説明

ポリアミド粉末の溶融温度と結晶化温度との差を広げる方法

【課題】少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミド粉末の結晶化温度および溶融温度を下げる方法。
【要約】結晶化温度の低下が溶融温度の低下よりも大きくする。少なくとも一種の主成分のモノマーと少なくとも一種の別のマイナー成分のコモノマーとを重合する段階を含み、コモノマーは少なくとも一種の主成分のモノマーと同じ重合法に従って重合し、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーはアミノカルボン酸、ジアミン.二酸カップル、ラクタムおよび/またはラクトンの中から選択され、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%を占める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融温度と結晶化温度との差(Tf−Tc)を広げたポリアミド、例えばコポリアミドおよびコポリエステルアミドに関するものである。
本発明はさらに、上記のようなコポリアミドまたはコポリエステルアミドの粉末の製造方法に関するものである。この本発明方法は使用する重合形式:加水分解重縮合、アニオン重合またはカチオン重合のいずれにも適用できる。
【背景技術】
【0002】
Tf(融点)とTc(結晶点)の差が大きいポリアミドベース粉末は多くの用途で有用であり、特に、レーザービーム、赤外線、紫外線、その他任意の電磁線を放射(照射)することで粉末を溶融または焼結して物品を製造するする、粉末凝集技術(レーザー焼結法等)で有用である。
【0003】
レーザービームでポリアミド粉末を凝集する技術は3次元物品、例えばプロトタンプ(原型)やモデルを製造する上で有用であり、特に自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(プロテーゼ、聴覚系、細胞組織等)、織物、衣類、ファッション、装飾、電子ケーシング、電話、ホーム・オートメーション、情報技術および照明の分野で利用されている。
【0004】
レーザー焼結法では、ポリアミド粉末の結晶化温度Tcと溶融温度Tfとの間の温度に加熱された室内に保持された水平板上にポリアミド粉末の薄い層を堆積させ、製作する物品に対応した幾何形状に従って、粉末層内の種々の個所の粉末粒子を例えばコンピュータ制御されるレーザーで凝集させる。コンピュータは上記物品の形状をメモリ内に記憶しており、物品をスライスした形で再構成する。その後、水平板を粉末層の厚さに対応する値(例えば、0.05〜2mm、一般には約0.1mm)だけ下げ、新しい粉末層を堆積させ、物品の新しいスライスに対応した幾何形状に従ってレーザーで粉末粒子を凝集させる。物品全体ができるまで上記の操作を繰り返し、最後には粉末で覆われた物品が得られる。凝集しなかった部分は粉末で残る。全体を徐冷し、結晶化温度Tcより低い温度になると物品は凝固する。完全冷却後、物品を粉末から分離する。分離した粉末は次の操作で再利用できる。
【0005】
レーザービームを作用させた直後のサンプル温度は粉末の結晶化温度(Tc)より高い。しかし、新しい低温の粉末層が導入されると、部品の温度は急速に低下する。サンプル温度がTcより低くなると変形(カーリング現象)が起こる。また、機械中の粉末温度が粉末の溶融温度(Tf)に近づくと、部品の外周で固体になる(ケーキング現象)。その結果、物品表面のある部分の粉末が集合または塊になり、最終物品の仕上りが悪くなる。
【0006】
これらの現象を避けるために、粉末のTcをTfからできるだけ離すことが重要である。放射による溶融で粉末粒子を凝集させる装置の作業温度範囲(ウインドー)は粉末の上記Tf−Tc差で決まる。この作業ウインドーはその上限温度とその下限温度で定義される。作業ウインドーの上限は凝集またはケーキングが起こる温度に対応し、作業ウインドーの下限は歪み、変形または「カーリング」が起こる温度に対応する。使用する機械中で粉末を良好な条件下で利用するため、すなわち、得られた部品で欠陥の原因となる上記現象が生じないようにするために、当業者はその装置の作業ウインドーを一般に約10℃にしている。
【0007】
さらに、製造された部品の幾何形状を良く定義するためには融解エンタルピー(ΔHf)をできるだけ高くすることが要求される。すなわち、この融解エンタルピーが過度に低いとレーザーが供給するエネルギーによって構築中の壁の近くの粉末粒子が熱伝導により焼結され、部品の幾何学的精度が満足のいくものではなくなる。
【0008】
レーザービームによるポリアミド粉末の凝集に関する上記の説明の全ては溶融をさせる電磁放射線の種類や、溶融プロセスが選択的か、非選択的かに関わらず、全てに当てはまることは明らかである。
【0009】
特許文献1(米国特許第6,245,281号明細書=欧州特許第0,911,142号公報)には融点および融解エンタルピーを大きくしたポリアミド12(PA12)粉末を選択的レーザー焼結で使用することが記載されている。この粉末のTfは185〜189℃、Tcは138〜143℃で、従って、42℃<Tf−Tc<51℃であり、ΔHfは112±17J/gである。この粉末は特許文献2(ドイツ国特許第2906647号公報=米国特許第4,334,056号明細書)に記載の方法でラウリルラクタムを開環し、重縮合し、得られたポリアミド12を沈殿させて得る。この特許の方法は複数の段階を必要とする。先ず最初に縮合によってPA12を製造し、次に130〜150℃のエタノールに溶解し、エタノール溶液を撹拌下に125℃以下に徐冷してPA12を粉末状で沈殿させる。この方法で得られる粉末の一つの欠点は粉末中に存在する残留モノマーのガスが焼結プロセス中に発生することにある(特に製造チャンバーをポリマーの溶融温度の直ぐ下の温度に維持した場合)。このモノマーのガスは昇華し、機械部品上に堆積し、機械を損傷させる。特に、上記モノマーが光学面上に縮合すると製造条件が変わってしまい、性能および精度が低下する。この問題を解決するためにポリアミド粉末の調製中に複雑な中間段階を追加することはできるが、この追加段階では高温アルコール中でポリアミドから残留モノマーを抽出するといったコストのかかる操作が必要である。
【0010】
特許文献3(フランス国特許第2,867,190号公報)には、充填剤と式:R1−NH−CO−R2のアミドとの存在下で溶剤に溶解したラウリルラクタムからアニオン型合成法でTfの高い(Tcは変わらない)を有するポリアミド12粉末の製造方法が記載されている。この文献の方法は、溶剤をラクタム過飽和状態、すなわち溶剤中のラクタムのTcより低い温度に置くことにある。この方法で得られたポリアミド12粉末は残留モノマーをほとんど含まず、融点が少なくとも180℃、好ましくは182〜184℃で、結晶化温度が約135±1℃である。この方法は極めて正確な制御および工業条件下での温度のモニタリングを必要とする。
【0011】
