説明

ポリアミド樹脂の製造方法

【課題】成形性に優れ、かつ成形体とした際に機械特性、色調及び表面外観に優れた特性を有するポリアミド樹脂を製造する方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも2種の異なるポリアミドからなるポリアミド樹脂の製造方法であって、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを、320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練する工程を含む、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂はエンジニジニアリングプラスチックとして知られており、包装・容器などの汎用的な消費分野、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野などの各種部品用の材料として広く利用されている。
近年、これら各種部品に関しては、一体化・軽量化などを目的とした金属材料からポリアミド樹脂への代替要求が非常に高まっている。その結果、ポリアミド樹脂に要求される性能レベルが一層高くなってきている。
【0003】
具体的には、金属材料に代替可能な外観を有し、また過度の熱、光、薬品中などの厳しい環境下で使用可能な樹脂材料が強く要望されている。
その一方で、環境への配慮から、これらポリアミドの成形品や部品をリワーク・リサイクルして再利用するという動きも非常に高まっている。
高まる要求特性に応えるため、単一の樹脂材料の欠点を補いつつその性能を向上させる目的で、異種の樹脂成分の混合物ならびに相溶化剤を配合し溶融混練などの方法を用いて配合する方法、すなわちポリマーアロイ技術が研究されてきた。
【0004】
しかしながら、かかるポリマーアロイ技術は異種の熱可塑性樹脂の相溶性を高めるために、特殊な相溶化剤を用いる必要があったり、樹脂自体の分子構造を修飾する必要があるなどの経済的な問題を持っている。
そこで、上記問題点を解決するための方法として、ポリマーアロイ技術より簡易でかつ経済的に有利な方法、すなわち異種の樹脂成分の混合物と反応触媒とを用いる方法が検討されている。
【0005】
特許文献1には、ポリアミドの単独重合体の混合物を亜リン酸エステル化合物の存在下で265〜315℃の温度範囲で溶融混練することによりランダムな共重合体を作る方法が開示されている。
特許文献2には、グラフト及び/又はブロック共重合体を形成するために、2種以上のポリアミド、ポリエステル、α,β−不飽和カルボン酸の酸ホモポリマー、及びα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和オレフィンとの酸コポリマーを、好ましい温度として約200〜300℃で反応させる方法が開示されている。
特許文献3には、少なくとも2種のポリアミドを亜リン酸エステル化合物と亜リン酸金属塩の存在下で溶融混練するポリアミド樹脂組成物及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許4417032号公報
【特許文献2】特開昭58−208324号公報
【特許文献3】国際公開第2001/072872号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に開示された技術では、依然としてポリアミド樹脂の特性が十分ではなく、さらなる向上が望まれている。
また、特許文献3において、該技術の溶融混練条件としては、温度はJIS7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点又は軟化点より1〜100℃高い温度が好ましいとしているが、実施例では約290℃を開示しているのみである。また、滞留時間に関しては、平均滞留時間にして1〜15分としており、実施例では滞留時間が2分であることが開示されているのみである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、成形性に優れ、かつ成形体とした際に機械特性、色調及び表面外観に優れた特性を有するポリアミド樹脂を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも2種の異なるポリアミドに、亜リン酸エステル化合物及び/又は亜リン酸金属塩を、従来と異なる特定の温度及び平均滞留時間の条件下で溶融混練する製造方法により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]
少なくとも2種の異なるポリアミドからなるポリアミド樹脂の製造方法であって、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを、320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練する工程を含む、製造方法。
[2]
前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.05〜1質量部及び/又は前記(C)を0.05〜1質量部配合する、[1]に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
[3]
さらに(D)分子量調節剤を溶融混練する、[1]又は[2]に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
[4]
前記(A)100質量部に対して、前記(D)を0.05〜1質量部配合する、[3]に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形性に優れ、かつ成形体とした際の機械特性、色調及び表面外観に優れた特性を有するポリアミド樹脂を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態のポリアミド樹脂の製造方法は、少なくとも2種の異なるポリアミドからなるポリアミド樹脂の製造方法であって、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを、320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練する工程を含む、製造方法である。
