説明

ポリアミド樹脂組成物、および該ポリアミド樹脂組成物を用いた成形体

【課題】高温環境下の長期の使用においても変色の少ない、耐熱変色性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】粘土鉱物を含有するポリアミド樹脂(A)95.6〜99.1質量部、リン系化合物(B)0.3〜1.7質量部、脂肪酸金属塩(C)0.6〜2.7質量部を合計100質量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、厚み2mmの成形体で測定される色調変化△Eが15未満であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱変色性に優れたポリアミド樹脂組成物、およびそれを用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車内における各種電装品の配線はエンジンルーム内または運転席足元のヒューズボックスに集められ、各種電装品はそれらに流れる電流の大きさおよび使用頻度等に応じた定格電流値を有したヒューズ素子を介してバッテリに接続されている。このようなヒューズ素子は、ハウジングとその所定平面から突出して並列に並ぶ一対の端子を備えており、両端子間に接続された可溶体をハウジング内に収納した構造となっている。何らかの原因により定格以上の異常電流が発生した際には、このヒューズ素子の可溶体が溶断することで入力端子と出力端子との間の導通が遮断され、各種電装品に過電流が流れ続けることを防止する。
【0003】
従来より自動車では、14V発電(12V蓄電)のバッテリシステムが多く搭載されており、前記したヒューズ素子はこのバッテリシステムに対応すべく、定格電圧32V、遮断特性32V×1000A(定格電圧×定格遮断容量)として設計され用いられている。
【0004】
また、ヒューズ素子内に設置された可溶体の溶断時には、アークが発生することが知られている。ヒューズ素子ハウジングを構成する材料としては、従来より耐熱性を考慮したポリサルフォンやポリエーテルサルフォンが用いられてきた。しかしながら、このような材料は分子構造中に芳香環を有しており、これがアークによって炭化して視認性を低下させるだけでなく、ハウジング内面の炭化により可溶体が溶断したにもかかわらずリーク電流がハウジング内面を流れて両端子間の導通状態が継続し、ハウジングおよび端子の溶損が発生する恐れがあった。
【0005】
一方、耐アーク性を維持するために、脂肪族ポリアミド樹脂によるヒューズ素子ハウジングが検討されている。しかし、耐アーク性(a)を優先項目として脂肪族ポリアミド樹脂を選択したことによって、さらなる課題(b)〜(e)が明らかとなった。すなわち、(b)ヒューズ溶断時の変形、(c)ヒューズ視認のための透明性、(d)成形加工時の金型摩耗、(e)使用中の熱変色である。
【0006】
(a)〜(e)を満足する樹脂組成として、ポリアミド6とポリアミド66とからなる混合ポリアミドに分子レベルで分散された層状珪酸塩のシリケート層、酸化防止剤、金属石鹸系滑剤が含まれてなるポリアミド樹脂組成物、およびそれを用いたヒューズ素子が提案されている。(特許文献1)
しかしながら、(e)使用中の熱変色に関しては、いまだ満足できるものはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−123617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高温環境下の長期の使用においても変色の少ない、耐熱変色性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)粘土鉱物を含有するポリアミド樹脂(A)95.6〜99.1質量部、リン系化合物(B)0.3〜1.7質量部、脂肪酸金属塩(C)0.6〜2.7質量部を合計100質量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、厚み2mmの成形体で測定される色調変化△Eが15未満であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)ポリアミド樹脂(A)に含有される粘土鉱物が、膨潤性フッ素雲母、ヘクトライト、セピオライトのいずれかであることを特徴とする(1)のポリアミド樹脂組成物。
(3)リン系化合物(B)がホスファイト系化合物であることを特徴とする(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物。
(4)脂肪酸金属塩(C)がモンタン酸、ベヘン酸またはステアリン酸の、ナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩またはアルミニウム塩であることを特徴とする(1)〜(3)のポリアミド樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)、リン系化合物(B)、および脂肪酸金属塩(C)を予め溶融混練して得られる樹脂組成物(MP)と、粘土鉱物を含有するポリアミド(p)を混合することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(6)樹脂組成物(MP)を得るために用いる粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)の相対粘度が2.2以上である(5)のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(7)樹脂組成物(MP)と粘土鉱物を含有するポリアミド(p)を混合する際に、さらに粘度鉱物を含有しないポリアミド(q)を添加することを特徴とする(5)または(6)のポリアミド樹脂組成物の製造方法
