説明

ポリアミン類似体を用いる、眼疾患におけるマクロファージ増殖を調節するための方法

ARMDのような眼疾患に苦しんでいる、または眼疾患のリスクがある個体においてマクロファージ増殖を調節するための方法が提供される。本方法は、ポリアミン類似体、またはその塩もしくは保護誘導体を用いる。マクロファージ増殖は、ARMDを含むいくつかの重篤な障害に関与している。本発明はまた、ARMDのような眼疾患の診断を助ける、および眼疾患の治療をモニターするための方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、増殖マクロファージに関連した疾患、特にマクロファージ関連眼疾患、特に硝子体網膜症、糖尿病性網膜症、および加齢性黄斑変性症(ARMD)のようなマクロファージ関連網膜疾患に関する。より具体的には、それは、マクロファージ増殖を、特にARMDのようなマクロファージ関連網膜疾患に苦しんでいる、またはマクロファージ関連網膜疾患のリスクがある個体において、調節するためのポリアミン類似体、またはそれらの塩もしくは保護誘導体の使用に関する。本発明はまた、マクロファージ増殖の検出および/または調節を必要とするARMDのようなマクロファージ増殖障害の診断を助ける、治療をモニターする、および発症を遅らせる方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、両方とも1997年10月27日に出願された米国仮出願第60/063,317号および第60/063,318号の恩典を主張する、1998年10月26日に出願された米国特許出願第09/179,383号の一部継続出願であり、それらのすべては参照により本明細書に組み入れられている。
【0003】
連邦政府資金による研究下でなされた発明の権利の言明
本発明は、National Institutes of Healthからの連邦政府助成金、認可番号CA 96230-03により支援された研究中に一部、なされた。政府は本発明において一定の権利を有しうる。
【背景技術】
【0004】
背景
加齢性黄斑変性症(ARMD)により例示される変性細胞増殖性疾患のような眼疾患は、今日、重大な健康問題となっている。ARMDだけで、米国において175万人より多い人々を冒している。数は老年米国人口の急速な成長により2020年までに約3百万人まで増加するだろうと推定されている(例えば、Arch Ophthalmol, (2004) 122:564参照)。ARMDは、米国、西ヨーロッパ、オーストラリア、および日本を含む世界の大部分における60歳を超える個体の間での登録された法的盲および他の視覚障害の主な原因である(Ambati, et al., Surv. Ophthalmol., 48:257 May-June 2003; Zabrin, Arch. Ophthalmol., 2004, 122:598-614)。
【0005】
ARMDの臨床的特徴は、結晶腔、網膜色素上皮(RPE)の過形成、地理的萎縮、および脈絡膜血管新生(CNV)を含む。結晶腔は、RPEの基底膜とブルック膜の間に見出される細胞外物質の局在性沈着物である。結晶腔は、ファジーで不明瞭な縁を有する「軟らかい」かまたは分離した、境界の明瞭な縁を有する「硬い」かのいずれかとして形態学的に特徴付けられる。典型的には、結晶腔は、中心の黄斑に群がり、眼底検査により測定される場合、変化に富みかつ複雑な形態を示す。結晶腔のサイズ、数、および密集度がARMDを発症するリスクについての有意な決定因子であることは、当技術分野において十分確立されている。ARMDにおけるRPE-ブルック膜界面での免疫媒介性過程のバイオマーカーとしての結晶腔の考察について、Hageman et al. (2001) Retinal Eye Res. 20:705-732を参照されたい。一般的に、ARMDへ導く正確な病理学的機構は十分、理解されていない(概説として、Zabrin, (2004), 前記、参照)。
【0006】
ARMDは、一般的に、2つの型へ特徴付けられる。ARMDの滲出性または「湿性」型は、後に出血を伴うRPEおよび網膜下のCNV成長、滲出性網膜剥離、円板状瘢痕、および網膜萎縮により特徴付けられ、また、漿液性または出血性色素上皮剥離を伴いうる。ARMDの非滲出性または「乾性」型において、結晶腔の蓄積は、黄斑の萎縮を引き起こして、視力喪失へ導くと考えられている。湿性ARMDは、いくらかの中心視力喪失をもつ症例の約75%を占める。年齢65歳〜74歳の人々の約18%および74歳より上の人々の約30%は、軟らかい結晶腔またはRPE変性もしくは色素沈着過度をもつ結晶腔の存在により特徴付けられる初期ARMDに罹っている(例えば、Zabrin (2004)前記、参照)。
【0007】
ARMDにおける結晶腔の形成において免疫/炎症性機構を評価するいくつかの報告がある。1つのグループは、障害性マクロファージ補充が眼におけるC5aおよびIgGの蓄積を許す可能性があり、それが次に、RPEによる血管内皮増殖因子(VEGF)産生を誘導し、場合により、CNVの発生、ARMDの滲出性または「湿性」型における視力喪失の主な原因、を媒介することを示唆している。Ambati et al. Nat Med. 2003 Nov;9(11):1390-7. Epub 2003 Oct 19。マクロファージおよび異物巨細胞は、結晶腔が見出されるブルック膜の近くで報告されている(van der Schaft et al. Br J Ophthalmol. 1993 Oct;77(10):657-61; Lopez et al. Am J Ophthalmol. 1991 112:647-56; Killingsworth et al. Eye. 1990 4(Pt 4):613-21)。
【0008】
他の人々は、マクロファージおよび他の炎症細胞が、ARMDにおける症状の一部であるCNVに関与しているという仮説を立てている。例えば、Oh et al. (Invest Ophthalmol Vis Sci 1999 40:1891-1898)は、マクロファージにより分泌されるIL-1βおよびTNF-αが、RPE細胞においてVEGF産生を刺激することにより、CNV膜における血管形成を、少なくとも一部、促進しうると示唆した。Tsutsumi et al. (J Leukoc Biol. 2003 74:25-32)は、CCR2、MCP-1の受容体を欠くマウスにおいて、浸潤性マクロファージの数およびCNVの領域が有意に減少していることを報告した。Cousins et al. (Arch Ophthalmol. 2004 122:1013-8)は、加齢性黄斑変性症(AMD)をもつ患者におけるマクロファージ機能の活性化状態を、炎症誘発性および血管形成性因子、腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生を定量化することにより、ならびにそれの発現を乾性および湿性AMDと相関させることにより、評価した。このグループは、血中単球によるTNF-α発現における幅広い可変性が異なる患者間で観察されたが、最大量のTNF-αを発現する単球を有するそれらの患者はCNVのより高い蔓延を示すことを報告した。
【0009】
マクロファージはまた、ARMDにおいてブルック膜と関連していることが報告されている。Killingsworth, et al., Eye, 1990, 4:613-621。Weller et al. (1991) Eur J Ophthalmol. 1:161-6は、外傷後増殖性網膜症が、多数のマクロファージの存在により証明されているように、重篤な初期炎症反応により明らかに特徴付けられることを報告した。Capeans et al. (Retina. 1998;18(6):546-50)は、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)が、対照眼の硝子体より硝子体網膜障害をもつ眼の硝子体において有意に高いレベルで存在することを報告し、MCP-1が、増殖性硝子体網膜障害をもつ眼の硝子体へのマクロファージおよび単球の補充に関与しているという仮説を立てた。他のグループは、マクロファージが、増殖性硝子体網膜症(PVR)の発症の炎症期中のウサギにおいて活性化されていることを報告している。Hui et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 1999 Jul, 237(7):601-5; Chen et al. Ocul Immunol Inflamm. 2002 Mar, 10(1):27-39; Martin et al. Ophthalmic Res. 2003 Jul-Aug, 35(4):232-8。
【0010】
他の免疫機構もまたARMDに結びつけられている。例えば、網膜組織に対する特異性をもつ自己抗原が、ARMDを含む眼病態において検出されている(Penfold et al. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 1985 223:69-76)。C反応性タンパク質、炎症と関連した血清タンパク質、はARMDをもつ被験体において上昇している(Seddon et al. (2004) JAMA 291:704-10)。組織レベルにおいて、炎症細胞浸潤物の確認は、初期、中間期、および後期疾患について立証されている(Penfold et al. (1985) Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 223:69-76)。結晶腔の免疫組織化学的分析は、補体成分C5、C5b-9、免疫グロブリン、およびHLA-DRを含む免疫学的抗原の存在を実証している(Russell et al. (2000) Am J Ophthalmol. 129:205-14)。黄斑変性の免疫学的および病因学的局面の概説として、Penfold et al. (2001) Retinal Eye Res 20:382-414を参照されたい。
【0011】
最近になって、ARMDにおけるマクロファージの役割が、単球走化性タンパク質(MCP-1)かまたはその同族ケモカイン受容体、CCR-2のいずれかを欠損するトランスジェニックマウスを用いて調べられている(Ambati et al. (2003) Nat Med. 9:1390-7)。これらのトランスジェニック動物は、RPE結晶腔、リポフスチンの蓄積、光受容体萎縮、およびCNVの特徴的な表示を含むARMD異常を発生した。Ambati et al.は、障害性マクロファージ補充がC5aおよびIgGの蓄積を許す可能性があり、それがRPEによる血管内皮増殖因子(VEGF)産生を誘導し、場合により、CNVの発生を媒介するという仮説を立てた。
【0012】
ARMDの診断および予後は、ARMD進行についての最も重要な通常のリスクファクターであると同定されている結晶腔を評価すること(例えば、全結晶腔領域または結晶腔のサイズ)に主に集中している(Latkany (2004) medscape.com/viewarticle/494566)。スクリーニングおよび診断における他の通常の技術は、蛍光血管造影(FA)、光コヒーレンス・トモグラフィー(OCT)、スペクトルOCT、およびOCTを含む走査レーザー検眼鏡(SLO-OCT)を含む。ARMDについての治療は、大部分は実験の域にあり、湿性ARMDの処置に集中している。例示的な治療は、レーザー光凝固術、光線力学療法(VISUDYNE(登録商標)のような光活性化薬物の投与を伴いうる)、経瞳孔温熱療法、マイクロカレント(microcurrent)刺激、および抗血管形成剤の投与、放射線療法、および手術のような血管新生の阻害へ向けられたものを含む。通常の治療の概説は、Lois et al. (2004) Comp Ophthalmol Update 5:143-161により提供されている。
【0013】
ARMDのようなこれらの眼疾患の発症および/または進行を示す方法について、ならびにそのような疾患の処置についてのニーズがある。本発明はこれらのニーズに取り組む。
【0014】
追加の文献
ARMDを含む眼疾患
眼疾患、および特にARMDに関して関心対象でありうる追加の文献は以下を含む:Penfold et al. (1987) Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 225:70-6; Killingsworth et al. (1990) Eye 4:613-621; Nishimura et al. (1990) Ophthalmologica 200:39-44; Weller et al. (1991) Exp Eye Res. 53(2):275-81; Otani et al. (1999) Invest Ophthalmol Vis Sci 40:1912-1920; Grossniklaus et al. (2000) Mol Vis 8:119-26; Spandau et al. (2000) Invest Ophthalmol Vis Sci 41:S836; Van der Schaft et al. (2001) Invest Ophthalmol Vis Sci 33:3493; Grossiklaus et al. (2002) Mol. Vis 8:119-226。
【0015】
マクロファージ
マクロファージは、一般的にはさらなる細胞分裂の能力がない最終分化細胞である。マクロファージ増殖は、リンパ腫、心臓血管疾患、および腎硬化症のような特定の重篤な増殖性疾患に結びつけられている。米国特許第5,639,600号。Gabrielian et al.は、外傷性増殖性硝子体網膜症におけるマクロファージ浸潤の役割を報告した((1994) Curr. Eye. Res. 13:1-9)。McGrath et al.は、癌性腫瘍成長およびAIDS認知症の誘発におけるクローン的に広がったマクロファージの関与を開示した。米国特許第5,639,600号および第5,580,715号;Pulliam et al. (1997) Lancet 349:692-695; McGrath et al. (1995)J. Acquired Imm. Def. Syn. Hum. Retro. 8:379-385; shiramizu et al. (1994) Cancer Res. 54:2069-2072も参照。
