説明

ポリアミド成形材料の使用、印刷可能であるか又は印刷された物品、複合部材及びその製造法

【課題】一方では十分な耐応力亀裂性を達成するために十分な結晶性を有するが、それにもかかわらず他方では十分に透明である成形材料を提供する
【解決手段】印刷可能であるか又は印刷された物品を製造するための、以下の成分:a)ラクタムないし少なくとも10個のC原子を有するアミノカルボン酸から得ることができるポリアミド 最大90質量部;及びb)PA1010 10〜100質量部;を含有するが、但し、成分a)及びb)は補い合って100質量部である、ポリアミド成形材料の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、透明で印刷可能な物品、例えばフィルムの製造に適当な、ポリアミドブレンドから成る透明な成形材料である。
【背景技術】
【0002】
自動車の外面を装飾するための現在の標準的な方法は塗装である。しかしながら、前記手法は、一方では自動車製造元における特殊なプラント設備及びこれに付随する運転費用により生じる高い製造コストを招き、他方ではこれによって環境に負荷を与えることになる。例えば使用した塗料の遊離溶剤成分から、並びに、適切に廃棄処理されねばならないペイント残分の蓄積分から、結果として環境負荷が生じる。
【0003】
更に付け加えると、塗装は、近年自動車構造体において重量及びコストを抑えるために好まれてきたプラスチック構造部材の表面を装飾するのに限定的に適当であるに過ぎない。
【0004】
車体の部品としてのプラスチック構造部材の塗装処理は、例えばオンラインで運転可能であり、その際、プラスチック部材には金属部品と同様の塗装処理がなされる。これは均一的な色彩をもたらすが、しかしながらこの場合に慣用であるカソード浸漬塗装のために高温となり、これによって材料の選択が困難となる。更に、同様に極めて多様な支持体へのペイント配合物の付着性が保証されていなければならない。プラスチックにとって比較的有利なプロセス条件を含む、別個の工程におけるプラスチック部材の塗装プロセス(いわゆるオフライン塗装)が実施される場合にはカラーマッチングの問題が生じ、つまり、金属上で実現される色調を厳密に表現しなければならない。しかしながらこれは、支持体、使用可能なベースコート配合物及び処理条件の相違に基づき、達成が極めて困難である。設計によって定められた色差の場合、重大な欠点として、プラスチック部材用の第二の塗装装置の設備及びこれに付随する費用はそのまま残り、その際、自動車の製造のために必要な付加的な時間をも加えなければならない。未処理の、通常は射出成形されたプラスチック部材を直接使用することは、審美的な観点においては不利であり、それというのも、この場合、プロセスに起因する表面の欠陥、例えば溶接線、空気封入物、更には不可欠な補強充填剤、例えばガラス繊維が明らかに知覚可能であるためである。これは、目に見える範囲では許容できない。従って、例えば塗装の過程において表面品質を改善しなければならず、その際、しばしば、研磨し、かつプライマーを厚い層状に塗布することによる作業量の多い前処理が必要とされる。
【0005】
これを回避するための1つの提案は、構造部材の被覆のために使用され、かつそれ以上塗装する必要のない多層プラスチックフィルムの使用である。支持体と装飾フィルムとの複合体は、この場合一連の製造法により実現され得る。フィルムは、例えば支持体と圧縮するか、又は背面射出成形法(Hinterspritzverfahren)を選択することができ、その際、フィルムは構造部材製造の際に射出成形工具に入れられる。装飾担体としてのフィルムの構想は、更に、自動車の造形的な要素の個別化の傾向に合致する。即ち、この傾向は幅広い製造モデルをもたらすが、その都度製造される1セット当たりの構造部材の数は低下する。フィルムの使用によって迅速で問題のない設計変更が可能となるため、これを用いてこの挑戦に立ち向かうことができる。この場合、フィルムによって、自動車産業において要求される、表面特性(クラスA表面)、媒体に対する安定性及び光学的印象に関する規格が満足されることが重要である。このような特性を有するフィルムは、同様に、自動車の内部表面の造形において良好に使用可能である。
