酸基を有するジカルボン酸としては、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、メチレンジサリチル酸、パモ酸、5,5´−チオジサリチル酸等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記フェノール性水酸基を有するジカルボン酸は、フェノール性水酸基を有するアミノ酸と、トリカルボン酸一無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との反応により得られるイミドジカルボン酸や、ヒドロキシフタル酸等を含んでいてもよい。このフェノール性水酸基を有するイミドジカルボン酸は、2つのカルボキシル基間の構成単位に、少なくとも1つのフェノール性水酸基と、少なくとも1つのイミド基とを有する。例えば、フェノール性水酸基を有するイミドジカルボン酸は、フェノール性水酸基を有するアミノ酸に対して、1当量のトリカルボン酸一無水物又は0.5当量のテトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる。
【0037】
フェノール性水酸基を有するアミノ酸としては、3−アミノサリチル酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシアントラニル酸、5−ヒドロキシアントラニル酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、m−チロシン、o−チロシン、チロシン、3−フルオロ−チロシン、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アラニン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
トリカルボン酸一無水物としては、無水トリメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−スルホニルジフタル酸二無水物、1−トリフルオロメチル−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、フエナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフエン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4´−(4,4´イソプロピリデンジフェノキシ)−ビス(フタル酸無水物)、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)スルホン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
フェノール性水酸基を有しないジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、フェノール性水酸基を有しないジカルボン酸は、2つのカルボキシル基間の構成単位にイミド基を有する、イミドジカルボン酸であってもよい。
【0040】
フェノール性水酸基を有しないイミドジカルボン酸は、ジアミン及び/又はアミノ酸を含むフェノール性水酸基を有しないアミノ化合物を、トリカルボン酸一無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物を含み、アミノ化合物に含まれるアミノ基に対して1つの酸無水物基と2つのカルボキシル基とを含むように選ばれるフェノール性水酸基を有しない酸無水物と反応させることにより得られる。この際、アミノ化合物に含まれるアミノ基と、酸無水物に含まれる酸無水物基との反応によってイミド結合が生じる。
【0041】
フェノール性水酸基を有しないイミドジカルボン酸は、例えば、以下に示す(1)〜(4)の方法により得られる。
(1)フェノール性水酸基を有しないジアミンを、当該ジアミンに対して2当量のテトラカルボン酸二無水物又はトリカルボン酸一無水物と反応させる。
(2)フェノール性水酸基を有しないジアミンを、テトラカルボン酸二無水物及びトリカルボン酸一無水物と反応させる。例えば、フェノール性水酸基を有しないジアミンを、当該ジアミンに対して0.5当量のテトラカルボン酸二無水物と反応させた後、上記ジアミンに対して1当量のトリカルボン酸一無水物と反応させる。
(3)フェノール性水酸基を有しないアミノ酸を、当該アミノ酸に対して1当量のトリカルボン酸一無水物と反応させる。
(4)フェノール性水酸基を有しないアミノ酸を、当該アミノ酸に対して0.5当量のテトラカルボン酸二無水物と反応させる。
なお、上記(1)〜(4)で用いるテトラカルボン酸二無水物及びトリカルボン酸一無水物は、いずれもフェノール性水酸基を有しないものとする。
【0042】
