説明

ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法

【課題】加工時に発生するガスを低減させた高品質なポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】有機極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物から選ばれる少なくとも1種の硫黄源とジハロゲン化芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する際に、重合系内に水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.3モル存在し、重合反応終了後に水を前記硫黄源1モル当たり0.5モル以上添加することで溶融粘度=40Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融流動性に優れ、加工時に発生するガスを低減させた安価で高品質なポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の中でもポリアリーレンスルフィド樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、高剛性、成形加工性に優れ、かつ、難燃性、耐薬品性、寸法安定性、電気特性に優れた性能を有するため高機能、高性能のエンジニアリングプラスチックとして注目されている。
【0003】
近年、これらの特性を活かして自動車部品、電気電子部品、精密機器部品さらには一般機器部品として幅広く使用され、その需要は急速に伸びている。
【0004】
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂は一般に射出成形時に発生するガスによって金型内に付着した物質によって金型メンテナンス回数が多いなどの問題やプロジェクター、プロジェクションTVなど高温で使用されている部品においては、高温使用時にポリアリーレンスルフィド樹脂から発生するガスによってレンズを曇らせてしまうという問題があった。
【0005】
発生ガスを低減する方法として、例えば特許文献1には低苛性アルカリ下で高分子化し、抽出剤を加える方法が開示されているが、優れた溶融流動性と低発生ガス量を両立するポリアリーレンスルフィド樹脂は得られていない。又、抽出剤を加えた場合、抽出剤回収工程が必要になり経済的ではない。
【0006】
特許文献2では重合反応途中で、アルカリ金属カルボン酸塩の水性混合物を添加する事により短時間に高分子化する方法が開示されているが、優れた溶融流動性と低発生ガス量を両立するポリアリーレンスルフィド樹脂は得られていない。
【0007】
特許文献3では、水を添加し加熱を継続する事で高分子化する方法が開示されているが、優れた溶融流動性と低発生ガス量を両立するポリアリーレンスルフィド樹脂は得られていない。
【特許文献1】特開平3−74433号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平4−345620号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平2000−191785号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、比較的安価に溶融流動性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂から、加工時に発生するガスを低減させた高品質なポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような手法にてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造することで、上記課題が解決できる。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)有機極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物から選ばれる少なくとも1種の硫黄源とジハロゲン化芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する際に、重合系内に水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.3モル存在し、重合反応終了後に水を前記硫黄源1モル当たり0.5モル以上添加することで溶融粘度が40Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(2)重合系内に存在する水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.05モルであり、溶融粘度10Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とする(1)記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(3)重合助剤が有機カルボン酸塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩から選ばれる少なくとも1種である(1)または(2)記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(4)水を添加した後、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む内容液をフラッシュさせてポリアリーレンスルフィド樹脂を回収することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか記載の製造方法で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を120℃〜270℃で熱処理するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、製造コストが安価で大量生産可能であり、かつ繊維、フィルム、成形品等の加工時に発生するガスを低減させた溶融流動性に優れる高品質なポリアリーレンスルフィド樹脂を製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法について説明する。
【0012】
本発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、下記式で表される繰り返し単位を主要構成単位とするホモポリマーまたは、