(8)(1)〜(4)のポリアミド樹脂組成物を用いて得られる成形体。
(9)(8)の成形体を用いたヒューズ素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンルーム内の高温環境下の長期の使用においても変色の少ない、耐熱変色性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。このようなポリアミド樹脂組成物は自動車用途のヒューズ素子ハウジングとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、粘土鉱物を含有するポリアミド樹脂(A)、リン系化合物(B)および脂肪酸金属塩(C)を含有してなるポリアミド樹脂組成物である。
【0012】
ポリアミド樹脂(A)におけるポリアミドは、アミノカルボン酸、ラクタム、またはジアミンとジカルボン酸を主たる原料として、アミド結合を主鎖内に有する重合体を主成分とするものである。
アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0013】
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−ウンデカノラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
【0014】
ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等が挙げられ、ジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。なお、これらのジアミンとジカルボン酸は一対の塩として用いることもできる。
【0015】
上記モノマー成分を用いて合成されるポリアミド樹脂として、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリウンデカアミド(ポリアミド11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ポリアミド6/11)、ポリデカミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ポリアミド6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、およびこれらの混合物、あるいはこれらの重合体等が挙げられる。上記の中でも、耐熱性に優れ、成形加工が容易と言う観点から、ポリアミド6、ポリアミド66が特に好ましい。
【0016】
ポリアミド樹脂(A)の相対粘度は特に限定はされず、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体の特性に応じて適宜調整しながら用いることができる。
【0017】
ポリアミド樹脂(A)に含有する粘土鉱物としては、層状珪酸塩および/または繊維状粘土鉱物を用いることができる。
【0018】
層状珪酸塩は、珪酸塩を主成分とする負に帯電した珪酸塩層とその層間に介在するイオン交換能を有するカチオンとからなる構造を有するものであり、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系鉱物、バーミキュライトなどのバーミキュライト系鉱物、白雲母、黒雲母、パラゴナイト、レビトライト、膨潤性フッ素雲母などの雲母系鉱物、マーガライト、クリントナイト、アナンダイトなどの脆雲母系鉱物、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイトなどの緑泥石系鉱物などが挙げられるが、これらの中では、膨潤性フッ素雲母系鉱物(雲母の水酸基をフッ素で置換したもの)、ヘクトライトが、ポリアミド樹脂中における分散性の点で特に好ましい。
【0019】
膨潤性フッ素雲母は一般的に次式で示される構造式を有するものであり、溶融法やインターカレーション法によって得られる。
Naα(MgLiβ)Si
(式中、0≦α≦1, 0≦β≦0.5, 2.5≦x≦3, 10≦y≦11, 1.0≦z≦2.0)
【0020】
ヘクトライトは一般的に次式で示される構造式を有するものであり、天然物、あるいは合成により得られる。
Na0.66(Mg5.34Li0.66)Si20(OH)・nH
【0021】
繊維状粘土鉱物は、八面体の酸化マグネシウム層を中心層として、その両側に正四面体の珪酸塩層が配された三層構造を有するものであり、
繊維状の含水マグネシウム珪酸塩鉱物であることが好ましい。なかでも、ポリアミド樹脂中への分散の容易性、得られたポリアミド樹脂組成物の溶融粘土の上昇を抑制しやすい観点から、特に、セピオライト、パリゴルスカイトが好ましく用いられる。