ポリマーアロイによるポリアミド樹脂の単なる相溶化技術では色調、表面外観の改良は不十分であり、本実施の形態において少なくとも2種の異なるポリアミド−ポリアミド交換反応を利用して、上記製造方法により、目的とする色調、表面外観などの特性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。また、本実施の形態において、従来と異なる特定の温度及び平均滞留時間の条件下で溶融混練する製造方法により得られるポリアミド樹脂は、熱安定性を大幅に高め、高温加工条件下でも色調や機械物性に優れた性能を有する。
【0013】
本実施の形態において、ポリアミド樹脂は、少なくとも2種の異なるポリアミドからなり、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを溶融混練することにより得られる樹脂である。
【0014】
[(A)ポリアミド成分]
本実施の形態において、「(A)ポリアミド成分」とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であるポリアミドを意味し、少なくとも2種の異なるポリアミドを含む。
ポリアミド成分としては、例えば、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカラクタム(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))などのポリアミドが挙げられ、これらポリアミドのうち少なくとも2種の異なるポリアミドを含む。
ポリアミド成分としては、上記ポリアミドを少なくとも2種以上含有していてもよく、上記ポリアミドの少なくとも2種以上含有する共重合ポリアミドであってもよい。
【0015】
これらの中でも、ポリアミド成分として、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)のうち少なくとも2種の異なるポリアミドを含むことが好ましく、少なくとも2種のポリアミド共重合体であることも好ましい。
【0016】
本実施の形態において、「少なくとも2種の異なるポリアミドからなるポリアミド樹脂」とは、ポリアミド成分として構成単位が異なるポリアミドを少なくとも2種用いて製造されるポリアミド樹脂であることを意味する。
本実施の形態において、「構成単位が異なる」とは、以下の実施の形態に限定されるものではないが、例えば、2種のポリアミド成分として、構成単位がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸であるポリアミド66と、構成単位がヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸であるポリアミド6Iとからなる場合などが挙げられる。
この場合、ポリアミド66とポリアミド6Iとでは、構成単位のジカルボン酸がアジピン酸とイソフタル酸と異なるため、ポリアミド66とポリアミド6Iとは構成単位が異なるポリアミドである。
【0017】
ポリアミド成分が少なくとも2種の異なるポリアミドを含む場合として、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6I、及びポリアミド6Cから選ばれる少なくとも2種であることが好ましい。
【0018】
[(B)亜リン酸エステル化合物]
本実施の形態において、(B)亜リン酸エステル化合物としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
一般式(1):
(RO)nP(OH)3-n
(ここでnは1、2又は3を示す。)
一般式(2):
(RO)mP(OH)2-m(R)
(ここでmは1又は2を示す。)
一般式(1)又は一般式(2)において、Rは、それぞれ独立して、脂肪族基若しくは芳香族基又はそれらの基の一部が置換基で置換された置換脂肪族基若しくは置換芳香族基を示す。
一般式(1)又は一般式(2)において、n又はmが2以上の場合、一般式(1)又は一般式(2)中、複数の(RO)基は同じであっても異なっていてもよい。
【0019】
Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基、及びオレイル基などの脂肪族基、フェニル基及びビフェニル基などの芳香族基が挙げられる。
置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ノニル基、メトキシ基、及びエトキシ基などが挙げられる。
【0020】
亜リン酸エステル化合物として、上記一般式(1)で示されるホスファイト系化合物としては、好ましくは、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチル−ジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、4,4'−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどが挙げられる。
【0021】
亜リン酸エステル化合物として、上記一般式(2)で示されるホスフォナイト系化合物としては、好ましくは、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスフォナイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジイルビスホスフォナイトなどが挙げられる。
【0022】
亜リン酸エステル化合物は、1種の亜リン酸エステル化合物を用いてもよく、2種以上の亜リン酸エステル化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
[(C)亜リン酸金属塩]
本実施の形態において、(C)亜リン酸金属塩とは、亜リン酸又は次亜リン酸と元素周期律表の1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素及びスズ、鉛などの金属との金属塩を意味する。
亜リン酸金属塩は、1種の亜リン酸金属塩を用いてもよく、2種以上の亜リン酸金属塩を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本実施の形態の目的をより顕著に達成できるという観点から、好ましくは次亜リン酸金属塩であり、より好ましくは次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)及び次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO22)が挙げられる。