【0016】
ポリアミン類似体および抗増殖性活性
特定の陰イオン性オリゴマーは抗増殖性活性を有する。特に、10,000未満の分子量をもつ水溶性ポリ尿素およびポリアミドは、培養中およびインビボで平滑筋細胞増殖を阻害し、アテローム性動脈硬化症の処置について示唆している(米国特許第5,460,807号;米国特許第5,516,807号(血管増殖性障害におけるビス-エチルノルスペルミンの使用に関する)もまた参照)。特定のトリアゾールは抗増殖性である;特に、アミノ1,2,3トリアゾールは、無傷ブタ皮膚への標識チミジン取り込みを阻害する、ケラチノサイト増殖を阻害する、および乾癬、上皮過剰増殖により特徴付けられる慢性皮膚疾患の処置での使用について示唆されている(米国特許第4,847,257号)。バルプロ酸の誘導体はインビトロでニューロ-2a細胞増殖を減少させ、病的な神経細胞成長を阻害するためのアルツハイマー病のような神経変性障害の予防および処置での使用について示唆されている(米国特許第5,672,746号)。
【0017】
ポリアミンのレベルは、細胞増殖と密接に関連している。ポリアミンの細胞レベルは、対抗する合成および異化経路により注意深く制御されている。ポリアミンレベルを低下させることができる化合物は、癌および乾癬のような急速に増殖する宿主細胞の処置での使用について提案されている。重要なポリアミン異化酵素スペルミジン-スペルミンN1-アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)は、天然ポリアミンにより誘導可能であることが知られている数少ない遺伝子の一つである。特定のポリアミン類似体はこの応答を激化させる。1,11-ジエチルノルスペルミン(DENSPM)は、ヒト黒色腫細胞においてSSAT mRNAレベルを最高20倍まで増加させ、免疫検出可能なSSATタンパク質を300倍、増加させる。比較して、天然ポリアミンスペルミンははるかに効果が弱く、SSAT mRNAを〜3倍、免疫検出可能なタンパク質を〜7倍、増加させる。Fogel-Petrovic et al. (1996) Biochemistry 35:14435。ポリアミン類似体はまた、インビトロでZ-DNA構造を誘導する。この性質は、ヒト脳腫瘍細胞におけるシス-ジアミンジクロロ白金(II)(CDDP)細胞障害性への効果と逆の相関がある。Basu et al. (1996) Anticancer Res. 16:39。
【0018】
米国特許第5,498,522号は、予後指標または腫瘍応答マーカーとしての、SSAT、またはSSAT補因子アセチルCoA、ならびにSSAT生成物N1-アセチルスペルミンおよびN1-アセチルスペルミジンのようなSSAT誘導に関連した他の決定因子の使用の概略を述べている。これらの決定因子の測定は、ポリアミン類似体を含む抗癌剤の臨床効果を評価するための予後徴候および腫瘍応答マーカーとして提案されている。Hibasami et al. [(1989) Cancer Res. 49:2065]は天然ポリアミン合成経路の阻害剤としてメチルグリオキサル-ビス(シクロペンチルアミジノヒドラゾン)(MGBCP)を調製した。MGBCPは、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ、スペルミンシンターゼ、およびスペルミンシンセターゼを、それぞれ、S-アデノシルメチオニン、スペルミジン、およびプトレッシンと競合して、阻害する。MGBCPは、白血病性腹水細胞においてスペルミジンおよびスペルミンを枯渇させ、P388白血病を有するマウスの生存時間を延長させた。
【0019】
米国特許第5,541,230号(Basu et al.)は、スペルミン誘導体がいくつかのヒト腫瘍細胞系において成長を減少させることを示し、癌化学療法でのそれらの使用を提案している。Bergeron et al. (Cancer Chemother. Pharmacol.)は、ポリアミン類似体1,14-ビス(エチルアミノ)-5,10-ジアザテトラデカン(BE-4-4-4)、および1,19-ビス(エチルアミノ)-5,10,15-トリアザノナデカン(BE-4-4-4-4;米国特許第5,541,230号参照)が、ヒト脳腫瘍細胞系において成長、生存、および細胞周期の進行に直接的に影響を及ぼすことを示した。特定のポリアミンの合成および使用に関する他の刊行物について、読者には、EP 277,635、EP 162,413、EP 399,519、JP 85/6348、および米国特許第5,679,682号に;ならびにBellevue et al. (1996) Bioorg. Med. Chem. Lett. 6:2765、およびPorter et al. (1992) Falk Symposium 62:201; Matron and Pegg (1995) Ann Rev. Pharmacol. Toxicol. 35:55-91を紹介する。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は、好ましくは、マクロファージ増殖に関連している疾患、特にマクロファージ関連眼疾患、より特にマクロファージ関連網膜症に苦しんでいる、または疾患のリスクがある個体において、増殖マクロファージを、ポリアミン類似体またはその塩もしくは保護誘導体を含む組成物を用いて調節するための方法であって、組成物が個体において増殖マクロファージを調節するのに十分な量で投与される方法を提供する。
【0021】
もう一つの局面において、本発明は、マクロファージ関連眼疾患(例えば、マクロファージ関連網膜疾患、特にマクロファージ関連網膜症、例えばマクロファージ関連網膜疾患、例えば、ARMD、特に乾性ARMD)に罹っている、またはマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体において、ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、ポリアミン類似体の保護誘導体から選択される化合物を含む組成物を、個体においてマクロファージ食作用を増強するのに十分な量で個体に投与することにより、マクロファージの食作用活性を増加させるための方法であって、該投与段階が個体におけるマクロファージの食作用活性の増加(例えば、個体における、例えば末梢血単球の集団に見出されるような、例えば血中マクロファージなどのマクロファージを含む集団の食作用活性の増加)を提供する方法を特徴とする。
【0022】
本発明の一つの局面において、本発明は、個体についての生体試料において増殖マクロファージのレベルを検出することにより(例えば、増殖マクロファージのマーカーを有する細胞、例えばCD14+/CD16+細胞、CD16+/PCNA+細胞のレベルを評価することにより)、および/または全身性MCP-1のレベルを評価することにより、個体においてマクロファージ関連眼疾患(例えば、マクロファージ関連網膜疾患、特にマクロファージ関連網膜症、例えば、マクロファージ関連網膜疾患、例えば、ARMD、特に乾性ARMD)の診断を助ける方法を提供する。増殖マクロファージまたは全身性MCP-1の正常レベル(すなわち、無病の、好ましくは年齢をマッチさせた対照におけるそのようなマーカーのレベル)に対する、増殖マクロファージのレベルの上昇、または全身性MCP-1のレベルの上昇は、マクロファージ関連眼疾患のリスクの増加、またはマクロファージ関連眼疾患の存在を示す。関連態様において、増殖マクロファージのポリアミン類似体に対する感受性が試験され、感受性はマクロファージ関連疾患の存在を示している。ARMDのようなマクロファージ関連眼疾患のリスクの増加がそのような診断検査を用いて同定された場合、患者は、食生活の改善、臨床医への経過観察訪問の頻度の増加、および疾患への進行を評価するためのより頻繁な検査について同定されうる。
【0023】
本発明のさらなる局面において、本発明は、個体由来の生体試料において増殖マクロファージのレベル(および/または全身性MCP-1のレベル)を検出する段階を含む、個体においてマクロファージ関連眼疾患(例えば、マクロファージ関連網膜疾患)の治療をモニターする方法を提供する。
【0024】
本発明のもう一つの局面において、本発明は、マクロファージ関連眼疾患(例えば、マクロファージ関連網膜疾患、より特に、硝子体網膜症、ARMDの「乾性」型が特に対象となっている)に苦しんでいる、またはマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体において、ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、ポリアミン類似体の保護誘導体からなる群より選択される化合物を含む組成物を個体に投与する段階であって、該ポリアミン類似体のすべての窒素原子が第2級、第3級、または第4級アミノ基であり、かつ組成物が個体においてマクロファージ増殖を調節するのに十分な量で投与される段階を含む、マクロファージ増殖を調節する方法を提供する。
【0025】
本発明のもう一つの局面において、本発明は、ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、ポリアミン類似体の保護誘導体からなる群より選択される化合物を含む組成物を個体に投与する段階であって、該ポリアミン類似体のすべての窒素原子が第2級、第3級、または第4級アミノ基であり、かつ組成物が個体においてマクロファージ増殖を調節するのに十分な量で投与される段階を含む、被験体において結晶腔のレベルまたは蓄積を減少させる方法を提供する。
【0026】
本発明の一つの局面において、本発明は、マクロファージ増殖を調節する作用物質の有効量を個体に投与する段階を含む、個体においてマクロファージ関連眼疾患(例えば、マクロファージ関連網膜疾患、より詳細には硝子体網膜症、ARMDの「乾性」型が特に対象となっている)の発症を遅らせる方法を提供する。関連態様において、発症の遅延は、結晶腔の安定化、または低減により評価される(例えば、結晶腔スコアにより評価される)。
【0027】
本発明のこれらを始めとする特徴、および利点は、本明細書を読めば、当業者にとって容易に明らかであると思われる。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリアミン類似体がマクロファージ増殖を調節するにおいて特に効果的であるという発見に基づいている。さらに、本発明は、特定の増殖性疾患がマクロファージの増殖と関連している、およびマクロファージの増殖により支援されている可能性があるという発見に基づいている。これらの細胞増殖性疾患の中には、眼疾患、特に、硝子体網膜症、加齢性黄斑変性症(ARMD)などのような網膜症がある。本発明はさらに、ポリアミン類似体が非滲出性または「乾性」ARMDの処置に用いられうるという発見に基づいている。加えて、本発明は、全身性MCP-1、およびマクロファージ活性化のマーカー(例えば、CCR2発現レベル、CD14/CD16発現レベル、CD14/PCNA発現レベル)が、それらの結晶腔、通常のARMD疾患重症度マーカーとの相関に基づいて、ARMD疾患重症度を示しているという発見に基づいている。
【0029】
例えば、ARMD患者は末梢血においてマクロファージ増殖の上昇した異常なレベルをもつことが発見された。さらに、血液中の活性化マクロファージのレベルは、湿性および乾性の両方のARMD患者の網膜における結晶腔形成のレベルに平行している。特定の理論に縛られるつもりはないが、マクロファージ増殖は、眼疾患、特に、ARMD(湿性および乾性ARMDを含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、および増殖性糖尿病性網膜症(PDR)のような網膜疾患に関連および寄与している可能性がある。
【0030】
本発明はさらに、患者の末梢血における活性化マクロファージのレベルが、マクロファージの細胞活性化のレベルと平行しているという観察に基づいている。加えて、本発明は、ポリアミン類似体SL-11047が、ARMD患者から単離された活性化マクロファージ細胞を殺すことができるという発見に基づいている。望まれていず、かつ有害なマクロファージ増殖および活性化を制御することは、このように、これらのマクロファージ関連眼疾患を含むマクロファージ関連障害についての新しく、効果的な処置法を開発する重大な局面である。
【0031】
従って、本発明は、マクロファージ関連疾患を制御する、軽減する、および/または発症を遅らせるために有用な、マクロファージ増殖を調節するための方法を提供し、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患(限定されるわけではないが、ARMD、硝子体網膜症、および糖尿病性網膜症)が特に対象となっている。本発明はまた、マクロファージ関連眼疾患、特にARMDのようなマクロファージ関連眼疾患に苦しんでいる、またはマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体においてマクロファージ増殖を調節する方法を提供する。本発明はまた、増殖マクロファージの存在を測定することを必要とする、そのような疾患の診断を助ける、および/またはそのような疾患の治療をモニターする方法を提供する。
【0032】