【0022】
セピオライトはMg(SiO11)・3HOを主成分として含有する天然鉱物であり、パリゴルスカイトはMgAlSi20(OH)・8HOを主成分として含有する天然鉱物である。なお、パリゴルスカイトにおいては、マグネシウムが鉄やアルミニウムによって置換されていてもよい。
【0023】
セピオライトは、八面体の酸化マグネシウム層を中心層として、その両側に正四面体の珪酸塩層が配された三層構造を有するものである。この三層構造はX軸方向(繊維長方向)に沿って伸びているため、セピオライトの結晶は繊維状(繊維状結晶)となる。また複数の繊維状結晶が繊維方向に沿って凝集することもある。
【0024】
層状珪酸塩である膨潤性フッ素雲母、ヘクトライトの陽イオン交換容量(CEC)は特に制限はないが、40〜200ミリ当量/100gであることが好ましく、45〜180ミリ当量/100gであることがより好ましく、50〜160ミリ当量/100gであることが特に好ましい。このCECが40ミリ当量/100g未満のものでは、膨潤能が低いためにシリケート層を含有するポリアミド樹脂組成物の製造時に十分な劈開が達成されず、剛性や耐熱性の向上効果に乏しい。一方、CECが200ミリ当量/100gを越えるものではポリアミド樹脂マトリックスとシリケート層との相互作用が著しく大きくなり、得られたポリアミド樹脂組成物の靱性が大幅に低下し、脆くなるため好ましくない。
【0025】
本発明においては上記した層状珪酸塩または繊維状粘土鉱物の初期粒子径について特に制限はない。ここで初期粒子径とは本発明におけるポリアミド樹脂組成物を製造するに当たって用いる、原料としての層状珪酸塩または繊維状粘土鉱物の粒子径であり、ポリアミド樹脂組成物中の珪酸塩層の大きさとは異なるものである。しかしこの粒子径は、ポリアミド樹脂組成物の機械的物性等に少なからず影響を及ぼし、その物性をコントロールする意味で、必要に応じてジェットミル等で粉砕して粒子径をコントロールすることもできる。また、膨潤性フッ素雲母をインターカレーション法により合成する場合には、原料であるタルクの粒子径を適切に選択することにより初期粒子径を変更することができる。粉砕との併用により、より広い範囲で初期粒子径を調節することができる点で好ましい方法である。
【0026】
ポリアミド樹脂(A)中の粘土鉱物の含有量は、主成分ポリアミド樹脂100質量部あたり0.1〜30質量部とする必要があり、0.5〜20質量部とすることがより好ましく、0.8〜15質量部とすることが特に好ましい。
層状珪酸塩のシリケート層はナノメートルサイズで微細に分散しているために、他の補強材よりも樹脂マトリックスの補強効率が高い。このため、例えばガラス繊維強化樹脂と同等の剛性を得るための添加量が少なくて済み、本発明のポリアミド樹脂組成物をヒューズ素子ハウジングのような薄肉の成形体として使用する場合、シリケート層自体の大きさも手伝って特にその透明性が高くなる。また、補強材のサイズがきわめて小さいために、金型の摩耗度は補強材を含まないポリアミド樹脂と実質的に同等であって、射出成形による大量の連続生産においては、ガラス繊維などの他の補強材と比べて金型の摩耗量を大幅に低下させることができ、生産性にも優れている。この配合量が0.1質量部未満では、層状珪酸塩の珪酸塩層による樹脂マトリックスの補強効果が乏しく、ヒューズ素子用ポリアミド樹脂組成物としたときの剛性や耐熱性が低下する。一方、この配合量が30質量部を超えると、靱性が低下し、また、ポリアミド樹脂組成物の透明性が低下するため好ましくない。
繊維状粘土鉱物は繊維状態を保ちながらナノメートルサイズで微細に分散しているために、本発明のポリアミド樹脂組成物をヒューズ素子ハウジングのような薄肉の成形体として使用する場合、透明性を損ねず、補強材として成形体の補強効果を高めることができる。
【0027】
本発明におけるリン系化合物(B)は、ポリアミド樹脂組成物の耐熱変色性を向上させるものである。好ましく用いることができるリン系化合物としては、トリスノニルフェネルフォスファイト(「アデカスタブ1178」)、トリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(「アデカスタブ2112」)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(「アデカスタブPEP−4」)、ジステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(「アデカスタブPEP−8」)、ビス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト(「アデカスタブPEP−24G」)、ビス(2、6、ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(「アデカスタブPEP−36」)、2、2−メチレンビス(4、6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(「アデカスタブHP−10」)のようなホスファイト化合物、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェートのようなホスフェート化合物、テトラキス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)−4、4´−ビフェニレン−ジ−ホスホナイトのようなホスホナイト化合物が挙げられる。