【0006】
このような装飾フィルムは原則的に公知である。EP0949120A1には、例えばポリウレタン、ポリアクリラート、フルオロポリマー又はフルオロポリマーとポリアクリラートとから成る混合物から成る透明なカバー層を有する装飾フィルムが記載されている。同様の装飾フィルムはWO94/03337及びEP0285071A2からも公知である。
【0007】
実用新案DE29519867U1には、モノマー単位ラウリンラクタム並びにカプロラクタム及び/又はヘキサメチレンジアミン/ジカルボン酸から構成されているコポリアミドから成る装飾可能なフィルムが記載されている。このようなコポリアミドは、確かに一般には透明であり、また良好に装飾可能ではあるが、しかしながらそのようなコポリアミドから成る成形部材又はフィルムを押出成形により製造する際には問題が繰り返し生じる。特に、射出成形工具又は押出成形工具上又は引取ロール上に被覆が形成される場合、この被覆は必要な清浄化作業のためにしばしば製造の中断を引き起こす。更に、このようなフィルムの熱形状安定性は不十分であるため、昇華印刷又は熱拡散印刷を用いた装飾の際に変形する危険性がある。従って、前記方法の場合に本来の望ましいであろう温度よりも低い温度で装飾しなければならない。更に、短鎖コモノマーの割合が高すぎると、このコモノマーから製造されるフィルムの望ましくない高い吸水量が生じ、これは湿度作用の際に完成部材の許容不可能な反りを招く。装飾フィルムの応用分野は、例えばスポーツ用品、例えばスキー又はスノーボードないし家庭用品の上部被覆のための装飾担体である。この場合、しばしば単層フィルムが使用され、これは表面又は裏面上に印刷される。
【0008】
M. Beyer及びJ. Lohmarによる論文Kunststoffe 90 (2000) 1, 第98 - 101頁には、PA12成形材料から成る印刷可能なフィルムのための例が報告されている。しかしながら、このようなフィルムはなおも表面光沢に関する欠点及び低すぎる熱形状安定性を有する。
【特許文献1】EP0949120A1
【特許文献2】WO94/03337
【特許文献3】EP0285071A2
【非特許文献1】DE29519867U1
【非特許文献2】M. Beyer及びJ. Lohmar著Kunststoffe 90 (2000) 1, 第98 - 101頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、特に、一方では十分な耐応力亀裂性を達成するために十分な結晶性を有するが、それにもかかわらず他方では十分に透明である成形材料を提供することであった。十分な耐応力亀裂性は、それから製造されるフィルム又は成形部材を付加的にか又は代替的にスクリーン印刷又はオフセット印刷で装飾すべき場合だけでなく、完成部材をアルコールベースの清浄化剤で処理し、後で使用する際にも重要である。透明性は、フィルムにおいて十分に文字の鮮明な反転印刷が可能であるほどに十分でなければならない。更に、わずかな吸水量によって、成形材料が与える反りの原因は少なくとも明らかに低下される。熱拡散印刷又は昇華印刷を用いても良好に印刷可能である物品、例えば成形部材又はフィルムに加工できるポリアミド成形材料を提供することも、もとになる課題の本質的な観点であった。この感熱印刷法はしばしば高められた熱形状安定性並びにフィルム又は成形部材の高すぎない含水量をもたらす。ここで問題となっている成形材料の場合、熱形状安定性は微結晶融点Tと相関関係にあり;この感熱印刷法に関しては少なくとも180℃のTが望ましい。低すぎる熱形状安定性は、印刷すべきフィルム又は成形部材の反り又はひずみの形で現れる。それに反して、昇華温度の低下によってコントラスト及び画像の文字の鮮明度が損なわれ、それというのも、インキはもはやフィルム内に十分に深く浸透しないためである。フィルム又は成形部材があまりにも多量の湿分を吸収した場合、熱拡散印刷の場合には望ましくない気泡の形成が生じ得る。それ以外の加工特性、例えば基材、例えばスキーのボディへの堅固に付着する接着性、又は背面射出成形可能性が、表面上の、拡散浸透していないインキ残分によって損なわれてはならないことは、当業者にとっては自明である。