【0013】
【化1】

【0014】
上記繰り返し単位と、上記繰り返し単位1モル当たり、1.0モル以下、好ましくは0.3モル以下の下記繰り返し単位とからなる共重合体である。
【0015】
【化2】

【0016】
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、ポリハロゲン化芳香族化合物およびスルフィド化剤を有機極性溶媒中で重合して得られる。スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物などが使用できる。
【0017】
[アルカリ金属硫化物]
本発明で用いるアルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化リチウム、硫化ルビジウムおよび硫化セシウムなどが挙げられ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0018】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウムおよび水硫化セシウムなどが挙げられ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物、水溶液として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0019】
硫黄源の添加時期には特に制限は無く、後述する前工程、重合工程いずれの段階でも系内に導入可能であるが、重合工程の前までに導入するのが最も好ましい。
【0020】
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物の具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン、1,5−ジクロロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、および4,4’−ジクロロジフェニルケトンなどが挙げられ、これらのなかでもp−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、および4,4’−ジクロロジフェニルケトンなどが好ましく用いられ、特にp−ジクロロベンゼンが更に好ましく用いられる。なお、異なる2種類以上のジハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることももちろん可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
【0021】
ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のポリアリーレンスルフィド樹脂を得る点から、硫黄成分1モルに対して0.1から3モル、好ましくは0.5から2モル、更に好ましくは0.9から1.2モルの範囲である。
ジハロゲン化芳香族化合物の添加時期には特に制限はないが、重合工程の前までに系内に導入することが好ましい。
【0022】
[有機極性溶媒]
本発明において用いられる有機極性溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホンおよびテトラメチレンスルホキシドなどが挙げられ、なかでもN−メチル−2−ピロリドンが好ましく用いられる。
【0023】
有機極性溶媒の使用量は、反応系の有機極性溶媒量が、硫黄成分1モルに対して0.8から10モル、好ましくは2から8モル、より好ましくは2.5から7モルの範囲である。有機極性溶媒量が上記の範囲未満では、好ましくない反応が起こりやすくなり、上記の範囲を越えると、重合度が上がりにくくなる。
【0024】
有機極性溶媒の添加時期には特に制限はないが、重合工程の前までに系内に導入することが好ましい。
【0025】
[重合安定剤]
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制することができる。重合安定剤としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、及びアルカリ土類金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属塩を併用することも可能である。なかでも、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物が好ましい。
【0026】
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムおよび水酸化マグネシウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0027】
重合安定剤の導入時期については特に制限はないが、重合工程の前までに系内に導入することが好ましい。 このアルカリ金属塩の使用量としては、硫黄成分1モルに対して1.00モルから2.00モル、好ましくは1.005モルから1.5モル、更に好ましくは1.01モルから1.20モルの範囲が好ましい。
【0028】
[重合助剤]
本発明では重合助剤を硫黄成分1モルに対して0.01〜0.3モル存在させることが重要である。
【0029】
このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。
【0030】
上記有機カルボン酸塩の中でも、有機カルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく用いられる。かかる有機カルボン酸のアルカリ金属塩とは、一般式R(COOM)n (式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
【0031】
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機極性溶媒中で、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性に劣ると推定しており、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
【0032】
かかるアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、好ましくは硫黄成分1モルに対して0.01モルから0.3モルであり、より好ましくは硫黄成分1モルに対して0.01モルから0.2モルであり、より好ましくは硫黄成分1モルに対して0.01モルから0.1モルである。0.01モル未満では得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の発生するガスを低減する効果が少なく好ましくなく、0.3モルを超えると得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の流動性が悪化し好ましくない。