【0028】
リン系化合物(B)の中でも、ポリアミド樹脂組成物の耐熱変色性の向上効果が高い点でホスファイト化合物をより好ましく用いることができ、特にペンタエリスリトールジホスファイト骨格を有し、分子量が600以上800未満のホスファイト化合物をさらに好ましく用いることができる。そのようなホスファイト化合物として、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(「アデカスタブPEP−4」、分子量633)、ジステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(「アデカスタブPEP−8」、分子量733)、ビス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト(「アデカスタブPEP−24G」、分子量604)、ビス(2、6、ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(「アデカスタブPEP−36」、分子量633)を特に好ましく用いることができる。それらの中でも、耐熱性に優れるビス(2、6、ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを最も好ましく用いることができる。
【0029】
リン系化合物(B)の配合量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部中0.3〜1.7質量部であることが好ましく、0.5〜1.5質量部であることがより好ましく、0.7〜1.3質量部であることがさらに好ましい。リン系化合物(B)の配合が0.3質量部未満であるとポリアミド樹脂組成物の耐熱変色性の改善が不十分であり、1.7質量部を超えるとポリアミド樹脂と混合したときに溶融粘度増大が著しく、押出トルクが上限を超えたりストランドとして引き取れないといった、操業性低下が顕著となるため好ましくない。
【0030】
本発明における脂肪酸金属塩(C)は、ポリアミド樹脂組成物を製造する際に金型からの離型性を向上させるだけではなく、ポリアミド樹脂組成物(MP)を製造する際に、リン系化合物によるポリアミド樹脂組成物の増粘を抑え、混練操業性を向上させる機能を有する。好ましく用いることができる脂肪酸金属塩としては、モンタン酸、ベヘン酸またはステアリン酸の、ナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩またはアルミニウム塩である。これらの中で、ポリアミド樹脂組成物を製造する際の混練操業性改善効果と、得られたポリアミド樹脂組成物を用いて成形する際の金型離型性の観点から、ベヘン酸金属塩であることが好ましく、ベヘン酸ナトリウムまたはベヘン酸リチウムが特に好ましい。
【0031】
脂肪酸金属塩(C)の配合量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部中0.1〜1.0質量部であることが好ましく、0.12〜0.8質量部であることがより好ましく、0.15〜0.6質量部であることが特に好ましい。脂肪酸金属塩(C)の配合が0.6質量部未満であるとポリアミド樹脂組成物を製造する際の離型性や、マスターペレット用樹脂組成物製造時の増粘抑制効果が乏しくなるため好ましくなく、2.7質量部を超えると、ポリアミド樹脂組成物を成形して得られる成形体の透明性が大きく損なわれる。
【0032】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明をする。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)、リン系化合物(B)、脂肪酸金属塩(C)を予め溶融混練して得られる樹脂組成物(MP)に対し、粘土鉱物を含有するポリアミド(p)を混合して、または粘土鉱物を含有するポリアミド(p)および粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)を混合して射出成形を行うことにより、耐熱変色性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。樹脂組成物(MP)は、以下、マスターペレットと称することがある。
【0033】
ポリアミド(p)は、ポリアミドに対し粘土鉱物を含有させたものである。
【0034】
これは前記した粘土鉱物の存在下に、所定量の前記モノマーを重合することによるか、または粘土鉱物とポリアミドとを溶融混練することによって得られたポリアミド樹脂を使用することにより可能となる。好ましくは前者の方法で得られたポリアミド樹脂を使用することである。重合は、ポリアミド6またはポリアミド66のモノマーと粘土鉱物の所定量をオートクレーブに仕込んだ後、温度240〜300℃、圧力0.2〜3MPa、1〜15時間の範囲内で溶融重合を行うことにより行えばよい。その時の溶融重合の条件は、ポリアミド6、ポリアミド66を溶融重合する通常の条件を採用することができる。