下で考察されているように、マクロファージの調節のための例示的な作用物質は、ポリアミン類似体、特に1,11-ビス(エチル)ノルスペルミン;1,8-ビス(エチル)スペルミジン(BES);1,12-ビス(エチル)スペルミン(BESm;DESPM(N1,N12-ジエチルスペルミン);1,11-ビス(エチルアミノ)-4,8-ジアザウンデカン(BE-3-3-3);1,14-ビス(エチルアミノ)-5,10-ジアザテトラデカン(BE-4-4-4)(ジエチルホモスペルミン、N1,N14-ジエチルホモスペルミン;DEHOPまたはDEHSPM);ジエチル-ノルスペルミン(DENOP);1,19-ビス(エチルアミノ)-5,10,15-トリアザノナデカン(BE-4-4-4-4);N-エチル-N'-(2-(3'-エチルアミノ-プロピルアミノメチル)-シス-シクロプロピルメチル)-プロパン1,3-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11037);N-エチル-N'-(2-(3'-エチルアミノ-プロピルアミノメチル)-トランス-シクロブチルメチル)-プロパン1,3-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11038);N-エチル-N'-(2-(3'-エチルアミノ-プロピルアミノメチル)-トランス-シクロプロピルメチル)-プロパン1,3-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11044);およびN,N'-ビス(3-エチルアミノプロピル)-シス-ブタ-2-エン-1,4-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11047)である。
【0033】
定義
本明細書に用いられる場合、「マクロファージ」および「単球」という用語は、当技術分野において「単球」という用語が多くの場合CD14細胞表面マーカーを発現する循環単核細胞を記載するために用いられ、かつ組織における場合この細胞はまたマクロファージと分類されるため、交換可能に用いられる。
【0034】
「増殖マクロファージ」とは、当技術分野において理解されている用語であり、本明細書に用いられる場合、分裂中であるマクロファージを示す。通常には、マクロファージはさらなる分裂ができない最終分化細胞である。本発明の目的として、「増殖マクロファージ」はさらなる分裂ができる、または末期もしくは終期であるとはみなされない細胞周期の部分内にある。好ましくは、増殖はクローン性である、すなわち、単細胞に由来している。増殖マクロファージを検出する方法は下に考察されている。
【0035】
本明細書に用いられる場合、「増殖マクロファージの存在」を検出することとは、一般的に、増殖マクロファージのレベルを検出することを意味する。絶対的レベルまたは相対的レベルでさえも測定される必要はない;検出可能な増殖マクロファージの観察で十分である。
【0036】
「眼疾患」は、眼の状態、特に像を感知する眼の能力に関する疾患、障害、または異常を指す。「眼疾患」は、眼の増殖性疾患を含む網膜疾患を含む。例示的な眼疾患は、ARMD(滲出性(「湿性」)および非滲出性(「乾性」)を含む)、硝子体網膜症、糖尿病性網膜症などを含む。「障害」および「疾患」という用語は本明細書で交換可能に用いられる。
【0037】
本明細書に用いられる場合、「増殖性網膜症」は、網膜および/または硝子体の細胞性もしくは無細胞性成分の成長、置換、肥大、または過形成を含む眼疾患を指し、そのような構成要素は、血管細胞;血管;グリア細胞;線維芽細胞;マクロファージ;炎症細胞;網膜色素上皮細胞;星状細胞、または光受容体を含む感覚網膜細胞(桿体および錐体);双極細胞;および神経節細胞を含む。結晶腔は、結晶腔が、網膜色素上皮細胞より下の無細胞層であるブルック膜における成長とみなされうるため、増殖性網膜症の生成物である。さらに、結晶腔は、網膜色素上皮細胞の置換を引き起こすことができ、また、網膜色素上皮細胞の過形成、肥大、または発育不全を促進しうる。「増殖性網膜症」は、必ずしも限定されるわけではないが、ARMD(湿性および乾性の両方)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、外傷性増殖性網膜症、および増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む。
【0038】
「マクロファージ関連」疾患、障害、または徴候は、対照試料と比較してマクロファージ増殖の上昇した、または異常なレベルと関連している疾患、障害、または徴候である。そのような障害は、限定されるわけではないが、増殖マクロファージ成分を有する眼疾患(例えば、網膜疾患(例えば、ARMD、硝子体網膜症、糖尿病性網膜症など))を含む。マクロファージ関連網膜症は特に対象となる。マクロファージ関連眼疾患は、一般的に無病対照におけるそのような細胞の頻度と比較して、組織において高頻度の活性化マクロファージをもつと特徴付けられることができ、活性化マクロファージは、CD16発現、上昇したHLA-DR、上昇したMCP-1産生、減少したCCR2発現、および上昇したPCNA(非疾患性マクロファージに対して)により同定されうる。
【0039】
眼疾患(例えば、網膜疾患(例えば、ARMD、硝子体網膜症など))「に苦しんでいる」個体とは、個体が、ARMD、硝子体網膜症、および糖尿病性網膜症などのような眼疾患に罹っていると診断されている、または罹っているのではないかと疑われることを意味する。
【0040】
「ポリアミン」とは、当技術分野において十分理解されている用語であり、アミノ酸から生合成的に導かれた脂肪族の直鎖アミンの群のいずれかを意味する;ポリアミンはMarton et al. (1995) Ann. Rev. Pharm. Toxicol. 35:55-91に概説されている。「ポリアミン」とは、一般的に、自然発生のポリアミンまたは天然のポリアミンを意味し、真核細胞において自然に産生される。ポリアミンの例は、プトレッシン、スペルミジン、スペルミン、およびカダベリンを含む。
【0041】
「ポリアミン類似体」とは、スペルミンおよび/またはスペルミジンならびにそれらの前駆体、ジアミンプトレッシンのような天然のポリアミンと構造を共有するが、同一ではない有機陽イオンを意味する。ポリアミン類似体は、分枝型もしくは非分枝型でありうるか、または環状部分を組み込みうる。ポリアミン類似体の例は、非限定的に、N1,N14-ジエチルホモ-スペルミン(DEHSPM)およびN1,N12-ジエチルスペルミン(DESPM)を含む。例えば、WO 98/17624および米国特許第5,541,230号を参照。米国特許第5,037,846号および第5,242,947号は、第1級アミノ基を含むポリアミンを開示している。特に好ましいのは、該ポリアミン類似体のすべての窒素原子が独立して、第2級、第3級、または第4級アミノ基であるポリアミン類似体である。
【0042】
「アルキル」とは、メチル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、シクロプロピル、およびオクチルのような炭素および水素を含む環状、分枝型、または直鎖化学基である。アルキル基は、置換されていないか、または1つもしくは複数の置換基、例えば、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシ、ベンジルで置換されているかのいずれかでありうる。アルキル基は、飽和している、または1個もしくは数個の位置で飽和していない(例えば、-C=C-または-C°C-サブユニットを含む)ことができる。他に規定がない限り、アルキル基は、1個〜8個の炭素原子、好ましくは1個〜6個、およびより好ましくは1個〜4個の炭素原子を含む。「シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなどのような環状アルキル基のみを指す。「n-アルキル」は線状(すなわち、直鎖)アルキル基のみを指し、一方、「分枝アルキル」は環状および線状アルキル基を除外した分枝アルキル基を指す。「アルケニル」は、エテニル、シクロペンテニル、または1,3-ブタジエニルのような少なくとも1つの結合が一価不飽和である、炭素および水素を含む環状、分枝型、または直鎖化学基を指す。アルケニル基は、アルキル基について示されているように、置換されうる。アルケニル基は、アルキルについての先立つ命名と類似した様式で環状、線状(n-アルケニル)、または分枝型として命名されうる。「アリル」は、単一の環(例えば、フェニル)、または複数の縮合環(例えば、ナフチル)を有する不飽和芳香族炭素環基であり、置換されなくてもよいし、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、クロロ、ハロ、メルカプト、および他の置換基で置換されてもよい。
【0043】
「立体異性体」は、鏡像異性体およびジアステレオマーを含む、化合物の任意の光学異性体と定義される。他に指示がない限り、化合物の構造式は、すべての可能性のある立体異性体を含むことを意図される。
【0044】
「塩」は、元素または原子団での1つまたは複数の水素原子の置換により形成される化合物と定義され、陰イオンおよび陽イオンで構成され、通常、水中でイオン化する;塩は、例えば、酸の塩基による中和により、形成される。ポリアミン類似体塩は、例えば、塩化物イオンを含みうる。
【0045】
「保護誘導体」は、保護基で保護された化合物を指すために用いられる。「保護基」は、以下の特徴を示す化学基を指す:1)保護が望まれる、計画された反応に対して安定である保護された基質を与えるように、高収率で(好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより、好ましくは少なくとも99%)所望の官能基と選択的に反応する;2)所望の官能基を生じるように保護された基質から選択的に除去できる;および3)存在するまたはそのような計画された反応において生成された他の官能基と化学反応を起こさない試薬を用いて高収率で(好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%)除去できる。適した保護基の例は、Greene et al. (1991) Protective Groups in Organic Synthesis, 第2版 (John Wiley & Sons, Inc., New York)に見出されうる。アミノ官能基についての例示的な保護基は、限定されるわけではないが、メシチレンスルホニル(MesSO2)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、t-ブチルジメチルシリル(TBDIMS)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、または6-ニトロベラトリルオキシカルボニル(Nvoc)を含む。
【0046】
「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物は、限定されるわけではないが、家畜、競技用動物、齧歯類、霊長類、およびペットを含む。「非HIV感染個体」は、HIVに感染していない個体である。「HIV感染」個体は、感染の臨床症状を示している場合もあり、まだ示していない場合もある。HIV、およびHIV感染を検出する方法は当技術分野において周知であり、本明細書で考察される必要はない。
【0047】
本明細書に用いられる場合、「生体試料」は、個体から得られる様々な試料型を含み、診断またはモニタリングアッセイに用いられうる。その定義は、生物学的起源の血液および他の液体試料、生検標本またはそれ由来の組織培養物もしくは細胞、およびその子孫のような固体組織試料を含む。その定義はまた、試薬での処理、可溶化、またはタンパク質もしくはポリヌクレオチドのような特定の成分についての濃縮によるような、試料の獲得後、何らか操作されている試料を含む。「生体試料」という用語は、臨床試料を含み、また、培養中の細胞、細胞上清、細胞可溶化物、血清、血漿、生体液、および組織試料を含む。一般的に、試料は末梢血であるか、または末梢血由来である。好ましくは、血液は、例えば、ガラスまたはプラスチック粘着性を用いることによりマクロファージ画分について濃縮されている。本明細書に用いられる場合、「血液試料」への言及は、全血および全血由来の画分を含むことを意図され、免疫細胞、特に末梢血単球を含む試料は特に対象となる。対象となる他の生体試料は、限定されるわけではないが、眼の組織または液体から得られた眼試料、例えば、硝子体液、房水、および網膜または脈絡膜生検を含む。
【0048】
本明細書に用いられる場合、「バイオマーカー」という用語は、個体の生体試料に存在する場合、個体における特定の生理学的形質の存在を示している、大小に関わらず、分子(例えば、タンパク質、核酸、または化学化合物(例えば、基質、代謝産物、異化生成物など))を指す。例えば、PCNAは、生体試料における増殖マクロファージの存在についてのバイオマーカーである。バイオマーカーのもう一つの例において、分子の単球走化性タンパク質MCP-1は、活性化マクロファージの存在についてのバイオマーカーである。
【0049】
本明細書に用いられる場合、「診断を助けること」とは、これらの方法が、眼疾患の分類または性質に関して臨床的判断を行うにおいて援助し、最終的な診断に関して決定的であってもなかってもよい。眼疾患、特に網膜疾患の診断を助ける方法は、個体由来の生体試料において増殖マクロファージのレベルを検出する段階、および増殖マクロファージレベルが、冒されていない個体と関連したレベルに対して異常である(例えば、上昇している)かどうかを決定する段階を含みうる。一般的に、増殖マクロファージの異常レベルは、個体が増殖性網膜症、特にARMD、PVR、もしくはPDRを発症しやすい、または発症に感受性があることを示しうる。眼疾患(例えば、網膜疾患)が増殖マクロファージ、特にクローン性マクロファージ増殖に関連している可能性があるかどうかを決定すること、およびこの分類を行うことは、処置ストラテジーを立てて、推奨すること、および予後を評価することにおいて援助できる。例えば、個体が増加した増殖マクロファージを有する場合、さらなる診断検査(例えば、OCT、FAなど)および/または経過観察通院の頻度が指示されうる。