【0033】
[水添加]
本発明では重合終了後に水を硫黄成分1モルに対して0.5モル以上添加することが重要である。
【0034】
水を添加する時期については重合反応終了後に添加することが必要である。フラッシュ法での水添加時期はフラッシュ操作直前であり、クウェンチ法での水添加時期は冷却を開始する直前である。クウェンチ法の冷却速度としては、好ましくは0.1℃/分〜10℃/分であり、より好ましくは0.1℃〜5℃であり、更に好ましくは0.1℃〜2℃である。
【0035】
この水の添加量としては、上限に特に規定はないが、好ましくは硫黄成分1モルに対して0.5モルから5モルであり、好ましくは硫黄成分1モルに対して0.5モルから3モルであり、より好ましくは硫黄成分1モルに対して0.5モルから2モルである。0.5モル未満では発生するガスを低減する効果少なく好ましくない。5モル以上では内圧が上昇しすぎるため好ましくない。
【0036】
水はアルカリ金属硫化物の水溶液、およびアルカリ金属水硫化物の水溶液として反応系内に添加してもよい。
【0037】
[前工程]
重合工程の前に、完全混合型反応器に硫黄源、ジハロゲン化芳香族化合物および有機極性溶媒、必要に応じて重合安定剤および重合助剤を加え、好ましくは不活性ガス雰囲気下で、常温から220℃の範囲で脱水反応を行い、反応系内の水分量の調節を行ってもよい。ここでの完全混合型反応器とは、オートクレーブが挙げられる。
【0038】
ここでいう反応系の水分量とは、原料仕込み時に水溶液および水和物として反応系内に導入した水から、反応系外に除去された水分量を差し引いた量である。この量に特に制限はないが、特に仕込みの硫黄成分1モルに対して、好ましくは0から2.0モルの範囲であることが、重合速度、副生成物抑制の点から好ましい。
【0039】
[重合工程の条件]
重合温度は、特に規定はないが、好ましくは210℃〜300℃であり、より好ましくは220℃から290℃であり、更に好ましくは225℃から285℃である。210℃よりも重合温度が低いと重合が不十分となり、目的のポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることができず、300℃よりも重合温度が高いと分解が発生し、好ましくない。
重合時間は、他の反応条件によって広く変化するため特に規定はないが、一般には、0.01〜10時間、好ましくは0.2〜7時間、さらに好ましくは0.5〜5時間の範囲内である。重合時間が0.01よりも短いと重合度が上がらず、10時間よりも長いと生産性が悪くなり好ましくない。
【0040】
そして、この重合は一般に、窒素のような不活性雰囲気下で行われるのが好ましい。
【0041】
[回収方法]
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法には大きく分けて、後述するフラッシュ法とクウェンチ法の2種類がある。
【0042】
フラッシュ法は、溶媒を蒸発させて溶媒回収し、同時に固形物を回収する方法であり、回収時間も比較的短くできることから、経済性に優れた回収方法である。
一方、クウェンチ法は、重合反応物を、除冷して粒子状のポリアリーレンスルフィド樹脂を回収する方法である。
【0043】
但し、本発明の回収法はどちらかに限定されるものではなく、本発明の要件を満たす方法であれば、どちらの回収方法でも良い。しかし、経済性、性能を鑑みた場合、フラッシュ法で回収されたものを用いることが工業的に有利である。
【0044】
フラッシュ法で回収された固形物は、ポリマーと共に副生成物を大量に含むため、水でスラリー化した後、固液分離し、ポリマーを得ることができる。この時のポリマーと水の割合は、水が多い方が好ましいが、通常、浴比3以上が選択される。浴比は、ポリマーの重量に対する水の重量の比率のことである。この処理に続いて、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0045】
[熱水洗浄]
重合反応終了後のポリマーを含むスラリーを固液分離し、熱水洗浄を行うことが出来る。
【0046】
上記で得られたポリマーに水を加え、加熱、加圧状態で攪拌処理を行う。この時のポリマーと水の割合は、水が多い方が好ましいが、通常、浴比3以上が選択される。本発明の熱水洗浄によるポリマー中の不純物除去効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
【0047】
熱水洗浄する時の処理温度(スラリー温度)は、150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上とすることが好ましい。150℃未満ではポリマー中の不純物除去の効果が小さいため好ましくない。また、スラリー温度は、250℃以下が好ましく、220℃以下が更に好ましい。
【0048】
処理温度到達後の攪拌時間は、特に制限はないが、0.1分以上攪拌すれば十分な効果が得られる。生産性の面から攪拌時間の上限は、1時間以下が好ましく、攪拌時間は1〜30分がさらに好ましい。
【0049】
熱水洗浄処理後のスラリーは、固液分離し、ポリマーを得ることができる。固液分離をする際は、100℃以下に冷却してから行うのが好ましい。この処理に続いて、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、処理の雰囲気は、末端基の分解や酸化は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。
【0050】
[酸洗浄]
熱水洗浄のあと、酸洗浄工程を行うと金属含有量が低減し、熱処理時に揮発性成分が低減しやすくなるため好ましい。
【0051】
上記で得られたポリマーに水と酸を加え、加熱、加圧状態で攪拌処理を行う。この時のポリマーと水の割合は、水が多い方が好ましいが、通常、浴比3以上が選択される。本発明の酸洗浄では酸処理を効率良く行うため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
【0052】
本発明の酸洗浄に用いる酸は、ポリマーを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、無機酸および有機酸から選ばれる少なくとも1種の酸が使用される。具体的には、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなポリアリーレンスルフィド樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