【0035】
粘土鉱物を含有するポリアミド樹脂を重合する際には、酸を添加することが好ましい。酸を添加することにより、粘土鉱物の劈開や解繊が促進され、樹脂マトリックス中への珪酸塩層の分散がより進行する。これにより、剛性や耐熱性の高いポリアミド樹脂が得られる。上記の酸としては、pKa(25℃、水中での値)が0〜6または負の酸であるなら有機酸でも無機酸でもよく、具体的には安息香酸、セバシン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、過塩素酸等が挙げられる。酸の添加量は、使用する層状珪酸塩の全陽イオン交換容量に対して3倍モル量以下とすることが好ましく、1〜1.5倍モル量がより好ましい。この添加量が3倍モル量を超えると、ポリアミド樹脂の重合度が上がりにくくなり、生産性が低下するため好ましくない。
【0036】
樹脂組成物(MP)は、粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)、リン系化合物(B)、脂肪酸金属塩(C)を予め溶融混練して得られるポリアミドを主体とした樹脂組成物である。ここで、樹脂組成物(MP)は、後述の射出成形時に粘土鉱物を含有するポリアミド(p)と混合して用いるか、粘土鉱物を含有するポリアミド(p)および粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)と混合して用いるものである。すなわち、樹脂組成物(MP)に対しポリアミド(p)およびポリアミド(q)を加えることは、ポリアミド樹脂組成物(MP)に含有するリン系化合物(B)、脂肪酸金属塩(C)の含有率(以下、初期含有率という)がポリアミド(p)およびポリアミド(q)の加える割合に応じて希釈されることを意味する。樹脂組成物(MP)に対するポリアミド(p)およびポリアミド(q)の加える割合は、適宜調整を行うことができるが、得られるポリアミド樹脂組成物100質量部におけるポリアミド樹脂(A)、リン系化合物(B)および脂肪酸金属塩(C)の比率が、それぞれポリアミド樹脂(A)85〜98質量部、リン系化合物(B)1〜5質量部、脂肪酸金属塩(C)1〜10質量部となるように調整すればよい。
樹脂組成物(MP)は、ポリアミド(q)、リン系化合物(B)、脂肪酸金属塩(C)の3成分を溶融混練して得られるものであるが、ポリアミド(q)に対しリン系化合物(B)を高濃度で溶融混練する場合には、溶融混練時の樹脂組成物の溶融粘度が急激に高まり溶融混練が困難となることがあるが、そのような場合であっても、脂肪酸金属塩(C)を同時に溶融混練することにより樹脂組成物の溶融粘度の急激な上昇を抑制し、効率よく溶融混練することが可能となる。
【0037】
樹脂組成物(MP)を得るために用いるポリアミド(q)は96質量%濃硫酸を溶媒とし、温度25℃、濃度1g/dlの条件で測定した相対粘度が2.2以上であることが好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.4以上であることがさらに好ましい。相対粘度が2.2未満であると、ポリアミドの劣化が進行しやすくなり、ポリアミド樹脂組成物の耐熱変色性が劣ることがある。
【0038】
樹脂組成物(MP)100質量部におけるポリアミド(q)、リン系化合物(B)、脂肪酸金属塩(C)の配合割合は、ポリアミド(q)85〜98質量部、リン系化合物(B)1〜5質量部、脂肪酸金属塩(C)1〜10質量部であることが好ましい。
リン系化合物(B)の配合割合が、5質量部を超えると樹脂組成物の溶融粘度の上昇が著しく、脂肪酸金属塩(C)を所定量用いたとしても、もはや溶融粘度上昇の抑制が難しくなる。脂肪酸金属塩(C)の配合割合が、1質量部未満であると、リン系化合物(B)に起因する樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑制することが難しくなる。樹脂組成物の溶融粘度の上昇は、溶融混練時の操業性を低下させるばかりでなく、ストランドの引取りが困難となり、樹脂ペレットの採取が困難となる。
【0039】
ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)と脂肪族金属塩(C)を含んでなるポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、その後のヒューズ素子用樹脂組成物に用いる際の扱いやすさの観点から、二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット状で得ることが好ましい。二軸押出機のバレル温度は、ポリアミド樹脂(A)が溶融する温度であればよいが、温度が高すぎる場合には、溶融混練中にリン系化合物(B)が分解してしまい、耐熱変色効果を低減させてしまうため、好ましくない。そのため、好ましいバレル温度は、ポリアミド樹脂(A)の融点+5℃〜+100℃までである。
【0040】