【0050】
本明細書における、網膜疾患のような眼疾患の「発症」は、最初の症状および/または続く疾患の進行を意味する。疾患の発症は、検出可能であり、結晶腔のサイズ、罹患眼における出血の存在、網膜の構造、視力もしくは視野の喪失または低下などの視覚的観察のような任意の適した標準臨床技術を用いて評価されうる。網膜症を含む様々な眼疾患についての臨床的徴候および症状は当技術分野において周知である。本明細書に用いられる場合、発症はまた、通常の徴候および症状の使用により検出可能でありうる疾患進行を指す。本発明の目的として、進行は、疾患状態の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発、および開始を含む。本明細書に用いられる場合、神経学的障害の「開始」または「発生」は、最初の開始および/または再発を含む。本明細書に用いられる場合、疾患の発症を「遅らせること(delaying)」とは、疾患の発症を延ばす(defer)、妨げる(hinder)、遅くする(slow)、遅延させる(retard)、安定させる(stabilize)、および/または延期する(postpone)ことを意味する。この遅延は、その障害の病歴および/または処置されることになっている個体の医学的プロフィールに依存して、様々な長さの時間でありうる。当業者にとって明らかであるように、十分な、または有意な遅延は、個体が検出可能な疾患を発症していない点において、事実上、予防を含みうる。疾患の発症を「遅らせる」方法は、その方法を用いないことと比較した場合、所定の時間枠において疾患の程度を低減する方法である。そのような比較は、典型的には、統計学的に有意な数の被験体を用いる臨床研究に基づいているが、この知識は事例証拠に基づきうる。「発症を遅らせること」とは、その作用物質を投与しないことと比較して、程度および/もしくは望ましくない臨床症状が軽減する、ならびに/または進行の時間経過が遅くなる、もしくは長くなることを意味する。従って、その用語はまた、限定されるわけではないが、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、および検出可能不可能に関わらず、緩解(部分か全体かを問わず)を含む。
【0051】
本明細書に用いられる場合、「有効量」(例えば、作用物質の)とは、所望のおよび/または有益な結果を生じる量(作用物質の)である。有効量は、1回または複数回の投与で投与されうる。本発明の目的として、有効量は、マクロファージ増殖の調節を生じるのに十分な量である。「マクロファージ増殖を調節するのに十分な量(ポリアミン類似体の)」は、好ましくは、マクロファージの増殖の速度を少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、およびよりいっそう好ましくは少なくとも90%、変化させることができる。
【0052】
そのような調節は、疾患の進行を軽減する、改善する、安定化する、逆転させる、遅くする、または遅らせる、疾患の開始を遅らせる、または防ぐことまでものような、望ましい付随する効果を生じうる。
【0053】
本明細書に用いられる場合、「作用物質」という用語は、単純なもしくは複雑な有機または無機分子、ペプチド、タンパク質、またはオリゴヌクレオチドのような生物学的または化学的化合物を意味する。ありとあらゆる化合物、例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチドのようなオリゴマー、様々なコア構造に基づいた合成有機化合物は合成されることができ、これらもまた「作用物質」という用語に含まれる。加えて、植物または動物の抽出物などのような様々な天然源は化合物を供給することができる。作用物質は、限定されるわけではないが、ポリアミン類似体を含む。作用物質は、単独で、または様々な組み合わせで投与されうる。
【0054】
用いられる場合、増殖マクロファージを「調節すること」とは、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、およびよりいっそう好ましくは少なくとも90%の増殖マクロファージのレベルにおける変化を意味する。増殖マクロファージにおける減少は、例えば、DNAとの天然ポリアミン相互作用に干渉する(限定されるわけではないが、ポリアミン生合成経路に干渉すること、スペルミジン、天然ポリアミンによるDNA相互作用の競合物質、インヒビターの細胞内濃度に干渉すること、ポリアミン代謝に干渉することなどを含む)ポリアミン類似体のような作用物質の投与後、結果として生じる減少に起因しうる。一般的に、本発明の目的として、増殖マクロファージのレベルを「調節すること」とは、増殖マクロファージ(例えば、PCNAのようなバイオマーカーを用いて検出されるような)、およびさらに、全マクロファージの一部として発現しうる増殖マクロファージ(例えば、総CD14陽性と比較した、パーセントCD16+/CD14+またはパーセントPCNA-CD14陽性)の定性的または定量的レベルが、作用物質が投与されない時のその個体におけるレベルと比較した場合、減少していることを意味する。
【0055】
ポリアミンまたはポリアミン類似体の「標的」は、そのポリアミンまたはポリアミン類似体と直接的にかまたは間接的にかのいずれかで相互作用する実体である。標的の例は、DNA、RNA、および/または膜である。
【0056】
発明の方法
本発明は、両方の処置の方法(例えば、マクロファージ増殖を阻害する、および/またはポリアミン生合成経路を乱すポリアミン類似体ならびに他の作用物質を用いる)を企図し、それらの方法は、治療的終点として増殖マクロファージの調節(例えば、増殖マクロファージにおける減少(例えば、増殖マクロファージであるPBMCのパーセンテージにおける減少)および/またはそのようなマクロファージの増殖の速度における減少)をもつ。本発明はまた、増殖マクロファージの指標である特定のバイオマーカーを評価することによる、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患の診断方法を企図する。これらの方法は下により詳細に記載されている。
【0057】
増殖マクロファージを調節する方法
本発明は、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患に苦しんでいる、またはマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体において増殖マクロファージを調節するための方法であって、ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、またはポリアミン類似体の保護誘導体を、個体においてマクロファージ増殖を調節するのに十分な量(すなわち、有効量)で投与する段階を含む方法を提供する。または、ポリアミン類似体またはポリアミン類似体の保護誘導体を含む組成物が、増殖マクロファージを調節するのに十分な量(すなわち、有効量)で投与される。マクロファージ関連眼疾患の例は上で記載されており、限定されるわけではないが、マクロファージ関連網膜疾患を含む。対象となる例示的な疾患は、限定されるわけではないが、ARMD(湿性および乾性)、硝子体網膜症、および糖尿病性網膜症を含む。硝子体網膜症および乾性ARMDの処置は特に対象となる。ポリアミン類似体は下に考察されている。
【0058】
本発明はさらに、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患に苦しんでいる、またはマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体において結晶腔を減少させる、または結晶腔のさらなる蓄積を防ぐための方法であって、ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、またはポリアミン類似体の保護誘導体を、個体においてマクロファージ増殖を調節するのに十分な量(すなわち、有効量)で投与する段階を含む方法を提供する。または、ポリアミン類似体またはポリアミン類似体の保護誘導体を含む組成物が、増殖マクロファージを調節するのに十分な量(すなわち、有効量)で投与される。結晶腔を低減させること、または少なくとも結晶腔のさらなる蓄積を防ぐことは、マクロファージ関連眼疾患の発症における予防または遅延を提供できる。結晶腔は、通常の技術により評価されることができ、治療は、結晶腔スコアの減少、または結晶腔スコアの維持(例えば、1〜2の初期ARMDを示す結晶腔スコア)により評価されうる。特に対象となるのは、通常の基準に従っての重症度のより低い疾患を示す結晶腔スコアの維持である。
【0059】
本発明の目的として、ポリアミン類似体(またはマクロファージ増殖を調節する作用物質)の投与に適した個体は、眼疾患、特に、ARMD、硝子体網膜症、もしくは糖尿病性網膜症のような網膜障害に罹っていると診断されている、もしくは罹っているのではないかと疑われる個体、またはそのような障害を発症する高いリスクがあると判断される個体である。当業者にとって明らかであるように、これらの方法はいかなる症状も表していないそれらの個体に適用できる。「リスクがある」または「高いリスクがある」個体は、眼疾患、特に網膜疾患を発症する個別的かつ有意なリスクを有する個体である。「リスクがある」または「高いリスクがある」個体は、検出可能な疾患を有する場合もあるし、有しない場合もあり、本明細書に記載された方法を受ける前に検出可能な疾患を表している場合もあるし、表していない場合もある。「高いリスク」(または「リスクがある」)とは、個体が、1つまたは複数の、疾患の発症と関連がある測定可能なパラメーターである、いわゆるリスクファクターを有することを意味する。これらのリスクファクターの1つまたは複数を有する個体は、これらのリスクファクターを有しない個体より疾患を発症するより高い確率をもつ。これらのリスクファクターは、限定されるわけではないが、結晶腔スコア、遺伝子の(すなわち、遺伝的)考慮(家族歴および遺伝子マーカーを含む)、および適切な化学的マーカーの存在または非存在、ならびに特定の疾患に罹る確率を増加させると思われる環境、条件、または因子への曝露を含む。レトロウイルス感染、特に特定の遺伝子座(furまたはPDGFのような)へのレトロウイルスの挿入もまたリスクファクターとみなされうる。高いリスクのある個体は、1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つのリスクファクターを有する。しかしながら、1つのリスクのみを有することがしばしば、高いリスクを示しうることは理解されている。
【0060】
網膜疾患のような眼疾患の分野における研究および開発の進歩にも関わらず、特定のリスクファクターのみが、疾患発症において役割を果たしていることが今までのところ見出されている。そのようなファクターは、加齢、性別、遺伝子、栄養、またはストレス関連でありうる。眼疾患を発症することについてのすべてのリスクファクターが知られておらず、かつこれらのファクター間の相互作用(全体的リスクに関して)は完全には理解されていないため、本発明の目的として作用物質の投与に適した個体が共通した臨床徴候をもちうること、および上記のカテゴリーに明らかに当てはまらない個体が、それにもかかわらず、作用物質の投与についての適した候補とみなされうることは当業者にとって明らかである。例えば、ARMDの家族歴をもつ個体は、たとえ明らかな症状が観察されていないとしても、彼女自身、ARMDを発症するリスクがあるとみなされうる。この関係において、そのような個体への作用物質の投与は、結果として、疾患の発生の遅延を、彼または彼女の一生の内にARMDを発症しない(または予想されていたよりも遅くそれを発症する)という程度までも生じうる。もう一つの例は、治療の他の様式を用いて処置されることになっており、かつその治療に対して臨床応答(すなわち、安定化または緩解)を示している個体である。そのような個体は、たとえ最初の治療コースがまだ完了していないにしても、臨床医による臨床経過の予測により、「高いリスク」あると判断される場合があり、最初の治療の完了前に作用物質を受けることについての適した候補でありうる。当業者のように臨床医は、作用物質を用いる処置が必要であるかどうかを決定する分別をもっている。
【0061】
もう一つの態様において、本発明は、個体(一般的に、マクロファージ関連疾患に苦しんでいる、またはマクロファージ関連疾患のリスクがある)においてマクロファージ増殖を調節するための方法であって、DNA、RNA、および/または膜のような増殖マクロファージ標的とのポリアミン相互作用に干渉する作用物質の有効量を含む組成物を投与する段階を含む方法を提供する。増殖マクロファージ標的とのポリアミン相互作用に干渉する作用物質は、天然ポリアミン合成および/もしくは代謝、細胞内濃度制御、ならびに/または機能(すなわち、DNAとの相互作用)の任意の局面に干渉するものである。
【0062】
診断方法およびキット
本発明はさらに、マクロファージ関連眼疾患、特にARMD、硝子体網膜症、および糖尿病性網膜症のような網膜疾患に罹っている、もしくは罹るリスクがある個体の診断、またはマクロファージ関連眼疾患に罹っている個体において治療をモニターするのを助けるための方法を提供する。
【0063】
