説明

ポリアミド樹脂成形品の製造方法

【課題】流動性が改良され、強度と表面外観のバランスに優れたポリアミド樹脂成形品を射出成形で得る方法を提供する。
【解決手段】無機充填材を含有するポリアミド樹脂組成物(A)100質量部に対し、無機充填材を含有するポリアミド樹脂組成物(B)5〜60質量部を含有してなる原料樹脂を用い、射出成形して得られるポリアミド樹脂成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物(B)のMVR(メルトボリュームレート)が、樹脂組成物(A)のMVRより5〜80%高いことを特徴とするポリアミド樹脂成形品の製造方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂成形品の製造方法に関し、さらに詳しくは、流動性が改良され成形性に優れた樹脂組成物から、強度と表面外観のバランスに優れたポリアミド樹脂成形品を射出成形にて得るポリアミド樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、耐衝撃性、耐摩擦・摩耗性などの機械的強度に優れ、耐熱性、耐油性などにも優れたエンジニアリングプラスチックスとして、自動車部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、機械部品、建材・住設関連部品などの分野で広く使用されており、近年更に使用分野が広がっている。
【0003】
ポリアミド樹脂には、例えばポリアミド6、ポリアミド66など多くの種類が知られているが、キシリレンジアミンとアジピン酸等のα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66などとは異なって主鎖に芳香族環を有し、高い機械的強度と弾性率を有し、低吸水率で、耐油性に優れ、また成形においては、成形収縮率が小さく、引けやソリが小さいことから精密成形にも適しており、極めて優れたポリアミド樹脂として位置付けられる。また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂をガラス繊維、無機充填材等で強化したものは、エンジニアリングプラスチックのなかでも最高ランクの強度と剛性を実現することができ、金属代替材料として構造部品等にも適用可能である。これらのことから、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、レジャースポーツ用品、土木建築用部材等の様々な分野での成形材料として近年ますます広く利用されてきている。
【0004】
特に、ドアハンドル、フェンダーまたはドアミラースティのような自動車用外装部材には、材料に高強度・高剛性が要求され、そのため、樹脂の他、ガラス繊維等の無機充填材を高充填したものを射出成形することが多い。
無機充填材の高充填は、ポリアミド樹脂組成物自身の流動性が低下しやすくなり、その結果、成形品の意匠面に無機充填材が浮いたような外観となったり、金型転写性の低下によって光沢度が低下したりする。またウエルドラインが目立ち、ウエルド外観が問題となりやすい。
【0005】
成形品の表面外観を改善する方法として、分子量の低いポリアミド樹脂を用いたり、流動性改質剤(可塑剤やワックス類)を使用する場合もあるが、衝撃強度の低下や成形時のガスやシルバーストリーク、ピンホール発生の問題もあり、適用には制限がある。また、特許文献1には、機械的強度、耐熱性、反り性等の寸法精度、表面外観に優れた繊維強化キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物が提案されているが、流動性や強度と表面外観のバランスという点では必ずしも十分であるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−95066号公報
【0007】
こうした状況下、成形時の流動性が改良された、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と無機充填材を含有する樹脂組成物を射出成形して、強度と表面外観の良好な成形品を得る方法が強く望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と無機充填材を含有する樹脂組成物を射出成形して、流動性にも優れ、強度と表面外観のバランスに優れた成形品を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成すべく、無機充填材を含有するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物の溶融混練時の現象、あるいは射出から成形キャビティでの樹脂の挙動を詳細に解析し、鋭意検討を重ねた結果、メルトボリュームレートが異なる2種の無機充填材含有キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物を混合して用いることが有効であり、これを射出成形すると、成形時の流動性が改良され、強度と表面外観のバランスに優れた成形品を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)および無機充填材(A3)とを含むポリアミド樹脂組成物(A)100質量部に対し、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)および無機充填材(B3)とを含むポリアミド樹脂組成物(B)5〜60質量部を含有してなる原料樹脂を用い、射出成形して得られるポリアミド樹脂成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物(B)のMVR(メルトボリュームレート、JIS