亜リン酸金属塩は、水和物であってもよく、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)などが挙げられる。
【0025】
(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを溶融混練する工程において、亜リン酸エステル化合物の含有量は、ポリアミド成分の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.075〜0.75質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量部である。
亜リン酸エステル化合物の含有量が0.05質量部以上であれば、本実施の形態の目的を達成し得る程の表面外観を得ることができ、1質量部以下であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0026】
(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを溶融混練する工程において、亜リン酸金属塩の含有量は、ポリアミド成分の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.075〜0.75質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量部である。
亜リン酸金属塩の含有量が0.05質量部以上であれば、本実施形態の目的を達成し得る程の表面外観を得ることができ、1質量部以下であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0027】
[(D)分子量調整剤]
本実施の形態において、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを溶融混練する工程において、(D)分子量調整剤をさらに配合して溶融混練してもよい。
分子量調整剤をさらに配合して、溶融混練することは、過度の高分子量化を抑制することができ、所望の分子量にポリアミド樹脂の分子量を制御できるため好適である。
また、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを溶融混練して得られたポリアミド樹脂に、(D)分子量調整剤を展着して溶融混練してもよい。
【0028】
本実施の形態において、(D)分子量調整剤としては、例えば、水、酢酸及びステアリン酸などのモノカルボン酸、アジピン酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などのジカルボン酸、ステアリルアミンなどのモノアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン、並びに酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、エチレンビスステアリルアミド、n−ステアリルエルカ酸アミド、及びステアリルステアレートなどの脂肪酸化合物(脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、及び脂肪酸エステルなどを含む。)などが挙げられる。
【0029】
分子量調整剤としては、成形性改良剤としての効果も有する脂肪酸化合物を用いることが好ましく、反応抑制の点で脂肪酸金属塩がより好ましい。
分子量調整剤は、1種の分子量調整剤を用いてもよく、2種以上の分子量調整剤を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを溶融混練する工程において、さらに(D)分子量調整剤を溶融混練する場合には、分子量調節剤の含有量は、ポリアミド成分の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.075〜0.75質量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量部である。
分子量調整剤の含有量が0.05質量部以上であれば、本実施の形態の表面外観を得ることができる。分子量調整剤の含有量が1質量部以内であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
また、分子量調整剤を展着する場合も、上記含有量と同量を展着して溶融混練することにより、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0031】
本実施の形態のポリアミド樹脂の製造方法は、(A)ポリアミド成分に、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩を配合し、320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練する方法である。
本実施の形態の製造方法としては、(A)ポリアミド成分に(B)亜リン酸エステル化合物及び(C)亜リン酸金属塩を配合し、320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練する方法であることが好適であり、(A)ポリアミド成分に(B)亜リン酸エステル化合物及び(C)亜リン酸金属塩を配合し320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練した後に、(D)分子量調節剤を配合する方法であることも好適である。
【0032】
本実施の形態のポリアミド樹脂の製造方法において、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩を配合し溶融混練した場合、亜リン酸エステル化合物及び/又は亜リン酸金属塩はポリアミド樹脂に含まれることになるが、溶融混練後のポリアミド樹脂における亜リン酸エステル化合物及び亜リン酸金属塩の存在状態は特に限定されない。
該存在状態としては、例えば、亜リン酸エステル化合物及び亜リン酸金属塩のままで存在してもよく、リン酸エステル又はリン酸金属塩として存在してもよく、これらが混在した状態であってもよい。また、亜リン酸エステル化合物及び亜リン酸金属塩が加水分解した状態、例えば、亜リン酸又はリン酸などの状態で存在してもよい。
