説明

ポリアミド層状シリケート組成物

【課題】350℃以下での短期間温度安定性を有し、架橋性のような不利な特性の損失を起こさず、化合中に毒性、悪臭性、又は自己発火性のガスを蒸発させることなく、溶融状態の高融点の熱可塑性処理可能なポリマーと混合してナノ複合材料成形化合物を得ることができるクレー材料を提供する。
【解決手段】少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドで処理されている少なくとも1種類の層状シリケートを含み、全クレー材料に対する層状シリケートの割合が30重量%より多く60重量%以下であることを特徴とするクレー材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未処理のクレー鉱物及び水溶性ポリアミドを含み、クレー鉱物の濃度が30重量%より多いポリアミド層状シリケート組成物に関する。更に、本発明は、水不溶性熱可塑性マトリクス中に均一に分布しているクレー鉱物を含むナノ複合材料に関する。これらのナノ複合材料は、ポリアミド層状シリケート組成物及び溶融状態の水不溶性熱可塑性材料を混合することによって製造される。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリアミドは最新技術から公知である。而して、US−5,324,812においては、2種類のカルボン酸、低分子及び高分子ポリオキシアルキレンジアミンをベースとする水溶性ポリアミドが記載されている。カルボン酸混合物は、5〜12個の炭素原子を有するジカルボン酸、及び20〜36個の炭素原子を有するジカルボン酸を含む。低分子エーテルジアミンとしてトリエチレングリコールジアミン又はテトラエチレングリコールジアミンが用いられる。高分子ポリオキシアルキレンジアミンは、エチレンオキシド基を好ましくはポリオキシプロピレン単位と組み合わせて絶対に含んでいなければならない。
【0003】
水溶性ポリマーによるクレーの膨潤もまた公知である。EP−0747323においては、製造方法に関係なく液体キャリアの存在下で層状シリケート及び層間挿入ポリマーから製造される層間化合物及び剥離化合物が記載されている。層間挿入ポリマーとしては、好ましくは例えばPVP及びPVAのような水溶性ポリマーが用いられ、水が実質的に液体キャリアとして用いられる。しかしながら、更に、例えばポリアミド又はポリエーテルのような水溶性ポリマーも層間挿入ポリマーとして記載されている。しかしながら、PVA及びPVPは熱的に安定でなく、150又は200℃より高い温度で早くも分解が始まり、大きく脱色及び架橋した生成物が導かれ、水溶性が大きく失われる。
【0004】
US−2006/0052505は、水溶性ポリアミド及び層状シリケート(クレー鉱物)の組成物に関する。これらの組成物の水中の溶液を注型プロセスにおいて用いて、ホイル及びプレートが製造される。得られる平坦な成形物品は、特に化学物質用の包装用に推奨されている。クレー鉱物を用いて、水溶性ポリアミドの溶液粘度を制御し、注型プロセスにおけるポリアミドのモル質量又は濃度の変動を補償している。示された目的である水溶性包装ホイルの製造のために、記載されている組成物は主としてポリアミドを含み、粘度制御クレー鉱物は0.5乃至多くても30重量%以下の明らかに少ない量で存在する。
【0005】
EP−1312582においては、クレー、並びにクレー、ポリエーテルブロックコポリアミド、及びマトリクスとして機能する熱可塑性ポリマーの組み合わせによって製造されるポリエーテルブロックコポリアミドを層間挿入したナノ複合材料が記載されている。ポリエーテルブロックコポリアミドを層状シリケートに層間挿入し、これらの2つの成分をマトリクスポリマーと混合することは、常に溶融混合、特に押出を用いて行う。これらの3つの成分全ての1段階押出、即ち前もってクレーの層間挿入を行わないことが好ましい。この方法は揮発性の溶媒を用いないので、コスト及び時間がかかる乾燥を排除することができる。しかしながら、高粘稠性のポリマーメルトとクレーとを押出プロセス中の短時間(0.5〜2分間)しか接触させないこの方法は、クレーがポリマー中に均一に分布されず、このためクレーの凝集物がマトリクス中に無視できない濃度で存在するという大きな欠点を有する。
【0006】
US−5853886においては、架橋ナノ複合材料を製造するための層間挿入重合性試薬を有する層状シリケートが記載されており、この層状シリケートは重合性試薬を層間挿入する前にカチオン交換を用いてH形態に転化される。層間挿入重合性試薬は、少なくとも1つの塩基性基を有する低分子か又は大きくてもオリゴマーの化合物に関する。層間挿入中に、塩基性基はH層状シリケートによってプロトン化される。かくして処理された層状シリケートを架橋性試薬と反応しないか又は僅かしか反応しない熱可塑性物質と化合させると、これらの低分子試薬は熱可塑性マトリクス中に残留する。高い処理温度が必要な場合には、一般に、高度に反応性で毒性の試薬が放出され、器具上に付着物を形成し、成形化合物の品質を損なう望ましくない副反応を引き起こす。このような低分子の重合性試薬を含む成形化合物は、不十分な耐熱性を有する。この理由のために、このタイプの層間挿入層状シリケートは、低分子の官能性試薬が反応することができ、したがって3次元ポリマーの一部になることができる架橋ポリマー系に関してのみ好適である。
【0007】
更に、有機クレーを含む成形化合物(ナノ複合材料)は、射出成形プロセス中に崩壊性の付着物を形成する。長時間の保存期間の後においても、最終成形物品は第4級アンモニウム化合物の所謂ホフマン分解から生成するアミン臭を未だ有している。
【0008】
第4級アンモニウムイオンで全て処理した現在市販されているナノクレーは、全て上記に記載のホフマン分解による欠点を示す。最新技術から現在までに知られており、水溶性ポリマーであるPVA又はPVPをベースとするポリマー層状シリケート組成物も、不十分な耐温度性を示す。PVPの熱分解は150℃から早くも始まり、一方、PVAは200℃より高い温度でポリエンに分解する。分解に付随して元の特性が損なわれる。而して、架橋又は変化した極性のために、分解生成物はもはや水溶性でなく、大きく脱色されている。
【0009】