一つの態様において、これらの方法は、個体由来の生体試料において増殖マクロファージの存在を、例えば、増殖マクロファージのバイオマーカー(例えば、CD14+/CD16+細胞、またはCD14+/PCNA+細胞、例えば、末梢血単球(PBMC)のうちのパーセンテージとして)を検出することにより検出する段階であって、無病対照のレベルより有意に高い、試料に存在する増殖マクロファージのレベルの存在がマクロファージ関連眼疾患のリスクまたは存在の指標である段階を含む。もう一つの態様において、診断方法は、PBMCにおいてCCR2発現のレベルを検出する段階であって、無病の対照に見出されるレベルと比較したCCR2発現のレベルの減少が増殖マクロファージを示し、その増殖マクロファージが立ち代わって、マクロファージ関連眼疾患のリスクまたは存在の指標である段階を含む。さらにもう一つの態様において、診断方法は、全身性MCP-1レベル(末梢血中、すなわち眼それ自体以外における、MCP-1のレベル)を検出する段階であって、無病対照における全身性MCP-1レベルに対して上昇した全身性MCP-1レベルが個体における増殖マクロファージを示しており、その増殖マクロファージが立ち代わって、マクロファージ関連眼疾患のリスクまたは存在の指標である段階を含む。全体に渡って、無病対照に対する上昇した(または減少した)レベルへの言及は、一般的に、正常な、年齢をマッチさせた、無病の対照についての平均値より上の(または下の)、少なくとも1標準偏差である差を含むことを意図される。
【0064】
ARMDもしくは他の眼疾患を発症する高いまたは有意なリスクがあるとみなされた個体において、生体試料(例えば、末梢血単球(PBMC)を含む生体試料)における増殖マクロファージ、CCR2レベル(例えば、単球の表面上に発現しているような)、および/またはMCP-1レベルの検出はまた、可能性のある前駆疾患について個体および/または臨床医に警告するのに助けとなりうる。従って、本発明はまた、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患を発症するリスクまたは高いリスクがある個体をモニターする方法であって、その個体由来の生体試料における(例えば、血液試料、例えば、PBMCを含む血液試料、における)増殖マクロファージ、CCR2レベル、および/またはMCP-1レベルの検出を含む方法を提供する。一つの態様において、個体は、特定の疾患、障害、もしくは徴候に「苦しんでいる」(例えば、を患っている、および/または1つもしくは複数の臨床症状を表していると診断されている)、または特定の疾患、障害、もしくは徴候のリスクがある(例えば、遺伝性素因もしくは家族歴を有すること、または罹る確率を増加させるファクターへ環境的に曝露されていること)。
【0065】
もう一つの態様において、本発明は、眼疾患、特に網膜疾患の治療をモニターする方法であって、生体試料において増殖マクロファージの存在(例えば、レベル)、CCR2レベル(例えば、単球の表面上に発現しているような)、および/またはMCP-1レベルを検出する段階を含む方法を提供する。マクロファージ増殖のレベルはこれらの状態と関連しているので、これらのレベルをモニターすることは、立ち代わって、治療の最初の応答および効力、加えて、治療の適切な用量を示しうる。治療または(高い)リスクのある個体をモニターすることは、生体試料が、例えば、治療の適用中の、異なる時期に得られ、お互いに、対照、および/または望ましい値のいずれかと比較されることを意味することは理解されている。一つの態様において、治療をモニターすることは、マクロファージ増殖を検出する段階を含む。
【0066】
増殖マクロファージ、マクロファージマーカー(例えば、CD14、CD16、PCNA、HLA-DR、CCR2など)、およびMCP-1レベルの検出は、いくつかの技術のいずれかを用いて達成されうる。マクロファージ増殖の検出を含む本発明のいくつかの態様において、増殖は循環マクロファージに関して測定され、末梢血由来の白血球調製物において行われる。本発明の他の態様において、増殖は、組織に固定されたマクロファージに関して測定され、典型的には、組織切片において行われる。
【0067】
増殖マクロファージは、例えば、PCNAのような細胞増殖性マーカーをアッセイすることにより、検出されうる。これらのマーカーは、CD69およびCD25のような「活性化」マクロファージ(増殖マクロファージに対立するものとして)のみを同定するものとは異なる。マクロファージを表す細胞サブセットは、CD14、CD68、CD16のような特定の細胞特異的マーカー、または非特異的エステラーゼの検出により同定されうる。これらの細胞型および/または増殖性マーカーの検出は、染色技術ならびにFACSソーティングおよび分析のような当技術分野における標準的方法を用いる。これらの方法はさらに実施例1に記載されている。さらに、これらの増殖マクロファージが細胞密度(例えば、PERCOLL(商標)勾配において測定されるような)のような他の特徴に基づいて識別されうることはありえる。これらの測定は、当技術分野における標準技術を用いて経験的に確立されうる。
【0068】
CCR2レベルを評価するための方法は、当技術分野において公知の方法により行われうる。一つの態様において、CCR2発現レベルは、抗CCR2抗体を、末梢血単球を含む血液試料、通常には血液由来試料と接触させることにより測定される。
【0069】
MCP-1レベルを評価するための方法もまた、当技術分野において周知であり、例えば、MCP-1は、末梢血単球を含む血液試料、通常には血液由来試料を用いるELISAにおいて抗MCP-1抗体を用いて検出されうる。
【0070】
眼疾患、特に網膜疾患の診断、または眼疾患を予測するのを助ける目的として、試料における増殖マクロファージ、CCR2発現、および/またはMCP-1のレベルは、一般的に、必要に応じて性別および年齢をマッチさせた、健康な個体から採取された試料における平均または中央値レベルと比較される。増殖マクロファージのレベル、またはCCR2発現細胞のレベルは、血液試料から得られた(または組織切片の免疫組織病理学により測定された)増殖マクロファージまたはCCR2+細胞の絶対数として計算されうる。より通常には、レベルは、細胞マーカーまたは形態学的特徴により同定可能な、試料における総マクロファージのうちのパーセンテージとして計算されるが、これは、試料における回収されたマクロファージ様細胞の数における差について標準化するからである。同様に、生体試料におけるMCP-1レベルは、定量的かまたは定性的かのいずれかで測定され、冒されていない(健康な)個体と関連したMCP-1レベルと比較されうる。
【0071】
多くの臨床試験のように、正常(無病の、好ましくは年齢をマッチさせた)値と関連した平均より上の、約2より大きい、通常には少なくとも約3の標準偏差の所見は、統計学的に有意であり、異常を示している。平均より上の、約1または約2の標準偏差の所見は、心配の理由であるが、本明細書に記載されているように、重症度の低い疾患型(例えば、3〜4の結晶腔スコアと関連する比較的増加した疾患重症度よりむしろ、1〜2の結晶腔スコアと関連する疾患重症度)の指標でありうる。他の指標と組み合わせて、本明細書に記載されているようなマクロファージ関連眼疾患のマーカーのレベルの上昇は、例えば、ARMD、またはマクロファージ増殖と関連したいくつかの他の状態の診断を助けることができる。一般的に、マクロファージ活性化のマーカー、および全身性MCP-1産生は、マクロファージ関連眼疾患のマーカーとしての役割を果たすことができ、そのようなマーカーのレベルは疾患重症度のマーカーとしての役割を果たす。
【0072】
例えば、PCNA/CD14またはCD16/CD14細胞について染色かつカウントされた末梢血白血球は、増殖マクロファージの存在を示しており、その存在が、立ち代わって、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患と一致しており、そのような細胞のレベルにおいて、無病の年齢をマッチさせた対照に対して上昇している。加えて、増殖マクロファージのレベルはまた、被験体におけるマクロファージ関連眼疾患の重症度を示しており、増殖マクロファージのより高いレベル(例えば、総PBMCのうちの増殖マクロファージのより高いパーセンテージ)が、増加した疾患重症度(例えば、より高い結晶腔スコア)と関連している。
【0073】
もう一つの例において、健康な個体と比較した、CCR2発現について染色かつカウントされた末梢血白血球の減少したレベルは、陽性染色された細胞のパーセンテージが無病の年齢をマッチさせた対照からのCCR2+細胞のパーセンテージのそれより有意に低い場合には、個体におけるマクロファージ関連眼疾患と一致している。減少したCCR2発現レベルはまた、被験体におけるマクロファージ関連眼疾患の重症度を示しており、CCR2発現のより低いレベル(例えば、総PBMCのうちのパーセンテージとしてのCCR2発現細胞、または総PBMCのうちの平均CCR2発現レベル)が、増加した疾患重症度(例えば、より高い結晶腔スコア)と関連している。
【0074】
もう一つの例において、健康な個体と比較した、マクロファージ上でのHLA-DR発現の強度について染色かつカウントされた末梢血白血球の減少したレベルは、陽性染色されたマクロファージのパーセンテージが無病の年齢をマッチさせた対照に見出されるそのレベルより有意に高い場合には、個体におけるマクロファージ関連眼疾患と一致している。HLA-DR染色の強度が高ければ高いほど、疾患の重症度は多くなる。上昇したHLA-DR発現レベル(例えば、総PBMCもしくはマクロファージのうちのパーセンテージとしてのHLA-DR発現マクロファージ、または総PBMCのうちの平均HLA-DR発現レベル)はまた、被験体におけるマクロファージ関連眼疾患の重症度を示しており、HLA-DR発現のより高いレベルが、増加した疾患重症度(例えば、より高い結晶腔スコア)と関連している。
【0075】
もう一つの例において、無病の年齢をマッチさせた対照と比較した、被験体の血液におけるMCP-1の上昇したレベル(眼または眼組織、それ自体におけるMCP-1レベルに対立するものとしての、全身性MCP-1)は、MCP-1レベルが、無病の年齢をマッチさせた対照の全身性MCP-1より有意に高い場合には、個体におけるマクロファージ関連眼疾患と一致している。MCP-1レベルはまた、被験体におけるマクロファージ関連眼疾患の重症度を示しており、より高いMCP-1レベルが、増加した疾患重症度(例えば、より高い結晶腔スコア)と関連している。
【0076】
もう一つの例において、個体由来のMCP-1産生および/またはマクロファージのポリアミン類似体に対する感受性もまた、個体におけるマクロファージ関連眼疾患を示しうる。ポリアミン類似体の存在下における(例えば、培養中)、そのようなマクロファージによるMCP-1産生の減少、またはそのようなマクロファージの成長の阻害は、マクロファージが得られた個体が、マクロファージ関連眼疾患に罹っている、またはマクロファージ関連眼疾患のリスクがあることのもう一つの指標である。ポリアミン類似体の非存在下におけるMCP-1産生または細胞成長と比較した、ポリアミン類似体の存在下における、試料においての、少なくとも25%、50%、75%、85%、もしくはそれ以上のMCP-1産生における減少、またはマクロファージの少なくとも25%、50%、75%、85%、もしくはそれ以上の有効な成長阻害(死滅を含む)は、マクロファージのポリアミン類似体に対する感受性を示している。
【0077】
鑑別診断は、原因となる、または結果として生じる効果としてのマクロファージ増殖と関連した任意の状態を含み、最終診断は、管理医師または臨床医の責任であり、存在する場合には、他の臨床的徴候または症状との関連で評価されうる。
【0078】
マクロファージ増殖阻害剤の効果をモニターする目的として、処理された試料における増殖マクロファージのレベルは、一般的に、未処理の試料におけるレベルと比較される。増殖阻害剤の一般的なスクリーニングについて、末梢血白血球が、増殖マクロファージに関連した疾患に冒された個体から単離される。細胞の試料は、候補化合物で処理され、効果は処理されていない細胞と比較される。患者に投与される場合、マクロファージ増殖阻害剤の効果は、処置前および処置中の増殖マクロファージのレベルを比較することにより決定され、減少傾向が一般的に、陽性効果と一致している。
【0079】
もう一つの態様において、本発明は、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患の発症を遅らせる方法を提供する。これらの方法は、個体においてマクロファージ増殖を調節する作用物質の有効量の投与を含む。ポリアミン類似体(立体異性体、それらの塩、およびそれらの保護誘導体を含む)を含むそのような作用物質は下に記載されている。
【0080】
キット
本発明はまた、本発明の診断方法に用いるキットを提供する。一般的に、キットは、被験体由来の生体試料、通常には血液試料においてマクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患についての1つまたは複数のバイオマーカーを検出するための検出手段を含む。そのようなバイオマーカーは、増殖マクロファージ(例えば、本明細書に考察されているように、PCNAなど)、活性化マクロファージ(例えば、CD14、CD16、PCNA、CCR2、HLA-DR(「dr」))、およびMCP-1についてのバイオマーカーを含む。
【0081】
マクロファージ増殖を調節するための作用物質
本発明のいくつかの態様において、マクロファージ増殖は、ポリアミン類似体(それらの立体異性体、塩、および保護誘導体を含む)を用いることにより達成される。他の態様において、マクロファージ増殖を調節する任意の作用物質が用いられうる。ポリアミン類似体に関して、考察はまたそれらの立体異性体、塩、および保護誘導体に当てはまることは理解されている。
【0082】
ポリアミン類似体
本発明に用いられるポリアミン類似体は、構造1、2、3、4、および5の化合物、ならびに対応するそれらの立体異性体、塩、および保護誘導体を含む。

式中、R1、R2、R4、R6、およびR7は、独立して、水素、アルキル、およびアリルからなる群より選択され、R3およびR5はアルキル基である。