【0010】
しばしば、印刷された物品は所定の表面光沢を必要とし、この表面光沢は、清浄剤の作用又は単に物品の機械的摩擦の際にも損なわれてはならない。更に、衝突、衝撃、引掻き又は交番曲げによる機械的作用が亀裂の形成又は成長を招くことがあってはならず、それというのも、とりわけ背面射出成形された部材又は多層フィルムの場合には、このような亀裂がその下方に位置する層内へと進行し、そのようにして部材の破壊を招き得るためである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚異的にも、前記課題は、印刷可能であるか又は印刷された物品を製造するための、以下の成分:
a)ラクタムないし少なくとも10個のC原子を有するアミノカルボン酸から得ることができるポリアミド 最大90質量部;及び
b)PA1010 10〜100質量部;
を含有するが、但し、成分a)及びb)は補い合って100質量部である、ポリアミド成形材料の使用により解決することができた。印刷可能であるか又は印刷された物品は、可能な実施態様において単層又は多層のフィルムである。しかしながら、射出成形された部材並びにブロー成形により製造された中空体も、原則的には例えば熱拡散法による印刷に適している。
【0012】
前記成形材料から製造された物品も本発明の対象であり;半製品、例えば、後続の背面射出成形又は背面発泡成形(Hinterschaeumung)のための熱可塑性の変形可能なフィルムも本発明の対象である。
【0013】
成分a)として使用されるポリアミドは、通常PA10、PA11又はPA12である。前記のポリアミドは、可能な実施態様において、成形材料中に少なくとも0.1質量部、少なくとも1質量部、少なくとも5質量部ないし少なくとも10質量部含まれる。
【0014】
有利な実施態様において、ポリアミド成形材料は180〜210℃の範囲内、特に有利に185〜205℃の範囲内、特に有利に190〜200℃の範囲内の微結晶融点Tを有する。成分a)が存在する場合、この成分a)に由来する第二の微結晶融点を認めることができ;2つの微結晶融点を完全にか又は部分的に合一していてよい。更に、ポリアミドブレンドの溶融エンタルピーは有利に少なくとも50J/g、特に有利に少なくとも60J/g、特に有利に少なくとも70J/gである。T及び溶融エンタルピーは、ISO11357によるDSCによって、第二の加熱曲線において20K/分の加熱速度で決定される。
【0015】
一般に、ポリアミドブレンドは、m−クレゾール中の0.5質量%溶液に関して23℃でISO307に準拠して測定された、約1.5〜約2.5、有利に約1.7〜約2.2、特に有利に約1.8〜約2.1の相対溶液粘度ηrelを有する。有利な実施態様において、機械的分光計(コーン及びプレート)においてASTM D4440に準拠して240℃及び剪断速度100s−1で測定された溶融粘度は、250〜10000Pas、有利に350〜8000Pas、特に有利に500〜5000Pasである。
【0016】
成形材料は、場合により他の成分、例えば通常の助剤及び添加剤をポリアミド成形材料のために慣用の量で含有してよく、これらは例えば安定剤、滑剤、染料又は成核剤である。
【0017】
前記成形材料は、物品、例えば成形部材又はフィルムの製造のために使用することができ、この物品も同様に本発明の対象である。フィルムないし多層フィルムは、有利な実施態様において、0.02〜1.2mm、特に有利に0.05〜1mm、極めて特に有利に0.1〜0.8mm、特に有利に0.2〜0.6mmの厚さを有する。成形材料が多層フィルムである場合、本発明による成形材料からなる層、一般にカバー層は、有利な実施態様において、0.01〜0.5mm、特に有利に0.02〜0.3mm、極めて特に有利に0.04〜0.2mm、特に有利に0.05〜0.15mmの厚さを有する。フィルムは公知の方法、例えば押出成形を用いて製造されるか、又は多層系の場合には同時押出成形又は積層により製造される。