ナノクレーと強化するポリアミドとの混合は、ポリアミドの高い融点のために一般に200℃又は更に300℃を大きく超える温度で行わなければならないので、PVP又はPVPを層間挿入した有機クレー又はクレー鉱物に対する熱的な損傷、例えばそれを用いるナノ複合材料成形化合物における品質低下が避けられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、350℃以下での短期間温度安定性を有し、したがって、例えば色、架橋性のような不利な特性の損失を起こさずに、及び化合中に毒性、悪臭性、又は自己発火性のガスを蒸発させることなく、溶融状態の高融点の熱可塑性処理可能なポリマーと混合してナノ複合材料成形化合物を得ることができる、可能な限り高い層状シリケート濃度を有するポリアミドで処理した利用できるクレー材料(ポリアミド層状シリケート組成物又はクレー材料)を製造することである。層状シリケートは本発明によるナノ複合材料中に完全に均一に分布して存在するように意図されていて、これにより実際には熱可塑性マトリクス(特にポリアミドマトリクス)中に層状シリケートの凝集物は存在せず、ナノ複合材料をベースとする成形物品は高い靱性を有する。更に、層状シリケートは複雑な予備処理を行わずに、特に先行するカチオン交換を行わずに用いることができるように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、クレー材料に関する請求項1の特徴、クレー材料の製造方法に関する請求項8の特徴、及び熱可塑性成形化合物又はより正確にはポリアミド層状シリケート濃縮物に関する請求項11の特徴によって達成される。請求項14及び15では、熱可塑性成形化合物から製造することができる成形物品、並びにかかる成形物品の使用目的が示されている。それぞれの従属項は、それによって有利な展開を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、窒素中において20K/分の速度で500℃に加熱する間に種々のクレー材料が受けた重量損失を示すグラフ(TGA:熱重量分析)である。
【図2】図2は、200及び220℃での実施例7及びVB6の加熱保存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドで処理されている少なくとも1種類の層状シリケートを含み、全クレー材料に対する層状シリケートの割合が少なくとも30重量%であるクレー材料が入手可能になる。好ましくは、本発明によって未反応の層状シリケートを用いる。特に、本発明によれば、先行するカチオン交換が排除されるので、H層状シリケートは用いられない。
【0014】
本発明によれば、純水中に可溶性、即ち水中に溶媒和する分子レベルで存在するポリアミドを「水溶性」と呼ぶ。特に、少なくとも10g、好ましくは少なくとも50g、特に好ましくは少なくとも100gのポリアミドが、23℃において1,000gの水中に完全に可溶性、即ち沈殿物を形成しない場合に水溶性が存在する。
【0015】
驚くべきことに、水溶性ポリアミドで処理したモンモリロナイトが、アンモニウム化合物を含む商業的に入手できる系、所謂有機クレーよりも非常に高い温度安定性を有することが見出された。したがって、第4級アンモニウム化合物の所謂ホフマン分解によって処理中に起こる問題はより少ない。これには、加熱押出機部品の上での得られる分解生成物の悪臭及び自己発火の危険性が含まれる。
【0016】
本発明による水溶性ポリアミドで処理された層状シリケート及びナノ複合材料は、更に、市販の有機クレーよりも非常に明るい色を示す。
本発明によるポリアミド層状シリケート濃縮物は、350℃以下で、非常に改良された温度安定性を示し、一方、市販のナノクレーの場合においては、分解は200℃から早くも始まる。
【0017】
好ましい態様においては、少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドは、水溶性ポリエーテルポリアミド、好ましくは
(a)6〜36個の炭素原子を有する少なくとも1種類の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジカルボン酸;及び
(b)2〜36個の炭素原子を有する少なくとも1種類の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジアミン;及び/又は
(c)ジエチレングリコールジアミン、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン、4,7,10,13−テトラオキサ−1,16−ヘキサデカンジアミンを含む群から選択される少なくとも1種類のジアミン;及び/又は
(d)少なくとも1種類のポリアルキレングリコールジアミン、特にポリエチレングリコールジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン、ポリテトラエチレンジアミン;及び/又は
(e)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸、好ましくは5〜12個の炭素原子を有するω−アミノカルボン酸;
を重縮合することによって製造することができるポリエーテルアミドを含む群から選択される。
【0018】
本発明によれば、(d)で特定される「ポリマー」として記載される化合物によって、5〜25個の繰り返し単位を有する化合物、即ち例えばペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−等のアルキレングリコールジアミンが理解される。
【0019】
水溶性ポリアミドは、特に、1.3〜3.0の範囲、好ましくは1.4〜2.0の範囲、特に1.5〜1.9の範囲の相対溶液粘度(ηrel)を有する冷水に可溶性のポリアミドに関する。水溶性ポリアミドとしては、好ましくは特に統計的構造を有するポリエーテルアミドが用いられる。アミド結合の間に配置されているエーテル基は、好ましくはオキシエチレン単位に関する。
【0020】
好ましいポリエーテルアミドは、以下の成分:
(a)6〜36個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、及び芳香族ジカルボン酸;
(b)脂肪族、脂環式、又は芳香族ジアミン;
(c)ジエチレングリコールジアミン、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン;
(d)ポリオキシアルキレンジアミン、場合によってはポリオキシプロピレン及び/又はポリオキシテトラメチレン単位(ここではポリオキシエチレン単位が優位を占める);
(e)ラクタム又は5〜12個の炭素原子を有するアミノカルボン酸;
から構成される。
【0021】
モル比:
a:(b+c+d)=0.8〜1.2
b≠0の場合には、b:(c+d)<0.1〜0.5
本発明によれば、少なくとも1種類の水溶性ポリアミドが、
(a)6〜36個の炭素原子、好ましくは6〜24個の炭素原子、特に好ましくは6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1種類の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジカルボン酸、特にアジピン酸;及び
(b)ジエチレングリコールジアミン、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、トリオキサトリデカンジアミン、テトラオキサヘキサデカンジアミンを含む群から選択される少なくとも1種類のジアミン、又は少なくとも1種類のポリアルキレングリコールジアミン、特にポリエチレングリコールジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン、ポリテトラエチレンジアミン、好ましくはトリオキサトリデカンジアミン;