式中、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9は、独立して、水素、アルキル、およびアリルからなる群より選択され、R3、R5、およびR7はアルキル基である。

式中、R1、R2、R4、R6、R8、R10、およびR11は、独立して、水素、アルキル、およびアリルからなる群より選択され、R3、R5、R7、およびR9はアルキル基である。

式中、R1およびR5は、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソプロピルからなる群より選択され;
R2、R3、およびR4は、独立して、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C1-C6アルキル-C3-C6シクロアルキル-C1-C6アルキル、C3-C10アリル、およびC1-C6アルキル-C3-C10アリル-C1-C6アルキルからなる群より選択され;
ならびに、R6、R7、R8、およびR9は、独立して、H、メチル、およびエチルからなる群より選択される。

式中、R1およびR6は、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソプロピルからなる群より選択され;
R2、R3、R4、およびR5は、独立して、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C1-C6アルキル-C3-C6シクロアルキル-C1-C6アルキル、C3-C10アリル、およびC1-C6アルキル-C3-C10アリル-C1-C6アルキルからなる群より選択され;
ならびに、R7、R8、R9、R10、およびR11は、独立して、H、メチル、およびエチルからなる群より選択される。
【0083】
好ましくは、ポリアミン類似体は、構造2および3の化合物を含み、R3、R5、R7、およびR9は、独立して、(CH2)x基であり、xは2から6までの整数であり、さらにR4、R6、およびR8は水素原子である。
【0084】
より好ましくは、ポリアミン類似体は、構造2および3の化合物を含み、R3、R5、R7、およびR9は、独立して、(CH2)x基であり、xは2から6までの整数であり、R4、R6、およびR8は水素原子であり、R1およびR10はアルキル基であり、さらにR2およびR11は水素原子である。
【0085】
最も好ましくは、ポリアミン類似体は、構造2および3の化合物を含み、R3、R5、R7、およびR9は、独立して、(CH2)x基であり、xは2から6までの整数であり、R4、R6、およびR8は水素原子であり、R1およびR10はアルキル基であり、R2およびR11は水素原子であり、さらにポリアミン類似体は500未満の分子量を有する。
【0086】
追加の好ましい化合物はまた、構造4の化合物を含み、
式中、R6、R7、R8、およびR9はHであり;
R1およびR5はエチルであり;
R6、R7、R8、およびR9はHであり、R1およびR5はエチルであり;
ならびに/または、R2およびR4は、独立して、C1-C6アルキルからなる群より選択され、R3は、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C1-C6アルキル-C3-C6シクロアルキル-C1-C6アルキル、C3-C10アリル、およびC1-C6アルキル-C3-C10アリル-C1-C6アルキルからなる群より選択される。
【0087】
本発明において有用な追加のポリアミン類似体は、式6の化合物、ならびにそれらの対応する立体異性体、塩、および保護誘導体を含む。

式中、R4は、C2-C6n-アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C3-C6シクロアルケニル、またはC3-C6アリルであり;
R3およびR5は、独立して、一重結合、C1-C6アルキル、またはC1-C6アルケニルから選択され;
R2およびR6は、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C3-C6シクロアルケニル、またはC3-C6アリルから選択され;
R1およびR7は、独立して、H、C1-C6アルキル、またはC2-C6アルケニルから選択され;ならびに
R8、R9、R10、およびR11はHである。
【0088】
式6の化合物の好ましい態様において、R1およびR7は、独立して、C1-C6アルキルまたはC2-C6アルケニルから選択される。
【0089】
本発明において有用な追加のポリアミン類似体は、式7の化合物、ならびにそれらの対応する立体異性体、塩、および保護誘導体を含む。

式中、R4は、C1-C6n-アルキルまたはC1-C6分枝アルキルであり;
R3およびR5は、独立して、一重結合またはC1-C6アルキルから選択され;
R2およびR6は、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C6シクロアルキル、C3-C6シクロアルケニル、またはC3-C6アリルから選択され;
R1およびR7は、独立して、H、C1-C6アルキル、またはC2-C6アルケニルから選択され;ならびに
R8、R9、R10、およびR11はHである。
【0090】
式7の化合物の好ましい態様において、R1およびR7は、独立して、C1-C6アルキルまたはC2-C6アルケニルから選択され、R4は、C1-C6飽和n-アルキルまたはC1-C6飽和分枝アルキルであり、R3およびR5は、独立して、一重結合またはC1-C6飽和n-アルキルから選択される。
【0091】
式1〜7の化合物が末端の第1級アミノ基を含む場合(すなわち、式1の化合物において、R1およびR2が両方ともHである、ならびに/またはR6およびR7が両方ともHである場合;式2の化合物において、R1およびR2が両方ともHである、ならびに/またはR8およびR9が両方ともHである場合;式3の化合物において、R1およびR2が両方ともHである、ならびに/またはR10およびR11が両方ともHである場合;式4の化合物において、R1およびR6が両方ともHである、ならびに/またはR5およびR9が両方ともHである場合;式5の化合物において、R1およびR7が両方ともHである、ならびに/またはR6およびR11が両方ともHである場合;式6の化合物において、R1およびR8が両方ともHである、ならびに/またはR7およびR11が両方ともHである場合;式7の化合物において、R1およびR8が両方ともHである、ならびに/またはR7およびR11が両方ともHである場合)、そのような化合物で処置される疾患は、アルツハイマー病を除く本明細書に開示されたすべての疾患を含む。
【0092】
好ましくは、ポリアミン類似体のすべての窒素は、独立して、第2級、第3級、または第4級アミノ基である。
【0093】
本発明に用いるのに好ましいポリアミン類似体の中には、細胞において天然のポリアミンレベルを調節する証明された能力をもつそれらの化合物がある。理論により制限されるつもりはないが、可能性のある機構は、ポリアミン合成経路における競合;SSATのようなポリアミン異化因子(catabolizer)の上方制御;ポリアミン代謝に影響を及ぼすことを含む。
【0094】
特に対象となるのは、以下のポリアミン類似体である:
・1,11-ビス(エチル)ノルスペルミン(1,11-ビス(エチルアミノ)-4,8-ジアザウンデカン;BE-3-3-3)
・1,8-ビス(エチル)スペルミジン(BES)
・1,12-ビス(エチル)スペルミン(BESm;DESPM(N1,N12-ジエチルスペルミン;SunPharm)
・1,14-ビス(エチルアミノ)-5,10-ジアザテトラデカン(BE-4-4-4)(ジエチルホモスペルミン、N1,N14-ジエチルホモスペルミン;DEHOPまたはDEHSPM;SunPharm)
・ジエチル-ノルスペルミン(DENOP;Sun Pharm)
・1,19-ビス(エチルアミノ)-5,10,15-トリアザノナデカン(BE-4-4-4-4)
・N-エチル-N'-(2-(3'-エチルアミノ-プロピルアミノメチル)-シス-シクロプロピルメチル)-プロパン1,3-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11037)、S'LIL, Madison, Wisconsinにより提供された
・N-エチル-N'-(2-(3'-エチルアミノ-プロピルアミノメチル)-トランス-シクロブチルメチル)-プロパン1,3-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11038)、S'LIL
・N-エチル-N'-(2-(3'-エチルアミノ-プロピルアミノメチル)-トランス-シクロプロピルメチル)-プロパン1,3-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11044)、S'LIL
・N,N'-ビス(3-エチルアミノプロピル)-シス-ブタ-2-エン-1,4-ジアミンテトラヒドロクロリド(SL-11047)、S'LIL
・SL-11037、SL-11038、SL-11044、およびSL-11047の構造は下に図示されている:

【0095】
上で列挙されたポリアミン類似体の他に、それらの立体異性体、塩、または保護誘導体が用いられうる。
【0096】
ポリアミン類似体の使用の方法
本発明はまた、マクロファージ増殖を調節するにおいて(またはマクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患のようなマクロファージ関連疾患を処置する、もしくはマクロファージ関連疾患の発症を遅らせるにおいて)、上で列挙されたポリアミン類似体、またはそれらの立体異性体、塩、もしくは保護誘導体のいずれかの有効量(または上で列挙されたポリアミン類似体、またはそれらの立体異性体、塩、もしくは保護誘導体のいずれかの有効量を含む組成物)を用いる方法を含む。本発明はまた、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患のようなマクロファージ関連疾患を処置するのに有用な組成物(すなわち、薬剤)を調製するにおいて用いる、上で列挙された任意のポリアミン類似体、またはそれらの立体異性体、塩、もしくは保護誘導体を含む。
【0097】
上で列挙された任意のポリアミン類似体、またはそれらの立体異性体、塩、もしくは保護誘導体(または任意のポリアミン類似体、またはそれらの立体異性体、塩、もしくは保護誘導体の有効量を含む組成物)は、インビトロまたはインビボで用いられうる。インビトロでは、適した生物学的試料(マクロファージ集団について濃縮されていてもされていなくてもよい、血液試料のような)が、組成物と接触させられる。インビボでは、本発明の組成物が、一般的に、製造会社の/または供給業者の使用説明書により投与される。一般的に、ポリアミン類似体は、皮下または静脈注射により投与される。それらはまた、経口で投与されうる。
【0098】
インビボ投与
投与されるポリアミン類似体(またはその立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)の量は、用いられる特定の類似体(または立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)、投与の時間経過、個体の状態、所望の目的、疾患の程度、何回投与されるか、および任意の他の物質が投与されることになっているかどうかのようないくつかの変動事項に依存する。一般的に、用いられる量は、製造会社により推奨されているとおりである、および/または実証的研究に基づいている。ポリアミン類似体(またはその立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)の場合、量は、一般的に、約1〜約300mg/m2/日、場合によっては、約15〜約150mg/m2/日である。投与は一般的に、類似体(またはその立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)が少なくとも1〜2日の期間につき投与され、その後、少なくとも1〜2日間の期間、投与されず、そのサイクルが示されたように繰り返されることを意味する、間欠的である。一つの態様において、ポリアミン類似体(またはその立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)は3週間ごとに6日間。
【0099】
投与経路は、一般的に、特定のポリアミン類似体(または立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)の性質に依存し、例えば、経口で、または注射(眼内(例えば、硝子体内)、皮下、または静脈内)によりうる。他の投与経路は、局所投与(眼へ、例えば、点眼剤を用いる)、結膜下、眼周囲、サブテノン(subtenon)、球後(眼窩後)、または眼へのイオン注入送達による投与を含む。
【0100】
製剤
好ましくは、ポリアミン類似体(または立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)、またはポリアミン合成経路、ポリアミン代謝、および/もしくはスペルミンの細胞内濃度維持に干渉する他の適した作用物質は、適した薬学的賦形剤において投与される。薬学的賦形剤は当技術分野において公知であり、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing (1990)に示されている。
【0101】
ポリアミン類似体はまた、マクロファージへの作用物質送達を促進する、またはマクロファージに対する作用物質の特異性を増加させるもう一つの物質と会合しうる。例えば、作用物質はリポソームの中へ会合しうる。リポソームは当技術分野において公知である。リポソームは、次に、IgGFc受容体のようなターゲティング物質と結合されうる。ザイモサンもしくはテトラクロロデカオキシゲン(TCDO)のようなマクロファージ食作用を増加させる物質、および/またはMCSF、GMCSF、もしくはIL-3のようなマクロファージ活性化を増加させる物質は、抗増殖性剤の摂取を増加させるために用いられうる。一つの態様において、ポリアミン類似体は、例えば、眼の中に、または眼へと導く血管床に隣接して置かれうる徐放性製剤として提供される。