フェノール性水酸基を有しないジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2´−ジメチルビフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4´−ジアミン、2,6,2´,6´−テトラメチル−4,4´−ジアミン、5,5´−ジメチル−2,2´−スルフォニル−ビフェニル−4,4´−ジアミン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4´−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3´―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4´−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3´−ジアミノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン、(4,4´−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、ポリプロピレンオキサイドジアミン(商品名ジェファーミン)等の脂肪族ジアミン、ポリジメチルシロキサンジアミン(シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)、KF−8010(アミン当量415)(以上、信越化学工業株式会社製))等のシロキサンジアミンが例示できる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
フェノール性水酸基を有しないアミノ酸としては、グリシン、アラニン、アミノヘプタン酸、アミノヘキサン酸、アミノ吉草酸、アミノブチル酸、アミノラウリル酸、2−フェニルグリシン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、3−アミノ−p−トルイル酸、3−アミノ−o−トルイル酸、2−アミノ−m−トルイル酸、4−アミノ−m−トルイル酸、6−アミノ−m−トルイル酸、6−アミノ−o−トルイル酸、3,5―ジメチルアントラニル酸、p−アミノメチル安息香酸等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
以上、フェノール性水酸基を有しないイミドジカルボン酸を得る方法を例示したが、フェノール性水酸基を有しないイミドジカルボン酸を得る方法は、これらに限定されない。
【0045】
ジイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
ジイソシアネートと反応させるカルボニル化合物は、さらに、分子内にカルボキシル基を1つ有するカルボン酸を含んでいてもよい。このカルボン酸は、フェノール性水酸基を有していても、有していなくてもよいが、フェノール性水酸基を有していると好ましい。このカルボン酸は、ジイソシアネートとの反応の際、ポリアミドイミド樹脂の末端部分に結合する。したがって、このようなカルボン酸を用いることで、このカルボン酸に由来する構成単位を更に有するポリアミドイミド樹脂が得られる。この際、フェノール性水酸基を有するカルボン酸を用いると、末端にもフェノール性水酸基を有することにより一層優れた低温硬化性が付与されたポリアミドイミド樹脂を得ることが可能となり、好ましい。
【0047】
フェノール性水酸基を有するカルボン酸としては、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、2,3,5−トリヒドロキシ安息香酸、3−メチルサリチル酸、4−メチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、3−ヒドロキシ−o−トルイル酸、3−ヒドロキシ−p−トルイル酸、2,6−ジヒドロキシ−4−メチル安息香酸、4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、フェノールフタレイン、5,5´−チオジサリチル酸、ジフェノール酸、4−(4−ヒドロキシフェノキシ)安息香酸等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
フェノール性水酸基を有しないカルボン酸としては、上記フェノール性水酸基を有するカルボン酸からフェノール性水酸基を除いた構造を有するカルボン酸が挙げられる。
【0049】
本実施形態に係るポリアミドイミド樹脂を、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等と混合することにより、ポリアミドイミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物が得られる。硬化剤は、ポリアミドイミド樹脂が有するフェノール性水酸基と反応して結合を生じることが可能な官能基を有することが好ましい。この官能基とフェノール性水酸基とが反応して結合を生じることにより、架橋構造が形成される。この官能基は、フェノール性水酸基と反応して結合を生じるものであれば特に制限されないが、フェノール性水酸基との反応性が良好であることから、エポキシ基であることが好ましい。エポキシ基を有する硬化剤としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、これらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等のエポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
硬化剤の配合量は、ポリアミドイミド樹脂が有するフェノール性水酸基に対して、0.1〜5.0当量のエポキシ基を有する量であることが好ましく、0.8〜2.0当量のエポキシ基を有する量であるとより好ましい。フェノール性水酸基に対してエポキシ基が0.1当量未満であると、上述したような硬化剤としての効果が十分に得られなくなる傾向がある。一方、フェノール性水酸基に対してエポキシ基が5.0当量を超えると、未反応の硬化剤が残り易く、ポリアミドイミド樹脂が本来有する特性が十分に得られなくなる傾向がある。
【0051】