K7210に準拠し、温度280℃、荷重5.0kgfで測定)が、ポリアミド樹脂組成物(A)のMVRより5〜80%高いことを特徴とするポリアミド樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ポリアミド樹脂組成物(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(A2)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)100質量部に対し、1〜120質量部、無機充填材(A3)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)とその他のポリアミド樹脂(A2)の合計100質量部に対し、1〜250質量部を含有してなることを特徴とする製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、前記ポリアミド樹脂組成物(B)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(B2)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)100質量部に対し、1〜120質量部、無機充填材(B3)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)とその他のポリアミド樹脂(B2)の合計100質量部に対し、1〜250質量部を含有することを特徴とする製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(A2)および/または前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(B2)が、ポリアミド6および/またはポリアミド66であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記無機充填材(A3)および/または前記無機充填材(B3)が、ガラス繊維、マイカおよびタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記ポリアミド樹脂組成物(A)の構成成分と前記ポリアミド樹脂組成物(B)の構成成分が実質的に同一であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記ポリアミド樹脂組成物(A)と前記ポリアミド樹脂組成物(B)が実質的に同一の組成であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0017】
さらに、本発明の第8の発明によれば、請求項1〜7のいずれかの発明によって製造されたポリアミド樹脂成形品が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、原料樹脂は成形時の流動性が改良され、これを射出成形して得られた成形品は、十分な物性・強度を有し、またピンホール発生等が少なく、表面外観に特に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について実施形態および例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態および例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0020】
[1.概要]
本発明は、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)および無機充填材(A3)とを含むポリアミド樹脂組成物(A)100質量部に対し、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)および無機充填材(B1)とを含むポリアミド樹脂組成物(B)5〜60質量部を含有してなる原料樹脂を用い、射出成形して得られるポリアミド樹脂成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物(B)のMVR(JIS K7210に準拠し、温度280℃、荷重5.0kgf(49N)で測定したメルトボリュームレート)が、ポリアミド樹脂組成物(A)のMVRより5〜80%高いことを特徴とする。
【0021】
[2.MVR(メルトボリュームレート)]
本発明において、射出成形に供する原料樹脂は、ポリアミド樹脂組成物(A)とポリアミド樹脂組成物(B)を混合してなるものであり、ポリアミド樹脂組成物(B)としては、主成分たるポリアミド樹脂組成物(A)より、そのMVRが5〜80%高いものを用いる。
また、ポリアミド樹脂組成物(B)の含有量は、ポリアミド樹脂組成物(A)100質量部に対し、5〜60質量部とする。
このように樹脂組成物(A)に対し、このような樹脂組成物(B)を、上記の量で混合した樹脂組成物を原料樹脂として使用することで、射出成形時の流動性が高くなり、金型キャビティの樹脂注入ゲートから遠い位置までの安定注入が可能となり、また得られた射出成形品は曲げ強度や曲げ弾性、耐衝撃性に優れることが見出された。さらに、成形品の表面外観は極めて良好であって、無機充填材の浮きやピンホール等の表面欠陥が極めて少ないことも確認された。ポリアミド樹脂組成物(B)の含有量が多過ぎると耐衝撃性が低下してしまい、少な過ぎると流動性、表面外観が向上しないという事態に至ってしまうということも判明した。
【0022】
なお、MVRは、ポリアミド樹脂組成物(A)およびポリアミド樹脂組成物(B)について、JIS K7210に準拠して、温度280℃、荷重5.0kgf(49N(ニュートン))で、測定される。
【0023】
ポリアミド樹脂組成物(B)のMVRは、ポリアミド樹脂組成物(A)のMVRより、10〜80%高いことが好ましく、20〜60%高いことがより好ましい。