を含む重縮合物であると有利である。
【0022】
ここでは特にアジピン酸及びトリオキサトリデカンジアミンを含む重縮合物を用いる。
モル質量、相対粘度、或いは流動性又はMVRを制御するために、水溶性ポリアミド、コポリアミド、又はブロックコポリアミドの製造中に、モノカルボン酸又はモノアミンの形態の調整剤をバッチに加えることができる。調整剤として好適な脂肪族、脂環式、又は芳香族モノカルボン酸又はモノアミンは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3−(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2−フェニルエチルアミン、ポリアルキレングリコールモノアミン、トリオキサトリデカンアミンである。調整剤は個々か又は組み合わせて用いることができる。また、アミノ基又は酸基と反応することのできる他の単官能性化合物、例えば無水物、イソシアネート、酸ハロゲン化物、又はエステルを調整剤として用いることもできる。調整剤の通常の使用量はポリマー1kgあたり10〜200ミリモルである。モル質量は、これに代えて又は更に、二酸及びジアミンの上記に示したモル比(a:(b+c+d)=0.8〜1.2)によって調整することができる。
【0023】
更なる有利な態様においては、少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドの相対溶液粘度ηrelは、1.3〜3.0、好ましくは1.4〜2.0、特に1.5〜1.9である。
【0024】
水溶性ポリアミドは、本発明によるクレー材料と熱可塑性材料との化合中にそれらの構造及びモル質量をそれ以上変化させない重合完了又は縮合完了した巨大分子化合物である。したがって、本発明によれば、低分子形態の重合性、重縮合性、又は架橋性の試薬は関係しない。
【0025】
本発明による水溶性ポリアミドは、少なくとも5,000g/モル、好ましくは少なくとも8,000g/モル、特に好ましくは少なくとも10,000g/モルの数平均分子量を有する。水溶性ポリアミドは、5,000〜50,000g/モルの範囲、好ましくは8,000〜30,000g/モルの範囲、特に好ましくは10,000〜25,000g/モルの範囲の数平均分子量を有する。
【0026】
更なる有利性は、全クレー材料に対する層状シリケートの割合が30より多く60重量%以下、好ましくは34〜55重量%、特に好ましくは38〜52重量%である場合に得られる。
【0027】
またに、全クレー材料に対する少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドの割合が40〜70重量%、好ましくは45〜66重量%、特に好ましくは48〜62重量%であると有利である。
【0028】
本発明によれば、好ましく用いられる層状シリケートは、バーミキュライト、タルカム(talcum)、及び/又はスメクタイト、特にナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、アルミニウムモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ソボカイト、スチーブンサイト、スビンフォルダイト、及び/又はカオリナイトを含む群から選択される。
【0029】
本発明による意味においては、好ましくは、層状シリケートによって1:1並びに2:1の層状シリケートが理解される。これらの系においては、SiO四面体を含む層とM(O,OH)八面体を含む層とが互いに規則正しく架橋している。上式において、MはAl、Mg、Feのような金属イオンを表す。1:1の層状シリケートの場合においては、1つの四面体及び1つの八面体の層がそれぞれ互いに結合している。これらの例はカオリン及び蛇紋石鉱物である。
【0030】
2:1の三層シリケートの場合においては、2つの四面体層がそれぞれ1つの八面体層と結合している。全ての八面体位がSiO四面体及び水酸化物イオンの陰電荷を補償するために必要な電荷のカチオンで占められていない場合に、荷電層が形成される。この陰電荷は、カリウム、ナトリウム、又はリチウムのような一価カチオン、或いはカルシウムのような二価カチオンを層間の空間に導入することによって補償される。2:1の層状シリケートの例は、タルカム、バーミキュライト、及びスメクタイトであり、とりわけモンモリロナイト及びヘクトライトが属するスメクタイトはそれらの層荷電のために水で容易に膨潤させることができる。更に、カチオンは交換プロセス又はコンプレックス形成のために容易に利用できる。
【0031】
膨潤前の層状シリケートの層厚は、通常は、0.5nm〜2.0nm、非常に特に好ましくは0.8nm〜1.5nm(次の層の上端に対する層の上端の距離)である。本発明によれば、層間距離を更に増加させて、層状シリケートを、例えば水溶性ポリアミドによって、例えば20℃〜100℃の温度において、一般に0.1〜24時間、好ましくは0.1〜10時間の滞留時間、変性(膨潤)することができる。滞留時間の長さ及び選択する水溶性ポリアミドのタイプによって、層間距離は、1nm〜15nm、好ましくは1nm〜5nm更に増加する。プレートの長さは、通常は800nm以下、好ましくは400nm以下である。
【0032】
膨潤性の層状シリケートは、それらのイオン交換容量CEC(meq/g)及びそれらの層間距離dによって特徴づけられる。CECに関する通常の値は0.7〜0.8meq/gである。乾燥未処理モンモリロナイトの場合の層間距離は1nmであり、水で膨潤させ、水溶性ポリアミドを施すことによって5nm以下の値に増加する。
【0033】
本発明方法によれば、また、
(a)少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドの水溶液を、
(b)少なくとも1種類の層状シリケートの水性分散液と混合し、
反応時間(滞留時間)の後に水を除去する;
上記で言及したクレー材料の製造が示される。滞留時間は0.5〜24時間、好ましくは0.5〜12時間、特に好ましくは0.5〜3時間である。
【0034】
本発明方法の好ましい態様によれば、少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドを、0.2〜45重量%、好ましくは1.0〜20重量%、特に好ましくは2.0〜10重量%の溶液の質量濃度で用いることが提供される。
【0035】
また、分散液中の少なくとも1種類の層状シリケートの質量濃度が0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%、特に好ましくは1.5〜5重量%であると好ましい。
更に、本発明によれば、成形化合物の水不溶性熱可塑性マトリクス相中に分散している上記で言及した本発明のクレー材料を含む熱可塑性成形化合物を得ることができる。
【0036】