硬化促進剤は、ポリアミドイミド樹脂と硬化剤との反応(硬化)を促進する。硬化促進剤を含むことにより、架橋構造がより形成され易くなり、十分な低温硬化性を得ることが可能となる。硬化促進剤としては、特に制限されないが、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、ナフトイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ベンゾトリアゾール、プリン、イミダゾリン、ピラゾリン、キノリン、イソキノリン、ジピリジル、ジキノリル、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ナフチリジン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、ベンゾシンノリン、ベンゾフタラジン、ベンゾキノキサリン、ベンゾキナゾリン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、ペリミジン、トリアジン、テトラジン、プテリジン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンゾイソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピロールジオン、イソインドールジオン、ピロリジンジオン、ベンゾイソキノリンジオン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、アミノシラン、フェニルアミノシラン等の含窒素化合物が挙げられる。これらは、硬化温度に応じて適宜選択して配合されることが好ましく、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0052】
硬化促進剤の配合量は特に制限されないが、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部であると好ましく、0.05〜10質量部であるとより好ましい。硬化促進剤の配合量が上記範囲未満であると、硬化を促進する効果が十分に得られなくなる傾向があり、上記範囲を超えると、ポリアミドイミド樹脂が本来有する特性が十分に得られなくなる傾向がある。
【0053】
希釈剤は、ポリアミドイミド樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を溶解又は分散された状態とする。硬化性樹脂組成物がこのような希釈剤を含むことにより、作業効率が向上する。希釈剤としては特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
さらに、硬化性樹脂組成物は、無機粒子等の粒子を含んでいてもよい。粒子を含むことで、硬化性樹脂組成物やその硬化物の熱膨張率や電気特性を改善することができる。このような粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等からなる無機粒子が好ましい。粒子の最大粒径は500nm以下であることが好ましい。最大粒径が500nmを超える粒子を用いると、樹脂組成物の硬化物からなる膜(硬化膜)を形成した場合に、その膜厚によっては膜中の粒子が占める割合が大きくなりすぎ、これが要因となって膜に欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0055】
粒子の配合量は、ポリアミドイミド樹脂と硬化剤の総量100質量部に対して1〜90質量部とすることが好ましく、10〜50質量部とすることがより好ましい。粒子の配合量が1質量部未満であると、粒子の添加による上述した効果が十分に得られない場合がある。一方、粒子の配合量が90質量部を超えると、硬化膜を形成した場合に、粒子に起因する欠陥が生じやすくなる傾向がある。
【0056】
さらに、硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。難燃剤を含むことにより、硬化性樹脂組成物やその硬化物の難燃性が向上する。難燃剤としては、一般の難燃剤を用いることができる。難燃剤の配合量は、ポリアミドイミド樹脂と硬化剤の総量100質量部に対して0.1〜50質量部とすることが好ましい。難燃剤の配合量が0.1質量部未満であると、十分な難燃性が得られにくくなる傾向があり、50質量部を超えると硬化性樹脂組成物の物性が好適でなくなる傾向がある。
【0057】
硬化性樹脂組成物は、通常、熱により硬化するが、光により硬化が促進される構造や成分が含まれること等によって、硬化性樹脂組成物が光硬化性を有する場合がある。この場合、硬化性樹脂組成物は、増感剤を更に含んでいてもよい。増感剤を含むことにより、光の吸収が促進され、より良好に硬化が進行する傾向にある。増感剤としては公知の化合物を適用でき、照射される光の波長に応じて適宜選択することができる。
【0058】
増感剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%とすることがより好ましい。このような範囲で増感剤を含有させることで、硬化性樹脂組成物の特性を維持しながら良好な硬化を行うことが可能となる。
【0059】
さらに、硬化性樹脂組成物は、所望の特性に応じて、ゴム系エラストマ、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を含んでもよい。
【0060】
上述した硬化性樹脂組成物を基体上に塗布することにより、硬化性樹脂組成物層を形成することができる。その場合、例えば、硬化性樹脂組成物をそのまま、又は有機溶媒等に溶解した溶液とし、これを、スピンコーター、マルチコーター等を用いて基体の所望の面上に塗布する。その後、塗布によって形成された層を加熱したり、この層に熱風を吹きつけたりすることによって、この層から希釈剤や有機溶媒を揮発させ、これらを除去する。このようにして、硬化性樹脂組成物(主に固形分)から構成される硬化性樹脂組成物層が形成される。