特許文献4(フランス国特許第2,873,380号公報)には粉末の結晶化温度を変えずにポリアミドの溶融温度および融解エンタルピーを増加させる方法が記載されている。この方法では予め製造したポリアミド、例えばPA11を水で処理してTfを上げる。細かくした(顆粒または粉末)のポリアミドをその結晶化温度Tcに近い温度で固体状態で水または水蒸気と接触させた後、水から分離し、乾燥する。この方法ではポリアミド自体の製造に続いて複数の段階を必要とする。乾燥段階はこの方法の律速段階である。
【0012】
特許文献5(フランス国特許出願第06/56029号公報)はポリアミドのシェルとポリアミドのコアから成るシードによる粉末粒子の製造方法を対象とし、この方法ではポリアミドの粉末粒子から成るシードの存在下で溶剤に溶かしたラウリルラクタムまたはカプロラクタムモノマーまたはこれらの混合物をアニオン重合する。シードと成るポリアミド粉末のコア/シェル構造によってTfは変わらないがTcははるかに低くなる。得られた粉末のTf−Tcの差の絶対値は従来法の粉末より高い。しかし、得られたTfとTcの差は上記特許文献3(フランス国特許第2,867,190号公報)の方法を用いた場合ほど大きくはない。
【0013】
本発明の一つの目的は、既存のポリアミドのTf−Tc差を効率的に大きくさせる方法を提供することにある。
本発明の一つの目的は、Tf−Tc差を大きくしたポリアミド、特に粉末または顆粒の形をしたポリアミドを、単純、迅速(段階数ができる限り少なく)、容易に実施でき、しかも、粉末凝集法で物品を製造する機械の機能に影響を与える残留モノマーを殆どあるいは全く含まない状態で製造する方法を提供することにある。
【0014】
凝集プロセスを改良するために、使用する粉末を適合させる手段は種々高地であり、特に特許文献6(国際特許第2005/085,326号公報)、特許文献7(国際特許第2005/082,979号公報)、特許文献8(国際特許第2005/082,973号公報)に開示されている。しかし、一般に、この粉末適合法には粉末の機械特性、従って最終三次元物品の機械特性を大きく変えてしまうという欠点がある。
【0015】
例えば、上記特許文献7(国際特許第2005/082,979号公報)では各層毎に粉末を選択(レーザー)凝集する方法で物品を製造するのにコポリマー、コポリエステルおよび/またはコポリアミド(Vestamelt、登録商標)から成る粉末を使用する。コポリマーの例としては特にPA12/6/6.12(質量百分率比40/30/30)およびPA12/6/6.6(質量百分率比33/33/33または60/25/15)が挙げられる。このコポリマー粉末を使用することで従来粉末より低い温度で凝集プロセスが実施できる。このコポリマー粉末を用いて得られた材料は軟質で、十分なモジュラスがなく、使用温度、例えば室温あるいは航空機または自動車の分野でのエンジンの加熱温度、さらには、情報技術の分野(電池で発生する熱)での耐久性が十分でない。
【0016】
本発明の一つの目的は、ポリアミド粉末を凝集して得られる最終製品がその用途に合った特性を有するようにするためにポリアミド粉末の機械特性を維持し、しかも、ポリアミド粉末のTfとTcの差を大きくすることにある。特に、最終製品の材料は十分な強度と可撓性、特に1500N/mm2以上のモジュラと15%以上、好ましくは20%以上の破断点伸びとを有する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,245,281号明細書(=欧州特許第0,911,142号)
【特許文献2】ドイツ国特許第2906647号公報(=米国特許第4,334,056号明細書)
【特許文献3】フランス国特許第2,867,190号公報
【特許文献4】フランス国特許第2,873,380号公報
【特許文献5】フランス国特許出願第06/56029号公報
【特許文献6】国際特許第2005/085,326号公報
【特許文献7】国際特許第2005/082,979号公報
【特許文献8】国際特許第2005/082,973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者は上記の種々の必要条件を満たすポリアミドの製造方法を見出した。
本発明方法は単純、迅速(一段階)で、残留モノマーをほとんど生成せずにポリアミドのTf−Tc差を広げる方法である。
本発明方法では、得られた粉末および3次元物品(例えばこの粉末を電磁線の商社で溶融して凝集する技術で得られる物品)でポリアミドの通常の機械的特性(破断弾性率および破断点伸び)が維持される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一つの対象は、溶融温度および結晶化温度をISO 11357−3に従ってDSCで測定した時に、少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミドの結晶化温度および溶融温度を下げ、且つ、上記の少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミドの結晶化温度および溶融温度にそれぞれ対応する結晶化温度の低下度が溶融温度の低下度よりも大きくなるようにするための、上記の少なくとも一種の主成分のモノマーの重合法での少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーの使用であって、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記の少なくとも一種の主成分のモノマーと同じ重合法で重合され、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーはアミノカルボン酸、ジアミン.二酸のカップル(対)、ラクタムおよび/またはラクトンの中から選択され、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%を占めることを特徴とする使用にある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】はポリアミド11(PA11)中のコモノマー(ラクタム12またはモノマー6.6)の含有率がTfとTcとの差の変化に与える影響を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記のマイナー成分と主成分のモノマーとの重合はアニオン重合であるのが有利である。
上記のマイナー成分と主成分のモノマーとの重合は加水分解重縮合であるのが有利である。
少なくとも一種の主成分のモノマーは11−アミノウンデカン酸および/またはラクタム12および/またはデカンジアミン−セバシン酸カップル(10.10)から成るのが有利である。
【0022】
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーはアミノカルボン酸、好ましくは4〜18の炭素原子を含むα,ω−アミノカルボン酸、4〜18の炭素原子を含むジアミン.二酸のカップル(対)、3〜18の炭素原子を含むラクタム、3〜18の炭素原子を含むラクトンおよびこれらの混合物の中から選択するのが有利である。