【0053】
酸洗浄する時の処理温度は150℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上とすることが好ましい。処理温度の上限は、250℃以下が好ましく、220℃以下がさらに好ましい。処理温度到達後の攪拌時間は、特に制限はないが、0.1分以上攪拌すれば十分な効果が得られる。生産性の面から攪拌時間の上限は、1時間以下が好ましく、攪拌時間は1〜30分がさらに好ましい。
【0054】
この時、酸洗浄処理後のスラリーのpHが7未満となるような条件で酸洗浄を行うことが重要であり、無機酸および有機酸から選ばれる酸の種類、添加量で制御することができる。また、酸洗浄処理の雰囲気は、末端基の分解や酸化は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。
【0055】
[乾燥処理]
乾燥処理の温度としては110〜150℃が好ましく、110〜140℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。
【0056】
乾燥処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置、流動層乾燥機、回転式乾燥機であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。乾燥処理は塩基処理終了後に不活性ガスまたは活性ガスから少なくとも1つから選ばれるガス雰囲気下において行われる。
【0057】
[熱処理]
ポリアリーレンスルフィドの発生ガスをより低下させるために熱処理を行うことができる。
【0058】
熱処理温度としては、150〜270℃が好ましく、より好ましくは160〜260℃である。270℃を上回る温度で熱処理を行うと、ポリマーが溶融し始めるため、その制御が困難となるため好ましくない。一方、150℃未満の温度では、熱処理の進行が著しく遅くなり生産性が低下するため好ましくない。
【0059】
処理時間は、0.2〜50時間が挙げられ、0.2〜10時間がより好ましく、0.3〜5時間がさらに好ましい。処理時間が0.1時間未満であると十分な熱処理が行えないため好ましくなく、処理時間が50時間を超えると熱処理による架橋反応が進行して流動性が低下すると同時に、成形安定性が低下するため好ましくない。
【0060】
熱処理のための加熱装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置、流動層乾燥機、回転式乾燥機であってもよいが、効率よく均一に処理するためには、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置、流動層乾燥機を用いるのがより好ましい。
【0061】
熱処理の際の雰囲気における酸素濃度は0.5体積%以上、更には1体積%以上とすることが望ましい。上限には特に制限はないが、安全操業的に50体積%程度が限界であり、11体積%以下がより好ましい。
【0062】
熱処理の際のキャリアガス量としては、樹脂1gに対して0.1〜50ml/分が好ましく、0.1〜30ml/分がより好ましく、0.1〜15ml/分が更に好ましい。
【0063】
[発生ガス量]
上記の発生ガス量の測定には、以下に示す方法で算出した。
【0064】
ポリアリーレンスルフィド樹脂を130℃の真空オーブンにて3時間乾燥させ、ポリアリーレンスルフィド樹脂3gをガラスアンプル管に真空封入した。該ガラスアンプル管の片側(ポリアリーレンスルフィド樹脂のある方)を320℃に設定されたセラミックス電気管状炉:ARF−30K(アサヒ理化製作所製)に2時間放置し、その後、ガラスアンプル管の非加熱部(ポリアリーレンスルフィド樹脂のない方)を先端から約10cm程を切り落とす。切り落としたガラスアンプル管の初期重量とガラスアンプル管に凝集・付着した成分をクロロナフタレン5gで洗浄した後、3時間、60℃で乾燥させたガラス管の重量との差から真空状態で320℃、2時間後のポリアリーレンスルフィド樹脂からの発生物質量を算出した。最終的に、この得られた発生物質量を初期のポリアリーレンスルフィド樹脂量3gで割った値を発生ガス量として算出した。
【0065】
[溶融粘度]
東洋精機社製キャピログラフ1Cを用い、孔長10.00mm、孔直径0.50mmのダイスを用い、316℃、せん断速度1000/秒で溶融粘度の測定を行った。
【0066】
[樹脂組成物と用途]
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、単独で用いてもよいし、所望に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維などの無機繊維やチタン酸カリウムウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、ワラステナイト、セリサイト、カオリンなどのウィスカを添加することができ、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケート、などのケイ酸塩、アルミナ、塩化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの金属化合物、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸カリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素及びシリカなどの無機充填剤、着色防止剤、可塑剤、防食剤、酸化防止剤、熱安定剤、渇剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、離型剤、結晶核剤等の添加剤および着色剤などの添加剤を添加することもでき、さらには、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、酸無水物基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミドアセタールおよびポリイミドなどの樹脂を配合して用いることもできる。
【0067】
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質が優れ、特に含有不純物量が少ないため溶融時の発生ガスが少ないという優れた特徴を有するものであり、押出成形による繊維、シート、フィルムおよびパイプなどの押出成形用さらには射出用の成形品としても幅広く利用可能である。