また、ポリアミド樹脂組成物(B)のMVRとしては、5〜30cm/10分が好ましく、より好ましくは6〜20cm/10分、特には7〜15cm/10分である。MVRが5cm/10分未満では流動性、表面外観が低下しやすい傾向にあり、30cm/10分を超えると、機械的強度が不十分な場合がある。
また、主成分たるポリアミド樹脂組成物(A)のMVRとしては、3〜18cm/10分が好ましく、より好ましくは4〜18cm/10分、特には5〜13cm/10分である。MVRが3cm/10分未満では流動性、表面外観が低下しやすい傾向にあり、18cm/10分を超えると、機械的強度が不十分な場合がある。
さらに、原料樹脂中のポリアミド樹脂組成物(B)の含有量の好ましい範囲は、ポリアミド樹脂組成物(A)100質量部に対し、5〜55質量部、より好ましくは7〜50質量部である。
【0024】
ポリアミド樹脂組成物(A)およびポリアミド樹脂組成物(B)は、いずれもキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と好ましくはこれ以外の他のポリアミド樹脂を含有し、さらに無機充填材を必須構成成分として含有するが、これらの各構成成分は、ポリアミド組成物(A)およびポリアミド樹脂組成物(B)において、それぞれ同一種のものであってもよく、異なる種類のものであってもよい。
なかでも、ポリアミド樹脂組成物(A)およびポリアミド樹脂組成物(B)が、互いに同じ成分から構成された実質的に同一の組成であって、樹脂組成物のMVR値が異なる組成物であることが好ましい。このように同じ構成成分からなる組成物のMVRを、(A)(B)両組成物間で異なるものにするには、共通する構成成分の種類としては同じものであるが、その特性(例えば、樹脂成分の分子量、無機充填材の粒径等)は異なるもので構成させたり、各構成成分の含有量を調整したりすればよい。なお、「ポリアミド樹脂組成物(A)の構成成分とポリアミド樹脂組成物(B)の構成成分が実質的に同一」とは、ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)を構成する樹脂成分や無機充填材が同じ種のものであることをいい、その各成分の特性や含有量は異なっていてよく、また、その他の各種添加剤は、その有無、その種類や特性、あるいは含有量が異なっている場合も包含される。また、「ポリアミド樹脂組成物(A)とポリアミド樹脂組成物(B)が実質的に同一の組成」とは、ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)を構成する樹脂成分や無機充填材が同じ種のものであり(特性は異なる)、かつ、その含有量が同じであることをいう。その他の各種添加剤は、その有無、その種類や特性、あるいは配合量が異なっている場合も包含される。
以下、ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)を構成する各構成成分について、説明する。
【0025】
[3.原料樹脂1:キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)および(B1)]
本発明におけるポリアミド樹脂組成物(A)および(B)に用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)および(B1)は、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は2種以上を併用してもよい。
【0026】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の縮合原料であるキシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンを単独またはこれらを混合して用いてもよく、メタキシリレンジアミン50〜100モル%とパラキシリレンジアミン50〜0モル%の範囲で用いるのが好ましい。パラキシリレンジアミンが50モル%を越えると得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点が高くなりすぎ、成形時の加熱による熱劣化を引き起こしやすく、成形が困難になりやすい。
【0027】
メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンを混合して使用する場合は、好ましくは、パラキシリレンジアミンを10〜50モル%、メタキシリレンジアミンを90〜50モル%の割合で、より好ましくはパラキシリレンジアミンを15〜45モル%、メタキシリレンジアミンを85〜55モル%の割合で使用する。最も好ましくは、パラキシリレンジアミンを20〜40モル%、メタキシリレンジアミンを80〜60モル%の割合で使用する。パラキシリレンジアミンの量が、10モル%未満では十分な融点の向上が見られにくい場合があり、50モル%を越えると融点が高くなりすぎ、重合時および成形時に熱劣化等の不都合を生じるおそれがあるので好ましくない。混合ジアミンにおけるジアミンとしては、パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミン以外に、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンおよび脂環族ジアミン等の他のジアミンを混合して使用してもよく、他のジアミンの使用割合は、好ましくは全ジアミンの10モル%以下であり、より好ましくは全ジアミンの5モル%以下である。脂肪族ジアミンとしては、例えばテトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等が挙げられ、芳香族ジアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等が挙げられ、脂環族ジアミンとしては、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0028】