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは11−アミノウンデカン酸、11−n−ヘプチルアミノウンデカン酸、ラウリルラクタム、カプロラクタムおよび/またはカプロラクトンから成るのが有利である。
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18、10.T(Tはテレフタル酸)の少なくとも一種のジアミン.二酸のカップルから成るのが有利である。
【0023】
本発明の別の対象は、少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミド(ホモポリアミドまたはコポリアミド)の結晶化温度および溶融温度を下げる方法にある。この方法では、結晶化温度の低下度が溶融温度の低下度より大きく、少なくとも一種の主成分のモノマーを少なくとも一種の別のマイナー成分のコモノマーと一緒に上記の少なくとも一種の主成分のモノマーと同じ重合法に従って重合する段階を含み、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーはアミノカルボン酸、ジアミン.二酸のカップル、ラクタムおよび/またはラクトンから成り、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%を占める方法にある。
【0024】
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の1〜7質量%、好ましくは1〜5質量%を占め、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは11−アミノウンデカン酸および/またはラウリルラクタムおよび/またはカプロラクタムおよび/またはカプロラクトンおよび/または6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18および/または10.T(ここでTはテレフタル酸である)のジアミン.二酸のカップルの少なくとも一種から成るのがさらに好ましい。
【0025】
本発明方法の一つの実施例では、上記のマイナー成分と主成分のモノマーの重合をアニオン重合で行う。
本発明方法の別の実施例では、上記のマイナー成分と主成分のモノマーとの重合を加水分解重縮合で行う。
少なくとも一種の主成分のモノマーは11−アミノウンデカン酸および/またはラクタム12および/またはデカンジアミン.セバシン酸のカップル(10.10)から成るのが有利である。
重合段階の後に、溶解、沈殿、押出、噴霧、スプレー、低温噴霧、高温噴霧、破砕、極低温破砕、ふるい分け、増粘およびこれらの組合せの中から選択される少なくとも一つの段階をさらに含むのが有利である。
【0026】
本発明のさらに別の対象は、上記定義の方法を用いて製造されたコポリアミドまたはコポリエステルアミド粉末にある。この粉末は同じ重合法に従って重合した少なくとも2つの異なるモノマーの重合で得られ、少なくとも一種のコモノマーはアミノカルボン酸、ジアミン.二酸のカップル、ラクタムおよび/またはラクトンの中から選択され、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%を占める。
【0027】
上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の1〜7質量%、好ましくは1〜5質量%を占め、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは11−アミノウンデカン酸および/またはラウリルラクタムおよび/またはカプロラクタムおよび/またはカプロラクトンおよび/または6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18および/または10.T(ここでTはテレフタル酸)のジアミン.二酸のカップルの少なくとも一種から成るのがさらに好ましい。
【0028】
本発明の一つの実施例では、本発明粉末は11−アミノウンデカン酸を主成分とするモノマーと、ヘキサメチレンジアミン.アジピン酸のカップル(6.6)、ラウリルラクタム、カプロラクタムおよび/またはカプロラクトンの中から選択される少なくとも一種のマイナー成分のモノマーとから得られる。
本発明の別の実施例では、本発明粉末はラウリルラクタムを主成分とするモノマーと、カプロラクタム、カプロラクトンおよび/またはヘキサメチレンジアミン.アジピン酸のカップル(6.6)の中から選択されるマイナー成分のモノマーとから得られる。
【0029】
本発明粉末は下記のポリアミドの中から選択するのが好ましい:1〜7%の11−アミノウンデカン酸を含むPA11/6.6、1〜5%のN−ヘプチルアミノ酸を含むPA11/N−ヘプチルアミノ酸、1〜12%、好ましくは2〜5%の11−アミノウンデカン酸を含むPA12/11および1〜5%のラクタム6を含むPA12/6(全ての百分率は各PAのモノマーとコモノマーの混合物の全質量に対する質量で表示)。
【0030】
本発明のさらに別の対象は、ペイント、ワニス、防食組成物、織物被覆のような被覆剤、化粧品、紙用添加剤、電磁権の照射による溶融または焼結で物品を製造する粉末凝集技術、電気泳動ゲル、多層複合材料、包装産業、玩具業界、繊維工業、自動車業界および/またはエレクトロニクス産業での、上記定義の本発明粉末の使用にある。
【0031】
本発明のさらに別の対象は、電磁権の照射による溶融または焼結で粉末を凝集うしポリアミド物品を製造する方法にあり、ポリアミド粉末は上記定義の方法で予め製造しておくか、上記定義の粉末を使用する。
本発明のさらに別の対象は、本発明粉末の電磁線の照射による溶融によって得られる製品にある。
【0032】
本発明方法を用いることで、ポリアミドの結晶化温度と溶融温度とを同時に下げることができるが、本発明方法ではポリアミドの結晶化温度が大幅に下がる一方、溶融温度は実質的に変化しない。その結果、本発明ではない通常のポリアミドと比べて、Tf−Tc差の絶対値が大きいポリアミドが得られる。
【0033】
本発明で「ポリアミド」とはラクタム、アミノ酸または二酸とジアミンとの重縮合生成物、より一般的にはアミド基を介して結合した単位から成る任意のポリマーを意味する。
本発明方法では、少なくとも2つの異なるモノマー(「コモノマー」とよばれる)を重合、すなわち、少なくとも一種のモノマーと少なくとも一種のコモノマー(第1モノマーとは異なるモノマー)とを重合してコポリマー、例えば下記定義のコポリアミド(CoPA)またはコポリエステルアミド(CoPEA)を生成する。
【0034】
以下の説明で「モノマー」とは「反復単位」を意味する。特に、反復単位が二酸とジアミンとの組合せから成る場合が挙げられる。ジアミンと二酸との組合せ、すなわちモノマーに対応するジアミン.二酸のカップル(等モル量)であると考えることができる。これは、二酸またはジアミンは個々には構造単位でしかなく、それ自体ではポリマーを形成するには不十分であることによって説明できる。
【0035】