【0018】
フィルムの多層の実施態様の場合、以下の実施態様が有利である:
1.多層フィルムは、ポリアミドエラストマー成形材料、特にポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミド、及び有利に、6〜18個、有利に6〜12個のC原子を有する直鎖脂肪族ジアミン、6〜18個、有利に6〜12個のC原子を有する直鎖脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、及び酸素原子1個当たり平均で2.3個を上回るC原子と200〜2000のポリエーテルブロックの数平均分子量とを有するポリエーテルをベースとするポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドから成る他の層を含む。前記層の成形材料は、他のブレンド成分、例えば、カルボキシル−ないしカルボン酸無水基又はエポキシ基を有するポリアクリラート又はポリグルタルイミド、官能基を含むゴム及び/又はポリアミドを含んでよい。このような成形材料は先行技術であり;例えばEP1329481A2及びDE−OS10333005に記載されており、これらはここで明確に引用される。良好な層付着性を保証するために、ここで、ポリアミドエラストマーのポリアミド分が、別の層の成分a)又はb)において使用されているのと同一のモノマーから構成されている場合が有利である。
【0019】
2.多層フィルムは、支持体への結合又は多層フィルム構造の内部の結合のための定着剤層、例えばカルボキシル−ないし酸無水物基又はエポキシ基で官能化されたポリオレフィン、最下層の材料と支持体材料とから成るブレンド又は熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0020】
3.フィルムは、最下層として、例えば脂肪族又は脂環式ホモポリアミド又はコポリアミド又はポリメタクリラートコポリマー又はポリメタクリルイミドコポリマーから成る硬質の支持体層を含み、該支持体層は、繊維で充填された成形材料を用いて背面射出成形する際に、ガラス繊維又は炭素繊維が押し出されるのを防ぐ。
【0021】
前記の実施態様を相互に組み合わせることもできる。全ての場合において、本発明により使用されるポリアミドブレンドから成る層がカバー層を形成することは有利である。必要であれば、耐引掻性に対する要求が高い場合には、このカバー層に場合により更に保護層、例えばポリウレタンベースのクリヤラッカーを施与することができる。カバー層は場合により集成フィルム(Montagefolie)でカバーされていてもよく、この集成フィルムは完成部材の製造の後に剥離される。
【0022】
このフィルムで装飾すべき成形体は、前置された製造工程において別個に例えば射出成形により製造することができるか、又は場合より印刷されたフィルムの背面射出成形又は背面発泡成形により製造することができ;この場合、場合より印刷されたフィルムは射出成形鋳型に入れられる。
【0023】
透明なカバー層と組み合わせた特別な設計変法を創作することができるように、下方に位置する第二の層、又は2つより多い層の場合には下方に存在する層のうちの一つは、無色透明、透明、また更には不透明に着色されていてよい。そのような場合、透明のカバー層は付加的に上側から印刷することができる。
【0024】
フィルムは有利な実施態様において装飾フィルムである。装飾フィルムは、本発明の意味において、印刷することができかつ/又は着色層を含み、かつ更に、表面を装飾するために支持体と結合されることが意図されたフィルムである。装飾は、例えばフィラー又は補強材料に由来する表面粗度を覆うことにより表面の光学的な欠陥を隠蔽することによってももたらされ得る。
【0025】