もう一方の縮合原料であるα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸としては、好ましくは炭素原子数6〜12の脂肪族二塩基酸であり、具体例としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられ、このうち特に好ましいのは、アジピン酸である。また、α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸以外に少量の芳香族二塩基酸を使用することもでき、芳香族二塩基酸としては、1,5−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、芳香族二塩基酸を使用する場合の使用量は、好ましくは、全二塩基酸の10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下である。
【0029】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)の相対粘度は、好ましくは1.6〜3であり、より好ましくは1.7〜2.9であり、最も好ましくは1.8〜2.8である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると成形性が低下しやすい。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)の相対粘度は、好ましくは1.4〜2.8であり、より好ましくは1.5〜2.7であり、最も好ましくは1.6〜2.6である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると成形性、表面外観が低下しやすい。
また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)の相対粘度は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)の相対粘度に対して5〜40%低いことが好ましく、10〜30%低いことがより好ましい。なお、本発明における相対粘度とは、96%硫酸中、濃度1g/100ml、温度25℃の条件で測定される値である。
【0030】
[4.原料樹脂2:キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)および(B1)以外のポリアミド樹脂(A2)および(B2)]
本発明におけるポリアミド樹脂組成物(A)には、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)の他に、他のポリアミド樹脂(A2)を含んでいることが好ましい。また、ポリアミド樹脂組成物(B)には、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)の他に、他のポリアミド樹脂(B2)を含んでいることが好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)および(B1)以外の他のポリアミド樹脂(A2)および(B2)としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド6/66、ポリアミド10、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミドMP6/6T、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられ、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、ポリアミド66、ポリアミド6及びポリアミド6I/6Tが好ましく、特には、結晶化速度が速く、流動性も良く、熱安定性も良好であるポリアミド66、ポリアミド6が好ましい。
【0031】
他のポリアミド樹脂(A2)の相対粘度は、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.9〜3.2であり、最も好ましくは2〜3.1である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると成形性が低下しやすい。
また、他のポリアミド樹脂(B2)の相対粘度は、好ましくは1.6〜3.3であり、より好ましくは1.7〜3.1であり、最も好ましくは1.8〜3である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると表面外観および成形性が低下する場合がある。
【0032】
ポリアミド樹脂組成物(A)がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)以外の他のポリアミド(A2)を含有する場合の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)100質量部に対し、好ましくは1〜120質量部、より好ましくは3〜110質量部、さらに好ましくは4〜100質量部、特には5〜90質量部である。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)以外の他のポリアミド樹脂(A2)が120質量部を超えると弾性率が低下しやすい傾向にある。
【0033】