【0033】
(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩と、所望により、(D)分子量調整剤と、の溶融混練方法としては、全成分を同時に混練する方法;予め予備混練した配合物を混練する方法、例えば、ポリアミド成分の予備混練物に亜リン酸エステル化合物及び/又は亜リン酸金属塩などを配合して溶融混練する方法;押出機の途中から逐次各成分をフィードする方法、例えば、ポリアミド成分に押出機の途中から亜リン酸エステル化合物及び/又は亜リン酸金属塩などを逐次フィードする方法;これらを組み合わせた方法などが挙げられる。
(A)〜(C)を溶融混練する際に、(D)をさらに配合して一緒に溶融混練してもよく、また、(A)〜(C)を溶融混練して得られるポリアミド樹脂に、(D)をさらに配合(展着)して溶融混練してもよい。
また、亜リン酸エステル化合物、亜リン酸金属塩、分子量調整剤などをディスクペレッターなどにより予めタブレット(錠剤)に加工して添加する方法も挙げられ、(B)〜(D)より選ばれる1種又は2種以上を混合後に加工しタブレット(錠剤)にして添加することもできる。
(B)〜(D)の各成分が粉体の場合は取扱上タブレットとして添加することは好ましい方法である。
タブレット造粒時は、特に限定されず、乾式造粒でもよく、水やポリアルキレングリコールなどを予め原料パウダー混合物に配合した湿式造粒でもよい。溶融混練時のタブレット構成成分の分散性から湿式造粒が好ましい。
【0034】
本実施の形態のポリアミド樹脂の製造方法においては、必要に応じて本実施の形態の目的を損なわない範囲で、(A)〜(D)以外の(E)その他の化合物として、ポリアミド樹脂に用いられる通常の化合物、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、及びアパタイト化合物などの無機充填材;三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、サクシノグアナミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、フタル酸メラミン、芳香族系ポリホスフェート、及び複合ガラス粉末などの難燃剤;N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどの添加剤;チタンホワイト、カーボンブラック、及びメタリック顔料などの顔料や着色剤;ポリアルキレングリコール及びその末端変性物;低分子量ポリエチレン;酸化低分子量ポリエチレン;置換ベンジリデンソルビトール;カプロラクタム類;並びにタルクなどの無機結晶核剤などを配合して溶融混練することができる。
【0035】
溶融混練を行う装置としては、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー又はミキシングロールなどの溶融混練機などが好ましく用いられる。
この中でも脱気機構(ベント)装置及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機がより好ましく用いられる。
【0036】
本実施の形態における、溶融混練する工程において、溶融混練時の温度は、例えば、溶融混練装置の押出部の先端ノズル付近の温度として測定することができ、樹脂温度として320〜375℃、好ましくは340〜365℃である。
樹脂温度が320℃以上であれば、ポリアミド成分の交換反応が十分に起こり、成形性、外観、耐熱変色などの性能に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
樹脂温度が375℃以下であれば、ポリアミド樹脂の劣化を防止することができ、成形性、外観、耐熱変色などの性能に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0037】
溶融混練の温度は、ヒーター温度を好ましくは290℃以上、より好ましくは310℃以上、さらに好ましくは320℃以上、よりさらに好ましくは340℃以上に設定するか、押出機スクリューのスクリュー回転数を好ましくは200rpm以上、より好ましくは250rpm以上、さらに好ましくは350rpm以上、よりさらに好ましくは400rpm以上とするか、又はその両方を組み合わせることにより、所望の樹脂温度に調整することができる。
【0038】
本実施の形態における、溶融混練する工程において、溶融混練時の平均滞留時間は20秒以上であり、好ましくは20〜300秒であり、さらに好ましくは20〜60秒である。
平均滞留時間が20秒以上であれば、ポリアミド成分の交換反応が十分に起こり、成形性、外観、耐熱変色などの性能に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
平均滞留時間とは、溶融混練装置内での滞留時間が一定の場合はその滞留時間を意味し、滞留時間が不均一な場合は最も短い滞留時間と最も短い滞留時間の平均値を意味する。
溶融混練中のポリアミド樹脂とは色の異なる樹脂などポリアミド樹脂と区別できる樹脂(以下、樹脂Xと略記する)を溶融混連想値に添加し、樹脂Xの排出開始時間と排出終了時間を計測し、排出開始時間と排出終了時間を平均することにより、平均滞留時間を測定することができる。
【0039】
本実施の形態における、溶融混練する工程において、脱気は行っても行わなくてもよい。
分子量制御やガス抜きという観点から脱気を行った方が好ましい。脱気を行う工程としては、減圧度にして0〜0.10MPa程度とすることが好ましく、より好ましくは0〜0.07MPaであり、さらに好ましくは0.01〜0.065MPaである。
減圧度0MPaとは、溶融混練装置に開口部を設け、自然脱気することを意味する。減圧度が0MPa以上(溶融混練装置に開口部を設けるのみ)であれば、溶融混練後にポリアミド樹脂をストランド状で抜出す際にポリアミド樹脂と共にガスが噴出することを防止することができ、ペレタイズ後の水分率が低いポリアミド樹脂を得ることができる。
減圧度が0.10MPa以下であれば、押出機のトルクの上昇を防止することができ、安定な生産を行うことができる。
本実施の形態における減圧度とは、大気圧を基準とし、脱気領域の圧力と大気圧の差を意味する。
【0040】