【0061】
基体としては、特に限定されないが、銅やアルミ等の金属、ポリイミド等の樹脂、セラミック、ガラス等の無機材料等からなる基体が挙げられる。基体は、例えば、電子部品等に搭載されるものであって、樹脂からなる絶縁基板上に金属からなる配線が形成されたようなもの(プリント配線基板等)であってもよい。
【0062】
基体上に形成された硬化性樹脂組成物層は、基体と、硬化性樹脂組成物層上に積層される他の基板等との接着を行う接着層として機能することができる。また、さらに硬化することによって、基体を保護する保護層や、絶縁層として機能することもできる。
【0063】
硬化は、例えば、硬化性樹脂組成物層の加熱により生じさせることができる。加熱により硬化させる場合、好適な温度は、硬化性樹脂組成物中の硬化促進剤の有無やその種類によって異なるが、130〜230℃とすることが、硬化物層の特性劣化を少なくできる上、作業性が良好であることから好ましい。ポリアミドイミド樹脂等の種類によっては、光の照射によって硬化性樹脂組成物層を硬化させることもできる。
【0064】
基体上に硬化性樹脂組成物層を形成する方法としては、上述の直接塗布する方法のほかにも、硬化性樹脂組成物からなるフィルム(硬化性樹脂フィルム)を形成し、これを基体に貼り合わせる方法がある。
【0065】
上記硬化性樹脂フィルムを形成する場合、硬化性樹脂組成物層を形成する場合と同様にして、硬化性樹脂組成物を支持体上に塗布し、加熱等により溶媒等を除去する。このようにして支持体上に硬化性樹脂フィルムが形成される。その後、硬化性樹脂フィルムから支持体を剥離して除去し、硬化性樹脂フィルムを基体に貼り合わせることにより、基体上に硬化性樹脂組成物層を形成することができる。なお、支持体は、基体上に積層した後に除去してもよい。
【0066】
支持体としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、4フッ化エチレン等からなるフィルム、離型紙、銅箔やアルミ箔等の金属箔が挙げられる。支持体の厚さは、特に制限されないが、10〜150μmであると好ましい。なお、支持体の表面(特に硬化性樹脂フィルムが形成される面)には、マット処理、コロナ処理、離型処理等が施されていてもよい。
【0067】
硬化性樹脂フィルムは、支持体が除去された硬化性樹脂フィルム単体の状態、又は、支持体上に硬化性樹脂フィルムが積層された積層体の状態で保管することができる。保管方法としては、硬化性樹脂フィルム又は積層体を一定の長さに裁断してシート状で保存する方法や、これを更に巻き取ってロール状で保存する方法が挙げられる。保存性、生産性及び作業性の観点から、積層体において、硬化性樹脂フィルムを更に保護フィルムで被覆して保護した状態とし、これをロール状に巻き取って保管することが好ましい。この場合、保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、離型紙が挙げられる。保護フィルムには、マット処理、エンボス加工、離型処理が施されていてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
ポリアミドイミド樹脂
(実施例1)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物である2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)45mmolと、トリカルボン酸一無水物である無水トリメリット酸94.5mmolと、非プロトン性極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)133.3gとを投入し、反応液を調製した。反応液を昇温させて80℃にて30分間撹拌した。
【0070】
撹拌後、反応液に、水と共沸可能な芳香族炭化水素であるトルエン100mLを加え、反応液を昇温させて160℃にて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、反応液を180℃まで昇温させて反応溶液中のトルエンを除去した。このようにして得られた反応液中には、上記反応により生成した、下記一般式(2)で表される、フェノール性水酸基を有しないイミドジカルボン酸が含まれる。
【0071】
【化3】

【0072】
上記イミドジカルボン酸を含む反応液を室温(25℃)まで冷却した後、フェノール性水酸基を有するジカルボン酸である5−ヒドロキシイソフタル酸30mmolを反応液に加え、溶解させた。次いで、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート82.5mmolを反応液に加え、反応液を昇温させて160℃にて2時間反応させた。このようにして、下記一般式(1a)で表される構成単位及び下記一般式(2a)で表される構成単位を含むポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0073】
【化4】

【0074】
【化5】

【0075】
上記式(2a)において、Rは下記一般式(2b)で表される2価の有機基を示す。
【化6】

【0076】
実施例1で用いた各化合物の配合量は、以下に示すとおりである。
化合物 配合量
BAPP 45mmol
無水トリメリット酸 94.5mmol
NMP 133.3g
5−ヒドロキシイソフタル酸 30mmol
4,4´−ジフェニルメタン