本発明方法は少なくとも一種の主成分のモノマー、すなわちモノマー混合物の全質量の少なくとも80質量%を占めるモノマーと、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマー、すなわち上記モノマーとコモノマーの混合物全体の全質量の20質量%以下を占めるモノマーとの重合を含む。
【0036】
主成分のモノマーの重合は、各々が4〜30の炭素原子、好ましくは8〜28の炭素原子を含む一種以上のアミドモノマーを用いて行うことができる。
本発明では、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記モノマーとコモノマーの混合物全体の0.1〜20質量%、好ましくは混合物全体の0.5〜15質量%、さらに好ましくは混合物全体の1〜10質量%を占める。さらに好ましくは、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記モノマーとコモノマーとの混合物全体の1〜7質量%、好ましくは混合物全体の1〜5質量%を占める。
【0037】
第1実施例でポリアミドベースの粉末(ホモポリアミドまたはコポリアミド)のTf−Tc差を広げる方法は、下記の(1)と(2)からCoPAの粉末を製造する:
(1)Tf−Tc差を広げたいベースポリアミドの構成モノマーに対応する少なくとも一種の主成分のモノマー、
(2)少なくとも一種の別のマイナー成分のコモノマー。
【0038】
「コポリアミド」(CoPA)とは、下記(1)〜(4)の中から選択される少なくとも2つの異なるモノマーの重合生成物を意味する:
(1)アミノ酸またはアミノカルボン酸型のモノマー、好ましくはα,ω−アミノカルボン酸、
(2)置換されていてもよい主環上に3〜18の炭素原子を含むラクタム型のモノマー、
(3)4〜18の炭素原子を含む脂肪族ジアミンと、4〜18の炭素原子を含むジカルボン酸との反応で得られる「ジアミン.二酸」型のモノマー、
(4)上記の混合物、アミノ酸型のモノマーとラクタム型のモノマーとの混合物の場合の炭素数が異なるモノマーとの混合物。
【0039】
アミノ酸型のモノマー
α,ω−アミノ酸の例としては、4〜18の炭素原子を含むα、ω−アミノ酸、例えばアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、11−n−ヘプチルアミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸が挙げられる。
【0040】
ラクタム型のモノマー
ラクタムの例としては、置換されていてもよい、主環上に3〜18の炭素原子を含むラクタムが挙げられる。例としてはβ,β−ジメチルプロピオラクタム、α,α−ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム(ラクタム6ともよばれる)、カプリルラクタム(ラクタム8ともよばれる)、エナントラクタム、2−ピロリドンおよびラウリルラクタム(ラクタム12ともよばれる)が挙げられる。
【0041】
「ジアミン.二酸」型のモノマー
ジカルボン酸の例としては4〜18の炭素原子を含む酸が挙げられる。例としてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コルク酸、イソフタル酸、ブタンジオン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウムまたはリチウム塩、ダイマー化した脂肪酸(このダイマー化した脂肪酸はダイマー含有率が少なくとも98%で、好ましくは水素化されている)およびドデカンジオン酸HOOC−(CH210−COOHが挙げられる。
【0042】
ジアミンの例としては4〜18の原子を含む脂肪族ジアミン、すなわちアリールおよび/または飽和環状ジアミンが挙げられる。例としては下記のものが挙げられる:ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5−ジアミノヘキサン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、ジアミンポリオール、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタ−メチレンジアミン(MPDM)、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、メタ−キシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミン。
【0043】
「ジアミン.二酸」型のモノマーの例としてはヘキサメチレンジアミンとC6〜C36二酸との縮合で得られるモノマー、特に下記モノマーが挙げられる:6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18。デカンジアミンとC6〜C36二酸との縮合で得られるモノマー、特に10.10、10.12、10.14、10.18、または、デカンジアミンとテレフタル酸との縮合で得られるモノマー、すなわちモノマー10.Tが挙げられる。
【0044】
上記の各タイプのモノマーから成るコポリアミドの例としては、少なくとも2種のα,ω−アミノカルボン酸の縮合または2種のラクタムまたは一種のラクタムと一種のα,ω−アミノカルボン酸の縮合で得られるコポリアミドが挙げられる。さらに、少なくとも一種のα,ω−アミノカルボン酸(またはラクタム)、少なくとも一種のジアミンおよび少なくとも一種のジカルボン酸の縮合で得られるコポリアミドも挙げられる。さらに、脂肪族ジアミンと、脂肪族ジカルボン酸および上記のものとは異なる脂肪族ジアミンおよび上記のものとは異なる脂肪族二酸の中から選択される少なくとも一種の別のモノマーとの縮合で得られるコポリアミドも挙げられる。
【0045】
コポリアミドの例としては下記のものが挙げられる:カプロラクタムとラウリルラクタムとのコポリマー(PA6/12)、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とのコポリマー(PA6/6.6)、カプロラクタムとラウリルラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とのコポリマー(PA6/12/6.6)、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸と11−アミノウンデカン酸とラウリルラクタムとのコポリマー(PA6/6.9/11/12)、カプロラクタムとアジピン酸とヘキサメチレンジアミンと11−アミノウンデカン酸とラウリルラクタムとのコポリマー(PA6/6.6/11/12)、ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸とラウリルラクタムとのコポリマー(PA6.9/12)、2−ピロリドンとカプロラクタムとのコポリマー(PA4/6)、2−ピロリドンとラウリルラクタムとのコポリマー(PA4/12)、カプロラクタムと11−アミノウンデカン酸とのコポリマー(PA6/11)、ラウリルラクタムとカプリルラクタムとのコポリマー(PA12/8)、11−アミノウンデカン酸と2−ピロリドンとのコポリマー(PA11/4)、カプリルラクタムとカプロラクタムとのコポリマー(PA8/6)、カプリルラクタムと2−ピロリドンとのコポリマー(PA8/4)、ラウリルラクタムとカプリルラクタムとのコポリマー(PA12/8)、ラウリルラクタムと11−アミノウンデカン酸とのコポリマー(PA12/11)。