本実施の形態において、ポリアミド樹脂は、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを配合し、320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練することにより製造される。
【0041】
本実施の形態において、ポリアミド樹脂の分子量は、得られるポリアミド樹脂の成形性及び機械物性の点から、JIS−K6810に準じて測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度(ηr)が、好ましくは1.50〜7.50であり、より好ましくは1.80〜6.00であり、さらに好ましくは2.00〜5.00である。
25℃の相対粘度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0042】
ポリアミド樹脂の結晶化温度は得られるポリアミド樹脂を成形した際の表面外観の点から、JIS−K7121に準じて測定した結晶化温度が、好ましくは235℃以下であり、より好ましくは225℃以下であり、さらに好ましくは215℃以下であり、よりさらに好ましくは210℃以下である。
結晶化温度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0043】
無機充填材などの充填材を配合していないポリアミド樹脂の引張強度は、得られるポリアミド樹脂の機械特性の点から、ASTMD638に準じて測定した引張強度が、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上であり、さらに好ましくは60MPa以上である。
無機充填材などの充填材を配合し強化したポリアミド樹脂においては、ASTMD638に準じて測定した引張強度が、好ましくは120MPa以上であり、より好ましくは130MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。
引張強度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0044】
ポリアミド樹脂の引張伸度は、得られるポリアミド樹脂の機械特性の点から、ASTMD638に準じて測定した引張伸度が、好ましくは2.0%以上であり、より好ましくは2.75%以上であり、さらに好ましくは3.5%以上である。
引張伸度は、以下の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0045】
ポリアミド樹脂の表面外観は、JIS−K7150に準じて測定した表面外観が、好ましくは30以上であり、より好ましくは40以上であり、さらに好ましくは50以上である。
表面外観(Gs60゜)は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
本実施の形態の製造方法により得られるポリアミド樹脂は、成型加工性に優れるため、、公知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いて、良好に成形加工することができる。
本実施の形態におけるポリアミド樹脂を溶融混練する原料としては、ポリアミド樹脂の既成形体や部品類を粉砕するなどした、リワーク材料やリサイクル材料を用いることができる。本実施の形態の製造方法は、各種成形体又は部品類の再生への応用が期待される。
【0047】
本実施の形態におけるポリアミド樹脂から得られる成形体は、従来のポリアミド樹脂から得られる成形体に比べ、色調、表面外観、耐熱変色、耐候性、耐熱エージング性などに優れるため、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品、事務機器部品、航空宇宙部品、各種ギア、押出用途などの各種部品への応用が期待される。
【実施例】
【0048】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法は、以下のとおりである。
【0049】
1.ポリアミド樹脂の特性
(1−1)相対粘度(ηr)
JIS−K6810に準じて相対粘度を測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド樹脂1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
【0050】
(1−2)結晶化温度(℃)
JIS K7121に準じて結晶化温度を測定した。具体的には、測定装置として、PERKIN−ELMER社製DSC−7型を用いた。測定条件は、窒素雰囲気下、約8mgのサンプルを300℃で2分間保った後、降温速度20℃/minで40℃まで降温したときに現れるピーク温度から結晶化温度を測定した。さらに40℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで昇温したときに現れるピーク温度から融点を測定した。
【0051】
2.成形品の作製及び特性
射出成形機を用いて成形品を作製した。射出成形装置として、日精樹脂株式会社製PS40Eを用い、金型温度80℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、ポリアミド樹脂組成物ペレットから成形品を得た。
シリンダー温度は、前記(1−2)に準じて求めたポリアミド樹脂の融点より約15〜40℃高い温度条件に設定した。
【0052】
(2−1)引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
ASTMD638に準じて引張強度及び引張伸度を測定した。
(2−2)表面外観
ハンディー光沢計として、株式会社堀場製作所製IG320を用いて、JIS−K7150に準じてGs60°を測定した。
(2−3)色調(b値)
色差計として、日本電色工業株式会社製ND−300Aを用いて、b値を測定した。b値が小さいものほど色調が良好である。
【0053】
[実施例1]