ジイソシアネート 82.5mmol
【0077】
(実施例2)
各化合物の配合量を以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。
化合物 配合量
BAPP 54mmol
無水トリメリット酸 113.4mmol
NMP 140.9g
5−ヒドロキシイソフタル酸 23.1mmol
4,4´−ジフェニルメタン
ジイソシアネート 84.9mmol
【0078】
(実施例3)
各化合物の配合量を以下のようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。
化合物 配合量
BAPP 57mmol
無水トリメリット酸 119.7mmol
NMP 139.3g
5−ヒドロキシイソフタル酸 14.3mmol
4,4´−ジフェニルメタン
ジイソシアネート 78.4mmol
【0079】
(実施例4)
実施例3において、5−ヒドロキシイソフタル酸を反応液に加える際に、フェノール性水酸基を有するカルボン酸である2,4−ジヒドロキシ安息香酸1.4mmolをも反応液に加え、溶解させた。また、以下に示すように、NMPの配合量を140.9gとした。上記以外は、実施例3と同様にして、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。
化合物 配合量
BAPP 57mmol
無水トリメリット酸 119.7mmol
NMP 140.9g
5−ヒドロキシイソフタル酸 14.3mmol
2,4−ジヒドロキシ安息香酸 1.4mmol
4,4´−ジフェニルメタン
ジイソシアネート 78.4mmol
【0080】
(実施例5)
実施例4において、フェノール性水酸基を有するカルボン酸として、2,4−ジヒドロキシ安息香酸の代わりに4−ジヒドロキシ安息香酸を用いた。また、以下に示すように、NMPの配合量を139.7gとした。上記以外は、実施例4と同様にして、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。
化合物 配合量
BAPP 57mmol
無水トリメリット酸 119.7mmol
NMP 139.7g
5−ヒドロキシイソフタル酸 14.3mmol
4−ジヒドロキシ安息香酸 1.4mmol
4,4´−ジフェニルメタン
ジイソシアネート 78.4mmol
【0081】
(比較例1)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物であるビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)171mmolと、シロキサンジアミンであるX−22−161−B(信越化学工業(株)製商品名、アミン当量1500)9mmolと、無水トリメリット酸378mmolと、NMP424.7gとを投入し、反応液を調製した。反応液を昇温させて80℃にて30分間撹拌した。
【0082】
撹拌後、反応液にトルエン200mLを加え、反応液を昇温させて160℃にて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、反応液を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
【0083】
反応液を室温まで冷却した後、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート198mmolを反応液に加え、反応液を昇温させて150℃にて2時間反応させた。このようにして、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0084】
比較例1で用いた各化合物の配合量は、以下に示すとおりである。
化合物 配合量
ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル) 171mmol
X−22−161−B 9mmol
無水トリメリット酸 378mmol
NMP 424.7g
4,4´−ジフェニルメタン
ジイソシアネート 198mmol
【0085】
分子量の測定
実施例1〜5及び比較例1で得られたポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)を測定した。測定カラムとしては、GL−S300MDT−5(日立化成工業(株)製)を2本直列させたものを用いた。溶離液としては、液体クロマトグラフィー用ジメチルホルムアミド1Lに、リチウムブロマイド一水和物0.03mol及びリン酸0.06molを加えて溶解させた後、液体クロマトグラフィー用テトラヒドロフラン1Lを加えたものを用いた。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
硬化性樹脂組成物
(実施例6)
実施例1で得たポリアミドイミド樹脂のNMP溶液30gに、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂「NC−3000H」(日本化薬(株)製、商品名)1.58gと、硬化促進剤である「2PZ−CNS」(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、四国化成工業(株)製、商品名)0.016gとを加え、さらにN,N−ジメチルアセトアミドを加えることにより溶液を適当な粘度に希釈した。このようにして硬化性樹脂組成物を得た。実施例6で用いたエポキシ樹脂及び硬化促進剤の配合量は、以下に示すとおりである。
配合量
エポキシ樹脂 1.58g
硬化促進剤 0.016g
【0088】