本発明によれば、成形化合物に対するクレー材料の重量割合は、1〜50重量%、好ましくは4〜33重量%、特に好ましくは5〜20重量%であることが好ましい。
また、成形化合物に対するマトリクス相の重量割合が50〜99重量%、好ましくは67〜96重量%、特に好ましくは80〜95重量%であると有利である。
【0037】
好ましい組成範囲は、例えば、
(a)(a1)40〜70重量%(好ましくは45〜66重量%、特に48〜62重量%)の水溶性ポリアミド;及び
(a2)30〜60重量%(好ましくは34〜55重量%、特に38〜52重量%)の未処理層状シリケート;
を含むポリアミド層状シリケート濃縮物1〜50重量%(好ましくは4〜33重量%、特に5〜20重量%);
(b)熱可塑性材料50〜99重量%(好ましくは67〜96重量%、特に80〜95重量%);
である。
【0038】
一例として、成形化合物のマトリクス相として用いることのできる熱可塑性材料を以下に列記する:ポリアリーレンスルフィド、ポリラクトン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、及び/又はこれらの混合物。
【0039】
例えば、ポリラクトン、例えばポリ(ピバロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)等;例えば1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンなどのようなジイソシアネートの反応によって製造されるポリウレタン;及び、例えばポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(2,3−ブチレンスクシネート)、ポリエーテルジオールなどのような線状長鎖ジオール;例えばポリ(メタン−ビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−エーテル−ビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(ジフェニルメタン−ビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−シクロヘキサン−ビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)カーボネートなどのようなポリカーボネート;ポリスルホン;例えばポリ(4−アミノ酪酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(p−キシリレンセバカミド)、ポリ(2,2,2−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)などのようなポリアミド;例えばポリ(エチレンアゼレート)、ポリ(エチレン−1,5−ナフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)、ポリ(p−ヒドロキシベンゾエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのようなポリエステル;例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)などのようなポリ(アリーレンオキシド);例えばポリ(フェニレンスルフィド)などのようなポリ(アリーレンスルフィド);ポリエーテルイミド;例えばポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどのようなビニルポリマー及びそれらのコポリマー;例えばポリエチルアクリレート、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、メチルメタクリレートスチレンコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、メタクリル化ブタジエンスチレンコポリマーなどのようなポリアクリレート及びそれらのコポリマー;イオノマー;例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどのようなポリオールと、例えば2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどのような1種類のポリイソシアネートとの重合生成物のようなポリ(ウレタン);及び、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのナトリウム塩と4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとの反応生成物のようなポリスルホン;例えばポリ(フラン)のようなフラン樹脂;例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチラート、セルロースプロピオネートなどのようなセルロースエステル可塑性材料;例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン−co−フェニルメチルシロキサン)などのようなシリコーン;ポリエーテル、ポリイミド;ポリハロゲン化ビニリデン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリテトラフルオロエチレン;ポリアセタール;ポリスルホネート;ポリエステルイオノマー;ポリオレフィンイオノマー;のような熱可塑性ポリマーを用いることができ;これらの上記で言及したポリマーのコポリマー及び混合物もまた用いることができる。
【0040】
本発明において用いることのできるポリアミドは、ポリマー鎖の必須部分として少なくとも2つの炭素原子によって互いに離隔されている繰り返しカルボンアミド基が存在することを特徴とする合成線状ポリカルボンアミドであってよい。このタイプのポリアミドは、ジアミン及び二塩基酸によって得られる、一般式:
−NHCORCOHNR
(式中、Rは、少なくとも2個、好ましくは2〜11個の炭素原子を含むアルキレン基、又は少なくとも6個の炭素原子、好ましくは6〜17個の炭素原子を含むアリーレンであり;Rは、R及びアリール基から選択される)