上記の方法でポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)と脂肪族金属塩(C)を溶融混練することで、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)のみを溶融混練する場合に比べて、混練操業性が非常によく、スムーズにペレット状を形成し、マスターペレットを得ることができる。
【0041】
上記のようなポリアミド(p)、ポリアミド(q)、マスターペレット(MP)を混合したポリアミド樹脂組成物は、それぞれをペレットブレンドして射出成形に供することが好ましいが、一旦それらを混合して溶融混練した後、得られた溶融混練ペレットを用いて射出成形に供することもできる。これにより、経済的かつ耐熱変色性、離型性に優れた小型射出成形品を得ることができる。
【0042】
射出成形方法は特に限定されるものではなく、ポリアミド(p)、ポリアミド(q)、マスターペレット(MP)が十分に溶融する温度であればよいが、過度に高温であると熱変色が起きてしまうため、注意する必要がある。射出成形機シリンダーヘッド部の温度の目安は、ポリアミド樹脂の融点+5℃〜+100℃であればよい。溶融混練ペレットを作製する場合の二軸押出機のシリンダー部の温度の目安は、ポリアミド樹脂の融点+5℃〜+100℃であればよい。
【0043】
本発明におけるポリアミド樹脂組成物を製造するに当たっては、その特性を大きく損なわない限りにおいて、他の熱安定剤や酸化防止剤、強化材のほか、染料、顔料、着色防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤、離型剤等を添加してもよく、これらはポリアミド(p)、ポリアミド(q)、樹脂組成物(MP)の製造時に必要に応じて添加すればよく、また、別途マスターペレットを製造してポリアミド樹脂(A)、リン系化合物(B)、脂肪族金属塩(C)とともにブレンドしてもよい。
【0044】
他の強化材の例としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、ゼオライト、ハイドロタルサイト、窒化ホウ素、グラファイト等が挙げられる。
【0045】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、高温環境下の長期の使用においても変色の少ない。
厚さ2mmである成形体において、150℃のオーブンで50時間加熱処理をした際の、加熱前後での色調変化△Eが15未満であることが必要であり、12未満であることが好ましく、10未満であることがより好ましい。
【0046】
本発明のポリアミド樹脂組成物は優れた耐アーク性、耐熱変形性、透明性、耐金型摩耗性を有し、射出成形、押出成形、吹込成形等の加工方法で各種成形体に成形することができる。中でも、電気・電子部品のハウジング材、容器等に好ましく用いることができ、小型の成形品として、車載用のヒューズ素子のハウジングとして好適に使用ができる。車載用のヒューズ素子のハウジングは射出成形によって成形加工されるが、非常に小型、薄肉であり、精密成形によって成形を行うため、金型取出しに離型性が低下すると形状を保ったままの取出しが不能となり変形や破損を伴う。そのような場合であっても、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて成形した成形体は、容易に離型し、また連続的に成形を行っても離型性を維持することができる。さらには、ヒューズ素子のハウジングとして、車載の、特にエンジンルーム等の高温環境下で長時間の使用がされた場合であっても、耐熱変色性に優れるため、透明性が低下せず、ヒューズ素子可溶体の切断の有無を容易に視認が可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた原料を示す。
【0048】
1.原料
(1)ポリアミド
q−1:ポリアミド6(ユニチカ社製、商品名「A1030BRL」、相対粘度=2.5)
q−2:ポリアミド6(ユニチカ社製、商品名「A1015」、相対粘度=2.0)
q−3:ポリアミド66(ユニチカ社製、商品名「A125」)
(2)酸化防止剤
b−1:リン系酸化防止剤;ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(ADEKA社製、商品名「PEP−36」)
b−2:リン系酸化防止剤;ブチルアシッドホスフェート(城北化学社製、商品名「JP−504」)
b−3:フェノール系酸化防止剤(BASF社製、商品名「Irganox1098」)
b−4:ヒンダードアミン系酸化防止剤(日本サイテック・インダストリー社製、商品名「サイアソーブUV−3346」)
(3)脂肪酸金属塩
c−1:ベヘン酸ナトリウム
c−2:モンタン酸ナトリウム
c−3:ラウリン酸ナトリウム
(4)粘土鉱物
d−1:膨潤性フッ素雲母(コープケミカル社製、商品名「ME−100」)
d−2:ヘクトライト(Elementis Specialities社製、商品名「Bentone HC」)
d−3:セピオライト(TOLSA社製、商品名「PANGEL HV」)
【0049】
2.試験方法
(1)混練操業性
同方向ニ軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用いて溶融混練し、押出トルクが95%未満およびストランド切れが起こらない状態を◎、押出トルクが85%未満およびストランド切れが起こらない状態を○、押出トルクが95%以上もしくはストランド切れが起こる状態を×とした。