【0102】
ポリアミン類似体(または立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)は、投与の状況(すなわち、所望の最終結果、個体の状態、および徴候)に依存して、単独で、または他の物質および/もしくは治療と組み合わせて、投与されうる。「〜と組み合わせて」とは、作用物質が、他の物質もしくは治療の前に、同時に、または後に投与されることを意味する。作用物質と組み合わせて投与されうる物質の例は、限定されるわけではないが、抗生物質(例えば、細菌、ウイルス、もしくは真菌感染を処置または予防するための作用物質)、抗炎症剤、抗血管形成剤などを含む。例えば、ポリアミン類似体(または立体異性体、塩、もしくは保護誘導体)は、ミトグアゾンジヒドロクロリドと組み合わせて投与されうる。
【0103】
様々なポリアミン類似体および酵素阻害剤の機構的有効性は、少なくとも一部、細胞内のポリアミンのプールを枯渇させるそれらの能力により決定されうる。Kramer et al. [(1995) Biochem. Pharmacol. 50:1433]は、ポリアミン生合成経路を通しての代謝流量をモニターするための4-フルオロ-L-オルニチンの使用を記載する。フッ素化ポリアミンの出現の速度により示される代謝流量は、細胞の増殖状態を反映することを測定した。米国特許第5,498,522号は、予後指標または腫瘍応答マーカーとしてのSSATの使用を概説する。SSAT酵素活性、SSAT酵素タンパク質、またはmRNA転写産物のいずれかが直接的に測定されうる、またはSSAT補因子アセチルCoA、ならびにSSAT生成物N1-アセチルスペルミンおよびN1-アセチルスペルミジンのようなSSAT誘導に関連した他の決定因子が測定されうる。ポリアミン類似体の投与の効果をさらに測定するために、個体は、疾患(または前駆疾患)進行、加えて疾患(または前駆疾患)の生化学的および/または遺伝子マーカーについてモニターされうる。疾患進行に関して、複数の評価尺度(すなわち、臨床的機能の指標)が確立されており、ADおよびリンパ腫のような様々なマクロファージ増殖性障害について当技術分野において公知である。マクロファージ関連神経学的障害について、認知機能が検査されることができ、場合によっては、MRIのような画像診断法が用いられうる。
【0104】
マクロファージ増殖を調節するための他の試薬
上記のポリアミン類似体の他に、マクロファージ関連眼疾患、特にマクロファージ関連網膜疾患の関連においてマクロファージを調節するのに用いる適した作用物質は、マクロファージの増殖を阻害する、一般的な抗増殖性剤(すなわち、増殖調節剤)を含む。これらは、限定されるわけではないが、ダウノマイシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、ドキソルビシン、5-FU、シトシン、アラビノシド、コルヒチン、サイトカラシンB、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、シスプラチン、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、およびサポリンを含む。
【0105】
他の適した作用物質は、ポリアミン合成経路を阻害する、もしくは干渉するもの、またはポリアミンの代謝に影響を及ぼすものである。他の適した作用物質は、綿密に制御されたスペルミジンの細胞内濃度に影響を及ぼすものである。そのような作用物質の例は、次にポリアミンの産生に必要とされるS-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼを阻害するMGBG(ミトグアゾンジヒドロクロリド;XYRKAMINE(登録商標);Ilex, Texas)である。DNA、RNA、および/または膜のような増殖マクロファージ標的とのポリアミン相互作用に干渉する任意の作用物質が同様に適している。有用な作用物質のもう一つの型は、DNAとのポリアミン相互作用に干渉するものである。そのような作用物質は、この機能を、例えば、上記の効果(すなわち、ポリアミン合成経路および/または代謝に干渉する、細胞内スペルミン、競合物質の濃度を乱すなど)、およびDNAと相互作用することに関してポリアミン機能に影響を及ぼすことのいずれかにより、発揮しうる。これらおよび本明細書に記載された任意の他の作用物質に関して、毒物学考察もまた、作用物質が用いられるべきかどうか、および/またはどんな量で用いられるべきかを決定する時に考慮されなければならない。
【0106】
投与および他の検討材料は上で記載されている。本明細書に引用されたすべての参考文献および刊行物の内容は全体として本明細書に組み入れられている。
【0107】
以下の実施例は、例証のために提供され、本発明を限定するものではない。
【0108】
実施例
実施例1:湿性および乾性ARMDにおける免疫細胞活性化
この実施例の目的は、ARMDをもつ被験体において末梢血単球およびT細胞に関して免疫活性化のレベルを測定することであった。さらに、目的は、末梢活性化のレベルが、臨床的に決定された結晶腔進行のレベルと相関しているかどうかを決定することであった。選り抜きの免疫細胞活性化マーカーは、HLA-DR、CD16(FCγIII)、およびCD38を含んだ。
【0109】
方法および材料
被験体
研究は、ARMDをもつ32人の被験体(9人乾性、23人湿性)、および10人からの年齢をマッチさせた対照被験体を含んだ。黄斑結晶腔を、サイズ、数、軟らかい対硬い、および付随した色素異常に基づいて1から4へ等級付けした。黄斑結晶腔の等級は、マクロファージ異常を評価する研究室に開示されなかった。眼底写真(結果参照)は異なる等級を示している。表Iは、研究でのARMD被験体のそれぞれの右目および左目における結晶腔スコアを提供している。特に指示がない限り、ARMD患者についてのすべてのその後のデータは、湿性および乾性ARMD患者の両方からの平均結晶腔値を用いる。
【0110】
(表I):ARMDコホート

【0111】
フローサイトメトリーによる単球の評価
ヘパリン処理された血液を、32人のARMDおよび10人の年齢をマッチさせた対照被験体から収集した。末梢血単球の表現型分析を、フローサイトメトリーにより達成した。マクロファージ走化性タンパク質(MCP-1)の血漿レベルを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により測定した。100マイクロリットルの全血を、抗CD14-FITC、抗CD16-PE(Dako Corporation, Carpenteria, CA; FITC=フルオレセインイソチオシアネート;PE=フィコエリトリン)、または抗HLA-DR-PE(Becton Dickinson, San Jose, CA)、または抗CCR2-PEで染色した。単球活性化はまた、食作用アッセイ(Molecular Probes, Eugene, Oregon)に基づいて評価された。T細胞評価は、抗CD4-FITC、抗CD38-PE、および抗CD38-PerCPで染色して測定された。陰性対照抗体(アイソタイプIgG-FITC、アイソタイプIgG-PE(DAKO Corp.)、およびIgG-Per-CP(Becton Dickinson))が各データセットについて含まれた。染色は、室温で20分間のインキュベーションにより達成された。赤血球溶解は、2mlのFACSLYSE(Becton Dickinson)の添加、続いて400×gでの5分間の遠心分離により達成された。上清を捨て、細胞ペレットを1mlの固定溶液(リン酸緩衝食塩水、0.01M、pH7.4中に1%パラホルムアルデヒド、0.1%アジ化ナトリウム)の添加により固定した。フローサイトメトリー分析は、CELLQUESTソフトウェア(Becton Dickinson)により操縦されるFACSCANフローサイトメーターにおいて行われた。対応のないt検定、ニューマン-クールズ多重比較、およびスピアマン相関による選択された集団の統計学的解析は、GraphPad Prizmソフトウェア(San Diego, CA)により行われた。
【0112】
結果
ARMD分類と関連づけた場合のマクロファージ活性化研究の分析の結果は、表IIに要約されている。
【0113】
(表II)ARMDの免疫パラメーター

*p<0.003 対 対照
**p<0.011 対 湿性
***p<0.04 対 対照
【0114】
ARMD患者試料における血中マクロファージ(CD14/16+)と免疫活性化(CD14/drレベル)の間の関係のグラフである図1は、ARMD患者血液において、血液中のマクロファージのレベル(%CD14+/16+)が高ければ高いほど、活性化のレベルが高い(より高いDR発現/細胞)ことを示している。図2に示されているように、血中単球活性化のレベルが高ければ高いほど(細胞表面HLA-DR濃度の増加レベルにより反映されるような)、ARMD患者の眼における結晶腔のレベルが高い(重症度のより高い疾患)。それゆえに、血中マクロファージ活性化は、直接的に網膜疾患の重症度と相関している。
【0115】
MCP-1の血漿レベルは、対照と比較して(p<0.05)、乾性ARMDをもつ被験体について最も高かった(図3A)。活性化マーカーCD16は、湿性ARMDをもつ被験体と比較して(p<0.01)、および正常な対照と比較して(p<0.001)、乾性ARMDをもつ被験体についてのCD14単球上で顕著に上昇した。図3Bは、活性化マクロファージ(CD14+/CD16+)、およびMCP-1受容体の発現、CCR2発現が反比例していることを示している。すなわち、活性化マクロファージのパーセンテージが大きければ大きいほど、CCR2発現レベルが低くなる。
【0116】
図4Aは、結晶腔と、MCP-1受容体、CCR2の血中単球発現の間の関係を示す。図は、MCP-1受容体、CCR2の発現の下方制御が、結晶腔スコアにより測定されるようなARMDの重症度と正比例することを実証している。さらに、これらのデータは、CCR2発現および/またはMCP-1レベルが、疾患の重症度および治療に対する応答を評価するために用いられうることを示している。
【0117】
実験の結果は、ARMD患者におけるマクロファージ(増殖マクロファージ(ProMacs)を含むCD14+/16+細胞)の血中レベルが、細胞活性化のレベル(CD14+細胞上のDRのレベル)に平行することを示している。加えて、血液における活性化マクロファージおよびProMacsのレベルは、ARMD患者の網膜における結晶腔のレベルに平行する。
【0118】
結果はまた、マクロファージに存在する疾患活性(網膜結晶腔レベルに関連した)の2つの平行したマーカーがあることを示している。マクロファージ上のCD16およびHLA-DRレベルは、ARMDの重症度と共に増加する。全身性MCP-1もまた、疾患の重症度と共に増加する。加えて、これらの同じマクロファージのCCR2レベルは、無病マクロファージと比較して低く、内因的に産生されたMCP-1リガンドによるCCR2受容体の下方制御を示している。これらの所見は、MCP-1およびマクロファージ活性化のマーカーが、結晶腔、通常のARMD疾患重症度マーカー、との相関に基づいたARMD疾患重症度を示していることを示す。
【0119】
上記結果は、増殖マクロファージの集団を含む持続的に活性化されたマクロファージがARMDにおいて上昇していることを示す。理論に捕らわれるつもりはないが、疾患についての一つの可能な機構は、RPEにおける結晶腔蓄積を含み、それが次に疾患進行へ導きうる。この結晶腔蓄積は、眼に存在するマクロファージの食作用を行う能力の低下に起因する可能性があり、その能力の低下が次に、結晶腔蓄積を許す。この仮説を試験するために、ARMD患者(初期および末期ARMD、初期ARMDは1〜2の結晶腔スコアにより定義され、末期ARMDは3〜4の結晶腔スコアとして定義された)および年齢をマッチさせた対照由来のCD14+細胞を、食作用能力についてアッセイした。図4Bは、末期ARMDをもつ患者のCD14+細胞が、このARMD進行のモデルと一致して、食作用能力を有意に減少していることを示す。
【0120】
結論:
この研究に示されたデータは、細胞(単球およびT細胞)およびサイトカイン(MCP-1)レベルの両方において検出可能な全身性免疫活性化を含むARMDの機構的モデルを支持する。異常な細胞およびサイトカイン活性化は、結晶腔スコアにより評価されるような疾患重症度と相関している。これらのデータは、全身性免疫活性化が、「湿性」対「乾性」臨床診断に関わらず、ARMDの進化に寄与するという疾患モデルを支持する。図4Cはこの疾患モデルの概略図を提供する。
【0121】
それゆえに、大域的な治療ストラテジーは、臨床パラメーター(例えば、結晶腔蓄積、脈絡膜血管新生(CNV)など)よりむしろ、本明細書に記載されているような免疫学的パラメーターに焦点を合わせるべきである。ARMDにおける全身的に活性化されたマクロファージは、ARMD病気発生のこれらの免疫学的局面を調節しうる薬物の標的を提供する。ARMDに向けられた治療の効力は、血液検体もしくは他の体液(例えば、眼の硝子体液(vitreal)または房水)または眼組織のマクロファージおよびMCP-1レベルの分析を通してモニターされうる。全身性免疫応答のパラメーターの検査は、網膜検査および他の通常の疾患のパラメーターと併せて行われうる。さらに、上で考察された免疫パラメーターは、疾患の湿性型と乾性型の間の免疫学的相違を定義し、それに従って、疾患モニタリングおよび効果的な新規治療の開発において有用である。
【0122】
実施例2:ARMD患者におけるマクロファージ増殖へのポリアミン類似体の効果