によって表される、ナイロンとして最新技術において一般的に知られているポリマーを含む。また、公知の方法、例えばヘキサメチレンジアミン並びにテレフタル酸及びアジピン酸を含む二塩基酸の混合物の縮合によって得られるコポリアミド及びターポリアミドを含ませることができる。上記に記載のポリアミドは最新技術において公知であり、例えば30%のヘキサメチレンジアンモニウムイソフタレート及び70%のヘキサメチレンジアンモニウムアジペートのコポリアミド、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン6,10)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンピメラミド)(ナイロン7,7)、ポリ(オクタメチレンスベラミド)(ナイロン8,8)、ポリ(ノナメチレンアゼラミド)(ナイロン9,9)、ポリ(デカメチレンアゼラミド)(ナイロン10,9)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン10,10)、ポリ(ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン−1,10−デカンカルボキサミド))、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(p−キシリレンセバカミド)、ポリ(2,2,2−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ピペラジンセバカミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)などを含む。
【0041】
更なる好適なポリアミドは、アミノ酸及び例えばラクタムのようなその誘導体の重合によって形成されるポリアミドであってよい。これらの好適なポリアミドの例は、ポリ(4−アミノ酪酸)(ナイロン4)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)(ナイロン6)、ポリ(7−アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8−アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9−アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10−アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11−アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(12−アミノドデカン酸)(ナイロン12)などである。
【0042】
本発明の実施において用いるのに好ましいポリアミドは、それらの幅広い用途のために、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(12−アミノドデカン酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、及びポリ(6−アミノヘキサン酸)、並びにこれらのコポリマー及び/又は混合物である。
【0043】
ポリアミドの場合においては、アモルファス及び部分的に結晶質のタイプの脂肪族、脂環式、及び部分的に芳香族のポリアミドが好ましい。特に好ましいポリアミドは、PA6、66、69、610、612、614、46、MXD6−21、MXDI、MXDT、12、11、1010、1012、1014、1212、4I、5I、6I、8I、9I、10I、12I、4T、5T、6T、8T、9T,10T、12T、6−12CHDS、MACM9−18、PACM9−18、並びにこれらのコポリマー及び混合物、好ましくはPA46、6、66、11、12、MXD6、MXD10、MXD12、MXDI、MXD6/MXDI、6T/6I、6T/66、6T/10T、9T、及び10Tである。また、上記で言及した成分のブレンド又はポリマーアロイも可能である。
【0044】
クレー材料の有利な特性は、マトリクスポリマーとの化合(ナノ複合材料の製造)を200℃より高く、特に240℃より高い温度で行う場合に特に有利である。例えばPA11、PA12、PA1010、又はPA6をベースとするような低融点のマトリクスを用いるナノ複合材料は、その製造及び処理を220〜280℃の範囲の温度で行うので、本発明によるクレー材料の高い耐温度性の利益を享受する。
【0045】
新規なポリアミド層状シリケート濃縮物は、例えばPA46、46/4T、46/6T、46/66/6T、4T/4I/46、4T/6T、4T/6T/66、MXD6、PA66、PA6T/66、PA6T/6I、PA6T/6I/66、PA6T/10T、PA9T、PA10T、PA12T、PA11/10T、PA12/10T、PA10T/1010のような240℃より高い融点を有する高融点ポリアミドをベースとするナノ複合材料の製造のために好ましく用いられる。
【0046】
本発明方法において適用することのできる更なるポリマーは線状ポリエステルである。ポリエステルのタイプは重要ではなく、特定の状況において用いるために選択される特定のポリエステルは、実質的に所望の物理特性及び性質、例えば引裂強さ、弾性率などによって定まる。これらの物理特性が大きく変動する結晶質及びアモルファスのポリエステルなどの多数の線状熱可塑性ポリエステルが、本発明において用いるのに好適である可能性がある。
【0047】
用いるように選択される特定のポリエステルは、ホモポリエステル又はコポリエステル、或いは所望の場合にはこれらの混合物であってよい。ポリエステルは、通常は、有機ジカルボン酸と有機ジオールとの縮合によって形成され、この理由のために、好適なポリエステルの代表例をこれらのジオール及びジカルボン酸前駆体を参照して更に記載する。
【0048】
本発明において用いるのに好適である可能性のあるポリエステルは、芳香族、脂環式、及び脂肪族ジオールと、脂肪族、芳香族、及び脂環式ジカルボン酸との縮合によって誘導され、脂環式、脂肪族、又は芳香族ポリエステルであってよい。本発明の実施において用いることができる好適な脂環式、脂肪族、及び芳香族ポリエステルの例は、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレン)、ポリ(エチレンドデケート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(エチレン(2,7−ナフタレート))、ポリ(メタフェニレンイソフタレート)、ポリ(グリコール酸)ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(デカメチレンアゼレート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(デカメチレンアジペート)、ポリ(デカメチレンセバケート)、ポリ(ジメチルプロピオラクトン)、ポリ(パラヒドロキシベンゾエート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(テトラメチレンテレフタレート)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)、ポリ(デカメチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(trans)、ポリ(エチレン−1,5−ナフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、及びポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)である。ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮合によって製造されるポリエステル成分が本発明において用いるのに好ましい。