(2)離型性
射出成型機(東芝機械社製EC−100II型)を用い、バレル温度280℃、金型温度30℃の設定で、10mm×10mm×1mmの成形体を10万ショット射出成形した。全ショット数に占める離型不良品の割合(%)を計算して評価した。0.5%未満を◎、0.5%以上1%未満を○、1%以上を×とした。
(3)耐熱変色性
射出成型機(東芝機械社製EC−100II型)を用い、バレル温度280℃、金型温度30℃の設定で、50mm×90mm×2mmのプレートを成形した。これを150℃のオーブンで50時間熱処理をし、熱処理前後の色調変化ΔEを、日本電色工業社製SZ−Σ90型色差計で測定した。△Eが10未満を◎、10以上15未満を○、15以上を×とした。
(4)透明性
射出成型機(東芝機械社製EC−100II型)を用い、バレル温度280℃、金型温度30℃の設定で、50mm×90mm×1mmのプレートを成形した。このプレートの全光線透過率をヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名「NDH−2000」)を使用し、JIS K7105に従い測定した。全光線透過率が40以上の場合を◎、30以上40未満の場合を○、30未満の場合を×とした。
【0050】
[ポリアミド(p)の製造]
【0051】
・p−1:膨潤性フッ素雲母配合ポリアミド6
ε−カプロラクタム1kgおよび膨潤性フッ素雲母(d−1)400gを水に1kg混合し、ホモミキサー(プライミクス社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARKII20」)を用いて1時間撹拌した。引き続いて、予めε−カプロラクタム9kgを仕込んでおいた内容積30リットルのオートクレーブに、前記混合液および85質量%リン酸水溶液46.2gを投入し、攪拌しながら120℃にまで昇温し、その後1時間その温度を維持しつつ攪拌を続けた。引き続いて、260℃に加熱し、圧力1.5MPaまで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放出しつつ温度260℃、圧力1.5MPaを2時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに40分間重合した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断し、これを精練して、膨潤性フッ素雲母配合ポリアミド6(p−1)を得た。膨潤性フッ素雲母配合ポリアミド6(p−1)中、膨潤性フッ素雲母の含有率は4質量%であった。
【0052】
・p−2:ヘクトライト配合ポリアミド6
ヘクトライト(d−2)400gを用いた以外は参考例1と同様にして、ヘクトライト配合ポリアミド6(p−2)を得た。ヘクトライト配合ポリアミド6(p−1)中、ヘクトライトの含有率は4質量%であった。
【0053】
・p−3:セピオライト配合ポリアミド6
ε−カプロラクタム10kgおよびセピオライト(d−3)500g、水に1kg、85質量%リン酸水溶液46.2gを混合し、80℃に加温しながらホモミキサー(プライミクス社製、商品名「T.K.ホモミクサーMARKII20」)を用いて1時間撹拌した。引き続いて、前記混合物を内容積30リットルのオートクレーブに投入し、攪拌しながら120℃にまで昇温し、その後1時間その温度を維持しつつ攪拌を続けた。引き続いて、260℃に加熱し、圧力1.5MPaまで昇圧した。そして徐々に水蒸気を放出しつつ温度260℃、圧力1.5MPaを2時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに40分間重合した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断し、これを精練して、セピオライト配合ポリアミド6(p−3)を得た。セピオライト配合ポリアミド6(p−3)中、セピオライトの含有率は5質量%であった。
【0054】
[マスターペレットの製造]
【0055】
製造例1
同方向ニ軸押出機(東芝機械社製TEM37BS型)を用いて、表1の組成となるよう、5kg仕込み、各原料を押出機の根元供給口からトップフィードし、バレル温度250〜270℃、スクリュー回転数200rpm、吐出15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。押出機先端から吐出された溶融樹脂をストランド状に引き取り、冷却水で満たしたバットを通過させて冷却固化した後、ペレット状にカッティングしてマスターペレット(MP−1)を得た。
【0056】
製造例2〜17
組成を表1および表2の通りとした以外は製造例1と同様に溶融混練を行い、マスターペレット(MP−2)〜(MP−17)を得た。製造例8は脂肪酸金属塩を用いなかったためにポリアミド樹脂の増粘が過度に起こってしまい、マスターペレットを得ることができなかった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
[ポリアミド樹脂組成物成形体の製造]
実施例1