【0046】
本発明の方法で用いられる少なくとも一種の主成分のモノマーおよび/または少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは11−アミノウンデカン酸またはラクタム12を含むのが有利である。
【0047】
本発明の第2実施例でポリアミドベースの粉末のTf−Tc差を広げる方法は、Tf−Tc差を広げたいベースポリアミドの構成モノマーに対応する少なくとも一種の主成分のモノマーと、ラクトンを含む少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーとの重合によってコポリエステルアミド(CoPEA)粉末を製造する。
【0048】
アニオン重合を介したこのコポリエステルアミド粉末の製造方法は下記特許文献9に記載されている。
【特許文献9】欧州特許第1,172,396号公報
【0049】
コポリエステルアミドの製造で使用可能な主成分のモノマーは上記モノマーと同じである。少なくとも一種のラクタム、好ましくはカプロラクタムおよびラウリルラクタムの中から選択されるモノマーを用いるのが有利である。ラクトンの例としてはカプロラクトン、バレロラクトンおよびブチロラクトンが挙げられる。カプロラクトンおよび/またはブチロラクトンを用いるのが好ましい。
【0050】
コポリエステルアミドでは少なくとも一種の主成分のモノマーおよびラクトンを含む少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーを下記の主成分対マイナー成分モノマー(質量%)の比率で用いるのが有利である:80〜20%対99.5〜0.5%(合計で100%)。
【0051】
第3実施例では、本発明方法はコポリアミドおよび/またはコポリエステルアミドの混合物を用いる。
本発明方法では、CoPAまたはCoPEAは、これらのCoPAまたはCoPEAの組成物中に含まれる各種モノマー(マイナー成分および主成分)、特にジアミン.二酸型のモノマーと同様に、同じ重合方法すなわち加水分解重縮合、アニオン重合、カチオン重合のいずれからでも得られる。
【0052】
本発明方法の一つの実施例では、各種モノマー(マイナー成分および主成分)の重合は加水分解重縮合(polycondensation hydolytique)型である。この加水分解重合は特にラクタムで用いられ、高温の水によって誘導される。例えば、ラクタムの加水分解重合ではラクタムを水で開環し、次いで加圧下に加熱して重合する。加水分解方法では必要に応じてさらに燐酸のような触媒も使用できる。
【0053】
加水分解重合で得られるCoPAまたはCoPEAの例としては、11−アミノウンデカン酸を主成分とするモノマーと、ヘキサメチレンジアミン.アジピン酸のカップル(6.6)、ラウリルラクタム、カプロラクタムおよび/または11−n−ヘプチルアミノウンデカン酸の中から選択される少なくとも一種のマイナー成分モノマーとから成るものが挙げられる。
【0054】
本発明方法の別の実施例では、各種モノマー(マイナー成分および主成分)の重合をアニオン重合型で行う。このアニオン重合は加水分解またはカチオン機構で用いる温度よりはるかに低い温度で行う。アニオン重合は連続的または不連続的に溶剤中で行うことかできるが、不連続的(バッチ)で行うのが好ましい。アニオン重合は特に環状分子、例えばラクタムおよびラクトンを対象とする。例えば、ラクタムのアニオン重合の機構は3段階、すなわち、ラクタメートアニオンを形成する開始段階、次いで、アクリルラクタムを作る活性化反応および最後の伝搬段階で進む。従って、アニオン重合法は基本的に触媒および活性化剤を、必要に応じて結晶化シードの役目をする微細鉱物または有機充填剤の存在下およびアミドの存在下で用いる。この方法は下記特許文献10、11に記載されている。
【特許文献10】欧州特許第192,515号公報
【特許文献11】欧州特許第303,530号公報
【0055】
触媒としてはナトリウムまたはその化合物、例えばナトリウムハイドライドまたはナトリウムメトキシドが挙げられる。
活性化剤としては、特にラクタム−N−カルボキシアニリド、イソシアネート、カルボジイミド、シアンイミド、アシルラクタム、トリアジン、尿素、N−置換イミドおよびエステルが挙げられる。
充填剤としてはPA粉末、例えばオルガソル(Orgasol、登録商標)の粉末、シリカ、タルク等が挙げられる。
【0056】
N,N’−アルキレンビスアミドとしては特にN,N’−エチレンビスステアルアミド(EBS)、N,N’−エチレンビスオレアミド、N,N’−エチレン−ビスパルミトアミド、ガドル(gadole)アミド、セトル(cetole)アミドおよびエルク(eruc)アミド、N,N’−ジオレイルジパミドおよびN,N’−ジエルシルアミド等が挙げられる。
アニオン重合で得られるCoPAまたはCoPEAの例としてはラウリルラクタムが主成分のモノマーと、カプロラクタム、カプロラクトンおよび/またはヘキサメチレンジアミン.アジピン酸のカップル(6.6)の中から選択されるマイナー成分のモノマーとから成るものが挙げられる。
【0057】
アニオン重合では粒度分布の幅が極めて狭い粉末が得られるという利点があり、照射(赤外線、紫外線硬化等)による凝集を用いた部品製造での使用に好ましい。すなわち、この粉末は部品を極めて細かく規定でき、粉末使用時の粉塵の問題が少ない。さらに、粉末の溶融温度より低いが、この温度に近い温度に長期間曝してもポリマーの分子量は増えない。従って、照射による凝集で部品を製造する間に粉末の挙動が変わることがなく、粉末を何度も再利用でき、部品の特性もプロセス中は一定に維持されるということを意味する。さらに、本発明方法を用いると粉末凝集法で機械特性に優れた物品を製造することが可能になる。
【0058】
全ての(コ)モノマーを同じ重合プロセスで一緒に重合できる限り、本発明のCoPAまたはCoPEAの製造では他の任意の重合プロセスを用いることができるということは理解できよう。
【0059】
本発明のさらに他の実施例では、無水条件下で酸触媒を用いてカチオン重合することができる。この場合、塩酸、燐酸または臭化水素酸のような酸が最反応性が良いが、ルイス酸またはアンモニウム塩も使用できる。基本的に活性化および連鎖成長の2つのタイプがみられる。活性化モノマーが中性な反応中心と反応するか、反応中心化合物活性化され、モノマーが中性である。
【0060】