ポリアミド樹脂組成物(B)がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)以外の他のポリアミド(B2)を含有する場合の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)100質量部に対し好ましくは1〜120質量部、より好ましくは3〜110質量部、さらに好ましくは4〜100質量部、特には5〜90質量部である。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)以外の他のポリアミド樹脂(B2)が120質量部を超えると弾性率が低下しやすい傾向にある。
【0034】
また、ポリアミド樹脂組成物(A)およびポリアミド樹脂組成物(B)には、さらに他の熱可塑性樹脂を含有させてポリマーアロイとしてもよく、例えばポリアミド樹脂の耐薬品性および摺動性改良の観点から、変性ポリエチレン樹脂や変性ポリプロピレン樹脂等の変性ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、耐衝撃性改良の観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂、ABS樹脂等を配合してもよい。これら他の熱可塑性樹脂の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)または(B1)100質量部に対し1〜50質量部が好ましく、3〜40質量部がより好ましい。
【0035】
なお、本発明ではキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)および/または他のポリアミド樹脂(B2)としては、バージン品だけでなく、使用済みの製品から再生されたもの、いわゆるマテリアルリサイクルされたものも用いることができる。また、成形に際しての不良品、例えばスプルーやランナーなどから再生されたものを用いることもできる。リサイクル材を用いる場合は、適当な粒径に粉砕して用いることが好ましい。
【0036】
[5.無機充填材(A3)および(B3)]
また、ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)は、強度と剛性、寸法安定性を向上させる目的で、無機充填材を含有する。
無機充填材(A3)または(B3)の形状は、繊維状、針状、板状、粒状または不定形状など任意である。無機充填材の具体例としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズ等のガラス系フィラー;炭素繊維、炭素短繊維、カーボンナノチューブ、黒鉛などの炭素系フィラー;チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー;タルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリナイト、ゾノトライト、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイトなどの珪酸塩化合物;シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中では良好な表面意匠性を得る目的で、タルク、マイカ、ウォラストナイト、カオリナイト、ガラス繊維が好ましく、タルク、マイカ、ガラス繊維がより好ましい。
また、無機充填材は、2種以上を併用してもよい。
【0037】
無機充填材(A3)の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)100質量部に対し、また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)以外のポリアミド樹脂(A2)を含む場合は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)とその他のポリアミド樹脂(A2)の合計100質量部に対して、1〜250質量部である。無機充填材の効果を発現させるためには、少なくとも1質量部は含有させるべきである。無機充填材の含有量が1質量部未満の場合は補強効果が十分でない場合がある。また250質量部を超える場合は、表面外観や耐衝撃性が劣り、流動性が十分でない場合がある。無機充填材のより好ましい含有量は10〜200質量部、特には30〜180質量部である。
また、無機充填材(B3)の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)100質量部に対し、また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)以外のポリアミド樹脂(B2)を含む場合は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)とその他のポリアミド樹脂(B2)の合計100質量部に対して、1〜250質量部である。無機充填材の効果を発現させるためには、少なくとも1質量部は含有させるべきである。無機充填材の含有量が1質量部未満の場合は補強効果が十分でない場合がある。また250質量部を超える場合は、表面外観や耐衝撃性が劣り、流動性が十分でない場合がある。無機充填材のより好ましい含有量は10〜200質量部、特には30〜180質量部である。
【0038】
ポリアミド樹脂組成物(A)、(B)に配合する無機充填材(A3)、(B3)の形状が、ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状である場合、その平均繊維径は、特に制限されないが、1〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましく、3〜30μmがさらに好ましく、5〜20μmが特に好ましい。このような繊維径のものを採用することにより、機械的特性をより優れたものとすることができる。また、平均繊維長は、特に制限されないが、0.01〜20mmが好ましく、0.03〜10mmがより好ましく、0.05〜6mmがさらに好ましい。平均繊維長が0.01mm未満では、繊維状無機充填材による補強効果が不十分な場合があり、平均繊維長が20mmを超えると、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂との溶融混練や強化ポリアミド樹脂組成物の成形が困難になる場合がある。