ポリアミド66(旭化成ケミカルズ株式会社製レオナ(登録商標)1300(水分率0.08質量%)、以下、「PA66−1」と略記する)50質量部、及びポリアミド6(宇部興産株式会社製SF1022A(水分率0.08質量%)、以下、「PA6−1」と略記する)50質量部からなるポリアミド成分100質量部に、トリス(2,4−t−t−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト((チバスペシャルティケミカルズ社製IRGAFOS168)0.1質量部を配合した。2軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いて溶融混練を行った。サイドフィーダーからポリアミド成分100質量部に対して、ガラス短繊維(旭ファイバーガラス株式会社製JA416、以下、「GF」と略記する)50質量部を添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度350℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。押出レートは15Kg/hrであり、平均滞留時間は30秒であった。減圧度0.05MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
さらに次亜リン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製)0.1質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
シリンダー温度を365℃、スクリュー回転数を500rpmとする以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は375℃であった。評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例4]
シリンダー温度を310℃とする以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は320℃であった。評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例5]
押出レートを22.5Kg/hrとし、平均滞留時間を20秒とする以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は352℃であった。評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
PA66−1 50質量部、及びPA6−1 50質量部からなるポリアミド成分100質量部を、2軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いて溶融混練を行った。サイドフィーダーからポリアミド樹脂成分100質量部に対して、GF 50質量部を添加した。スクリュー回転数250rpm、シリンダー温度280℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は303℃であった。押出レート15Kg/hrであり、平均滞留時間は30秒であった。減圧度0.05MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。評価結果を表1に示す。
【0059】
[比較例2]
スクリュー回転数250rpm、シリンダー温度350℃とする以外は、比較例1と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は348℃であった。評価結果を表1に示す。
【0060】
[実施例6]
PA66−1 50質量部、及びPA6−1 50質量部からなるポリアミド成分に、次亜リン酸ナトリウム0.1質量部をブレンドした以外は、比較例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。評価結果を表1に示す。
【0061】
[比較例3]
押出レートを30Kg/hrとし、平均滞留時間を15秒とする以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は349℃であった。評価結果を表2に示す。
【0062】
[比較例4]
シリンダー温度を370℃、スクリュー回転数を500rpmとする以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は380℃であり、先端ノズルからのガス噴出が多く、樹脂の排出が困難であった。評価結果を表2に示す。
【0063】
[比較例5]
PA6−1を添加せず、PA6−1分をPA66−1で置き換えた以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は355℃であった。評価結果を表2に示す。
【0064】
[実施例7]
さらにモンタン酸カルシウム塩(Licomont社製CaV102)0.1質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。評価結果を表2に示す。
【0065】
[実施例8]
さらにステアリン酸アルミニウム(堺化学工業株式会社製SA−1000)0.1質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は352℃であった。評価結果を表2に示す。
【0066】
[実施例9]
さらにモンタン酸カルシウム塩(Licomont社製CaV102)0.5質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は、358℃であった。評価結果を表2に示す。
【0067】
[実施例10]
さらにステアリン酸カルシウム(日本油脂株式会社製)0.1質量部を配合した以外は実施例2と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は353℃であった。評価結果を表2に示す。
【0068】
[実施例11]
実施例2で得られたペレット100質量部に対して、モンタン酸カルシウム塩(Licomont社製CaV102)0.10質量部をペレット表面に展着した。評価結果を表2に示す。
【0069】
[実施例12]
押出レートを7.2Kg/hrとし、平均滞留時間を62.5秒とする以外は、実施例7と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は355℃であった。結果を表3に示す。
【0070】
[実施例13]
押出レートを7.6Kg/hrとし、平均滞留時間は59秒とする以外は、実施例7と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は353℃であった。結果を表3に示す。
【0071】
[製造例1]
(PA66−2の製造)