ポリアミド(p−1)350g、ポリアミド(q−1)580g、および実施例1で得られたマスターペレット(MP−1)70gを均一になるようにペレットブレンドし、射出成型機(東芝機械社製EC−100II型)を用い、バレル温度280℃、金型温度30℃の設定条件下、射出成形を行って試験片を得た後、各種評価を行った。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
実施例2〜18
表3、4に記載のポリアミド(p−1)〜(p−3)、ポリアミド(q−1)〜(q−3)、マスターペレット(MP−2)〜(MP−6)、(MP−16)、(MP−17)を用い、所定の配合でペレットブレンドした以外は、実施例1と同様の操作を行って試験片を得た後、各種評価を行った。その結果を表3、4に示す。
【0063】
比較例1〜6
表5に記載のポリアミド(p−1)、ポリアミド(q−1)、マスターペレット(MP−7)、(MP−9)、(MP−12)〜(MP−15)を用い、所定の配合でペレットブレンドした以外は、実施例1と同様の操作を行って試験片を得た後、各種評価を行った。その結果を表3に示す。
【0064】
比較例7
実施例1と同様の組成となるようポリアミド樹脂(A)、リン系化合物(B)、脂肪酸金属塩(C)の配合を行い、一括で溶融混練を行った。なお、溶融混練の条件は実施例1と同様の条件で行った。得られた試験片の離型性は0.8%、耐熱変色性△Eは20、透明性は30であった。
【0065】
【表5】

【0066】
実施例1〜9において、所定の配合を用いたマスターペレットを用いることにより、離型性、耐熱変色性、透明性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができた。
【0067】
比較例1は、マスターペレットを製造する際に用いたポリアミド樹脂の相対粘度が低すぎたため、樹脂の劣化が早く、得られた成形品の耐熱変色性が劣った。
【0068】
比較例2は、リン系酸化防止剤の配合量が過少であったために、得られた成形品の耐熱変色性が劣った。
【0069】
比較例3は、ベヘン酸ナトリウムの配合量が過多であったために、得られた成形品の透明性が劣った。
【0070】
比較例4、5は、リン系化合物以外の酸化防止剤を用いたため、得られた成形品の耐熱変色性が劣った。
【0071】
比較例6は、所定の脂肪酸金属塩を用いなかったため、成形品を得る際に金型からの離型性が悪く、また脂肪酸金属塩自身の耐熱性が低かったために、得られた成形品の耐熱変色性が劣った。


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物を含有するポリアミド樹脂(A)95.6〜99.1質量部、リン系化合物(B)0.3〜1.7質量部、脂肪酸金属塩(C)0.6〜2.7質量部を合計100質量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、厚み2mmの成形体で測定される色調変化△Eが15未満であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂(A)に含有される粘土鉱物が、膨潤性フッ素雲母、ヘクトライト、セピオライトのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
リン系化合物(B)がホスファイト系化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
脂肪酸金属塩(C)がモンタン酸、ベヘン酸またはステアリン酸の、ナトリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩またはアルミニウム塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)、リン系化合物(B)、および脂肪酸金属塩(C)を予め溶融混練して得られる樹脂組成物(MP)と、粘土鉱物を含有するポリアミド(p)を混合することを特徴とするポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
樹脂組成物(MP)を得るために用いる粘土鉱物を含有しないポリアミド(q)の相対粘度が2.2以上である請求項5記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
樹脂組成物(MP)と粘土鉱物を含有するポリアミド(p)を混合する際に、さらに粘度鉱物を含有しないポリアミド(q)を添加することを特徴とする請求項5または6記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法
【請求項8】
請求項1〜4いずれか記載のポリアミド樹脂組成物を用いて得られる成形体。
【請求項9】
請求項8記載の成形体を用いたヒューズ素子。



【公開番号】特開2013−40269(P2013−40269A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177555(P2011−177555)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】