(実施例7)
実施例2で得たポリアミドイミド樹脂のNMP溶液30gを用いて、エポキシ樹脂及び硬化促進剤の配合量を以下のようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。
配合量
エポキシ樹脂 1.22g
硬化促進剤 0.012g
【0089】
(実施例8)
実施例3で得たポリアミドイミド樹脂のNMP溶液30gを用いて、エポキシ樹脂及び硬化促進剤の配合量を以下のようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。
配合量
エポキシ樹脂 0.29g
硬化促進剤 0.003g
【0090】
(実施例9)
実施例4で得たポリアミドイミド樹脂のNMP溶液30gを用いて、エポキシ樹脂及び硬化促進剤の配合量を以下のようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。
配合量
エポキシ樹脂 0.88g
硬化促進剤 0.009g
【0091】
(実施例10)
実施例5で得たポリアミドイミド樹脂のNMP溶液30gを用いて、エポキシ樹脂及び硬化促進剤の配合量を以下のようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。
配合量
エポキシ樹脂 0.83g
硬化促進剤 0.008g
【0092】
(比較例2)
比較例1で得たポリアミドイミド樹脂のNMP溶液30gを用いて、エポキシ樹脂及び硬化促進剤の配合量を以下のようにしたこと以外は、実施例6と同様にして、硬化性樹脂組成物を得た。
配合量
エポキシ樹脂 1.58g
硬化促進剤 0.016g
【0093】
硬化性樹脂フィルム
実施例6〜10及び比較例2で得た液状の硬化性樹脂組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に均一に塗布し、130℃にて15分間乾燥させることにより、PET上にフィルムを形成した。PETからフィルムを剥がして、硬化性樹脂フィルムを得た。
【0094】
DSC(示差走査熱量測定)
実施例6〜10及び比較例2で得た硬化性樹脂組成物から作製した硬化性樹脂フィルム5mgについて、示差走査熱量測定を行った。測定装置としては、「PYRIS1 DSC」(パーキンエルマ社製)を用いた。温度範囲50〜350℃、昇温速度10℃/分の条件にて発熱量及び発熱温度を測定した。最大発熱量及びそのときの温度を表2に示す。
【0095】
動的粘弾性の測定
上記硬化性樹脂フィルムを200℃にて1時間加熱して得た樹脂フィルムについて、動的粘弾性の測定を行った。測定装置としては、広域動的粘弾性測定装置「E−4000」(UBM(株)製)を用いた。以下に示す条件にて測定を行い、tanδの最大値(Tg)を求めた。得られた結果を表2に示す。
条件
自動静荷重
引張り法
温度範囲 : 50〜350℃
昇温速度 : 5℃/分
チャック間距離 : 20mm
周波数 : 10Hz
振幅 : 5μm
【0096】
【表2】

【0097】
表2から明らかなように、実施例6〜10から得られた硬化性樹脂フィルムは、182〜208℃という低温において、明瞭な発熱ピークを示した。すなわち、これらの硬化性樹脂フィルムは、低温でも効率よく硬化することができることが確認された。また、実施例6〜10から得られた硬化性樹脂フィルムは、十分に高いTgを示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、プリント配線基板における接着層、絶縁層、保護層等として、電子材料用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】


[式中、Rはフェノール性水酸基を有する2価の有機基を示す。]
で表される構成単位を含む、ポリアミドイミド樹脂。
【請求項2】
フェノール性水酸基を有するジカルボン酸と、ジカルボン酸、トリカルボン酸一無水物及びテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性水酸基を有しない化合物とを含み、イミド基を有する化合物及び/又は酸無水物基を有する化合物が含まれるように選ばれるカルボニル化合物を、
ジイソシアネートと反応させて得られる、請求項1記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項3】
前記カルボニル化合物を、当該カルボニル化合物に含まれる酸無水物基及びカルボキシル基の総量に対して0.7〜1.3当量のジイソシアネートと反応させて得られる、請求項2記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項4】
前記フェノール性水酸基を有するジカルボン酸が、フェノール性水酸基を有するアミノ酸と、トリカルボン酸一無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との反応により得られるイミドジカルボン酸を含む、請求項2又は3記載のポリアミドイミド樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミドイミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−114431(P2009−114431A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254445(P2008−254445)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】