【0039】
ポリアミド樹脂組成物(A)、(B)に配合する無機充填材(A3)、(B3)の形状が針状、板状、粒状の場合は、その平均粒子径が0.05〜50μmであることが好ましく、更には0.1〜40μmであればより好ましい。平均粒子径が小さすぎると補強効果が不十分となり易く、逆に大きすぎても製品外観に悪影響を与えやすく、更に耐衝撃性も不十分となる場合がある。針状、板状、粒状の場合の無機充填材(A3)、(B3)の最も好ましい平均粒子径は、0.5〜30μm、特に1〜25μmである。
【0040】
また、ポリアミド樹脂組成物(B)に配合する無機充填材(B3)の形状が繊維状である場合、その平均繊維径は、ポリアミド樹脂組成物(A)に配合する無機充填材(A3)の平均繊維径の80〜100%であることが好ましく、また、その平均繊維長は、ポリアミド樹脂組成物(A)に配合する無機充填材(A3)の平均繊維長の50〜90%であることが好ましい。このような平均繊維径、平均繊維長とすることで、ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)を含有してなる原料樹脂の流動性をより高くすることができ、これを射出成形した成形品の表面外観をより向上させることができる。
【0041】
ポリアミド樹脂組成物(B)に配合する無機充填材(B3)の形状が針状、板状、粒状である場合、その平均粒子径は、ポリアミド樹脂組成物(A)に配合する無機充填材(A3)の平均粒子径に対して、50〜90%であることが好ましい。このようにすることで、ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)を含有してなる原料樹脂の流動性をより高くすることができ、これを射出成形した成形品の表面外観をより向上させることができる。
【0042】
なお、本発明における平均繊維径および平均繊維長としては、メーカーの公称値を用いることができる。平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるD50をいい、例えば、島津製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定を行うことができる。
【0043】
[6.その他成分]
さらに、ポリアミド樹脂組成物(A)、(B)は、必要に応じて、上述したもの以外に他の成分、例えば、樹脂添加剤等を含有してもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0044】
[7.原料樹脂の製造方法]
ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)の製造法、またこれら両組成物を混合して原料樹脂とする方法に制限はなく、公知のポリアミド系樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)の製造法の具体例を挙げると、本発明に係る各成分、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、所定の割合で秤量し、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸または二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法等が挙げられる。なかでも、樹脂組成物各構成成分の分散性の点から、短軸または二軸スクリュー押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。溶融混練において溶融樹脂をペレットにする場合には、溶融樹脂はストランド状に押し出され、吐出ダイスを経て、通常は冷却水槽が設けられて、冷却処理後、ペレタイザー等の切断手段により切断されて、平均粒径1〜5mm程度のペレットとされる。
【0045】
特に、ポリアミド樹脂組成物(A)よりMVRが5〜80%高いポリアミド樹脂組成物(B)を製造する場合は、各構成成分の種類、特性等を適切に選択して行う。例えば前述したようにキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)として、ポリアミド樹脂組成物(A)に使用したものと同じキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いる場合でも、分子量が低いものを使用するとか、同様に、ポリアミド樹脂組成物(A)に使用するものと同じ無機充填材を用いる場合でも、その平均繊維長や平均粒径がより小さいものを使用する等により、調製することができる。
【0046】
このようにして得られた両樹脂組成物(A)および(B)を含有してなる原料樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ペレット形状のポリアミド樹脂組成物(A)および(B)をドライブレンドする方法や、ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)を、二軸スクリュー押出機等の混練機を用いて溶融混練しペレット化する方法等が挙げられる。ポリアミド樹脂組成物(B)としてリサイクル材を使用する場合は、ポリアミド樹脂組成物(A)に近い粒径まで粉砕し、ポリアミド樹脂組成物(A)とドライブレンドまたは溶融混練することが好ましい。また、両樹脂組成物のドライブレンド、溶融混練の際には、ポリアミド樹脂や他の樹脂等を追加してもよく、また樹脂添加剤等を一緒に追加してもよい。