合成法に応じてCoPAまたはCoPEAの粉末か、CoPAまたはCoPEAの顆粒が直接得られる。CoPAまたはCoPEA粉末の製造法には直接法または間接法の2つのモードがある。直接法の例としては溶剤中でポリマーを重合し、沈殿させる方法(沈殿重合)が挙げられる。重合中に粉末が直接得られる。これは一般にアニオン重合の場合である。間接法の粉末製造の例としては溶解沈殿すなわちCoPAまたはCoPEAポリマーを高温溶剤中に可溶化し、その後に徐冷して粉末を沈殿させる方法が挙げられる。さらに、噴霧化すなわち冷却したポリマー溶液を噴霧する方法も挙げられる。この技術は「低温噴霧」または「スプレー冷却法」ともよばれる。さらに、ポリマーを押出した後に加熱高圧ノズルを用いて噴霧化し、得られた粉末を冷却する方法もある。この技術は「高温噴霧」または「スプレー乾燥法」ともよばれる。さらに、ポリマー顆粒を破砕/篩分け後に、必要に応じてさらに増粘する方法も挙げられる。破砕は極低温で行うことができる。これらの粉末製造技術は全て当業者に公知である。
【0061】
照射による溶融を用いた凝集技術では粉末または顆粒を用いる。顆粒は数mm〜1cmの任意形状の粒子である。これらは例えば押出機の出口で得られる顆粒である。溶融または焼結凝集プロセスでは粉末を用いるのが好ましい。この粉末は350μm以下の粒径にすることができ、10〜100μmの粒径にするのが有利である。D50(すなわち粒子の50%が60μm以下の粒径)は60μmであるのが好ましい。
【0062】
本発明の別の対象は、上記方法で製造されたコポリアミドまたはコポリエステルアミド粉末にある。この粉末は同じ重合方法で重合した少なくとも2つの異なるモノマーの重合で得られ、少なくとも一種のコモノマーはマイナー成分で、既に述べたアミノカルボン酸、ジアミン.二酸のカップル、ラクタムおよび/またはラクトンの中から選択され、この少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーはモノマー混合物全体の0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%を占める。
【0063】
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーはモノマー混合物全体の1〜7質量%、好ましくは1〜5質量%を占めるのがさらに好ましく、この少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは11−アミノウンデカン酸および/またはラウリルラクタムおよび/またはカプロラクタムおよび/またはカプロラクトンおよび/または6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18および/または10.T(ここでTはテレフタル酸である)のジアミン.二酸のカップルの少なくとも一種から成る。
【0064】
本発明粉末は、粉末を使用した凝集技術で特性を改良するのに使用される添加剤をさらに含むことができる。その例としては着色顔料、TiO2、充填剤または赤外吸収顔料、カーボンブラック、内部応力を下げる無機充填剤、難燃添加剤が挙げられる。溶融法で得られた部品の機械特性(極限応力および破断点伸び)を改良する添加剤を添加することもできる。これらの充填剤は例えばガラス繊維、炭素繊維、ナノフィラー、ナノクレーおよびカーボンナノチューブである。これらの充填剤を合成時に導入することで分散性および効果が高まる。
【0065】
本発明粉末は被覆剤、ペイント、防食組成物、電磁線の照射で溶融または焼結して物品を製造する粉末凝集技術、電気泳動ゲル、多層複合材料、包装産業、玩具業界、繊維工業、自動車業界および/またはエレクトロニクス産業で有利に使用できる。
【0066】
本発明のさらに別の対象は、上記方法に従って予め製造したポリアミド粉末を電磁線の照射で溶融し、凝集させてポリアミド物品を製造する方法にある。電磁線照射の例としてはレーザービーム(レーザー焼結としても知られる)が挙げられる。さらに、粉末層と放射源との間にマスクを配置し、未凝集の粉末粒子をマスクを用いて放射から保護する方法も挙げられる。
【0067】
本発明のさらに別の対象は、電磁線の照射を用いて粉末を溶融して得られる3次元製品にある。この物品はプロトタイプ(原型)およびモデル、特に自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(プロテーゼ、聴覚系、細胞組織等)、織物、衣類、ファッション、装飾、電子ケーシング、電話、ホーム・オートメーション、情報技術および照明の分野のプロトタイプおよびモデルの中から選択できる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
以下の全ての実施例では:
(1)平均粒径(体積)はCoulter LS230粒径分析計を使用して測定した粒径分布からソフトウェアのバージョン2.11aを用いて求めた。
(2)相対粘度は20℃のメタクレゾール中で0.5質量%の溶液で測定した(「Ato法」)。
(3)粉末または顆粒の分析(熱的特性の測定)はISO 11357−3「プラスチック−示差走査熱量測定(DSC)3:溶融および結晶化の温度およびエンタルピーの決定」に従ってDSCで行った。
本発明で特に対象とする温度は最初の加熱時の溶融温度(Tf1)と、結晶化温度(Tc)である。すなわち、溶融による粉末凝集で3次元物品を製造する分野の当業者に周知のように、「Tf−Tc」差はTf1−Tcに対応する。従って、以下の実施例ではTf−Tc差またはTf1−Tc差を別々に示した。
【0069】
実施例1
下記に示す同じ方法で、比較例の製品1と実施例1.1〜1.3の製品とを調製した:
【0070】
比較例1
窒素下に維持した反応装置中に、2757mlの溶剤を導入した後、899gのラクタム12(ラウリルラクタム)と、7.2gのEBS、3.94gの有機充填剤すなわちポリアミド12粉末(PA12:オルガソル(Orgasol、登録商標)2001 EXD NAT1)とを順次導入する。300回転/分の速度で撹拌を開始し、反応混合物を徐々に105℃まで加熱し、360mlの溶剤を蒸留分離する。共沸混合物として痕跡量の水を随伴させる。
大気圧へ戻し、アニオン触媒と、油に分散させた2.7gの60%純度のナトリウムハイドライドとを導入し、撹拌速度を窒素下、30分間かけて105℃で550回転/分に上げる。
小型定量ポンプを用いて、選択された活性化剤すなわちステアリルイソシアネート(溶剤を用いて19.2gを220.5gにする)を下記プログラムに従って反応媒体中に連続的に注入する:
イソシアネート溶液を26g/時で180分間、
イソシアネート溶液を71.25g/時手120分間。
注入中は温度を180分間は105℃に維持し、次に90分かけて130℃に上げ、イソシアネートの導入後はさらに150分間130℃に維持する。
重合を終了する。反応装置はほとんど汚れない。80℃に冷却し、沈降および乾燥後の粒径をDSCで分析する。DSC分析からTf値=183.7℃およびTc=139.1℃であることがわかる。
比較例1と同じ操作で実施例1〜3の粉末を製造する。本発明の実施例1〜3ではラクタム12に加えて少量のラクタム6コモノマーを用いる。
【0071】
実施例1.1