【0049】
かかる好適な芳香族カルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸及びo−フタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−5−カルボキシ−3−(p−カルボキシフェニル)イダン、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ビス−p−(カルボキシフェニル)メタンなどである。上記で言及した芳香族ジカルボン酸の中で、ベンゼン環をベースとするもの(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸)が、本発明の実施において用いるのに好ましい。これらの酸前駆体の中では、溶融プロセス中により分解を受けにくく、より寸法的に安定なポリエステルを導くので、テレフタル酸が酸前駆体として特に好ましい。
【0050】
本発明の実施において用いるのに好ましいポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、及びポリ(エチレンナフタレート)、並びにこれらのコポリマー及び混合物である。これらの選択されたポリエステルの中では、その優れた機械的強度及び生産可能性の理由で、ポリ(エチレンテレフタレート)が特に好ましい。
【0051】
また、通常の添加剤及び/又は耐衝撃性改良剤を成形化合物に含ませることが可能且つ有利であり、これは成形化合物に対して好ましくは0.3〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の重量割合で含ませる。
【0052】
成形化合物には、充填剤として、ナノ複合材料(成分(a)及び(b)を含む)100重量部あたり5〜60重量%の量、特に5〜50重量%の量の繊維状又は粒子状充填材料を含ませることができる。好適な繊維状充填剤の例は、ガラス繊維、特にE−ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー、又はアラミド繊維である。ガラス繊維を用いる場合には、マトリクス材料とのより良好な適合性のためにサイジング剤及び接着剤を加えることができる。用いられる円形の横断面を有する炭素繊維及びガラス繊維は、一般に、5〜20μmの範囲の直径を有する。非円形であり、長円形、楕円形、繭状、長方形、又はほぼ長方形の横断面を有する平坦なガラス繊維は、2〜10、特に3〜5の横断面軸の比を有する。円形又は平坦なガラス繊維の導入は、ガラス短繊維の形態、及び無限ストランド(ロービング)の形態のいずれでも行うことができる。
【0053】
好適な粒子状充填剤の例は、タルカム、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、アモルファスケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、石灰、長石、硫酸バリウム、ガラスボールである。
【0054】
本発明による成形化合物には、更なる補助剤を更に含ませることができる。かかる補助剤としては、例えば加工助剤、安定剤及び酸化遅延剤、熱分解及び紫外光による分解に対する薬剤、滑剤及び離型剤、炎保護手段、着色剤、顔料、及び可塑剤を言及することができる。
【0055】
本発明によれば、また、上記に記載の成形化合物から製造することのできる成形物品が提供される。かかる成形物品の使用目的は、例えばパイプ、建材、ガス輸送用の輪郭体、圧縮空気パイプ、ホイル、包装目的のための容器、工業用品及び消費者製品用のハウジング又は携帯電話のハウジングとしての使用である。
【実施例】
【0056】
以下の実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。本発明は実施例において示されるパラメーターに限定されない。
実施例及び比較例においては、以下に言及する材料を用いた。
【0057】
PA12:Grilamid L20, EMS-CHEMIE AG, Switzerland
PA6:Grilon F34, EMS-CHEMIE AG, Switzerland
PA66:Radipol A45, Radici, Italy
PA6T/10T:Grivory HT3, EMS-CHEMIE AG, Switzerland
WL−PA:実施例1による4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン及びアジピン酸を含む水溶性ポリアミド
クレー材料A:実施例2aによるポリアミド層状シリケート組成物
クレー材料B:実施例2bによるポリアミド層状シリケート組成物
有機クレー:Cloisite A20, 第4級アンモニウム化合物で処理したモンモリロナイト、Southern Clay Products Inc., USA
ガラス繊維:Vetrotex 995, France
Arburg射出成形ユニット上で試験片を製造した。シリンダー温度は、PA6及びPA12を用いる実施例に関しては240℃〜280℃の範囲であり、PA6T/10Tを用いる実施例に関しては300℃〜320℃であった。成形型温度は、PA6又はPA12を用いる場合は60〜80℃であり、PA6T/10Tを用いる場合は約120℃であった。回転速度は、15m/分のスクリュー周速度が得られるように選択した。
【0058】
以下の標準規格にしたがって、以下の試験片について測定を行った。
引張弾性率、降伏応力、降伏応力中の伸び:
ISO−527、1mm/分の引張速度;
ISO引張試験片、標準規格:ISO/CD−3167、タイプA1、170×20/10×4mm、温度23℃。
【0059】
引裂強さ及び破断伸び:
ISO−527、50mm/分の引張速度;
ISO引張試験片、標準規格:ISO/CD−3167、タイプA1、170×20/10×4mm、温度23℃。
【0060】
融点(T):
ISO標準規格11357−1/−2
粒状物。
【0061】
示差走査熱量測定(DSC)は、20℃/分の加熱速度で行った。
相対粘度:
DIN EN ISO 307、0.5重量%のm−クレゾール溶液中、温度20℃。
【0062】
MVR(メルトボリュームレート):
ISO−1133にしたがって、275℃及び5kgの負荷で行った。
HDT A(1.8MPa):
ISO−75;
ISO衝撃試験片、80×10×4mm。
【0063】
灰分:
灰化によってクレー材料又はナノ複合材料中のクレー鉱物濃度を求めた。この目的のために、粒状物を白金ルツボ中に秤量し、一定重量になるまでマッフルタイプの炉内において550℃で灰化した。
【0064】
TGA:
TA Instrument TGA Q500を用いてTGA曲線を記録した。試料を、白金ルツボ内で、窒素雰囲気中において20K/分の加熱速度で500℃に加熱し、重量損失を記録した。