ヘキサメチレンジアミン(旭化成ケミカルズ株式会社製)とアジピン酸(旭化成ケミカルズ株式会社製)の等モル塩の50質量%水溶液を18Kg作成した。
アパタイト成分を形成する合成成分として、平均粒子径1μmリン酸水素カルシウム二水和物(共和化学工業株式会社製)(CaH3PO4・2H2O)の25質量%懸濁液を1.8Kg(リン酸水素カルシウム二水和物:純水=0.45Kg:1.35Kg)、及び平均粒子径1.5μm重質炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製)(CaCO3)の25質量%懸濁液を0.7Kg(炭酸カルシウム:純水=0.175Kg:0.525Kg)用いた。該ポリアミド成分を形成する重合成分の水溶液とアパタイト成分を形成する合成成分の懸濁液とを、撹拌装置を有し、かつ下部に抜出しノズルを有する40リットルのオートクレーブ(日東高圧株式会社製)中に仕込み、50℃の温度下、よく撹拌した。十分窒素で置換した後、撹拌しながら温度を50℃から約150℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力がゲージ圧にして0.2MPaになった後、圧力を約0.2MPaに保ちながら、ポリアミド重合成分(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩)の濃度が75質量%になるまで系外に水を除去した。更に温度が270℃まで昇温した。この際、オートクレーブ内の圧力はゲージ圧にして約1.8MPaになるが、1.8MPa以上にならないよう水を系外に除去しながら、加熱を約1時間続けた。その後、約1時間かけ、圧力を大気圧まで降圧し、更に約270℃、大気圧で約1時間保持した後、撹拌を停止した。下部ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行い、(A)ポリアミド成分とアパタイト成分からなるポリアミド(PA66−2)のペレットを得た。得られたPA66−2を評価した結果、相対粘度(ηr)は2.9、アパタイト成分の含有量はポリアミド成分100質量部に対して5.5質量部であった。
【0072】
[実施例14]
製造例1により得られたPA66−2 35質量部、及びポリアミド6(宇部興産社製SF1013A(水分率0.08質量%)、以下、「PA6−2」と略記する)65質量部からなるポリアミド成分100質量部に、トリス(2,4−t−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト((チバスペシャルティケミカルズ社製IRGAFOS168)0.2質量部、次亜リン酸ナトリウム(太平化学産業株式会社製)0.2質量部、モンタン酸カルシウム塩(Licomont社製CaV102)0.20質量部、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(チバスペシャルティケミカルズ社製IRGANOX1098)0.2質量部、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバスペシャルティケミカルズ社製TINUVIN(登録商標)770DF)0.4質量部を配合した。2軸押出機(COPERION社製:ZSK25)を用いて溶融混練を行った。サイドフィーダーからポリアミド成分100質量部に対して、GF 100質量部を添加した。スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度350℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は352℃であった。押出レート15Kg/hrであり、平均滞留時間は30秒であった。減圧度0.01MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを80℃の窒素雰囲気下で24時間乾燥した。評価結果を表3に示す。
【0073】
[実施例15]
減圧度を0.07MPaにした以外は、実施例7と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は356℃であった。評価結果を表3に示す。
【0074】
[実施例16]
減圧度を0.065MPaにした以外は、実施例7と同様にして実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は352℃であった。評価結果を表3に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、成形後の機械特性、色調及び表面外観に優れた特性を有するポリアミド樹脂を製造することができる。
本発明は、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品、事務機器部品、航空宇宙部品、各種ギア、押出用途などの分野において産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の異なるポリアミドからなるポリアミド樹脂の製造方法であって、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸エステル化合物及び/又は(C)亜リン酸金属塩とを、320〜375℃の温度条件下でかつ20秒以上の平均滞留時間で溶融混練する工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.05〜1質量部及び/又は前記(C)を0.05〜1質量部配合する、請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項3】
さらに(D)分子量調節剤を溶融混練する、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記(A)100質量部に対して、前記(D)を0.05〜1質量部配合する、請求項3に記載のポリアミド樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−12151(P2011−12151A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156747(P2009−156747)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】