両樹脂組成物(A)および(B)を含有した原料樹脂のMVRとしては、4〜24cm/10分が好ましく、より好ましくは5〜19cm/10分、さらに好ましくは6〜17cm/10分、特に好ましくは6〜15cm/10分である。MVRが4cm/10分未満では流動性、表面外観が低下しやすい傾向にあり、24cm/10分を超えると、機械的強度が不十分な場合がある。
【0047】
[8.射出成形]
本発明においては、上記のような方法で得られた両樹脂組成物(A)および(B)を含有する原料樹脂を用い、射出成形法を用いて成形品を製造することができる。
射出成形法としては、具体的には例えば、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空射出成形法、インサート射出成形法による金属部品、その他の部品との一体成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法等が挙げられる。またこの様な射出成形法に用いる金型としても、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には例えば、断熱金型や、急速加熱金型等が挙げられる。
【0048】
[9.成形品]
射出成形により得られた成形品は、優れた耐衝撃性、寸法安定性、優れた表面外観を兼備しているので、車両・航空機等の内装部品、外装部品、電気・電子・OA機器部品、携帯電話、機械部品、建築部材、レジャ−用品・雑貨類等の幅広い用途に適している。
【0049】
具体的には例えば、自動車外装部品としては、アウターハンドル、ドアミラースティ、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ルーフレール、ワイパーアームなどがあり、自動車内装部品としては、インナーハンドル、センターコンソール、インパネ、アシストグリップ、シートベルトストッパーなどが挙げられる。
また鉄道車両部品としては、テーブルアーム、吊り手、アシストグリップなどがあり、電気部品としては、シェーバー枠、ドライヤー、冷蔵庫用ハンドルおよび引き手、電子レンジ用扉、ポータブルMDシステムのハンドル、ヘッドホーンアーム、電動ドライバー用ハウジングなどが挙げられる。そして建材部品として、ドアハンドル、クレセント、フランス落としなどを例示できる。
特に、その優れた外観、生産性等から、特に車両・航空機用アウターまたはインナーハンドル用途に、好ましく用いられる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例において用いた原料成分は次のとおりである。
【0051】
(1)ポリアミド樹脂
(a)キシレンジアミン系ポリアミド樹脂
・ポリメタキシリレンジアジパミド (以下、「MXD6−1」という。)
三菱瓦斯化学社製、商品名「ポリアミドMXD6#6000」
融点243℃、相対粘度2.14
・ポリメタキシリレンジアジパミド (以下、「MXD6−2」という。)
三菱瓦斯化学社製、商品名「ポリアミドMXD6#6007」
融点243℃、相対粘度2.7
(b)キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂
・ポリアミド66 (以下、「PA66」という。)
デュポン社製、商品名「ザイテル(登録商標)101」、相対粘度3.0
・ポリアミド6 (以下、「PA6」という。)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製
商品名「ノバミッド(登録商標)1007J」、相対粘度2.2
【0052】
(2)無機充填材
・ガラス繊維 (以下、「GF1」という。)
サンゴバン社製チョップドストランド、商品名「983A」
平均繊維径 10μm、平均繊維長 4.5mm
・ガラス繊維 (以下、「GF2」という。)
オーエンスコーニング社製チョップドストランド
商品名「ECS03T−JAFT−2」
平均繊維径 10μm、平均繊維長 3mm
・カーボンブラックマスターバッチ (以下、「カーボンブラックMB」という。)
日弘ビックス社製、商品名「PA−0896」
カーボンブラック含有量 50質量%
・マイカ (以下、「マイカ」という。)
クラレトレーディング社製、商品名「スゾライト 325HK」
平均粒径 24μm
・タルク
富士タルク社製、商品名「TM−2」、平均粒径 14μm
【0053】
(3)その他の成分
・ステアリン酸バリウム(堺化学社製)
・エポキシ樹脂
東都化成社製、商品名「エポトート YD−5013」
【0054】
(実施例1〜4および比較例1〜3)
<ポリアミド樹脂組成物(A)および(B)の調製>
上記原料成分を使用し、下記表1に示す割合で含有するポリアミド樹脂組成物4種(組成物1〜4)を以下のように調製した。
すなわち、表1に示すGF1およびGF2以外の各成分を同表に示す割合にて、タンブラ−ミキサ−で均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30XCT」)のホッパに投入し、GF1、GF2はサイドからフィードし、溶融混練した。溶融樹脂組成物のストランドを、水槽にて冷却し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物(組成物1〜4)のペレットを得た。
【0055】
【表1】

【0056】
(1)MVR
上記で得られた組成物1〜4のペレットおよびペレット混合物について、JIS K7210に準拠して、温度280℃、荷重5.0kgfの条件下で、測定した。
(2)曲げ強度、曲げ弾性率
上記で得られた組成物1〜4のペレットを120℃で5時間以上乾燥した後、表2に示す配合比率で混合し、ファナック製「α100iA型」射出成形機を使用して、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒の条件で、ISO引張試験片(厚さ4.0mm)を射出成形した。ISO178に準拠して、曲げ試験片(厚さ4.0mm)を試験片とし、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)および、曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