窒素下に維持した反応装置中に2757mlの溶剤を導入し、次いで899gのラクタム12と、18gのラクタム6と、7.2gのEBSと、3.94gのオルガソル(Orgasol、登録商標)2001 EXD NAT1(PA12粉末)とを順次導入する。
得られた粉末のDSC分析から、Tf値=180.1℃およびTc=135.3℃であることがわかる。
【0072】
実施例1.2
窒素下に維持した反応装置中に、2757mlの溶剤を導入し、次いで899gのラクタム12と、36gのラクタム6と、7.2gのEBSと、3.94gのオルガソル(Orgasol、登録商標)2001 EXD NAT1(PA12粉末)とを順次導入する。
得られた粉末のDSC分析から、Tf値=179.3℃およびTc=132.8℃であることがわかる。
【0073】
実施例1.3
窒素下に維持した反応装置中に、2757mlの溶剤を導入し、次いで899gのラクタム12と、45gのラクタム6と、7.2gのEBSと、3.94gのオルガソル(Orgasol、登録商標)2001 EXD NAT1(PA12粉末)とを順次導入する。
得られた粉末のDSC分析から、Tf値=178.2℃およびTc=128.4℃であることがわかる。
比較例1および実施例1.1〜1.3のDSC分析結果は[表1]にまとめてある。
【0074】
【表1】

【0075】
ラウリルラクタムの主成分のモノマー(ラクタム12)と、カプロラクタムのマイナー成分モノマー(ラクタム6)とから成る本発明実施例1.1〜1.3のサンプルは比較例1(ラクタム12ホモポリアミド)よりも溶融温度および結晶化温度が低く、|Tf−Tc|差が大きい。
溶融による粉末凝集装置では実施例1.1〜1.3のコポリアミドを使用することで機械の設定をより容易に最適化できる。|Tf−Tc|差が大きいので、作業ウインドーまたは成形窓を広くすることができる(10℃以上)。成形範囲(窓)が広くなることで当業者は機械のパラメータ(特に温度)の調整の融通性が大きくなり、製造される部品の「ケーキング」と「カーリング」を避けらることができる。
【0076】
本発明の各粉末を溶融法を用いた粉末凝集装置に導入し、レーザーを照射した。得られた各試験片を冷却した後に、専門家が目で評価した。
[表2]から、レーザー焼結で得られる3次元物品の表面の粉末欠陥である「ケーキング」または「沈降(setting)」または「集合」または「塊化」の程度に与える本発明方法の影響がわかる。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例1.1〜1.3の粉末を用いてレーザー焼結して得られた部品は機械特性(特に破断弾性率および破断点伸び)が比較例1の機械特性とほぼ同じである。
さらに、本発明方法で有利に用いられるアニオン重合によって、溶融法で粉末凝集する装置の部品上で凝縮し易い残留モノマーの最終粉末中での量を少なくすることができ、従って、3次元物品の精度は最適に維持され、複数の製造サイクル後もそれが変わらない。
【0079】
実施例4
[図1]のグラフはポリアミド11(PA11)中のコモノマー(この場合はラクタム12またはモノマー6.6)の含有率がTfとTcの差の変化に与える影響を示す。このグラフから5〜20%の含有率で窓(Tf−Tc)が最も広くなるのはコモノマー6.6であることがわかる。
【0080】
実施例5
CoPA11/6.6粉末(7%の6.6)を加水分解重合で合成し、得られた顆粒を極低温破砕で粉末した。得られた粉末は相対粘度が1である(20℃のメタクレゾール中で0.5質量%の溶液)。
この粉末を下記の粉末と比較する:
(1)アニオン重合で得られたPA12。このPA12粉末の相対粘度は1.3である(20℃のメタクレゾール中で0.5質量%の溶液)。
(2)11−アミノウンデカン酸の重縮合で得たプレポリマーを破砕した後に水処理および増粘して得たPA粉末。このPA粉末の相対粘度は1.35である(20℃のメタクレゾール中で0.5質量%の溶液)。
上記3種の粉末のDSC分析から[表3]に示すTf1(第1加熱)、Tf2(第2加熱)およびTcの特徴がわかる。
【0081】
【表3】

【0082】
上記3種の粉末をレーザー焼結機で試験した。
CoPA11/6.6粉末はそのTf−Tc差が49℃であり、焼結機での成形範囲(窓)は14℃である。従って、SLS(laser sinering)機を良好な条件下で使用できる。
しかも、本発明のCoPA11/6.6粉末ではケーキングがほとんどあるいは全く見られない。
CoPA11/6.6からレーザー焼結で製造された部品の機械特性をPA12およびPA11から製造したものと比較し、[表4]に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
CoPA11/6.6から製造した部品は弾性率(モジュール)が1786MPaで、これはPA12およびPA11の弾性率に近く、破断点伸びは25〜30%である。CoPA11/6.6の破断点伸びはポリアミド12とポリアミド11の間である。
【0085】
実施例6
ISO 11357−3規格によるDSC値を、PA12(比較例)と、6重量%および12重量%の11−アミノウンデカン酸でそれぞれ改質したポリアミド12(本発明実施例)とで比較した([表5])。
【0086】
【表5】

【0087】
本発明方法で改質した2種のPA12では、ホモポリアミドPA12と比較して、結晶化温度が3〜8℃低下し、Tf1−Tc差は広がっている。
【0088】
実施例7
ISO 11357規格によるDSC値を、PA11(比較例)と、1重量%および5重量%のN−ヘプチルアミノ酸でそれぞれ改質したポリアミド11(本発明による実施例)との間で比較した([表6])。
【0089】
【表6】

【0090】
本発明方法で改質した2種のPA11では、ホモポリアミドPA11と比較して、結晶化温度が5〜6℃低下する。
用いたマイナー成分のコモノマーの量に関しては、1%のN−ヘプチルアミノ酸を含む方が5%のN−ヘプチルアミノ酸を含む場合よりTf1−Tc差が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融温度および結晶化温度をISO 11357−3に従ってDSCで測定した時に、少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミドの結晶化温度および溶融温度を下げ、且つ、上記の少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミドの結晶化温度および溶融温度にそれぞれ対応する結晶化温度の低下度が溶融温度の低下度よりも大きくなるようにするための、上記の少なくとも一種の主成分のモノマーの重合法での少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーの使用であって、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記の少なくとも一種の主成分のモノマーと同じ重合法で重合され、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーはアミノカルボン酸、ジアミン.二酸のカップル(対)、ラクタムおよび/またはラクトンの中から選択され、上記の少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%を占めることを特徴とする使用。