【0065】
表中において他に注記されていない限り、試験片は乾燥状態で用いた。この目的のために、試験片を、射出成形後に乾燥雰囲気中において室温で少なくとも48時間保存した。
ポリアミド層状シリケート濃縮物の製造は、好ましくは水相によって行う。即ち、第1工程において、水溶性ポリアミドの水溶液を層状シリケート又は水中の層状シリケートの分散液と合わせる。水溶性ポリアミド、層状シリケート、及び水の混合物の水濃度は、2〜98重量%の範囲、好ましくは5〜90重量%の範囲、特に好ましくは10〜80重量%の範囲である。混合及び膨潤段階の後、乾燥によって水を取り除く。この目的のために、上記の溶液/分散液を80〜100℃において蒸発させるか又は噴霧乾燥にかける。しかしながら、オプションとして、実際の乾燥の前に遠心分離を用いて水性混合物/分散液の処理クレーに関する濃縮を行うこともできる。これにより、水だけでなく過剰量の水溶性ポリアミドも除去されるので、この方法によればより高く濃縮された、即ちより低い水溶性ポリアミドの含量を有するクレー材料を得ることができる。
【0066】
クレー材料の他の製造方法は、水を用いないか、又は例えば全クレー材料に対して2〜10重量%のような非常に少量の水しか用いないで、クレー材料を水溶性ポリアミドと化合することによって行う。
【0067】
加えた水は、押出機の脱気区域においてポリアミド層状シリケート組成物から完全か又は部分的に除去されるので、成形化合物の障害のない排出及び粒状化が確保される。
製造に関する実施例:
実施例2A:
溶液1:37.5gの水溶性ポリアミドを、室温において500gの水中に溶解した。
【0068】
溶液2:Ultraturrax及び超音波バーを用いて(10分間の超音波処理)、25gの層状シリケート(Cloisite Na+)を975gの水中に分散させた。
2つの溶液A及びBを合わせて、1時間撹拌し、次に12時間静置した。
【0069】
80℃において乾燥させることによって水を除去した。その後、濃縮液を、粗粉砕によって化合のために計量できる形態に変化させた。
60重量%の水溶性ポリアミド及び40重量%の層状シリケートを含むポリアミド層状シリケート濃縮液が得られた。
【0070】
実施例2B:
クレー材料としてSomasif ME100(CO-OP Chemicals, Japan)を用いて、実施例2Aと同じようにしてクレー材料Bを製造した。
【0071】
ナノ複合材料:
実施例3〜7及び比較例VB3〜VB6:
熱可塑性ポリマーを上記記載のポリアミド層状シリケート濃縮液と溶融混合することによって、本発明のナノ複合材料を得た。これにより、水溶性ポリアミドを用いて処理したクレーがマトリクスポリマー中に均一に分散された。水溶性ポリアミド溶液の非常に良好な膨潤特性、及び水溶性ポリエーテルアミドと多くのマトリクスポリマー、特に他のポリアミドとの優れた適合性のために、クレー粒子の完全な分散が起こり、このため本発明によるナノ複合材料はクレー凝集物を実質的に含まなかった。
【0072】
製造:
水溶性ポリアミド、ポリアミド層状シリケート濃縮液、及び場合によって用いる添加剤を、定回転二軸押出機(WP ZSK 25)のフィード中に計量投入し、表1及び2に示す条件下で押出した。
【0073】
水溶性ポリアミドの製造:
(実施例1):
59.82kgのアジピン酸、90.18kgのトリオキサトリデカンジアミン、及び10kgの水を反応器中に充填し、窒素で不活性にし、245℃に加熱した。この温度に達したら直ぐに圧力低下を開始した。この温度に達した後、反応器を1時間以内に常圧に戻した。次に、ポリマーメルトを撹拌しながら245℃において更に1時間保持し、常圧においてその上に窒素を通すことによって反応水を除去した。5bar窒素で圧縮した後、ノズルプレートを通して反応器の内容物を排出した。流動床上でポリマーストランドを冷却した後、これを粒状化した。
【0074】
形成されたポリエーテルアミドは、1.93の相対溶液粘度、31ミリモル/kgのCOOH末端基濃度、及び38ミリモル/kgのNH末端基濃度を有しており、冷水中に速やかに溶解させることができた。
【0075】
図1は、窒素中において20K/分の速度で500℃に加熱する間に種々のクレー材料が受けた重量損失を示す(TGA:熱重量分析)。有機クレーであるCloisite A20(最新技術のクレー材料):第4級アンモニウム化合物で処理したモンモリロナイトは、200℃から早くも重量損失を受けた。これは、200℃より高い温度においては、分解(ホフマン分解)及び分解生成物の蒸発が起こることを意味する。これらの揮発性分解生成物は、処理中に許容できない制約及び品質の低下を引き起こす。射出成形中においては、例えば数サイクル後においても成形型内及び/又は成形物品上に相当量の付着物が生成する。平坦なホイルの押出中においては、排出ロール上のかかる付着物によってホイル内に孔が形成される。
【0076】
これに対して、本発明によるクレー材料A(実施例2A)及びB(実施例2B):水溶性ポリアミドで処理したモンモリロナイトナトリウムCloisite(Cloisite Na+)及びSomasif ME100は、360℃の温度まで安定であった。即ち、内容物の分解も蒸発も起こらなかった。
【0077】
実施例及び比較例により、本発明によるナノ複合材料及び関係するマトリクスの弾性率における違いが、従来のナノ複合材料及び対応するマトリクスの弾性率における違いと同等であるか又はこれよりも僅かに高いことが示される。これは、本発明によるクレー材料が、最新技術にしたがって変性されたクレーよりも、下層ポリマーマトリクスに対して少なくとも同等の高い強化を与えることを意味する。本発明によるナノ複合材料は、良好な機械特性及び熱特性によって全体として識別される。特に、この新規なナノ複合材料は、最新技術のナノ複合材料と比較してより高い引裂伸びで示されるように非常により強靱である傾向を有することが観察された(例えば、実施例3とVB3bとを比較すると、測定された破断伸びは230%又は170%であり、また実施例4とVB4bとを比較すると、破断伸びは40%又は4%であった)。ナノ複合材料VB3b、VB4b及びVB5bで製造した粒状物及び成形物品は不快なアミン臭を有しており、一方、本発明によるナノ複合材料で製造した粒状物及び成形物品は中性のポリアミドに特有の臭気を有していた。また、本発明によるナノ複合材料の製造及び処理中に、毒性で可燃性のガスが発生しないことは有利である。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドで処理されている少なくとも1種類の層状シリケートを含み、
全クレー材料に対する層状シリケートの割合が30重量%より多く60重量%以下であることを特徴とするクレー材料。
【請求項2】
少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドが、水溶性ポリエーテルアミド、好ましくは