【0068】
これら成形品の具体的用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、プロジェクター部品、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品;照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品;その他各種用途が例示できる。
【実施例】
【0069】
以下実施例により本発明を説明する。
【0070】
[発生ガス量]
上記の発生ガス量の測定には、以下に示す方法で算出した。
【0071】
ポリアリーレンスルフィド樹脂を130℃の真空オーブンにて3時間乾燥させ、ポリアリーレンスルフィド樹脂3gをガラスアンプル管に真空封入した。該ガラスアンプル管の片側(ポリアリーレンスルフィド樹脂のある方)を320℃に設定されたセラミックス電気管状炉:ARF−30K(アサヒ理化製作所製)に2時間放置し、その後、ガラスアンプル管の非加熱部(ポリアリーレンスルフィド樹脂のない方)を先端から約10cm程を切り落とす。切り落としたガラスアンプル管の初期重量とガラスアンプル管に凝集・付着した成分をクロロナフタレン5gで洗浄した後、3時間、60℃で乾燥させたガラス管の重量との差から真空状態で320℃、2時間後のポリアリーレンスルフィド樹脂からの発生物質量を算出した。最終的に、この得られた発生物質量を初期のポリアリーレンスルフィド樹脂量3gで割った値を発生ガス量として算出した。
【0072】
[溶融粘度]
東洋精機社製キャピログラフ1Cを用い、孔長10.00mm、孔直径0.50mmのダイスを用い、316℃、せん断速度1000/秒で溶融粘度の測定を行った。
【0073】
[実施例1]
攪拌機付きの1リットルオートクレーブに、47%水硫化ナトリウム1.00モル、48%水酸化ナトリウム1.03モル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.65モル、酢酸ナトリウム0.05モル、及びイオン交換水5.55モルを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで2時間かけて徐徐に加熱し、水11.70モルおよびNMP0.02モルを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。また、硫化水素の飛散量は0.01モルであった。
【0074】
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)1.03モル、NMP1.85モルを加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から270℃まで125分かけて昇温し、276℃で65分保持したのち水を1.00モル添加した後、反応を終了し、室温近傍まで急冷して内容物を取り出した。
【0075】
得られた固形物およびイオン交換水750ミリリットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した4リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
【0076】
得られたケークおよびイオン交換水600リットルを、撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、190℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
【0077】
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水400ミリリットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。
【0078】
得られたケークおよびイオン交換水600リットルとポリアリーレンスルフィドに対して0.5%の酢酸を加え、撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、190℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
【0079】
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水500ミリリットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。
【0080】
得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂を得た。
【0081】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度3.6Pa・sec、発生ガス量0.90重量%であった。
【0082】
[実施例2]
酢酸ナトリウムを0.01モル添加する事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
【0083】
実施例1と同様のイオン交換水による洗浄、酢酸による洗浄、乾燥を行って得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度3.6Pa・sec、発生ガス量は0.95重量%であった。
【0084】
[実施例3]
重合反応終了後に水を0.50モル添加する事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
【0085】
実施例1と同様のイオン交換水による洗浄、酢酸による洗浄、乾燥を行って得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度3.6Pa・sec、発生ガス量1.00重量%であった。
【0086】
[実施例4]
重合反応終了後に水を2.00モル添加する事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
【0087】
実施例1と同様のイオン交換水による洗浄、酢酸による洗浄、乾燥を行って得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度3.6Pa・sec、発生ガス量0.70重量%であった。
【0088】
[実施例5]
酢酸ナトリウムを0.30モル添加する事以外は実施例4と同様に反応、回収操作を行った。
【0089】
実施例1と同様のイオン交換水による洗浄、酢酸による洗浄、乾燥を行って得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度25Pa・s、発生ガス量0.55重量%であった。