より高密度の細胞が捕獲されるのを可能にするパーコール勾配分離を以下のように達成した。2段階勾配を15mL円錐管に調製した:1.077密度でオーバーレイされた、1.087密度パーコールの下端層。1.5mLの全ヘパリン処理された血液を等容量の等張食塩水と混合した。この血液/食塩水を勾配の上に層状に重ね、遠心分離した。1.077および1.087界面からの細胞を収集し、混合して、5容量のRPMI 1640で洗浄した。
【0123】
ARMD患者(湿性および乾性の両方)由来の5×105個のPBMCを、上記のように、1.087g/ccパーコール/食塩水勾配を通して単離し、その後、ベースラインCD14/PCNA染色を行った後に、様々な濃度のポリアミン類似体に曝した。細胞を、ポリプロピレンチューブ(Falcon)でRPMI-1640/10%ウシ胎児血清中において5×105細胞で37℃で5日間、培養した。5日後、CD14/PCNA染色を、対照および作用物質で処理された培養物において行われた。対照培養物におけるPCNA陽性細胞のFACSCAN分析を、作用物質で処理された培養物と比較し、対照PCNA/CD14細胞のパーセンテージを計算した。年齢をマッチさせた、正常なまたはアルツハイマー病(AD)患者由来の試料が対照として用いられた。
【0124】
ARMD患者の血液由来の増殖マクロファージ(PCNAにより検出)へのポリアミン類似体SL-11047の効果のそのような実験の結果は図5に示されている。このポリアミン類似体は、ARMD患者の約60%において、増殖マクロファージのパーセンテージを少なくとも80%、有意に低下させた。対照的に、非罹患の年齢をマッチさせた被験体の17%のみが、CD14/PCNA陽性細胞の少なくとも80%の死滅を有した。年齢をマッチさせたAD患者由来のCD14/PCNA細胞は、同様に、たった低レベルでのみ(8%死滅)死滅した。この実施例の結果は、ポリアミン類似体SL-11047がARMDにおいて増殖マクロファージを殺すことを示してる。さらに、最も効果的な死滅作用をもつ作用物質を同定するための増殖マクロファージに対する活性についてのポリアミン類似体のスクリーニングは保証されている。
【0125】
増殖マクロファージが死滅した培養において、細胞上清をMCP-1産生について評価した。細胞を上記のように処理し、SL-11047での処理の4日間に続く2日間に渡ってMCP-1を収集した。年齢をマッチさせた正常なドナー由来の細胞が対照として用いられた。図6は、ARMD PBMCが自発的に、高レベルのMCP-1を産生することを示している(「MCP-1前」)。これらのPBMCのSL-11047への曝露は、MCP-1産生を著しく減少させた(図6、「MCP-1後」)。これらのデータは、図6におけるデータと一致している。従って、CD14/PCNA細胞(増殖マクロファージ)の死滅は、上記で考察されているようにARMDの病気発生に関与する因子であるMCP-1の供給源を除去する。
【0126】
実施例3:ポリアミン類似体処置はインビボで単球食細胞指数を向上させる
食作用機能を向上させるポリアミン類似体の能力を評価するために、リンパ腫患者のSL-11047の投与(1日あたり注入により25mg/m2、3週間ごとに5日間(1サイクル)、合計4サイクルについて)前および後から全血を採取し、食細胞指数を上記のように評価した。図7に示されているように、異常なベースライン食作用機能が、SL-11047ポリアミン類似体治療の4サイクルの投与後、有意に向上した。加えて、治療の過程において、患者におけるCD16+細胞が、総単球集団の正常な範囲へ減少した。
【0127】
前述の本発明は、理解の明快さを目的として、例証および例としてかなり詳細に記載されているが、特定の変化および改変が実施されるだろうことは当業者にとって明らかであると思われる。それゆえに、説明および実施例は、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲により描かれる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】ARMD患者試料における血中マクロファージ(CD14/16+)と免疫活性化(平均HLA-DRレベル)の間の関係を示すグラフである。ARMD患者血液において、血液におけるマクロファージのレベル(%CD14+/16+)が高ければ高いほど、活性化のレベルが高い(より高いHLA-DR発現/細胞)ことを示す。
【図2】ARMD患者において、活性化血中単球のより高いレベルもまた、より高い結晶腔スコアと関連していることを示すグラフである。
【図3A】湿性ARMDをもつ被験体(5人の患者)、乾性ARMDをもつ被験体(7人の患者)、および対照におけるMCP-1血漿レベルを示すグラフである。
【図3B】ARMD患者血液試料における、CCR2発現のレベル(細胞がMCP-1により制御されていることを示す)と、CD14+/CD16+である末梢血単球のパーセンテージの間の関係を示すグラフである。ARMD患者において、活性化血中マクロファージのパーセンテージが高ければ高いほど、CCR2発現のレベルは低い。
【図4A】ARMD患者の網膜結晶腔と、MCP-1受容体、CCR2の血中単球発現の間の関係を示すグラフである。この図におけるデータは、CCR2発現が網膜結晶腔の程度に正比例して下方制御される(すなわち、CCR2発現レベルおよび結晶腔スコアは逆の相関があり、CCR2発現における減少が結晶腔スコアの増加と関連している)ことを示す。
【図4B】対照被験体、初期ARMD(1〜2の結晶腔スコア)をもつ被験体、および末期ARMD(3〜4の結晶腔スコア)をもつ被験体における、末梢血単球の食作用活性を示すグラフである。
【図4C】ARMD病気発生の根底にある疾患機構の仮説を示す概略図である。(MO=マクロファージ)
【図5】ARMD患者(「MD患者」)、および年齢をマッチさせた非ARMD患者(「無病」および「疾患」対照の両方)におけるポリアミン類似体SL-11047(「SL47」)に対するCD14+/PCNA+細胞の感受性を示すグラフである。
【図6】ARMD血液細胞が自発的に高レベルのMCP-1を産生すること(「MCP-1 前」)、およびSL-11047への曝露がMCP-1産生を著しく減少させること(「MCP-1 後」)を示す棒グラフである。
【図7】ポリアミン類似体治療の4サイクルの前および後の患者における末梢血単球の食作用活性へのポリアミン類似体の効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非滲出性加齢性黄斑変性症(ARMD)であるマクロファージ関連眼疾患に苦しんでいる、またはこのマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体において活性化マクロファージおよび増殖マクロファージを減少させる方法であって、以下の段階を含む方法:
ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、およびポリアミン類似体の保護誘導体から選択される化合物を含む組成物を、個体において増殖マクロファージのレベルを減少させるのに十分な量で個体に投与する段階であって、該投与段階が個体におけるマクロファージ増殖の調節を提供する、段階。
【請求項2】
非滲出性ARMDであるマクロファージ関連眼疾患に罹っている、またはこのマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体において活性化マクロファージおよび増殖マクロファージの食作用活性を増加させるための方法であって、以下の段階を含む方法:
ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、およびポリアミン類似体の保護誘導体から選択される化合物を含む組成物を、個体においてマクロファージ食作用を増強するのに十分な量で個体に投与する段階であって、該投与段階が個体における活性化マクロファージおよび増殖マクロファージの食作用活性の増加を提供する、段階。
【請求項3】
非滲出性ARMDであるマクロファージ関連眼疾患に罹っている、またはこのマクロファージ関連眼疾患のリスクがある個体において、結晶腔を減少させる、または結晶腔蓄積を阻害するための方法であって、以下の段階を含む方法:
ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、およびポリアミン類似体の保護誘導体から選択される化合物を含む組成物を、個体においてマクロファージ増殖を調節するのに十分な量で個体に投与する段階であって、該投与段階が個体における活性化マクロファージおよび増殖マクロファージの食作用活性の増加を提供する、段階。
【請求項4】
非滲出性ARMDであるマクロファージ関連眼疾患による視力喪失がある、または視力喪失のリスクがある個体においてマクロファージ関連眼疾患の発症を遅らせるための方法であって、以下の段階を含む方法:
ポリアミン類似体、ポリアミン類似体の塩、およびポリアミン類似体の保護誘導体から選択される化合物を含む組成物を、個体においてマクロファージ食作用を増加させるのに十分な量で個体に投与する段階であって、該投与段階が個体におけるマクロファージ関連眼疾患の発症の遅延を提供する、段階。
【請求項5】
ポリアミン類似体の投与による処置に適している、非滲出性ARMDであるマクロファージ関連眼疾患に罹っている個体を同定するための方法であって、以下の段階を含む方法:
個体由来の活性化マクロファージおよび増殖マクロファージをポリアミン類似体とインビトロで接触させる段階;ならびに
ポリアミン類似体の存在下における単球走化性タンパク質-1(MCP-1)産生または細胞成長の少なくとも1つを評価する段階であって、ポリアミン類似体の非存在下におけるMCP-1産生レベルまたは細胞成長と比較した、ポリアミン類似体の存在下におけるMCP-1産生または細胞成長の抑制が、個体がポリアミン類似体での処置に適しているマクロファージ関連眼疾患に罹っていることを示す、段階。
【請求項6】
個体において、非滲出性ARMDであるマクロファージ関連眼疾患の診断を助ける方法であって、以下の段階を含む方法:
マクロファージ関連眼疾患に罹っているのではないかと疑われる個体由来の生体試料において、活性化マクロファージおよび増殖マクロファージのレベル、または全身性単球走化性タンパク質-1(MCP-1)のレベルの少なくとも1つを検出する段階であって、正常レベルより有意に高い活性化マクロファージおよび増殖マクロファージのレベルまたは全身性MCP-1のレベルの検出が、個体がマクロファージ関連眼疾患に罹っている、またはマクロファージ関連眼疾患のリスクがあることを示す、段階。
【請求項7】
個体において、非滲出性ARMDであるマクロファージ関連網膜眼疾患の治療をモニターする方法であって、以下の段階を含む方法:
該個体由来の生体試料において活性化マクロファージおよび増殖マクロファージまたは全身性MCP-1のレベルの少なくとも1つを検出する段階であって、活性化マクロファージおよび増殖マクロファージまたはMCP-1のレベルが個体における治療効果を示している、段階。
【請求項8】
個体において、滲出性ARMDであるマクロファージ関連眼疾患の重症度を評価するための方法であって、以下の段階を含む方法:
該個体由来の生体試料において活性化マクロファージおよび増殖マクロファージまたは全身性MCP-1のレベルの少なくとも1つを検出する段階であって、活性化マクロファージおよび増殖マクロファージのレベルまたは全身性MCP-1のレベルが被験体におけるマクロファージ関連眼疾患の重症度を示している、段階。
【請求項9】
増殖マクロファージまたは全身性MCP-1の正常レベルより少なくとも2標準偏差大きい被験体における活性化マクロファージおよび増殖マクロファージまたは全身性MCP-1のレベルが、該正常レベルに対して1〜2の間の標準偏差である活性化マクロファージおよび増殖マクロファージまたは全身性MCP-1のレベルより、被験体における疾患のより高い重症度を示している、請求項8記載の方法。
【請求項10】
活性化マクロファージおよび増殖マクロファージのレベルがCD14+/CD16+細胞の検出により評価される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項2記載の方法。
【請求項13】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項3記載の方法。
【請求項14】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項4記載の方法。
【請求項15】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項5記載の方法。
【請求項16】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項6記載の方法。
【請求項17】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項7記載の方法。
【請求項18】
ポリアミン類似体がMGBGである、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−531500(P2008−531500A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556384(P2007−556384)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/005923
【国際公開番号】WO2006/091522
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507280572)パソロジカ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】