(a)6〜36個の炭素原子を有する少なくとも1種類の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジカルボン酸;及び
(b)2〜36個の炭素原子を有する少なくとも1種類の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジアミン;及び/又は
(c)ジエチレングリコールジアミン、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン、4,7,10,13−テトラオキサ−1,16−ヘキサデカンジアミンを含む群から選択される少なくとも1種類のジアミン;及び/又は
(d)少なくとも1種類のポリアルキレングリコールジアミン、特にポリエチレングリコールジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン、ポリテトラエチレンジアミン;及び/又は
(e)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸、好ましくは5〜12個の炭素原子を有するω−アミノカルボン酸;
を重縮合することによって製造することができるポリエーテルアミドを含む群から選択される、請求項1に記載のクレー材料。
【請求項3】
少なくとも1種類の水溶性ポリアミドが、
(a)6〜36個の炭素原子、好ましくは6〜24個の炭素原子、特に好ましくは6〜12個の炭素原子を有する少なくとも1種類の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族ジカルボン酸、特にアジピン酸;及び
(b)ジエチレングリコールジアミン、トリエチレングリコールジアミン、テトラオキサヘキサデカンジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、トリオキサトリデカンジアミンを含む群から選択される少なくとも1種類のジアミン、又は少なくとも1種類のポリアルキレングリコールジアミン、特にポリエチレングリコールジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン、ポリテトラエチレンジアミン、好ましくはトリオキサトリデカンジアミン;
を含む重縮合物である、請求項1又は2のいずれかに記載のクレー材料。
【請求項4】
少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドの相対溶液粘度ηrelが、1.3〜3.0、好ましくは1.4〜2.0、特に1.5〜1.9である、請求項1〜3のいずれかに記載のクレー材料。
【請求項5】
全クレー材料に対する層状シリケートの割合が、34〜55重量%、特に好ましくは38〜52重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載のクレー材料。
【請求項6】
全クレー材料に対する少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドの割合が、40〜70重量%、好ましくは45〜66重量%、特に好ましくは48〜62重量%である、請求項1〜5のいずれかに記載のクレー材料。
【請求項7】
少なくとも1種類の層状シリケートが、バーミキュライト、タルカム、及び/又はスメクタイト、特にナトリウムモンモリロナイト、マグネシウム、モンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、アルミニウムモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ソボカイト、スチーブンサイト、スビンフォルダイト、及び/又はカオリナイトを含む群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載のクレー材料。
【請求項8】
(a)少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドの水溶液を、
(b)少なくとも1種類の層状シリケートの水性分散液と混合し、
滞留時間の後に水を除去する、請求項1〜7のいずれかに記載のクレー材料の製造方法。
【請求項9】
(a)溶液中の少なくとも1種類の水溶性ポリアミド、少なくとも1種類の水溶性コポリアミド、及び/又は少なくとも1種類の水溶性ブロックコポリアミドの質量濃度が、0.2〜45重量%、好ましくは1.0〜20重量%、特に好ましくは2.0〜10重量%であり;及び/又は
(b)分散液中の少なくとも1種類の層状シリケートの質量濃度が、0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%、特に好ましくは1.5〜5重量%である;
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
成形化合物の水不溶性熱可塑性マトリクス相内に分散している請求項1〜7のいずれかに記載のクレー材料を含む熱可塑性成形化合物。
【請求項11】
(a)成形化合物に対するクレー材料の重量割合が、1〜50重量%、好ましくは4〜33重量%、特に好ましくは5〜20重量%であり;及び/又は
(b)成形化合物に対するマトリクス相の重量割合が、50〜99重量%、好ましくは67〜96重量%、特に好ましくは80〜95重量%である;
請求項10に記載の成形化合物。
【請求項12】
熱可塑性マトリクス相が、ポリアリーレンスルフィド、ポリラクトン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、及び/又はこれらの混合物を含む群から選択される、請求項10又は11のいずれかに記載の成形化合物。
【請求項13】
少なくとも1種類の添加剤及び/又は耐衝撃性改良剤が、好ましくは成形化合物に対して0.3〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の重量割合で含まれている、請求項10〜12のいずれかに記載の成形化合物。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載の成形化合物から製造される成形物品。
【請求項15】
パイプ、建具、ガス輸送用の輪郭体、圧縮空気パイプ、ホイル、包装目的のための容器、工業用及び消費者製品用のハウジング、或いは携帯電話ハウジングとしての、請求項14に記載の成形物品の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−159414(P2010−159414A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−281166(P2009−281166)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(508375468)エーエムジー−パテント・アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】