フィルムは、例えば汚染、UV線、気候の影響、化学薬品又は摩擦に対する保護フィルムとして使用することができ、車両、家庭内、床、トンネル、テント及び建築物におけるバリヤフィルムとして、又は例えばスポーツ用品、自動車の内部又は外部装飾、ボート、家庭内又は建築物における上部被覆のための装飾支持体として使用することができる。この使用法は成形材料が不透明に着色されている場合にも当てはまる。フィルムと支持体との物質透過性の結合は、例えば接着、圧縮、積層、同時押出成形、背面射出成形、背面発泡成形又は背面圧縮成形により製造することができる。改善された付着性を達成するために、フィルムを予め例えば火炎処理又はプラズマ処理することができる。フィルムと支持体との複合体を形成する前に、フィルムを更に例えば熱変形又は別の方法により処理又は変形させることができる。表面を例えばエンボス加工により構造化することができる。表面の構造化は、前置され、例えば特別に構成されたロールによるフィルム押出成形の範囲内でも可能である。得られた複合部材を、引き続き更に変形させることができる。
【0026】
適当な支持体は、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボナート、ABS、ポリスチレン又はスチレンコポリマーをベースとする成形材料である。
【0027】
可能な実施態様において、本発明によるフィルムは、フィルム複合体のカバー層として、自動車及び商用車の上及び中の表面の造形ないし装飾のために使用され、その際、フィルムはプラスチック支持体と付着して結合している。相応して構築された構造部材は平面的に成形されていてよく、例えば車体部材、例えばルーフモジュール、ホイール周囲、エンジンカバー又はドアである。それに加えて、縦長の、多少なりとも湾曲した構造部材、例えばクラッディング、例えば自動車のいわゆるAピラーのクラッディング又はあらゆる種類の装飾及び被覆ストライプを製造する実施態様も考慮される。他の例は、ドアステップのための保護クラッディングである。自動車の外部領域における適用に加え、内部の構成部材を有利に本発明によるフィルムにより装飾することもでき、これは特に装飾部材、例えばストリップ及びパネルであり、それというのも、内部空間においても良好な装飾可能性及び化学薬品、例えば清浄剤に対する安定性が必要とされるためである。
【0028】
他の可能な実施態様において、本発明によるフィルムはあらゆる種類のスノーボード状装具、例えばスキー又はスノーボードのための上部被覆として使用される。
【0029】
装飾されたスキー上部被覆を仕上げるための公知の方法は、US5437755に記載されている。前記方法によれば、スキーはいわゆるモノコック系により製造され、その際、上部被覆はまず2枚のプラスチックフィルムから構成され、そのうち外側のプラスチックフィルムは透明であり、内側のプラスチックフィルムは不透明(白色)である。2枚のフィルムの貼り合わせ及び引き続く深絞り加工の前に、透明な上部フィルムの外側、及び、引き続く、透明な上部フィルムと不透明な下部フィルムとの間の接触面を、種々の装飾で印刷する。上部フィルムのための適当なプラスチックとして、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−コポリマー(AS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及び脂肪族ポリアミド、特にPA11及びPA12が挙げられる。外部の影響から保護され、かついかなる場合にも印刷されているとは限らない下部フィルムのためには、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、変性ポリオレフィン及びスチレン−カルボン酸無水物−コポリマー、更にはコポリアミドが挙げられる。しかしながら、上部被覆とスキー又はスノーボードとの結合は、全ての他の公知の成形法及び接着法によって行うこともできる。
【0030】
モノフィルムが使用される場合には、このフィルムは透明であり、有利に下面が印刷され、その際、この場合、白色又は場合により他の色に着色された接着剤が光学的な背景としてフィルムとスキーとの間の結合のために使用される。
【0031】
同時押出成形された2層フィルムが使用される場合には、このフィルムは有利に透明の上部層と、背景としての、顔料で白色か又は有色に着色された下部層とから成り、その際、フィルムは上面で印刷されている。
【0032】