【請求項2】
マイナー成分および主成分のモノマーの重合がアニオン重合である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
マイナー成分および主成分のモノマーの重合が加水分解重縮合である請求項1に記載の使用。
【請求項4】
少なくとも一種の主成分のモノマーが11−アミノウンデカン酸および/またはラクタム12および/またはデカンジアミン.セバシン酸カップル(10.10)から成る請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーがアミノカルボン酸、好ましくは4〜18の炭素原子を含むα,ω−アミノカルボン酸、4〜18の炭素原子を含むジアミン.二酸カップル、3〜18の炭素原子を含むラクタム、3〜18の炭素原子を含むラクトンおよびこれらの混合物の中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーが11−アミノウンデカン酸、11−n−ヘプチルアミノウンデカン酸、ラウリルラクタム、カプロラクタムおよび/またはカプロラクトンから成る請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーが6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18および/または10.T(ここでTはテレフタル酸)のジアミン.二酸カップルの少なくとも一つから成る請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミドの結晶化温度および溶融温度を下げる方法であって、
少なくとも一種の主成分のモノマーを少なくとも一種の別のマイナー成分のコモノマーと、少なくとも一種の主成分のモノマーと同じ重合法で重合する段階を含み、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは11−アミノウンデカン酸および/またはラウリルラクタムおよび/またはカプロラクタムおよび/またはカプロラクトンおよび/または6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18および/または10.T(ここでTはテレフタル酸)のジアミン.二酸カップルの少なくとも一つから成り、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の1〜7質量%、好ましくは1〜5質量%を占め、上記の少なくとも一種の主成分のモノマーの重合で得られるポリアミドの結晶化温度および溶融温度(この溶融温度および結晶化温度はISO規格11357−3に従ってDSCで測定する)に対する結晶化温度の低下が溶融温度の低下よりも大きくなるようにすることを特徴とする方法。
【請求項9】
各種マイナー成分および主成分のモノマー間の重合がアニオン重合である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
マイナー成分および主成分のモノマー重合が加水分解重縮合である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一種の主成分のモノマーが11−アミノウンデカン酸および/またはラクタム12および/またはデカンジアミン.セバシン酸カップル(10.10)から成る請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
重合段階後に、溶解、沈殿、押出、噴霧、スプレー、低温噴霧、高温噴霧、破砕、極低温破砕、ふるい分け、増粘およびこれらの組合せの中から選択される少なくとも一つの段階をさらに含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法で製造されたコポリアミドまたはコポリエステルアミド粉末であって、この粉末は同じ重合法で重合した少なくとも2つの異なるモノマーの重合で得られ、少なくとも一種のコモノマーは、11−アミノウンデカン酸および/またはラウリルラクタムおよび/またはカプロラクタムおよび/またはカプロラクトンおよび/または6.6、6.10、6.11、6.12、6.14、6.18、10.10、10.12、10.14、10.18および/または10.T(ここでTはテレフタル酸である)の少なくとも一つのジアミン.二酸カップルから成り、少なくとも一種のマイナー成分のコモノマーは上記のモノマーとコモノマーの混合物全体の1〜7質量%、好ましくは1〜5質量%を占めることを特徴とする粉末。
【請求項14】
主成分のモノマーの11−アミノウンデカン酸と、ヘキサメチレンジアミン.アジピン酸カップル(6.6)、ラウリルラクタム、カプロラクタムおよび/またはカプロラクトンの中から選択される少なくとも一種のマイナー成分のモノマーとを含む請求項13に記載の粉末。
【請求項15】
主成分のモノマーのラウリルラクタムと、カプロラクタム、カプロラクトンおよび/またはヘキサメチレンジアミン.アジピン酸カップル(6.6)の中から選択されるマイナー成分のモノマーとを含む請求項13に記載の粉末。
【請求項16】
ペイント、ワニス、防食組成物、織物被覆のような被覆剤、化粧品、紙用添加剤、電磁線を照射して溶融または焼結で物品を製造する粉末凝集技術、電気泳動ゲル、多層複合材料、包装産業、玩具業界、繊維工業、自動車業界および/またはエレクトロニクス産業での請求項13〜15のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項17】
電磁線を照射する溶融粉末凝集でポリアミド物品を製造する方法であって、ポリアミド粉末が請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法で製造されたものか、請求項13〜15のいずれか一項に記載の粉末であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の電磁線の照射で粉末を溶融して得られる製品。

【図1】
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【公表番号】特表2011−518938(P2011−518938A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506756(P2011−506756)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050788
【国際公開番号】WO2009/138692
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】