(3)耐衝撃性(ノッチ付きシャルピー衝撃強度)の測定
上記(2)と同様の方法でISO試験片を射出成形し、ISO179に準拠して、この試験片から厚さ4.0mmのノッチ付試験片を作製し、23℃の環境下において、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
【0057】
(4)射出成形による成形品外観の評価
上記で得られた組成物1〜4のペレットを120℃で5時間以上乾燥した後、下記表2に示す配合比率で混合し、日精樹脂社製射出成形機(AZ−7000型、350トン)のホッパに投入し、片側に自動車本体ドアへの取り付け部分を有するピラー/ドア取り付け部成形用金型を取り付け、シリンダー温度280℃、金型温度120℃、射出時間2秒、保圧時間8秒、成形サイクル60秒の条件で、連続成形した。
目視観察により、成形品外観を評価した。ピンホールや、シルバーストリーク、樹脂焼けなどが認められず外観の良好なものを「○」とし、これらの外観不良が大きく発生したものを「×」、その中間を「△」と判定した。
以上の評価結果を下記表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例および比較例の結果から分かるように、MVRの異なるポリアミド樹脂組成物を含有してなる組成物を原料にして射出成形をした場合には、耐衝撃性等の機械的強度に優れ、同時にピンホール等の外観不良の少ない良好な表面外観の成形品を得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の成形品の製造方法によれば、無機充填材を含むMVRの異なる少なくとも2種のポリアミド樹脂組成物を含有してなる原料樹脂を射出成形することによって、成形時の流動性が良好で、十分な機械的強度と良好な表面外観の成形品を得ることができるので、特に、自動車等の車両内外装部品分野、電気・電子機器部品分野等の広い分野に適用でき、産業上の利用性は非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)および無機充填材(A3)とを含むポリアミド樹脂組成物(A)100質量部に対し、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)および無機充填材(B3)とを含むポリアミド樹脂組成物(B)5〜60質量部を含有してなる原料樹脂を用い、射出成形して得られるポリアミド樹脂成形品の製造方法であって、ポリアミド樹脂組成物(B)のMVR(メルトボリュームレート、JIS K7210に準拠し、温度280℃、荷重5.0kgfで測定)が、ポリアミド樹脂組成物(A)のMVRより5〜80%高いことを特徴とするポリアミド樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂組成物(A)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(A2)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)100質量部に対し、1〜120質量部、無機充填材(A3)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A1)とその他のポリアミド樹脂(A2)の合計100質量部に対し、1〜250質量部を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂組成物(B)が、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(B2)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)100質量部に対し、1〜120質量部、無機充填材(B3)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(B1)とその他のポリアミド樹脂(B2)の合計100質量部に対し、1〜250質量部を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(A2)および/または前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂(B2)が、ポリアミド6および/またはポリアミド66であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記無機充填材(A3)および/または前記無機充填材(B3)が、ガラス繊維、マイカおよびタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂組成物(A)の構成成分と前記ポリアミド樹脂組成物(B)の構成成分が実質的に同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂組成物(A)と前記ポリアミド樹脂組成物(B)が実質的に同一の組成であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたポリアミド樹脂成形品。

【公開番号】特開2011−148267(P2011−148267A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13398(P2010−13398)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】