本発明を以下で例示的に説明する。個々のベースポリアミドの製造は当業者に公知であり、例えばDE−OS2044105(PA1010ないしPA11)及びDE−OS2152194(PA12及びコポリアミド)に従って行われる。
【実施例】
【0033】
実施例1:
PA1010の製造のために、200−l−撹拌型オートクレーブに以下の出発物質を装入した:
1,10−デカンジアミン(89.5%の水溶液として) 35.976kg
セバシン酸 38.251kg、並びに
次亜リン酸の50%水溶液(0.006質量%に相当) 8.5g
出発物質を窒素雰囲気中で溶融させ、撹拌下に密閉オートクレーブ中で約220℃に加熱し、その際、内部圧力を約20バールに調節した。この内部圧力を2時間維持し;その後、溶融物を連続的に標準圧力に放圧しながら更に270℃に加熱し、その後、窒素流中でこの温度で1.5時間維持した。引き続き、3時間以内で気圧に放圧し、更に、トルクによってもはや溶融物粘度の上昇が示されなくなるまで3時間溶融物に窒素を導通した。その後、溶融物を歯車ポンプを用いて排出し、ストランドとして造粒した。粒質物を24時間窒素下で80℃で乾燥させた。
【0034】
収量:65kg
生成物は以下の物性値を有していた:
微結晶融点T:192℃及び204℃
溶融エンタルピー:78J/g
相対溶液粘度ηrel:1.76
実施例2:
同一の反応器中で実施例1を以下の出発材料を用いて繰り返した:
1,10−デカンジアミン(89.5%の水溶液として) 35.976kg
セバシン酸 38.251kg、並びに
次亜リン酸の50%水溶液(0.006質量%に相当) 8.5g
収量:63kg
生成物は以下の物性値を有していた:
微結晶融点T:191℃及び203℃
溶融エンタルピー:73J/g
相対溶液粘度ηrel:1.81
相対溶液粘度を2.23に上昇させるために、粒質物排出分を、ジャケット温度165℃でタンブル乾燥機中で24時間窒素導通下で固相中で後凝縮させた。
【0035】
比較例1:
コポリアミドをラウリンラクタム80モル%及びカプロラクタム20モル%から先行技術に従って製造した。相対溶液粘度ηrelは1.9であった。
微結晶融点T:158℃
溶融エンタルピー:46J/g
比較例2:
コポリアミドを、ラウリンラクタム80モル%と、ヘキサメチレンジアミンと1,12−ドデカン二酸とから成る等モル混合物20モル%とから、1.85のηrelで先行技術に従って製造した。
微結晶融点T:155℃
溶融エンタルピー:42J/g
比較例3:
コポリアミドを、ラウリンラクタム85モル%と、イソホロンジアミン7.5モル%と、1,12−ドデカン二酸7.5モル%とから、相対溶液粘度ηrel1.85で先行技術に従って製造した。
微結晶融点T:158℃
溶融エンタルピー:54J/g
比較例4:
ホモポリアミドをラウリンラクタムからηrel1.95で製造した。
微結晶融点T:178℃
溶融エンタルピー:73J/g
実施例3:
PA1010+PA12 30/70質量%から成るブレンド
実施例1及び比較例4からの粒質物を、ヘキサメチレン−ビス(3,5−tert.−ブチル−ヒドロキシ−フェニルケイ皮酸)アミド(Ciba Additives GmbH社のIRGANOX 1098(R))0.5質量%と混合し、バレル温度250℃及び回転速度250rpmでWerner & Pfleiderer ZSK 30型の二軸スクリュー押出機で溶融した。
【0036】
ポリアミド混合物は以下の物性値を有していた:
微結晶融点T:171℃及び190℃
溶融エンタルピー:65J/g
相対溶液粘度ηrel:1.96
実施例4〜7:
実施例3と同様に以下のブレンドを製造した:
【0037】
【表1】

【0038】
実施例8及び9:
実施例3と同様に、相対溶液粘度ηrel1.80の実施例2のPA1010とPA11とからの以下のブレンドを製造した:
【0039】
【表2】

【0040】
実施例1〜9並びに比較例1〜4の生成物から、Collinフィルム装置で押出成形して厚さ0.3mmのフィルムとし、印刷し、評価した。光沢度の測定を1mmの射出成形プレート上で行った。結果を以下の表に示す。