【0090】
[実施例6]
実施例1で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、攪拌機付き乾燥機に入れ、酸素濃度5体積%の窒素混合ガスを80ml/分乾燥機に導入し、240℃で30分熱処理(回転数:10rpm)を行った。
【0091】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度6.3Pa・sec、発生ガス量0.25重量%であった。
【0092】
[実施例7]
実施例5で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、実施例6と同様に熱処理を行い、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度29Pa・sec、発生ガス量0.20重量%であった。
【0093】
[比較例1]
酢酸ナトリウムを添加しない事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
【0094】
実施例1と同様のイオン交換水による洗浄、酢酸による洗浄、乾燥を行って得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度3.4Pa・s、発生ガス量1.20重量%であった。
【0095】
[比較例2]
重合反応終了後に水を添加しない事以外は実施例1と同様に反応、回収操作を行った。
【0096】
実施例1と同様のイオン交換水による洗浄、酢酸による洗浄、乾燥を行って得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度3.4Pa・s、発生ガス量1.20重量%であった。
【0097】
[比較例3]
酢酸ナトリウムを0.35モル添加する事以外は実施例5と同様に反応、回収操作を行った。
【0098】
実施例1と同様のイオン交換水による洗浄、酢酸による洗浄、乾燥を行って得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度58Pa・s、発生ガス量0.40重量%であった。
【0099】
[比較例4]
比較例1で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、実施例6と同様に熱処理を行い、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度6.3Pa・sec、発生ガス量0.50重量%であった。
【0100】
[比較例5]
比較例3で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂10gを、実施例6と同様に熱処理を行い、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、溶融粘度87.5Pa・sec、発生ガス量0.20重量%であった。
【0101】
これらの実施例および比較例の条件および分析結果を表1と表2に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
(1)実施例1、2と比較例1を比較すると、水添加が無いと発生ガス量が多いことが分かり、酢酸ナトリウムと水添加を併用することにより発生ガス量が少なく、目的の粘度が得られることが分かった。
【0104】
(2)実施例3,4と比較例2を比較すると、酢酸ナトリウムが無いと発生ガス量が多いことが分かり、酢酸ナトリウムと水添加を併用することにより発生ガス量が少なく、目的の粘度が得られることが分かった。
【0105】
(3)実施例5と比較例3を比較すると、酢酸ナトリウムが多いほど発生ガス量は低下するが、粘度が上昇してしまい目的の粘度が得られず好ましくない結果となった。
【0106】
【表2】

【0107】
(4)実施例6と比較例4を比較すると、熱処理により粘度上昇と発生ガス量の低下が認められるが、実施例6の方が酢酸ナトリウムと水添加を併用することにより、熱処理前に低下した発生ガス量が維持され比較例4に比べ発生ガス量が低下している。
【0108】
(5)実施例7と比較例5を比較すると、熱処理により粘度上昇と発生ガス量の低下が認められるが、比較例5は目的とする粘度得られていない。
これらの実施例から本発明でポリアリーレンスルフィド樹脂を製造した場合、発生ガスが少なく、かつ流動性に優れるポリマーを得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機極性溶媒中で、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物から選ばれる少なくとも1種の硫黄源とジハロゲン化芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する際に、重合系内に水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.3モル存在し、重合反応終了後に水を前記硫黄源1モル当たり0.5モル以上添加することで溶融粘度が40Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項2】
重合系内に存在する水を除く重合助剤が前記硫黄源1モル当たり0.01〜0.05モルであり、溶融粘度10Pa・s以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項3】
重合助剤が有機カルボン酸塩、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項4】
水を添加した後、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む内容液をフラッシュさせてポリアリーレンスルフィド樹脂を回収することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の製造方法で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を120℃〜270℃で熱処理するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−106179(P2010−106179A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281202(P2008−281202)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】