【0041】
劣悪な加工性を有する成形材料の場合、緩慢な後結晶化により強度の反りが認められた。
【0042】
300μmの、カレンダー法により製造された強度のモノフィルムの印刷を、昇華印刷法により行った。このために、転写紙(Accuplot EPQ DIN A4又はEPSON Photo quality DIN A4)を所望の印刷モチーフを鏡像の状態で、昇華インキ(Rotech, 印刷機:EPSON C84)で印刷し、印刷された面を印刷すべきフィルムの上に置いた。調温プレス(Meyer Tisch-Fixierpresse Typ HM)(その際、上部のプレスプレートのみを調温した)内で、プレスの閉鎖によって、加圧プロセス[T=145℃〜175℃、t=2〜5分;p(圧力)=1.1N/cm(110mbar)]を実施した。フィルムを取り出し、転写紙を除去して加圧プロセスを終了させた。
【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷可能であるか又は印刷された物品を製造するための、以下の成分:
a)ラクタムないし少なくとも10個のC原子を有するアミノカルボン酸から得ることができるポリアミド 最大90質量部;及び
b)PA1010 10〜100質量部;
を含有するが、但し、成分a)及びb)は補い合って100質量部である、ポリアミド成形材料の使用。
【請求項2】
成分a)としてPA10、PA11又はPA12を使用する、請求項1記載のポリアミド成形材料の使用。
【請求項3】
ポリアミド成形材料の微結晶融点Tが少なくとも180℃である、請求項1又は2記載のポリアミド成形材料の使用。
【請求項4】
ポリアミド成形材料の微結晶融点Tが少なくとも190℃である、請求項1から3までのいずれか1項記載のポリアミド成形材料の使用。
【請求項5】
ポリアミド成形材料の微結晶融点Tが少なくとも195℃である、請求項1から4までのいずれか1項記載のポリアミド成形材料の使用。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項により使用される成形材料を含有する、印刷可能であるか又は印刷された物品。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項の記載により使用される成形材料を含有し、かつ押出成形、ブロー成形又は射出成形により得られる、印刷可能であるか又は印刷された物品。
【請求項8】
単層又は多層のフィルムである、請求項6又は7記載の物品。
【請求項9】
0.02〜1.2mmの厚さを有する、請求項8記載の物品。
【請求項10】
ポリアミドエラストマー、ポリアミド、コポリアミド、定着剤並びにこれらの混合物の群から選択された下方に位置する1つ以上の他の層を含む、請求項8又は9記載の物品。
【請求項11】
下方に位置する層の1つが透明か又は不透明に着色されている、請求項8から10までのいずれか1項記載の物品。
【請求項12】
スキー又はスノーボードのための上部被覆である、請求項8から11までのいずれか1項記載の物品。
【請求項13】
多層フィルムであり、かつ請求項1記載の成形材料から成る層が0.01〜0.5mmの厚さを有する、請求項8から12までのいずれか1項記載の物品。
【請求項14】
請求項8から13までのいずれか1項記載のフィルムと支持体とから構成された複合部材。
【請求項15】
自動車の内部空間の部材又は自動車の車体部材である、請求項14記載の複合部材。
【請求項16】
請求項14又は15記載の複合部材の製造法において、複合部材を、接着、背面射出成形、同時押出成形、圧縮、積層、背面圧縮成形又は背面発泡成形により、並びに場合により後続の変形により製造することを特徴とする、複合部材の製造法。

【公開番号】特開2006−342353(P2006−342353A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158992(P2006−158992)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】